Quantcast
Channel: オナニー用エッチ体験談 »プール
Viewing all 310 articles
Browse latest View live

【寝取られ】遠距離恋愛している間彼女が喰われる話 3 【NTR】

$
0
0

21

「じゃあ果歩、バイト頑張ってね。」

「うん、じゃねぇ知子ちゃん。」

大学を終えた果歩は知子と別れて、アルバイト先のトミタスポーツへ向かった。

トミタスポーツの仕事にも慣れてきた今日この頃。

いや、慣れるというか、トミタスポーツでの仕事は今のところ受付だけで、高い時給のわりに楽な仕事。

高い時給はもちろん嬉しかった果歩だが、遣り甲斐(やりがい)という面では若干物足りなさを感じていた。

トミタスポーツの建物に着いた果歩はスタッフ用の入り口から中へ入る。

「おはようございま〜す」

次々と顔を合わせる男性スタッフにあいさつをしていく果歩。

ここのアルバイトを始める時は女性スタッフが少ないとは聞いていたが、仕事を始めてみると、マッサージ室に1人と、事務に1人、そしてアルバイトの果歩、女性はこの3人だけだった。

それに他の2人は毎日いるわけではなく、週一くらいしか出勤しなかったため、実質ここのスタッフで女性は果歩だけのようなものだった。

ここでの仕事服、トミタスポーツのロゴがはいっているTシャツとハーフパンツに着替えるため果歩は更衣室へ向かった。

「お〜い、果歩ちゃん!ちょっと待って!」

「え?」

遠くから駆け寄ってくる誰かに名前を呼ばれた果歩、後ろに振り返った。

「え、キャッ!!と、富田さん・・・」

駆け寄って来きたのは、ここのオーナーでもある富田だった。

果歩が悲鳴に似た声をあげたのは、富田の格好を見たからである。

プールで水泳のインストラクターをしていた富田は水着姿であった。

しかもその水着は男性用のビキニの水着のようだったが、普通のビキニタイプではなくて、いわゆるブーメランタイプと呼ばれる水着で、中学、高校時代に水泳の授業で男子が着ていた物よりもかなり際どい水着だ。

富田のその姿を一瞬見た果歩は目をそらして顔を赤くした。

「と、富田さん・・・あの・・・な、なんでしょうか?」

「ハハッ、おいおい果歩ちゃん何恥ずかしがってんの?ここじゃこんな格好普通だぜ?」

「は、はい、すみません……あの、それで?」

いぜん目線を富田の身体から逸らしたままの果歩。

「あぁ、果歩ちゃんさ、今日から受付の仕事じゃなくてプールの監視員の仕事してほしいんだけどね。」

「監視員、ですか?」

「そうそう、まぁ大して難しい仕事じゃないんだけどね。決められたルール守ってない人とかを笛を吹いて注意したり、誰か溺れたりしてないかチェックする係なんだけどさ。」

「そうなんですか……はい、わかりました。」

「そろそろ受付の仕事にも飽きてきてただろ?」

「エヘヘ、はい、ちょっと。」

果歩は悪戯っぽく笑顔をつくって言った。

確かに受付の仕事は飽きてきたと思っていた果歩、新しい仕事を与えてもらえたのは正直嬉しかった。

「よし、じゃあこれに着替えて。」

そう言って富田は手に持っていたビニール製の袋を果歩に渡した。

「あの……これは?」

「水着だよ。」

「えっ、水着になるんですか!?」

「そうだよ?プールでの仕事だから、もしかして水の中に入ってもらう事もあるかもしれないしね。」

「はぁ、そうですかぁ……でも……」

「さぁさぁ!着替えて着替えて。」

「……はい、分かりましたぁ……。」

笑顔で急かすようにそう言ってくる富田。

果歩は考える余地もなく水着の袋を持って更衣室に入っていった。

まさか今日自分が水着姿になるなんて予想もしていなかった。

・・・どうしよう・・・水着なんて・・・

・・・でもなんだか断りづらいし・・・はぁ・・・

ため息をしながら袋の中を見つめる果歩。

「果歩ちゃ〜ん!着替えたら仕事の説明するから早くしてねぇ!」

ドアの向こうから富田の声が聞こえる。

「は、は〜い!」

・・・んもう・・・しょうがないかぁ・・・

果歩は意を決して自分の着ている服に手を掛けた。

更衣室の前ではブーメランタイプの水着姿で富田がニヤニヤと不適な笑みを浮かべていた。

(果歩の水着姿かぁ・・・へへッ・・・どんな身体してんのか楽しみだぜ・・・それにしても・・・ありゃ押しに弱いタイプだなぁ・・・もうちょっと強引にいっても良さそうだな・・・)

ヤダ・・・ちょっと・・・この水着・・・私には小さいよぉ・・・

身に着けていた衣服をすべて脱いだ果歩はさっそく渡された水着を着てみた。

果歩は今まで夏にプールや海に行くような習慣はなかったので、水着になるのは高校時代の水泳の授業以来だ。

その当時着たのはスクール水着で、海やプールにも行かない果歩はスクール水着以外の水着はほとんど着た事がなかった。

そして今、富田に渡された水着、それは競泳用の水着だった。

こうした水着は水泳で鍛えている女性が着れば、イヤらしさなどほとんどないのかもしれないが、果歩のようなまったく水泳に縁がないような女の子が着ると妙にイヤらしく見えてしまう。

それにこの水着、果歩には少し小さいようだった。

身体が全体的にきつい感じがしたし、恥ずかしかったのは股の部分がハイレグタイプだった事だ。

結構角度が深い・・・果歩のアソコの毛は薄くて範囲も小さかったため、毛がはみ出してしまうようなことはなかったが、少しズレたら・・・と思うと少し怖い。

それにサイズが小さいためか、お尻の割れ目の部分に水着が少し食い込んでしまう。

更衣室にあった鏡で自分の水着姿を確認する果歩。

・・・あ〜・・・ダメ・・・ダメだよ・・・こんなの人に見せられないよ・・・

真っ白な身体に食い込む黒い水着、そんな自分の水着姿に果歩は顔を赤くする。

他のに・・・他の水着に変えてもらおう・・・こんなのダメだもん・・・

果歩はドアに近づき、外にいる富田に声をかけた。

「あのぉ・・・富田さ〜ん」

「ん?どうしたぁ?もう着替えた?」

「いえ…あの…この水着、私にはちょっと小さいみたいなんですけど・・・」

「え〜マジ?いやぁ女性スタッフ用の水着それしかないんだよねぇ。あ、でも大丈夫、上からTシャツ着ればいいからさ。な?それならいいだろ?」

「Tシャツですかぁ?ん〜・・・」

「大丈夫大丈夫、Tシャツ着ちゃえば水着姿なんてほとんど見えないんだから。」

「え〜でも…」

「ハハ、大丈夫だって、秋絵ちゃんもそうしてたから。ね?ほら、早くしないと時間ないし。」

「ん〜…わかりました…」

ガチャ・・・

それから少ししてから、更衣室から果歩が出てきた。

富田に言われた通り果歩は、渡された競泳用水着の上にTシャツだけを着た姿で現れた。

・・・はぁ・・・でもやっぱり恥ずかしいよぉ・・・

「さ!じゃあ行こうか。」

顔を赤くして恥ずかしがっていた果歩に対し、そんなことはまったく気にしていないかの様に富田はそっけなくそう言った。

「は、はい・・・」

Tシャツは着ているものの、ハイレグの股部分や、食い込んだお尻の部分がチラチラ見えてしまっている。

いっしょにプールへ向かう二人。

富田は果歩に気づかれない様に横目でそっと果歩の身体を見た。

(ハハ、こりゃおいしそうな身体してるぜ・・・)

果歩の真っ白な脚と、果歩が自分でTシャツを少し引っ張って隠そうとしている水着姿の下半身を、イヤらしい目線で見つめる富田。

(それにしても、あんな小さい水着、もしかしたら断固拒否されるかと思ったんだけどなぁ。ハハ、こりゃ先が楽しみだわ)

富田は心の奥から沸いてくるイヤらしい笑みを堪えることができなかった。

22

「じゃあ、そんな感じで頼むよ。まぁわからない事があったらいつでも聞いてもらっていいから。」

「は、はい。ありがとうございます。」

室内プールの脇で水着の上にTシャツ姿の果歩は、富田から監視員の仕事の内容の説明を受け終わったところだった。

・・・やだ・・・やっぱり恥ずかしい・・・

果歩がプールに入ってくるなり

「おぉ!果歩ちゃん今日は水着かよ、へぇ〜いいねぇ!」

「おわ〜、果歩ちゃん水着なの!?そのTシャツも脱いでみてよ。」

と、顔見知りの男性会員達にセクハラ紛いの声をかけられた。

今まで受付の仕事をやっていた果歩は、ここの男性会員達全員を知っている。

果歩の可愛さはこのジムに通っている男達の中では評判で、わざわざ通う曜日を果歩がいる曜日に変更する男が急増していたほどだった。

そんな短期間でトミタスポーツのマスコット的存在になっていた果歩の水着姿、男なら仕方ない事なのかもしれないが、その視線が果歩に集中している事に、さすがに鈍感な果歩でも気付いていた。

・・・もぅ・・・恥ずかしいよぉ・・・・

その大勢の男性の視線はおそらく果歩の下半身、Tシャツでは隠れないハイレグの股の部分、そして水着が少し食い込みぎみのお尻に集中しているであろう事にも果歩は気付いていた。

Tシャツを下に引っ張りながら少しでも下半身が隠れるようにと努力する果歩。

「ちょっとちょっと!男性の諸君、果歩ちゃんの方見過ぎです!セクハラになりますよ!さぁさぁ、自分のトレーニングに集中してください!」

富田が果歩の前に立って、男性達の視線を遮るようにして言った。

「じゃあさっき言った通り、頼むよ、果歩ちゃん。」

「は、はい。わかりました。」

富田の爽やかな笑顔で言ってきた言葉に果歩も笑顔で返事をした。

監視台の梯子(はしご)を登っていく果歩、その時下から冨田は果歩の下半身、お尻に食い込んだ水着を凝視していた。

(ハハッ!こりゃマジで美味そうだわ・・・あんま長いこと我慢できねぇな・・・ま、今日の果歩の様子じゃそんなに時間は掛からないかもしれねぇけどなぁ・・・。)

そんな富田のイヤらしい下からの視線にまったく気付いた様子のない果歩、一番上までたどり着くと、監視員用の椅子に腰を下ろした。

「よし、じゃあもし溺れてる人とか見つけたらその笛を大きく吹いてくれよ。」

「はい、わかりました。」

「じゃあ頼むわ。」

そう果歩に言って富田はインストラクターの仕事に戻っていった。

・・・はぁ・・・結構暇かも・・・

監視員の仕事は退屈だった。

もしかして受付の仕事より暇かもしれない。

一応プール全体を注意深く監視しているつもりだったが、それは最初の頃だけで、しだいに(どうせなにも起きないし)と心のどこかで思ってきてしまう果歩、集中力がなくなってきていた。

それにしてもなんだか未だに男性会員達の視線を感じる・・・。

椅子に座っているから食い込んだ水着などは見られていないと思うが、それでも果歩の椅子からぶら下っている白い脚などをチラチラ見られている気がする。

しかし、果歩はそういった視線には結構慣れていた。

というのは中学や高校時代の水泳の授業の時にも同じような視線は感じていたからだ。

最初は恥ずかしいし嫌だったが、もう果歩の中では男の人は仕方ないのかもしれないと割り切っていた。

もちろん水着姿を見られることは恥ずかしい事に変わりはなかったのだが・・・。

・・・ん〜・・・あ〜暇だなぁ・・・

しばらく監視の仕事を続けていた果歩だが、そのうちだんだんと、ある男性の方をチラチラ見るようになっていた。

その男性は・・・富田だった。

会員のお客に泳ぎ方の指導をしている富田。

・・・富田さんって・・・すごい逞しい身体してる・・・やっぱインストラクターだから毎日鍛えてるのかなぁ・・・

果歩が見ていたのは富田の鍛え上げられた身体だった。

なぜだろう・・・無意識のうちに富田の方に遠目から視線が行ってしまう。

それは果歩が昨日秋絵の部屋で見たDVDのあの男優の身体と、富田の身体を重ねて見てしまっていたからだった。

そう、あのDVDの女性と激しく交わっていた男の逞しい身体。

そして今朝見た夢の中で果歩と濃厚な性行為をしていた男の逞しい身体。

その体つきにそっくりな逞しい身体が今、果歩の視線の先、現実の世界に存在しているのだ。

黒く焼けた肌
厚い胸板
大きな背中
割れた腹筋
筋肉質な太い腕

そして・・・果歩の視線が止まってしまう場所・・・

富田の下半身・・・その中心部分・・・

一瞬、女性なら目を背けたくなるような水着を穿いている富田。

しかし果歩の目はしっかりとその下半身を見つめていた。

それは、もはや[チラ見]ではなかった。

ブーメランタイプの小さな水着、その中心部分の大きな膨らみに果歩の目は釘付けだった。

強引に収められているであろう富田のペニスはその膨らみから、相当な大きさのものであることは容易に想像できた。

果歩は自分の下腹部が熱くなってくるのを感じた。

昨日からずっと燻り続けていた小さな炎が今、視覚的刺激によって再び大きなものになり始めていたのだ。

大学では講義に集中したり、知子と話をしたりして忘れかけていたその感覚。

しかし、本当はずっと我慢していたのだ。昨日からずっと・・・

果歩は想像してしまう・・・。

逞しい身体に抱かれる自分を。

大きく股を開かされ、その中心に逞しい男根を挿入される自分を。

我慢し続けていたムラムラ感が、急激に果歩の身体の中で増大してきていた。

股間が、アソコがムズムズする・・・

Tシャツの裾をグッと握り締め、時折り太ももを擦り合わせるような仕草をする果歩。

あっ…

ジュワァっと熱い何かが股間の秘裂から溢れ出してきた事に気付いた果歩。

ハァ…ダメ…

ドク…ドク…ドク…

心臓の脈と同じリズムでイヤらしい粘液が生産され、秘裂から溢れ出てくる。

…ダメ…変なこと想像しちゃ…

本能的に見つめてしまっていた富田の身体から視線を外し、グッと目を瞑る。

必死に心を落ち着かせようとする果歩。

「お〜い果歩ちゃん。果歩ちゃん!」

「…えっ…?」

監視台の下の方から男の人の声。

富田の声だった。

「どうしたんだよ、目瞑って下向いちゃって。」

「え?あ…す、すみません!」

「ハハッ、おいおい、まさかお眠りしてたんじゃないだろうなぁ?」

「い、いえ、寝てはいなかったですけど…。」

「本当かぁ?ハハッ、まぁいいよ、それよりちょっと来てくれないか?水質検査の仕方教えるから。」

「え?は、はい、わかりました。」

さっきまで富田の身体を見ながら想像していたことを思うとなんだか気まずい。

富田との会話だけで自分の顔が赤くなっていることがわかる。

監視台の椅子から立ち上がろうとする果歩。

その時一瞬、嫌な感覚を股間に感じた。

ハっとした表情の果歩。

そっと握り締めていたTシャツの裾をめくって水着の股部分を確認してみる。

嫌な予感は当たっていた。

果歩の水着の股部分には、自身から溢れ出た湿った粘液によって染みができていたのだ。

プールに入っていない果歩の水着は、色が黒いとはいえ、乾いた部分と濡れた部分の色の違いは結構はっきりしていた。

うそ…やだ、どうしよう…

富田を下で待たせたまま、顔を赤くして泣きだしそうな表情の果歩は、監視台から降りることができなくなってしまっていた。

23

「ん?どうした?果歩ちゃん。」

「え?い、いえ、なんでもないです。」

そんなに大きな染みじゃないし、しっかり見られない限り気付かれないかな。

富田から呼ばれているのだ、この監視台から降りないわけにはいかない。

しかたなく椅子から腰を浮かせて、監視台の梯子(はしご)から降りていく果歩。

登っていく時同様、下にいる富田にお尻を向ける格好だ。

さっきと同じように富田はジロ〜っと目線を果歩の下半身に向けいる。

(ん?ハハっ、果歩のやつ、妙に俺の方チラチラ見てるなって思ったら。ハハッ、こりゃいいわ。)

富田はさっき監視台に登っていくときにはなかった染み、プールに入ってもいないのに濡れている果歩の股間の小さな染みを、富田は見逃さなかった。

その染みを見つけた時、富田はイヤらしい笑みを堪えることができなかった。

監視台から降りてきた果歩をイヤらしい笑みを浮かべながらジッと見つめる富田。

「あ、あのぉ?」

「ん?あぁごめんごめん。ハハッ、ちょっと果歩ちゃんの水着姿に見惚れちゃってたよ」

「えっ?」

その言葉を聞いて顔を赤くして恥ずかしがる果歩。

「いやぁ、うちのジムほとんど女性会員いないからさ。ごめんごめん、ついつい果歩ちゃん可愛いからさ。」

「は、恥ずかしいです…あんまり見ないでください…」

果歩はTシャツの裾を引っ張りながら水着の股部分を隠しながら恥ずかしそうに言った。

富田の見惚れちゃってたよ、という言葉、さっきから熱くなっていた果歩の身体は落ち着くどころか、そんな言葉をかけられただけでさらに身体は熱くなり、鼓動は速くなる。

「ハハっ果歩ちゃん、見ないでくださいって言ってもお互い様だろ?」

「え、お互い様ですか…?」

一瞬、富田が言ったことの意味が理解できなかった果歩。

「果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?」

「え?」

「さっき監視台からすっげぇ視線を感じたからよ、ダメじゃん、お客さんをちゃんと監視してなきゃ。」

顔を急激に真っ赤にする果歩。

「あ、あの…す、すみません…」

「ハハっ!いいのいいの!女の子だってそういう気分の時もあるよなぁ。ハハッ!」

「と、富田さん…」

まさかずっと富田の身体を見ていた事に気付かれてたなんて、果歩はどうしようもなく恥ずかしい思いだった。

「ハハッ!いいよいいよ、気にしないで、見られて減るもんじゃないから。」

「……。」

果歩の目はウルウルして今にも泣き出しそうな雰囲気だ。

「さぁ!水質検査の道具、置いてある場所教えるからついて来て。」

「ハ…ハイ…」

果歩は顔を赤くしたまま小さな声で返事をして富田の後についていった。

「え〜っと、ここだな。果歩ちゃん、ちょっとこっち来てみな。」

「は・・・はい・・・。」

果歩が富田に連れてこられたのは、いろいろな道具が置いてある小さな倉庫のような部屋だった。

狭い部屋の中に入った2人の距離は密着しそうなくらい近くなっていた。

「ここに、水質検査の道具が全部置いてあるから。」

「はい・・・。」

道具の場所を目で確認する果歩。

しかし、その目が一瞬、富田の股間にいってしまう。

間近で見る富田の逞しい身体・・・さっき富田から指摘されたにもかかわらず、反射的に富田の股間を見てしまう果歩。

富田の臍(へそ)のあたりから股間の方へ向かって生い茂る濃い毛並みは、どこからが陰毛なのかわからない。

そしてその下にあるブーメランタイプの水着の膨らみは、近くで見ると驚くほど大きく感じた。

果歩はほぼ無意識のうちに富田に気づかれないようチラっと一瞬見ただけだったが、富田はその一瞬の果歩の目の動きを見逃してはいなかった。

(ハハ、こりゃもう確実にいけるな)

自信に満ちた富田の表情。

富田の計画が成功することが、自信から確信に変わった瞬間だった。

検査道具を持ち出し、プールの側で検査道具の使い方を果歩に説明する富田。

「ほら、そんなに難しくないだろ?」

「は、はい・・・。」

「それじゃ次回から水質検査は果歩ちゃんの仕事な。」

「はい、わかりました。」

プールの側にしゃがんでいた2人だったが、富田が急に果歩の前に立ち上がった。

その時、ちょうど富田の股間が果歩の目の前にくる位置になってしまった。

「えっ?」

しゃがんだまま顔をあげた果歩は、顔の高さと同じ、目の前にあるビキニの膨らみに一瞬、目が釘付けになってしまう。

「果歩ちゃん?どうした?」

「え!?い、いえ!なんでもありません・・・。」

動揺した様子で果歩はその場に立ち上がった。

「さて、時間も時間だし、果歩ちゃんの今日のバイトは終了にしようか。」

「は、はい・・・ありがとうございました。」

そう言って、使った検査道具をさっきの部屋へ片付に行く二人。

「それにしてもいいよなぁ。」

ふと、富田が口を開いた。

「え?なにがですか?」

「果歩ちゃん、スタイルいいよなぁ?」

「え・・・」

急にそんな事を言われてまた顔を赤くする果歩。

「いや、冗談抜きで。友達とかによく言われない?」

「い、いえ・・・そんな・・・普段水着になることもないし・・・それに私スタイルなんて・・・よくないです・・・」

恥ずかしそうにそう答える果歩。

それは正直な答えだった、果歩は自分のスタイルが良いなんて思ったことはなかった。

「ハハッいやいや、肌も白いし、凄く良いと思うよ?それにこれだけ元が良いなら、トレーニングしたらもっといいスタイルになるぜ?」

「トレーニング・・・ですか?」

「あぁ、秋絵ちゃんもやってるトレーニングなんだけどね、俺が考えた特別メニューのトレーニング。」

「秋絵先輩もですか?」

「そう、果歩ちゃんもトレーニングすればもっと大人っぽいスタイルになれるよ。」

「そ、そうなんですか。」

大人っぽい・・・確かに秋絵は大人っぽかった。

同姓の果歩でも秋絵からは何か色気のようなものを感じる。

「まぁまた休みにでも時間あったら試してみてよ、果歩ちゃんなら特別に無料で教えるからさ。」

「はい、ありがとうございます。」

大人っぽいスタイルになるトレーニング・・・それがどんなものなのか、今の果歩には想像もつかなかった・・・。

24

「ふぅ・・・ただいまぁ・・・。」

誰もいない、1人暮らしをしているアパートの部屋に着いた果歩。

部屋の電気をつけて、そのついでにパソコンのスイッチも入れる。

トミタスポーツのアルバイトを終えた果歩は、寄り道せずにまっすぐアパートへ帰ってきた。

今夜、果歩はアレをする事に決めていた。

どうしてもアレをしたくてたまらない気持ちになってしまったのだ。

「ん〜・・・あれ?友哉からメールがきてない・・・どうしたのかなぁ・・・?」

いつものようにパソコンのメールをチェックした果歩。

友哉が留学してから今まで一日も欠かさず届いていたメールが今日は届いていなかった。

いや、よく考えると、昨日秋絵の部屋に泊まったため、昨日のメールもまだチェックしていなかったのだが、受信箱には昨日の分のメールも届いていなかった。

「忙しいのかな・・・友哉・・・」

いままでずっとメールは友哉の方から届いて、それに果歩が返事をするという形だったが、今日初めて、果歩の方からメールを送信してみる事にした。

【友哉元気〜?昨日は私、秋絵先輩の部屋でお泊りしてきちゃってメール送ってなかったんだけど・・・今日確認したら友哉からメールきてないよぉ・・・忙しいのかな?ちょっと心配だよぉ・・・返事待ってま〜す】

カタカタカタ・・・

「ふぅ・・・お風呂入ろっ・・・」

メールを送信した果歩はお風呂場に向かった。

ザーーーーー・・・・・!

湯煙でいっぱいになった浴室の中で、頭のシャンプーをシャワーで洗い流しながら果歩はある事を考えていた。

「・・・・・・・。」

それは、メールが来ていなかった友哉の事ではなく、別のことだった。

昨日から今日にかけて果歩が目にしてきた物をもう一度頭の中で想像していたのである。

秋絵の部屋で見たDVD、今朝見た淫らな夢、そして・・・富田。

今日、予期なく突然水着姿になる事になってしまった果歩。

何度顔を赤らめただろうか。

・・・はぁ・・・恥ずかしかったなぁ・・・

小さめの水着、男性会員達の視線、それに、富田の肉体に目を奪われてしまっていた自分自身。

富田の逞しい身体、あのブーメランタイプの小さなビキニの大きな膨らみ、想像しただけでなんだか体が熱くなってくる。

『果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?』

・・・富田さん・・・気付いてた・・・

今考えてみれば、もしかしたら、果歩が水着の股部分につくってしまっていた小さな染み、その事も富田には気付かれていたかもしれない。

・・・どうしよう・・・富田さんに変な風に思われちゃったかな・・・

そんな事を考えながらも自分の手をそっと股間にもっていく果歩。

ザーーーーー・・・!

温度が温め(ぬるめ)のシャワーを体にあてながら目を瞑り(つむり)、秘裂に指を沿わせる。

ヌル・・・・

シャワーのお湯とは明らかに違うネットリとした液体が果歩の指に纏わりつく。

アルバイトが終って、更衣室で水着を脱いだとき、水着の股部分にベットリついていた粘液と同じもの。

ハァ・・・ァ・・・・

固定してあったシャワーのノズルを外して、そのまま自分の秘部に持っていく果歩。

昼に一度帰ってきた時には中途半端に終ってしまっていたシャワーオナニー。

ザーーーー!

「ァ・・・ァ・・・・はぁ・・・・ん・・・・」

片手をタイルの壁につけ、脚を少し開いてシャワーから勢いよく出てくるお湯を股間に当てる。

「ァ・・・はゥ・・・あ・・・・あっ・・・」

昨日からずっと我慢してた、ずっと燻っていたムラムラ感をただ開放することだけに集中する。

あぁ・・・は・・・ダメ・・・立ってられない・・・

やがてシャワーによる快感で脚がガクガクして痺れるような感覚を覚えた果歩。

・・・はぁ・・・   

一旦シャワーを股間から外し、自慰行為を中断した。

・・・ガタ・・・

浴用のイスに真っ白なお尻をおいて腰掛け、そこで果歩は大胆に脚をM字に開脚させた。

そしてシャワーのノズルを再び開脚させた股の中心に持っていく。

果歩はゆっくりと目を閉じ、一息つくと、シャワーのお湯の勢いを先ほどよりも強くしてそこに当てた。

「あッ!ん〜〜!ぁ・・・あぁ・・・・ハン・・・ぁ・・・」

先ほどよりも強い刺激が果歩の体を襲い、思わず喘ぎ声をあげてしまう。

「ァ・・・ァ・・・はァ・・・ココ・・・ハァ・・・」

しばらく続けているうちに自分のより気持ち良い場所、性感帯を見つけ出し、シャワーのノズルの角度を調節する果歩。

一番敏感なクリト○スには強くあてすぎると痛みを感じるが、丁度良い具合にあてたり離したりを繰り返すと気持ち良いことがわかってきた。

しかし、果歩が一日中、いや昨日からずっと待ち望んでいたあの感覚、あの快感の絶頂の波はまだまだ遠くにあるままだ。

シャワーオナニーは気持ち良いが、それだけでは果歩が望むあの頂には辿り着けないと、果歩は悟ったのだ。

ヴィーーーーンヴィーーーーンブーーーーー!

グチャ・・・グチャ・・・グチャ・・・・グチャグチャ・・・・

細かい振動音と粘液質な湿った音が響く部屋、その薄暗い部屋のベッドの上で果歩は白い裸体をくねらせていた。

「あっ!ンぁ・・・ぁ・・・ハ・・・・・あぁ・・・ア・・・・ァ・・・」

自らの手で紫色のバイブレーターを激しく抜き差しする果歩。

グチャ・・グチャ・・グチャグチャ・・・・

そしてその動きを徐々に速めていく。

片手はバイブレーター、もう片方の手はDカップの真っ白な乳房を揉みしだき、指は器用にその先端の勃起したピンク色の乳首を刺激している。

「あ・・・ァ・・・ハァ・・・ァ・・・気持ち・・・イイ・・・あっ・・・ん・・・」

バイブオナニーに没頭する果歩。

果歩は目を瞑り、頭の中である事を想像しながら自慰行為を行っていた。

それは、愛しい彼氏と愛し合う場面・・・ではなく、ただただ淫らな妄想、快楽だけを求める妄想・・・・

果歩が頭の中で性交をしている相手は、果歩のアソコに肉棒を抜き差し、激しい濃厚なセックスをしている相手は・・・それは、富田だった。

恋人の友哉ではなく、富田の逞しい身体をオカズにしてオナニーに没頭する果歩。

「アッアッアッ・・・・アン・・・ぁ・・・ハァ・・・富田・・・さん・・・」

ついに果歩は上気した表情で富田の名前まで口ずさんでしまう。

もうあの大きな波が、快感の絶頂の波がすぐそこまで来ている。

ラストスパートをかける様にさらに手の動きを速くして、一気に絶頂に達しようとする果歩。

ヴィーーーーーン!!!

グチャグチャグチャグチャ・・・・!!!

「アッアッアッアッ・・・・ん〜・・・あッ!!イ・・・ん・・・んあぁぁぁ!」

その瞬間、果歩の頭は真っ白な光に包まれた。

ベッドの上で白い裸体が大きく反り返る。

「あっ・・・ンーーー!」

果歩は3、4秒仰け反ったあとバタッと脱力し、身体を縮こまらせてビクビクと絶頂の余韻に反応していた。

「ハ・・・ン・・・ぁ・・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

ハァハァと、まるでマラソンを走り終わった後の様な息遣いをしている果歩。

果歩の股間付近は薄暗い部屋の中でテカテカと僅かな光を反射させている。

股間からお尻、太ももまでも自らの体液でベトベトに濡らしてしまっていた。

ベッドの上で裸のまま蹲る(うずくまる)果歩の目からは何故かツーっと涙がこぼれていた・・・。

25

「果歩ぉ・・・果歩?ちょっと、ねぇ果歩ぉ?」

「……え?」

いつものように大学の食堂で昼食をいっしょにとっていた果歩と知子。

毎度のようにくだらない事を知子が話し掛けるも、果歩は心ここに有らずといった様子だ。

「どうしたのよ?昼間からボ〜っとしちゃって。」

「う、ううん・・・別に、なんでもないよ・・・。」

「あっ!わかった!友哉君とケンカでもしたんでしょ?」

「え?ち・・・ちが・・・」

結局昨日は友哉からメールの返事はなかった。

しかし、果歩の気持ちが暗くなっていたのはそれだけが原因じゃなかった。

『アッアッアッ・・・・アン・・・ぁ・・・ハァ・・・富田・・・さん・・・』

昨日、たまりに溜まっていた自分の欲求を開放した時、頭の中で果歩は富田に抱かれていた。

そう、恋人の友哉ではなく、あのバイト先のオーナーである富田に。

自慰行為の後、ベッドの中でなんとも言えない罪悪感を感じ、涙を流した果歩。

頼りにしていた友哉がいなくなって、すぐにこんな風になってしまった自分の弱い心が嫌だった。

このタイミングで友哉からメールが来なくなったのも、そんな心に隙がある自分の責任ではないかと思ってしまうくらい果歩はマイナス思考になっていた。

「ふ〜ん、友哉君からメールが来なくなったかぁ。友哉君忙しいんじゃないの?」

「うん、たぶんそうだと思うんだけど・・・。」

「大丈夫よぉ、そんな心配しなくたって。あっそうだぁ!果歩、友哉君に電話してみたら?」

知子は明るい笑顔をつくってそう言った。

「電話かぁ・・・うん、そうしてみようかな。」

「きっと何かメールを送れない事情があったのよ。電話して声聞けば、すぐ安心よ。」

「うん、そうしてみる。ありがとう知子ちゃん。」

知子はいつも果歩をからかってばかりだが、肝心なときにはいつも真剣に相談にのってくれたり励ましたりしてくれる。

そんな優しい知子と友達になれて本当によかったと、果歩は心の底から思っていた。

その日、雑貨屋さんのアルバイトを終え、自宅アパートの部屋に帰宅した果歩。

部屋に入り、すぐにパソコンの前に行きスイッチをつけた。

もしかして帰ってパソコンをチェックすれば友哉からメールが届いていて、電話するまでもなく自分は安心を得られるのではないかと、果歩は心のどこかで期待していたのだ。

メール返せなくってごめん、という友哉からのメール。

パソコンが立ち上がるのを今か今かと、焦りにも似た気持ちで待つ果歩。

「……。」

無言の果歩、TOPページに新着メールの文字は出てこなかった。

念のため、メール受信ボックスも確認してみる。

カチッ…

マウスをクリックした音だけが部屋に響く。

「メール、きてないや……。」

ため息のような声だけを発した果歩。

小さいようで大きな期待を抱いていた事で、なんだかメールが来ていないのが余計にショックだった。

それと同時にさまざまな事が果歩の頭をよぎる。

友哉の身になにかあったんじゃ……。

しかし、正直なところ果歩の心配はそれだけじゃなかった。

昨日、頭の中でだけとはいえ、友哉以外の男性と交わってしまった事で、そのことが遠くにいる友哉に伝わってしまったのではないか。そんな事は普通はありえないのだが、どうしてもそんな風に思ってしまう果歩。

根拠もなにも無い事だが、とても悪い予感がしたのだ。

しかし、メールは来ていないから事の確認をするには電話をするしかない。

ベッドの上に座り、開いた携帯電話をじっと見つめる果歩。

友哉が無事であってほしいという気持ちが半分、そして果歩自身の罪悪感からきている不安から開放されたいという気持ちが半分。

とにかく、いつも通りの友哉の声を聞けば、いろんな意味での安心が得られるのだ。

そんな期待と不安を胸に、果歩は携帯電話のボタンを押し始めた。

番号を押し終え、携帯電話を耳にあてる果歩。

プル・・・プルルルル・・・・プルルルル・・・・・

ドキドキ・・・

なにか受験発表の時のような、息の詰まるような思いだった。

(大丈夫。きっと知子ちゃんの言ってた通りになるよ)

そう自分に言い聞かせながら友哉が電話に出るのをジッと待つ果歩。

早く友哉のあの声が聞きたい。

プルルルル・・・・プルルルル・・・・

しかし、友哉はなかなか電話にでなかった。

オーストラリアと日本はそんなに時差は無いはずだから、非常識な時間でもないはずだが。

(友哉、でないなぁ。もしかして寝ちゃったのかなぁ)

もちろんその可能性も十分あった。

(でない・・・明日、もう一回掛けてみようかな)

が、果歩がそう思って、電話を切ろうとした時だった。

プルルルル・・・・プル・・・ガザガザ・・・

突然コールする音が消え、電話が繋がったような音がした。

「あ・・・・もしもし?友哉・・・?」

『……。』

「あれ?もしもし・・・友・・・」

『もしも〜し!』

「え?」

やっと聞こえた声、それは日本語を話す女性の声だった。

『もしもしぃ?どちら様ですかぁ?』

一瞬頭がパニックになる果歩。

あ、あれ、もしかして、番号間違えたのかな・・・

「あ、あの・・・友哉の携帯・・・」

『あ〜そうだよぉ、友哉の携帯だよぉ。あ、もしかしてあなた、日本の友哉の友達?』

やはりこれは友哉の携帯だった。

でも、どうして女の人が友哉の携帯にでるの?

「あ、あの・・・友哉は?」

「あ〜ごめんねぇ、今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるからさぁ、電話コール長かったからでちゃ・・・」

カチャ・・・

女性の言葉を最後まで聞かずに果歩は携帯電話を閉じた。

「……。」

バタっとベッドに倒れ天井を見つめる果歩。

友哉の声が聞きたかった……。

・・・どうして・・・?

「友哉・・・・・。」

なんとも言えない思いが胸の奥から込み上がってきて、大粒の涙が溢れてくる。

シーンと静まりかえった部屋の中で果歩のすすり泣く声だけが響いていた。


【寝取られ】遠距離恋愛している間彼女が喰われる話 4 【NTR】

$
0
0

26

「はぁ・・・・。」

ため息をつきながら自分の部屋でアルバイトに行くための準備をする果歩、鏡のまえで身なりを整える。

鏡に映る自分の顔は前より少しだけ痩せて見えた。

この2日間まともな食事を摂れなかったのだ。摂れなかったというより、ごはんが喉を通らなかったというべきか。

あれから2日間、果歩は大学とアルバイトを休んでいた。

友哉の携帯に電話したあの夜は、涙が枯れてしまうほど泣き続けた。

次の日、大学に行く時間になっても、体と心が重く感じてとても行く気にはなれなかった。

知子は心配して電話を掛けてきてくれた、果歩が涙声で『大丈夫だから』とだけ伝えると『大丈夫じゃないでしょ』と言って、その後果歩のアパートまでケーキを買って持ってきてくれた。

その時の知子はとても優しくて、一生懸命果歩を励ましてくれた。

そして土曜日の今日、知子の励ましのおかげで少し元気を取り戻した果歩はトミタスポーツのアルバイトに行く事にしたのだ。

しっかりしなきゃと自分に言い聞かせる果歩、それに、アルバイト先にもこれ以上迷惑をかけられない。

だけど・・・

あれから3日、友哉からは折り返しの電話どころか、メールの返事もない。

『今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるからさぁ』

あの時の女性の声、言葉が、思い出したくもないのに頭の中で何回も再生される。

浮気・・・

あの友哉が浮気なんて・・・

そう思うだけで、すぐ眼に涙が溜まってしまう。

グッと目を瞑り、その事を頭から必死に消そうとする果歩。

「もう、バイト行かないと……。」

溢れそうな涙をグッと堪えて、果歩は自宅アパートを出た。

「おぉ!果歩ちゃん!体調大丈夫かぁ?」

トミタスポーツに着いた果歩、スタッフルームの入り口付近で、ここのスタッフで面接の時も同席していた山井に声を掛けられた。

「はい、もう大丈夫です。ご迷惑かけてすみませんでした。」

体調を聞かれたのは、アルバイトを急に休んだ理由を風邪をひいたという事にしておいたためだ。

「そっかぁ、じゃもう普通にバイトの仕事今まで通りできるんだね?」

「はい、大丈夫です、もう完璧に治りましたから。」

「じゃあ、今日はプールの監視員の仕事頼んでいいかな?仕事内容は確かこのまえ富田さんに教えてもらったよね?」

「監視員・・・ですか。」

「うん、まぁほとんど座ってるだけだし、できるよね?」

「は、はい・・・わかりました。」

確かに監視員の仕事は楽すぎるほど楽だ、しかし果歩は気が進まなかった。

「はぁ、またこれ着ないといけないんだぁ・・・。」

更衣室のロッカーの前で、ため息をする果歩。

手に持っているのは、先日も身に着けた果歩の体には少しサイズが小さめの競泳用水着だ。

先日の事を思い出す果歩、自分の身体に向けられる男性会員たちからの視線、そして富田。

富田の身体を見て、淫らな想像をして水着に染みをつくってしまった自分自身のことを思い出す。

しかし、仕事を引き受けた以上、この水着を着ないわけにはいかない。

そう小さな覚悟を決め、果歩は身に着けている衣服を脱いでいった。

・・・やっぱり・・・

室内プールに出てきた果歩は、案の定、複数の男性会員達からの視線感じた。

嫌悪感ではない、しかし、とても恥ずかしかったのだ。

上はTシャツを着ているものの、下半身のハイレグ部分と、水着が小さいために若干食い込んでしまっているお尻の部分、男性会員達の視線は特にそこに集中している。

・・・やっぱこんなの恥ずかしいよぉ・・・

・・・早く監視台に座っちゃお・・・

監視台の椅子に座ってしまえば、下半身を見られることはほとんどない。

果歩は少し小走りぎみで監視台に向かった。

「あれ、果歩ちゃん?」

監視台に向かっていた途中、後ろから名前を呼ばれて果歩は振り返った。

「あ、秋絵先輩?」

そこにいたのは、秋絵だった。しかも秋絵は水着姿、水着は果歩の水着と同様の競泳水着のようだった。

「フフ、果歩ちゃん今日は監視員の係?」

「は、はい。」

果歩は秋絵の水着姿に見とれてしまっていた。

・・・すごい・・・秋絵先輩モデルみたい・・・それに・・・

それに秋絵のプロポーションからは、女の果歩でもドキっとしてしまうような、何か成熟した大人の女性の雰囲気のようなものを感じた。

「果歩ちゃん大丈夫?実は知子ちゃんに食堂で会ったからちょっと聞いちゃったんだけど、果歩ちゃん、友哉君との事で悩んでて休んでるって。」

秋絵は心配そうな表情で果歩を見ながら言った。

「え、知子ちゃんが?・・・はい・・・あの・・・ちょっと・・・」

その事を聞かれ、果歩の顔が少し曇る。

なんだか、こんな場所でも、友哉の事を少しでも思い出すだけで泣きそうになってしまう。

「そっかぁ、私でよかったらいつでも相談のるからね、遠慮なく言ってね。」

「は、はい。ありがとうございます。」

秋絵からそんな風に声を掛けてもらえたのは正直うれしかった。

知子にも励ましてもらったが、自分の中に何か詰まったような思いを、果歩は誰かに吐き出したかったのかもしれない。

尊敬し、憧れている秋絵になら、その詰まったものをすべて曝け出す事ができるような気がした。

そして秋絵なら、そのすべてを受け止めて、いい答えを導きだしてくれる様な気もしたのだ。

「なになに?果歩ちゃん恋の悩みかい?」

「え!?」

突然聞こえた後ろからの男性の声。

いつの間にかすぐ後ろに来ていたその男性の声に聞き覚えのある果歩は少しビックリして後ろに振り向いた。

「な〜んだ、じゃあ果歩ちゃん休んでたのは風邪じゃなかったのかぁ」

その声の主は先日同様、ビキニパンツの水着姿の富田だった。

27

「あ・・・すみません・・・あの・・・」

「ハハッ!いいのいいの!果歩ちゃんくらいの年頃は恋の悩みは多いもんだしねぇ。」

バイトの欠勤の理由が嘘だった事を正直に謝る果歩に対し、富田はそんな事は気にしてないよ、といった感じの反応を見せた。

「そうかぁ、そういえば果歩ちゃん、彼氏と遠距離恋愛中だったもんなぁ。」

「は、はい・・・」

果歩は一瞬富田の方を見たがすぐに目線を外して下に俯いてしまった。

プールからあがったばかりの、水の滴る富田の逞しい肉体を果歩は直視できない。

チラッと富田の身体を見ただけで、先日の自分の自慰行為を思い出してしまう・・・。

あの時、果歩は自分が富田に抱かれているシーンを想像して行為に及んだのだ。

そう、今目の前にいる富田の身体をオカズにしてオナニーをした。

あの夜の事を思い出すと、恥ずかしくて富田とまともに会話できそうにない。

下を向き顔を赤らめている果歩。

富田はそんな果歩の身体を上から下までジロ〜っとイヤらしい細めた目で見つめる。

そして富田は秋絵の方を見ると、なにか目で合図を送った。

秋絵も富田のその合図に小さく頷く。

「ねぇ果歩ちゃん、今日バイト終ったらちょっと飲みにでも行かない?明日は学校もバイトもお休みでしょ?」

「飲みに、ですか・・・?」

「そうそう!こういう時はパァっと楽しくお酒を飲んで、ストレス発散した方がいいわ。ですよね?富田さん。」

秋絵は明るい表情でそう言い、富田のほうを見た。

「ハハッ!そうだよぉ!よし!今日は俺が奢る(おごる)よ!」

明るく振舞う富田と秋絵、果歩は自分を元気付けようとふたりが誘ってくれているのだと感じた。

「でもそんな・・・なんか申し訳ないです。」

しかし果歩は正直そんな気分ではなかった、今日はバイトが終れば自分の部屋でまた一人で泣きたい気分だったのだ。

泣けば少しは気分がスッキリする。

嫌な事を忘れるためのお酒なんて、果歩は今まで経験したことがなかったため、なんだか気が進まなかったし、それで気分が晴れるなんて思えなかった。

「フフ、大丈夫よ、富田さんお金だけはたくさん持ってるから。」

「おいおい!お金だけってなんだよぉ!ハハッまぁ2人を奢るくらいの金は財布にあるけどなぁ。」

秋絵の言葉に対し富田は笑いながらそう言った。

「フフ、ね?果歩ちゃん、富田さんもそう言ってるし、どうかな?」

もうこうなってしまっては断るわけにはいかない。

「ホントに、いいんですか?」

「もちろん!」

富田が景気良くそう答える。

「じゃあ今日はいつもより早めに仕事あがって飲みに行くかぁ!」

「え、でもお仕事は・・・。」

早めにあがると言っても、他のスタッフの方に迷惑が掛かるのではないかと、果歩は心配そうな表情だ。

「いいのいいの!オーナーの特権特権!ハハッ仕事は他の奴に任せればいいから!」

「富田さんホント仕事いいかげんですよねぇ。」

「いいんだよ!じゃあ、果歩ちゃん、いつもより一時間早くあがっていいから、着替えたら、スタッフルームで待ってろよな?」

「はい。」

・・・飲み会かぁ・・・

監視台の椅子に座る果歩、今日もこの仕事は相変わらず退屈だ。

ボ〜っとプールを眺める。

そんな退屈すぎる時間、時計の針の動きが遅く感じる。

そんな時間を過ごすうちに、いつしか水色のプールを眺めていた果歩の視線は、お客さんに泳ぎ方を指導している富田に向いていた。

『果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?』

ハっとして果歩は慌てて富田を見ていた視線を外した。

先日富田から言われた言葉を思い出したからだ。

どうしてだろう・・・無意識のうちに富田を見つめてしまっていた。

・・・今は友哉の事で頭がいっぱいなはずなのに・・・

恋・・・じゃない・・・

富田に対する果歩の思い。

それが単に性の対象として富田を見てしまっているという事に、自分で果歩はしっかりとした自覚はなくても、心のどこかでわかっていたのかもしれない。

友哉の事で心が疲れきってしまっているというのに・・・

そんな自分の気持ちに、先日の自慰行為の後と同じような罪悪感を感じる果歩。

富田さんは悪い人じゃない、というか富田さんはいい人だもの・・・

でも、富田を見て、変な気持ちになっている自分が、まるで心の中で浮気をしてしまっているようで、自分で自分を許せなかった。

・・・でも・・・友哉は・・・友哉だって・・・

その日、富田と秋絵が提案してくれた飲み会、メンバーは富田と秋絵と果歩、そしてスタッフの中で特に富田と親しい山井の4人だった。

富田は居酒屋の個室を予約していてくれた。

その居酒屋は料理の値段はそこそこするようだったが、味は申し分なく美味しかった。

そんな美味しい料理だから、自然とみんなお酒も進む。

富田 「さぁさぁ!今日は果歩ちゃんを励ます会なんだから、果歩ちゃん、さぁ飲んで飲んで!」

果歩 「あ・・・はい、ありがとうございます。」

秋絵 「富田さんあんまり果歩ちゃんに飲ませすぎちゃダメですよ。」

山井 「まぁまぁ、いいじゃん、俺果歩ちゃんが酔いつぶれるところ見てみたいし。」

果歩 「そ、そんな・・・だめですよ・・・」

富田主催のこの飲み会、果歩にとっては意外と楽しいものになっていた。

富田と山井の話は面白いものだったし、秋絵が少し暴走気味の2人のブレーキ役になってくれている。

暗く落ち込んでいた果歩の心が、少しずつ晴れていくようだった。

友哉の事も、今は思い出すこともない。

果歩も楽しい気分でお酒が進む。これがアルコールの効果なのか、飲めば飲むほど楽しく感じる。

富田のススメもあり、果歩は今まで経験した事が無い程の速いペースでお酒を口にしていた。

コースで出されていた料理もすべて食べ終り、デザートを口にしていた4人。

腕時計を見た富田が口を開いた。

富田 「さて、そろそろ次!二次会行こうか!」

果歩 「え・・・二次会ですか?」

山井 「そうそう、トミタスポーツの飲み会の二次会はいつも富田さんの部屋でって決まってるんスよね?」

富田 「ハハッそうだよ、俺の部屋なら酒もいっぱいあるしなぁ。」

果歩 「富田さんの部屋・・・ですか・・・?」

秋絵 「果歩ちゃん、私も行くから、二次会も富田さんの部屋でどう?」

果歩 「ん〜っと・・・どうしようかな・・・」

秋絵 「明日は休みだし、今日はパァっとやりましょ?ね?」

山井 「そうそう!今日はなんたって果歩ちゃんが主役なんだから。」

確かに明日は休みだし、今はとても楽しい時間を過ごせている。

果歩はもう少しこの時間を味わいたいと感じていた。

果歩 「それじゃ・・・はい・・・いいですか?」

富田 「よ〜し!果歩ちゃんからOK出たし、おい山井!タクシー呼べ!」

山井 「了解しましたぁ!」

威勢がいい男ふたり、その顔はニヤっとなんともイヤらしい表情をしていた。

この後の事を考えると2人は笑いを堪えることができなかったのだ・・・。

28

富田 「まぁ、適当なところに座ってくれよな。酒とつまみ持ってくるわ。」

盛り上がった居酒屋での飲み会の後、二次会として4人が向かったのは富田のマンションの部屋だった。

果歩 「わぁ〜広い部屋ですねぇ!」

富田が住んでいるマンションは、まさに高級マンションと言っていい。

先日果歩が訪れた秋絵のマンション、その部屋も高級感があり広々としていたが、富田のマンションはそこ以上に豪勢で広い部屋だった。

山井 「うらやましいよなぁ。こんな所に住めるなんて。」

果歩 「本当ですね。」

果歩は大きなソファに腰を下ろし、キョロキョロと辺りを見渡している。

部屋が広いだけじゃなく、置いてある家具も高級そうなものばかりだ。

富田 「ハハッ!でもまぁ、これはこれで、掃除とか大変なんだぜ。」

秋絵 「フフ・・・富田さんホントに自分で掃除してます?この前はお手伝いさんに頼んでるって言ってませんでした?」

富田 「ハハッ!まいったなぁ、秋絵ちゃん余計な事言わんでくれよぉ!」

やはりトミタグループの社長の息子であり、トミタスポーツのオーナーでもあるのだから経済的に恵まれているのは当然だった。

こんな遊び呆けているような人間が、このような恵まれた生活を送っていることに苛立ちを感じる人も多いはず。

しかしそんな富田の事を、お人好しの果歩は特に嫉んだりする事はなかった。

むしろ果歩の目には、富田はトミタスポーツのオーナーとして立派に働いているように見えていたため、尊敬のような気持ちさえあった。

最初の居酒屋に続き、二次会も富田が用意してくれたおいしいお酒とつまみ、それに富田と山井の面白いトークで盛り上がっていた。

果歩も辛いことがあった反動なのか、これまで飲んだことがないくらいお酒も進み、頬をピンクに染め、富田と山井の話を聞きながら笑っていた。

・・・やっぱり参加してよかった・・・秋絵先輩も富田さんもこうやって元気づけてくれて・・・やさしいなぁ・・・

果歩は心の中で富田や秋絵に感謝した。

今日は帰っても部屋でひとりで泣くだけだったはずが、今はこんなにも楽しい気分でいられるのだから。

今この時間だけは嫌なことも忘れられる。

4人とも大分お酒を飲み終えて、盛り上がっていた時間から少し落ち着いて、みんなソファに座りゆったりとした時間になった時、富田がふいに口を開いた。

富田 「それにしても、大変だよなぁ果歩ちゃんも、遠距離恋愛ってのは。」

果歩 「え・・・あ・・・はい・・・。」

突然富田にそんな事を言われ、友哉の事を思い出してしまい果歩の顔が少し沈む。

秋絵 「富田さん、そんな事言ったら果歩ちゃん嫌な事思い出しちゃうじゃないですかぁ。」

富田 「あ・・・あはは・・・あ〜ごめんごめん!そんなつもりじゃなかったんだけど。」

富田はばつの悪そうな顔で慌てて謝った。

果歩 「い、いいんです・・・別にそんなお気遣いして頂かなくても・・・。」

秋絵 「フフ・・・あ、そうだぁ果歩ちゃん。彼との事、富田さんと山井さんにも相談してみたら?一応私達より恋愛の経験値はあるだろうし。」

山井 「ハハッ!一応じゃなくて、ありまっせ〜経験値、特に富田さんは。そうっスよね?」

富田 「おうおう!果歩ちゃん、俺達でよかったら相談にのるぜ?恋愛相談なら馴れたもんだからさ。」

果歩 「で、でも・・・そんな・・・」

そんな事を言われても、富田達に言ったところで状況が変わるとは思えなかったし、せっかく楽しい飲み会を暗い雰囲気にしてしまうのではと、果歩は思った。

秋絵 「ねぇ果歩ちゃん、今日は果歩ちゃんを励ます会でもあるんだし、ここで思っていること全部言っちゃえばきっと気分も楽になるわよ、ね?富田さん達がしっかり受け止めてくれるわ。そうですよね?富田さん?」

「そうそう!誰にも言わずに悩みを溜め込んじゃうのはよくないぜ?」

確かにそうかもしれない・・・ここで胸に詰まった苦しい思いを吐き出してしまえば少しは楽になれるかもしれない・・・

アルコールが回っていたせいもあるかもしれないが、果歩は誰かに今の自分の状況を擁護してもらいという気持ちになっていた。

こんなかわいそうな自分を慰めてほしいという弱い心に。

富田 「そうかぁ、彼氏の電話に女がねぇ……。」

山井 「いやぁマジこんな可愛い彼女がいるのに浮気とかありえないっスねぇその彼氏。」

秋絵 「私が知っている限り、友哉君はそんな事するような子には思えないだけどねぇ。すごいマジメな子よね?友哉君って。」

果歩 「はい・・・私もそう思ってたんですけど・・・。」

友哉はそんな人じゃない・・・あの優しくてまじめな友哉がそんな事するはずがなかった・・・

そんな事するはず・・・

しかし、あの電話に出た女性・・・・あの言葉は・・・

『今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるから・・・』

山井 「甘い!甘いなぁ〜果歩ちゃんと秋絵ちゃんは、男なんてそんな美しい生き物じゃないんだぜ?」

富田 「ハハッ、まぁなぁ。」

山井の言葉に富田はごもっともといった感じで頷いている。

山井 「どんだけ真面目そうな男でも溜まるもんは溜まるしねぇ。」

果歩 「え・・・たまる・・・?」

富田 「ハハッ果歩ちゃん、果歩ちゃんだって男がある事をしないと溜まってちゃうモノがある事くらい知ってるだろ?」

果歩 「え・・・そ、それは・・・。」

もちろん、果歩もそれが何なのかは理解できたが、恋愛相談のはずが突然の下の話に、果歩は顔を赤らめる事しかできなかった。

29

秋絵 「フフ、2人ともなんで急に下ネタなんですか?これは恋愛相談ですよ?」

言葉に詰まって困っていた果歩を見て、秋絵は男ふたりに言った。

富田 「ハハッ果歩ちゃん、恋愛の話と性の話は深く結びついてるんだよ?」

果歩 「・・・そう・・・なんですか・・・?」

果歩は富田の言っている意味がよくわからなかったのか、首を傾げている。

山井 「まぁさ、果歩ちゃん、男はあれが溜まってムラムラしているところに、セクシーな女とかが近づいてきたら、だいたいヤっちゃう可能性が高いんだよねぇ。」

富田 「残念ながら遠距離とかで彼女に会えない奴なんてとくにね。」

果歩 「そ・・・そんなぁ・・・。」

・・・そうなの?・・・男の人ってみんなそうなの・・・?

アルコールのせいで涙脆く(なみだもろく)なっていたのか、果歩は男ふたりの言葉を聞いて目に涙を浮かべていた。

富田 「まぁ果歩ちゃんさ、果歩ちゃんはまだ若いんだし、何事も経験さ。今回の彼氏の事は残念だったけどさ。」

果歩 「・・・・・・・。」

富田 「女の子はいっぱい恋をしたり、いろんな経験して魅力的な大人の女になっていく訳だし。今回のことも、その一部だと思ったほうがいいよ、な?」

秋絵 「そうよ果歩ちゃん、恋も他のいろんな事もたくさん経験した方がいいわ。いい大人の女性になって、友哉君を見返すくらいにならないと。だから今回の事も、いい経験だと思ったほうがいいわ。」

果歩 「・・・でも・・・私は・・・友哉の事が・・・。」

友哉の事をそう簡単に忘れられることなど、今の果歩にはまだできるはずもなかった。

秋絵 「まだ無理して友哉君の事を忘れようとしなくていいの、時間を掛けてゆっくりでいいのよ、ゆっくり・・・。」

果歩 「・・・ハイ・・・。」

果歩は消え入りそうな小さい声で、悲しそうに返事をした。

山井 「そうそう!浮気してた彼氏の事なんてはやく忘れて、新しい幸せを見つけたほうがいいっしょ!」

新しい幸せと言われてもピンと来なかった。

これは果歩にとって初めての失恋だったからかもしれない。

失恋の後の対処法を何も知らないのだ。

・・・新しい恋人を見つけるって事・・・?

・・・でも今はとてもそんな気分じゃ・・・

富田 「まぁとりあえず今日はさ、果歩ちゃんが早く彼氏の事を忘れる事ができるように俺達が協力するからさ。ささっ飲んで飲んで。」

そう言いながら富田は果歩の隣に座ると、果歩が使っていたグラスに新たにお酒を注いだ。

果歩 「あっ、富田さん、もう私は・・・。」

もう結構飲んだ後だ。

今日の果歩はすでに今までにないくらいアルコールを摂取してしまっていた。

これ以上飲むのは少し怖い気がする・・・

富田 「いいじゃんいいじゃん、たまには、この酒うまいんだぜ?」

果歩 「じゃあ・・・後一杯だけ・・・。」

断れない性格の果歩、これだけ進められたら、あと一杯くらいは飲まない訳にはいかない。

ゴク・・・ゴク・・・

富田 「お〜いいねぇ!いい飲みっぷりだねぇ!」

グラスを口に運び、半分ヤケになった様に一気に入れられたお酒を飲み干す果歩。

もう今夜は・・・今夜だけは、ここにいる先輩達に甘えてもいいかも・・・と果歩は思い始めていた。

・・・はぁ・・・熱い・・・なんだか体が熱くなってきた・・・

どうやら富田がさっき注いだお酒はアルコール度数がかなり高めのお酒だったらしい。

ちょっとだけ覚めかけていたアルコールが再び効き始め、頬がさらにピンクになっていく果歩。

秋絵 「フフ、でもねぇ果歩ちゃん、女の子にはまだ果歩ちゃんが知らないような幸せがいっぱいあるのよ。」

富田とは反対側の果歩の隣に座った秋絵がポ〜っとアルコールが回ってきている果歩に話しかけた。

果歩 「・・・私がまだ知らない幸せ・・・・ですか・・・?」

ボ〜っとする頭で考えてみても秋絵の言っている意味がよくわからなかった果歩。

その時、秋絵は何やら怪しい笑みを浮かべて、果歩に気付かれないようにして山井に目で合図を送った。

山井はその合図を確認すると、ニヤっと笑い口を開いた。

山井 「そういや、彼氏の事は置いておいても、果歩ちゃんは大丈夫なの?」

果歩 「え?・・・大丈夫って何がですか?」

富田 「ハハッ、そうだよなぁ、果歩ちゃんも女の子とはいえ、年頃だもんなぁ。」

富田と山井がニヤニヤと笑みを浮かべているが、果歩はその意図する事が何なのかサッパリわからない。

山井 「果歩ちゃんもさ、彼氏と遠距離ってことは、いろいろと溜まってんじゃないのぉ?」

果歩 「えっ……?」

富田 「ずっとしてないんじゃ、溜まってるんだろ?果歩ちゃんも。」

果歩 「え?え?・・・な、なに言い出すんですか2人とも・・・。」

男ふたりの質問の意味がわかった果歩は、カァっとピンク色だった顔色を赤色に変えて言った。

というか、こんな質問は普通、男性が女性に面と向かって言うことではないと思った。

秋絵 「フフ、ちょっと2人とも質問がストレートすぎますよ。」

困り果てる果歩をフォローするように秋絵が富田と山井に言った。

山井 「ハハッごめんごめん!でもさ、実際問題あるだろ?果歩ちゃんだってムラムラする事。」

果歩 「・・・そ・・・それは・・・。」

正直者で嘘をつけない性格の果歩は、そんな事ありませんとは言えずに言葉に詰まってしまう。

富田 「清純で可愛い果歩ちゃんも人間だもんなぁ、果歩ちゃんがそういう時どうやってムラムラを処理してんのか興味あるわぁ!」

果歩 「と・・・富田さん・・・・。」

あまりに直接的な富田の言葉にもう恥ずかしくてしかたない様子の果歩。

いや恥ずかしいと言うより、もうこれはセクハラのようなものだ。

しかしここで、今まで男ふたりの下ネタから果歩を守ってくれていた秋絵が信じられない言葉を口にする。

秋絵 「フフ、果歩ちゃんは……果歩ちゃんはムラムラしたらバイブオナニーで処理してるんだよねぇ?」

30

果歩 「あっ秋絵先輩!!?」

果歩は自分の耳を疑った。

秋絵が今言った事、あの事は心を許した女の子同士の秘密だったはず。

秘密だったはずというか、常識的に暗黙の了解で秘密のはず。

山井 「うっわ〜マジ!?果歩ちゃんバイブ使ってんの!?」

富田 「ハハッていうか、果歩ちゃんがオナっちゃてるって事実だけでなんかすごいな。」

果歩 「え?あ…あの……。」

もう恥ずかしいどころではない。

それにアルコールで意識ボーっとしているのもあり、思考もうまく回らない。

パニック状態の果歩は富田と山井に何を言われても返す言葉が見つからなかった。

秋絵 「これだけ可愛い果歩ちゃんも人の子だものね、いいのよ果歩ちゃん、それぐらいの事は女の子でもほとんどの子はしてるわ。」

果歩 「秋絵先輩……でも、どうして・・・?」

・・・どうして富田さんと山井さんの前でそんな事・・・

秋絵 「フフ・・・ごめんね、果歩ちゃん。でもね、果歩ちゃんが大人の女性に一歩近づくにはこういう勉強も必要なのよ?」

果歩 「・・・秋絵先輩・・・よく言ってる意味が・・・勉強って・・・?」

秋絵 「だからね、女の子だってエッチな勉強は少しはしないとね。男の子が逃げてっちゃうのよ。」

果歩 「・・・でも・・・私は・・・。」

秋絵 「友哉君がなぜ浮気しちゃったのかはわからないけど、これからのために果歩ちゃんはもう少し知識と経験を増やしておいた方がいいと思うわよ?」

果歩 「そんな事・・・言われても・・・。」

確かに同年代の周りの子と比べれば果歩はそういった事の知識も経験も少なかった。

・・・でも・・・だからって・・・私がそんなだから友哉は他の女の子と?・・・そんな・・・・

秋絵 「幸いここにいるお二人さんは、知識も経験も豊富だしね。」

富田 「よ〜し果歩ちゃん!俺達で良かったらいくらでも協力するぜ?なぁ山井?」

山井 「もちろんっスよ!果歩ちゃんのためなら何でもするって。」

そう言って果歩に詰め寄ってくる男ふたり。

果歩 「えっ!?…ちょ、ちょっと!待ってください!」

果歩は反射的に逃げるようにソファの背もたれの方に身体を引いた。

話が想像もしてなかったあらぬ方向へ進み始めて、果歩の頭の中はさらにパニック状態になっていた。

果歩 「あの…なんか、話が変な方向にいってません?」

秋絵 「フフ、果歩ちゃん、もしかして果歩ちゃんは友哉君と付き合っていてもこういった事は全部受身だったんじゃない?」

果歩 「…それは…。」

そう言われれば、友哉との交わり時はすべて友哉に任せて、友哉の言う通りにしていただけだった。

しかしそれは、果歩は知識も経験もなく、恥ずかしがり屋でもあったため仕方がなかった事かもしれない。

富田 「ハハッなるほどね、果歩ちゃんは彼氏にまったく自分の気持ちを解放していなかったって事だな?それじゃ彼氏さんがちょっと気の毒だなぁ。」

果歩 「…解放って言われても…。」

なんだかこれでは果歩が性に疎いせいで友哉が浮気したんだと言われているようだ。

山井 「男ってのは相手に気持ちよくなってもらってなんぼだからなぁ・・・果歩ちゃんが気持ちを解放してくれなかったら・・・彼氏の気持ちも盛り上がらないよなぁ。」

果歩 「そんな事言われても・・・。」

確かに友哉の前で果歩はそんなに乱れた姿を見せた事はない。

秋絵にもらったバイブレーターでのオナニー。
あの時のような興奮は友哉との性交で感じた事はない。

・・・でも、それって私が悪いの・・・?

友哉にまかせっきりだったから・・・?

秋絵 「フフ、果歩ちゃんは友哉君にフェラチオもしてあげた事ないんだよね?」

果歩 「・・・ハイ・・・。」

フェラチオ、男性器を口に含んだり舌で刺激したりする行為。

果歩は知識としては知っていても実際に友哉にしてあげた事はなかった。

それは友哉から頼まれたこともなかったし、もちろん恥ずかしがりやの果歩から積極的に行為に及ぶことなどあるはずがなかった。

しかし、果歩の本心では、フェラチオに興味がないわけではなかった。

それどころか先日、果歩は男根の形を模ったバイブレーターをまるでフェラチオをするように口に含んで舐めていたのだから。

山井 「え〜マジ?果歩ちゃん彼氏にフェラしてあげたことないの!?あ〜そりゃ彼氏かわいそうだわぁ!」

富田 「今時フェラチオしないカップルなんて珍しいよなぁ?」

果歩 「そ、そうなんですか・・・。」

なんだかさっきから果歩は自分ばかり責められているようで、今にも泣きそうであった。

しかしその一方で、富田達が言うとおり、性に消極的な自分に友哉は不満を抱いていたのかもしれない、と思うようになっていた。

秋絵 「フフ、果歩ちゃん、じゃあ果歩ちゃんのこれからの恋愛生活のためにも、ちょっとここで練習してみない?」

果歩 「練習・・・ですか・・・?」

秋絵 「そう、フェラチオの練習をね。」

【学校】無花果 -The faith of strip-【教室】

$
0
0

主なる神が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。
蛇は女に言った。

「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」

女は蛇に答えた。

「わたしたちは園の木の果実を食べてもよいのです。
 でも園の中央に生えている木の果実だけは、
 食べてはいけない、触れてもいけない、死んではいけないから、
 と神様はおっしゃいました。」

蛇は女に言った。

「決して死ぬことはない。それを食べると、目が開け、

 神のように善悪を知るものとなることを神はご存じなのだ。」

女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、
賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、
一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。
二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、
二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。

「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。
 今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、
 永遠に生きる者となるおそれがある。」

主なる神は彼をエデンの園から追い出し、彼に、
自分がそこから取られた土を耕させることにされた。
こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、
エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。

           (旧約聖書創世記第3章より一部抜粋)

    無花果  − theFaithofStrip −

   イチジク  ザ・フェイス・オブ・ストリップ

 *********************************************

    第壱章 中学時代 −Hedgehog’sDilemma−

 *********************************************

「蒼い空に… 雲は流れ… かぁ…。」

  空
     蒼いモノ…
          美しいモノ…
  雲            透き通ったモノ…
     白いモノ…           落ち着くモノ…
          綺麗なモノ…
  光            混じりけのないモノ…
     輝くモノ…           純粋なモノ…
          眩しいモノ…
               暖かく包むモノ…
                       形のないモノ…

少年は、空を見ていた。
何の意味もなく、ただボーっと…。

退屈な時間
意味のない毎日
価値のない人生

そんな日常がずっと続いていくのかと思うと、
何もかもやる気が出ない…。

「緒方くん!」
「緒方翔くん!!」
「オガタショウくん!!!」
「あ… はい…。」

チョークを片手に教壇に立って彼を睨む女教師は、
彼の間の抜けた返事を聞いて軽くため息をついた。

「この問題、前に出てきて解いてくれる?」
「……わかりません。」

特に何にも考えずに呟いた。
女教師は呆れ顔でやむなく次の生徒を指名した。

「しょうがないわね…。
 じゃあ、西濱さん。」
「はい。」

落ち着いた声で小さく返事をした少女は、
静かに席を立ち、黒板にスラスラと問題を解き始めた。

「うん、いいわね。正解よ、西濱さん。」
「おお、すげ〜」 「やっぱ頭いいわね〜」

少女は静かに席に座った。
教師に褒められても、同級生に囃し立てられても、
少女は笑顔ひとつ見せることはなかった。

寡黙な美少女…。
彼女の名前は『西濱 綾』
クラス一の秀才で、容姿端麗。
先程の少年『緒方 翔』とは幼馴染だ。
とはいっても、幼稚園の頃からの知り合いだというだけで、
特に深い付き合いもないし、何より彼は彼女の笑顔を一度だって見た事はなかった。

「翔ぉ!!
 あんた何やってるわけ!?」

休み時間になった途端に、うるさいのが来た。

「あ〜んな簡単な問題が解けないだなんて、
 あんた受験生としての自覚あるの? まったく!」

この長髪の少女も、先程の少女と押しも押されぬほどの容姿だ。
だが、性格は正反対のようである。

「あんな問題が解けるのは、うちのクラスじゃ
 西濱と緋村くらいだよ。」

しかし少女は彼の言い分などまったく聞く気がないようだ。

「はっ、ど〜せ、ボケーっとしてスケベな事でも考えてたんでしょ!」
「そ、そんなんじゃないよ!」

翔は慌てた。大勢のクラスメイトの前で、なんて事を言うんだ…。
勝気な美少女…。

彼女の名前は『緋村 美優』
美しく、優しい… なんて名前とは裏腹に、
彼女は何かにつけては翔に小言を言う。

「えっと… 次の時間はっと…」
「次は体育よ。
 あんたは運動オンチなんだから、真面目にやんなさいよっ!」

確かに本当のことだが、少しカチンとくる。

「うるさいなぁ、もう…」

翔は美優が苦手だ。

「じゃあ、あたし行くわよっ!
 更衣室覗いたら、ただじゃおかないんだから!!」

だいたい美優がどうのこうの以前に、更衣室を覗けばまず間違いなく、
教師に説教されたり親を呼び出されたり、面倒な事になるだろう。
翔は面倒な事は嫌いだ。

「他の男子も! わかってるわね!?」

そんな大きな声を出さなくったって、みんな聞こえているのに…。

「自意識過剰なんだよ、緋村は…。」

翔はポツリと呟く。

「な、なんですってぇー!!」

美優は顔を真っ赤にして怒った。
が、そこに他の女生徒が助け舟。

「美優、先行くわよー!」
「あ、恵ぃ〜、まってーっ!!」

美優は親友の恵を追いかけ教室を出て行った。

「ふぅ…」

ようやく一息つけた翔。

「ハハッ まったく緒方と緋村はラブラブでいいよなぁ。」
「そ、そんなんじゃないよっ!」

美優ともめた後は、必ずクラスメイトにからかわれるから
翔にとってはいい迷惑である。

「おい緒方、早くしないと次の時間間に合わないぞ!
 俺は先に行くからな。」
「あ、急がなきゃっ!
 先に行ってていいよ、栗原。」
「ああ。急げよ!」

翔はくたびれた鞄の中から体育着を取り出した。
この中学校では、女子には更衣室があるが
男子は教室で着替えなければならない。
翔は急いで体育着に着替えてグラウンドへ向かった。

キーンコーンカーンコーン

「はぁ… 鳴っちゃったよ…。」

案の定、翔がグラウンドに着く前に鐘が鳴ってしまった。
女子は着替えの事を考慮して多少遅れても許されるが、男子は遅刻厳禁。
ま、世の中そんなもんである。

「緒方!遅いぞ!!」

体育教師の怒鳴り声。
翔が着いたときには、他の男子はもうみんな教師の前に整列して、
体育座りをして待っていた。
体育教師は腕を組んで鬼の形相を浮かべている。
どうして少し遅刻したくらいで、いちいちそんなに怒るんだろう。

「…すいません。」
「声が小さい!!
 お前、やる気あるのか!!」
「ないです。」

思わずポロリと出てしまった本心に、翔はハッとした。

「あ、いや、その… なんでもありません…。」

クラスメイトたちはクスクス笑っていたが、
教師は怒り心頭だった。

「緒方あ!!お前は遅刻した罰として、腕立て・腹筋・背筋100回ずつ!!」

翔はひたいに手を当て天を仰いだ。

「他は、前回の続きだ。
 チームごとに分かれろー。」
「はい!」

中学生らしい元気な返事。
みんな何であんなに元気なんだろうな…

「いち…  にい…  さん…  しい…」

翔は言われた通りに腕立て伏せを始めたが、
もともと体力がなく運動が苦手な彼にとっては、
100回なんてとても無理な話だ。

「ごお… ろく… しち…
 はぁ… 行ったか…。」

当然、教師がその場を離れて行ったらサボるのである。

「ふぅ…」

翔は深い溜め息をついた。
他の男子たちの方を眺めた。
あの体育教師が熱心に指導している。
これは当分戻ってきそうにないな…。
そう判断すると、今度はそれと逆方向の
女子の集団の方を見てみた。

「よーい、ピーーーー!!」

翔が目を向けた瞬間、ホイッスルが鳴り女子たちは一斉に走り出した。

「女子は長距離走か…。」

翔はぼんやりと、女子たちの様子を眺めていた。
大方の女子たちは、やる気無さそうに
ゆっくりダラダラと走っていた。
中には友達とペチャクチャ話しながら走っているのもいる。
そんな中、先頭を走るのは綾である。
そして、続く二番手は美優。

「緋村、ムキになってるな…。」

常に同じペースで淡々と走っている綾と、
長い髪の毛を振り乱し「はぁはぁ」と荒い息をしながら走る美優。
綾を追い越そうと猛ダッシュしたり
逆に力尽きてペースダウンしたりを繰り返す美優の様子が、
見ていて面白かった。

「おい、な〜にサボってんだよっ!」

ボーっとふたりの様子を見ていた翔は、突然声をかけられて驚いた。

「なんだ、栗原かぁ…
 栗原のほうこそ、抜けてきちゃっていいの?」

翔に声をかけてきたこの少年は、
翔の数少ない友人の一人。

「ああ。別にひとりくらいいなくたって
 どうせ気付かないだろ。」

そう言うと彼は、翔の隣に座った。

「それよりよお、お前さっきから
 なにボーっと女子のほう見てんだよ。」

栗原の問いかけに顔を赤くして、しどろもどろになる。

「え、あの…その…
 別に見てたわけじゃないよ、ただ…なんとなく…」

栗原は翔の背中を軽く叩いた。

「まぁ、気にすんなってっ!

 で、誰を見てたんだ? 緋村か?」

不敵な笑みを浮かべ問い詰めてくる栗原に、
翔は非常に戸惑った。

「ち、違うよ!!」
「ん?違うか。じゃあ西濱か?」
「だから見てないってば!!」
「まあまあ、そんなムキになるなって。」

栗原は女子の先頭集団――つまりは綾と美優のデッドヒートを
眺めながら話した。

「確かに、緋村も西濱も顔は可愛いけどよ。
 ふたりとも性格があんなんだしよ…。
 それになにより……」

女子の体育着はブルマだ。
美優も綾もスタイルが良く、綺麗な足が露になっている。
白い体育着からはわずかにブラジャーの色が透けて見える。

「……どうせ走るなら、大きな胸を
 ブルンブルン揺らして走って欲しいよなぁ!
 な? 緒方もそう思うだろ?」

返事はなかった。

「なあ、緒方?」

栗原が振り向くと、そこには…

「こらぁぁあ!!」

体育教師の怒号が響き渡る。

「栗原ぁ!! お前、勝手に抜け出して、
 真面目に筋トレやっている緒方の邪魔をするとは、
 どうゆうつもりなんだ!!」

翔は教師が来たのに気付いて、
慌てて素知らぬ顔で背筋をしていたのだった。

「よし緒方、お前はもう終わっていいぞ。
 栗原、お前は罰としてグラウンド10周だ!」
「ええー!!」
「今は4時間目だから、昼休みまでかかってでも
 しっかり走れよ! ちゃんと見張ってるからな!!」

トホホ…といった感じの栗原の背中を、
翔は少しすまなそうに見つめていた。

翔は上半身裸でタオルで汗を拭いていた。

「なぁ緒方、栗原知らないか?」

シャツとYシャツを着て、
ボタンを留めながらその質問に答える。

「ああ… 栗原なら、サボってたの見つかって、
 グラウンド10周走らされてるんだ。」

翔は体育着のズボンを脱いだ。
そこへ着替えを終えた美優が帰って来た。

「ふんっ バッカだね〜、あいつ!」

そして翔を見るなり、

「…って、あんた何て格好してんのよー!!
 変態!! 変なもの見せないでぇー!!」
「そ、そんな事言ったって、しょうがないじゃないか。
 だいたい、緋村が来るの早すぎなんだよ!
 他の女子だって、まだ誰も帰ってきてないじゃないかっ!」

翔は顔を真っ赤にして、自分の正当性を主張した。
だが、上はYシャツ・下はトランクスの今の翔の格好では、
まったく説得力がなかった。

「そんな事言ってないで、早く着なさいよ!」

美優は「ぷんっ」とそっぽを向いた。

「ところでさ、緋村。
 今日の長距離走、緋村と西濱、どっちが勝ったの?」

着替え終わった翔が美優にそう尋ねると、勝ち誇ったように胸を張って答えた。

「と〜ぜん、あたしよ!
 あたしがあんな貧弱ガリ勉女に負けるわけないじゃない!」

貧弱ガリ勉女かぁ…
西濱も酷い言われようだなぁ…
そう思いながらも、

「そっか… そうだよね。」

と、話を合わせておく。
美優は綾の事になると、かなり意地になるのだ。
そのことを、翔はよく知っていた。

「ん…?そういえば、どうしてあたしとあの貧弱ガリ勉女が競ってた事知ってんのさ…」

顔をしかめた美優を見て、
翔は「やばっ」と素知らぬ顔をしてみせた。

「さては、あんた……」
「美優、お弁当食べに行こうよ〜」
「あ、うん。今行くー!!」

美優は翔をギロッと睨んでから、
恵と一緒に出て行った。
美優の親友の恵は、いつも良いタイミングで助け舟を出してくれる
翔にとってはありがたい存在だ。

「ああ〜〜〜、まったく酷い目に遭ったぜ!」
「あ、栗原…。」

ようやく栗原が教室に戻ってきたのだ。

「まったくヒドイじゃないか、緒方ぁ!
 先公が来たの気付いたんなら、
 俺にも言ってくれりゃいいじゃないか。」
「ご、ごめん…」

栗原は女子のいる前で、堂々と着替えながら話した。

「まったくよぉ…
 今度、たこ焼きでもおごれよな!」

「あ、うん…。」

栗原はニヤッと笑うと、鞄から弁当を取り出した。

「緒方、飯もう食ったか?」

「いや… 待ってたよ。」

翔も弁当箱を取り出した。
翔は栗原と一緒に弁当を食べるのが、最近の日課だ。
栗原は翔の席へと来て、近くにあった空いている椅子に座る。

「おー、今日も緒方の弁当は美味そうだなぁ。」
「そうかな…?」

家が貧しいため、栗原の弁当には大したものは入っていない。
だから、冷凍食品オンパレードの手抜き弁当でさえ、
彼にとっては魅力的なのだ。

「これ、もらっていいか?」
「え…」

翔が返事をする前に、栗原はミートボールを口へ運んだ。

「うん、うめぇ!」

余程お腹が空いていたのか、栗原は夢中で弁当を食べていた。
しかし、その横で翔の箸は止まっていた。
翔がボケーっと眺めるその先には、綾がいた。
今日もひとりで食べてる…。
綾に友達はいない。
憂いを帯びた表情で、何処か遠くを見つめている。

短めの黒髪…
雪のように白い肌…
そして…

―――――― 紅い瞳

人間とは思えないほどの、美貌の持ち主…。
その近付きづらい冷たい空気が、
彼女の美しさを引き立てているのかもしれない…。
そういえば昔、
あの紅い瞳が原因で虐められてた事があったな…。
あのとき翔は、綾を助けることが出来なかった。
でも、綾は虐められても泣かなかった。
いつも同じ顔をしてた…。
あの頃も、今も。

「おい緒方、なにボケーっとしてんだよ?
 早く食わないと、昼休み終わっちまうぞ!」
「え、あ… うん。」

時計を見てみると、もう5時間目まであと5分もなかった。
翔は慌てて弁当を掻き込んだ。
するとそこへ、

「あんた、まだ食べてるの!?
 遅いわねぇ。まったく、それでも男子なの?」

いちいちうるさい女、美優が教室に戻ってきた。
美優は恵たちと一緒に、屋上で弁当を食べていたのだ。
彼女の席は翔の席の隣だ。
自分の席に着くと、翔を見つめた。

「あんた、ご飯粒付いてるわよ。」
「え…?」

翔の口もとに手を伸ばす。

「ほら…。」

ご飯粒を付けた美優の人差し指と美優の顔を交互に見て、
翔は目を丸くするのだった。

「まったく、お前らはラブラブでいいよな!」

栗原のひと言で、ハッとするふたり。

「そんなんじゃないよ!!」
「そんなんじゃないわよ!!」

見事にシンクロしたふたりの反論に、
まわりにいたクラスメイトは笑いを堪えられないのだった。

「おっと、もうすぐ授業始まっちまうな。」

そう言いながら、栗原は自分の席へと戻っていった。
残されたふたりは微妙な空気…。

「はーい、じゃあ始めるぞー!」

国語教師の声がかかると、翔は渋々食べかけの弁当を鞄に仕舞った。

「きりーつ、れー、着席っ」

あ〜ぁ、始まっちゃったよ…。
こうしてまた、意味のない日常が過ぎてゆく…。
窓際の席で、無表情で黒板を見詰める綾。
退屈そうにクルクルとペンを回している美優。
熱心に教師の話を聞く恵。
やる気無さそうに横を向いている栗原。
真面目に授業を受けて、カリカリとノートを取っているものもいれば、
教師の話を聞かずにひたすら教科書を読んでいるものもいる。
まだ始まって間もないのにすでに夢の世界に旅立っているものもいれば、
教師に見つからないように漫画を読んでいるものもいる。
くだらない日常が、こうして過ぎていくんだ…。
少年は、空を見ていた。
何の意味もなく、ただボーっと…。

退屈な時間
意味のない毎日
価値のない人生

そんな日常がずっと続いていくのかと思うと、
何もかもやる気が出ない…。

こんな日々が、ずっとずっと、続いてく…。

平凡な毎日

退屈な日々

だけど、ときには特別なイベントもある。
そんな数少ない行事のひとつが、修学旅行である。
翔たちは今、京都に来ている。
清水寺、三十三間堂、北野天満宮など
いわゆる観光名所を見て廻った。

清水寺では…

「うわ〜〜、ここが清水の舞台ってやつね!?」

美優は上機嫌ではしゃいでいた。
翔はあまり興味無さそうにボーっとしていた。
ふと、綾が目に留まる。

無邪気にはしゃぐ他の女子と違って落ち着いている綾の様子や、
その綾の白い肌、表面的な美しさ、凛とした空気、
それら全てが清水の綺麗な景色と調和していた。

「っわ!!!」
「うわぁ!!」

急に脅かされたのでビックリしてしまった。

「なんだ緋村かよ。脅かさないでよ…。」

心臓がバクバク言っていた。

「フフッ 清水の舞台から、
 突き落としてあげようかと思ってね♪」

普段からうるさいヤツだが、どうも今日は一段とテンションが高い。
修学旅行とは、そういうものだ。
次に向かった北野天満宮では…

「この北野天満宮に祀られた”菅原道真”は、
 子供の頃から一生懸命勉強して最年少で国家試験に合格して、
 で、右大臣にまでなった凄い人なのよっ!
 …って、聞いてんの? 翔!!」

そんな話僕に言わなくったって、他の女子にでも話せばいいじゃないか。
翔は少しウンザリした様子で答えた。

「…聞いてるよ。詳しいね、緋村。」
「あんた、こんな話、超常識よ!
 で、そんな凄い人だから、今は学問の神様として
 祀られているわけ!」
「ふ〜ん…」

自分の話でもないのに自慢げに話す美優に、翔は素っ気無い返事をした。

「じゃ、ほら。行くわよ!!」

美優は翔の制服の袖を引っ張って歩き始めた。

「え、どこに?」

振り向く美優。

「合格祈願に決まってるでしょ!
 あたしたち受験生なのよ!
 あんた、自覚あんの!?」

そんな大声出さないでよ、他のお客さんに迷惑じゃないか…。
翔は渋々美優についていった。

「ぜったいS高に受かってやるんだから…」

なにやらブツブツ呟きながら、一心にお祈りする美優。

「合格祈願っていってもなぁ…
 まだ志望校も決まってないのに…。」

そう言いながらも、翔は美優の隣に並んで拝む。

「ふぅ…」

翔が一息ついても、美優はまだ目を閉じじっとお祈りしている。
いつまで祈ってんだ…?
そう思って、美優の顔を眺める。
背筋をピンと伸ばして、目を閉じ手を合わせる美優。

緋村…

いつもこうして黙ってれば、ものすごく可愛いのになぁ…
普段と違う穏やかな表情の美優の横顔に、
翔は何だか不思議な感覚を覚えた。

「うん、よし!
 あ、翔。お待たせ♪」

ずいぶん長いことお祈りしていた美優。
参拝を終えた後の爽やかな笑顔が、なんとも美優らしかった。
その後、一行はバスで旅館へと向かった。

「うわ〜〜!! 広ぉ〜い!!
 綺麗な景色〜!!」

美優は旅館の露天風呂に一番乗りで入り、
グーンと腕を伸ばした。
美優は何も身に付けておらず、
その中学生らしい発育途中のなんともいえない魅力的な身体が、
包み隠さず露になっているのだ。
美優はスタイルが良い。
胸も中学生にしては大きいほうだ。
その柔らかな膨らみの先っぽで、
桜色の乳頭が己の存在を主張していた。
そしてそこから下へいくと、
なんとも可愛らしいおヘソがあり、
そして更にその下には…
まだ完全には生えそろっていない若草たちが、
美優の一番敏感な部分を護っている。
綺麗だ…。
その姿はまるで、”美と愛の女神”のよう…。

「ちょっと美優、少しは隠しなさいよ!
 恥ずかしくないわけ?」

恵はタオルで身体を隠し、恥ずかしそうに近寄ってきた。

「まぁ、硬いこと言わないでさっ!
 どうせクラスの女子しか入ってこないんだしさ。」

この露天風呂は真ん中に仕切りがあり、男湯と女湯に分かれている。

クラスごとに決められた時間で入るため、

他のクラスの女子や一般の客、ましてや男子などは

入ってくることはないのである。

「じゃあ、さっそくお湯に入るわよっ!」

そう言って風呂へ走り出そうとする美優の肩を

恵は必死でつかんでそれを止める。

「待って待って!

 先に身体を洗えって先生が言ってたわ。」

「まったく、恵は真面目なんだから…。

 教師の言う事なんて、いちいち守らなくたっていいのに…。」

続々とクラスメイトたちが入ってくる。

みんなタオルで身体を隠している。

お互い少し恥ずかしそうに、キャッキャ言いながら楽しそうだ。

だが、美優の他にもうひとりだけ、
裸を見せるのを惜しまない少女がいた。

それは、綾である。

綾が入ってくると、その冷たい空気と美しさのために
誰もが目を見張った。
綾はやや細身の体で、胸も僅かに膨らんでいる程度だ。
だが、その僅かな膨らみの先っぽで、
可愛らしい乳頭がビンビンに勃起している。
綾の恥丘には、包み隠すものが何もなかった。
まだ恥毛が生えていないのだ。
綺麗な割れ目が露になっている。

美しい…。

その姿はまるで、”地上に舞い降りた天使”のよう…。
そのあまりの美しさに見入っていた恵が、
ハッと我に返る。

「まったく、美優といい西濱さんといい、
 スタイルの良いコは自信持って隠さないでいられていいね!」

ボーっとしていたかと思うと、いきなり不機嫌になった恵の気持ちを、
美優は理解してあげる事ができなかった。

「は? 何怒ってんのさ…?」
「別に怒ってない!」

美優は頭の上にクエッションマークを浮かべ、
首を傾げながら、石鹸を手に取った。

「変なの…」

美優は手を洗い、それから
左腕、右腕、首、背中… と洗ってゆく。
そして、胸へ。
柔らかく、そして弾力のある美優の胸。
そのあとお腹を洗うと、今度は脚へ。
そして最後に、秘部へ…。
あまり強く擦ると、なんだか変な気分になってしまうから、
ここだけは優しく洗う。
それからふたりは、お湯に浸かった。

「はぁ〜 いいお湯…」

恵の視線が気になった。

「美優…」

お湯に浸かっているせいか、ふたりの頬は火照っていた。

「なに…?」
「胸…、また大きくなったんじゃない?」

同じ女でも、そんなにジロジロと見られるのは恥ずかしい。

「…触ってもいい?」
「な、なに言ってるのよっ!」

急に美優が大きな声を出すから、
みんなの注目を一気に集めてしまう。

「…じょ、冗談よ!」

恵はオドオドして、目を逸らした。

「じゃあわたしが触ってあげる♪」
「きゃっ!」

他の友人にいきなり後ろから胸を揉まれた美優は、
思わず普段出さないような女の子っぽい声を出してしまった。

「んもう!やめてよっ!!」

美優は顔を真っ赤にした。

一方こちらは男風呂。

女風呂とは仕切りがあるだけで、
実は声も丸聞こえなのだ。
男子たちは、息を潜めて女子たちの会話を聞いていた。

  「美優ってさ、好きな人いるでしょ?」
  「だれだれ〜?」
  「緒方くんでしょ〜?」
  「やっぱ緒方なんだ!」
  「ふたりって付き合ってるの?」
  「そ、そんなんじゃないわよ!」
  「もうやっちゃったの?」
  「緒方くんに毎日胸揉んでもらってるんでしょ?」
  「あ〜、だからこんなにおっぱい大きいんだぁ。」
  「違うって言ってるでしょっ!!」
  「あー! 顔真っ赤にしちゃって。美優可愛い!!」

「おい緒方、お前ち〇こ勃ってるじゃ…」

ザバ―――――ッ

湯に浸かる翔を覗き込むようにして言いかけたその言葉を止めるべく、
翔は慌てて立ち上がって、栗原の口を手で塞いだ。

「んん…んんむ…」

だが、翔は立ち上がった事により、
クラスメイトたちの前にその醜態を晒してしまう。

「うわー!ホントに勃ってるし!」 
「なに興奮してんだよっ!」
「女子の裸、想像しちゃったのか?」
「わはははは…」

ジャボン!

翔は慌ててお湯に沈んだ。

「は、恥ずかしい…」

顔が真っ赤だった。

  「なに今の声!?」
  「向こう側、誰か入ってるの!?」
  「ええ? 男子? ウチのクラスの!?」
  「わたし、もう出るー!!」
  「わたしももう上がる!」
  「わたしも…」
  「あ、待ってー。わたしもー。」

女子たちは、みんな風呂からあがったようだ。

「なんだよ、つまんねえの…」
「そろそろ上がるかぁ。」

そう言って男子たちもみな出て行った。
でも、翔はまだお湯に浸かっていた。

「緒方ぁ〜、先あがるぞ。」
「あ、うん。」

もうすぐ交代の時間だ。
早くしないと、次のクラスが入ってきてしまう。

「どうしよう…。上がれないよ…。」

「あ〜 いい湯だったなぁ。」

栗原が部屋へ入ってくる。
栗原も翔も、寝巻きとして備え付けられていた浴衣を着ていた。
翔は栗原と二人部屋だ。
中学最後のイベントという事で、
班も部屋も基本的に好きな者同士で決められていた。
仲間はずれがでるといろいろと面倒な事になりそうだが、
翔のクラスでは特に問題は起きなかった。

「今日はもう寝るだけかな…?」

翔は『旅のしおり』で予定を確認した。

「うわー、明日朝早いなぁ。」
「緒方、朝弱いのか?」
「うん…。」

そんなたわいも無い話をしていると、
廊下からドタバタ騒々しい足音が聞こえてきた。
ガタンッと大きな音を立てて戸が開く。

「翔いる!?」
「ひ、緋村!?」

いきなり現れた美優と、後ろから顔を覗かせる恵。
美優の無防備な浴衣姿を見て、翔は思わず息を呑んだ。
おそらくブラをしていない…。
胸が見えてしまいそうで危なっかしかった。
だが、当の本人はそんな事はお構いなしのようだ。

「トランプやるわよっ!!」

美優は手に持ったトランプをチラつかせ、
ニヤッと笑った。

「は…?」
「つーか、お前らこっち来ちゃって大丈夫なのか?」

栗原がそう聞くと、恵も少し不安げな顔を見せた。

「わたしもよそうって言ったのよ。でも美優が…。」
「大丈夫よ、別に見回りも無いみたいだし。
 担任ももう歳でボケ始めてるし。」

美優は相変わらずの口調でそう言い放つ。

「そういう問題なのか…?」
「ホントに大丈夫なのかなぁ?」

翔も栗原も破天荒な美優についていけない。

「あんたたち、男のクセに意気地無しね!!」
「うぐ…」

美優はズカズカと部屋に上がり込んで来た。
そして、翔の顔を指差し、こう言い放つ。

「もちろん、教師に見つかったら
 『僕らが無理やり連れ込みました』って言うのよ!」
「そんなぁ…。」

翔は困り果てた顔をした。

「まったく緋村はムチャクチャだな。
 ま、見つかったらその時はその時ってコトで。
 トランプやろうぜ!」
「じゃあ、わたし配るわ。
 何やるの?」

なんだかんだ言って、栗原も恵も結構乗り気だ。

「そうねぇ…」

美優は口元に手を当て、考えるポーズ。
そして、ポンッと手を叩いた。

「うん、やっぱ『大貧民』でしょ!」
「…『大富豪』ね。」

翔がポツリと呟くと、美優は頬を赤くした。

「ちょ、ちょっと間違えただけよっ!」

ちなみに『大富豪』とはトランプで遊ぶカードゲームの一種で、
地域によっては『大貧民』『ど貧民』『階級闘争』などと呼ばれる。
ただし、彼らの中では『大富豪』が正しい呼び方とされているようだ。

「じゃあ配るわよ。」

恵が一枚一枚丁寧に配ってゆく。
『大富豪』は、場にあるカードよりも強いカードを出していき、
手札を使い切ったらあがり、といういたってシンプルかつ戦略的なゲームだ。
あがった順に、大富豪、富豪、貧民、大貧民となる。

「うわ〜、こりゃ全然ダメっぽいなぁ」

配られた手札を見て栗原がぼやく。
カードの強さは、3、4、5、……10、J、Q、K、A、2で、
3が一番弱く2が一番強い。
ただし、ジョーカーがある場合それが一番強い。
栗原の手札は弱いカードばかりのようだ。
翔の手札もあまり良いとは言えなかった。
今回は富豪か貧民になって、次回につなげよう…
そんな事を考えながら、ふと美優の顔を見てみた。
少しニヤついている…。
どうやら美優は顔に出やすいタイプのようだ。

4人は布団の上に座り込み、『大富豪』をしている。
恵は難しい顔をしていた。

「…パス。」
「あ〜! パス!」

栗原はもう投げているようだ。

「翔、あんたは?」

美優が聞く。

「う〜ん… どうしようかな?」
「男らしくバシッと決めなさいよ。」

そう言って、1枚しかない手札をチラつかせる。

「緒方、なんとかしろよ!
 緋村あがっちまうぞ!」

自分の手札では太刀打ち出来ないと踏んだのか、
栗原は完全に人任せである。

「…わかったよ。」

翔はパシッとカードを出した。
ハートのエースだ。

「フッフーン♪」

美優はニヤッと笑うと、最後の1枚のカードを場に叩きつけた。

「はい、あがりー♪
 フフッ 楽勝ね!」
「あ…」

翔が呟く。

「ジョーカーじゃ、あがれないんだよ…。」

ちょっと沈黙。

「はぁー!? そんなこと誰が決めたのよっ!!」

美優は立ち上がって怒った。

「あんまデカイ声出すなよ。」

栗原はヤレヤレ…といった表情で言った。

「フフッ 美優、大貧民決定ね♪」
「な…」

恵にそう言われ、美優はその怒りをなぜか翔にぶつけるのだ。

「ちょっと、翔ぉ!どうにかしなさいよ!!」
「そんな事言われたって…」

その瞬間!!

「キャッ 地震!?」

美優はバランスを崩し倒れこんだ。
数秒間の揺れ。
そして、地震がおさまった…。

「って、お前らなに抱き合ってんだよ!」

気付いたら翔と美優は抱き合っていた。
美優の腕が翔の体を痛いくらい締め付けていた。
ブラをしてない美優の胸の感触が、翔の腕に伝わってくる。

「はっ… こ、これは…」
「しょ、翔!離しなさいよっ!!」

美優は顔を真っ赤にして、思いっきり翔を突き飛ばした。

「そっか… お前らそういう仲だったんだなぁ…。」

栗原はしみじみと語った。

「わ、わたし帰るね。」

そして慌てる恵。

「ちょっと… 恵!」
「大丈夫、このことは誰にも話さないわ。」

慌てて追いかけてくる美優に、
恵はなぜか親指をグッと立てて見せた。

「ご、誤解よ!!」

美優は恵を止めようとしたが、逃げられてしまった。
数秒間美優の背中がガタガタと震えたかと思うと、
美優は振り返り、翔のほうへスタスタと寄ってきて
そしてビンタ。

「イタッ!!」
「もうあたし寝るっ!!」

美優は敷かれていた布団に潜り込んでふて寝した。

「ちょっと…、緋村、それ僕の布団…」
「知らないっ!!」

美優はプイッとそっぽを向いて目を閉じた。
翔は困り果てた。

「災難だなぁ、緒方。」

栗原はあざけ笑い、自分の布団に入った。

「じゃ、俺も寝るわ。おやすみ〜。」

栗原は結構マイペースだ。

「そんなぁ…」
「あ、緒方。電気消してな。」

  闇
     暗いモノ…
          恐いモノ…
               何も見えないモノ…
                     孤独なモノ…

汚れたもの… よけいなもの…
見せたくないもの… 
それを全部包み隠してくれる、闇
静寂と孤独が支配する闇
そんな暗闇の中で、少年は膝を抱えていた。

時刻は2時をまわっていた。
翔は浅い眠りから覚め、部屋を見渡す。
自分が眠るはずだった布団で寝ている美優。
彼女がゴロンと寝返りを打ち、顔がこちらを向く。

「あ…」

目が合った。
美優は気まずそうな顔をした。
普段は無茶な事ばかり言うけれど、
本当は良いやつなんだという事を、翔は知っている。
美優は寝たまま話しかけてきた。

「翔、起きてるの?」
「うん…。」

翔は軽く頷いた。
翔から目を逸らし、そっぽを向いて言った。

「入んなさいよ。」
「え?」

美優は布団を捲り、翔を招いた。
暗くてよくわからなかったが、美優は少し恥ずかしそうで、
何処かよそよそしい感じもした。
翔は困惑した。
いや、なにも考えられなかった。
思考が、停止していた。

「風邪ひくでしょ!早く入んなさいよ!!」

美優はキツイ口調で、でも小声で、だけど怒鳴った。

「え… でも…」

オドオドしている翔を見て、美優のイライラは募る一方だ。

「いいから!」
「う、うん…」

翔は恐る恐る布団に潜った。
僅かに漏れる月明かりが、頬を赤く染めた美優の綺麗な顔を映していた。
美優は優しい顔をして、翔を見つめる。
翔はドキドキが止まらなかった。
そして、美優の唇がそっと開く…。

「…触ったら殺すわよ!!」

目がマジだった。

「わ、わかってるよ…。」

翔は美優の背中に回しかけていた手を、
慌てて撤収する。

「じゃ、おやすみ。」

美優は不機嫌な声でプイッとそっぽを向いた。
サラサラの髪…
綺麗なうなじ…
薄い浴衣に覆われた肌…
石鹸のいい香り…
手を伸ばせばすぐ届く場所に…
というより、もうほとんど接触している。
翔はなかなか寝付けなかった。
だが、美優は眠っているようだ。
どうしてこんな状況で寝れるんだ…?
翔は美優の神経を疑う。
たぶん、僕のこと男として見てないんだ。
その結論は、容易に出た。

「んん…ふぅ…」

時々漏れる美優の寝息が、翔を悩ませる。
いけない衝動が翔の脳裏によぎる。
その柔らかい肌に触れたい…
乙女の領域に踏み入りたい…
美優と結ばれたい…

「――ハッ」

翔は息を呑んだ。
美優がゴロンと寝返りを打ち、こちらを向いたのだ。

翔の心臓ははちきれんばかりに鼓動を刻んでいた。
どうやら美優はよく眠っているようだ。

「ふぅ…」

翔はホッと胸を撫で下ろした。
が、それもつかの間。
美優の美しい顔が、目の前にある。
その瞳…
その唇…
視線を下へやった。

「あ…!?」

なんと、浴衣が肌蹴て胸が露に…。
桜色の乳頭が見え隠れしていた。
翔はなにも考えずに…
そこへ手を伸ばす。
翔の人差し指が、
     ――――触れた

「んぁ…」

甘い吐息が漏れた。
翔は再び部屋の隅で、膝を抱えた。
少し寒くて、少しホッとした…。
なかなか寝付けなかった。
早く眠りたかった…。

「…意気地無し。」

ポツリと呟いた一言は、闇の中に虚しく溶けていった。

  夢
    寝てるとき見るモノ…
          思い描くモノ…
               裏切らないモノ…
                   でも裏切るモノ…

小鳥の囀り…。

「んん… 朝か…」

腕をグーンと伸ばそうとする。

「痛っ…」

不自然な体勢で座ったまま寝たせいか、翔は体中が痛かった。

「緋村…?」

そこに美優の姿はなかった。
無造作に捲られた布団に手を当ててみる。

「まだ温かい…。」

急に顔が真っ赤になる。
昨晩の事を思い出したのか…。
その後、何事もなかったかのように修学旅行は続いた。
翔は美優の事が気になってしょうがなかったが、
美優はいつも通りだった。
昨晩の事なんて何も覚えていないかのように…。
だから翔も、いつも通り振舞った。
いつも通り美優の話を聞き、
いつも通りうざったがり、
だけど翔の気持ちは、確実に変わり始めていた…。

修学旅行が終わり、
また同じことの繰り返しの退屈な毎日が始まる…。
だけど、そんな毎日が
変われる予感がした…。

「う〜ん…」

翔はなにやら難しい顔をしていた。

「な〜にやってんのよ?」
「ん… 緋村…。」

何気なく顔を上げて見ると、横から覗き込む美優の顔。
ドキッとした。
何故だろう…。
何故だかわからないけれど、鼓動が早まった。

「なになに…?あ、進路のヤツね。」

美優は机に置かれたプリントを見ていた。
いつもの翔ならきっと「勝手に見ないでよ!」とか言って
プリントを隠していただろう。
だけど何故かそのときはボーっとしていた。

「あんたまだ書いてなったの?」
「将来の夢なんてないから…。」
「ふ〜ん…。」

美優は素っ気無い返事をしたが、それはいつもの事だ。
興味のない話はいつもこうだ。
…どうでもいい話ばっかがっつくくせに。

「ねえ、緋村は将来の夢なんなの?」

少し時間を空けて美優が答える。

「……ないけど。」

「やっぱそうだよね!
 まだ決められないよね!」

翔はちょっと嬉しかった。それが声にも出てしまった。
美優は少しムッとした顔に。

「そんなことより志望校よ!
 あんた、どこ受けるの?」

翔は困った。
なぜならまだ決めかねているから。

「う〜ん…、C高かな…?」

その言葉を聞いた美優は、
一気にある意味美優らしい表情、翔の最も苦手な顔に変わる。

「はぁ!? ダメ、S高受けなさいよ!」
「ええ!? なに言ってるのさ。
 S高なんて、緋村とか西濱とかじゃないんだから。
 無理に決まってるじゃないか。」

S高といえば全国でも有数の進学校であり、
確かに翔の今の学力では到底不可能であるのは言うまでもない。
だけど、美優はこんな事を平気で言う。

「なぁ〜んでやってもないのに無理って決め付けるのさ!」
「無理なもんは無理なんだよ!」

翔も声を荒げた。

「まったくお前らは賑やかでいいなぁ。」

急に声がしたので、翔も美優もワッと顔を上げた。

「あ、栗原…」
「進路のやつ書いてんだろ?」
「うん。だけどなかなか決まんなくて…。」

美優は何気なくいつもの調子で聞いてみた。

「あんたはどうすんのよ?」
「ん…、俺は家が貧乏だからな…
 高校にはいかないで、働く。」
「あ… ごめん…。」

いつも勝気な美優でも、こういう場面には弱い。

「いいって、そんな顔すんなよ。」

栗原は全然気にしない。
ある意味、一番大人だ。

「それよりさ、ここだけの話だけどよ…」

声を潜めて話し出す栗原。

「さっきさ、西濱のプリント見ちまったんだよ。」
「どうせS高でしょ?」
「ああ。それはそうなんだけど…」

栗原はあたりを見回し、聞かれていないか確認する。

「問題は、将来の夢なんだよ…」
「へー、西濱の夢かぁ… なんだろ…?」
「教師、とかだったら面白いわよね。あの性格で。」

美優は悪戯な笑顔を浮かべる。

「そんな生温いもんじゃねえんだよ。
 聞いて驚くなよ。」

喜々とした顔で語る栗原。

「勿体付けないで教えてよ。」
「なんと…

「なんと… 神!!」

最初は、聞き間違いだと思ったんだ。
その後は、冗談だと思った。
でも最後には…
     僕たちは真実を知った。

「はぁ?」
「だから神だよ、神! 神様!」
「ちょ… 声でかいわよ!」
「あ…」

栗原は手で口を覆う。

「意味わかんないんだけど…。」

翔は少しヒキ気味。

「ギャグならいいんだけど…
 書いたのがあのコで、しかも学校の進路のプリントでしょ…?」

美優は栗原を見据える。

「あんた、見間違えたんじゃない?」
「いやいや、はっきり見たよ。この目で。」

栗原ははっきりと言った。
間違いないと、自信があるようだ。

「西濱… ギャグとか言うタイプじゃないと思うんだけどなぁ…」
「意味わかんないわよ!
 あのコのギャグのセンスにはついていけないわ。」
「はぁ… 神様かぁ…。女神様だなぁ。」

栗原は綾のほうをボーっと眺めていた。

「あんた、ホントに嘘ついてないでしょうね!?」

美優はまだ半信半疑。
翔だってそうだ。
そんなの到底信じられる話じゃない。
そう思いながら、翔はいつのまにか綾のことを見つめていた。
不思議な冷たい空気を持つ少女…。
表情が乏しい。
彼女は…
 今、生きているのだろうか…。
それすら疑ってしまうほどに、
彼女は…
―――――――― 危うかった

その日の放課後、綾を見かけた。
帰り道。
綾は公園のブランコに揺られていた。
ふたつ並んだブランコの左のほうに座り、
右には誰もいなかった。
俯いたその顔は、
とても
哀しい顔をしていた…。

翔は、声をかけることが出来なかった。
夕暮れの公園は、どこか悲しげな様子だった。
砂場で遊んでいる子供たちを母親が迎えに来て、
手を繋ぎ楽しそうに喋りながら夕日に消えてゆく。

綾はそんな風景を、乾いた瞳で見つめていた…。
ギイィ…ギイィ…と、錆びたブランコが鳴る。
寂びた綾の心の泣き声のよう。

―――――― 出来なかった。

翔は、声をかけることが出来なかった。
あのとき
声をかけることが出来たなら、
綾は…
僕たちは…

そして、世界は…
少しは変われたのかもしれない。
神が生まれる、その前に。

「な〜にしてんのよっ!」
「うわ!!」

背後からポンと背中を叩かれ、
翔はビクついた。

「なんだ緋村かぁ…
 脅かさないでよ!」
「はぁ? あんた驚き過ぎよ!
 なんかやましいコトでもあるんじゃない?」

ギクッとした。
ん?でも、別に疚しいことなんてしていない。
ただ、なんとなく…

「もしかして、あれ?少女連れ去りとか?
 あんた、犯罪に手を染めちゃダメよ!?」
「そんなんじゃないよ!」
「ふ〜ん…。ま、あんたにはそんな勇気なんてないかっ!」

散々な言われ様。
翔は腹を立てる。
いつも、本当にムカつくんだ。
だけど、あとになって思い返すと、
なぜだかどれも楽しい想い出になっているから不思議だ。

「で、なにしてたの?」
「え… あの…、西濱が…」

特に理由はないが、
美優に”西濱”という名を出すのは気が引けた。

「んんー?」

美優は公園を見渡す。

「誰もいないじゃない。」
「え…?」

ポカンとした表情。

「ほんとだ…。さっきまではいたんだけど…。」

夕日が沈む…。
赤く染まった空…。
ふたりはブランコに揺られていた。
翔は左のブランコに座ったが、
ひんやりとした冷たい感覚が
哀しいほど伝わってくるだけだった。
美優は静かだった。
静かな美優は… 可愛い。
だけど、
静かな美優は調子が狂う。
翔を困惑させる。
喋っていても、黙っていても
翔を困らせる。
まったく迷惑なやつだ。

「ねぇ翔…。…キス、したくない?」
「へ…?」
「キスよ、キス♪」

こんな事もいつもの調子で話す美優。
だけどその頬は、心なしか夕日と同じ色に染まっていた。

「え… ほ、本気? 緋村…」
「や〜ね、キスくらいで顔真っ赤にしちゃって。」

また、沈黙。

「次の期末テストで10番以内に入ったら、
 キスしてあげるわよ。」

――――――― は?

「はぁ? なんだよそれ。
 意味わかんないし。
 クラスで10番なんて、1回くらいしかとったことないよ。」

「は? 学年で10番に決まってるでしょ!
 このあたしの唇なのよ!
 そんな安いわけないでしょ〜が!」

こいつ、頭は良いくせに、アホだ。
そう確信した。
自分の身の程をわきまえているつもりの翔。
彼は自嘲する。

「……学年10番なんて無理だし。」
「ま、安心しなさいよ。
 明日から毎日、放課後みっちりと
 あたしが勉強教えてあげるから。」

そう言って、ポーンとブランコから飛び降りた。
そして振り向く。

「て と り あ し と り ね!!」

また美優の余計なお節介が始まった。
どうせ気まぐれな思いつきなんだろ…。

「はぁ…」

翔のため息なんて、美優には届かない。

  紅
     鮮やかな色…
         朝焼けの色…
              悪魔の色…
                   血の色…

紅い瞳が、人を脅えさせる。
紅い瞳が、彼女自身を脅えさせる。
その瞳と、一度目が合うと
二度と目を逸らすことができない…。

「あ… に、西濱…」

死人のように白い肌…。
死人のように冷たい肌…。
不気味なくらい美しい…。

「…何?」

短く冷たい言葉。
な、なんか言わなきゃ…。

「お、おはよう…。」
「…おはよう。」

そう言うと綾は、スタスタと歩いていった。

「ふぅ…」

翔はドッと汗をかいた。
気になる…。
彼女には、人を引き付ける魔力がある。
翔は授業中、気が付くと綾の事を見ている。
特に理由はない。
ただ、暇だから。
でも、他の人を見ることはあまりない。
何故か綾だけを見ている。

ツンツンっ

「はっ…、なんだよ緋村…」

美優がシャーペンの先っぽで翔をつついていた。

「あんたねぇ、ボーっとしてる暇はないの!
 しっかり勉強しなさいよ。」
「わかってるよ。」

そう言って教科書を開く。
翔は授業が始まっても、
まだ教科書すら開いていなかったのだ。
だが、クラスの大半の生徒は翔と同じである。

「教師の話なんて聞かなくていいから!
 ひたすら練習問題をやるの、わかった!?」

美優は小声で言ったが、それでも十分大きい。
教壇に立ち独り言のように解説を呟いていた教師が、
それをやめ、翔たちのほうを睨む。

「ちょっと緋村、
 先生に聞こえるよ!」
「別にいいわよ、
 そんなの気にしてないで、とっとと勉強しなさい!」

聞こえたのか聞こえなかったのかわからないが、
教師は何も言ってこなかった。
また、独り呟き始める。

「はぁ…」
「ため息ついてないで、早く解く!!」

放課後居残り…。
先生は美優。
目の前のノートには、

『x^2+6x+9=0』と書かれている。

「エックスの二乗足す6エックス足す9イコール0…」

美優に見られてると、なんか気が散るな…。

「0だと…9で…
 1だと…16…?
 −1だと…4…
 −2だと…1…
 −3だと…0!
 あ、エックスイコール−3かぁ…。」
「あんた、何処までバカなのよ!!」

美優の叱咤の声。

「え…、間違ってる?」

真顔で聞いてくる翔に、
美優は少し困った顔をした。

「あってるにはあってるけど…
 あんた、授業聞いてないでしょ!?」
「緋村が聞かなくていいって言ったんじゃないか…。」

少しムッとした。

「そりゃそうだけど…。まあいいわ。あたしが、みっちり教えてあげる♪」

なんで勉強を教えるのに美優がこんなに乗り気なのか、
翔にはぜんぜんわからなかった。

「まずね……」

美優の説明は、案外わかりやすかった。
翔は今日も綾を見ていた。
退屈な授業を聞く気はないし、
問題演習も飽きてきた。
ボーっとしているのが常日頃だったし、
慣れない勉強をして少し疲れた。
だから、綾を見ていた。
そしたらそのうち、隣から
物凄い視線を感じたんだ。
――――― 美優だ。
翔は冷や汗をかいた。
そして、恐る恐るそちらを向く。
美優はニッコリと微笑む。

「問題演習♪」

美優の満面の笑みが、怖かった。
翔は仕方なく問題を解き始めた。
教壇では、女教師が熱弁を振るっている。
ただでさえ退屈な授業なのに、
どうしてわざわざこんなに
面倒くさくつまらない事をしなくてはならないのか…。
翔にはわからなかった。
カリカリと、黒板にチョークの擦れる音がする。
問題を書き終えると、女教師は振り返り
生徒たちを一通り眺める。

「じゃあ、この問題を…
 じゃ、緒方くん。」

はぁ…。
翔は心の中でため息をつく。

黒板には『x^2-12x+32=0』と書かれていた。

「わかりませ…」

イタッ!!

腹部に激痛が走る。
翔の横腹を殴った美優が、
目の下をピクピクさせて翔を睨んでいる。
翔はゴクンッと息を呑んだ。

「……(x-4)(x-8)=0なので、

 x=4,8です。」

教室中がシーンとした。

「え… あ、はい。正解よ。」

ふぅ…。

今度は安堵のため息をつく。
横を向くと、美優がとても嬉しそうに微笑んでくれた。
自分の事のように嬉しそうだ。
問題が解けたことなんて
翔にとってはなんにも嬉しくなかったが、
美優の笑顔を見て、なんだか翔も嬉しくなった。
勉強するのも悪くないな。
翔はそう思えるようになった。
何故か美優は飽きずに教えてくれるし。
ちょっと…いや、かなり教え方が雑だけど…。
でも、毎日毎日教えてくれた。
そして、ついに明日から期末テスト。
それなりに頑張った。
どうせ学年10番なんて無理だけど。
きっと美優は、無理だと思ったから

「学年10番以内に入ったらキスしてあげる」

なんてムチャな事言ったんだ。
でも、ならどうして勉強教えてくれるんだろう…。
やっぱり、ただの気まぐれか…。
それとも…?
そんな事を考えていたら、
期末テスト前夜だというのに
なかなか寝付けなった。

ホントにキス、してくれるのかなぁ…。

無理だとわかっていても、
眠くなるまで部屋の窓から夜空を眺め、
流れ星を探した。

「あんた、気合入れなさいよ!
 あたしがこんだけ教えてあげたのに
 良い結果出せなかったら、承知しないんだから!!」

美優はいつだってこの調子。

「う、うん…」

変に緊張した…。
たかが期末テストなのに。
廊下でテスト直前の見直し。
教室では教師がテストの準備をしている。

「あ… あの公式…
 4acだっけ4bcだっけ…?」

見直せば見直すほど不安になる。

「『-b±√b^2-4ac/2a』よ!
 あんた、この公式は重用だからちゃんと覚えてって
 さんざん言ったじゃない!」

美優が怒る。
まあいつもの事だ。

「ご、ごめん…」

翔はいつも以上に弱腰だ。

「はーい、じゃあ教室入ってー!」

生徒たちが続々と教室の中に入ってゆく。
翔と美優も自分の席に着いた。

「頑張んなさいよ!」

「うん…。」

翔は小さく頷いた。

「問題用紙を配るので、
 裏にしたまま後ろに回して。」

いよいよテストが始まる。

「じゃ、はじめて!」

一斉に問題用紙を裏返す音がした。
その音を聞いて、翔の緊張と不安が高まる。
カリカリカリカリ、シャーペンの音がする。
翔も問題を解き始めた。

「はい、やめ!

 一番後ろの人、集めてきてー。」

翔はシャーペンを置いた。

「ふぅ…」

深いため息をつく。

疲れた。

試験を受けただけでこんなに疲れたのは、

きっと初めてだ。

「どうだった?」

テストが終わると、すかさず美優が聞いてきた。

なんだか嬉しそうだ。

きっと自分は満足のゆく結果だったのだろう。

「う〜ん…

 たぶん、それなりには…」

いまいち自信無さげな翔。

「なによそれ!?

 ちゃんと全部解けたんでしょうね!」

「一応… 解くだけは解いたけど…。」

そんな会話をしながら廊下へ出て、

次の科目の教科書を鞄から出す。

それの繰り返し。

美優はテストが終わるたびに

毎回飽きもせず聞いてきて、

少しうざったかった。

そんな調子で、3日間の期末テストが終わった。

数日後、各教科の期末テストが次々と返却された。
翔は、いままでに見たこともないような
高得点を連発し、教師たちを驚かせた。
そしていよいよ、
成績上位者が掲示板に貼り出される。

5教科総合

1位  西濱 綾
2位  緋村 美優

このふたりは毎回同じだ。

「ちぇっ また2番かぁ…」

不満そうな美優。
徐々に下へ下へと視線を落とす。

3位… 4位… 5位…

        ―――――― 無い。

6位… 7位… 8位… 9位…

        ―――――― 無い!

10位  上戸 恵

11位  緒方 翔

―――――― 11位かぁ…

「はぁ…」

まあ、人生こんなもんだよ。
そうそう旨くはゆかない。

「すげえじゃん!緒方!!
 お前こんなに勉強できたっけ!?」

栗原にそう言われても、クラスメイトに驚かれても、
翔は全然嬉しくなかった。
その日は、一日が長かった。
そして、夕方。
翔はまたあの公園にいた。
家に帰るのが嫌だった。
どうせ親は結果を聞いてくるだろう。
そして、11位という、翔にとってはまったく無意味な現実を、
きっと手放しで喜ぶに違いない。

「クソッ!!」

『露出狂に注意』と書かれた看板を、思いっきり殴りつける。
少し、へこんだ。翔の心のように。
大したへこみじゃない。
だけど、逆に翔の拳からはじんじんとした痛みが伝わってくる。
翔はブランコに揺られていた。

「なに落ち込んでるのよ!」

ハッとした。
美優は隣のブランコに座った。
落ち込んでいる翔とは対照的な、明るい声。

「すごいわね〜。
 万年”中の上”だったあんたが、
 一気に学年トップクラスよ!」

その場違いな明るさが、気まずい。
その痛い空気が、ふたりにはひしひしと感じられる。
今日も、いつもと同じ光景。
砂場で遊んでいる子供たちを母親が迎えに来て、
手を繋ぎ楽しそうに喋りながら夕日に消えてゆく。
何処か寂しげなこの公園は、今はふたりだけのための世界。

「…あんた、そんなにあたしとキスしたかったわけ?」

翔は何も言わなかった。
だけど、美優は少し考えて、
遠くの景色を見ながらこう言った。

「いいよ。…してあげる。」
「え…?」

翔は俯いていた顔を上げ、美優の方を向く。
美優の横顔は、いつも以上に可愛く見えた。
だから、翔はすぐにまた俯いた。

「でも、11番だし…。」

美優は、いつもの顔、いつもの声で、こう言った。

「あんた、男でしょ!?
 細かい事気にしないの!
 10番も11番も変わんないじゃない!」

だけど、いつもよりずっと可愛かった。

「…いいの?」

まじまじと見つめてくる翔の目を
見ることが出来ない美優は、
頬を赤く染めてそっぽを向いた。

「いいって言ってるじゃない!」

そして、目を瞑り唇を差し出す。

「ほら!」

翔はゴクンッと息を呑み、顔を近付けてゆく。
そして徐々に目を閉じ、唇と唇が…

―――――――――― 重なる…。

プルンッとしていて柔らかく、
とても不思議な感触だった。

幸せ…
ずっとこのまま触れていたい…。
離したくない…。
翔は唇を離そうとしなかった。
美優が離れるまで…
ずっとこのまま…
美優も離そうとしなかった。
美優の両手が翔の頬に触れた。
そして、美優の舌が翔の唇をこじ開け入ってくる…。
翔はハッとして目を見開く。
目の前に見える彼女の顔は、
いままで見たどの顔よりも、可愛かった。
目を閉じ、頬を赤く染め、
舌をぎこちなく動かす美優。

翔は美優の肩を抱き、
ブランコごと美優の身体を抱き寄せた。
そして、再び目を閉じ、
美優の舌に自分の舌を絡める。
美優は応えた翔の舌に驚き、
身体をビクンッとさせた。
そんな美優が、可愛かった。
そして、ふたりはゆっくりと
ぎこちなく舌を絡め合い、
唾液を混ぜ合う。
舌と舌とが絡まり合い、
いやらしい音が響く。
ふたりの唾液が混じり合う…。
美優の、味がした…。
ときおり漏れる美優の甘い吐息が、
自分たちが今、いかに淫らな事をしているのか教えてくれる。

翔の頬に触れた美優の手は、震えていた…。
美優の、胸の鼓動が、聞こえる。

とくんっ… とくんっ… とくんっ… とくんっ… 

それは、大人の階段を、一歩一歩踏み締める音。

…だけど、

僕達は、まだ、子供だ。

…そう。

ただの、子供だ。

「んぁ…ぁ  はぁ…はぁ…」

唇が、離れた。
翔はゆっくりと目を開けた。
ぼんやりと美優の顔が見える。
微笑んでいるようにも見える
その美優の口元には、
混ざり合った濃厚な唾液が垂れていた。
美優はそれを腕で拭いて、
目を逸らした。

ふたりはブランコに揺られていた。
夕日が沈む…。
この沈黙を、”気まずい”というのか
それとも”良い雰囲気”というのか…。
それを決めるのは、彼らの心の持ち様だけだ。

この胸の高鳴りを、”緊張”というのか
それとも”恋”というのか…。
それを決めるのは、彼らの心の持ち様だけだ。

だけど、
僕らは、まだ、
子供だった。

美優は何処か遠くを見ていた。
そして、ポツリと呟いた。

「ヘタ…。」

なんでだろう…。
馬鹿にされてるのに、優しい気持ちになった。

「緋村だって…。」

美優はこっちを向いてくれなかった。

「あたりまえじゃない…。
 キスなんてした事ないんだから…。」

若気の至りというか、なんというか…。
僕らはあの頃からずっと…
ずっと不器用な、アダムとイヴだった。
美優は、可愛い。
だけど、煩い。
でも…
僕は、美優が好きなのかもしれない…。
彼女は、キスをさせてくれた。
しかも、舌を絡める、深いキスを…。
それも、自分から舌を入れてきた。
そして、僕は、それに応えた。
僕は、もっとしたかった…。
もっと… もっと…
それに、ちょっとだけ…
エッチな事も、してみたかった…。
僕は、美優と…
エッチな事が、したかった。
それは…
僕が、美優の事が好きだから…?

そう…なのかなぁ…?

「お〜い、緒方ぁ!」
「はっ…」

学校への道をトボトボと歩いていると、
突然後ろから声をかけられて驚いた。

「あ、栗原。おはよう。」
「おう、おはよう!」

こうして今日もまた、一日が始まる…。
昨日とは違う、今日が。
歩きながら話すふたり。
翔は俯き加減で、栗原は頭の後ろで手を組んで上を見て、
対照的なふたりである。

「今日の1時間目は水泳だな。」
「うん。
 面倒くさいから、もう水着はいてきたよ。」
「あ、海パンはいてきたのか〜。
 俺もそうすれば良かったなぁ。」

栗原はニヤける。

「緒方は水泳だけは得意だよな?」
「まぁ。」

運動が大の苦手の翔だが、

幼い頃からスイミングスクールに通っていたため

水泳だけは得意なのだ。

「でも、得意ってほどじゃないよ。
 人並みにってだけ。」
「だけど、俺に比べたら遥かに良いよな。
 俺はカナヅチだからなぁ。
 水泳の授業は嫌いだな。
 でも…」

またニヤける。

「…女子の水着姿が見れるのはオイシイな。」

翔は顔を赤くする。
なぜか、頭に美優の顔が浮かんできたからだ。
美優の水着姿かぁ…。
そんな事を考えていたら、
突然、

「あんたたち、急がないと遅刻するわよっ!」

美優の声がして、びっくりした。
美優は翔の顔を見ずに、そのまま走っていった。

「今日も元気だなぁ。」

翔は美優の背中をボーっと眺めていた。

「俺らも急ごう。」
「あ…うん。そうだね。」

ふたりは早足で学校へと向かった。

1時間目は体育。
男子も女子も水泳だ。
例の如く、女子は更衣室で着替えるのに、
男子は教室で着替えさせられる。
教室で着替えて、海パン一丁で校舎の中を歩き回り
プールまでいかなければならない。
まったく、なんて仕打ちだ。

でも、考えてみると
小学校の頃は男子も女子も
同じ教室の中で一緒に着替えてたっけ。
あの頃は、女子だからって特に気を掛けなかったけど、
今思うと惜しいことをしたな。
誰もが一度は思うこんな事を、翔も考えていた。
翔と美優は、小学校からの仲だ。
小学6年生の時も同じクラスだった。
もっと美優の着替えのシーンを目に焼き付けておけば…
そんな馬鹿げた事を考えてもみたが、
よくよく思い出してみると、
当時は美優だけでなく綾とも同じクラスだった。
そして、綾は男子の前で堂々と全裸になり着替えていて
翔もその様子をチラチラ見ていたのだった。
男子はタオルを巻かずに全裸になって着替える人も数人いたが、
女子でそんな事をするのは綾だけだったな。

そんな事を思い出すと、なんだか急にムラムラしてきた。

「やばい…」

翔は呟いた。
こういう事態になると、男は辛いよ。
とりあえず上半身は裸になり、
下半身にタオルを巻く。
栗原は、もう着替え終わって翔を待っていた。
だけど翔は、これ以上着替えようにも着替えられない。

「あ、栗原、もう着替え終わったんだ。
 先行ってていいよ。」
「んー?
 いいよ、待ってるよ。」

栗原が何の気無しにそう言うと、
翔は絶望の淵に立たされるのだった。
そして、数分後
ふたりは海パン一丁で廊下を全力疾走するはめになる。

「まったく!
 緒方がチンタラ着替えてるからだぞ!」
「ご、ごめん…」

キーンコーンカーンコーン

「やばいっ! 急げ!!」

プールサイドを走るふたりを横目で見ながら、美優は

「まったく、なにやってんだか…。」

そう呟いて、優しい微笑を浮かべた。

「ふぅ… ぎりぎり間に合ったかぁ。」

栗原は腕で額の汗を拭う。

「はぁはぁ…はぁはぁ…」

翔は息を切らしていた。

「遅いぞ。栗原、緒方。
 今日は自由プールらしいぜ。」

自由プール、つまり各々好き勝手にやれって事だ。

「え、まじで?
 あの厳しい先公が?」
「今学期の体育が今日で最後だからじゃない?」

翔がそう言うと、

「ああ、だからかぁ。」

栗原は納得した。
それからすぐ体育教師が来て、
今日の授業は自由プールにする事を伝えた。
みんなは一斉に喜びはしゃぎ、無駄な元気を爆発させた。
それから準備体操をするわけだが、
何故か普段適当にやっているようなやつも
ここぞとばかりに真面目に取り組むのである。
不真面目な態度だと、自由プールが取り止めになるとでも
思っているのだろうか。

そしてシャワーを浴び、
その後はもう、完全に自由だ。

「女子も自由プールかぁ〜。」

翔はコースロープにぶら下がって、
ボケーッと眺めていた。
他のクラスメイトたちのように
バカ騒ぎして水を掛け合うのにも、
もう飽きてしまった。
向こうでは綾が泳いでいた。
綺麗なフォームのクロールだ。
ゆったりとしていて、優雅な感じがする…。
水に濡れた綾は、とても色っぽかった。

ジャバーッ!

「ぷはっ ゴホッゴホッ」

突然水を掛けられ、翔は水を飲んで咳き込んでしまう。

「あんた、また女子の方見て!」
「ご、誤解だよっ!」

とっさにそう言った翔だが、
振り返って美優の顔を見ると急に黙ってしまう。
ふたりは沈黙のまま、顔を真っ赤にした。

「僕は、その…、なんて言うか…昨日は…」
「ちょ… 昨日のあれは、なんでもないんだからねっ!勘違いしないでよ!」

美優の目が泳いでいる。
翔の目は点になっている。

ピーーーッ!

「集合!」

女子担当の体育教師がホイッスルを鳴らし、
集合を呼びかける。
時計を見てみると、もう終了時刻10分前だ。

「あ、行かなきゃ…」

美優は翔をひとり残し、プールサイドの方へ泳いでいった。
翔は、その美優の背中をぼんやりと見つめていた。
プールサイドに辿り着いた美優は、
縁を持った手で体重を支え、バタ足で勢いをつけて
プールから上がった。

スクール水着がおしりに食い込んで、
なんだかとってもセクシー。
美優はプールサイドを歩きながら、
水着とお尻の間に指を入れて引っ張って
それを直した。

『…女子の水着姿が見れるのはオイシイな。』

確かにオイシイかも…。
体のラインがはっきりわかる。
緋村って、思った以上にスタイルいいんだなぁ。
遠くてよくわからないが、
乳首が立っているように見えなくもない。
冷たい水に浸かっていると乳首が立ってしまうと
よく聞くが、本当だろうか。

こうして、今学期最後の体育の授業は終わった。
シャワーを浴びて、目を洗い、タオルでよく体を拭き、
それから校舎の中へ入っていく。
教室に着くと、とりあえず素早く着替える。
いつかみたいに着替える前に美優たちが来たら大変だ。
着替え終わった翔は、「ふぅ」と一息つき、
タオルでゴシゴシと髪の毛を乾かす。
栗原のように短髪なら
髪を乾かす手間などかからないだろうが、
翔はそうはいかない。

数分後、やはり美優も髪を乾かしながら教室に帰って来た。
濡れた髪を乾かす姿は、何処か大人っぽい感じがする。
美優は翔の隣の自分の席に着き、翔を手招きした。

「なに?」

そう言って顔を近付けると、美優は小声で言った。

「あんた、昨日のこと絶対内緒だからね!
 誰かに言ったら、ただじゃおかないんだから!」

少し、顔が赤い。

「ん? なんの話だ?」

栗原が割り込んでくると、ムッとして

「何でもないわよ!」

と言って、そっぽを向いた。

今日は、風が強かった。
ベランダのドアが開いていて、
カーテンが大きくなびいていた。
教室にクーラーなんて高価な物は無いから、
吹き込んでくる風は夏の熱さを和らげてくれる唯一の救いだった。

だんだん女子たちも教室に戻ってきた。
多くの女子は、髪の毛を乾かしながら
楽しそうに喋っていた。

綾も教室に戻ってくる。
乾ききっていないショートヘアが、
何だかとっても色っぽい。

と、その時、

ビュー!

っと突風が吹き込んだ。
数人の女子のスカートが捲り上がる。

みんな「キャッ!」とすぐにスカートを押さえるが、

綾だけはそんな事には無頓着だ。
パンツが見えることなど、気にしない
と、思いきや…

「え…!?」

翔や周りにいたクラスメイトたちは唖然とした。
綾は、スカートの下に何もはいていなかったのだ。
翔には、はっきり見てとれた。
綾の割れ目が。
恥毛の無い秘部が。

「キャー!!」

女子の誰かが悲鳴をあげた。

「おい、マジかよ!?」
「ノーパンだったよな?」
「毛、生えてなかったぜ!」
「…俺、見逃した。」

ざわつく教室。

ダンッと机を叩いて美優が立ち上がる。
そして、綾の前へと躍り出て、彼女を睨む。
美優は綾のスカートに手をかけ、
それを捲って中を覗きこんだ。
嫌悪の表情を浮かべながら。

「あんた、なんで下、はいてないのよ!?」
「別に…」

綾は顔色ひとつ変えなかった。

そんな綾とは対照的に、自分の事でもないのに顔を赤らめ
手で顔を覆っていた恵が、その手を離し
何か思いついたかのように、ポンッと手を叩いた。

「あ!わかった!1時間目がプールだから、家から水着着てきたんでしょ?
 それで下着を持ってくるのを忘れた…とか。」

――― 沈黙。

「…ええ。その通りよ。」

「あんた、ブルマとかないわけ?」

美優が捲ったスカートを離すと、
綾は静かに呟く。

「今日は持ってきてないわ。」
「しょ〜がないわね!
 わたしの貸してあげるわよ!」

そう言いながら美優は、はいているブルマを脱いだ。
これで、美優のスカートの中は、おそらくパンティ一枚。
美優は脱ぎたてのブルマを、綾に差し出す。
だが、綾は頑なにそれを拒んだ。

「どうしたの?受け取りなさいよ!」
「…いらない。気持ち…悪いもの。」

冷たい声とともに風が吹き、またスカートが捲れる。
綾と、美優の、スカートが。

「キャッ!」

美優は何とも似つかない女の子らしい声を出して
とっさにスカートを押さえた。
だが、それも虚しく後ろは丸見えだった。

綾は先程と同様、風に遊ばれて
されるがままに、下半身を露出した。

「見えた!」
「ああ、バッチシ見えたぜ!」
「あんなふうになってるんだなぁ」
「なんだ、お前、見たことなかったのか?」

「…見た!?」

美優が振り向いて、翔を睨む。

「え… そ、その…、ちょっとだけ…」

はっきり見えた。黒のひもパンだった。
美優がそんな大胆な下着を着けてるなんて
思ってもみなかった。

「俺は見えなかったー。
 緒方、何色だったんだ?」

空気を読めない栗原がそう言うと、
美優が翔をギロッと睨む。
翔は固まった。
メデューサに睨まれたかのように。

「カーッ!なんなのあのコは!?」

美優は怒りを露にしながら
ドスンッと自分の席に殴り座った。

「西濱は変わりモンだからなぁ。」
「ははっ 確かにちょっと変わってるから…
 緋村、そんな気にしないで。」
「まったく!」

美優はかなり機嫌が悪い。
プンスカしながらブルマをはき直した。

その後、綾は
心無い男子生徒に2,3回スカートを捲られ、
なにも抵抗しないため何度も秘部を晒した。

美優の機嫌は直らない。

「てか、なんであのコは隠そうとしないわけ?」
「さ、さあ?でも…」

抵抗したら、面白がって
もっと酷い事をされてしまう。
それを綾は知っているのかもしれない。
昔の、いじめられた記憶が
綾にそう教えるのかもしれない。
翔には、そう思えた。
翔は立ち上がった。

「ん? どうしたの?」
「え… あ、トイレだよ。」

学校のトイレは汚い。

だけど、翔はここにいると落ち着く。

トイレの窓からぼんやりと外を眺めた。

空の向こうに、富士山が見える。

「蒼い空に… 雲は流れ… かぁ…。」

そして、ため息。

「ひもパンかぁ…。」

緋村は、僕のこと、どう思っているのだろう…。
なんでキスしたんだろう…。
翔は自分の唇に触れてみる。
この唇に、緋村の唇が…。
そう考えると、頭がおかしくなりそうだ。
「ふぅー…」と深いため息をつき、
微かに臭うトイレの異臭に嫌気がさす。
用を足したわけではないが
冷たい水で手を洗い、
ふと、鏡に映る自分の顔。
ひび割れた汚れだらけの鏡に映る、少年の姿。
運命さえまだ知らない、いたいけな瞳。
「ふぅ…」と何度目かのため息をついてから、
トイレから出ていった。

現実の世界へと。

ドタン!!

「イテテ…」

ボーっとしていて、出会い頭に誰かとぶつかったのだ。

「ご、ごめんな…さ…」

―――― 綾だ。

綾は、倒れた拍子にスカートが捲り上がって、
翔の目の前に全てを曝け出した。

―――― 沈黙。

刻が、止まった。

「あ… その… ぇと…」

困惑する翔が、紅い瞳に映る。
血に染まった世界のように。
翔の目に映るのは、
恥丘、陰裂、そして産毛のような恥毛。
秘められた領域を曝け出し、
綾は今、何を想うのだろう。
人形のように投げ出された身体は、
一切の意思を持たない…。

ハッ―――――

周りの生徒たちが笑ってる。

「やだぁ〜」
「うへへ…」
「なんではいてないのぉ?」
「さいってぇー」

嘲笑の渦の中で、彼女は。
彼女は…。

俯き加減で髪を垂らし、ゆっくりと立ち上がる。

そして、
何事も無かったかのように去って行った。
何事も無かったかのように…。

いや、本当に何事も無かったんだ。
彼女にとっては。

そして、翔は知ることとなる。
嘲笑は、自分にも向けられていたのだという事を。

だから翔は、顔を赤くして教室に逃げ込んだ。
なんだか、疲れた…。

ひもパンの美優と、ノーパンの綾。
まったく、今日はハチャメチャな一日だった。

もうすぐ夏休み…。

ようやく退屈でつまらない日常から開放される。
今までは、そうだった。

だけど、今年は違う。
受験生だから。
勉強しないといけないらしい。

「好きなようにしなさい。
 でも、今勉強しないと後で後悔するわよ。」

母親にはそう言われた。

「ほう… S高校ですか…。
 今の実力では、ちょっと厳しいかも、しれませんねぇ。」

担任にはそう言われた。

「ちゃんと勉強して、絶対S高に入れるようにしなさいよ!」

美優にはそう言われた。

―――― 正直… 煩い。

だけど、そんなアパシーと相反するキモチが、
翔の心の隅っこに、微かに息衝いていた。
それは、美優の唇がくれたもの。

それは、
君がくれたもの…。
そして、時は流れ…

「僕と、付き合ってください!」
「いいわよ。」

翔の告白に美優がそう答えたのは、
既に美優が推薦入試でS高に合格した後の事だった。
翔は、美優の唇が忘れられなかった…。

その日の朝の話。

「あれ…?まだ誰も来てないんだ…。」

朝のガランとした教室を見て、翔は呟く。
席に着き、くたびれた鞄から単語帳を取り出す。
朝の教室は静かだから好きだ。
勉強でもしようかなって気分になれる…。
なれるのに…。

「あ、翔!
 あんた、朝早いのね〜!」

うるさいのが来た。

「たまたま早く起きたから、
 早く来て勉強でもしようと思って。」
「ふ〜ん。」

美優は自分の席に座ると、
身を乗り出してニヤニヤしながら話しかけてくる。

「あんた、S高受けるわよね!?」

別にそんなに顔を近付けなくても、話は聞こえるのに。

「受けるつもりでは…いるけど…。」

翔は変な汗をかいた。

「そう、それならいいわ。」

そう言うと美優は、机に突っ伏した。

「…緋村は勉強しないの?」
「あたしはいいのよー!
 あんた、人の事心配する余裕なんてないんじゃない?」

確かにその通り。
以前に比べかなり成績は良くなったが、
それでもS高のボーダーには程遠い。
翔は単語帳を捲った。
静かな教室。
翔と美優、ふたりきり。
そんなに見つめられると気が散る。
少しニヤついてるような。

「…キスでもしよっか?」
「へ…?」
「あ、違っ!
 今の無し!!何でもない!!」

顔を真っ赤にして、慌てる美優。
緋村、今日はなんだか、少し変みたいだ…。
だんだん教室にクラスメイトたちが集まる。

キーンコーンカーンコーン

担任が教壇に立つ。

「みなさん、お早うございます。」

こんな年寄りの話なんて、ほとんど誰も聞いていない。
「お早うございます」と言われ
「お早うございます」と返す生徒など、ひとりもいない。
だけど、老教師はそんな事など気にとめない。

「えー 本日は、
 嬉しい、お知らせが、あります。」

特に今日はとてもにこやかだ。
いつもと同じ穏やかな口調の中にも、
それがうかがえる。

「昨日、公立高校の、推薦入試の、合格発表がありまして、
 このクラスからも、合格者が、出たわけです。」

その言葉を聞くと、普段は担任の話なんて聞かずに
好き勝手やっている生徒たちも、
「おおーっ」と声をあげ担任の話に聞き入る。

「まずは、S高校、合格者。
 西濱、綾。 緋村、美優。」

教室中が盛り上がる。

「緋村…!?」

翔が慌てて横を向くと、
美優は勝ち誇ったように微笑んで
小さくピースサインをした。

「S高校に、推薦で、受かったのは
 学年でも、このふたり、だけですので…」

公園が夕日に染まる。
この世界に、ふたりだけ…。
ブランコに揺られる、ふたりの影…。

くっついては… また離れ…

離れては… またくっつく…

それは、

―――― 僕らのdilemma

「緋村…。合格おめでとう…。」
「へへっ。ありがと。」

珍しく照れ笑いをする美優が、
とても可愛く見えた。

「あんたも頑張んなさいよ!」
「うん…。」

翔は自信無さ気に目を伏せる。

「…それにしても、推薦で受かるとは思わなかったわよ。」
「うん、ビックリしたよ。
 緋村、推薦の話なんて一回もしてくれなかったし。」
「なんたって、うちの中学からS高に
 推薦で合格する人なんて、ほっとんどいないからねー。」

美優は得意そうに喋った。

「そうだよ。
 毎年一人いるかいないか、ってくらいでしょ?
 今年だって緋村と西濱のふたりだけだし…。」

翔もそれに調子を合わせる。
美優の合格を、素直に喜んでいるからだ。

「へへへっ、あたしってスゴイ?」
「うん。ほんと凄いよ。さすがだよ。」

珍しく翔が褒めるから、
美優はなんだかとっても気分がいい。
顔を赤らめるくらい照れて、
普段とは違う女のコっぽい美優が、
……可愛かった。

「じゃあさ…。ご褒美にキスしてよ。」

ご、ご褒美…?
そんなの緋村のセリフじゃない…。
唖然とする翔。

「や〜ね、冗談よ!」
「へへっ 翔ったら、
 顔真っ赤にしちゃってさ!」

馬鹿にしたように笑う笑顔が、
可愛くて、可愛くて、ムカついた。

だから…

――――― キスした。

美優は目をパチパチさせていた。
きっと、驚いたに違いない。
翔はもう、後には引けなかった。
舌を、入れた。
舌を入れたらすぐ、それに応えてくれた…。
美優は、それに応えてくれた…。
ゆっくりと瞳を閉じて… それに応えてくれた…。
あの日と同じ場所… 同じ光景…
違うのは、翔の決意。
違うのは、美優の涙。

ギィギィと不器用な旋律を奏でる
ふたりのバイオリン弾き…
とくんっとくんっと拍子を刻む
噛み合わないメトロノームたちが
徐々にその間を詰めてゆく…

「あのさ…」

暮れなずむ空…
静寂の公園…

「その… 僕…」

黄昏れる少年…
静かな少女…

「緋村の事…」

揺れるブランコと、揺らぎない想い。

「好きだから…」
「その…」

震える翔の声。
大好きなバラードを聴くように、
目を伏せ優しい顔をする美優。

「僕と、付き合ってください!」

紅潮する頬をスッと伝った一雫を、
美優は気付かれないように人差し指で拭った。

「…いいわよ。」

揺られていたブランコから飛び降り、
振り向いて意地悪な顔をする美優が…

「ただし、あんたがS高に受かったらね!」

…いつにも増して、可愛かった。

「が、頑張るよ!」

一気に緊張の糸がほぐれたように、
ふたりにいつもの笑顔が戻ってくる。

「あたしも受かっちゃってど〜せ暇だから、
 あんたの勉強見てあげるわよ。」

楽しそうな笑顔…
嬉しそうな声…

「…明日から、放課後あんたの家に行って。」
「え…。」
「イ、イヤなら別にいいのよっ!」
「ううん、お願いします!」

それから数週間、美優は毎日翔の家に通った。
両親は共働きで、夜まで帰ってこない。

美優とふたりっきり…

そう思うと、興奮と緊張で
勉強に手がつかない…。
しかし、そういう素振りを少しでも見せると

「あたしはあんたの彼女じゃないのよ!
 そんな事して、いいと思ってんの!?」

と、どやされる。
出来るだけ気にしないように。
そう思っても気になってしまう…。
だけど、一度勉強に集中し始めると、
案外気にならないものだ。
美優は教え方も上手いし、
意外と教師とかに向いているのかもしれない。
ただ、その荒っぽい性格を直したら、の話だが。

そんなこんなで、日々は過ぎていった。

受かったら緋村と付き合える。
その約束を胸に抱いて―――

そして、

高校入試を翌日に控えたその日。
カリカリ…カリカリ…
緊張な面持ちでシャープペンを走らせる翔。
その横で、漫画の単行本のページを捲りながら
時計をチラッと見る美優。
ポンッと本を閉じる。

「はい、止め!」

美優の凛とした声で、ペンが止まる。
「ふぅー」と一息つき、
美優に解答用紙を手渡す。
グラスに注いだオレンジジュースを一口飲んで、
乾いた口を潤した。

「はぁ…」

シャカシャカ…
採点をする美優を、まじまじと見つめる。
美優は見つめられている事なんて
まったく気にしてないようで、
実は結構気にしている。
だけど、翔に気付かれまいと、
絶対にそんな素振りは見せない。

「はい、出来たわよ。」
「88点…
 …どうなの、これ?」

不安そうに尋ねる。
翔のそういう顔は、見ててイライラするが
そんなところも嫌いじゃない美優がいる。

「ん…、いいんじゃない?」

適当な返事を返す。

「ちょっと、休憩ね。」

美優は学校の制服を着ているが、
教室と違って暖房の効いた翔の部屋なので
上着は脱いでブラウスを着崩している。
何度見ても思うが、
自分の部屋に美優がいる、この光景に
物凄く違和感を覚える…。

この狭い部屋に、美優と翔、ふたりっきり…。

ダメだ。
勉強をしてないと
変な事ばっか考えてしまう…。
余計な雑念を振り払い、
机の上の参考書に手を伸ばす。
すると…

「あ!」

美優のグラスに腕が当たり、
誤ってジュースを零してしまった。

「きゃっ!」

と、可愛い悲鳴をあげる美優。
真っ白いブラウスに思いっきりジュースがかかってしまう。

「う〜、冷たいー!」

頬を膨らませてそうぼやき、
ティッシュを数枚取ってそれを拭く。

「ご、ごめん!」

そう言って恐る恐る美優の顔を覗くと、
案外それほど怒っていないようだ。
それより、濡れたブラウスからブラが透けている…。
翔はゴクンッと息を呑んだ。

「ボーっとしてないで、なんか着替え持ってきてよ!」
「あ、うん…」

翔はハッとして、慌てて席を立つ。

「僕の服でいい?」
「いいわよ、それしかないでしょ〜が。」

翔は美優に背を向け、タンスの引き出しを引いた。

「これでいいかなぁ…」

センスのない服を出してしまうと
きっとどやされる。
恐る恐る振り向いてみると…。

「ハッ…!」

美優はブラウスを脱ぎ捨て、
上半身はブラジャーだけの
あられもない姿になっていた。
フリフリのついたピンク色の可愛いブラ。
中学生にしては大きすぎる乳房。
唖然としている翔に美優は平気な顔で言う。

「な〜に固まってるのよ。」

僕は、美優がわからない…。
頭がポワーっとして、その魅惑に惑わされる。

「イヤラシイ事でも考えてるんじゃないの?」

そう笑いながら、美優はふざけて翔の股間に手を伸ばした。

ぐにゅ

「はっ!!」

ボケーっと気を抜いていた翔は、
突然自分のそれを触られて驚愕する。

「えっ…!
 ほ、ほんとに硬いじゃない!!」

自分から触っておきながら、
美優は赤面してたじろいだ。
翔のそれは、本当に勃起していたのだ。

「な、なにこれ…。勃ってるの…?」

美優は聞く。
得体の知れない事象に際会し、
困惑を隠しきれない。

「ご、ごめん…」

翔は顔を赤らめ目を逸らす。
時を刻むカチカチという時計の音が
部屋中に響き渡る。
沈黙が気まずい…。
嫌われた…かな…。

「…脱ぎなさいよ。」
「へ?」

美優の大胆不敵な一言に、思わず間抜けな声を出してしまった。

「いいから脱ぎなさいよ!」
「な…」

聞き間違えかと思ったが、そうじゃないらしい…。

美優は… 誘っているの…?
いや、そういうのはダメだって
美優が言ったんじゃないか…!

混乱する翔に、迫り来るブラジャー。

カチャカチャ

腰を抜かしたように座ったまま
動けないでいる翔のベルトを、
美優はぎこちない手つきで外してゆく。
ズボンを脱がされると、
テントを張ったトランクスが。
目の前に迫り来る美優の胸と、
この異様な展開が、翔を興奮させているのだ。
美優は静かにトランクスを下ろした。
ゴクンッと息を飲む。

「すご…」

美優は思わずそうもらした。

むにゅっ

「ひぃっ!」
「…触っちゃった♪」

なんで笑顔?
触ったというか…
握ってますけど。
自分のあれを、美優が握っている。
この有り得ない光景に、翔は混乱する。
ブラジャーにスカートというアンバランスな格好も、
自分の肉棒に伝わる細い指の感触も、
胸の鼓動と肉棒の脈打ちを早める要因でしかない。
真っ赤に染まった翔の顔と、翔の肉棒を、
しばらく交互に見つめた美優は、
その後…。

シコシコ…シコシコ…

「これで、あってる?」

なんと美優は翔の肉棒を上下に扱きだしたのだ。

「あってるけど… その…」

緋村、何処でこんな事覚えたんだろう…。

シコシコ…

「あんた、毎晩こんな事してんの?」

悪戯をする子供のような無邪気な笑顔に、翔はドキッとしてしまう。

シコシコ…

「ま、毎晩じゃないよ!その… 時々は…」

何言ってんだ、僕…。

シコシコ…

「さいってーね!」

ほら、嫌われた。

シコシコ…

「ゴメン…」

しょんぼりと俯いた翔を見て、美優は慌てた。

「そ、そんな顔しないでよ!
 その… 気持ち良い?」

シコシコ…

「うん…」

何だか、嬉しかった。
このよくわからない不可思議な状況の中で、
翔は少しずつ、美優の気持ちに気付いていく…。

シコシコ…

「あたしの裸とか想像しながら
 こういう事してるの?」

嬉々とした様子で聞いてくる。

シコシコ…

「え… そんな…」

シコシコ…

「あたしのコト、好きって言ったじゃん!」

美優は翔の顔を覗き込むようにして見つめる。
もちろん、手の動きは止めない。

「どうなの?」

シコシコ…

「ごめん…、想像…して…その…」

翔は顔を真っ赤にして、羞恥心に駆られる。

「へへっ 嬉しいかも。」
「え?」

意外な言葉に、拍子抜けする。

「な〜んでもないわよ!
 ほら、気持ち良いでしょ?」

シコシコ…

「うん…」

普段自分でやる虚しい行為を、好きな人がしてくれている。

翔を見つめる眼差しは
何処か優しくて…
何処か儚げで…
何処か… 愛おし気で…
そんな目で見つめられたら…

僕…

シコシコ…

「あ、あのさ…」

シコシコ…

「お願いがあるんだけど…」

そう言うと、指の動きがピタリと止まった。
美優の顔を見てみると、
さっきまで痛いほど見つめていたその目を逸らし
顔をますます火照らせていた。

「ダ、ダメよっ!
 これ以上はあんたがS高に受かってから
 するんだから!」
「へ…?」
「あ、いや…その…」

ポカンとした翔に、美優はもうたじたじ。
顔は真っ赤だし、目は泳いでいる。

「あ、何か出てきてるわね!
 これが”せ〜し”ってヤツ?」

冷静を装い、話を逸らす。
そんな美優が、可愛かった…。

「え、これは違うよ…
 もっと勢いよく出るし。」

刺激を止められ、不機嫌そうに熱り勃つそれ。
それを不思議そうに見つめる美優。
その美優を、恥ずかしくてなかなか見れない翔。

「じゃ、なんなのこれ?」
「その… あの… ガマン汁…?」
「ふ〜ん…」

ビクンッ

何を思ったのか、美優は先っぽを指でツンと触った。

敏感なそれは、オーバーリアクション。
美優は指に付いたガマン汁を、ペロッと舐めてみた。
翔は息を呑んだ…。

無言。
料理研究科が、シェフの目の前で料理を一口口に運び、
目を閉じよく味わう。
その第一声を待つ静寂。
馬鹿みたいな話だけど、そんな感じだ。

だけど美優は、無言のままだった。

無言のまま、再び翔の肉棒に手を伸ばす。

シコシコ…

「え、あ…」

シコシコ…

「フフッ。明日、頑張ってよ。」

不思議な笑顔…。
普段見たことの無い、優しい笑顔…。

「う、うん…」

シコシコ…

「絶対受かんなさいよ!」

美優がニヤけた笑顔でそう言うと、
翔の顔が一変した。

「や、やばい!もう…無理…」

シコシコ…

「はぁ?もっと自信持ちなさいよ!」

ちょっと不機嫌そう…。

シコシコ…

「そ、そうじゃなくて…、あ! あぁ…」

ビュッ ビュッ ビュッ

美優の背中に炎が見える…。
メラメラと怒りに燃えるその拳。

「あんた!顔にかかったじゃない!!」

こっちのほうが、美優らしいな。
…そうは思った。
けど。

「しょうがないじゃな…い…か…」

美優の顔を見ると、声が途絶えた。
この画は… エロ過ぎる…!
美優の顔面にぐっちょり付いた大量の精液。
怒った顔さえ可愛い美優。
なんだか、夢みたいだなぁ…。
夢みたい…
夢…
なんか…ボーっとしてきた…。

「んん… 緋村ぁ…」
「…翔?寝ちゃったんだ…
 クスッ、そんな気持ち良かったのかな。」

美優の優しい笑顔。
精液塗れの笑顔。
美優は自分の顔に触れてみる。
ぐっちょりと付いた粘液が、
なんともいえなく気持ち悪い…。
指に付いたその液を、ちょっと舐めてみる。

「これが… 翔の味…」

指をしゃぶったまま、沈黙…
眉をひそめた。

「…微妙…」

翔の寝顔を覗く美優。
フフッとほくそ笑んで、
寝ている翔の耳元で囁いた。

「翔って…。イクとき、案外カワイイ顔するのね。」

そして、僕達の教師と生徒の関係は終わった。
長かった受験が、終わったんだ。
やるだけの事はやった。
本試もしっかり出来たし、
面接も上手く出来た。…と思う。
後は結果を待つのみ。
だけど、なんだろう…
この胸騒ぎ…。

「なんであたしがあんたの合格発表に
 付き合わなきゃなんないのよー。」

こんな時でもこの調子。

「別に付いて来てなんて言ってないよ?」

翔が普段より荒っぽい言いぐさで言うから、
美優の機嫌はますます悪くなる。

「はぁ?わざわざ来てやってるのに、そんな事言う?」

ふたりとも、いつもと少し違う。
緊張――しているのだろうか。

「落ちてたら、思いっきり笑ってやるんだから!」

そんな事を言う美優も、また、可愛かった。

合格者が張り出された掲示板の前に立ち、
ふたりは息を呑んだ。

「……見るよ。」
「…うん。」

僕達の運命の歯車が今、こうして回り始める…。

 *********************************************

    第弐章 高校時代 −Ambivalence−

 *********************************************

「蒼い空に… 雲は流れ… かぁ…。」

  翔
     退屈なヒト…
          無気力なヒト…
  美優           優しいヒト…
     勝気なヒト…          地球のシト…
          可憐なヒト…
  綾            温かいヒト…
     妖艶なヒト…          太陽のシト…
          美しいヒト…
               冷たいヒト…
                       満月のシト…

少年は、空を見ていた。
何の意味もなく、ただボーっと…。
教室は煩い。
みんな無駄にはしゃいで、何が楽しいんだろう。
以前の翔なら、そう思っていただろう。
だけど、今の翔は――
  ――何処か輝いている。
空を見上げるその眼差しも…。
これから始まる退屈な毎日も…。

クラスに必ず一人はいるような
二枚目男女のたわいもない会話。

「あ、今日って1時間目数学のテストだっけ!?」
「うん。そうだよ。」

彼女は走らせていたシャーペンの動きを止め、
彼の顔を見上げる。

「あ〜、俺、もう無理だ。
 今から勉強しても絶対受からないし!」

わざとらしく嘆く彼を一瞥し、彼女は再び自分の勉強に戻る。
そんな彼女が気に入らないのか少しムッとして、単刀直入に彼は聞いた。

「緋村さんって、彼氏とかいるの?」
「ん?」

不思議そうな顔で彼を見上げる。

「いるけど…?」
「え!? 誰…?」

美優は惚気た顔で微笑み、シャーペンで窓際の少年の方を指した。

「ほら、あいつ。」
「えー!!緋村さんって、緒方くんと付き合ってるの!?」

話を盗み聞きしていたクラスの女子達が騒ぎ出す。
偏差値の高いこのS高でも、生徒は所詮ただの高校生。
色恋沙汰の話には、すぐ食い付く。

「え!マジマジ?」
「うっそー!?」

美優はしまったという顔で、すぐに冷静を装う。

「じょ、冗談よ!」
「嘘だね!ホントは付き合ってるんでしょ!
 どうなの緒方くん!?」

翔は困った顔で愛想笑いする。
まだ翔には友達がいなかったので、
そんなに絡まれずにすんだ。
今この学校にいる知り合いは、
偶然にもまた同じクラスになった美優と綾、
それと隣のクラスに美優の親友の恵。
そのくらいだ。

翔はもともと友達を作るのは得意ではないし、
高校に進学したからといって
わざわざ積極的に友達を作る気にもなれない。
なぜなら、翔には美優がいるから。
それだけで、充分だから。

「まったく、今朝はヒドイ目に遭ったわ。」
「緋村がうっかり喋っちゃうから…」

翔がそう言うと、美優は頬を膨らませる。
雲ひとつない青空…。
屋上は風が気持ちいい…。

「だって…、翔と付き合えるのが嬉しかったから。」
「え?なに?」

風の悪戯で、美優の声が聞こえない。

「何でもないわよ!」

イーッとした顔で、そう叫んだ。
美優の長い髪が、風になびく。
高校生になった美優は、一段と大人びて見えた。

「そういえばさ、髪の毛染めたでしょ。
 大丈夫なの?いきなり校則破って…。」
「大丈夫よ。
 最初っから茶髪なら、誰も怪しまないでしょ。
 ちゃんと担任には地毛だって言ってあるから。」
「ふ〜ん…」

茶色に染めた長い髪は、どう見ても校則違反。
緋村、ムチャするなぁ…。
でも、そんな破天荒な性格も嫌いじゃない。

「…似合わない?」

風になびく長い茶髪を押さえる仕草が、
素敵だった。

「似合ってるよ。
 その… 可愛いよ。」

顔を赤らめる初々しいふたり。

「そう?」
「うん。」

ヘヘッと笑みを浮かべ、
美優はとても機嫌が良い。
今は昼休み。
ふたりっきりで弁当を食べるために、
立ち入り禁止の屋上に無断で侵入したのだ。

「…じゃ、お弁当食べよっか。」
「そうね。
 でも、その前に…」

そう言って上目遣いで見つめてくる美優が、
翔の心を悪戯にくすぐる。

ふたりは目を閉じた…。

チュッ♪

ブーっと真っ赤な頬を膨らます美優。
期待はずれなキスに機嫌を損ねる美優もまた、可愛かった。

この、意気地無し!

美優はきっとそう思っただろう。
だけど、実はそうじゃなかった。

「…緋村、好きだよ。」

こんな間近で言われたのは初めてだ。
翔の吐息が感じられ、なんだか変な気分…。

「嬉しい…。」

美優は珍しく素直に、そう呟いた。
翔は美優の髪を優しく撫でた。
粉雪のようにサラサラで、なんとも愛おしかった。
そして、美優のあごに手を当て、優しくエスコートする。
ちょっと震えているのが可愛いななんて思いながら、
美優はゆっくり目を閉じた。
ふたりは再び唇を重ねる…。

美優は翔の気持ちを尊重してか、
今日はおとなしくしている。
ほんの数秒だって、待ち遠しい…。
早く翔を求め、翔に求められたい…。
そんな想いは、翔に伝わっているのか、いないのか…。

――― そして、ようやく翔の舌が暴れ始める。

「ぁん… んん…」

翔の舌を優しく受け入れ、
自分の舌を絡める。
吸い付くように襲い来る翔の唇…。
高鳴る胸の鼓動…。
美優は翔の腰に手を回す。
ギュッと抱き締めて、甘く切なく愛を求める…。

「んんぁ… ふぁ…ん」

意図的に唾液を混ぜ合い、恣意的に愛し合う…。
青空の下でふたりは。

「んぁあ! んぁ… はぁはぁ…」

ふたりの唇が離れる…。
唇と唇の間に、いやらしい架け橋が架かる。
甘い吐息が、切ない…。

顔を真っ赤にして、見つめ合うふたり…。

そんなにまじまじと見つめられると、
それだけで、もう…。

「う、上手くなったわよ。」

そう言って美優は目を逸らした。
「そう?」と冷静を装い笑いながら、
家でシュミレーション(妄想)してきて良かった!
翔は小さくガッツポーズをしたのだった。

「お弁当食べましょ!」

そう言って恥ずかしさを紛らわそうとする美優。
小さめなお弁当箱を開けると、なんだか良い匂い。

「うわー、美味しそうだね〜。
 自分で作ったの?」
「え…、そんなワケないじゃない!
 おかーさんよ。」
「あ、そう。」
「あんたねえ、あたしが料理なんて出来ると思ってるの?」
「ハハッ まあ、思ってないけど。」
「ひどーい!」

美優は頬を膨らせる。
怒っているのに楽しそう…。
翔はこの顔が大好きだ。
弁当を食べながら話す。
美優と食べると、冷え切った手抜き弁当でさえ
美味しいから不思議だ。
たわいもない雑談も、くだらない笑い話も、
なんだかとても楽しかった。

「あ…、放課後、暇?」

突然の質問に、ちょっとドキッとした。

「うん。」

特に用事はない。
というか、仮に用事があっても、
美優の誘いなら大概の用事はすっぽかすだろう。

「じゃあさ、買い物付き合ってよ。」

デートのお誘い…。でも…

「…おごらせる気?」
「もちろん。」

フフッと嘲る美優。
そんな意地悪な笑顔で、僕を見ないでよ…。
翔は困った顔をした。

「え〜、どうしようかなぁ。」
「いいわよ、嫌なら。」
「え… あ、行くよ行くよ!」

慌てふためく翔と、それを見て笑う美優。
恋人のようでもあり、友達のようでもある。
そんなふたりの、不思議な関係。

「スキ」という言葉と共に。
「好き」という気持ちと共に。

「ちょっと緋村…、マズイよ、こんな…」
「いいじゃない、減るもんじゃないし。」
「でも… 恥ずかしい…。」
「大丈夫、別に誰も見てないわよ。」
「そういう問題じゃなくて…」

見慣れぬ光景に、翔はもうクラクラだ。

「ねえ、こっちのブラと…」

ピンクのブラジャーを胸に当てて見せる。

「こっちのブラ…」

今度は黒のブラジャー。

「どっちが好み?」
「そ、そんなコト僕に聞かないでよ!」

翔は顔を真っ赤にして怒る。

「だいたい何で彼氏連れて下着なんて買いに来るのさ!」

「しょうがないじゃない、
 おっぱい大きくなっちゃったんだから!
 今のサイズのはもう着れないのよ!」

翔は美優の胸に視線を落とし、顔を赤らめる。
おっぱい大きくなったんだ…。

緋村のおっぱい…。
緋村のおっぱい…!

見たい触りたい揉みたい摘みたい舐めたい吸いたい―――

うわーーーーーーーーーー!!

すぐに目を逸らした。

「だ、だからって、僕を連れて来る必要ないだろ!」

翔が少し大きめの声を出すと、美優は驚き目をテンにした。
それから不機嫌そうに小声でブーたれる。

「興味あるクセに…。」

ドキッとした翔は、恐る恐る美優の胸をまた見てしまう。
興味あるのは仕方がない。
だって、♂だから。

「で、どっちが良いのよ!」

ピンクを右手に、黒なら左手に――
このブラが、緋村の胸を包むのかぁ。
そんな事を考えて、ちょっと挙動不審。

「んもう、はっきりしないわね。
 ま、いいわ。どうせあんたのお金だもの。
 両方買うわ!」
「そ、そんなぁ…」

「ブラジャーって、結構値段するんだね…。」

ほとんどカラになった財布の中を眺め、翔は嘆く。

「ヘヘッ 今月お小遣いピンチだったから助かったわよ。」

美優のこの笑顔、いつ見ても可愛い…。

「なんなら、もう入らないブラジャーあげようか?」

こういう小悪魔な笑顔も、すごく可愛い…。

「な、何に使うのさ。」

だけど…

「え…あ…その…、な、何でもないわよ!冗談よ!」

こうして顔を真っ赤にして慌てる美優が、
やっぱり一番可愛い!

「変なの…」

と、そ知らぬフリして呟く翔。
もちろんブラは欲しいし、使い道も知っている(?)
美優は大胆発言が多いし、やけに積極的だし、
実は案外スケベなんじゃないかと翔は疑う。
だけどそんな美優も嫌いじゃない。
気が強くて、勝手で、
恥ずかしがり屋で、ちょっぴりエッチな美優。
そんな美優が、翔は大好きだ。

「お待たせしました。
 こちらチョコレートパフェになります。」
「あ、来た来た。」

ウェイトレスが持って来たパフェを嬉しそうに受け取る美優。

「あん。あ〜、おいちい♪」

女の子は甘い物が大好き。
美優もそうらしい。
美優が美味しそうに食べる様子を、
幸せそうに眺める翔。

「ん… 食べる?」
「え、あ…うん。」

別に欲しくないけど、せっかくだから。
間接キス出来るし。

「はい、あーん…」

でも美優は、期待以上にバカップルな事をしてくれた。

「…あ〜ん」

翔は顔を赤らめながら、口を開けた。

「美味しい?」
「うん…。」
「フフッ…」
「恥ずかしい…。」

美優の悪戯な笑顔に、翔は頬を赤くする。

「今日は…その…ありがとね。」
「え?」

美優が柄にもない事を言うから、
翔は戸惑う。
街は夕焼けに染まり、
ストリートミュージシャンが唄う。

「聞いてください…
 仁元実華で、『START』」

微かに聴こえる情感漂うバラードを
バックミュージックに、ふたりは寄り添う。

「…初デートだね。」
「そうね。
 …楽しかったわよ。」
「うん、僕も…。」
「じゃあ、また明日…」
「あ、緋村!」
「ん?んん…!」

振り向いた美優の唇を、翔が奪った。
美優は驚いた顔をした後、
嬉しそうな顔をしてすぐに目を閉じた。

  Iwannastart
  これからのstory
  重なるふたりの影よ
  始まり告げる言ノ葉
  愛しい人と
  共に奏でるIknowmelody

とある日の放課後の教室…
グラウンドの方から、
部活動をする生徒たちだろうか…
賑やかな声が微かに聴こえる。
ふたりは隣り合った机の上に座り、
互いに身を寄せ合う。
邪魔者は、誰もいない。

「緋村…」
「翔…」

見つめ合うふたり…。
どれだけ見つめても
決して見飽きる事の無い顔…
どれだけ囁き合っても
決して聞き飽きることの無い声…

「緋村… 好きだよ。」
「…あ…あたしも…
 その… 大好き…」

美優は頬を紅潮させる。
普段は積極的な美優だが、
自分の素直な気持ち−裸の心−
それを露にするのは、すごく苦手だった。

「緋村…」

ふたりの唇が、徐々に近づいてゆく…。
それとともに、自然と目を閉じ、
身体を抱き合い、互いを感じ合う…。

そして…

ふたりの距離がゼロになった瞬間!!

ガラガラガラ!!

ドアの開く音に驚き、ふたりは慌てて顔を離して
なんでもないフリをした。
顔が強張る…。
ドキドキが、止まらない…。
恐る恐る後ろを振り向いてみると…
そこには、担任の体育教師が
眠そうな顔をして立っていた。
この教師、ガミガミと煩い教師が多いこの進学校で
体育教師という気軽な立場のためか
煩く言わない物分りの良い教師として結構人気があった。
だが彼の欠点は、どうしようもなく鈍感な所だ。

「おお、緒方。
 ちょうどいい所にいた。」

(ちょっと!邪魔しないでよ!)

美優は眉間にしわを寄せる。

「確かお前、西濱と仲良いだろ?」

翔は、嫌な汗をかいた。

「え…?」

ギロリと光る鬼の目。
ひいぃ!

「べ、別にそんな事はないですけど…」
「あれ?そうか?
 でも、家は知ってるだろ?」
「あ、はい。近所なんで…。」
「悪いけどよ、
 この書類、届けてくれないか?」

教師は封筒を差し出す。
結構な厚みがあった。

「大事な書類だから今日中に…
 本当は俺が届けないといけないんだが、
 あいにく急用が出来ちまって…。」

よくよく見ると、教師の目の下にはくまが出来ていて
とても疲れが溜まっているように見える。

「別にいいですけど…」

チラッと横に目をやる。

「なんであたしを見るのよ!届けてあげなさいよ。」

美優はご立腹だ。

「あ、うん…」
「おお、頼まれてくれるか。
 悪いなあ。
 すまんが、今日中に届けてくれよ。」

西濱の家に来るの…何年ぶりだろう…。
綾は幼い頃に両親を亡くし、
それからはずっとアパートで一人暮らしを続けている。
頼れる親戚などもおらず、
両親が残してくれたわずかな貯金と奨学金、生活補助金などで
なんとか生活してきたという。
でも、今にして思えば
綾はどうして施設などに送られなかったのだろうか。
預かった書類が気になる。
何の書類なんだろう。
奨学金とか、補助金とか、そういうのに関わる書類だろうか…。

謎だらけだ。

古びたアパートの一画
綾の部屋の前へと辿り着いた。
あまりに静か過ぎて、インターホンを押すのにも勇気がいる。

ピンポーン

「誰?」

短く冷たい返事が返ってくる。

「あ、緒方だけど…。なんか担任から書類を届けてくれって頼まれて…。」

ガチャッ

「どうぞ。」

ギィーと音をたてて、ゆっくりとドアが開く。

「はっ…!!」

翔の顔が引き攣る。
翔の目に飛び込んできたのは、綾の乳房。

そう――

綾は、裸だった。

「え、あ…その…」

翔は顔を真っ赤にして目を逸らす。

「…上がって。」

綾は中に入るように促す。

「あ、うん…」

綾は全裸だ。早くドアを閉めなくては…。
そう思って慌てて中に入った。
でも冷静に考えてみれば、
このとき書類だけ手渡して
すぐ扉を閉めればよかった。
そうすれば、あんな事にはならなかったはず…。
綾の部屋は、異様な雰囲気に包まれていた。
静寂と哀愁が支配する世界。
あの頃と、何も変わっていない…。
生活感の無い部屋だった。

「そのあたりに座ってて…。」

綾は奥の部屋へと翔を通す。

「紅茶で良い?」
「え、あ…お構いなく…」

綾が部屋から出てゆき
カタンッと戸の閉まる音が聞こえたところで、
翔はようやく一息つく。
徐々に冷静さを取り戻し、身震いした。
この部屋に上がり込んだ事を後悔した。
扉の向こうで、綾がお湯を沸かしているようだ。
翔は床に座り、部屋を眺める。

綺麗に片付いている…。
というよりは、物が少ない気がする。
テレビや電話すら見当たらない…。
部屋の3分の1はベッドが占め、
机の上にはきちんと並べられた教科書が並ぶ。
椅子に、バスタオルが掛けられていた。

…そっか、きっとお風呂にでも入ってたんだ。
そのまま出てきちゃうなんて、西濱らしいな。

…でも、女のコの裸なんて、初めて見た。
すぐ目を逸らしちゃって、ほとんど見てないけど…。

ん…?

翔は、机の上に無造作に置かれた手帳を手に取った。
綾とは似つかない、可愛らしい手帳だった。
いけないとは思いつつ、手帳を開いてみる…。
それは、プリクラ帳だった。

最初のページ…

小学3年生くらいだろうか。
プリクラの中の綾はどれも笑顔だった。
西濱って、笑うとこんな顔するんだ…。
まだあどけない顔の綾が、なんとも愛らしい。

しかし、次のページから綾に笑顔は無くなった。

無表情でポーズを決める綾。
ぼーっと立ち尽くす綾。
困惑気味な顔で、ピースサインをする綾。

なんだ、西濱も案外普通の女の子なんじゃないか。
翔は微笑ましい気持ちになる。

だが、気がかりなのは、どのプリクラも、全部ひとりで写っているという事。

誰かと写ってるのはないのかな?
そう思い、ページを捲ってゆく。

綾の服が中学の制服になると、なんだか雰囲気が変わってきた。
その理由はすぐにわかった。
綾は、プリクラを撮るとき
制服を着崩していたのだ。
普段は真面目に校則通りの服装をしていたのに、
プリクラに写る綾は
ボタンを外し、大きく胸元を開けていた。
なんだか、意外だった。
さらにページを捲る。

な、なんだこれ…!!

そのページに貼られたプリクラは、
着衣が乱れブラジャーが丸出しになっていたり、
ブラジャーすらずれて
胸が露になっているものばかりだった。
まるで、誰かに犯された後ように…。

冷たく嘲る綾の表情は、レイプされた後の放心状態のようにも見える。

困惑する翔…。
さらにページを捲る。

次のページの綾は、
自分でスカートを捲り上げ
ピンクのパンティを見せていた。

下着姿で無表情の綾。
上半身裸になって、乳首を勃起させている綾。
パンティを脱ぎ捨て、恥毛の無い秘部を晒す綾。

もうその後は、服を着た綾は写っていなかった。

見てはいけないものを、見た気がする…。

ガチャッ

戸の開く音を聞いて、翔は慌ててプリクラ帳を閉じて
元の位置に戻す。

嫌な予感が、胸をよぎる。

ふたつのティーカップを乗せたトレーを持って
部屋に戻って来た綾は、

やはり

…悲しいほど全裸だった。

綾の身体は細い。
背中から羽が生えて、
今にも飛んでいってしまいそう…。

アルカイックな無表情と、虚ろな紅い瞳…。

雪のように白い肌に、赤く勃起した乳首がツンと上を向いている。

秘部には相変わらず恥毛が無かった。
秘裂が、外気に晒されている。

翔は身震いした。

綾はテーブルにティーカップを並べ、翔の向かい側に座った。

綾は紅茶を一口飲む。
全裸のティータイム…。
綾にとっては、普通の事なのだろうか…。

翔は鞄から封筒を取り出し、綾に差し出す。

「これ、預かった書類…。」
「ありがと。」

翔も震えた手でティーカップを口元へ運ぶ。
紅茶は、苦かった。

沈黙が続く…。
逃げるに逃げられないこの状況…。
気まずい空気が痛いほど冷たく、翔の思考を麻痺させる。
目の前の綾の裸体は、
この世のものとは思えないほど
清らかで美しい。

息をするのも忘れてしまうほど
引き付けられる神秘的なヌードは、
まさに…
凍てつく冬の夜の満月。

翔は、恐る恐る口を開く。

「あ、あの…、服は…着ないの?」

…ついに聞いてしまった。

「服?」

もっと早く気付くべきだったんだ。
開けてはいけない扉もあるんだと。

「…そんなモノ、無いわ。」
「へ?」
「学校で着る服以外…持ってない。」
「…で、でもほら、えと、あの、パジャマとか下着とか…」
「それも捨ててしまったわ。」

しどろもどろの翔の言葉を、綾の冷たい言葉が遮る。

綾はテーブルに手を突き
ゆっくりと身を乗り出し、翔に迫る。

「…制服か体操服かスクール水着か、どれか着たほうが良い?」

困惑する翔を嘲るように、虚ろな瞳で翔の目を見据える綾。
翔は耐え切れずに目を逸らした。

「したいの?」
「え…」
「セックス、したいの?」

ゴクンッ

「わたしと、セックスしたいんでしょう?」

綾は翔を押し倒し、ボタンをひとつずつ外してゆく…。

緋村…
助けて…

「うわーーーー!!」

僕は、逃げた。
綾を突き飛ばして、
悪夢の部屋から逃げ去った。
突き飛ばした綾の裸体は、
羽のように軽かった。

澄み渡る青い空…
流れる白い雲…

翔は今日も空を見ていた。
今朝は少し早く来過ぎた。
教室には翔以外まだ誰もいない。
こんな時は、ぼんやりと空を眺めているのに限る。
嫌な事も全部忘れさせてくれるから…。
空が晴れれば、僕の心も晴れる…。
暫くぼーっと空を眺めていた。

……!!

急に背中に寒気が…
誰かの視線を感じ、振り向く。

「に、西濱…」

教室に入ってきた綾は、
じっと翔を見つめている…。

血のように紅い瞳で見つめられ、
翔は目を逸らすことが出来ない…。

「おはよう。」
「え、あ…お、おはよう…」

翔が声を裏返しても、
綾は無表情のまま自分の席に着く。

綾は翔の事など気にもせずに、
鞄から本を取り出し読み始める。

気まずい…。

綾の事は考えないようにしよう。
そう思えば思うほど、頭は錯乱し、鼓動は高鳴る。

表情に乏しい綾は、その仮面の向こう側で何を想うのだろう…。

綾は独特な近付き難いオーラを放っている…。

息も詰まるような冷たい空気が、翔を襲う…。

と、そこへ…

「おっはよ〜」

澄ました顔で美優が登場。

「あ、緋村… おはよう。」

ようやく悪夢から開放された翔は、安堵の表情を浮かべた。
だが、そんな翔に美優は聞くのだ。

「昨日、あのコの家に行ったんでしょ?
 あのコと、なんも無かったでしょうね!?」
「ぁ、あ、当たり前だよ!」
「ま、そりゃそうよね。
 あんたにそんな勇気があるわけないし。」

美優はおどけてそう言うが、
翔は生きた心地がしない。

「なんだよ〜、それ。」

無理に明るく振舞うのがやっとだった。

「フフッ
 そのまんまのイ…ミ…よ…」

クラッ…

「緋村!?」

突然倒れた美優を、とっさに翔が支えた。

「だ、大丈夫?」
「な、なんでも無いわよ!
 ちょっとめまいがしただけ…。」

強がる美優が、翔は心配だった。

「保健室、行く?」
「いいってば!」

翔の手を振り払う。

「そ、そう?
 ほんとに大丈夫?」

「しつこいわねぇ。
 しつこい男は、嫌われるわよ!」

なんだろう…
この胸騒ぎは…

「ん… 4時間目は…体育かぁ。」

翔は時間割を確認し、
プールバッグを取り出す。
次の時間は水泳。
中学と違って男子にもきちんと更衣室があるから、
翔は気が楽だ。
プールバッグを片手に更衣室に向かう。
一方美優は、なんだか浮かない様子…。
「ふぅ…」とため息をついて教室を後にした。
更衣室に辿り着いた美優は、
端のロッカーを選んで荷物を投げ込む。
更衣室が混んでいる事もあって、
美優は少し機嫌が悪い。
美優は服を脱いで裸になる。
周りは女子だけだから、
見られても別に気にしない。
だが…。
大きめの胸と、フサフサの恥毛。
くびれたボディと、スラリとした脚。
スタイルの良い美優は、みんなの憧れの的だ。

「緋村さんって、おっぱい大きいよね〜。」

同じクラスの女子の一人がそう言うと、
みんな一斉に美優を見る。

「ん? そんな事ないよ。」

と美優は言ったが、晒された乳房はその大きさを偽ることは出来ない。

「触らせて♪」
「ちょ、ちょっとぉ!」

一人がふざけて美優の胸にタッチすると、

「あ〜、わたしも触りたい〜!」

と、何人もの女子が群がってくる。
美優は案外女子からもモテるのだ。

「ちょっといい加減にしてよ!」
「隠さないから悪いのよ!」
「そうよそうよ、大きいからって見せびらかすから!」

クラスのリーダー格の女子たちが不平を並べると、隅の方で誰かが嘲る。

「小さいからって僻むなよ。」
「あ、あなたに言われたくはないわよ!」

キーンコーンカーンコーン

「あ、ヤバイ! 急がなくちゃっ!」
「緋村さんも急いで! 遅刻よ!」

「お前ら遅いぞー!」
「すいませーん…」

腕を組んで待っている体育教師の前に、
ピチピチの水着姿の女子高生たちが集まってくる。
この教師、翔たちのクラスの担任で、
授業は女子の体育を担当しているのだ。

「全員集まったかぁ?
 ひぃ、ふぅ、みぃ…」

人数を数える。

「ん…
 西濱はどうした?
 今日は休みかぁ…?」
「3時間目まではいましたけど…。」

クラッ…

「緋村さん!?」
「緋村!?」

担任が駆け寄る。

「おい、緋村!
 しっかりしろ!!」

担任の呼びかけに、
美優は「うぅ…」と覚束無い言葉を発する。

「俺は緋村を保健室に連れて行くから、
 準備体操が終わったらシャワー浴びて、
 そうだな…
 とりあえずクロールと平泳ぎを一本ずつやっとけ。」
「ええー!」
「サボるなよ!」

「緋村さん、どうしたのかしら…?」
「やっぱ胸揉んだのがいけなかったのよ。」
「そんなワケないし。」
「はいはい!みんな、準備体操するわよー!」

体育委員が前に出る。

「いっち、にい、さん、しい…」

体育委員の掛け声に合わせて、
準備体操をする女子たち。
みんなやる気なさそうだ。
まとまりのない団体演技が、
女子高生のひとつの魅力なのかもしれない。

「にい、に、さん、 ……!!」

突然、体育委員の声と動きが止る。
エイリアンでも見たかのように
目を見開き瞬き一つしない彼女の驚愕の表情は、
みんなに異常事態を知らせるには充分過ぎた。

「どうしたの…?」
「きゃあああ!!!!」

初夏のプールサイドに響き渡る悲鳴。
女子たちが見つめるその先に立っていたのは、
一糸纏わぬ姿の、翼の折れた天使…。

西濱綾、その人だった。

「な…、西濱さん!?」
「ど、どうしたの?」

動揺が走る。
女子たちみんなが綾を見ている。
綾はその視線をどう感じ、何を想うのか…。

この視線…
この空気…

彼女は、感じていた…。

「水着を忘れたの。」
「授業は休みたくないから、この格好で授業を受けるわ。」

呟くようなその声は、鋭い刃のように簡単に突き刺さる。

「さ、準備体操…しましょ?」

不敵な笑みを浮かべ、女子たちの集団に入ってゆく。
スクール水着の群れの中で、綾の裸体は…
残酷なまでに、美し過ぎた。

「なんだか女子が騒がしいなぁ。」

女子の悲鳴は翔たちにも聞こえていた。

「おい、見てみろよ!」

  「なんだ、あれ?」
  「なにあれ… は、裸じゃねえか!?」
  「だれだれ!?」

「ま、まさか…」

翔は冷や汗が垂れるのを感じながら、
恐る恐る女子の方に目をやる…。

  「西濱だぜ!」
  「いじめか?」
  「くそう、遠くてよく見えないぜ!」

「西濱…」

翔の嫌な予感は的中し、信じたくない事実が、またひとつ現実味を帯びる。

  「おい、あんま見てると先公に気付かれるぞ!」
  「そ、そうだな…」
  「待てよ、先生に言った方がいいんじゃないのか!?」
  「関わらない方がいいって!」
  「そうだよ、女子もみんな見て見ぬフリじゃないか。」

人間って、冷たい生き物なんだなぁ。
…僕も、同じか。
翔は拳をギュッと握り締め、
受け入れ難い現実に目を瞑った。

あたりは異様な雰囲気に包まれた。
もう悲鳴もざわめきも無かった。
あるのは痛いほど冷たい視線だけ。
綾はそれを、裸の体一身に浴びていた。

精悍な顔つき。
真っ直ぐに睨む、瞳の紅。
真っ白な肌に、赤く勃起した乳首が目立つ。

「いっち、にい、さん、しい…」

先程までの威勢の良い掛け声は何処へやら…
体育委員の声は恐怖に戦き震えていた。
何事も無かったかのように
準備体操を再開したスクール水着たち。
教師に注意されたって私語を止めない彼女たちが、
今は別人のように静まり返っている…。
綾は彼女たちの中心で、身体を動かす。
至って普通の事である。
ただ、水着を着ているか着ていないかの違いだけ。
屈伸をすれば小振りな乳房が揺れ動き、
伸脚をすれば恥毛のない秘部の大陰唇がパックリと開く。
普段見えないものが見える。
見えてはいけないものが、見えてしまう…。

だけど、それの何処がいけないの?

綾は悪びれる事もなく
いつも通り準備体操に勤しむ。
そう、彼女は普段から真面目だから。
準備体操が終わると、次はふたり一組でストレッチ。
プールに入る前には、身体をよく解さなくてはいけないから。

綾のペアになってしまった不幸な女子は
オドオドして顔が引き攣っている。
綾は彼女に不敵に微笑みかけ、

「よろしく。」

凍えるくらい冷たい声で、そっと囁く。
地べたに剥き出しのお尻をつけて、股を大きく広げ、上体をゆっくり倒してゆく。
その綺麗な白い背中を後ろから押す手は、病的なまでに震えていた。
準備体操とストレッチを終えた女子たちは、シャワーの方へ歩いてゆく。
綾も毅然とした態度でその中に交じる。

何を脅えているの?

綾の無言のプレッシャーが、みんなを苦しめる。
全てを曝け出し、全てを受け入れようというのに…。

なぜ、わたしを拒むの?

心の壁が、侵食されてゆく…。

シャワーを浴び、水に濡れた少女たち。
スクール水着はその紺の濃さを増し、
綾の白い肌はその潤いを増す。
他の女子たちが水泳キャップを被っても、
綾だけは何も身に付けない。
生まれたままの姿で在りたいから…。

愁いを帯びた紅い瞳。
濡れ髪が色っぽく、艶かしい。
きめ細やかな白い肌と、上を向いた赤い乳首。
そして、恥丘と陰裂。
冷水で清められた裸体は、儚くも美しい…。
誰も目を逸らすことが出来ない、そのヒカリ…。

いっその事、自分も
着ている水着を脱いでしまおうか…
誰もがそんな過ちを犯しかねない、この空気。

――― 綾の創りし、この世界。

全ての生命は、母なる海から生まれた。
その原始の海を彷彿させるような、この光景…。
水の面を一糸纏わぬ少女が泳ぐ。
日の光は温かく彼女を照らし、水は優しく彼女を包む。
羽衣を奪われた事に気付かぬ天女のように
水と戯れるその姿は、決して卑猥ではなく、神秘的だった…。

彼女の優雅な泳ぎは、見た者の心を捕らえて離さない。
気持ち良さそうに泳ぐその姿は、あまりに… 美しかった。

その神々しい魅惑に女子の多くは不思議と乳首を勃起させ、
少し離れた場所から眺めている男子たちも当然、股間にテントを張っている。

頬を紅潮させた生徒たち。
恥ずべき格好をしているのは、
自分達ではなく綾の方だというのに。

みんな口数少なく、気まずい空気。
水の中に入って泳いでいる孤独な時間だけが、
この息詰まる世界に安らぎを与えてくれる。

プールサイドに教師が立っている。
美優を保健室に送り届けて、戻ってきたのだ。

「よーし、平泳ぎまで終わったら
 いったんプールから上がれー!」

泳いでいる女子に聞こえるように、大声を出す。
彼はまだ、この異変に気付いていない。

端まで泳ぎ着いた者から順に、プールから上がっていく。
みんなの顔が引き攣っている事に、鈍感な教師はなかなか気付かない。
ザバーっと音を立てて
しなやかにプールから上がったひとりの少女。

「お、おい…」

呆然と立ちすくむ教師。

「センセ?」

ハッと我に返った教師は、彼女に怒鳴りつける。

「お、おい西濱!!なにやってるんだ!!」

スラリと立ち尽くす全裸の少女。

「…水着、忘れました。」

その笑みは、不気味なまでに美しい…。

「た、体育委員!タオル持って来い!!」
「は、はい!」

教師は有無を言わせず全裸の綾にタオルを掛ける。
綾は冷たい目線で彼を見つめた。
その紅い瞳にこの世界は、どう映っているのだろう…。

「今日はもう、自由プールでいい。後は任せたぞ。」

体育委員にそう告げると、
教師は綾を連れて出て行った。

女子たちは、どうしていいかわからない…。
自由プールと言われても
今さらワイワイはしゃげるはずもなく、
ただ呆然と立ち尽くすだけだった。

「やっぱ、いじめかなぁ…。」

ひとりが気まずい沈黙を破ると、
それを皮切りに急にざわつきだす。

「うちのクラスにそんな事する人、いる?」
「じゃあ、他のクラス?上級生かな?」
「いじめ…じゃない気がする…。」

ひとりの女子が、ポツリと呟く。

「うん、なんか…、嫌がってないように…見えたけど…」
「というより… むしろ…」
「ま、まさか…」

女子が教室に戻ってくる。
話題は西濱の事で持切りだ。
次々と女子が入ってくる教室のドアを、
翔はぼんやりと眺めていた。

「緋村、遅いなぁ。」

翔の机の上には弁当箱。
いつものように屋上で
美優とふたりっきりで食べるつもりなのだ。

綾の事も気がかりだったが、
もう関わりたくない…というのが
正直な気持ちだった。
もうそんな事は忘れて、美優と幸せな時間を過ごしたかった。

「緒方、ちょっといいか?」

後ろから急に担任の声がして、翔は驚く。

「あ、先生…?」

どうやら翔が眺めていたのとは反対側の
職員室に近い後ろのドアから入ってきたようだ。

「今、時間いいか?
 ちょっと話があるんだが…。」
「あ、はい…」

翔は担任に連れられて、職員室へと向かった。

散らかったデスク。
散乱した書類やらプリントやらが、
この教師のずぼらな性格を物語っている。
担任は真剣な顔で翔に尋ねた。

「なあ緒方…、西濱、いじめられてるのか?」
「知りませんけど…。」
「んんー…」

唸りながら、ボサボサの髪をかく。

「さっきの体育の授業の事は知ってるよな?」
「…はい。」

やっぱ、その事か…。
翔はもう、綾という”世界”から逃げ出したかった。

「本人はな、
 『水着忘れたけど、授業は休みたくないから』
 って言ってるが、んなわけないよな…。」

優秀な生徒が起こした問題に、担任は頭を抱える。

「でも確かにあいつは真面目すぎるから…。うーん…」

『水着を忘れた生徒に、全裸で授業を受けさせた』

となると、この教師の責任問題にもなりかねない。

「まったく困ったもんだなぁ。緒方、それとなく西濱に聞いてくれないか?」
「はい…。」

心当たりは、なくもない…。
というかむしろ、おそらく答えはひとつ…
だけど、翔にはどうしてもその現実を受け入れる事が出来なかった。

「そういえば緒方、お前、緋村と付き合ってるんだって?」
「え…!ち、違います。」

翔が少しビクつくと、急に担任の態度が変わる。

「いいって、別に隠さなくたって。高校生なんだから、青春しろよ!」
「あ、え…はい…。」

翔はタジタジだ。

「あいつは気は強いが、根は優しい良いやつからな。大事にしてやれよ。」
「はい…。」

さすが担任。生徒の性格はしっかり把握している。

「あ、肝心な事言い忘れるところだった!
 その緋村が体育の授業のときに倒れたんだ。
 知ってたか?」
「え!?」

翔は慌てふためく。

「大したことはない、ただの貧血だそうだ。
 今は保健室で休んでるから、見に行ってやれよ。
 彼氏なんだろ?」
「あ、はい!行ってきます!」

翔は普段出さない大きな声で返事をし、
一目散で職員室を出て行った。

「なんだあいつ…
 結構熱いじゃねえか。」

担任はニヤリと笑う。

「絶対尻に敷かれるタイプだな…。」

「緋村ぁー!」

勢いよくドアが開く。

『保健室 お静かに』と書かれた札が大きく揺れる。

「はぁ…、はぁ…、誰もいない…?」
「翔?」
「あ、緋村?」
「ここよ、ここ。」

美優はカーテンで仕切られた
向こう側のベッドに寝ているようだ。

「緋村、大丈夫?」

そう言ってカーテンを捲る。
美優はベッドで横になっていたが、
ゆっくり起き上がり、そっぽを向いた。

「大丈夫よ、別に…。」

そんなつっけんどんな態度が、美優らしい。

「その…心配してくれて…、あ、ありがと…。」

美優は目を伏せ頬を赤らめてそう言う。

「顔赤いよ?熱でもあるんじゃない?」

そう言って美優のおでこに手を当てる翔。

「ばか…。」

美優は小さく呟いた。

「寝たほうがいいんじゃない?」
「そうね…。」

美優は再び横になる。
少し疲れたようだ。いろんな意味で。

「あ、あのさ。眠るまで…その…側にいてくれない?」

美優は天井をぼーっと見つめるふりをして、
何でも無いように装う。

「緋村…」

そして、更に顔を真っ赤にして言う。

「それとさ、その…そろそろミユって呼んでよぉ…」

翔の顔なんて、見れるわけがない。
恥ずかしがってそっぽを向く。
気付けば、翔の顔が美優の目の前に。
翔は真っ直ぐに美優の目を見つめる。
美優はキョロキョロと視線を合わせようとしない。
翔も美優もゴクンッと息を呑んだ。

「好きだよ、美優…」

心臓がドキンッと音を立てたのがわかった。
美優は思いっきり目を瞑る。

「…あたしも、好き!」

美優の真っ赤な顔が、あまりに可愛過ぎて…
美優の唇を、翔のそれが捕らえる。
翔の右手は美優の髪を撫で、美優の右手は翔の首に触れる。

いつものように舌を絡め合い、
いつものように愛し合う…。

だけど、唇が離れた瞬間の美優の顔は、
いつも以上に、幸せそうだった…。

「じゃ…、僕、ここにいるから…、寝なよ、美優。」

ぎこちない言葉が、愛おしい。
顔が火照ってしまって、眠るどころじゃない美優。

「誰か来たらマズイから、カーテン、閉めておくね。」

翔がカーテンを閉めて、もうここは、ふたりだけの世界。
授業の事も、綾の事も…

全部忘れて―――

その白いカーテンは、放課後まで開くことはなかった。

あの事件から数日。
綾は何事も無かったかのように、普通に高校生活を送っている。
あの事件以来、みんなから白い目で見られている綾…
だが、もともと友人のいない綾にとっては、
それは大した問題でも無いのかもしれない。
あの事件の事は、みんな暗黙のうちに
口に出さないようにしている。
だが、その事は
あの日あの場に居合わさなかった
美優の知るところでは無い。
綾の実に、おそらく一番近いであろう翔は、
その日々の苦悩と葛藤していた。
忘れよう、忘れよう…
そう思えば思うほど、目に焼きついて離れない
綾の裸身。

逃げたい、逃げたい、しかし決して逃れることの出来ない

現実。

でもその一方で、美優との恋愛は
恐いくらい順調に進んでゆくのである。

「え!?今週の土日…?」

翔は目を丸くする。

「うん。」

美優はドキドキした様子で翔を見つめている。

「まあ、大丈夫…だけど。」
「親が旅行に行って、誰もいないから…」

それってつまり…!?

翔の脳裏には、美優の淫らな姿が――
バスタオルでギリギリ体を隠しながら
ベッドの上で手招きする美優…。
もちろん妄想でしかない。
実物を見たことなんてないから。

「…泊まりに来ない?」
「いいの!?」

あまりに興奮しすぎて、
教室中に響くような大声をあげてしまった。
クラスメイトに注目され、
ふたりとも顔を真っ赤にする。

「か、勘違いしないでよ!
 変なコトとかしたら、追い出すからね!」

目をキョロキョロして、
そう言った美優の真っ赤な顔が
とってもウブで可愛かった。

「緋村の家って…結構大きいんだ…。」

口をあんぐりと開けて思わずそう呟いた翔を、
美優がギロリと睨む。

「み、美優の家ね。」
「よろしい♪」

名前で呼んでもらうのが、最近のお気に入り。
まだ慣れてないせいか、翔はタジタジだ。

「そんなでもないわよ。
 ふつーよ、ふつー。」

普通ではない。
豪邸という程ではないが、なかなか立派な家だ。

「お邪魔します…」

誰もいないとわかっていても、
彼女の家に上がり込むのは緊張する。

「はいはい、どうぞー。」

美優は翔をリビングへと案内した。

「その辺に座ってて。」
「あ、うん…。」

翔は戸惑いながらもソファーに腰を下ろす。

「ケーキあるから。」

美優は甘い物がお好き。
何気ないひと言。

「紅茶とコーヒー、どっちがいい?」
「え…」

紅茶は――

もう…飲みたくない…かな。

「…コーヒーで。」

「ん。じゃ、ちょっと待ってて♪」

美優の姿が見えなくなると、翔は辺りを物色し始める。
テレビもソファーもテーブルも翔の家の物より一回り大きく、
部屋は綺麗に片付いていて、文句の付け所もない。
恐らく美優の母親が毎日きちんと掃除しているのだろう。
緋村の部屋も、これくらい綺麗なのかなぁ。
いや… 緋村の性格からして…

「お待たせ♪」
「わっ!!」
「なに驚いてんの?」
「いや、何でも…。」

焦る翔。
おしゃれなコーヒーカップを口元に運んで
気を落ち着かせ、美優の家に来ているんだなぁと
しみじみ実感する。

ふたりきりだからか、普段より密着して座っている翔と美優。

「はい、あ〜ん♪」

美優はケーキを翔に食べさせてあげる。

「じ、自分で食べられるって。」

それを恥ずかしがって拒む翔。
美優は意外とこういう事をするのが好き。

「あー、照れてるぅー!」

いや、むしろ翔が照れる様子を眺めるのが
好きなのかもしれない。
美優はいつも以上の満面の笑みを見せてくれた。

「じゃ、逆に僕が食べさせてあげるよ。」

翔はここで逆襲に打って出る事にした。

「あ〜ん♪」

やってて自分でも顔から火が出る思いだが、
たまには意地悪な事もしてみたい。
美優は顔を真っ赤にしながらも、
翔にケーキを食べさせてもらう。

「美味しいね。」

と照れ笑いした美優を眺めながら、翔は囁く。

「緋村、カワイイ。」
「な、なに真顔で言ってんのよ!
 っていうか、緋村じゃなくて美優!!」

美優、カワイイ。

「もう5時かぁ。」

翔は時計を見上げた。

「ええ!もう5時?
 まったく!なんで土曜日まで補講があるのかしらね。」

この日は土曜日にも関わらず、
進学校であるが故に強制的に補講を受けさせられ、
美優の家に来るのが思いのほか遅くなってしまっていたのだ。

「補講が無かったら、午前中から”美優”の家に来れたのにね。」

よし、今度はスラリと言えた!
と心の中で頷く翔。
美優はドキッとしたのか、
目を見開いた。
でもすぐに平然を装って話題を変えた。

「あー、そろそろ夕御飯の支度しなきゃ…」

「支度って…、もしかして美優が作るの?」

半信半疑で聞いてみる。

「当然よ!」

自信満々に言い放つ美優に、翔は目を丸くした。

「へー、料理とか出来るんだぁ。」
「まっかせといて♪」

でも、弁当は親が作ってるって言ってたような…
美優の性格からして、朝早く起きて弁当を作るのが
面倒くさいだけなのかもしれないが。
美優はエプロンを着て、キッチンに立つ。
若奥様というよりは、幼な妻といった感じかもしれない。

「美優、エプロン似合うね。」

翔が素直にそう言うと、美優はとても嬉しそうな顔をする。

「そ、そう?裸エプロンでもしよっか?」

どうせからかってるだけだ。もうその手には乗らない。

「うん。お願い。」

沈黙。
真っ直ぐに翔を見つめる美優の瞳に、
少し気まずさを覚えた。
美優は目をパチパチさせて呆然とした後、
ハッと我に返って頬を真っ赤に染める。

「や、やーよ!!」

美優はプイッと顔を背けると、
怒涛の如く言葉を吐き捨てる。

「翔のエッチ!!
 変態!!最っ低!!
 もう信じられない!!」

そう一蹴した美優は、はぁはぁと息を切らし
肩で息をしていた。

「自分で言ったくせに…」

酷い言われようだ。

翔が小さく漏らした一言を、
美優の地獄耳は聞き逃さなかった。

「なんか言った?」

美優の右手に握られた包丁が、妖しく光る。

「な、なんも言ってないよ!」
「美味しかったよ、美優。」

翔は出された料理を全部平らげ、
正直な感想を言った。

「そう?」

美優は嬉しそうだ。
少しニヤけたその笑顔、
すごく可愛い。

翔の前にはたくさんの空いたお皿。
この量は小食の翔には少しきつかったが、
美優が作ったとは思えないほど美味しかったので
残さず食べきれた。
もっとも、残したらその後の翔を待ち受ける運命は想像に難くないが。
食事の後は、特にやる事もないから
ふたりでソファーに座ってテレビを見る。
洗い物をしなくていいのか尋ねると、美優は

「いいのいいの、明日お母さんがやるから。」

と無責任な事を言う。
美優の両親は明日の夜に帰ってくるらしい。
親には親友の恵が泊まりに来ると言ってある。

テレビ画面の中では、
ふたりの男子とひとりの女子が
学校の屋上でなにやら楽しそうに話している。
この青春学園ドラマ、
美優は毎週欠かさず見ているらしい。
真剣に見入っている。
翔もそれに付き合う。
ぼーっと見ていたテレビドラマが終わり、
画面にスタッフロールが流れてくると、

「しょ〜お♪」

美優が子猫のようにじゃれついてくる。

「どうしたの?
 …ニヤニヤしちゃって。」

翔は呆れた顔で聞くが、内心満更でもない。
それを知ってか知らずか、
美優は少し顔を赤らめてパワー注入。

「スキだっちゃ☆」
「へ…?」

翔はポカンとした顔。

「なんでもないわよ。ちょっと言ってみたかっただけ…」

テレビの見過ぎだ。
思ったより受けなかったのか、美優は顔を真っ赤にして下を向いた。

「カワイイよ。」
「う、うるさいわね!」

ドラマが終わり、テレビの向こうではニュースキャスターが

キリリとした表情で原稿を読んでいる。

「…県警察本部は、本日午後、長瀬由梨さん(10歳)に対する
 性的虐待などの容疑で、父親の長瀬翔容疑者を逮捕しました。
 長瀬容疑者は…」
「ええ!翔だってー!」

話題を逸らす絶好の機会を得た美優。

「10歳の娘に対する性的虐待って…」

想像したら、冷や汗をかいた。

「翔ってば、ヘンタイ!ロリコン!」

美優は調子に乗って翔の頭を叩く。
そんなに楽しそうに叩かれても、なんて言ったらいいかわからない。

「な、名前が一緒なだけだろ〜!
 そんな事言われても困るよ…。」

なぜかテンションの高い美優。

「フフッ、あたしには性的虐待しないでよ!」

彼女の暴走は、なかなか止まらない。

「はい?」

暫くふざけた会話を楽しんで、話題も尽きだした頃。

「あ、そろそろ…」

と呟いて美優は席を立った。

「お風呂入ってくるね。」
「あ、うん。」

その翔の表情が、美優には
何か物欲しそうな顔に見えたのかもしれない。

「なに?一緒に入りたいの?」

この小悪魔な笑顔が、いつもいつも翔を惑わし狂わす。
美優は少し恥ずかしそうに顔を赤らめ、呟いた。

「いいわよ。」
「え!?」
「う、嘘よ!」

慌てて否定する美優。

「覗いたりしたら、殺すわよ!」

またやられた。
でも、自分で言っておいて恥ずかしがるなら
そんな事言わなきゃいいのに…。

翔は悶々とした様子で、
何十分も頭を抱えたままだ。
美優はお風呂に入っている。
もちろん、一糸纏わぬ姿で…。
ああ、美優の裸かぁ…
見てみたい… 触れてみたい…
そして… あんなコトや…こんなコト…
よし、とりあえず覗きに行こう。
…ダメだ、そんな事したら殺される。
いや、いっその事襲ってしま…
ダメダメ、いったい何を考えているんだ!
でももしかしたら、
美優はそれを待ってるのかもしれない…。
「あー、早く翔が襲いに来ないかなぁ…」とお風呂で
待っているのかもしれない。全裸で…。
いや、そんなワケないか…。
でも襲ってしまえば案外OKしてくれるかもしれない…。
だって、僕らは彼氏と彼女なんだから。
そういう事するのは当然なはず。
そう… あんなコトや…こんなコト…
よし、とりあえず覗きに行こう。
…ダメだ、そんな事したら殺される。
いや、いっその事襲ってしま…
ダメダメ、いったい何を考えているんだ!
でももしかしたら、
美優はそれを待ってるのかもしれない…。
「あー、早く翔が襲いに来ないかなぁ…」とお風呂で
待っているのかもしれない。全裸で…。
いや、そんなワケないか…。
でも襲ってしまえば案外OKしてくれるかもしれない…。
だって、僕らは彼氏と彼女なんだから。
そういう事するのは当然なはず。
そう… あんなコトや…こんなコト…
よし、とりあえず覗きに―――――――

     ―――――――「お先にぃー♪」

「うわあああ――――!!」
「な、なによ
 大きい声出さないでよ!
 ビックリするじゃない!」
「び、びっくりしたのは
 こっちだよ!!
 急に驚かさないでよ!」

そう言って振り返って見ると、
美優はTシャツ一枚に下はジャージ。
白いシャツから、ブラが透けてる…。

「んん…?ど、どこ見てんのよ!!」

若手芸人ばりのその声に、
翔は思わず畏縮する。

「ゴ、ゴメン…。透けてるから…つい…」

その言葉を聞いて、美優は慌てて胸を隠す。

「ええ! 乳首透けて…
 ってよく考えたら、ブラしてるじゃない!」

…ブラは透けてても問題ないらしい。

「いつもは寝るときはブラしてないのに、
 今日はあんたがいるから仕方なく付けてんのよ!」

と、恥ずかしさを紛らわすためか翔を怒鳴りつけた。

「はぁ… ま、いいわ。
 あんたも早く入ってきなさいよ。」

「ふーっ…」

湯船に浸かってリラックス。
温かい…。
なんだか、良い匂いがする…。
翔は風呂のお湯を両手ですくい、
その透き通ったお湯をぼんやり眺めた。
このお湯に美優も入ってたのかぁ…

「美優…」

あっ… 勃っちゃった
顔がニヤける。だらしない顔だ。

「翔、入るわよ〜。」

ガチャ!!

「え、ええ!?」

翔は大慌てでそれを隠す。
浴槽の縁に寄りかかるように身体を倒し、
美優の視点から局部が見えないようにしたのだ。
だが、覗き込まれでもしたらすぐにバレてしまう。

「なに慌ててんの?バスタオル、ここに置いとくわよ。」

美優はそんな不自然な様子を気にもせず、
普段どおり。

「あ、ありがと。」

というか、なぜ堂々と翔の風呂を覗いているのだ。
これが立場が逆だったら、絶対怒るくせに。

「背中でも流そっか?」

そう言って美優は何気ない顔で
バスルームに一歩足を踏み入れる。

「も、もう洗ったよ。」

翔は慌てて嘘をつく。

「そう…?」

美優は少し残念そうな顔をした。
彼女としては、翔の背中を流してあげたかったようだ。
それ以上に深い意味があったのかどうかは、定かでない。

「あ、そうそう。
 あたし、自分の部屋にいるから。
 階段上がってすぐ右の部屋ね。」
「あ、うん…。」
「じゃ、ごゆっくり。」

そう言って美優は微笑む。
カタンと音を立ててドアが閉まった。

「はぁ…
 焦ったぁ…」

どっと疲れた。

「階段上がって、すぐ右っと…」

翔はタオルで髪を乾かしながら、階段を上る。

「ここかな?」

扉に掛けられた

“MIYU’sroom”と書かれた札。

これは確か、中学の美術の時間かなんかの時に
作ったやつだ。
とても上手に出来たと先生に褒められていたっけ。

コンコン

ノックをしても返事がない。
そっと扉を開けてみる。

「ここが美優の部屋かぁ…。」

その部屋は、まさに女の子の部屋といった感じだ。
翔の部屋と同じくらいの広さの部屋に、
服やら鞄やらが所狭しと並んでいる。
わりと綺麗に片付いているが、
普段からこれくらい綺麗にしているのかは疑問が残る。

「美優…、寝ちゃったんだ…。」

美優はベッドの上でスヤスヤと寝息を立てている。

「美優の寝顔…
 カワイイ…」

翔はほのぼのとした気持ちで
微笑みを浮かべた。

「って、僕はどこで寝ればいいんだ…?」

リビングのソファーででも寝るか…。

「まったく。どうしようもないな、美優は…」

そう呟いて美優を眺める。
無防備な寝姿…。

「……オヤスミのキスくらい、
 いいよね?」

心臓が高鳴るのを感じながら、
翔は美優の顔へと顔を近付ける…。

「美優…」

息がかかるくらい近付いて、
美優の寝顔を、美優の唇を、見つめる。

ギロッ

美優が、起きた。

「翔!!」

美優は目を見開いて翔を怒鳴りつける。

「ハッ…!び、びっくりさせないでよ!」

翔は慌てて顔を離す。

「それはこっちのセリフよ!」

怒ったかと思うと、
今度はすぐに不敵な笑みを浮かべる美優。

「でも、あたしの寝込みを襲おうだなんて、
 翔にしては頑張ったわね。」

そう言って翔をからかった。
翔は「そんなんじゃない!」と否定する事もできず、
顔を赤らめてしょんぼりしていた。

「ご褒美に、一緒に寝る?」
「ええ!?」

美優の一言に、また翔は過敏に反応してしまう。
お決まりのパターンなのに、
いつも美優は突然何気なく言うものだから
一瞬本気にしてしまうのだ。
美優は拍子抜けしたような顔。

「早く入んなさいよ!」

この女、何処まで本気なのかわからない…。
いつかの修学旅行を彷彿させるような
美優の布団を捲り翔を招き入れるその仕草。
翔はドギマギしながらも
美優の寝ているベッドに入ってゆく。
どうせすぐに追い出されるだろうと思いながら。

「あ…、電気消して。」

美優にそう言われて、
翔は手を伸ばし灯りを消した。
暗闇の向こうに、美優の怒った顔が見える。

「全部消したら、なんも見えないじゃない!
 小さいのだけ、つけといてよ。」
「あ、ゴ、ゴメン…」

薄暗い部屋。
ふたりで寝るには狭すぎるベッド。
見つめ合うふたり…。
美優は照れくさそうに微笑みかけた。
これは、OKサインと見ていいのか…。
翔は美優の気持ちを量れないまま、
彼女に唇を重ねる。
キスをすれば、気持ちは通じ合えるのだろうか…。
好きだという想い。
この熱い想いを、今夜、
美優の中に吐き出したい…。
呼吸をするのも忘れ、舌を絡め合う。
頬を真っ赤に染めて、淫らな接吻に酔いしれる。
美優が翔の体をギュッと抱き締めてきたから、
翔も彼女を優しく抱き締めた。
でもそのせいで、
美優の股間に何か硬いものが当たってしまったらしい。
それはビクンビクンと脈打って、
美優の体を求めていた…。
ふたりの唇が、離れる。
一瞬の沈黙の後、美優は気まずさを払拭するように

「じゃ、お休み〜。」

と言って、翔に背を向けた。

あれから数十分。
ふたりは背中合わせで横になっている。
この広い世界で巡り合い、この狭いベッドで
互いの存在を感じ合えるだけで、充分過ぎるほど幸せだった。
思えば翔と美優は、正反対の性格で…
何もかも背中合わせだった。
それがいつの間にか、付き合うようになって…
今では何故かひとつのベッドで身を寄せ合っている。
これが、”運命”ってやつなのかなぁ…

「翔…、まだ起きてる?」
「うん…。」

こんな状況で眠れるわけがない。
でも、翔はこのまま朝まで
美優の温もりと幸せを感じているのも
悪くないと思っていた。

しかし…、

「ちょっとくらいなら…」
「…しても怒らないよ?」
「え…」

一瞬なんの事かわからなかった。
でもすぐにそれに気付き、翔は体を起こした。

「…いいの?」
「いいわよ。したいんでしょ?」

美優の顔は、真っ赤だった。
その顔に今まで何度も騙されてきたけど、
この時は何となくわかった。
美優は、本気だという事を。
美優は背中を向けたまま呟く。

「恥ずかしいからあんたから脱いでよ。」
「…わかった。」

翔はベッドから出て、服を脱ぐ。
美優はそんな翔を、挙動不審な様子で眺めている。

「そんなジロジロ見ないでよ。」

トランクス姿の翔は、照れくさそうにそう言った。
美優は勃起しているのがバレバレな
そのトランクスのテントを見つめながら、
ますます顔を赤らめた。

「どうせあんたもあたしの裸をやらしい目で見るんでしょ?」
「え…あ、うん…、そう…なのかな。」

否定できない男の性。
彼の股間は、美優を求めていたから…。

「なら我慢しなさいよ。」

パンツを脱いだ翔は
女の子のように恥ずかしがる。
美優にそこを見られるのは初めてではないが、
この羞恥心は拭うことが出来ない。
美優はゴクンッと息を呑んで

「久しぶりね…。」

と、翔のペニスと挨拶を交わした。
美優は愛おしそうにそれに触れる…。

「すごい勃ってるね…。興奮…してるの?」

上目遣いで翔に尋ねるその姿。

――――萌えた。

「え…その…、美優の事が…好きだから…。」

ドキッとした。
美優はパニックに陥る。
自分の感情が理解できなかった。

「じゃ、じゃあ、オヤスミ!」

美優は布団に潜り、ふて寝をした。

「それはズルイよ!」

そう言って翔は布団を剥ぐ。
…その力強さが、美優には怖かった。

「で、でも…」

美優は、脅えている。
そんな美優を見たのは、初めてかもしれない…。
美優は女の子なんだ。
そして、僕は男なんだ。
そんな当たり前の事実が、
裸の翔に重く圧し掛かる…。

「僕の事、嫌いなの?」

翔は優しく問いかけた。

「そうじゃない…。好きだけど…」

好きだけど―――

恥ずかしい…

恥ずかしいけど、
あたしの裸を見て欲しい…
あたしのいやらしい部分を、
絶対他人に見せられない場所を、
舐め回すように見つめて欲しい…

でもやっぱ、恥ずかしい…

それは、destinedambivalence―――

It’sdestinedsincetheoriginalsin.
It’sdestinedwhen
AdamandEveatethefruitoftheforbiddentree,
theyknewthattheywerenaked,
andtheysewedfigleavestogether
andmadethemselvesaprons.
It’sdestinedambivalence.

「……わかったわ。」

美優はついに、覚悟を決めた。
翔が好きだから…
翔の気持ちに応えなくてはいけない。

「翔…、脱がせて…。」
「美優…」

震える指先が、美優の肩に触れる。
翔は美優の服に手をかけた。
薄手のTシャツを、ゆっくりと脱がす。
美優はされるがまま…。

「あ…これ…。この前買ったブラジャー…」
「う、うん…」

美優の胸を包むのは、ピンク色の可愛らしいブラジャー。
初デートのときに翔に買ってもらったものだ。

「似合ってるよ…。」

翔は優しく微笑んだ。

「でも… 外すね。」

背中に手を回し、ホックを外そうとする。
でも緊張してるのか、なかなか外れない。
ようやくブラジャーが外れると、
大きな乳房がプルンッと零れ落ちた。

「おっぱい…
 大きいね…」
「恥ずかしい…」

美優は頬を紅潮させ、視線を落とした。
でも、胸を隠したりなんてしない。
翔に見て欲しいから…。

「綺麗だよ?」

そう、美優の胸は本当に美しかった。
十分すぎるほど大きくて、形も張りも良くて…
翔の手は、自然とそれに吸い寄せられた。

「柔らかい…」

マシュマロみたいにふわふわ…
気持ち良い…
こんなに気持ち良いんだ…
翔は初めて触れたその感触に感無量。
その魅力に取り付かれた翔は、
慣れない手つきで優しく揉み始めた。
美優は真っ赤な顔でじっと耐え、

「んん…」

と篭った声を時折漏らす。
今度は乳首を重点的に責めてみる。
桜色の敏感な乳頭があまりに可愛らしくて、
悪戯せずにはいられない。
指先で摘まんで少し引っ張ったり、
クリクリと捩じってみたり。
美優の微妙な反応が、堪らない…。
翔は調子に乗って乳首を舐める。

「はぅ…」

と声を漏らし、少し顔を歪める美優が
すごく可愛い。

「乳首、勃ってるね。」

翔に耳元でそう囁かれて、
美優は顔から火が出そうだった。

「そ、そりゃ勃つわよ!
 しょうがないじゃない!」

美優の乳首は、ビンビンに勃起していた。
美優も、興奮してるんだ。
その紛れもない事実を、
赤く勃起したそれが証明している。

「感じてる”ってコト?」
「か、感じてなんかない!」

必死に首を振る美優が、また可愛い。

「じゃあ、美優にいっぱい感じてもらえるように頑張るよ。」

そう言って翔は、また舌を這わす。
彼に乳首をしゃぶられながら、
美優は小さく「バカ…」と呟いた。

「ぁ…んぁ…」

美優の切なげな声が部屋に響く。
体をくねらせ、敏感に反応する美優。
眉をひそめて、口は半開き…
何ともだらしないというか、いやらしい…。
十分胸の味を堪能した翔は、
ついに美優の下半身に手を伸ばす。
まずは、ジャージを脱がせる。
これで、美優はパンティ一枚。

「今日もひもパンだね。」

翔の囁いた言葉に、
美優は眉間にしわを寄せる。

「今日”も”って何よ!」
「あれ… いつだっけな…
 何か前に見た気が…」

翔は冷や汗をかきながら、
必死に記憶を辿った。

「あたし、翔に見せた事なんてないわよ。
 さては更衣室でも覗いたのね!?」
「ち、違うよ!
 う〜ん…
 いつだったかなぁ…」

ちなみに、正解は―――
中学時代、綾に貸そうとブルマを脱いだとき、
風でスカートが捲れて偶然見えてしまったのだ。
黒のひもパンが。

「ま、いいわよ。あたし、ひもパン好きなの。文句ある?」

開き直る美優。

「僕も、ひもパン好きだよ。」

ひもパン以外何も身に付けていない美優に、
少し顔を赤らめながら微笑みかける。

「可愛いし…、なんかエッチだよね。」
「エッチなのは、あんたでしょ。」

と美優が嘲ると、

「それは美優も同じでしょ。」

翔も美優と同じ笑い方をする。

「ち、違うわよ!あたしは、あんたがエッチしたいって言うからしょうがなく…」

――そんな事言ってませんが。

慌てふためく美優は、いつ見ても可愛い。
特に今は、格好が格好だけに
いつも以上に翔の気持ちを高揚させる。

「…脱がすね?」

美優がコクリと頷くと、
翔は蝶結びのひもにゆっくりと手を伸ばし、
それを掴むと優しく引っ張った。

最後の布着れが、
花びらのようにひらひらと舞い落ちる…。

真っ赤な顔で俯き必死に羞恥に耐える美優。
そんな美優のいやらしい部分を
しげしげと眺める翔。
ふたりの高鳴る鼓動と、沈黙。
大好きな人の恥毛を初めて目にして
何を言ったらいいのかわからない翔は、

「髪の毛は茶色なのに、
 あそこの毛は黒いんだね。」

と正直な感想を洩らした。

「あ、当たり前でしょ!?
 あそこの毛なんて染めるわけないじゃない!」
「ハハッ、なんかアンバランスだね。
 でも、…カワイイよ。」

ちょっと逆立って自己主張をする恥毛は、
まさに美優そのもの…。
美優自身も、美優のアソコの毛も、
“可愛い”という一言に尽きる。
ひもパンを奪われた美優は、
一糸纏わぬ姿で翔に全てを晒す運命。
これで、ふたりとも裸だね…。
美優の長い髪を撫で、はにかんで微笑み合った。

翔は美優の下半身へと手を伸ばす。
美優の恥毛は、なんとも言えない妖しい魅力を放っている。
翔はついにそこに触れ、思わずハッとした。

「濡れてる…?」
「う、嘘!」

美優は信じられないといった様子で、
羞恥心のあまり、手で顔を覆った。

「イヤ…、恥ずかしい…
 あんま見ないでよ!」

恥ずかしがる美優とは裏腹に、
翔は彼女の秘部を覗きこむようにして眺めている。

「これが…、美優のアソコ…?」

指でそれをパックリと広げ、物珍しそうに中を観察する。
美優の中は、こんなにも厭らしく…
こんなにも濡れていて…
こんなにも愛おしい…
翔はゴクンッと息を呑んだ。
敏感な部分に触れてみる。

「ぁ…ん…」

美優は火照った顔で体を捩じらせる。
翔のたどたどしい指がなんとも頼りないが、
美優は彼の指にその願いを託すしかない。

「ん… んん…」

切なげな篭った声が漏れる。
彼にそこを慰められて、
何だか少しもどかしく、歯痒い。

「んん… ぁぅ…」

ドキドキが止まらない…
もう… 爆発してしまいそう…。

「声とか… 出していいよ?」

導火線に火をつけた一言だった。
シューッと音が出るくらい、真っ赤になる。

「バ、バカ言わないでよっ!!」
「でも…
 我慢してるでしょ?」

翔は何気ない顔で意地悪な事を言う。

「し、してない!!」
「そう…。」

そう呟いて、今までわざと避けてきたクリトリスを刺激する。

ビクンッ

「っああぁ!!」

思わず出てしまった声。
美優は涙ぐんだ。

「バカバカぁ!翔なんて大っ嫌い!!」

美優はどうしてこんなにも可愛いのだろう。

「気持ちいい?」

愛撫しながら美優に囁く。

「き、気持ちいいに決まってるじゃない!!
 もう死んじゃいそうよ!」
「美優…」

翔は照れ笑いする。
お互い、顔は真っ赤だ。
翔は美優の反応を時折見ながら、
容赦無く秘部を弄ぶ。

「んぁあ…! ああぁ…!」

美優は、喘いだ。
もう… 我慢できなかったから。

気付けば翔は、指だけでは飽き足らず
顔を近付けて舌で慰め始めた。

「しょ、翔!?
 ぁん… 汚いよ!?」

そう言いながらも美優は翔の頭を手で押さえる。
よほど気持ちが良いのか、自然とその手に力が入ってしまう。

「っあ…! んぁあ…」

舌のザラザラした感触が敏感なところを刺激して、
あまりの快感に
もう…狂ってしまいそうだ…。

「美優の味がする… 美味しいよ。」

そんな甘い声で、そんなエッチな事を囁かれたら…

「んぁ ヘ、ヘンタイ!」

どうしてこうも素直になれないのだろう…。
体は素直すぎるくらい
従順に反応してしまうというのに…。

「あぅ…ひぁああ!」

我慢しても溢れてくる、愛液と、嬌声と、翔への想い…
もう十分堪能したのだろうか…。
翔は秘部を弄ぶのを止めた。
キスをするわけでもなく、
ただ美優の顔の前に留まって
優しく微笑むその笑顔。

―――イジワル。

なんで止めるのよ。
もう少し続けてくれたら…
……イッちゃえたのに。

「な、なに?」

そんな眼であたしを見ないでよ。
美優の顔は、相変わらず紅潮している。
そんな可愛らしい美優の耳元で、
そっと囁いた。

「入れて…いい?」

美優の顔から、一気に血の気が引いた。
さっきまでの火照りが嘘のように、
急に青ざめた顔になる。

「ダ、ダメよ!!“ちょっとだけ”って言ったじゃない!」

ちょっとだけ…
そう言っていたのに、
ふたりはもう…
後戻りできない場所に、来てしまっていた。
あと一歩踏み出せば、
もう… 別世界―――

恋する女の子から
      大人の女性へと
そんなのイヤ
心の準備ができてないもの…

「でも…僕、我慢出来ないよ!」

翔の声にびくんっと驚き、
美優はいつになくオドオドした様子。

「だ、だけど…
 それにほら、そのまましたら
 赤ちゃん出来ちゃうじゃない!」
「あ、それは大丈夫。
 ちゃんと持って来たから…」

そう言うと翔は、脱ぎ捨てられた服のポケットから
コンドームを取り出した。

「ちょ…、あんた何でそんなの持ってるのよ!」

翔は意外と用意周到だったのだ。
そんな彼に送られる冷たい視線。

「あんた、はじめっからやるつもりだったのね…!」
「ち、違うよ!も、もしかしたらって事もあるかも…って思って。」

翔は慌てて否定したが、まったく説得力がない。

「ホントにぃ?」
「本当だよ!」

何とか美優を捻じ伏せる。
美優は改めて翔のそれを見つめ、
ゴクンッと息を呑んだ。

「こんな大きいの…。入るのかしら…?」

そう言って何となくそれに触れてみると、
なぜだか更に大きくなる。
ドクンドクンと脈打ちが掌に伝わり、
美優は言葉を失った。

ThisLanceofLonginus
easilypiercesmyabsoluteterrorfield,
andmeltsme, doesit?
Then…
Canyoupromise
thatdoesn’tmakemepainful?

「……できるだけ痛くしないって
 約束してくれる?」

頬を火照らせる。
翔のペニスは握ったまま。

「え…、も、もちろん!」

ビックリし過ぎて変な声が出てしまった。

「その…、気持ちよく…させて?」

顔を真っ赤にして目を逸らす美優、可愛過ぎる。
恥ずかしさを紛らわすためか、
握ったモノを2、3度扱いた。
キョロキョロと視点が定まらない美優。
翔が肩をしっかりと掴むと、
美優はヒッと肩を竦める。
翔は美優の瞳を見つめ、しっかりと頷いた。
コンドームを装着し、
それを入り口へと導く。

「…入れるよ?」

美優は大きく息を吸って、目を瞑った。

「うっ…」

翔の肉棒がゆっくりとそれを抉じ開けてゆく…。
美優は顔をしかめ、少し辛そうだ。

「イタッ…、痛い…」
「大丈夫?」

そう声をかけると、
美優は翔の手を手繰り寄せ、握った。
彼女の気持ちを察して、挿入を続ける。

「うぅ…翔が中に入ってくるよぉ…」

いつになく弱弱しい声に不安を覚えるが、
それがかえって翔をそそる。

「すごい…、締め付ける…」

美優の中は、
“優しく包み込む”なんて生易しいものではない。
もう離さない!とばかりにギュッと抱き締めてくる、
なんとも美優らしい膣だ。

「奥まで…入った…!」

「大丈夫そう?」

荒い吐息が美優の耳に吹きかかる。

「ねえ翔…」
「ん?」と首を傾けながら、
美優の髪を撫でた。

「ちょっとだけ…
 このままでいてもいい?」

「あたし達…
 ひとつになったのね…。」

恥ずかしさより、嬉しさの方が上回っていた。
頬が火照っているのは、
照れているからだけじゃない。
その頬に涙が伝うのは、
処女を失った痛みのせいだけじゃない。

「なんか… 幸せ…」

美優はとろけそうな目をして、そう呟いた。

「美優…、好きだよ?」

もう聞かなくたってわかってるその言葉。
でも美優は、何度聞いても聞き飽きない。
何百回でも言って欲しい…。

「翔…」

彼の頬に触れる。

「あたしも…」

ゴクンッと息を呑んだ。

「その… あの…
 あ、愛してる!!」

翔は目を丸くして、その後優しく微笑みかけた。

「僕も。愛してる…。」

ゆっくりと重なるふたりの唇…。
絡まる舌と舌…。
混ざり合う唾液…。
このときのキスは、
ほのかに甘い幸せの味だった。

彼の肩に手を当てて、
自分から唇を離した美優。

「もう、大丈夫…」

口元に唾液を垂らしたまま囁く美優に、
翔の興奮はさらに高まる。

「動くよ?」

美優は小さく頷いた。
ゆっくりと腰を動かし始めると、美優は

「ひぁっ」

と可愛らしい声をあげた。
腰の動きと呼応して、美優は喘ぐ。
敏感に反応する体は、その大きな胸を揺らす。

「やばい… あっ
 なんか… あぅ…気持ちいいかも…」

何だか美優がふぬけた顔に。
中で暴れる翔の肉棒に、
骨抜きにされてしまったようだ。

「美優… 美優ぅ…!」

悶える美優に、翔の興奮は極限まで高まる。

「あっ んぁあ!
 気持ち… いい…」

美優は自分から腰を振っていた。
プライドも意地も羞恥心も、この快感には敵わない。

「あっ 翔んぁ…すごい…ぁ
 あたし、ぁ イ、逝きそう…かもぉ」
「ほ、ほんと?」

普段の美優からは想像もできないような
淫らな姿と声色に、翔はもうめろめろだった。

「翔もぉ、ひぁっ 気持ちいい?」
「うん、気持ちいい。
 美優のナカ、最高だよ。」
「んん…本当? …嬉しい。ぁあっ」

少し汗ばんだ翔のひたい。
翔ってば、エッチだなぁ。
こんなにも一生懸命、
あたしを気持ち良くさせてくれる…。

もう… ダメ…
逝っちゃいそう…

「イ、イクぅ…んぁあああ!!」
「し、締め付ける… ぅぁあ!」

翔の胸に抱かれる美優。
トクンットクンッという
心臓の刻むリズムが心地良い…。

「あたし…すごい声出しちゃった…。
 恥ずかしい…」

真っ赤に染まった頬に触れる翔の指先。

「可愛い声だったよ。」

翔は微笑んだ。

「気持ち良かった?」
「もう…!
 今日はホント意地悪ね。」
「逝くときの顔、
 可愛かったなぁ。」
「もう!知らない!!」

プイッとそっぽを向いた。
でもすぐにまた、翔の方に振り向く。

「ねえ翔…
 も一回、やろ?」

無邪気さと、ほんの少しの恥ずかしさを
秘めたその笑顔に、翔は
「ええ!?」 と驚き、呆れ顔だ。

「ダ、ダメ?」

美優は焦った。
二つ返事でOKしてくれると思ってたのに。

「したいけど…
 ゴムひとつしか持ってこなかったから…」

美優と付き合い始めてから、
いつかこういう事が出来る日が来るといいなぁと、
翔は常にコンドームをひとつ、
御守り代わりに財布に入れていたのだ。

「そ、それなら大丈夫…」

恥ずかしそうな美優。
何だか少し不自然だ。

「…ここにたくさん用意してあるから。」
「ええ!?」

引き出しの中には、コンドームの箱が3つ。
“何度も買いに行くのは恥ずかしい”という理由で、
美優がまとめ買いしておいたものだ。

「美優ってエッチだね。」

そう言って笑いながら、再びベッドへと彼女を押し倒した。

夜が、更けてゆく…。

「帰らないでぇ!!」
「はぁ?」

玄関先で大声を出す美優に、
翔は少し呆れた顔をする。

「もうすぐ親が帰って来ちゃうんでしょ?」
「そう…だけど…」
「離れたくない…」

うるうるした瞳で、上目遣いで翔を見つめる…。

「翔が好きなの…」

そう言って視線を落とした。
掌を握り締めてプルプル震えたかと思うと、
急にワッと顔を上げて…

「好きよ好き、大好き!
 もうどうしようもないくらい翔が好きなの!
 しょうがないじゃない!!」

そんなキレられても困るんだけどなぁ…。
騒ぎ喚く美優をギュッと抱き寄せて
口付けで口を塞いだ。
美優は目を見開き、そこから一雫が伝う。
涙が零れ落ちないように、ゆっくりと目を閉じた。

「じゃ、また明日学校で。」

そう言って翔が帰っていった後、
美優は頬を火照らせ口を尖らせる。

「もう!! いつからあんな
 キザな事するようになったのよ!!」
「バカ…」

美優が呟いた一言は、
暮れなずむ夕焼けに消えていった。

綾はカーテンを開けた。
朝日が眩しい…。

今日は特別な日。

心の中に、そう決めていた。
お湯が沸いた音がすると、
綾は紅茶の葉を用意する。
朝はご飯が喉を通らない。
綾は日ごろ朝食は食べず、
紅茶を一杯だけ飲んで学校に行く。
この日も、ゆったりと紅茶を飲んだ。

「熱ッ…」

口元からこぼれた一滴が、綾の胸を伝った。
ナプキンでそれを拭く。
妖しげな笑みを浮かべた。
乳首は勃起していた。
秘部は、少しだけ濡れていた。

紅茶を飲み終え、鞄を手にする。

綾は迷った。

―――靴を履くか否か。

玄関に一歩踏み出してみる。
ひんやりとした感覚が、気持ちいい…。
しかし、季節は夏。
日なたの地べたは鉄板のように熱いだろう。
舗装されていない道を、裸足で歩くのも嫌だ。
綾は渋々靴を履いたのだった。

そして彼女は、

なんの躊躇いもなくドアを開けた。
外界への一歩。
これが、フォスの幕開けである。

Iatonefortheoriginalsin.
IstripmyfigleavesthatAdamandEvesewed.
And…I’llbeGod.

「気持ちいい風…」

髪をなびかせながら、彼女はそう呟いた。

「お早うございます。」

氷のように冷たい凛とした声。
いつも挨拶などした事のない
近所のおばさんにお辞儀する。

「あら、おはよ…ぅ…」

ゴミを捨てに行くところだったのか、
おばさんは手に持っていたそのゴミ袋を
地べたに落とした。

「お持ちしましょうか?」

そう言って綾が微笑みかけると、
おばさんは

「い、いえ。いいわよ、大丈夫…」

と慌てた様子で、ゴミ袋を拾いそそくさと去っていった。

綾の家から学校までの道のりは、駅まで10分、電車で二駅、
そしてそこからまた歩いて5分…。
人通りの多い道も通らなくてはならない。
電車にも乗らなくてはいけない。
通いなれた通学路も、何だかとても、新鮮な感じがした。

駅は人が多い。
人が多い場所は、嫌いだ。
人は皆、他人を拒み、心の壁でわたしを圧迫する。
こんな息苦しいのは、イヤ。
みんなの視線を一身に受ける少女は、今、そんな事を考えていた。

駅のホームで電車を待つ。

「ど、どうしました!?」

駅員らしき人が駆け寄ってくる。
綾は無視した。

「何かあったんですか!?」

しつこく聞いてくる駅員を、
彼女は哀れな孤児を見るような目で眺め、
優しく抱き締めた。

「何を怯えているの?」

  「三番線に電車が参ります。
   危ないですから黄色い線の――――」
「わたし、この電車に乗らなくては…」

彼女の姿は、その満員電車の中へと消えていった。

この日、綾は生まれて初めて痴漢というものに遭遇した。
まあ、似たような類のものは、過去にいくらでもあったが。

「止めてください。」

と、凛とした声で言った。
もっともそれは、形式上の言葉に過ぎない。

「その格好で、それは無いだろぅ?」

汗臭いハゲオヤジが、生臭い息を吹きかけてくる。

…気持ち悪い。

「…そう。」

綾はポツリと呟いた。
虫酸が走る思いだった。
こんなオヤジに弄ばれるためにわたしは生きているのではない。

だが、彼女は受け入れる。
彼女は誰も拒絶しない。
全てを包み隠さず露にして、全てを受け入れる。

…彼女の股間からは、愛液が垂れている。

綾は無表情でそのオヤジを見つめる。
哀れむ様な目…
血のように紅い瞳…

心の醜い人間は、

「ひいぃ!わ、悪かった!」

と腰を抜かし、彼女から視線を逸らす。

「あなたは醜いわ…」

それは拒絶ではなく、嘆き。
心の醜い人は、他人を拒絶する。
わたしはあなたを拒まない…。
でも、あなたはわたしを拒んでいる…。
いえ――
あなたはあなたを拒んでいるのね…。
綾の立っているすぐ横に、座っている母子。

「見ちゃダメよっ!」

と声を殺しながら怒鳴り、子供の目を塞いでいた。
見知らぬ女子高生達は、こちらをチラチラ見ながらヒソヒソと内緒話をしている。

たった二駅だというのに、この日は酷く長く感じられた。

「ふぅ…」

と、ため息を漏らして、綾は電車を降りた。

「で、どうだったの?」
「ん? 何が?」
「惚けないでよ!」

そう言って美優に詰め寄るのは恵。
中学時代からの美優の親友だ。
今は違うクラスなのだが、
わざわざ朝一番で美優のクラスに乗り込んできた。

「…緒方くんが泊まりに来たんでしょ?」

昨日もメールで聞いたのに、話をはぐらかされてしまった。
今日こそは、聞きたい。

「どうだったの?」

じっと見つめてくる恵の目を見れない美優。
伏せ目がちで頬を紅潮させる。

「へへっ…、…やっちゃった。」

美優は顔を赤らめ照れ笑いした。

「ほ、ほんと?」

恵は驚きを隠せなかった。
予想はしていたものの、
いざそう言われてしまうと、少し怯んだ。

恐る恐る聞いた。

「どうだった?」

「その…、えっと…、気持ち、よかった…」

幸せを噛み締めるように呟く。

「痛くなかったの?」
「最初は…痛かったけど…
 その…翔が優しくしてくれたから…」

美優の顔は真っ赤。
顔から火が出そうなほどだった。

「は、恥ずかしい事言わせないでよ!」

と、そこへ…

「みゆ〜」

翔が登場。
今日はわりと遅めの登校だ。

「あ、上戸さんも。おはよう。」

翔は恵に気付き、声をかけた。

「おはよう、緒方くん。」

と、恵が返事をしたのに続き
美優も。

「お、おはよっ!」

美優は少しテンパっていた。
まともに翔の顔が見れなかった。

翔が美優の席から少し離れた自分の席に着くと、
恵は小声で美優に語りかける。

「ねえねえ、
 なんかカッコ良くなったんじゃない?
 緒方くん。」
「そう?別にふつ〜よ。」

言葉とは裏腹に、ムチャクチャ嬉しそうだ。
美優は案外顔に出るタイプなのかもしれない。

「そう言えば、美優も何か綺麗になった感じがする…。」
「そんなコトないって!」

でも、煽てられて悪い気はしない。

「やっぱ、初体験済ませると、男はカッコ良く、女は綺麗になるのねぇ。」

しみじみと感慨深い顔をする恵。

「そ、そうなのかな…」

美優は半分呆れ顔だった。

「ところで恵、時間大丈夫なの?」
「え…」

恵が慌てて時計を見ると、針は8:19をさしていた。

「あ、もうこんな時間!わたし行くわねっ!」

そう言って焦って教室から出て行こうとすると…

「きゃっ…!!」

ドアのところで誰かと派手にぶつかって、転んだ。

「イタタ…」

立ち上がりながら、ぶつかった相手に謝ろうとすると

「ごめんなさ…」

恵の声は途中で止まってしまった。
あまりの光景に、声も出なかった。

「どいてくれる?」
「ハ、ハイッ!」

道を譲った恵は、ただ彼女の白く美しい背中を見つめる事しかできなかった。

冗談でしょ…
頭、おかしくなってしまったの!?

恵は涙目で自分のクラスへと逃げていった。
綾はクラスメイト全員の注目を浴びながら、
ゆっくりと自分の席に向かう。
手に持った鞄も、靴下を履かずに履いた靴も、
この奇抜なファッションを引き立てるアクセント。
コツコツと綾の足音だけが教室中に響く。

「ちょっと、あんた!」

美優が勢いよく立ち上がった。
その拍子に、椅子が大きな音を立てて倒れた。

「どうしたのよその格好は!?」

凄まじい形相で綾を睨みつける。
綾は答えなかった。
答えずに、一歩一歩ゆっくりと
美優に近付いていく。
全て美優の前に曝け出して…。
目の下をピクピクさせている美優の
少し赤くなった頬に優しく触れた。

「怯えなくて、いいのよ?」

この紅い瞳に、吸い込まれてしまいそう…。
たじろぐ美優の耳元で、そっと囁いた。

「あなたも脱いでみたら?」

不気味に微笑む綾に、背筋がゾクッとした。

「…気持ちよく、なれるわよ?」

美優は力なくヘナヘナと
その場に座り込んでしまった。
綾は自分の席に着く。
もう誰も彼女に声をかけられる者はいなかった。
教室内に、異様な雰囲気が漂う。
息もできないほど張り詰めた空気…
身の毛もよだつ冷たい静寂に、
蝉たちさえも鳴くのを止めた…。
翔は頭を抱えた。
顔は真っ青で、額には冷や汗…
昨日までの幸せが
一瞬にして消え失せてしまう。
  西
     自由の地…
          日の入る地…
  濱            彼の浄土の地…
     自然の際…           始まりの地…
          波打ちの際…
  綾           母なる海と地の際…
     飾りの様…           天と地の際…
          斜めの模様…
               浮きに出た紋様…
                       入り組みし様…

…もう、決定的だった。

西濱 綾

彼女は、

  ―――――――露出狂だ。

キーンコーンカーンコーン…

チャイムが虚しく響き渡ると、担任の教師が教室に入ってきた。
彼は教壇に立つと、その異様な雰囲気に威圧された。

「何だ…?やけに静かだな…」

そう呟き、教室を見回すと…
その目が見開いた。

「に、西濱…?」
「どうかしました?」

名前を呼ばれた少女は、嘲るように微笑を浮かべた。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

「いや…、何でも…ない…」

彼は俯いた。
現実を見るのが、恐かったのかもしれない。
教卓に置かれた名簿を持つ手はブルブルと震え、
“西濱綾”という字が歪んで見える。
そして、恐る恐る再び顔を上げる。
綾の背中には、白い羽が見えた。

「―――ハッ!?」

突然、我に返った瞬間。
その羽は儚く舞い散って消えた。

「に、西濱!!服を着なさい!!」

少し残念そうな顔をした綾は、ゆっくりと立ち上がった。

「すいません…。」

今、彼女の全てが見てとれる。
粉雪のように白く繊細な肌が、美しい…。
綺麗な形の乳房の中心で、ツンッと上を向いて自己主張をする赤い乳首。

彼女には陰毛が無かった。
そのまま陰唇が晒されている。

「着てくるの…忘れました。」

綾の身体は、疼いている…。
その証拠に、彼女の太ももには愛液が伝っていた。

服を着てくるのを忘れた、だと…?

「そんなわけないだろ!」

教師はそう怒鳴って、血のように紅いその瞳を睨み付けた。

綾はようやく観念したのか、
目を逸らし、呟いた。

「…校則違反をしている人は、
 他にもたくさんいるのに…。」
「そういう問題じゃない!!」

そう怒る教師に、綾は静かに、しかし強い口調で食って掛かる。

「授業の邪魔はしません。
 このまま受けさせてください。」

そして、少し俯き加減で…、彼女は最後の言葉を呟いた。

「…裸でいたいんです。」
「…服は、着たくありません。」

綾の正体は、完全に暴かれた。
綾は正真正銘の露出狂…
彼女自身がそれを認めた瞬間だった。

教師は「はぁ…」とため息をつき、
綾のもとへと歩み寄る。

「…もういい。
 西濱… 俺と一緒に、職員室へ行こう。」

着ていた背広を脱いで綾の背中に被せた。

「わかったな?」

綾の顔を覗き込むようにして見つめそう言うと、
彼女の返事を待たずに、
肩を抱いて教室の外へと連れて出ていった。

「お前ら、自習してろ…」

生徒たちに残した言葉は力無く、
教室の空気を一層重くした。

教室のドアが閉まる。
もう…二度と開くことのない扉…。
そう、信じていたかった。

綾の居なくなった教室は
不気味なくらい静まり返っていた。
翔も美優も、心苦しかった。
殺人現場にでも出くわしてしまったかのような、
凄まじい後味の悪さを覚えた。

また、空を見ている…。

屋上は風が強い。
ふたり並んで、澄み切った青空を眺めている。
美優の長い髪が風に靡いているのが、美しい。
あの雲は、何処へ行くのだろう…。

「露出狂…だったのね…。」

ポツリと呟いた美優は、どこか寂しげな顔をしていた。
彼女の哀しげ瞳が、翔を見つめる。

「翔は…知ってたの?」

翔の脳裏によぎるあの日の光景――

バスタオル…
    プリクラ手帳…
全裸の綾…
    苦い紅茶…
服?
  …そんなモノ、無いわ。
わたしと、
  セックスしたいんでしょう?

「もしかしたら…とは思ってたけど…」
「そう…」

さすがに綾の部屋での出来事なんて、
口が裂けても言えない。
翔はそんな自分が後ろめたかった。
でも、美優には
見透かされてしまっていたのかもしれない。

「な〜に暗い顔してんのよ!」

美優は無理に明るくそう言って、翔の背中を叩いた。
それから、空を…どこか遠くを見ながら…

「大丈夫よ…。あたしは、翔以外の人に…
 裸を見て欲しいなんて思わないから…。」

美優がそう言ってくれたことだけが、
翔にとって唯一の心の救いだった。

その日以来、綾は学校を休み続けたが、
誰も彼女の話題など出そうとはしなかった。

暫くして、担任から
『綾は高校を退学した』と教えられた。
退学の理由などは、何も聞かされなかった。
それ以来、彼女に再び出逢うことはなかった。

―――――あの時までは。

 *********************************************

    第参章 社会現象 −Introjection−

 *********************************************

七年後―――――

「しょおーっ!!
 早くーぅ! こっちこっち!!」

上り坂を一人で駆け上がって振り返り、
遅れてくる彼にせがむ女性。
大人になって美少女から美女になった彼女だが、
根本的には何も変わっていない。
露出度の多い服を好み、胸元を大胆に見せている。
短いスカートからパンツが見えそうなのはご愛嬌。

「みゆー、待ってよ!」

彼女を追いかけ必死に走ってくる青年。
昔に比べれば身長も伸び、
少しは男らしくなっただろうか。

「ハァハァハァ…
 てか、ちょっとは荷物持って…」

膝に手をついて息を切らしている翔を、
美優は呆れた顔で眺めていた。

「まったく!しょうがないわね。
 普段から運動不足だからよ!」
「あ、ここのホテルね。」

美優は左手で大きなホテルを指差した。
その薬指にはめられた指輪が日の光を反射して、眩しい。

「Hello.
 Mynameis“Himura”.
 Wehaveareservation.
 Checkin,please.」

流暢な英語で受付に話しかける美優。

「違う違う!
 緒方でしょ。」

後から入ってきた翔が、慌てて訂正する。

「あっ…。そうだった。
 なんか、慣れないわね。」

美優は恥ずかしそうに苦笑いした。

「フフフッ…」

受付嬢にも笑われてしまった。

「緒方様ですね。
 お待ちしておりました。」
「あれ?日本語通じるんじゃん。」

ふたりはキョトンとする。

「はい。日本人のお客様が多いので…。
 緒方様、707号室でございます。」

美優が鍵を受け取って、
エレベーターで7階へ向かう。

「緒方美優…かぁ…
 悪くないわね。」

そう呟く美優に、翔は嬉しそうに微笑んでいた。

「あ、ここよ。」

部屋の前に到着すると、美優がドアを開けた。

「はぁー 疲れた…」

翔は部屋に入るとドッと疲れた様子で、
荷物を床に置いてベッドに倒れこんだ。

「なにへばってるのよ!
 せっかくの新婚旅行なんだから、早速…」
「泳ぎにでも行く?」

むくっと起き上がる。

「違うわよ!」
「…ん?」

翔が頭の上にクエッションマークを浮かべると、

「えいっ!」

と美優が翔のもとに飛び込んできた。

「ハハッ…
 美優に襲われちゃった。」

美優に押し倒された格好の翔。
ふたりで笑いあった。

「今夜は(まだ昼だけど)寝かせないわよ!
 あ・な・た♪」

美優はときどき変なセリフを言う。

「もう…」

南国だからって、テンション上がりすぎだよ。
悪ノリが過ぎるね。
ま、可愛いから許すけど。
そんな事を考えていると、有無を言わさずキスされた。

キスをしながら美優の服を脱がしてゆく。
美優はキスに夢中になって、
翔の髪をクシャクシャと掻いている。

「んぁ…」

ときどき漏れる甘い吐息が、ちょっとエッチ…。
ふたりの心を狂わしてる。
唇が離れると、ふたりは見つめあった。
ふたつの口の間に、混ざり合った唾液が糸を引いている。
気付けば美優は、あられもない姿になっていた。

「…どうしたの?」
「いやぁ…、いつ見ても可愛いなぁって思って…。」

いつも、翔が少し意地悪な顔をすると必ず美優は慌てる。

「あ、あんまジロジロ見るの禁止っ!!
 恥ずかしいじゃない…」

恥ずかしがるところが、また可愛い。

「いまさら恥ずかしがる事もないでしょ。」
「恥ずかしいものは恥ずかしいの!」

顔を真っ赤にして怒る美優は、昔と全然変わっていない。

「…まあ、見て欲しいって気持ちもないわけじゃないけどさ。」

ちょっと不貞腐れた感じでそう呟くと、

翔は嬉しそうに笑う。

「じゃあ、たっぷり見てあげるよ。」
「もう!あんたも早く脱ぎなさい!」

自分から誘っておいて
結局いつも翔のペースになってしまうのが
少し悔しい美優だった。

「わかったわかった。」

翔はそんな美優を笑いながら、着ている服を脱ぎ始めた。
翔が服を脱いでゆくと、美優は興奮する。

この女、こう見えて結構エロい。

「あ、勃ってる♪」

嬉々とした様子で、翔のペニスを見つめる。
彼の裸、特に下半身を見ると、
なぜだかニターッとにやけてしまう美優。

「美優、見過ぎ。」

翔が笑ってそう突っ込むと、

「み、見てなんかないわよ!
 ちょっとぼーっとしてただけ!」

と誤魔化す美優も、また可愛い。

「ねえ美優…。お願いがあるんだけど…。」

あんまり美優の機嫌が良いから、
翔はいつもしない無茶なお願いをしてみる。
翔が耳打ちすると、
美優は顔を真っ赤にし大声をあげた。

「ええぇ!胸に挟むのぉ!?」
「…ダメ?」

甘えるような目付きで翔に見つめられると、どうしても美優は弱い。

「まあ、いいけど…。
 …じゃ、ローション取って。」
「はい♪」

翔は笑顔で返事をして、鞄から自前のローションを取り出した。
美優はそれを受け取り、慣れない手つきで胸に塗りたくる。
続いて翔のペニスにも。美優が丁寧に塗ってあげると、
それだけで翔のペニスはビンビンになる。
初めてのエッチが手コキだったためか、
翔のペニスは手で触られるのに弱いのだ。

「まったく…、しょうがないわね。」

そう言って、渋々(実はノリノリで)、胸の間に
彼のペニスをセッティング。

美優の胸は、昔に比べさらに数段大きくなっていた。
美優にとっては邪魔なだけだが、
翔からすると揉みごたえのある優良な乳だ。
そんな乳房に、今、翔のペニスが挟まれる…。

「柔らかい…」

美優は手で胸を寄せて翔のペニスを包む。
そして、上下に動かし始めた。

「…こんな感じ?」

上目遣いで見つめてくる美優が、すごく可愛い。

「うん…すごく良いよ。」

美優の髪を撫でる。

「出来れば…、舐めてくれると嬉しいかな。」

ちょっと恥ずかしそうにそう言うと、

「オッケー♪任せといて。」

美優は二つ返事で承諾した。
美優の舌が、いざ翔のペニスの先端に触れると、
それはビクンッと反応する。
そんな翔の敏感なペニスを、美優は”可愛い”と微笑んだのだった。
パイズリしながら、亀頭をレロレロと舐める。
美優が目で”気持ちいい?”と聞いてくる。

「気持ちいいよ…」

翔は恥ずかしそうにそう言った。
美優はそんな翔が好きで好きで堪らない。
亀頭をまるまるしゃぶってみたり、乳首をペニスに擦り付けたり、
彼女なりに工夫してみる。
翔の気持ち良い顔を、もっともっと見たいのだ。
翔はそんな美優のエッチな姿を見て、物凄く興奮する。
自分のためにそこまでしてくれる美優が愛おしかった。

「あ…逝きそう…」

情けない声が漏れる。
その声を聞くと美優はここぞとばかりにサービスする。

「で、出る!」

翔は美優の顔に射精した。
美優が亀頭を舐めていたのだから
しょうがない事ではあるが、
いつもの美優なら激怒するところだ。
恐る恐る美優の顔を見ると…

「あはっ…、いっぱい出たわね♪」

やっぱり今日は機嫌が良いみたい。
精子塗れの美優の笑顔は、
物凄く可愛くて、物凄くエロかった。

「気持ち良かった?」

精液を拭き取りながら、美優が聞く。

「…うん。」

翔が顔を赤らめると、美優も同じように赤くなった。

「そ。」

そう短く返事をして、平然を装う。

「ゴメン…、汚しちゃったね。」

精子塗れの美優の顔を、申し訳無さそうに見つめると、美優は笑った。

「フフッ、そんなの別にいいわよ。」

そう言ってはみたものの、美優は頭を掻いて言い直す。

「でも、やっぱ顔洗ってくるわね。
 ちょっと待ってて。」

やっぱり顔に精子が付いたままなのは
気持ち悪いだろうし、
翔も美優の顔に付いた自分の精子を
舐め取る趣味はない。

美優は裸で洗面所に走った。
ローションと精液でテカテカに光る大きな胸が、
ユサユサと揺れる。

「寝ちゃダメよっ!」

美優が洗面所からひょっこり顔を覗かせる。
以前フェラチオをしてもらったとき、
美優は頑張って精液を飲み干したものの
我慢できずにうがいをしに行った。
そのとき翔は自分だけ絶頂を味わったのをいい事に、
美優が帰ってきたときには爆睡していたのだった。
もし今日も同じことをしたら、
いくら機嫌が良くても流石に怒られる。

2,3分すると、美優は笑顔で戻ってきた。

「さ〜て…、あたしにあんだけやらせたんだから、
 あんたにもたっぷりサービスしてもらうわよ!」

そう言って翔に抱きつく。
口調と行動が正反対だが、それもまた美優らしい。

「サービスって…、なにすればいいのさ?」

翔がそう笑うと、美優は顔を真っ赤にして俯いた。

「…クンニ。」

美優の口から出た思わぬ一言に、翔は思わず笑ってしまう。

「いつもと同じじゃん。」
「だって…
 …好きなんだもん。
 気持ち良いし…」

美優の股間に顔を近付け、秘部を覗き込む。
そこにそっと触れてみる。

「あれ?まだ何もしてないのに、こんなに…」

意地悪にそう笑って、ベットリと指に付いた愛液を舐め取る。

「何もしてない…ってあんた!
 あんたのワガママに付き合ってやったんでしょうが。」

恥ずかしさを誤魔化そうと美優はそう言ったが、

「え…、あれって美優も気持ちいいの?」

翔にそう切り返され、

「え、あ、えっと…
 それはそうよ!
 乳首とか擦れてたし。」

ちょっとシドロモドロ。
パイズリ自体はそれほど快感じゃない。
だけど…
“翔の逝くときの顔を見てたから、興奮しまくり!!”
だなんて、口が裂けても言えるはずがない。

「じゃ、もっと気持ちよくさせてあげるね。」

翔はクンニの前に、まずは美優の体を隅から隅まで愛撫する…。

「あぅ… んぁ…」

翔の舌が美優の敏感な部分を苛めると、甘い甘い声が漏れてくる。
一番肝心な部分には決して手を出さず、焦らすように周りを舐め回した

「はぁん… しょお…」

美優の顔が火照ってきて、はぁはぁ悶えながら
蕩けるような瞳で翔を見つめてくる。

「ぁあん!」

舌でクリトリスを転がすと、美優の体は驚くほど素直に反応してしまった。

「あぁ…んあ…」

切なげな喘ぎとともに、彼女の秘部からとめどなく溢れてくる熱い想い。
美優の穴から溢れ出るその温かい液を、ズズズッといやらしい音をたてて吸った。
その蕩ける蜜の味を堪能すると、翔のペニスはますます硬くなって
“早く美優の中に捩じ込まれたい”とせがんでいた。

「んぁ…ねえ…翔…」

翔を誘うその甘い声…
翔の髪を掴むその細い指…

「ね、そろそろ…」

翔を見つめる蕩けるようなその瞳…
翔を狂わせるその蜜の味…

「入れてよぉ…
 んぁ…ねえ…」

そうねだってくる可愛い美優の全てが、
もう…堪らない。

「うん、入れるね。」

そう言って愛液が溢れる穴の中にゆっくりと人差し指を挿入した。
すんなりと入ってゆく…。

「もう…!んぁ…それじゃない!」

自分の中で蠢く翔の指に、どうやら美優サマはご不満のようだ。
でも翔はそんなことにはお構いなしで、
穴の中で指を動かし、舌はクリトリスを苛め続ける。

「あっ…あん…ぁあん…」

中で暴れる翔の指が、憎い。
喘ぐことしかできない美優。

「ね…! んぁあ…!!
 指じゃなくてさぁ!ぁあ!」
「ん?何を入れて欲しいの?
 ちゃんと言ってよ。」

翔が意地悪に笑いながらそう言うと、
美優は上体を起こし顔を真っ赤にして怒る。

「翔のバカぁ!!
 あんただって早く入れたいんでしょ!!
 焦らさないでよ…もう!!」

少し涙目になって喚く美優が、可愛かった。

「何を、どこに、入れて欲しいの?」

数瞬翔のことを睨みつけて、
それから意を決してギュッと拳を握り締めて、
思いっきり目を閉じた。

「翔のおちんちんを!!
 あたしのおまんこに!! 入れてください!!」

あまりに美優に似つかないそのセリフに
翔は思わず吹き出してしまう。
ここまで美優に言わせたのは、きっと初めてだ。
翔はちょっとした感動を覚える。
そして、このうえない興奮。征服感。
でも翔はさっき美優のパイズリで射精したばかりだ。
もちろんまだまだイケルが、そう何回も持ちはしない。
できるだけゆっくりじっくり、存分に楽しみたいのだ。
それに怒ってる美優の顔が凄く可愛い。
翔はそれが大好きだ。
だからいつも、ついつい意地悪してしまう。

美優は先程はクンニをおねだりしていた。
それが、我慢できなくなって今度は翔自身を求めている。
翔がニヤリと笑みを浮かべる。

「そんなハシタナイ言葉を言うなんて、
 美優、エッチだなぁ。
 あれ?でもご希望はクンニじゃなかった?」

美優の肩がワナワナと震える。

「もういい!!」

ついに、キレた。
美優自身も、普段おとなしい翔に苛められることに
異常な興奮を覚えていた。
そう、彼女自身もかなり楽しんでいたのだ。
でも、さすがに我慢の限界だった。
いろんな意味で。

「み、美優…」

翔が怯える。
エッチのときだけはなぜか翔が優位に立てるが
普段は尻に敷かれている。
美優が本気で怒ると、…それはそれは恐ろしい。

「翔!もう、いい加減にして!」

「あんたねえ!エッチのときは毎回毎回
 あんたの言いなりになる、なんて思ったら、大間違いなんだから!!」

顔を真っ赤にして翔を怒鳴りつける。
そして翔を押し倒すと上乗りになった。

「そっちが来ないなら、
 こっちから行くわよっ!」
「え… え!?」

急な展開に慌てふためく翔。
美優は翔のペニスに自分の秘部を押し付けた。
そして、中に入れようとする。
…が、なかなか思い通りに入らない。

「うう…早く入れたいのにぃ!」、

というひとり言が、翔の耳にも聞こえた。
美優はやけになって翔のペニスを思いっきり掴むと
自分の秘部をそこにあてがった。
そして、ゆっくりと腰を落としてゆく。

「ん… あ…いい感じよね?」
「うん、ちゃんと入ってる…」

と、ついさっきまで怒っていたのも忘れてなぜか微笑み合うふたり。
ゆっくりと奥まで挿入し、そして、これからついに

”翔のペニスを使った美優のオナニー”が始まる…。

翔の上に乗っかって、満足げな笑みを浮かべる美優。
いつもと逆の状況に、ヘヘーンといった感じだ。

「…動かないの?」
「言われなくたって動くわよ!!」

深く挿さったモノを、ゆっくりと引き抜く。
そして今度は逆に奥まで挿し込む。
美優は翔に見られているのも忘れ、だらしのない顔で小さく喘いだ。
美優の動きがだんだん激しくなってくると、小さかった喘ぎが、徐々に大きくなってゆく。

「ぁ…あ…」

クチャクチャといやらしい音が響いていた。
美優の胸がブルンブルン揺れている。

「あぁ…気持ちいい…」

初めての騎乗位に、美優は興奮していた。
それは、翔も同じである。

「うん… 僕も、気持ちいいよ…」

でも美優は、翔の体の上で激しく動きながら
眉間にしわを寄せて、

「あんたはどうだっていいのよ!
 あたしが気持ちよくなれればいいの!」

とムチャクチャなことを言う。
どうやらさっきの仕返しのつもりらしい。

「そんなぁ…」

と、翔は笑った。

「ぼーっとしてないで、
 あんたも腰動かしてよ!」
「あ、はい…」

タジタジの翔だが、美優に犯されるのも悪い気がしない。
というか、ヤバいくらい良い。

「まったく!いつもいつも…んぁ…あたしに…
 イジワルばっかぁん…言って! あぁ…」

途絶え途絶えに愚痴を零す美優。
ブルンブルン揺れる胸に見とれている翔。

「もう、翔なんかぁ…んぁあ…!
 大ッキライなんだからぁあ!」

天を仰いで悶える美優は、
身体が仰け反って快感を堪えるのに必死だ。

「あぁイクぅ!!ぁああ…!
 しょおぉ!!大好きぃいああああ!!!!」
「え…ちょっ…、締まり過ぎっ!!で、出るっ!!」

「はぁ…はぁ…はぁ…」

散々ムチャクチャな事を喚いて
思いっきり果てた自分勝手なお姫様は、
翔の体に馬乗りになったまま
力尽きてぐったりとしていた。

「あんた…はぁはぁ…、中出ししたわね!?」

息絶え絶えに翔を睨みつける美優。

「み、美優が抜かなかったんじゃないか!」
「あんたがいつ逝くかなんて、知らないわよ!」

そう言って美優は翔のペニスを抜いた。
美優の秘部からはいろんな液が滴り落ちる。

「まったく!子供ができたらどうすんのよ!!」
「…産めばいいじゃん。」
「え…」

翔の呟いた一言に、美優はハッとした。

「僕たち、結婚したんだよ?」
「そ、それはそうだけど…。
 でも、あたしはまだ…」
「あたしはまだ、
 翔とふたりっきりでいたいのよ!」
「美優…」
「…ダメ?」

潤んだ瞳で見つめてくる美優を、翔はそっと抱き寄せた。

「…僕は、美優がいてくれたら
 それで幸せだよ?」
「…嬉しい。」

美優はポッと顔を赤らめた。
さっきまでの勢いはどこへやら…
急にしおらしくなってしまった。

「まだ23歳だしね。
 子供はまだ先でいいよね。」

翔が優しく髪を撫でると、美優は恥ずかしさを紛らわすためか翔の胸を叩いた。

「っていうか、あんたの安い給料じゃ
 子供養っていけないわよ。」
「うぐっ…
 …努力します。」
「へへっ…。期待してるわよ、あ・な・た♪」

美優はそう笑って、幸せを噛み締めた。

「ふぅ…、何だか疲れたわね…。」

初めての騎乗位に、少し盛り上がりすぎてしまったようだ。

「ちょっと寝よっか?」
「一緒に…寝てくれる?」

少し恥ずかしそうに囁いた美優を、

「何を今さら。」

と笑った。

ふたりは裸のまま横になった。
美優は翔の胸に抱かれ、とくんっとくんっと刻まれるリズムに耳を傾けていた。

「前は、こうしてるとドキドキしてなかなか眠れなかったんだけどね…」
「今は…何だか安心する…。」

照れくさそうに笑った。

「…美優。」
「なに?」

翔は美優の手を握り、彼女の目をじっと見つめた。

「絶対、幸せにするよ。」
「…カッコつけちゃって。」

視線を逸らした美優は、既にこれ以上ない幸せを感じていたのだった。
が、下半身に何か硬いものが…

「………二回も逝ったのに、なんでまた元気になってるのよ!」
「ご、ごめん…」

――――翔、ちょっと情けない。

「もう知らない!オヤスミ!!」

濱を照らす満月…
濱に寄せる小波…

淡い月明かりに照らされた美優の素肌は、
きめ細やかで美しい…。

全裸の美優は、打ち寄せる波の音に心休ませながら、
窓から見える景色に想いを馳せていた…。

「あれ、美優…?」
「変な時間に寝ちゃったから、目が冴えちゃって…」

翔の声を聞いて、振り向いた美優。
胸も陰毛も隠さないから、翔はとっさに目を逸らした。
別にそんな必要はないのだが。
そんな翔の様子を見て、美優はニヤける。
ある意味美優らしい表情だ。

「あっそうだ!ちょっと待ってて!」

ポンッと手を叩いて、鞄から何か取り出してバスルームへと向かっていった。

「覗いちゃダメよっ!」

昔から良く言われたセリフだが、翔の前に堂々と裸を晒す今となっては可笑しなセリフである。

もっとも、美優は
”見せるのは好きだが、見られるのは嫌い”らしい。
エッチのときも、あんまりまじまじと見られると、しおらしくなってしまう。

「じゃーん♪」

という古臭い効果音とともに現れた美優は、とんでもない格好をしていた。

「は…!?」

唖然とする翔を尻目に、

「どう?似合う?」

と身を寄せてくる美優が憎らしい。
美優は水着を着ていた。
それも、ただの水着ではない。
かなり過激なデザインなのだ。
Vフロント・Yバック。
サスペンダー水着とでも言うのだろうか。

「美優、その水着エロ過ぎるよー」
「やっぱぁ?」

照れ笑いして頭を掻く。

「美優…」

そんなに見つめられると…
ドキドキしてしまう…。

「…毛、はみ出てるよ。」

はみ出してるというよりは、丸見えである。
かなり秘部に食い込んでいてスジが見て取れ、
もはや何も隠していないのと同じだ。

「そ、そういう水着なの!」

どういう水着だよ。
ちなみに、乳頭も隠れてはいるものの、
乳輪は思いっきり見えている。
美優の乳輪が特別大きいのではない。
“そういう水着”なのだ。

「そんなのどこで買ったの?」
「ヘヘヘッ…
 ヒ・ミ・ツ♪」

―――ネット通販です。

「ね、そのまま海行ってみよっか?」
「ええ!?」

翔のとんでもない提案に驚く美優だった。
この水着は、翔を興奮させるために買ったもの。
端的に言ってしまえば、
エッチのときのコスプレみたいなものだ。
こんなのを来て外になんて行けるワケがない!

「もう夜中の3時だし…
 きっと誰もいないって。」
「で、でも…」

強引に進める翔に、恐怖する美優。

「とりあえず何か羽織っておいて、
 誰もいなかったら脱げば大丈夫だよ。」
「ね、お願い!」

結局翔の熱意に押し切られ、
夜の海へと泳ぎに行くことになってしまった。

「はい、これ。」
「う、うん…」

翔に渡された上着を羽織る。
不安は募る一方だが、ふたりはドキドキしながら部屋を出た。

「わぁー、貸し切りね♪」
「ほら、やっぱ誰もいないじゃん♪」

いつの間にか海パン姿になっている翔。

「ほら、美優も脱いでさ。泳ごうよ。」
「う、うん。」

少しオドオドしている美優。

「ふぅ…。脱ぐわよ?」
「どうぞ♪」

翔は嬉々とした様子で見つめている。
ばさっと音をたてて、羽織っていた上着が浜辺に堕ちた。

「どう…?」

ほとんど裸同然の格好で浜辺に佇み、長い髪を潮風に靡かせる絶世の美女…。
月明かりに照らされて…
まるで――――

「…人魚みたい。」
「は?」

目を丸くして翔を見つめてくる美優に、翔はちょっと恥ずかしくなって笑って誤魔化した。

「こんなエッチな人魚なんていないか。
 毛、はみ出してるし。」
「もう!泳ぐわよっ!」

暫く泳いだり、水をかけてふざけ合ったり、
夜の海を満喫していると、ふと翔が動きを止めて立ち尽くした。

「ん…?どうしたの、翔…」
「美優、水着思いっきりズレてる。」

翔が指差した先には、完全に露になった乳首。

「キャッ!!翔のバカぁ!!」

美優はとっさに手で胸を隠したが、よく考えると別に隠す必要もない気がして手を下ろした。

「へへ…、な〜に勃起してんのよ、このヘンタイ!」

と笑って翔の海パンのテントを突いた。

「…美優が可愛いからだよ。」

翔にそう囁かれて顔を真っ赤にした美優は

「あー!!もう脱いじゃえ!!」

と躍起になって水着を脱ぎ捨て、裸になった。
誰が来るかもわからない、この夜の海で。

「ほら! ぼーっとしてないで、あんたも脱ぐのよ!」
「え、僕も…?」

ポカンとする翔。

「当たり前じゃない。あたしにだけ脱がせる気?」

美優は翔の海パンを無理やり下ろそうとする。

「自分で脱いだんじゃん。」

と翔は小言を言った。

「何か言った?」
「何にも。」

翔は結局美優に脱がされてしまい
彼女と同じ一糸纏わぬ姿になると、
そこから現れたモノにふたりとも顔を赤らめる。

「まったく。こんなに勃起しちゃって…。」

ふたりは笑い合い、また海へと入っていった。
腰まで水に浸かったあたりで足を止め、
満月と星空をバックに熱いキスと抱擁に溺れる。
そしてそのまま倒れこみ、
バッシャーンと音をたてて一度海へと沈んで、
ゆっくりと水の面に浮かんだ。

「気持ちいい…」

浜辺に座って寄り添うふたり。
翔の肩に頬を寄せる美優。
月明かりが優しくふたりの裸を映す。
波が打ち寄せてはまた引いてゆく…。
全ての生き物は原始の海から生まれた…
人間も、そう。
人はこうして海を眺め、海に恋し、海に包まれる…
人は皆、母なる海に…全ての始まりに…
戻りたいのかもしれない…
だから裸が、気持ち良いのかなぁ…

裸で生まれ…
裸で愛し合い…
裸で生きてゆく…

「…西濱を思い出すね。」
「あたしも思った…。でも…」
「そうだね…。ごめん。
 あんま良い思い出じゃ…なかったね…。」

県立S高校―――
数年前翔たちが卒業した高校であり、
全国でも有数の進学校である。
夏休みが終わり、今日から2学期が始まる。
ここは2年B組。

「おはよっ 由梨!」

元気いっぱいな感じのこの少女。
名前は栗原奈津希(クリハラナツキ)。

「あ、奈津希ちゃん。
 お早う。…久しぶりだね。」

奈津希の親友の長瀬由梨(ナガセユリ)は、
勉強を中断しシャーペンを置いて、笑顔で返事をした。
由梨は奈津希とは対照的で、
目の下にクマができていてあまり元気そうとは言えない。

「ねえ、由梨。
 数学の宿題終わってる?」
「まだ終わってないの…。
 最後の三日間くらいほとんど徹夜で頑張ったんだけど…」

どうやら由梨がやっていたのは、その数学の宿題のようだ。
夏休みとはいえ、進学校であるS高は
どの教科も容赦無く鬼のような量の宿題を課してくる。
特に数学は酷い。

「やっぱそうだよね!?
 良かったぁー、あたしだけじゃなくて!」

と安堵の表情を浮かべる奈津希。
どうやら彼女もまだ終わっていないらしい。

「あとちょっとなんだけど、
 難しくて解けなくて…。
 でも、何とかして授業までの間に終わらせなきゃ…」

と由梨は言う。

「そんな今さら悪あがきしたって無駄だよ。
 で、あとどれくらい残ってるの?」

そう言って奈津希がノートを覗き込むと、
そこには、何度も消しゴムで消したような
努力の跡がギッシリと残っていた。

「ん… あと5問くらいだけど…
 なかなか…」

ちなみに全部で500問くらいある。

「え…どうしたの?奈津希ちゃん。」

悪気の無い由梨に、何も言えない奈津希。

「何でもない…」

急に暗い顔になって、由梨の席を離れていった。

「あ、秀!!あんた数学の宿題終わってる?」

奈津希が次に話しかけたのは、矢吹秀(ヤブキシュウ)。
クラス一の秀才で、女子からの人気も高い。

「ああ。一応一通りは。」

とクールに言ってみせる秀に、奈津希は媚びろうとする。

「ねえねえ、ちょっと見せ…」
「ねえ矢吹くん!!」
「如月… なに?」

秀は少し驚いた。
ふたりの会話に突然割って入って来たのは、如月小夜子(キサラギサヨコ)。

「この問題わかる?ちょっと教えてくれない?」

小夜子にムッとした表情を浮かべる奈津希だったが、
秀は差し出されたノートを見て、小夜子と話し始めた。

「ああ、それね。俺も解けなかったから、
 塾の先生に解き方聞いたんだ。そしたらさ…」

なにやら数学の宿題の事で話し始めた秀と小夜子。
残された奈津希は完全に蚊帳の外だ。

「何よもう!!」

と、奈津希が頬を膨らませると、
ちょうどそこへ大槻蓮(オオツキレン)がやってきた。
本人たちは否定しているが、蓮と奈津希は徒ならぬ仲らしい。

「奈津希、おはよー。」

蓮も由梨と同じで目の下にクマができている。

「あ、蓮!あんた数学の宿題終わってる?」

さっそく単刀直入に聞く奈津希。

「え…あ…まあ、何問か解けないのがあったけど。それ以外は。」

嫌な予感がして変な汗をかいた蓮だった。

「ナイス!!写させてっ!!」
「他人の宿題写すなんて、サイッテーね。」

嫌みったらしく奈津希にそう言って去ってゆく
小夜子の背中に、奈津希はイーッとした。

「あ、あの! 矢吹くん!」

由梨が普段出さないような大声で秀を呼ぶから、
秀は目を点にして驚いた。

「なに?」

秀の笑顔に由梨はクラッと逝きそうだった。

「あ、えっとその…、数学の宿題で…わからないところがあって…」

かなり挙動不審で、オドオドしている由梨。

「もしよかったら…その…、教えてもらえたらって…思って…」
「え…」
「ご、ごめんなさい!やっぱダメだよね…」

酷く自虐的で、涙目になる由梨。
秀は由梨を気遣うように優しく答えた。

「ううん、別にいいよ。どの問題?」
「え…あっ…この問題なんだけど…」

由梨の顔にはぱーっと笑顔が咲き、
少し頬を火照らせてノートを差し出し、
解けなかった問題を指差した。

「あ、ありがとうございましたっ!」

深々と頭を下げる由梨に、秀は少し困った表情をした。

「そんな…別にいいって。」

そんな秀の表情を見て、由梨はまた顔を赤らめる。

「…長瀬って頭良いよな。」
「え…」

突然の一言にびっくりする由梨。

「俺、この問題、塾の先生に聞くまで全然わからなかったけど…
 長瀬はあと少しのところまで自分で解けてるんだから。」

まさかそんな事を言われるなんて思ってもいなかった由梨は、
嬉しいやら恥ずかしいやらで、シドロモドロになってしまう。

「あ、頭良いなんて…そんな…
 や、矢吹くんこそ、
 一学期の期末試験、学年トップだって…」

テストの上位者は掲示板に張り出される。
秀は一学期の期末テストで
五教科総合で学年トップの成績を収めていた。

「ははっ あんなの偶然だって。
 たぶん次は長瀬が一位だよ。」
「そ、そんなわけないですっ!」

お世辞を言われて悪い気はしないが、
秀に面と向かってそんな事を言われると
困ってしまう由梨だった。

「ふぅ…」

自分の席に着いて一息ついた由梨に、
奈津希が蓮の宿題を写しながら話しかけてくる。

「由梨、なかなかやるじゃない。」
「え、なにが?」

由梨は奈津希の方を向いたが、
奈津希はひたすらシャーペンを走らせている。
猛烈な勢いで宿題を写す、カリカリという音が響いていた。

「秀のこと、好きなんでしょ?」

ペンを走らす手は止めずに、横目で由梨を見る。

「ち、違うよ!」

そう否定したものの、
由梨の顔はボンッと音が出そうなほど一気に真っ赤になった。

「顔に書いてあるわよ。」

と奈津希は由梨をからかった。

「へぇ、長瀬は矢吹が好きなのかぁ。
 結構お似合いかもしれないね。」

と誰かの声。

「ね。あたしもそう思うのよ。
 って… あ!!」

ここにきて初めて奈津希のペンが止まった。

「緒方先生!!」

さすが親友。
奈津希と由梨の声は見事にシンクロしていたのだった。

そこに立っていたのは、緒方翔――その人だった。

「栗原…、他人の宿題写すのはダメだよ。」

翔は眉をひそめる。

「う…」

奈津希は”しまった…”といった表情を浮かべていた。

「せ、先生!別にわたし…矢吹くんが好きとか…
 そんなんじゃないですっ」

顔を真っ赤にして慌てて否定する由梨は、実に女の子らしい。

「大丈夫、別に誰にも言わないって。
 応援してるよ。」

と翔は生徒に笑顔を送った。

キーンコーンカーンコーン…

授業開始のチャイムが鳴る。

「時間だね。みんなー、席に着いて!」

そういうわけで、
翔はこの2年B組の担任で、数学の教師である。
翔は高校を卒業後大学に進学し、
教員免許を取って自分の出身校のこのS高に赴任してきた。
“若い”という事もあるが、あまり厳しくないという事もあって
結構生徒には人気がある。
ちなみに美優は専業主婦なのだが、
翔の持ち帰ってきた学校の仕事を手伝っている。
書類をまとめたり、授業用のプリントを作ったり。
テスト問題を作ったり、丸付けをしたり。
日中暇を持て余しているのか、
それとも夜の翔との時間を少しでも長くしたいのか…。

「まったくなんであたしが…」

と文句を言いながらも、自主的に手伝っているのだ。
ふたりは同じ大学の教育学部に進学したので、
てっきり美優も教職に就くのだと思われていたのだが、

「なんであたしが赤の他人に勉強教えなきゃなんないのよ!」

と言って、教員免許を封印した。
だが、実際美優の方が頭が良い。
美優はその持ち前の、(翔に対してだけ)世話好きな性格を
遺憾なく発揮して、”教師緒方翔”をサポートし、
実のところ、翔と美優の二人三脚で教師を務めているようなものだった。

「それじゃあ、出席を取ります。」

教壇に立った翔は、さっそく出席を取り出した。
まだまだ駆け出しの新人教師だが、
ようやく少しは板に付いてきた感じだ。
生徒たちの名前が次々と呼ばれ、
みんなしっかりと返事を返している。
教師を無視したりする生徒はいない。
さすがその辺は進学校というだけある。

「大槻蓮(オオツキレン)」
「あ、はい。」

彼は典型的なお人好しのようだ。
噂によると、奈津希と付き合っているらしいが、
完全に尻に敷かれているであろうことは明白だ。
顔は決して悪くないが、どことなく抜けている感じがする。

「如月小夜子(キサラギサヨコ)」
「…はい。」

粉雪のように白くきめ細やかな肌が美しいこの少女。
漆黒の髪は、どことなく暗い感じがする彼女の性格と相通ずる。
学校の成績はトップクラスだが、
他のクラスメイトとあまり仲良くないようだし、
担任の翔としてもなかなか取っ付き辛い生徒である。

「栗原奈津希(クリハラナツキ)」
「はーい♪」

長い髪が印象的なこの美少女。
ものすごく誰かに似ている気がするが、
まあどこにでも居そうなタイプではある。
教師の翔にもタメ口で、それに関しては何度注意しても直らないので
翔は半ば諦めているのだった。
家は貧乏らしいが、持ち前の明るさでそれを感じさせない。

「長瀬由梨(ナガセユリ)」
「はい。」

大人しい性格の彼女は、外見にもそれが表れている感じがする。
真面目で努力家で勉強も良くできるが、運動は苦手である。
読書が好きらしく、よく本を読んでいる姿を目にする。
詳しいことは聞いていないが、家庭の事情で両親と離れ
現在は祖母とともに暮らしているとのことだ。

「矢吹秀(ヤブキシュウ)」
「はい。」

顔は男前で、頭も良い、運動神経も抜群…
と、絵に描いたような好青年。
少し前父親が再婚し、義理の母や妹と暮らすようになった。
妹がなかなか懐いてくれないと言っていたが、今はどうだろうか。

「はい。全員いるね。」

出席を取り終わり、夏休み明けに全員の顔が無事揃ったことに
ホッと安心する翔だった。

「じゃ、始業式は9時半からだから。
 みんな体育館へ行ってください。」
「あ、そうそう。
 午後からは時間割通りの授業だから。
 数学の授業は、宿題集めるからね。」

翔はこのクラスの担任でもあり、数学の担当でもある。
ちなみに夏休みの宿題は、翔が意地悪で出したのではなく
その学年の数学教師全員で決めたものである。
あの鬼のような宿題には、翔も学生時代苦しめられたクチだ。

始業式では校長の長い長い話を延々と聞かされ、教師の翔でさえウンザリした。
自分のクラスの生徒が騒ぎを起こしたりしないか心配だった。
なにせ翔のクラスには奈津希と小夜子がいる。
ふたりは顔を会わせば喧嘩が始まるような、犬猿の仲なのだ。

「じゃあ授業に入るよ。」

翔は教壇に立って、生徒たちに声をかけた。
数学の授業だ。

「まずは宿題を集めようかな。
 後ろの人、集めてきて。」
「あ、先生!!」

急に奈津希が大声をあげた。

「ん? どうしたの、栗原…」
「新婚旅行どうだった?」

テヘッといった感じの可愛い笑顔を浮かべる奈津希。
きっと宿題を集めさせない気だな。

「奥さんとラブラブなんでしょ?」

確かに奥さんとはラブラブだが、
そんな惚気話をここでするわけにはいかない。
なにせその惚気話は18禁だ。
そこで翔は上手いかわし方を思い付いた。

「…栗原こそ
 彼氏とはうまくいってるの?」
「か、彼氏!?
 蓮はそんなんじゃないわよ!!」

奈津希の大声に、クラスメイトたちは爆笑だ。
まんまと引っ掛かった奈津希。
蓮は顔を真っ赤にし、アチャ〜といった表情だった。
やっぱり噂は本当だったらしい。

突然、生徒のひとりが立ち上がった。
―――小夜子だ。

「授業やらないんなら、
 出て行ってもいいですか?
 時間の無駄なんで。」

この嫌みったらしい言い草に奈津希はムッとする。
翔も良い気分はしないが、
そんな事で怒るような性格ではない。

「ごめんごめん。」

と翔が謝ると、小夜子は席に座った。

「ほら、栗原。うちは進学校で、
 みんな真面目に授業を受けたいんだから。
 そういう話は休み時間にね。」

と、今にも小夜子に飛び掛りそうな奈津希を宥めた。

「じゃ、授業を始めます。そうだなぁ…
 とりあえず、1学期の復習からいこうかな。」

2年B組、翔のクラスはいつもこんな感じだ。
今学期もこれまでのように、
何事もなく楽しく過ぎてゆくんだと…
翔も、生徒たちも、信じていた。

休み時間、由梨は本を読んでいることが多い。
場合によっては勉強をやらなければならないときもあるし、
奈津希たちと話をして過ごすことも多いが、
そうでなければ大抵読書をしている。

「長瀬、本読むの好きだよなぁ。
 何の本読んでるんだ?」
「えっ あ…矢吹くん…」

急に意中の秀に声をかけられ、びっくりした由梨。

「小説…だけど…」

と言葉を濁した。

「へぇ…、なんていう小説?」

いつも由梨に話しかけてきたことなどほとんどない秀が
話しかけてきてくれるのはすごく嬉しいことではあったが、
なんでまたよりによってこんな時に…

「え…あ…いや…その…」

とシドロモドロになってしまった。
由梨が読んでいるのは
アルマゲストというマイナーなファンタジー小説。
さほど面白くもない小説だが、
問題は、これが官能小説だという事だ。
しかも今読んでいたのはまさに濡れ場で、
きっと無意識のうちにニタニタしてしまっていたに違いない…。
それを秀に見られてしまったのだ。

「おーい、矢吹。」

そのとき突然、秀を呼ぶ声がした。
翔が秀に話しかけてきたのだ。

「あ、緒方先生…」
「あ、ごめん…。話し中だった?」

秀は由梨と話していたのだということに気付いて、
翔は申し訳無さそうな顔をする。
翔は由梨が秀に気があるという事を知っていたから…。
だが、由梨にとっては助け船であった。
由梨はホッと安堵の表情を浮かべた。

「先生、どうしました?」
「あ、ええと…。その後、妹さんとはどう?」

秀の両親は離婚し、秀は父親に引き取られたのだが、
少し前に再婚して、母親やその連れ子と4人で暮らし始めたのだ。
母親の連れ子の亜樹(アキ)は、秀にとっては義理の妹に当たる。
一学期の3者面談では義理の母親が来た。
母親とは上手くやっているようだが、
妹の亜樹は小学生の女の子とは思えないような男勝りな性格で、
あまり秀に懐いてくれないのだと、母親が嘆いていたのだ。

「仲良くやってる?」
「はい…まぁ仲良く…というか…」

言葉を濁す秀。

「子連れ同士の再婚じゃあ、なかなか大変だから。
 何かあったら、相談に乗るよ。」

そっと肩を触って微笑んだ。
人を安心させる笑顔だ。

「ありがとうございます。
 でも、大丈夫です。」
「そう? ならいいけど。」

秀は本当に大丈夫のようだった。
別に強がっているようには見えないし、
むしろ順調に事が進んでいるようで嬉しそうな顔をしていた。

だが、実はこのときにはすでに狂い始めていたのだ。
――――運命の歯車が。

翔も由梨も、気付くことができなかった。
歯車が狂い始めているということも、
自分たちがその歯車の一部であるということも。

もう日も沈み、大抵の部活動も終わって、
学校の校舎にはほとんど誰もいなくなった頃…
2年B組の教室には、まだ二人の生徒が残って課外授業をしていた。

「んぁ…んん…」

激しい口付け…
絡み合う舌…
狂おしい感情を抑え切れえずに
彼の髪を掻き毟り、
淫らな口付けが延々と続く。

「…んはぁ!」

長い長いキスを終えると、
少女は口元に垂れる唾液を袖で拭いた。

「はぁ…はぁ…、蓮!! いきなり何すんのよ!」

彼女も自ら望んでしていたように見えたが、その気は無いらしい。
ただ、応えただけなのか…?

「何って…、いつもの…だけど?」

彼女の怒った顔に、蓮は苦笑した。
蓮は嫌がる少女の胸に無理やり手を伸ばし、
制服を肌蹴させてブラをずらした。

「学校でこんなコトしていいと思ってるわけ!?」

そう言って暴れる彼女を押さえつけ、
露になった胸を見てニヤリとした。

「でも、奈津希…、もう乳首勃ってるよ?」

蓮は奈津希の乳首にそっと触れてみせた。

「どこ触ってんのよ!エッチ!!」

蓮が奈津希の乳首を優しくしゃぶる。
コロコロと舌で転がすと、奈津希は甘い声で許しを請う。

「やめてぇ…。ねぇやめてよぉ…」

奈津希の頬は蓮の愛撫で火照らされて、
普段見せない表情を見せる。
「やめて」と言う奈津希の願いを聞き入れる事もなく、
蓮の指は徐々に下半身へと伸びてゆく。
誰か来たらまずいので、
制服は脱がさずショーツだけずらした。

「ヒドイ…!やめてよ!!」

そう言って真っ赤になった顔を手で覆った。
もしかしたら、彼女の瞳は潤んでいるのかもしれない。
もしかしたら…。

「もうイヤ!蓮のバカぁ! 最低!!」
「でも…、…すごい濡れてるよ。」

奈津希のショーツはグッショリと濡れていた。

「う、嘘よ!!」

「そんなわけない」と否定する奈津希に、

蓮は自分の指を見せ付ける。

「ううん、ほら…」

蓮の指には、奈津希のショーツについていた愛液が…。

「もっとして欲しいんでしょ?」

妖しく微笑む蓮に、奈津希は顔を真っ赤にした。

「バ、バカ!!そんなわけないじゃない!!」
「そう?」

蓮はなおも妖しく微笑みかける。

「でも…、こっちの奈津希は我慢できないみたいだね。」

そう言いながら彼女のスカートをたくし上げ、
“もうひとりの奈津希”を露にした。
恥毛がツンッと逆立っていて、実に可愛らしい。

「イヤ…!!み、見ないで!!」

そう言いながらも、奈津希はもう抵抗することはなかった。

奈津希の秘部を貪る蓮。
舌で優しくそれをなぞると、奈津希は思わず身震いする。

「ハハッ…、気持ちいいの?」

蓮がそう笑って見せると、奈津希は自分の股間に埋まる蓮の頭をポカポカ叩いた。

「気持ちよくなんてない!やめてよ!!」

しかし、彼は決してやめはしない。
嫌がる奈津希を尻目に、蓮は彼女の敏感な部分を舐め続ける。

「んぁあ…あぁ…」

彼の舌に奈津希はついに喘がされてしまう。
奈津希は快感に悶え、自分の股間を貪る蓮の髪をクシャクシャにした。
よだれを垂らして喘ぐ奈津希の淫らな顔は、もう、その快感を自ら望んでいるようにも見える。

「あんっ…ぁあ…、もっとぉ…」
「え?」

蓮は奈津希の股間に埋めていた顔を上げ、
奈津希の顔を見上げた。
口の周りが奈津希の汁塗れだ。

「…あ、間違えた。」

奈津希はテヘッと舌を出した。
その仕草に、思わずドキッとした蓮。

「奈津希…」

カチャカチャとベルトを外す音がする。
蓮はおもむろにズボンとトランクスを下ろし、
ビンビンに勃起した肉棒を奈津希の視線のもとに晒した。

「きゃっ!何よそれ!?」

わざとらしく怯えてみせる。
顔を赤らめて手で目を覆ったが、
指の隙間からその肉棒を凝視していた。

「こんなにビンビンだなんて…」

恐る恐るそれに手を伸ばす。
奈津希の指がそれに触れると、
敏感なそれはビクンッと反応した。

「まさかあんた、あたしにこれをしゃぶらせる気!?」
「はぁ?」

奈津希、悪乗りし過ぎだよ…
ちょっとヤケになってるし。
蓮はそう呆れつつも、お言葉に甘える。

「じゃあお願いしようかな。」
「い、いやよ!あんた、バカじゃないの!?」

大声で拒絶しながら、言葉とは裏腹に、蓮のペニスを口に含んでゆく。
奈津希は慣れた手つきで睾丸を揉み揉みしながら、すぼめた口を上下する。

「ああ…奈津希…気持ちいいよぉ…」

口にペニスを含んだまま、上目遣いで蓮の様子を窺う。
その顔が、蓮をさらに興奮させるのだと知りながら…。
歯が当たらないように気を付けながら、
奈津希は彼のために出来る限りの奉仕をしてあげた。

「な、奈津希…、そろそろ限界。」

蓮はそう言って射精に至る前にフェラチオをやめさせ、
奈津希の口から肉棒を引き抜いた。

奈津希の唾液や先走り液がべっとり付いた蓮のペニスは、
先程以上に硬くて大きくて、
はち切れんばかりにビンビンになっていた。

「まさかあんた、これをあたしのおまんこに挿れる気じゃないわよね!」
「お、おまんこ…?」

女の子がそういうコト軽々しく口にするなよ…
蓮は苦笑する。

「じゃ、挿れるよ。」

蓮はコンドームを装着し、準備万端。
そっと奈津希の肩に触れると、
彼女はビクンッと大げさに驚いた。

「いや…!!あたしの処女が…
 こんなふうに奪われるなんて…」

そう項垂れてみせる奈津希。
頭を抱えて、絶望に打ちひしがれている…らしい。

「処女…?」

蓮が奈津希の顔を覗き込むと、
奈津希は妖しげな笑みを浮かべた。

「…そういう設定。」

「はぁ…」と大きくため息をついて、蓮は頭を掻いた。

「ねえ、奈津希…
 やっぱ止めてよ、それ。」
「何でよー!!」

奈津希はワッと顔を上げて頬を膨らませる。

「“放課後の教室で犯される美少女”
 このシチュエーション、燃えるでしょ?」

自分で美少女と言うところが奈津希らしい。

「だけど、誰かに見られたら
 完全に僕が悪者になっちゃうじゃん。
 なんだか怖くて…」

「ったく臆病ねぇ。
 そのときはちゃんとあたしが事情を説明するわよ!
 あんた、あたしのこと信じてないの!?」

そう言って詰め寄る奈津希の
威圧的な顔と胸を交互に見つめ、
蓮は冷や汗を流した。

「し、信じてるけどさぁ…」
「ま、いいわ。」

奈津希は腰に手を当て、堂々としたポーズ。
肌蹴た制服からわりと大きな胸がポロリしているが、
そんな事はまったく気にしない。
先程までの“放課後の教室で犯される美少女”は、
いったい何処へいってしまったのだろう…。
この女、けっこう女優だ。

「ねえ、挿れてよ。」

スカートをたくし上げ、蓮を挑発する。
ショーツは先程蓮に脱がされて
左足首に絡まったままでいるので、
当然包み隠すものは何もない。

「今日もバックでいい?」

呆れて笑いながら蓮がそう聞くと、
奈津希は

「もち♪激しいの、頼むわよ。」

とウィンクした。

「…この方が奈津希らしいな。」

蓮は奈津希を後ろから抱き締め、
彼女の中に、一気に挿し込んだ。

「ぁあん!!」

奈津希は思わず声をあげて仰け反る。
しかし、その奈津希の喘ぎ声は
ガラガラ…とドアの開く音で掻き消された!!

ふたりはハッとして、
体は繋がったままドアの方に顔を向けた。

翔が呆然と立ち尽くしている。
口をポカーンと開けて、瞬きひとつしない。

「―――ご、ごめん!!」

我に返った翔は、慌てて後ろを向いた。

「…先生のえっちぃ♪」

奈津希の場違いな一言で、
翔はハッとして振り返る。

「こ、ここは学校じゃないか。
 学校でそんな事しちゃダメでしょ!」

と、言い終わるや否や、また彼らに背を向ける。
顔を真っ赤にして。

「…と、とりあえず、服を着なさい。」

ヤバイ…
栗原のおっぱい、もろ見ちゃった…
ちょっとした罪悪感を覚えながら、
勃起しかけた息子に
「治まれー!治まれー!」と念じたのだった。

「そう固いこと言わないでさ。あ、先生も交じる?」

そう遠くない背後から奈津希の声が聞こえる。

「奈津希!」
「じょ、冗談よぉ。」

蓮は普段大人しいから、たまに大声で奈津希を叱ると、
彼女はすぐしゅんとなる。
だが、それもほんの一瞬のことだ。

「先生ごめんなさい…
 でも、他にやる場所がなくて…」

と蓮が反省と言い訳を述べているすぐ側から、

奈津希は

「先生も毎晩奥さんとやりまくりなんでしょ?」

と、翔を茶化した。
だが、それは否定できない。
確かに毎晩やりまくりだから…。
それはともかく、
この女、
―――全然、反省していない!

「とにかく!!……終わったら職員室に来なさい!!」

ふたりの様子をチラッと見つつ、
翔はそう言い放って教室のドアを
ガタンッ!!と大きな音をたてて閉めた。
結局、緒方先生は、優しかった。

「…終わったら?」

ふたりは顔を見合わせた。
そして暫く見つめ合って、

「…ぷっ!!あはははっ…」

堪えきれなくなって、ふたりは笑い合った。

「まったく…、他の先生とか生徒に見つかったら、
 僕が校長に怒られるじゃないか。」

ブツブツ言いながら教室をあとにする。

「ぁああん!蓮っ!! んぁあ!」

翔が扉を閉めて間もなく、奈津希の喘ぎ声が廊下にまで響いてきた。

「はぁ… 若いなぁ。」

教室から聞こえてくる声に、がっくりと肩を落とし項垂れたのだった。

「はぁ… きっとお説教ね。」
「…だね。」

奈津希と蓮は、職員室のドアの前に佇み、
今一歩踏み出せないでいた。
誰もいない廊下の静寂が、ふたりの背中に重く圧し掛かる。

「…停学とかになっちゃうのかしら。」

奈津希にしては珍しく弱気な発言。
いつも強気な奈津希がそんなことを言い出すから、
蓮の不安も増すばかり。

「どうだろ…。緒方先生、優しいから…
 内緒にしててくれると思うけど…。」

―――――沈黙

「あーもう!!」

急に大声をあげた奈津希。

「ここでこうしてても始まらないわ!!開けるわよっ!!」

踏ん切りをつけて、ドアを思いっきり開けた。
その後、ふたりは数十分もの間
翔からきつ〜いお説教を受け続ける。
結局、最終的には

「今日のことは、見なかったことにするけど!
 でも!! もし今度見つけたら…」

と苦言を呈されたのだった。

夜の暗闇の中、
電灯の明かりが三人の姿を照らしていた。
翔はいつもの家路を歩いてゆく。
その後ろをついて行く奈津希と蓮。

「先生、何だかんだ言って優しいのね。」

奈津希は歩きながら翔の顔を覗き込む。

「…っていうか、なんで付いて来るのさ。」
「ま、固いこと言わないで。
 奥さん見てみたいし。」

そう言って翔の背中を叩く。
奈津希は、”反省”というものを知らないのだろうか。
さっきまで落ち込んでいた蓮も、
奈津希につられて元気を取り戻している。

「先生の奥さん、すっごい美人なんですよね。
 高校時代からずっとラブラブだったって。
 教頭先生が言ってましたよ?」

教頭は翔たちが学生として通っていた頃から
ずっとS高にいる古株の教師だ。
昔の恩師で今の上司なわけだから、
当然翔と美優の結婚式にも出席していた。
だが、翔はその教頭があまり得意ではない。

「はぁ…
 教頭、ベラベラ喋り過ぎなんだよ。
 この間だって……、……ん?」

翔は急に言葉を詰まらせ立ち止まった。

「矢吹…」

公園のブランコに揺れる少女の背中を、
秀が優しく押していた。
ふたりは何やらとても楽しそうに、笑い合っている。

「そっか…。矢吹の家、この近くでしたね。」
「秀…、一緒にいるのは妹かしら?」

妹の亜樹がなかなか秀に懐かないと、
秀の母親は言っていたが…

「何だ…仲良くやってるじゃないか。」

翔は声をかけたりはせずに、ただ秀と亜樹の仲睦まじい光景をぼんやりと眺めていた。

公園の前で呆然と立ち尽くしたままの翔を、奈津希は不思議がる。

「…先生?どうしたの?」
「いや… 何でもない。」

そう言って暫くしてから…

「ここはね…、僕と美優の思い出の公園なんだ。」

ポツリポツリとひとり言のように語り出す翔。

「美優に告白したのも…、ファーストキスしたのも…
 プロポーズしたのも…、全部、この公園なんだ…。」

「翔、なんて言うかなぁ…」

不敵な笑みを浮かべながら、
美優は鏡に向かってポーズをとる。
美優は鏡に映った自分に話しかけた。

「美優…」
「ダ〜メ。ごはん、冷めちゃうわよ?」
「でも…、僕、もう我慢できないよ!」
「もう!翔のエッチ!!」
「エッチなのは美優でしょ?
 ほら…もう乳首勃ってる…。」
「ど、どこ触ってるのよ!
 ぁあんっ!!」
「………ハッ!!」

気付けば美優は、自分で自分の乳首を摘まんでいたのだ。

「あたし…、なにやってるんだろ…。」

へなへなと座り込み、恥ずかしそうに頭を掻いた。

「バッカみたい。翔…早く帰ってきてよぉ…。」
「ただいまー。」

翔は美優の待つ我が家のドアを開ける。
翔と美優は、翔の実家の近くのマンションで
二人暮らしをしているのだ。
新婚生活を邪魔するものは、何もない。

「あ、お帰りなさい♪」

翔の帰りを待ちわびていた美優は、
ルンルン気分で玄関へと駆け寄ってきた。

「あ……」
「なっ…」
「え…」

顔を真っ赤にする翔と、ポカーンとした顔の奈津希と蓮。
美優は俯いて、目の下をピクピクさせている。

「ハ、ハダカ…えぷろん…!?」

奈津希が目をパチパチさせて呟くと、
美優は顔を真っ赤にしながらも
彼女にニッコリと微笑みかけた。

「生徒さん?」
「は、はい…。」
「ちょっとそこで待っててもらえる?」

恐いくらいの満面の笑み。
美優は翔の服の袖を掴むと
部屋の奥へと引っ張っていった。
美優の後姿は、まるで全裸のようで…
――――あまりに、美しかった。

バチンッ!!と大きな音が響き渡る。

「バカぁ!!生徒連れて来るなら、
 先に電話くらいしなさいよ!!」

美優は少し涙目になって怒鳴りつける。
翔は頬のモミジを摩りながら、

「ご、ごめん…」

と情けない声を出していた。
そんなふたりのやりとりに聞き耳を立てていた蓮は、
冷や汗をかきながら奈津希に言う。

「…帰ろっか。」
「先生の奥さん…超美人…」

放心状態の奈津希は、ポツリとそう漏らした。
結局、翔たちには何も告げずに
蓮と奈津希は翔の家をあとにした。

「もし…もしさ、僕らのせいで離婚とかになっちゃったら…」
「裸エプロンでダンナ迎えるくらいラブラブなんだから。
 そう簡単に離婚なんてするわけないでしょ!」

不安がる蓮を、奈津希はいつもの調子で笑い飛ばす。

「裸エプロンかぁ…」

蓮は夜空を見上げた。
だが、その瞳に映るのは満天の星空ではない。
裸エプロン姿の奈津希を妄想しているだけである。
そんな蓮の妄想を知ってか知らずか
奈津希は同じ夜空の星を見上げて呟いた。

「…教室で裸エプロンはちょっと無理ね。
 見つかったら言い訳のしようがないもの。」

結局、日曜にデートをして
高級なディナーをご馳走する、ということで許してもらった。
緒方家の財布は美優が握っているので、
翔は月々僅かしかもらえないお小遣いの中から、
高級ディナーの食事代を払わせられる破目になってしまったのだ。
喧嘩をしても、ふたりは仲直りが早い。
美優はわりとサバサバした性格であまり引きずらないし、
翔は大抵の場合すぐ謝る。
それに何より、互いに心底べた惚れしているのだ。
新婚夫婦というのは恐ろしい。
美優はついさっきまで怒り心頭だったのに、
今はふたりでお風呂に入っている。
そんなに広くない浴槽に、
ふたりで体を密着させて浸かっていた。

「ふぅ…」

美優が立ち上がると、
翔の目の前に、濡れて妖艶さを漂わせる恥毛。

「体洗うから、あんたはまだお湯に浸かってて。」

いつものように体を洗い合うのだと思っていたら、
美優はそんな言葉を口にした。
意外に思った翔が

「僕が洗ってあげるよ。」

と言うと

「いいわよ。自分でやるから。」

と敢え無く断られてしまう。
…やっぱりまだ怒ってるのかなぁ。

翔が湯船に浸かってしょぼくれていると、
いつの間にか美優は全身泡塗れになっていた。
白い泡に優しく包まれた裸が、清らかで美しい…。

「翔、背中洗ってあげるから、ここに座って。」
「あ、うん…」

体は洗ったもののお湯で流したりせずに
泡塗れのままでいる美優を不思議に思いつつも、
翔は言われたとおりに美優の前に座る。
石鹸のいい匂いがする…。
背中に柔らかい感触を感じた。
プニプニしていて… ふわふわしていて…
それでいてときどき硬いものが…!?
いったい、何で洗ってるんだ…?

「え、ちょっと、美優…!?」

翔はビックリして思わず振り向いた。
美優は自分の胸を擦り付けて
翔の背中を洗っていたのだ。

「さっき思いついたから、
 ちょっとやってみたかったのよ。
 …どう?」

美優の顔が真っ赤なのは、
湯あたりしてしまったからだろうか。
最近の美優は、ものすごくエロい。
昔からそうだったが、結婚してからは尚更だ。

「ほんと最高だよっ!もっとやってほしいなぁ。」

翔がそう喜んでみせると、美優はますますご機嫌になる。

「オッケー♪はいはい、前向いて!」

背中に伝わる柔らかい感触と硬い感触。
…すごく興奮する。
美優の時折漏れる荒い息が、とってもエッチ。
息が耳にかかると、ゾクゾクしてしまう。
美優からは見えないが、
翔のペニスはビンビンに勃起している。
こんなにエッチな奉仕を受けているんだから当然だ。

翔は目の前にある鏡に映る美優に
冷静を装って話しかける。

「…でも、良かった。美優、機嫌直してくれたんだね。」
「はぁ…はぁ…、まったく!
 超恥ずかしかったんだから。
 はぁ…はぁ…、あの生徒たち、ちゃんと口止めしときなさいよ!」

翔からは見えないと油断していたのか、
鏡に映った美優はものすごく淫らな顔をしていた。

「ハァハァ…、んもういいでしょ?
 意外に疲れるわ、これ。」

美優はぐったりと翔の背中にもたれかかった。
翔に後ろから抱きつく格好だ。
美優は手探りでそれを探してみた。

「あ、やっぱり!…勃起してる♪」

何故か嬉しそうな美優。
それをギュッと握り締め

「せっかくだから、これも洗ってあげる。」

そう言ってペニスを扱き始めた。

「気持ちいい?」
「うん。…美優、今日は優しいね。」

「なに言ってんのよ。
 あたしはいっつも優しいでしょうが!」

頬を膨らませる美優。可愛い。
美優は手馴れた手つきで扱き続ける。
だが、これはあくまで洗っているだけだ。
射精に至ってしまっては身も蓋もない。

「これくらいでやめとかないと、出ちゃうでしょ?」

美優はクスクスと笑う。
だんだん気持ちよくなってきた…というところで
美優は手を止めてしまった。
そんな美優が憎らしい…。

ペニスから離れた美優の手は、
さらに下へと向かっていった。
細い指先が、触れてはいけない部分に触れる。

「ええ!そんなトコまで…」

翔はビクンッとして驚きの表情を浮かべる。
美優はアナルの付近を弄りだしたのだ。
ボディソープをたっぷりつけて、
翔のお尻を手で洗う。とりわけ穴の付近を。

「き、汚いよ…」
「汚いから洗うんでしょ〜が!」

恥ずかしがる翔を、
美優は嬉々とした様子で眺めていた。
翔は顔から火が出る思いだった。
もともと美優は翔のこういう顔が好きだったのに、
慣れてくるとそういう表情をしてくれない。
だから美優はどんどん過激になっていかざるをえないのだ。
その結果、こんなところまで辿り着いてしまった。

「ちょっと…美優…!」

ついに美優の指が、翔のナカへ侵入した。

「なに?」
「な、何でもない…。」

美優の子悪魔な笑みに、翔はもう、タジタジだった。
ふたりの夜は… まだまだ明けそうにない…。

「うぅ…」

翔のこの表情が堪らない。

この表情が美優を興奮させる。

「ちょっと翔、締め付けすぎ!
 力抜きなさいよ。」
「ム、ムリだよ…」

翔のアナルはギュッと締まり、
美優の指の進攻を頑なに拒む。

「ま、いいわ。」

美優はこれ以上奥に入れるのは諦め、
入り口付近で指を遊ばせ翔のアナルを弄んだ。

「んくっ…」

美優の指が蠢き、翔は篭った声を出す。

「フフッ、少しは挿れられる側の気持ち、わかった?」
「な、なんか変な感じ…」

顔を真っ赤にした翔を“カワイイッ”と思いながら、
人差し指をくねくねと動かし続ける。

「気持ちいいの?」
「…よくわかんない。」
「そ。」

美優はニッコリと笑った。
小悪魔な笑みは、いつも翔のことをいじめる。

「じゃ、これでどう?」

美優は穴に人差し指を挿れたまま、
同時にペニスを扱きだした。

「そ、それは…あぁ…」

急に翔はうろたえ悶え始める。

「んぁ…美優ぅ…、ヤバイ…よ…」

息絶え絶えの翔は、本当に快楽を得ているようだ。
美優は喘ぐ翔をニタニタと眺めながら、
右手の人差し指でアナルの中をグチャグチャに掻き乱し、
左手ではペニスを上下に扱き続ける。
先っぽから何かが先走りしているのを見つけると、
亀頭にそっとキスした。

「もう…ムリぃ…、で、出るっ!」
「えっ!もう!?」

急にアナルがギュッと締まったかと思うと、
次の瞬間ペニスの先から白濁の粘液が飛び散った。

「はぁはぁ…」

完全に逝ってしまった翔は、ぐったりと項垂れる。

「まったく。あ〜ぁ、貴重な一発がぁ…」

美優は念入りに手を洗った。
特に、未知の領域へと進攻した人差し指は
爪の間まできちんと丁寧に。

「ゴメン…」
「…ま、気持ちよかったならそれでいいわよ。」

俯いたままの翔の髪を、美優は優しく撫でた。
ふたりは優しいキスをする。

「ワンダリンスタァート
 暮れなずーむ空ぁーにぃ
 潤んだボークのひとーみはぁー
 キミーのね、澄んだ、ひとーみと
 ただ見つめ合えたとき 煌くよぉー
 アイワナスタート
 これからーのストーリー
 かーさなーるふーたりーのかーげよぉー
 はじーまり、告げる、ことのーは
 愛しい人と 共に奏でるアイノメーロディー」

「美優、相変わらず歌上手いねぇ。」

歌い終わってマイクを置いた美優に、
翔が微笑みかける。

「あったりまえじゃない♪」

美優はヘヘーンッといった感じ。

ちなみに今の歌、
本当はもっとしっとり歌い上げるバラードなのだが、
美優が歌うとノリノリの元気ソングになるから不思議だ。

今度は翔の番。

「この声ぇ〜 届けたぁーいよ
 まだ小ぃさーな詩だけーど…」
「…あんたは相変わらず下手ね。」
「ご、ごめん…」

事実だけにタジタジの翔だった。

「フフッ、ね、今度は一緒に歌おっ?」

カラオケボックスから出てきたふたり。
第一声は美優の

「暑いわねぇ…」

冬の寒い時期は、美優が密着してくるから翔は嬉しい。
逆に暑いと翔が近寄ろうとすると「暑苦しい!」と叩かれる。
まあ、暑いと露出度が増えるから
それはそれで嬉しいのだが。
実際、今日も美優の服装はなかなか際どい。
超ミニのスカートから、何かが見えてしまいそう。

「カラオケの中、冷房かなり効いてたからね。
 よけい暑く感じるんじゃない?」
「それにしたって暑過ぎるわよ。
 もう9月も後半だっていうのに、
 連日30度超えてんのよ!」

ダラダラ垂れてくる汗を手の甲で拭きながら、
ふたりは太陽の照り付ける日向を歩いていた。

「はぁ…、夕食の前に1回帰ろっか?」
「そうね。シャワー浴びてから出直しましょ。
 こんな汗臭くちゃ、せっかくのディナーが台無しよ。」

美優は服の胸元を摘まんではためかせ、
肌と服の間に風を吹き込ませる。

「まったく…ほんと暑いわねえ。あれ、翔?」

ふと横を見ると、そこに翔はいなかった。

翔は数歩後ろで立ち止まっていた。

「どうしたの?」
「え…いや…、この家、ずいぶんボロボロだなぁって。」

翔の視線の先には、荒れ果てた一軒家があった。
窓ガラスは割られ、蜘蛛の巣が張っている。
とても人が住んでいるようには見えない。

「ああ、佐田屋敷ね。知らないの?」
「佐田屋敷…?」
「結構有名な心霊スポットなのよ。」

周りに電灯もなく、すぐ隣には墓場がある。
夜中に来たら、確かに怖いかもしれない。

「なんでも、もともと父母と息子の3人が住んでいたけど、
 十年くらい前に父親が殺人事件を起こしてね…」

急におどろおどろしい口調になる美優。

「それを知った息子がショックのあまり気が動転して
 父親を包丁で刺し殺したのよ…」
「息子は警察に捕まって、ひとりあとに残された母親は
 精神病になり、最後には自殺してしまったそうよ…」

美優の話に聞き入っている翔は思わずゴクンッと息を呑んだ。

「それから住む人のいなくなったこの家は荒れ果てて…」
「でも…」
「誰もいないはずのこの家の中から
 夜な夜な、しくしく…しくしく…
 女の人の泣く声がするの…」
「あ…風…」

暑い中を家へと歩いていたので、
美優は突然吹いた風に心地良さを感じていた。

「美優!スカートっ!!」
「え、あ…キャッ!」

慌ててスカートを押さえる美優。
言われる前に気が付けよ、という話だが。
スカートは風に捲られ、数瞬すべてを晒してしまっていた。

「って…!パンツ…はいてないの?」

そう。
捲れ上がったスカートの下には、
何も身に付けていなかった。
恥毛を目の当たりにした翔は目を疑った。

「パンツ…?そんなの、はいてないわよ?」

美優は不敵に笑う。
翔をからかうときの顔だ。

「ほら…」

と、スカートをたくし上げてみせた。
翔は目を丸くする。

「だー!!なにしてんの!!」
「別に誰も見てないわよ。
 珍しくもない。」
「な、なんではいてないのさ?」
「アソコがスースーして気持ちいいのよ。」

悪びれもせずそう言う美優に、翔は口をあんぐりと開けていた。

「はぁ?」
「知らないの?今、流行ってるんだから。」
「な、なにが?」
「ノーパン・ノーブラ。」
「は!?」

ノーパン健康法とか、そういう類のものか…。
それともただ単に美優がふざけて
からかっているだけなのかもしれない。
困惑する翔を美優は

「ラギャルとか、知らないの?」

と笑い飛ばした。

「”ラギャル”…?ん、あれは…」

急に会話が途絶える。
翔は何かを見つけたようだ。

「どうしたの?」
「え、あ…ちょっとね。あれは確か矢吹の…」

翔は偶然通りかかった公園で、
矢吹の妹の亜樹…と思しき少女を見つけたのだ。
この前秀と一緒にいるのを見たばかりだから、
たぶん間違いないだろう。
彼女はおそらく同い年くらいであろう少年二人と
何か話をしている。
亜樹は髪を後ろで結んだ女の子らしい髪型で、
しかし腕組みをしたりして勝気な性格が窺える。

「おい!信太も直哉も、
 男ならもっとビシッとしろ!」
「だけど亜樹ちゃん…、ウチは…」

少年のひとりが弱弱しく反論しようとするが

「直哉!自分のことを”ウチ”って言うのは止めろ!
 そんな女みたいな喋り方してるから
 他の男子に苛められるんだ!」

敢え無く亜樹に一喝されてしまう。
男勝りな亜樹とは正反対で、直哉は男のくせに容姿も喋り方もどことなく女の子っぽい。

「亜樹ちゃんは、その男みたいな喋り方を止めたほうがいいと思うよ…」

そう突っ込みを入れたのは信太と呼ばれた少年だ。
彼もやはりひ弱な感じがする。

「何か言ったか?」
「いや、何でもない…」

亜樹が睨みを利かせると、信太も黙り込んでしまう。

「おい、直哉!!」

亜樹が大声で呼んだだけで、直哉はビクンッと身を竦めてしまった。

「いいか?今日からオレが、お前が立派な男になるまで
 ビシバシ鍛えてやるからな!」

亜樹は不敵に微笑む。

「題して、”卯月直哉(ウヅキナオヤ)改造計画”!!」

………。
………パクリ?

「で、ひとりじゃ心細いだろうから、
 信太!お前も一緒に鍛えてやる!」
「なんで僕まで…」

とばっちりを受けた信太が何か言おうとすると、
亜樹の「煩いっ!!」の一言で一蹴された。

「大体お前は根性が足りないんだよ!
 オレがしっかり叩き直してやるからな!」

一連の会話の流れを側で聞いていた翔たちは、
呆然として顔を見合わせる。

「”オレ”って…、ホントに女の子なの?」
「あれは相当強烈ね…」

さすがの美優も、亜樹のあまりのハチャメチャさに
面食らったようだった。
あの性格じゃ、母親が
「男勝りな性格で秀に懐かない」と嘆くのも仕方がない。
この前見た秀と亜樹の仲睦まじい光景を思い出し、
翔は「よくあの妹を手懐けたもんだ」と感心したのだった。

  Iwannastart
  これからのstory
  重なるふたりの影よ
  始まり告げる言ノ葉
  愛しい人と
  共に奏でるIknowmelody

教室に鳴り響く美しい歌声に、
難しい授業に退屈していた生徒たちは心安らぐ。
最近の携帯電話の”着うた”は随分と高音質になったものだ。

「もう、誰!?授業中は携帯の電源切っといてよ!」

教壇に立っていた翔が怒る。

「あ、ごめん先生。あたしだ…。」

奈津希は鞄から携帯電話を取り出し、
悪びれることなく着信を確認する。
どうやらメールのようだ。

「まったく栗原は…」

翔は文句を言おうとするが、
何か思い付いたのか急にポンッと手を合わせた。

「じゃあいいや、せっかくだから栗原、
 この問題黒板で解いてみて?」
「え…マジ?」

「え、えっと…」

顔が引き攣っている奈津希を
嬉々として眺める翔のSっ気。

「わかんないの?
 ちゃんと授業聞いてる?」

翔が意地悪なことを言うので
奈津希は頬を膨らませる。

「…じゃあ、大槻。
 彼女のピンチ、助けてあげて。」
「そ、そんなぁ…」

突然ふられた蓮は堪ったもんじゃない。
二人揃ってシドロモドロになってしまう。
が、蓮を巻き込んだのが運の尽きだったのかもしれない。
奈津希は意外と蓮にベタ惚れのようで、
蓮を守るためには手段を選ばない。
奈津希は早くも最終兵器の投入を決したのだ。

「…先生、そんな意地悪ばっかすると、
 先生の秘密言っちゃうよ?」
「えー、なになに?」

生徒たちは”先生の秘密”とやらに興味津々だ。
翔の顔が青ざめる。

「実はね、この前先生の家に行ったら
 なんと奥さんが…」
「わ、わかったから!
 はい、もう座っていいよ!!」
「ヘヘッ」

顔を真っ赤にした翔を見て、
奈津希は小悪魔な笑みを浮かべる。
蓮もホッと一安心して席に座った。
奈津希には後できっちり言っておかないと。
バラされてしまってからでは手遅れだ。
赤っ恥な上に、美優に知れたら何を言われるか…。

「センセー、どうしたんですかー?」

生徒たちがニヤニヤしながら
翔に声をかける。

「あ、ああ。えーと…」

不機嫌そうにしている小夜子と目が合った。

「じゃあ、如月、解いてくれる?」

小夜子はゆっくりと立ち上がる。

「まったく、こんなのも解けないって…
 あんたたち、頭ん中空っぽなんじゃないの?」

小夜子が奈津希を睨みつけると、奈津希はフンッと顔を背けた。

「何よあの子、感じワル!!」
「奈津希、抑えて抑えて。」

蓮が奈津希を宥める。

「…ん?」

  Iwannastart
  これからのstory
  重なるふたりの影よ
  始まり告げる言ノ葉
  愛しい人と
  共に奏でるIknowmelody

「こら栗原!没収するよ?」

翔は珍しく声を荒げる。

「今のはあたしじゃないわよ。」
「え…でも、同じ曲だったよね?」

サラリと否定する奈津希に翔はキョトンとした顔をした。

「先生知らないの?
 この曲ちょ〜流行ってるんだから。
 これ着うたにしてる人、たぶん多いわよ?」

昼休み、生徒たちと話をする翔。
緒方先生は案外人気者なのかもしれない。

「へー、あの曲そんなに流行ってるんだ。
 そういえば美優もカラオケで歌ってたなぁ。」

先生の奥さんの名前が美優であることは、
もう周知の事実なのである。

「もうすごいのよっ!
 仁元実華(ニモトミカ)の『START』、
 デビューシングルなのに200万枚近く売れてるのよ。」

自分のことのように自慢げに語る奈津希。
だが実際、200万枚といえば近年稀に見る大ヒットだ。

「歌自体も良いけど、
 やっぱ実華のパフォーマンスよね。
 ノーパン・ノーブラで超キワドイ服着てさ、
 もうすんごいカッコイイの!」
「ああ、最近よく聞く”エロカッコイイ”ってやつ?」
「そんなんじゃないわよ。
 もっとすごいの!!」

いったい何がどうすごいのか…。
翔が頭をフル回転させて妄想に励んでいると、
他の生徒が話に加わってくる。
仁元実華の話題となると、食いついてくる生徒は多い。

「生放送で見えちゃった事もあるのよね。」
「ね〜。あのときはさすがにビックリしたわ。」
「見えたって…何が?」

翔が嫌な予感を感じながらも恐る恐る尋ねると、
奈津希は平然と言った。

「何って…アソコよ。」
「ア、アソコ…」
「あ。あたしその時のビデオ持ってるよ。
 貸してあげようか?」
「えー!貸して貸してぇ!!」

女子生徒たちは大盛り上がりだ。

「女子にも人気なのか…」

翔はその様子に呆然としていた。
“ノーパン・ノーブラでキワドイ衣装”なのに、
男子生徒よりむしろ女子生徒に人気があるようだ。
世の中、何が流行るかわからないものだなぁ…

「実華を真似して、ノーパン・ノーブラの人も結構いるわよね。」

奈津希の何気ない一言に、翔はハッとした。

    「知らないの?
     今、流行ってるんだから。」
    「な、なにが?」
    「ノーパン・ノーブラ。」

「本当に流行ってるんだ…」

翔は思わず呟いた。
美優の言っていたことは、冗談でもなんでもない。

「先生、鼻の下伸びてるわよ!
 イヤらしいコト考えてるでしょ!!」
「か、考えてないよ!
 …でも、みんなノーパンなの?」
「わたしは違うわよ。」
「わたしもそんな勇気なんてないし。」
「あたしは…その日の気分によるけど…。」

「ふんっ、あんたたちなんかに仁元実華を語ってほしくないわね。」

その声にみんな一斉に振り向く。
ふてぶてしい態度で立っていたのは、やはり小夜子だ。

「実華はね、この街の出身なの。」

小夜子は奈津希たちを見下したように眺めながら、実華の話を続ける。

「昔ストリートライブやってた無名時代に、
 “素の自分が出せる”ようにって
 全裸でストリートライブをやってたことがあって、
 今のノーパン・ノーブラはその名残なの。」
「……は?全裸でストリートライブ…?」

固まる翔。
あまりに奇抜過ぎて妄想すら出来ない。
頭に映像が浮かんで来ないのだ。
全裸でストリートライブなんて。

「何回も警察のお世話になったけど、
 “今の自分があるのはそのお陰”って言ってたわ。」

奈津希と同じで小夜子も実華のことをまるで自分のことのように自慢げに語る。

「なにそれ…じゃあ実華って元ラギャルってこと?」

女子の誰かが呟いた一言は、茫然自失の翔の耳を素通りして消えた。

「なにあいつ!!知ったかぶりしちゃって感じワルッ!!」

奈津希が喚き出した。
小夜子の小話は相当機嫌を損ねたようだ。

「はぁ!?知ったかぶりはあんたでしょ!!」

負けじと小夜子も言い返す。

「わたしはストリートの頃から実華のファンだったの。
 にわかファンのあんたになんて、
 実華のことを語ってほしくないわ!!」

睨み合うふたりの目から火花が散りそうな勢いだ。
そしてその横で依然放心状態の翔。
ジェネレーションギャップなのか
カルチャーショックなのかよくわからないが、
翔には到底理解できない流行のようだ。

「あたし、今日はノーパンなのよ!!」
「わたしは毎日そうよ!!」

そんな言い合いを続けるふたりに、
翔は危うさを感じずにはいられなかった。

「仁元… 実華… かぁ…。」

そうポツリと呟いた翔の脳裏を過ぎったのは、
遠い日の記憶…
血のように紅い瞳…

「矢吹くんも、仁元実華好きよね?」

小夜子は近くにいた秀に話をふった。

「え…いや、俺は別に…。」

つれない返事の秀に、ムッとした顔をする。

「わ、わたしは好きです、仁元実華。
 歌ってる姿、カッコよくて…。」

そう言ったのは由梨だ。
由梨は奈津希みたいに積極的ではないから、
こうやって自分から話に入ってくるのは珍しい。
仁元実華のことをよほど敬慕しているのかもしれない。
でも…
「あんたなんかに聞いてないわよ!」
「ひぃっ…、ご、ごめんなさい。」

小夜子に一蹴されてビクつく。
去ってゆく小夜子の後姿を眺めながら、
秀は由梨に話しかけた。

「気にすんなよ、長瀬。如月のやつ、なんか機嫌悪いみたいだから。」

彼は優しい。
だから女子にモテるのだろう。

「長瀬も好きなのか…仁元実華…。
 確かにカッコイイよな。」
「ホント素敵で…憧れですっ!」

由梨は少女マンガのヒロインのように瞳を煌かせる。

「でも俺は…、ああゆう女より、
 可愛らしい感じのコの方が好みかな。
 …長瀬みたいな。」
「え…」

由梨は驚きのあまり
口をポカーンと開け呆然としてしまった。

「冗談だよ。」

秀が優しく微笑むと、
由梨はポッと音が出るくらい顔が真っ赤になってしまう。

「おーい、矢吹ぃー」
「どうした?」

秀は他の男子に呼ばれて去っていった。
彼は男子とも仲良く、女子からも慕われ、
いわゆるクラスの人気者なのだ。

「なんかイイ感じね、由梨と秀。」

秀と入れ替わりで由梨に近付いてきたのは奈津希。

「たぶんからかわれたんだよ、わたし…。」
「んー…、でもきっと秀は由梨のコト
 けっこう気に入ってると思うわよ?
 あたしの勘だけど。」

由梨は童顔で貧乳。
それがコンプレックスなのだが、
見る人によっては好まれるタイプだ。
隠れファンが多いことを本人は知るよしもない。

「ね、思い切ってさ。
 デートに誘ってみなよ!」
「そんなのムリだよ…
 断られるに決まってるよ。」
「そんなのわからないじゃない。」
「でも、もしOKしてもらっても、
 ふたりっきりじゃ何話していいかわかんないし…
 きっと気まずい感じになっちゃう…」

秀も由梨もあまりベラベラ話すタイプじゃないし、
由梨はアガリ症で、たしかに秀とふたりきりで会話が続くとは思えない。
そのことは本人が一番良く知っている。

「ならさ、ダブルデートはどう?
 あたしと蓮が一緒に行くからさ。」

奈津希はどうしても由梨と秀の仲を進展させたいらしい。

「秀もあたしと蓮が付き合ってるの知ってるんだからさ、
 きっと由梨の方に寄って来るでしょ。」
「そうかもしれないけど…でも…」
「じゃあ決まりねっ!ねえ、秀!!」
「え…ちょっと奈津希ちゃ…」

急に大声で秀を呼ぶ奈津希に、由梨は戸惑いを隠せない。
まったく困った親友だ。

「どうした?」

秀がやってきても、由梨は彼の目を見れなかった。
思わず俯いてしまう。

「あのさ、あたしたち今度プールにでも
 行こうと思ってるんだけどさ、あんたもどう?」
「プ、プール!?」

由梨はびっくりして顔を上げた。
プールだなんて聞いてないよ…と
困惑した表情で奈津希を見つめる。

「プールかぁ…最近暑いからな。長瀬も行くのか?」
「ええ。今のところ決まってるのは
 あたしと由梨と蓮。」

もちろん蓮には何も言っていない。
蓮の都合はお構いなしなのだ。

「そっか…。じゃあ、行こうかな。」
「え… ホ、ホント!?」

思わず声が裏返る由梨に、

「ああ。」

秀はまた優しく微笑んだ。
詳しい日程が決まったらまた連絡すると伝えると、
秀は他の男子たちのところへと戻っていく。

「奈津希ちゃん!
 聞いてないよ、プールなんて…。」
「いいじゃない。
 悩殺水着で秀をイチコロよ!」

奈津希の眩しい笑顔とは対照的に、
由梨の表情は暗い。

「わたしは奈津希ちゃんと違って
 胸、小さいんだから…」

そう嘆きながら、申し訳ばかりの膨らみに
そっと手を置いた。

「プール?別にいいけど。」
「そう。良かったぁ。」

完全に事後連絡だが、一応蓮にもダブルデートの件を聞いておく。
由梨と秀をくっつけたいのだと言うと、蓮も喜んで協力してくれるということだ。

「あ…!」

だが、奈津希には一抹の不安があった。

「あんたねえ…。この間みたいに… ここ!」

ギュッ!!

「勃てたりしないでよね。」

大事なところを奈津希に摘ままれ、
冷や汗を垂らし苦笑い。

「あ、あれは奈津希が僕の腕に胸を押し付けるから…」
「それくらいで興奮しないでよ!
 あたしは良いけど、秀と由梨が見たら気まずいでしょ!!」
「は、はい…。気をつけます…。」

蓮はシュンとして肩をすぼめた。

その日の夜は満月だった…。

翔は顔をニヤつかせながら
ひとり早足で家路を歩いている。
美優との淫らな絡み合いを頭に描きながら、
浮き足立った足取り。
翔はここのところ毎晩こんな調子だ。
美優も愛するダンナの帰りを待ちわびているはずだ。
結婚してからというもの、
ふたりの相思相愛は留まるところを知らない。
裸エプロンをするくらい、
ふたりの新婚生活は激甘なのだ。
暗い路地を向こうから歩いてくる女性。
翔はそんなことは気にも留めず、美優のもとへと急ぐ。

すれ違う肌色―――――

「あれ!?」

ハッとして振り返った場所には、もう…誰もいなかった。

「気のせいかな…。今の女の人…
 ……裸だったような…」

はぁ…と大きな溜め息をつく。

「…まさかね。」

「女の人が、こんなところを裸で歩いてるわけないか。」

トボトボと歩き出す。

「はぁ…最近疲れてるのかなぁ…。
 それとも、エッチしすぎなのかな。」

♪♪〜 ♪♪〜〜

着信音が鳴り響く。
翔は携帯をポケットから取り出し、画面を見た。

「ん… 美優から…?」

ピッ―――

「はい、もしもし?」
「あ、翔っ! 今どこ?」

興奮した感じの美優の声。
僕の帰りがそんなに待ち遠しいのか…
美優ってホント、カワイイなぁ。

「もうすぐ着くよ。
 あと5分くらいかな。」
「あ、ちょうど良かったぁ。
 ちょっとスーパー寄ってきてくれる?
 シチュー作ってるんだけど、牛乳が切れちゃったのよ。
 買って来てっ!ヨロシク!!」

ガチャッ―――――!!

「え…」

呆然と立ち尽くす翔。
シチューより美優が食べたいよぅ…

「今日も暑いなぁ…」

蓮は滝のように流れる額の汗を拭いながら、
もう一度腕時計で時刻を確認する。

「お待たせー!」

向こうから大きく手を振って走ってくるのは奈津希だ。

「ちょっと遅刻しちゃった。」

テヘッという表情は、ゴメンネのサイン。

「それはいいんだけどさ、
 矢吹も長瀬さんもまだ来てないんだけど…。
 どうしたんだろう…?」
「それはそうよ。
 集合時間、30分ずらしてあるもの。」
「え?」

蓮がポカーンとした表情で奈津希を見つめると、
奈津希はクスクスと笑う。

「どうせあんた、
 あたしの水着姿で勃起するんでしょ?」
「そうならないように…、ほら、ちょっと来て。」

奈津希は蓮の手をとって、どこかへ連れてゆく。

「どこ行くの?」
「いいからいいから…」

結局、人目に付かない草むらに連れ込まれた。
ここまで来れば、さすがの蓮でも
奈津希の考えてることはだいたいわかる。
わかるから…
カチャカチャと音をたててベルトが外される。
照り付ける太陽の下に晒されたペニスは、
天に向けて仰け反りかえっていた。

「まったく、どうしようもないわね。
 ん…?」

奈津希の眉間にしわが寄る。

「あんた、オナニーしてきたでしょ!?」
「え…なんで?」

蓮はビクンッとしてたじろいだ。

「ニオイでわかるのよ!」

ふたりとも顔が真っ赤。
蓮がオナニーしている場面を思わず想像してしまう奈津希だった。

「プールで勃起しないようにって…」

別に悪いことをしたわけでもないのに
言い訳をする蓮を見て、奈津希はクスリと笑った。

「ヘヘッ、2回逝っとけばもう安全よね?」
「たぶん…」
「手と口と、どっちがいい?」

大胆な笑顔で見つめてくる奈津希。
奈津希はあの性格だから、フェラチオは大得意だ。
だけど手コキも捨てがたい。
キスしながらとか喋りながらとか、いろいろ出来るから。
でもやっぱり…

「おまんこで…」

バシッ!!

「却下っ!!」

打たれた頬を摩りながら嘆く蓮。

「なんで…」

ちょっと情けない。

「集合時間まであと20分もないのよ。
 由梨はあの性格からして
 きっと集合10分前とかに来るだろうし…。
 あたしはそんな短いエッチじゃ満足できないわ!」

奈津希はニヤリと笑う。

「あんたは早漏だから、問題ないでしょ?」

しょぼーんと気落ちする蓮。
からかわれただけなのはわかってるが、
ちょっとへこんだ。

「で、どっち?」
「じゃあ…口で。」

蓮のトーンダウンした声など気にしない奈津希は、
明るく返事をする。

「オッケー♪2分で逝かせてあげるわよ。」

悪気がないから、よけいに始末が悪い。

「ホント、ビンビンね。」

奈津希は愛おしそうに肉棒を撫で回す。
その愛撫だけで蓮は逝ってしまいそうだった。
だが、それでは本当に早漏。
奈津希の口に包まれるのを、今か今かと待ちわびる。
奈津希はそれをペロペロ舐める。
アイスキャンディーでも舐めるかのように…
上目遣いでチラチラと蓮の様子を窺いながら。

「奈津希…、すごいエッチな顔だよ…?」
「あんたの顔の方がよっぽどスケベよ。」

そんなこと言っても、気持ち良いものは仕方ない。
大好きな彼女にペニスを舐め回されて、
毅然としていられるわけがない。

「咥えて…。」

奈津希はヘヘッと笑みを浮かべ、
彼のペニスを口いっぱいに含んだ。
そして間髪容れずに舌を絡ませる。

濃厚な口淫…

サービス精神旺盛な奈津希は、
上目遣いで蓮を愛でることを忘れない。

「気持ちいい…」

蓮が情けない声でそう呟くと、
奈津希の眼差しは微笑んでいた。

「奈津希…、もう…出るかも…」

早くも蓮は限界のようだ。
蓮の名誉のために言っておくと、
蓮が早漏なのではない。
奈津希のフェラが上手すぎるのだ。

「ぁ…出るっ!」

本日二度目の射精だというのに、
大量の濃いザーメンが奈津希の口の中で
ビュッビュッと勢いよく吐き出された。
奈津希はゴックンと呑み込む。
そして呟く。

「美味しい♪」

奈津希の真意はわからないが、
精液を飲み干すといつも必ずそう言う。

「あ! 奈津希ちゃん、
 そんなところにいたの?」

突然背後から聞こえた声に、心臓が止まりそうになる。

「ゆ、由梨っ!」

奈津希は大慌てで口元を拭い、
蓮の前に立って露出された彼の下半身を見えないようにした。

「どうしたの?」

由梨は笑顔でこちらに近付いてくる。

「あ、あんた早くそれしまいなさいよ!」
「わ、わかった。」

何やら小声でやりとりするふたりを、
由梨は不思議に思った。

「イタッ!!」
「…どうしたの?」
「…挟んだ。」

ホント情けない声…
ズボンのチャックに大事なものを挟んだらしい。

「気をつけなさいよ!
 セックスできなくなったらどうすんのよ!!」

奈津希は小声で怒鳴る。

「奈津希ちゃん?」
「ゆ、由梨… 早かったわね。」

奈津希は冷や汗ダラダラだ。

「ヘヘッ なんか嬉しくって、早く来ちゃった。」
「そ、そう。矢吹と進展するといいわね。」

なんとか由梨にはばれずに
上手く誤魔化すことができたようだ。

「じゃ〜ん♪」

奈津希はタオルを脱ぎ捨て、水着姿を披露する。
奈津希らしい明るい柄だが、
高校生にしては少し大胆すぎるビキニ。

「秀、どう?」
「なんで俺に聞くんだ?」

“彼氏に聞けよ”とでも言いたげな秀。

「蓮は前来たときにもう見てるのよ。
 どう?似合う?」
「…ああ、似合うよ。」

秀は微笑みなのか苦笑いなのか
よくわからない笑顔を浮かべた。

「長瀬は?」

秀はやはり奈津希より由梨の方が気になるようだ。

「ん…もうすぐ来ると思うけど…
 あ、来た来たっ!」
「ゴメン、お待たせ…」

駆け寄ってくる由梨の姿を見て、奈津希は嘆く。

「あんたねえ、プールに来るのに
 スクール水着で来るバカがどこにいんのよ!!
 ねえ秀?」
「俺は好きだけどな。スク水…」
「は?」
「いや、何でもない…」
「きっと長瀬さんを励まそうとしたんだよ。」

蓮はそう言ってフォローしたが、
奈津希は疑いの目。

「でも、スク水もいいかもなぁ…。
 奈津希、今度スク水着てエッチしよ?」

ゲシッ!!

―――すかさず蹴りを入れられた。

「なにやってんだ?
 早く泳ぎに行こうぜ。」
「そうね。
 まずは流れるプールに行きましょ。」

そう言ってスタスタ歩いていってしまう奈津希たち。

「ちょっと、待って…」

蓮は蹴られた股をかばいながら、
泣く泣く3人についてゆく。

「れーんっ!
 なにやってるの? 早く行くわよ!」

この暑い中、長く連なる人々の列。
ウォータースライダーの順番待ちをしているのだ。

「まだぁ?」
「あとちょっとだよ。」

と相変わらずの奈津希と蓮。
それとは対照的に由梨と秀は無口だ。
互いを意識し過ぎて上手く会話ができないようだ。

「次のかた、どうぞー」
「おい、俺たちの番だぞ。」

長いこと待たされていたが、ようやく4人の番が回ってきたらしい。
すると奈津希はスライダーの係員に

「あたしはいいです。」

と言って列から抜ける
普通なら”ここまで来て怖気付いたのか”と思うところだが、
なんといってもあの奈津希だ。
蓮たちは嫌な予感を感じながらも、
係員の指示通りスライダーのスタート地点に座る。

「はい、どうぞー」
「今だっ!!」

係員がGOサインを出した途端、蓮の背中に奈津希が飛び付く!

「こら!!きみ、危ないだろ!!
 ふたりで滑るのは禁止だぞ!!」

後ろから叫んでいる係員を尻目に、
奈津希は蓮に後ろから抱き付く格好で
ふたりはスライダーを猛スピードで滑ってゆく。

「まったく、ムチャクチャだよ奈津希は…」
「フフッ 嬉しいクセに♪」

そう笑って背中に胸を押し付けてくる。
“勃起するな”と言っておきながらこんな事をするなんて
まったく意地悪な小娘だ。

ザッブーン!!

ゴール地点のプールに勢いよく突っ込む。

「ハハッ 楽しかったぁ〜♪」

笑顔炸裂の奈津希。無邪気な顔が良く似合う。

「もう、奈津希!あ…」

蓮の目が点になっている。
奈津希が蓮の視線を辿っていくと自分の胸に辿り着く。

「キャ!水着が!!」

珍しく女の子らしい悲鳴をあげて、
顔を真っ赤にして慌てて手で胸を隠す。

「蓮っ!」

奈津希は蓮に抱きついて、露な胸を彼の背中に隠した。

「な、奈津希…そんなに押し付けないでよ…。」
「は、はやくブラ探してよ!次の人たちが来ちゃうじゃない!」
「お前ら、なに抱き合ってるんだ?」

秀が呆れた顔で聞いてくる。

「み、水着が…」
「ん…これか。ほらっ」

秀は漂っていた奈津希の水着を取って、蓮に手渡す。
蓮はそれを奈津希の胸に付け直してあげた。

「あ、ありがと…」

そう秀にお礼を言うと秀はクールに左手をかざす。
奈津希は蓮の方に振り返って、彼に白い目を向けた。

「蓮と違って、秀は全然慌てたりしないのね。」

蓮は苦笑いした。

「ひょっとして、女に興味ないのかしら…。」

ブツブツ呟きながら奈津希はプールから上がる。

「ん… 蓮、どうしたの?」

蓮はなかなかプールから上がろうとしない。

「あの…その…」
「ふ〜ん…」

奈津希は白々しい顔で蓮を見ると、
秀と由梨にわざとらしく大声で話しかけた。

「秀、由梨、なんか蓮が足攣っちゃったみたいだからさ、
 ふたりで泳いできなよ。」
「え…」

ポッと顔を赤らめる由梨。

「大槻、大丈夫なのか?」
「え、あ…大丈夫だよ、そのうち治るよ。」

秀のクールな問い掛けに蓮は慌てて誤魔化す。

「そうか。
 じゃ、長瀬行こうぜ。」
「は、はいっ!」

由梨は嬉し恥ずかしといった具合だ。
申し訳程度に膨らんだ胸を躍らせ、
秀のもとに駆け寄る。
意外にお似合いの秀と由梨の背中を眺めながら、
奈津希は諦めたように呟く。

「まったく、どうしようもないわね。」
「ごめん…」

蓮は相変わらず情けない。

「ま、それだけあたしのコトが好きってことよね。」
「そ、そうだよ。
 奈津希が可愛いから勃っちゃうんだよ。」

調子の良いことを言う蓮に、奈津希は疑いの目。

「ホントかしら…。
 他の女の裸で勃ったりしないでよ。」
「大丈夫だよ!」

そのとき、急に辺りがざわつきだした。
ヒソヒソと話す声が幾重にも重なって、騒然としている。

「なになに?」

奈津希は状況がつかめず、辺りを見渡した。

「あ、ラギャルだわ…。蓮、目瞑って。」
「え!あ、はい…」

蓮は慌てて言われたとおり目を瞑る。
つくづく信頼されてないなぁと感じた蓮だった。

AdamandEveatethefruitoftheforbiddentree,
theyknewthattheywerenaked,
andtheysewedfigleavestogether
andmadethemselvesaprons.
It’stheoriginalsin.
Sheatonesfortheoriginalsin.
ShestripsherfigleavesthatAdamandEvesewed.
And…She’llbewithGod.

その後、奈津希は勃起の治まった蓮とともに
頃合を見計らって秀たちと合流し、
泳いだり、またウォータースライダーを滑ったりして、
心行くまでプールを楽しんだ。
由梨も少しは秀と仲を深めることができたようで、
奈津希はホッとしていた。

暮れなずむ空…
肩を寄せ合うふたり…
何を話しているのだろう…。
由梨は夕焼け色に頬を染め、
秀は夕日のように温かく微笑みかける。

「お待た…」「ちょっと奈津希!」

ふたりのもとに駆け寄ろうとする奈津希を、
蓮が肩をつかみ制止した。

「な、なによ!?」
「ちょっと待って。見てよ。」

奈津希は寄り添うふたりを見てハッとした。
それから微笑み、
アルバムを見るような目でぼんやりと眺める。
夕焼けと、重なるふたりの影…

「なんか良い感じじゃない?
 あのふたり…」
「そうね。ん…?」

どこからか聞こえてくる美しい歌声…

「この曲… 実華のSTARTだわ…。」

  やっぱりキミの目は
  見つめられないよと
  瞳に背を向ける
  恋に怯える自分がイヤよ

  愛するキミの目に
  吸い込まれてしまいたい
  裸になれば 今とは違う
  ボクの想い 伝わるはず

  WonderingStart
  暮れなずむ空に
  潤んだボクの瞳は
  キミのね澄んだ瞳と
  ただ見つめ合えた瞬間(とき) 煌くよ

  Iwannastart
  これからのstory
  重なるふたりの影よ
  始まり告げる言ノ葉
  愛しい人と
  共に奏でるIknowmelody

トントントントン…
包丁の音が刻む一定のリズム、心地良い。
翔は裸エプロンで料理をする美優を後ろから抱き締めて、
美優の両脇から腕を前に通し
彼女の豊満な胸に手を当てている。
別に揉むわけでもなく、単に和んでいるのだ。

「翔?」
「なに?」

翔の吐息が美優の耳にかかる。
美優は包丁をかざして呟いた。

「危ないわよ。」

包丁と美優の目がギラリと光る。

「ひぃっ…!」
「まったく…
 少しはじっとしてテレビでも見ててよ。」
「はい…」

翔はシュンと肩を落としてキッチンから離れていった。

「はぁー…」

溜め息をついてソファーに座ると、
何の気なしにリモコンを手にしテレビをつけた。
ニュースをやっている。
夕食ができるまでの時間つぶし、
そんなつもりで翔はぼんやりと眺めていた。

「日本列島は9月下旬としては異例の猛暑で、
 東京でも連日35度を超える真夏日が続いています。
 政府では対策委員会を設置し、原因の究明とともに、
 熱中症などに注意を呼びかけています。」

美人ニュースキャスターが原稿を読んでいるが、
翔は”やっぱ美優の方が美人だなぁ”と惚気ていた。

「この異常気象について、
 気象予報士の石原さんにお伺いしていきます。
 石原さん、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「こちらのグラフをご覧ください。
 8月中旬辺りまでは平年並みかやや高い程度で推移していましたが、
 8月下旬からは最高気温が
 右肩上がりに上昇し続けているのがわかります。」

グラフには今年の気温が赤色、平年の気温が青色で示されていて、
確かに赤色の線は上昇の一途を辿っていた。

「このグラフを見ていますと、
 このままいくと10月中旬には40度を超える日が
 出るのではないかと思ってしまうんですけれども…
 石原さん、どうですか?」
「そうですねぇ…。
 近年は地球温暖化が騒がれていることもあって
 心配になってしまう人もいるかもわかりませんが、
 まぁこのままのペースで気温が上昇し続けるなんてことは
 常識的に考えてありえないでしょう。
 ただ既に作物などにも影響が出ていますし
 熱中症による死者も出ていますので、
 政府には早急に何らかの対策をお願いしたいですね。」
「ではこの異常気象の原因は何だとお考えですか?」
「そうですねぇ…。
 地球規模で大きな気候変動が起ころうとしているとか
 そういった学説を唱える学者もいますし、
 どっかのカルト教団は天変地異の前触れだとか
 最後の審判の日が迫っているとか、そんなことを言っていますが、
 まぁ私としましてはただ単に
 太平洋高気圧が未だ勢力を保っていることが原因だと思いますがね。」

気象予報士は少し曖昧な解説で誤魔化した。
一気象予報士が簡単に原因を推測できるくらいなら、
原因究明のためにわざわざ政府が動くまでもない。

「なるほど…。では今後もこの異常気象は続くと思われますか?」
「そうですねぇ…。
 ま、暫くは続くんじゃないですかね。」

投げやりな返事。正直な話、わからないのだ。

「そうですか…。
 石原さん、ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
「その異常気象のせいなんですかねぇ、これは。
 続いてのコーナー、特集”ラギャル”です。」
「ラギャル…?」

今までぼんやりと見ていた翔も、その言葉には少し反応した。
テーブルの上に置いてあった麦茶の入ったグラスを手に取り、
麦茶を一口ゆっくりと口に含む。

何度か耳にしたが、未だ何のことかわからない言葉…
――――ラギャル

Theyatonefortheoriginalsin.
TheystriptheirfigleavesthatAdamandEvesewed.
And…They’llbewithGod.

「今、深刻な社会現象となりつつあるラギャル。
 街中を白昼堂々全裸で徘徊する少女たち。
 なぜ彼女達は人前で裸を晒すのか、徹底検証です。」
「ブッ――!!」

思わず麦茶を吹き出してしまう。

「…は!?」

戸惑う翔をよそに、テレビ画面にはVTRが映し出される。
一般の女子高生たちにインタビューをしているようだ。

「ラギャルって知ってますか?」
「当然っ!みんなちょー綺麗だよねー。」
「ラギャルになってみたい?」
「ムリムリ!わたしブサイクだしぃ。」
「もっと美人だったらラギャルになりたかったのに。」

「実際にラギャルの人にインタビューしてみます。」

衝撃の映像だった。
まるでアダルトビデオだ…。

胸と股間と顔にモザイクがかけられている。
でも… どう見ても全裸の少女たち。

「いつからラギャルを?」
「わたしはまだ1ヶ月目の新人です♪」
「わたしは半年くらいかな。」
「わたしは3年目。まだラギャルって言葉がない頃からですね。」

隠したり、恥ずかしがる様子もない。
彼女たちにとっては普通のことなのだ。
服を着る、ということの方が苦痛なのかもしれない。

「最初に始めたのはあなたなんですか?」
「違いますよー。」
「始めたのは××だよね。××には敵わないわよ。」

ピーという自主規制音で名前は伏せられていた。

「ねー。
 ××は裸で歩いてるだけで感じまくりで逝きっぱなしの
 超ヘンタイなんだけど、
 それがまたすっごい綺麗でカッコイイのよね。」
「ヘンタイだなんて××に失礼だよ!」

伏せられた名…
その名の示す者が、彼女たちにとってのカリスマであり、

――――神なのだろう。

「なぜ人前で裸を晒すのかは人によってまちまちのようですが、
 主な要因としましては、開放感を得るためだったり、
 性的欲求を満たすためだったりする場合が多いようです。
 ですが最近は、友達がやっているからとか、
 他のラギャルの姿を見て憧れてとか、
 そういった一種の流行に流されるような形で
 ラギャルになってゆく少女も多いようで、
 今後加速度的に増えていくだろうとの見解もあり懸念されています。」
「変な世の中になりましたね。」
「全くです。
 CMの後は最新ニュースです。」

ガシャンッ!!

翔の手から零れ落ちたグラスが割れた音を聞きつけ、
美優が駆け寄ってくる。

「翔? どうしたの?」

茫然自失の翔に、美優の声は届かない。

「ねえ、翔ってば!!」

ピーという自主規制音で名前は伏せられていたが…
でも、翔にはわかる…。
間違いない…

―――――――彼女だ。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

 ****************************************************

   第四章 異常気象 −TheBeginningandtheEnd−

 ****************************************************

「悠くん…」

まだあどけなさの残る幼い翔は、
寂しそうな顔をして友人の名を呟いた。
ここは神社だろうか…
石段の上から翔を呼ぶ声がする。
ミンミンと鳴くセミの声がうるさい。
翔は石段を、一段一段ゆっくりと登ってゆく…。
彼はニッコリ笑って、翔を手招きしている。
この暑いのに、彼の笑顔は何処か涼しげ…
そのアルカイックな笑みに、吸い込まれてしまいそう…。
何処となく中性的で、整った顔立ちの少年…
その隣に、俯いている少女…

『悠くん…』
「悠くん…」

幼い翔は、オドオドしながらその名を呼ぶ。
彼は優しく微笑んだ。
そして、隣の少女にも微笑みかけ、…こう告げた。

「とりあえず…
 服脱いで、裸になってくれるかな?」

コクリと頷き、何の躊躇いもなく服を脱いでゆく美少女…
着ていた衣服がスルスルと地面に落ちてゆく。
微かに膨らんだ乳房の真ん中で、
乳首が赤く勃起していた。
恥毛も生えていない秘部の割れ目からは、
得体の知れない汁が伝っている。

『君は…』

ずっと俯いていた少女が、
急にワッと顔を上げる。

――――――――紅い瞳!!

「うわぁーーー!!」
「翔!?どうしたの!?」

隣で寝ていた裸の美優が、慌てて飛び起きる。

「はぁ…はぁ…
 ふぅ… 夢か…」

翔はぐったりと項垂れた。
幸せな日々が続いていただけに、
悪夢にうなされることなど久しぶりのことだ。

「すっごい汗… 大丈夫?」

美優は心配そうに翔を見つめている。

「朝比奈悠(アサヒナユウ)?
 そんなコいたかしら…?」

美優は翔のためにトーストにマーガリンを塗っている。
翔はコーヒーを一口飲む。

「小学6年のとき、
 美優も同じクラスだったでしょ?」
「うーん…」

美優は難しい顔をしながら、
トーストを翔の前に置かれた皿に移した。

「すごい仲良かったんだけど、
 夏休みに転校しちゃったんだよ。
 …覚えてない…かぁ…」

翔はトーストをかじると、またコーヒーを一口飲んだ。

「う〜ん…
 別にあたしと仲良かったわけじゃないでしょ?
 …ゴメン、思い出せないわ。」
「…そう。」

あの少年は美優の想い出の中にはいないらしい。

朝比奈悠―――

翔の数少ない友人のひとりだった少年。
でも、どうして今さら彼の夢なんて見たのだろう…
頭の隅っこへと追いやられていた遠い日の記憶…
それが、なぜ…?

「どうしたの?」
「…久しぶりに、
 ”明日葉神社”にでも行ってみようかなぁ…」

翔はうわ言のように呟いた。
いつの間にかトーストが冷めてしまっている…。
小学生の頃はよく神社の近くの森で遊んでいたのに、
中学生になった頃からか…急に足が途絶えていた。
神社の近所に住んでいた友人が引っ越して、
行く機会がなくなったのだろう。

「明日葉神社?
 ああ、あそこ取り壊されて
 なんか新しい施設ができるみたいよ?」
「え…」
「へー… そうなんだ…。」

翔は複雑な気持ちを表に出さないように
平然を装っていたが、
美優はいつもと違う翔に疑念を抱いていた。

「翔、どうしたの?
 何だか少し変よ?」
「ん… 何でもないよ。
 今日も出来るだけ早く帰るからね。」

そう言って唇を重ねる。
家を出る前に必ずするディープキス。

「じゃ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい♪」

10月に入っても異常気象は続いていた。
“夏より暑い秋”と皮肉られ、
ついに先日東京で観測史上最高となる41.5度を記録した。
連日40度近くまで気温が上がり、
例年よりも20度も高い気温に人々は滅入っていた。
翔の勤めるS高校でも当然冬服への移行は見送られ、
それどころか、”制服の自由化”と称して
制服を着崩すのも、Tシャツなどのラフな格好も認められた。
これは学校側が生徒会やPTAに押し切られる形で実施されたもので、
日本中の多くの学校で同様の事態が起きていた。
男子生徒は肌の上に直接制服の半袖シャツを着たり、
あるいはTシャツやタンクトップを着たりする者が多かった。
しかし、問題は女子生徒である。
今まできちんとした校則通りの制服の着用が
義務付けられていただけに、
その反動からかかなり過激なファッションで
学校に登校してくる生徒も一部にはいた。
そのひとりが、如月小夜子である。

制服の自由化――

スカートの丈が異様に短かったり、
薄いシャツからブラジャーが透けていたり、
その程度なら可愛いものだ。

「如月… またそんな格好して…
 昨日注意したばかりでしょ!」

そう嘆く翔を尻目に、
小夜子はいつも涼しげな顔でこう言う。

「別にいいじゃないですか。
 何を着てきたってわたしの自由です。」

小夜子の格好を見て、クラスメイトたちは
口々に「カッコイイ!」「素敵…」「憧れるわ…」などと言う。
小夜子は標準の制服を単に着崩しているだけだ。
しかし、ブラウスの下に何も身に付けていないため、
軽く勃起した乳首がうっすらと見えていた。
大きく開けた胸元に、十字架のネックレスが煌いている。
超ミニのスカートが風に捲られると、
陰毛も尻の穴も丸見えだ。
これがいわゆる、仁元実華のファッション。
こういう格好の女子生徒が校内にちらほら見えた。
奈津希も似たようなものだが、
蓮に止められたのか、ここまで過激な服装はしない。

夕日が沈み、辺りが暗くなり始めた頃…
由梨は塾への道を歩いていた。

「はぁ…」

―――話は数日前に遡る。

「おばあちゃん…
 お願いがあるんだけど…」

由梨は神妙な面持ちで祖母に話しかける。
いろいろ事情があって、
由梨は今祖母と二人で暮らしているのだ。

「なんだい?そんな改まって…
 何か欲しいものでもあるのかい?
 ほら、お金をやるから買っておいで。」

穏やかな感じの祖母…。
夫に先立たれ寂しい生活を送っていたところに
由梨が転がり込んできた形であるので、
由梨の不幸な生い立ちも相まってか、
祖母は由梨のことを溺愛している。
生前夫が残してくれた財産も十二分に残っているので、
由梨には何ひとつ不自由無い生活を送らせてやりたいと
祖母は思っているのだ。

「そうじゃないの…
 実は…」

「ほう…塾かい。
 由梨は偉いねぇ。
 誕生日にだって”あれが欲しい、これが欲しい”
 なんて言わないお前が、
 何のおねだりかと思えば…塾だなんて…」

由梨のお願いは、”塾に通わせて欲しい”というものだった。
由梨は祖母が何でも好くしてくれるのに
それに甘えたりはしない。
こういったお願い事は珍しかった。

「…通ってもいい?」
「もちろんじゃよ。」

にっこりと微笑んでくれた祖母。
由梨の顔にも思わず笑顔が咲いた。

――――しかし、

数日後には由梨は呆然としていた。

「え…
 矢吹くん、あの塾辞めるの?」
「そうらしいわよ?」

奈津希から告げられた事実に、愕然とする由梨。

「由梨、どうするの?
 やっぱ通うの止める?」
「え…」

奈津希も秀と同じ塾に通っていた。
由梨はその事もあってか、その塾に通うことを決めた。
自発的に祖母にお願いした手前、今さら止めることはできない…。

「ちょっと奈津希ちゃん!
 わたしは別に…
 そんなつもりで塾に通おうと思ったんじゃないの!」

かくして、奈津希と同じ塾に通うことになった由梨。
本当ならその塾に、秀もいたはずだったのに…
由梨はともかく、奈津希が塾に通っているのは
意外に思われるかもしれない。
奈津希の家は貧しく本来なら塾に通わせるような
お金はないのだが、妹思いの長兄が

「お前は頭が良いからな。
 良い大学出て、良い会社に就職して、幸せな人生を送るんだ。」

と、身を粉にして働いて得た給料を叩いて
奈津希を塾に通わせてくれたのだ。
もっとも奈津希にとっては完全に”ありがた迷惑”で、
最初のうちは兄の心遣いに感謝し通っていたのだが、
最近ではサボって蓮といちゃつく事が多くなった。
今日も奈津希はサボるらしい。
だから由梨は、奈津希も秀もいない塾へと
ひとり寂しく歩いているのである。
とぼとぼと歩いていると、
いつの間にか辺りはすっかり暗くなっていた。

「亜樹ちゃん…止そうよぉ…」
「そうだよ。他人の家だよ?」

子供の話し声が聞こえ、ふと見てみると、
小学校高学年くらいの女の子1人と男の子2人が
廃墟の前で何やら言い合っている。
そう、ここは有名な心霊スポット”佐田屋敷”である。
屋敷というだけあって、元はそれなりの豪邸だったようだ。
しかし廃墟となった今では、見る影もない…。

「亜樹ちゃん…止そうよぉ…」
「そうだよ。他人の家だよ?」

少年二人――直哉と信太は、少し怯えて佐田屋敷に入るのを嫌がっていた。

しかし亜樹は…

「誰も住んでないって!
 お前ら、それでも男なのかぁ!?」

亜樹は”卯月直哉改造計画”の一環として、
直哉の度胸を鍛えようと
直哉たちをこの佐田屋敷へと連れてきたのだ。

「ほら、行くぞ!」

さすが亜樹。勇敢で男らしい!

「待ってよ、亜樹ちゃん!」
「ちょっと… え…ふたりとも行っちゃうの?
 ウチを置いてかないでぇ!」

後ろの男子ふたりは慌てて亜樹に続いて
佐田屋敷の敷地内に入っていく。
由梨はその様子をポカーンとして見ていた。

「ながせーっ!!」

自分の名を叫ぶ声に、由梨はビクンッとする。
恐る恐る後ろを振り返る…

「や、矢吹くん…」

声の主は秀だった。
秀はとても慌てた様子で、由梨のもとへと駆け寄ってきた。

「はぁ…はぁ… 長瀬…
 小学生の3人組見なかったか?
 男2人と女1人の。
 俺の妹とその友達なんだけど…」

秀は肩で息をしながら由梨に尋ねる。
余程大切な妹なのだろう。
いつもの秀とは一変して、必死さが伝わってくる。

「矢吹くん…。その子たちなら、今、その家に入っていったよ?」

由梨は最近になってようやく秀とまともに話せるようになった。
まだ顔は少し赤くなってしまうが、
以前と違ってタメ口で話すようにしている。

「やっぱり…くそっ」
「あ、矢吹くん待って!」

いきなり屋敷へと駆け出す秀に驚いた由梨は
特に何も考えずその場の勢いで秀についていってしまった。
敷地内の庭はけっこうな広さがあった。
無造作に生い茂った雑草が
この家が放置されて久しいことを物語っている。

矢吹が荒れ果てた花壇の前で何かを見つめている。
由梨は彼の後ろから覗き込むようにそれを見た。

「菊の花…?」

花壇には菊の花が咲いていた。
秋に咲く花ではあるが、この異常気象のなか…
しかも世話をする人もいないはずなのに…
こんな荒れ果てた場所で、何故…

「長瀬…ついてきたのか…。」
「う、うん…」

秀は由梨の肩に手を置いた。

「俺は家の中に入るぞ。
 長瀬は帰ったほうがいいんじゃないか?」
「うん…、でも心配だから…矢吹くんの妹…」

亜樹のことが気になるというのもあったが、
それ以上に、今さら後に引けない気がした。

「…そうか。ついてくるなら、俺から離れるなよ。」

秀は佐田屋敷の玄関のドアノブに手をかける。

ギイィィィ――

悲鳴のように軋む音が響き渡る…。
ふたりの姿は屋敷の暗闇へと消えていった。

「長瀬、足元気を付けて。」
「うん…」

一歩足を踏み入れると、ジャリッという音がした。
床には硝子の破片が飛び散っている。

「あーきー!!」
「あーきー!
 いないのかー!!」

秀の声が虚しく響き渡るも、
返事が返ってくることはない。

「くそっ! 亜樹のやつ…
 どこへ行ったんだ…?」

佐田屋敷の中は思った以上に荒れ果てていた。
まるで怪獣が暴れまわった跡のようだ。

「矢吹くん、このドア開かないよ。」

由梨は近くの扉に手を掛けたのだが、
うんともすんとも言わない。

「ん… こっちもだ。
 立て付けが悪いのか…」

体当たりでもすれば開きそうだが、
その奥に亜樹たちがいるわけがない。
亜樹たちは別の道を行ったはずだ。

「となると…二階か…」

ふたりは階段を見上げる。

「行くぞ。」
「うん…」

階段を一歩一歩上ってゆく。

「暗いから足元に気を付けて。」

足元がよく見えない。
誤って踏み外したら大変なことになりかねない。

「ふぅ…」

無事二階に辿り着いて由梨は一息つく。
秀は微かな明かりを頼りに辺りを見回した。

「部屋がたくさんあるな…
 あーきー! 聞こえたら返事しろー!」

辺りは不気味なほどに静寂に包まれていた。
すると突然! 物陰から何かが飛び出してきた!!

「きゃあ!!」

よっぽど怖かったのか、
由梨は思わず秀に抱き付いてしまう。

「にゃ〜」

由梨を嘲笑うかのように黒猫が鳴く。
自由気ままな黒猫はビクビクする由梨を尻目に
奥の闇へと紛れて消えていった。

「ゴ、ゴメンなさい…」

由梨はパッと身を引き、顔を真っ赤にして謝る。
死ぬほど恥ずかしかった。

「大丈夫か?」
「う、うん…」

秀が微動だにせずクールに徹するから、
由梨はよけいに気まずい思いがした。

「亜樹ちゃん、怖いよぉ…」

直哉は不安そうに亜樹に身を寄せる。
その後ろを信太がついてゆく。

「亜樹ちゃん、そろそろ戻ったほうが…」

不安がる信太たち。亜樹はニヤリと笑う。

「まだ来たばっかじゃないか。
 もっと探検してみよーぜ!」

すると突然! 物陰から何かが飛び出してきた!!

「きゃあ!!」

よっぽど怖かったのか、直哉は思わず亜樹に抱き付いてしまう。

「にゃ〜」

直哉を嘲笑うかのように黒猫が鳴く。
自由気ままな黒猫は亜樹にしがみつく直哉を尻目に
半開きのドアから廊下の方へ出ていった。

「いつまでくっついてんだよ!
 離れろよ、気持ち悪い!!」
「ゴ、ゴメンなさい…」

直哉はパッと身を引き、泣きそうな顔で謝る。
死ぬほど怖かった。佐田屋敷も亜樹も。

「お前、それでも男かぁ!?」
「ゴメンなさい…」

そんなふたりのやりとりを、
信太は不満そうな顔で見つめていた。

「ん… 何か聞こえないか?」
「や、やめてよ亜樹ちゃん!
 脅かさないで…」

直哉の泣きそうな声。まるで女の子のようだ。

「脅しじゃねえよ。聞こえないか?」

そう言って耳を澄ましてみる。
亜樹は背中に冷や汗が伝うのを感じた。

「ホントだ…」

信太の耳にも確かに聞こえる。
―――女の人のすり泣く声が。

「こっちのドアだ。」

ドアの向こうから泣き声が聞こえる…。
誰かいるのは間違いない。
亜樹はドアノブに手をかけた。

「亜樹ちゃん!
 開けないでぇ…」

直哉は目にいっぱい涙を溜めて、亜樹に懇願する。

「開けるぞ!」

―――ガチャッ!!

薄暗い部屋の中に…
女の人がいた。
顔を埋めて泣いていた。

裸の女の人が…。

亜樹はゴクリと息を呑む。
信太の心臓がバクバク言っている…、直哉は泡を吹いていた。

裸の女は声をあげて泣いていた。
しかし、こちらに気付くと…
顔を上げ、目を見開いてギロリと睨みつける!

「で、出たぁああー!!」

3人は一斉に叫び、我先にと逃げ出した。

「キャ―――!!」

亜樹も女の子らしい甲高い奇声をあげ、
必死に走った。

「うわー!!」

信太も叫びながら亜樹の後を追う。

「ふたりとも待ってぇ!!」

わんわん泣きながら直哉も必死に走る。

「亜樹!!」

突然、亜樹の肩を何者かが掴んだ!
心臓が止まる思いがした。
恐る恐る後ろを振り向くと、
微かな明かりに照らされてぼんやりと見えるその顔は…

「秀にぃ!!」

亜樹の肩を掴んだのは、
彼女たちを助けに来た彼女の兄だった。

「秀にぃ…秀にぃ…」

半泣きで兄にしがみつく亜樹を見て、
信太と直哉はホッと胸を撫で下ろした。

「ハッ!!」

亜樹は急に顔を真っ赤にして、
気まずそうに秀から離れる。

「秀にぃ… その人は?」

亜樹は秀の後ろにいる見知らぬ女に
冷たく鋭い視線を送る。

「同じクラスの長瀬だ。
 長瀬がお前らがここに入っていくのを見たって…」
「そうか。で、でもオレは助けてくれなんて言った覚えは…」

平静さを装う亜樹は、変に強がる。
でも、秀はクールだ。

「それより何があったんだ?」
「そ、そうだ!裸の幽霊が…」
「裸の幽霊…?」

秀が聞き返すと、信太と直哉も大きく頷いた。
本当に幽霊が…?
由梨の脳裏になんとも言えない不安が過ぎる。

「なんだ?最近は幽霊まで裸になりたがるのか?」
「秀にぃ…」

イジワルなことを言う兄に、妹は”信じてよぅ!”と目を見据える。

「大丈夫だ。ここには不良が屯してるって噂もある。
 その女もラギャルか何かだろ。」
「そ、そうか?」

兄のもっともな言葉に、亜樹は戸惑った。
そう言えば、あの幽霊には足があった気がする。

「とりあえずここから出よう。」

秀は妹の肩にそっと手を乗せた。
5人が佐田屋敷から出てくる。

「はぁー 怖かったぁ…」

信太は大きな溜め息をついた。
まったく、亜樹ちゃんのせいで酷い目に遭ったと。
直哉はまだ落ち着けていないが、
なんとか大丈夫のようだ。

「みんないるよね?」

由梨が見回すと、5人全員いるのが確認できた。
無事全員戻って来れてホッと一安心だ。

「秀にぃ…」

亜樹は普段とは似つかない声で兄に呼びかける。

「なんだ?」
「その…怒ってるのか?」

亜樹は上目遣いで兄を見つめる。
秀はそんな彼女を優しく抱き寄せた。

「別に怒ってないさ。
 でも心配したぞ。」
「ごめん…」

シュンとして俯く亜樹。
こうしているとまるで女の子のようだ。
――実際、女の子なのだが。

「もうこんなところに来るなよ。
 危ないからな。」
「うん…。」
「さ、帰るぞ。」

そう言って手を差し出す秀。
兄妹は手を繋いで微笑みあった。

「あ、長瀬もありがとうな。」
「え…う、うん。」

ふたりの睦まじい様子をぼんやりと眺めていた由梨は、
突然声をかけられて少し慌てた。
彼女は”家族”というものにあまり良い想い出がなかったから、
秀と亜樹の姿は小説のように儚く映る。

「お前ら、亜樹がワガママ言って悪かったな。」

亜樹の代わりに秀が信太と直哉に謝る。
亜樹は「こいつらに謝ることなんてない!」と言おうとしたが、
グッと堪えて言葉を呑んだ。

「こんなに遅くなって…親が心配してるだろ。
 家まで送るよ。」

直哉はなぜか顔を赤らめて目を逸らし、
信太はなぜかムスッとした顔をした。

「大丈夫です。自分で帰れますから。」
「そうか…。
 じゃあ、気をつけて帰れよ。」

秀と亜樹は手を繋いで帰っていった。
由梨ももう遅刻は免れないが、塾へと向かう。
信太と直哉はとぼとぼと夜の暗闇の中を歩いていた。

「亜樹ちゃんのお兄ちゃん…
 すごいかっこよかったなぁ…。」

直哉がポツリと零した一言。
秀を慕った一言に信太は食いついた。

「そう?僕は別にそうは思わないけど!」

すごい剣幕の信太を、直哉は不思議に思う。

「信太くん、なんか機嫌悪くない?」
「別にっ!!」

信太はあまり秀をよく思っていないようだ。
学校で亜樹が秀の話をするときも、彼はあまり良い顔をしない。

―――嫉妬しているのだ。

信太は、亜樹が好きだから。

「失礼します。」

職員室のドアが開かれ、生徒が入ってくる。
翔の机に来たので誰かと思って顔を見たら、
由梨だった。

「ん…長瀬、どうしたの?」
「当番日誌を…」

由梨は手に日誌を持っている。
そう言えば今日の日直は由梨だった。

「あ、はいはい。ご苦労様。」

翔は当番日誌を受け取る。

「ん…?」

ふと由梨を見ると、彼女はボケーッとして
その姿はどこか愁いを帯びていた。

「先生って、翔って名前なんですよね…」

由梨の口からポツリと出た一言。
“翔”という別に何の変哲もない、ありふれた名前…
“自由に大空を翔る鳥のように”と両親が付けてくれた名前…

「わたしの初めての人と、同じ名前…」
「…は!?」

由梨がうわ言のように言った一言は、
翔の耳にもしっかりと届いていた。
翔は呆気にとられた顔をしていた。

「あわわっ…な、なんでもないです!!
 失礼しましたっ!!」

ハッとして正気を取り戻した由梨は、
顔を真っ赤にして慌てて職員室から逃げていく。

「まったく…最近の女子高生は…」

自分も高校時代からやりまくりだったのに、
そんなことは忘れている。
まぁ由梨も普通の女の子なんだ。
翔はそう思って、別に気に留めていなかった。

由梨にとってその名が…
大空を翔ることを許さず、鳥籠の中に彼女を閉じ込める、
呪いの南京錠であることを―――

翔は気付いてあげられなかった。

少しずつ狂い出した運命の歯車…
ルールとか常識とかすべて脱ぎ捨てたいと欲する少女たち…
すべて異常気象のせいだと、先回りして諦めていた大人たち…
きっかけは結果を導き、結果はまたきっかけとなる。
世界はすべて、連鎖で成り立っているのだから。
そして、ついに悲劇のドミノが始まる。
今まで当たり前だった日常が、音を立てて崩れ去ってゆく…。
誰のせいでもない…
誰もが止めることができて、
誰も止めることのできない大きな流れ…
誰のせいでもない…
誰しもが牌のひとつでしかないのだから。
これはそんな巨大なドミノの、ほんの一部に過ぎない。

夕方――

下校時刻、小学生たちが舗道を歩いてゆく。
亜樹と信太と直哉は、今日も三人で帰る。

「亜樹ちゃんのお兄ちゃん、
 ホントかっこいいよねぇ。
 ウチ、憧れちゃうなぁ…」

夢見る少女のように瞳をキラキラさせる直哉。

「ヘッヘッヘッ…、そうだろ?」

亜樹は変な笑みを浮かべ、惚気る。
秀は亜樹にとって自慢の兄らしい。
和気藹々と話すふたりの横で
信太は相変わらず不貞腐れていた。

「じゃあな。」
「バイバーイ♪」

亜樹は信太や直哉とは家が違う方向なので、
途中でふたりと別れる。
ここからは信太と直哉のふたりきりだ。
異様な沈黙が続く。
信太は何か考え事でもしているのか、
難しい顔をして歩いている。
直哉はそんな信太の横顔をチラチラと見ては
溜め息をついた。

「どうしたの、信太くん。
 最近なんか…」
「直哉はさ、亜樹ちゃんのこと…
 どう思ってるの?」

直哉の言葉を遮るように、信太は言った。

「え…」
「どう思ってるって…」
「好きなの?」

まじまじと見つめてくる信太に、
直哉は思わず顔を赤らめた。

「え… それってどういう意味…?」
「僕さ、亜樹ちゃんが好きなんだ。
 もし直哉もそうだったら…」

少し俯き加減で信太は話す。
直哉もようやく信太の言いたいことが理解できた。

「ウチはそんな…好きとかそんな気持ちはないよ。
 普通の友達だよっ!」
「そ、そうなの?」

パッと明るい顔になった信太。

「うん。」

直哉も笑顔で頷いた。

「そっか…」

爽やかな顔で青空を見上げる。

「…僕さ、明日告るよ。」
「ホント!?頑張ってね。ウチ、応援してるよっ!」

直哉のエールに、信太は決意を秘めた表情で大きく頷いた。

「何だ、話って。」

翌日の帰り道のことである。
“亜樹ちゃんと話がある”と言って直哉を先に帰らせ、
信太と亜樹は近くの公園に寄った。

「どうした?」
「亜樹ちゃん…あの…その…」

至近距離でまじまじと見つめてくる亜樹に、
信太は思わず顔を赤らめ尻込みする。

「何だ?」

「僕、亜樹ちゃんのことが…、す… す…」

亜樹はポカーンとした顔だったが、
信太は恥ずかしさからか目を瞑っていたので
彼女の表情をうかがい知ることはなかった。

「す、好きなんだ!」

ついに言ってしまった…。
信太は心臓をバクバク言わせながら返事を待つ。

「ふーん…」
「…で?」
「亜樹ちゃんは僕のこと…」
――――僕のこと、好き?
「オレはガキには興味ないの。
 …年上の彼氏いるし。」

亜樹はサラリとそう言って、
ニヤけた笑みを浮かべた。
そこにいたのは、もう信太の知っている亜樹じゃなかった。

「え…」

信太は信じられない様子だった。
顔面蒼白で今にも泣き出しそうなほど。
小学生の恋愛なんて所詮こんなものなのかもしれないが、
それでも信太の淡い恋心は粉々に崩れ去っていた。
――――そして、逃げた。

「お、おいっ!信太!!」

亜樹はびっくりして目を丸くする。

「信太…」

何も言わずに走り去っていく信太の背中を見て、
さすがの亜樹も少し罪悪感を覚えていた。

「うわ… 今日も暑いなぁ…」

珍しくひとりで家へと帰る蓮。
今日は授業も早く終わって、奈津希とエッチするチャンスなのに…

「奈津希は塾か…、早く帰って宿題でもしようかな…。」

奈津希と一緒でなくても、考えているのはいつも彼女のことばかり。
奈津希と付き合いはじめて、もうすぐ一年。
記念に買ってくれとせがまれていた指輪は、もう用意してある。
安物だけど、バイト禁止のS高生にとっては痛い出費だった。
でも、奈津希を思えば何の其のである。

「ん…」

ふと目に留まった少年、小学生だろうか…。
腕で必死に目を擦りながら狂ったように走っている。
おいおい、前見ないで走ったら危ないよ…
そして、疾走する少年が交差点に飛び出した瞬間、
大型トラックが少年へと襲い掛かる!!
このままじゃ、あの子はトラックにひかれちゃう!!

「危ない!!」

蓮は思わず道路へ飛び出した!!

キイィィー!!

「ふぁあ〜…
 まったく何で塾ってこんなに退屈なのよ。」

奈津希は「やっと終わったぁ」と伸びをする。
長時間塾にカンヅメにされ、
ようやく終わったと思えばもう夜遅くだ。

「奈津希ちゃん、帰ろ?」
「うん。 あ…」

由梨の鞄に目が留まる。

「由梨、そのキーホルダー可愛いね。」

鞄につけたキーホルダー。
可愛いペンギンのキーホルダーだ。

「ヘヘッ、矢吹くんから貰ったの。」

由梨は幸せそうに笑った。
佐田屋敷の一件のお礼に秀がくれたのだ。

「良い感じね」「そろそろ告られるかもよ?」なんて話しながら、

奈津希と由梨が塾から出てくる。
辺りはすっかり暗くなっていた。

「あ…、携帯、マナーモードのままだ…」

奈津希はポケットから携帯電話を取り出し、
電話やメールが来てないかチェックする。

「あ… 着信アリ…」

蓮からだ…どうしたのかな?
こんなに何回も…

「どうしたの?」
「ん… ちょっと待ってて。
 蓮に電話するから…」

蓮は奈津希が塾だということを知っているはずだから、
こんなに何度も電話してくるなんて、何か大事な用があるに違いない。

――――嫌な予感が胸を過ぎる。

奈津希はその場で蓮に電話をかけた。

「もしもし蓮? どうしたの?
 え…、あ、はい… はい… はい…」

最初勢いよく話しかけたのに、急に弱々しい声になった奈津希。

「え!?」

急に大声を出すから、隣にいた由梨はびっくりした。
奈津希の顔から察するに、何やら徒ならぬ事態のようだ。

「はい…、わかりました… すぐ行きます…」

奈津希は電話を終え、携帯をポケットに仕舞う。

「どうかした?」

と顔を覗き込む由梨の目をわざと逸らして、奈津希は平淡な口調で言った。

「ううん、何でもないわ。
 ちょっと用事が出来たから、今日はひとりで帰って。」

そういい終わるや否や、奈津希は通りかかったタクシーを止め、
それに飛び乗ってどこかへ行ってしまった。

「奈津希ちゃん… いったい何があったの…?」

呆然と立ち尽くすことしかできない由梨。
とにかく何か大変なことが起きたのは間違いなさそうだ。
仕方なく由梨はひとりで暗い夜道を帰ることにする。

「夜道にひとりは怖いなぁ…。」

まあ奈津希が塾をサボるときは結局ひとりで帰るのだから
別にいつものことではあるが、
夜でも煌々と明かりに照らされている駅前と違って、
街灯の少ない住宅街はひとりで歩くには少し怖い。
特に周りに家のない佐田屋敷の辺りなどは、
この暑い夜でも通るだけでひんやり涼しくなるほどだ。
そして由梨は、その佐田屋敷の一画に通りかかった。

「怖くない…怖くない…」

呪文を唱えるようにブツブツと呟きながら
その暗い道を歩いていると…
人とすれ違った。
すれ違いざまにビュッと冷たい張り詰めた空気がうなじを掠め、
由梨は思わず身震いする。
恐る恐る振り返ってその人を見ると、
その女性は… 全裸だった。

「キャ!ヘンタイ!!」

思わず声をあげてしまう由梨。
その声に気付いたのか、裸の女性は由梨の方に振り向いた。

月明かりに照らされた神秘的な裸体に、
由梨は完全に魅せられていた。
裸の女性は、その全てを包み隠すことなく由梨の前に晒す。
粉雪のように肌理細やかで真っ白な肌…
夜の闇に紛れるほどの漆黒の髪…
大きな乳房の突起は、ビンビンに勃起している。
恥毛は髪と同じ漆黒で、そこから太ももへと伝う愛液…
全裸に唯一身につけた十字架のネックレスが、
豊満な胸の胸元に煌いている。
由梨は頭がぼーっとし、めまいのようなものを覚えた。
彼女の…裸の女性の背中に、
この世のものとは思えないほどの美しい純白の羽が見える…。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

「―――ハッ!?」

突然、我に返る由梨。
その瞬間、天使の羽は儚く舞い散って消えた。
由梨は急にガクガクと震えだす。
恐怖でしかなかった。
目の前の裸の女性…
彼女は女子高生。
しかも由梨のよく知る少女だった。

「…如月さん?」

恐る恐る彼女の顔を見る…。
彼女は妖しく笑みを浮かべると、背を向けてまた歩き出した。

「あんな格好で… どこへ行くんだろう…」

由梨は彼女の背中をぼんやりと見つめている。

如月 小夜子
やはり、彼女も…
  ―――――――露出狂か。

関わらない方が良い。
それはわかっているのに…
どうしても足が言う事を聞かなかった。
好奇心とか、そんなものじゃない。
一種の催眠みたいなもの…
頭がぼーっとして、
足が勝手に彼女のあとについていってしまう。

小夜子は夜の街を徘徊していた。
当てもなく、ただストリップのために。
愛液をポトポト落としながら…
すれ違う人に罵られながら…
ただただ、性欲の導くまま…
ただただ、胸の高鳴りに任せて…
そして、その後ろをつけてゆく由梨にも異変が…。
由梨は何となく、スカートの中に手を伸ばした。

「う、うそ…」

信じられなかった。
パンティがグッショリと濡れている…。

あそこが疼く。

由梨は顔を真っ赤にして、
悪夢を振り払うように首をブンブン振った。

夜の公園は、不気味なほどの静寂に包まれている。
小さな公園だ。
昼間子供たちが遊んだり、夕方中高生が下校途中に立ち寄ったり、
それ以外、他に誰かが来ることはほとんどない。
噴水すらないこの公園は、
デートスポットにも不良や暴走族の溜まり場にもならない。

『露出狂に注意』と書かれた古びた看板。

殴られたのか、少しへこみがある。

「あっ… んん…」

公園の暗闇の中で、
青年は少女との淫らなキスに酔い痴れる…。
ピクピクと怯える舌に、
自分の舌を優しく絡め愛してあげる。
唾液を混ぜあい、その甘味を味わう。
必死に抱き付いてくる少女…
そんな彼女の髪を、優しく撫でる。
ああ、愛おしい…
5歳も年下の少女、それもまだ小学生の少女を、
自分の意のままに犯す、この快楽…
居た堪れない…。

少女の服を脱がす。
バンザイをさせてTシャツを脱がすと、
まるで妹の着替えを手伝ってあげているだけの様…
でも、彼には淫猥な気持ちしかない。
もちろん、彼女も同意の上ではあるが。

「…にぃ…」

少女は顔を赤らめる。
露になった胸は、失礼な話
胸か背中かわからないほどだ。
でも、きちんと立派に勃起した桜色の乳首が、
乙女の乳房であることを教えてくれる。
この貧乳が、彼には堪らない…。

「そんな恥ずかしがるなよ。」

そう言って彼女の胸を優しく撫でる。

「ぁ…」

揉んでやると、甘い吐息が漏れた。
そのときの彼女の顔…
小学生とは思えない、なんとも色っぽい表情。
抑えられない衝動に駆られる。

「こっちも脱がすぞ。」

彼は少女のズボンとパンツを一気に下ろした。
誰が来るとも知らないこの公園の片隅で、
少女は愛しの彼に裸体を晒す。
月明かりに映し出された少女の裸は、
普段のそのボーイッシュな姿からは想像もできないほど
艶やかで魅惑的だった。

彼女は小学生…
しかもクラスでも第二次性徴が遅れている方である。
もちろん、陰毛など生えていない。
綺麗な割れ目が、あるだけである。

「亜樹…」

彼は少女の乳首に貪りついた。
しゃぶって、吸って、転がして…
少女がむず痒そうに喘ぐと、
その様子に彼は微笑んだ。

「ぁ… 気持ちいいよぉ… 秀にぃ…!」

秀と亜樹は、今宵も禁断の愛に溺れる…。

「秀にぃ…」
「亜樹…」
「秀にぃ… 好きだっ!」
「俺もだ。亜樹、愛してる。」

ふたりが道を踏み外してしまったのは、
もう一ヶ月以上も前のこと…

「秀にぃ、オレも一緒に入っていいだろ?」

のんびりと風呂に入っていた秀が
声に驚きそちらを見ると、
すっぽんぽんの亜樹が立っていた。

「え… え!?
 ダメに決まってるだろ!!」

予期せぬ妹の登場に、秀は慌てふためく。

「別にいいだろ?…兄妹なんだから。」

秀の言う事なんてちっとも聞かない亜樹は、
平然と風呂の中に入ってきた。
そして秀の浸かっているバスタブに、
無理やり割り込んで入ってくる。
なぜか兄妹肩を並べて湯船に浸かることになった。

いったい何なんだこれは…!?

亜樹は無言でお湯に浸かっている。
小学校六年生といったら、
実の兄妹でも一緒にお風呂に入るのを躊躇うお年頃だろう。
彼女のいつもの性格からすると、
もしかしたらそういう乙女心はまだ芽生えていないのかも知れないが…

見てはいけないと思いつつも、亜樹の方に目が行ってしまう…。
秀と目が合うと、亜樹はヘヘッと意味深な笑みを浮かべた。
―――ドキッとした。
普段クールな秀でも、その冷静さを保てずにいる。

…勃起してしまった。

秀は項垂れる。

亜樹に気付かれていないだろうか…
彼女がちょっと斜め下を向けば、欲情した肉棒が牙を剥く。
獲物を見つけた肉食獣のように涎を滴らせるのも、
もう時間の問題かもしれない。

「秀にぃ、背中洗ってやるよ。」

そう言って亜樹は秀の手を取り、湯船から引き出そうとする。

「お、おいっ!」

お湯から引き上げられた秀は、思わず赤面した。
ビンビンに勃起した兄のペニスを目の当たりにしても、
妹は顔色ひとつ変えず何も言わなかった。
秀を前に座らせ、ボディソープを付けたスポンジで
背中をゴシゴシ洗う。

「秀にぃ、背中おっきいなぁ。」

なんて言われたら、もう秀は激しい自己嫌悪に襲われた。
亜樹は兄とのスキンシップを、裸の付き合いをと、
そう思って風呂に入ってきたのかもしれない。
なのに自分は、そんな無垢な妹に欲情している…

―――――最低だ。

気付けば亜樹はいつの間にか、前を洗っていた。
秀の立派な胸板をゴシゴシと洗う。

「ま、前はいい!自分でやる!」

秀はハッとして、亜樹の手を掴んだ。

「遠慮するなって。
 下も洗ってやるぞ。」

亜樹は何を思ったか、
手にボディソープをたっぷり付け泡立てて
秀の股間を洗い始めた。

「あ、亜樹…!?」

勃起した肉棒を、直接手で優しく洗ってくれる妹。
無理やり止めさせようとすれば、止めさせられたはず。
でも秀にはできない。
秀の理性は、そこまで強くはなかった。
亜樹はその細い指で兄のペニスを愛撫し続ける。
睾丸を揉み揉みしたり…
陰毛を優しく洗ったり…
陰茎を扱いたり…
これは… どう見ても、どう考えても、

―――手コキだ。

小学生の亜樹がそんな事を知っているのかはわからないが…
でも、学校で性教育は受けたはずだから、
男性器を刺激することが何を意味するのか、
亜樹も知っているはずだ。

とすると、これは…

でも、もうそんな事はどうでも良かった。
妹に襲い掛からないようにと欲望を抑えこむだけで
もう精一杯だった。

「…こんなオレの裸でも、少しは興奮するか?」

秀はハッとした。
亜樹は自分の裸を見て兄が勃起したということに
気付いていたようだ。
それはそうだろう…
隣でお湯に浸かっている兄の丸見えの下半身が
いきなりムクッと起き上がったら、イヤでも目に付くだろう。
そして、兄が勃起した――その理由はひとつしかない。
亜樹はビンビンに勃起した兄の肉棒を見ても、何も言わなかった。
兄は自分の裸を見て勃起した。
もしその事実を拒絶したなら、
もう兄妹として、家族として、うまくやっていけないのかもしれない。
酷く兄を傷つけることになるかもしれない。
そう思って、何も言わなかったのだろう。
そして、その気まずさを紛らわすために…この行為。

『妹に欲情しても、それは仕方ないことだよね。
 勃起したおちんちんを見ても、
 わたしはお兄ちゃんを嫌いになったりしないよ?』

亜樹はこんなセリフを言うほど、妹妹した妹ではない。
だから、その代わりの手コキ。
そうに違いない。
秀の妄想は、そう結論付けた。
秀は項垂れた。亜樹に申し訳なかった。

「ごめん…、…兄として失格だよな。」
「そうだな。でも…」

突然の口付けに、秀は目を丸くする。
目を閉じた亜樹の可愛らしい顔…
唇に伝わる柔らかい感触…
妹は、兄に、キスをした。
両親が再婚して、一緒に暮らし始めたばかりの頃は、
亜樹は秀にとげとげしい態度で接していた。
秀を見るとなぜか鼓動が高鳴り、胸が苦しくなる…
そんな甘酸っぱい恋心は、亜樹にはまだ早すぎた。
自分の気持ちを理解できず、逆に兄を邪険にしてしまう。

だが、一緒に暮らしていくうちに
亜樹も薄々わかってきた。
自分は、秀に恋してるのだと。
そして、その気持ちを決定付けたのは、
秀の机の引き出しの中から見つけた”あるもの”たちである。
普通なら忌々しく思うべきそれを見つけたとき、
亜樹は思わず喜んでしまった。
そのとき、亜樹の中から

“オレが恋なんてするはずがない”
“相手は兄、いけないことなんだ”

そんなどうでもいいプライドやモラルは、完全に消え失せていた。

重ねた唇をこじ開け、
亜樹の舌が兄の口内に入ってくる…。

「あ、亜樹!?」

秀は驚き、思わず亜樹を突き放した。
亜樹は口元に垂れた唾液を、舌をペロッと出して舐めとる。

「別にいいだろ?オレたち、血は繋がってないんだ。」

そして、俯き加減でこう続けた。

「…やっぱオレじゃダメか?」

秀は胸がキュンとした。
それと同時にペニスがビクンッとするのが情けないが。
そのペニスが締め付けられるのも気にせずに、
いや、むしろわざと押し付けるように、
秀は亜樹を思いっきり抱き締めた。

「いや、お前が好きだ。初めて会ったときから…」

亜樹はハッとした顔で、恐る恐る秀を見上げる。
兄は優しく微笑んでくれた。

「秀にぃ…」

思わず涙ぐんでしまい、
溢れ出すそれを誤魔化すように秀に抱きついた。
兄妹は互いに包み隠すもののない格好で、
夢中で抱き締めあった。
妹は兄の胸に抱かれ、瞳から流れ出た雫は兄の汗と混ざる。

「…秀にぃって、ロリコンなんだろ?」

亜樹はぽろぽろと涙を零しながら笑った。
こんなに可愛い笑顔を見たことがない。

「机の引き出しに、そういう雑誌がたくさんあった。」

秀は苦笑いする。
隠し持っていた”夜のおかず”を見つけられ、
妹に自分の異常な性癖がバレていたなんて…

ロリータ・コンプレックス―――

秀は好きだった。
その童顔が。
その貧乳が。
その未成熟の幼い身体が…。

だけど彼は、それを頑なに隠し続けた。
好青年を演じ続けた。
もし、誰かに知られてしまったら…
これまで築きあげてきた”矢吹秀”という好青年が、
一瞬のうちに崩れ去ってしまうような気がしたから…。

「…嬉しかった。」

亜樹が呟いた一言に、秀はハッとする。

「もしかしたら、オレにもチャンスがあるんじゃないかって。」
「亜樹…」

兄妹は潤んだ瞳で見つめ合う。
愛おしい… 愛おしい… 愛おしい…
狂おしいほど欲情に駆られる…。

「続きはベッドで… 秀にぃ…」

亜樹は少し顔を赤く染め、背伸びして兄の唇に唇を重ねた。

「亜樹… 本当にいいのか?」
「ああ。」

こうして兄妹は、初夜を迎えたのだった…。

静寂を切り裂くように、少女の卑猥な嬌声が響く。
夜の公園は、兄妹の禁断の愛欲に満ち満ちていた…。

「秀にぃ…にぃっ!」

亜樹は顔をしかめ、敏感な部分への愛撫に耐えていた。
小学生の彼女には、この刺激はまだ早過ぎる。
亜樹のナカに侵入してきた兄の人差し指は、
淫猥な動きで彼女を苦しめる。
妹の悶える姿に、兄の胸は高鳴る。
興奮し、欲情し、はち切れんばかりに勃起した秀の肉棒は
ズボンの中に封印されたままではとても苦しそうだった。

「秀にぃ…あっ、んんぁ…気持ち…んあぅ…いいぞぉ…」

火照った顔は快感に歪み、言葉も絶え絶えになってくる。
それでも亜樹は強がって、兄の股間のモッコリと膨らんだ部分を
ズボンの上から優しく撫でて、こう言った。

「秀にぃ… ああっ…、も、もう我慢でき…ないんじゃ、ぁ…ないか?」

秀は亜樹の秘部から人差し指を抜き、その指をそのまま自分の口に運んだ。
べっとりと付いた愛おしい汁をペロリと舐めとると、その濃厚な味に酔い痴れる。

「挿れてほしいんなら、素直にそう言えよ。」
「なっ…! ち、違うっ!」

我慢できないのは亜樹の方だろうと。
図星をつかれ、亜樹は顔から火が出る思いだった。

「じゃあ挿れてほしくなったら言えよ?」

そう言って亜樹の頭をポンッと叩く秀。
亜樹はぷーっと頬を膨らませる。
兄は妹の股座に顔を埋めた。
秀はまだまだ焦らすつもりらしい。
発育途中の妹のカラダ…
ツルツルの秘部を舐めまわす。
ピクピクと可愛く反応する敏感なそれ。
クチュクチュといやらしい音をたてて、秀の舌が亜樹の秘部を弄ぶ。

「そろそろ良いんじゃないか?」
「秀にぃが挿れたくなったら挿れろよ。」

十分すぎるほど愛液塗れになっても、亜樹はまだ強情だった。
秀はクリトリスの皮を剥き、直接それを舐めようとする…

と、突然――――

「もうムリッ!!」

亜樹はプツンと糸が切れたかのように、秀を突き放した。
秀は軽く尻餅をつく。

「秀にぃ…ゴメン…
 その…さっきから…我慢してたんだけど…
 トイレ…」

内股でもじもじとする全裸の亜樹。
ついに我慢できなくなって”挿れて欲しい”と言うのかと思ったら、
我慢できないのはトイレだと言う。

本当だろうか…?

「トイレって… どっちだ?」
「…小さいほう。」

亜樹は恥ずかしそうに言った。
そわそわした感じが可愛らしい。
もう我慢できないけど”挿れて欲しい”なんて言えないから
苦肉の策でそんな嘘をついたのだろうか…?
どちらにせよ、秀にとっては無問題だ。

「小さいほうか…、なら平気だ。」

秀はそう一蹴して、再び妹の股座に顔を埋める。

「ちょ…!!ホ、ホントに漏れそうなんだっ!」

亜樹は喚きながら秀の頭を押しのけようとするが、
5歳も年上の兄の力には敵わない。

「おしっこ出ちゃうぅ!」

亜樹は強引に喰らいついてくる兄の頭をポカポカ殴り、
押し寄せる快感と尿意を必死に堪えている。

「出して気持ちよくなれよ。」

兄は容赦なくそんな卑劣なことを言うが、
たぶん本当に出すとは思っていないのだろう。
だが、現実問題、亜樹の尿意はもはや臨界点を突破する寸前。
小学6年生にもなってお漏らしだなんて、
プライドの高い亜樹には耐えられない。

「ホントに出そうなんだって!」

亜樹は形振りかまわずそう叫んだが、

「俺の顔にかけてもいいぞ。」

兄はそんな嘲笑混じりの冗談を言った。
そんな兄の言葉で頭に血が昇ったのか、

「おい、どけって!!」

亜樹は怒号とともに渾身の力で秀を突き飛ばした。

「うわぁ!!」

亜樹は最後の力を振り絞って、兄を突き飛ばした。
亜樹がぐずるから相当しがみついていたのだが、
それでも秀は大きく後ろに尻餅をつく。
火事場の馬鹿力とは言うものの、さすがにこれには秀も驚いた。

「イテテテ…」

秀がなんとか上体を起こし亜樹に目をやると、
彼女の体がプルプルと震えている…。

もう… ダメだ……

チョロチョロ…という可愛らしい音とともに、
黄金の汚水が綺麗な弧を描く。
亜樹は失禁してしまった。
兄の目の前で。
それも、全裸で。

「秀にぃ!見るなっ!…見ないでぇ!!」

相当我慢していたのだろう。
勢いよく吹き出てくるそれは、当分止まりそうにない。
亜樹自身もコントロールできないのか、
顔を真っ赤にしてブンブン首を横に振っている。
放物線を描いて地に堕ちてゆき、地面からビチビチと跳ね返る。
こうしてできた黄金の泉も、
やがて土に染みこんでゆき明日の朝までには消えるだろう。

鼻につくこの臭い…
おしっこの生暖かい感じ…

放尿というものにこんなに快感が伴うのだと、

亜樹は初めて知った。

絶頂を迎えたような感覚…

頭がボケーッとして、真っ白になって、

もう何も考えられない…

茫然自失の亜樹の残尿が滴る全裸は、
闇夜に溶ける異様な雰囲気を醸し出している。
秀は放心状態の妹に見とれて、その妖しい雰囲気に魅せられて、
亜樹にかける言葉を見失っていた。

終わった… オレ…

亜樹の身体は桜の花が儚く舞い散るように、
何の前触れもなく崩れ落ちてしまう。

「あ、亜樹!?」

しゃがみこんでしまった妹を心配し、
秀は慌てて彼女に駆け寄った。
そのすぐ横では、黄金の水溜りが異臭を漂わせている。

「秀にぃ…、オレのこと、嫌いにならないで…」

亜樹は涙ながらに訴えた。
秀は上目遣いのその潤んだ瞳に、クラッと逝きそうだ。

「嫌いになんてならないさ。」

秀は亜樹の肩にそっと手を置いた。
亜樹はハッとして顔を見上げる。
ポカンと開いた無防備な亜樹の口…
秀はその口に口付けをし、舌伝いに”愛してるよ”と想いを流し込む。

秀の舌は亜樹の舌に絡みつき、亜樹はもうされるがまま…
キスの味に酔い痴れ、蕩けてしまいそう…。
名残惜しそうに唇が離れる。
キスを終えても、唇と唇の距離は数センチもない。
そんな距離でふたりは見つめ合い、
互いの瞳に吸い込まれそうになる…。
そんな距離で秀は、甘い甘い声で囁いた。

「亜樹がおしっこする姿、すごく可愛かったぞ。」
「なっ…」

亜樹が顔を真っ赤にした瞬間、秀は亜樹に襲い掛かる。
亜樹は押し倒され、お尻にひんやりとした感触が伝わる。
兄はおしっこまみれの妹のあそこに喰らいついた。
尿道口を貪る秀。
ツンとくる臭いと、ほろ苦くてしょっぱい味…
愛液とはまた違う、何とも言えない味に病みつきになりそうだ。

「亜樹のおしっこ、美味しいぞ。」
「バカ…」

亜樹は”そんなの嘘に決まってる”と。
でもそれでも嘘をついてくれる兄が愛おしくて、
トイレットペーパーの代わりに
尿を舐めとってくれる変態の頭を優しく撫でた。

「秀にぃお前… ホントにヘンタイだな。」

亜樹は股座に貪りつき尿と愛液のブレンドを味わう兄に、
涙声で侮蔑的な言葉を浴びせる。

「まぁ、そういうトコ、嫌いじゃないけどな。」

目に涙をいっぱい溜めながら、強がってみせる亜樹。
そんな亜樹が、可愛かった。
兄は妹の股間を責め続ける。
もう尿の味はしない。いつもの愛の蜜だ。
放尿した快感も相俟ってか、
亜樹のカラダはいつも以上に敏感になっていた。

「あぅ…ああっ んんぁ…」

快感に体をくねらせ、幼いカラダから妖艶さを放つ。

「秀にぃ… そろそろ挿れ…、……!!」

ようやく素直におねだりを始めたかと思うと
突然言葉を詰まらせた亜樹。

「どうした?」

秀が亜樹の顔を見上げると、
彼女は驚愕した様子でただ前を向いていた。

「秀にぃ、後ろ…」

亜樹が呟いた一言で、秀はハッとした。
もしかしたら、最悪の事態が起こっているのではないか…
青姦のリスクは秀も亜樹も承知している。
誰かに見つかったらすぐに走って逃げようと、事前に決めていた。
亜樹はそんなことすら忘れて固まっている。
よっぽどマズイ相手と鉢合わせしてしまったのか…。

恐る恐る後ろを振り返ってみると…

大人の女には全く興味のないロリコンの秀でさえ
思わず見とれてしまうほどの美しい女性が立っていた。
それも、一糸纏わぬあられもない姿で…。

月明かりに照らされた神秘的な裸体。
絹のように肌理細やかで真っ白な肌…
魔女に仕える鴉の羽の如き漆黒の髪…

大きな乳房の突起は、興奮し赤く勃起している。
陰毛は髪と同じ漆黒で、
自慰をしながら歩いてきたのではと疑うくらい
滝のように愛液が流れ出ていた。
胸元を飾る十字架のネックレスが、
妖艶な雰囲気を醸し出している。
お、お前は――――!!

「…き、如月!!」

小夜子の右腕は艶やかに秀のもとへと伸びてゆき、
たじろぐ秀を誘惑するかのように、彼のあご下に触れた。

「あら矢吹くん。こんなところで会うなんて、奇遇ね。」

教室で話すときよりも更に官能的な声色だ。
瞬き一つできないほどに硬直している兄を見かねて、
亜樹が小夜子と秀の間に割って入った。

「お姉さん、露出狂なの?」
「ええ。ラギャルっていうのよ。」

小夜子は妖しく微笑む。

互いに全裸で見つめ合う小夜子と亜樹。
この光景を誰かが見れば、
ふたりはそういう関係なのかと勘繰られてしまいそう。
膨よかな乳房と、未成熟の貧乳…
どちらも乳頭が充血し勃起している。
漆黒の陰毛に覆われた秘部と、包む隠すもののない割れ目…
どちらも淫猥な汁で満ち満ちている。
全裸の小夜子と、全裸の亜樹…
ふたりは違うカラダで、同じ妖艶さを醸し出していた。

「ラギャルかぁ… カッコイイなぁ。
 オレもやってみようかな…」

亜樹は暢気にもそんなことを口走っていた。
彼女も完全に、小夜子の魔力に魅せられている。
彼女たちの世界に引きずり込まれてしまいそう…。

「このことは皆には…」

やっとのことで口を開いた秀は、
今見たことを口外しないでくれと懇願する。
この禁断の愛や自分の性癖のことが
明るみに出るのは何としても防ぎたい。

「わかってるわ。お互い様だもの。」

何か含みを持たせるような小夜子の笑みに、
普段はクールな秀も不安を隠しきれなかった。

ボトンッ―――

と、何かが地面に落ちるような音がした。

「誰!?」

小夜子の顔から笑みが消え、
振り返りざまに鋭い視線が向けられる。

「ひぃっ!!」

物陰に隠れていた少女はあまりの恐怖に声を裏返す。
事の一部始終を目撃していた彼女は
あまりのショックに茫然としていたが、
不意に手の力が抜けて持っていた鞄を落としてしまったのだ。

「誰かいるのか!?」

秀の声が聞こえる。
あれほど恋焦がれていた声が、今は呪わしい。

「もうイヤ…」

少女は意を決して物陰から飛び出て、
彼らに目もくれず一目散に走り去った。

「男って、みんな最低よ!!」

と叫びながら号泣して走り去ってゆく背中を、
亜樹はポカンとした表情で、
小夜子は妖しく微笑みながら眺めていた。

「ん… あれは…」

秀は彼女がいた場所に何かが落ちているのを見つける。
そこに落ちていたのは彼女の鞄。
キーホルダーのペンギンが、
物悲しそうな表情で秀を見つめていた…。

『大槻蓮が交通事故に遭った』

担任の翔にその連絡が来たのは、
ちょうど遅めの夕食をとっているときだった。
もはや通例となった裸エプロンで尽してくれる愛妻をほっぽって、
翔は夕食も食べかけのまま、慌てて病院へと向かってしまう。
美優は少しムッとしたが、
翔の表情から徒ならぬ事態なのだと察し、何も言わなかった。

「大槻!」

翔の声が病院の廊下に響き渡る。
もう夜中なので人は疎らで、
恐らく同じように緊急の患者かその関係者だろう。
彼らは翔を一瞥すると、また浮かない表情に戻った。

「す、すいません…」

病院内だというのに
思わず大声をあげてしまったことに翔は恥じ入る。

「緒方先生…」

品の良い小母さんが翔に近寄ってきた。

「蓮くんのお母さん…
 あの、蓮くんは…?」

蓮の母親は翔の母親と年齢もそう変わらない。
翔は実母にすがるような面持ちで話しかけた。
しかし…

翔の質問に彼女は静かに首を横に振る。

「手術は終わりましたけど…
 今夜が山だそうです…。」
「そ、そんな…」

翔は目の前が真っ暗になる。
隔離された集中治療室の前の廊下で、
蓮の彼女が泣いていた。
椅子に座りがっくりと肩を落とし俯いている姿は、
普段の少女を知る者なら目を疑うほどの気落ちぶりである。

「先生か…」

翔に向けられた目は、もう真っ赤に充血していた。
翔は彼女に何と声をかけていいのかわからない。
繊細な硝子細工のように、
ちょっと触れるだけで脆く崩れてしまうんじゃないか…
そう不安になるほど、今の奈津希はぼろぼろだった。

「意識不明の重体なんだって…。」

ポツリと呟く奈津希の声は、
別人のように弱く、か細い声だった。

「バカだよね。
 車にひかれそうになった小学生を守ろうとしたんだって。」
「運動神経鈍いクセにカッコつけちゃってさ。」
「あたし、実は…
 蓮のコト、けっこう本気だったんだけどなぁ…」
「これからも、ずっとずっと一緒にいてさ…
 いつか結婚して…
 先生みたいにラブラブな新婚生活送って…」
「子供は女の子がいいなぁ…
 あたしと蓮の子なら、きっとすごく可愛いよ…」
「それでその子が成長してさ…
 お嫁に行くときなんて、きっと蓮は泣いちゃうんだよ…」
「孫も生まれて…
 そしたらあたしたち、おじいちゃんとおばあちゃんだよ?
 でも、そんな歳になっても
 あたしと蓮はずっとラブラブなんだよ…」
「蓮… 大好きだよ…」
「だから、蓮… 死なないで…」
「栗原…」

翔は彼女の震える肩にポンッと手を乗せる。

「せんせぇー!!」

奈津希は泣きじゃくる子供のように翔に抱き付いた。
もう枯れたと思っていた涙が、また溢れてくる。
奈津希は翔の腕の中で、
いつまでも…いつまでも… 泣いていた。

奈津希は呆然としていた。
涙の枯れた瞳に映るのは、閉ざされた病室の灰色…
蓮の命の灯火が揺らめいては、今にも消えてしまいそう…
意気消沈の奈津希を眺めながら、蓮の母親は翔に語る。

「蓮は家でもいつも奈津希奈津希って…。
 蓮のためにあんなに泣いてくれて…
 あの子は幸せだわ。」

母親の微笑みはすべてを悟っているかのようだ…。
蓮は若くして最愛の伴侶を見つけた。
それだけで十分だった。

「先生、申し訳ないですけど、
 あの子を家まで送って行ってもらえません?
 連絡はしてありますけど、
 ご両親が心配するといけないですから。」

もう夜中の十二時を回っている。
彼女の言うとおり、奈津希を家まで送って帰ることにした。

「嫌だっ!! ここにいる!!」

当然、奈津希はそう言った。
奈津希の気持ちは痛いほどわかる。
もし自分が…
美優が蓮のように生死の境を彷徨っているとしたなら…
でも、翔は教師だ。

「ダメだよ。先生と一緒に帰ろう?」

翔は奈津希を優しく諭した。

「あ… 奈津希ちゃん。」

蓮の母親が彼女を呼び止める。
奈津希は俯いていた顔を上げ、
何処となく愛しい人に似ているその顔を見つめた。

「これ…」

蓮の母は奈津希の手を取り、何かを手渡した。
その瞬間、奈津希の目から大粒の涙が零れる。

「蓮の机の上にあったの…」

翔は奈津希を連れてタクシーに乗った。
奈津希にかける言葉が見つからない…。
彼女は終始無言で、項垂れていた。
蓮の母親から手渡されたのは、指輪だった。
買って買ってとねだってはみたけれど、
こんな高価なものを本当に買ってくれるだなんて思ってなかった。
ただ… 蓮の困った顔が見たかっただけなのに…。
指輪と共に箱に入っていたメッセージカード。
そこに書かれていたのは、愛の囁き…。

 Dear奈津希

     愛  し  て  る

「バカ…」
そう呟いて、指輪をギュッと握り締めた。
“愛してる”なんてカッコつけた言葉、
一度も言ったことないクセに…。
タクシーのラジオから流れる美しいMelody…
奈津希の心を癒すことはできなくても、
“泣いてもいいんだよ”と優しく微笑んでくれる。
そんな不器用なところが、蓮の笑顔とそっくりだった。

  あんなに離れてた
  小さなキミの背が
  大きく見えるのは
  不思議ね すぐ側にいるんだから

  でも触れられないと
  不安になるばかりで
  愛するキミの 震える手で
  ボクの鼓動 感じてほしい

  SinceourStart
  ForeverLove 永遠(とわ)に
  刻み続けることでしょう
  心地好い胸の高鳴り
  ふと恋しくなった瞬間(とき) 耳寄せる

  IwannabeLoved
  あなたとずっと
  このままふたりはeternally
  信じて疑わなかった
  愛しい人と
  ふたりで刻むIknowrhythmWow

『遅くなりそうだから、先に寝てて』

翔から送られてきたそんな飾り気のないメールを閉じると、
携帯の画面に写ったのはふたりのラブラブな写真…。
美優は待ち受け画面の翔を見つめ溜め息をつく。

「翔… どうしたのかな…」

電話を切るなり慌てて飛び出していった翔は、
美優に何の事情も説明していなかった。
電話にも出ないし、メールを打ってもなかなか返事が来ない。
ようやく返事が来たかと思うと、こんな短く素っ気無い文章だった。

“よっぽどのことがあったに違いない”

という翔への厚い信頼と、

“あたしのコトを一番に考えてくれなきゃイヤ”

というジェラシーが葛藤する。
美優は愛されたい願望が強い。

「眠れない…」

美優はベッドに入って数時間、ずっと悶々としていた。

「あ〜もうイヤッ!!」

突然美優は大声を出しベッドから飛び出て、
可愛らしいピンクのパジャマを脱ぎ捨てた。
露になる豊満な胸とセクシーなくびれ、
そしてフェロモンたっぷりの恥毛…
なぜかブラやパンツははじめから身に付けていなかった。

「まったく…
 翔のせいで裸で寝るのに慣れ過ぎたのよ!」

全裸になった美優は再びベッドに横になり、
せいせいと腕を広げて大きく息をする。

「ふぅ…やっぱこれね。」

とスッキリした表情を浮かべた。
でも体がスッキリしたところで
モヤモヤした感じは拭い去れない…。

「翔…」
「………」

気付けば美優は、自分でも知らず知らずのうちに
右手を股間に伸ばしていた。

「……んぁ…」

別にこんなことをするために、裸になったわけじゃないのに…
そうは思いつつも、慣れた手つきで秘部を弄ぶ右手を
なかなか止めることができない。
一度はじめてしまうと、途中で止めるのは難しいらしい。
誰に見られているわけでもないのに、
美優は顔を赤く染めて自慰に耽っていた。

右手が秘部を弄繰り回している間、
左手は張りのある豊満な乳房と戯れていた。
両手が激しく活動する一方で、
顔は天井を見つめ、ぼんやりとした表情を浮かべている。

「一人でするのなんて、すっごい久しぶりな気がする…」

それはそうだろう。
結婚して以来、翔とのセックスを欠かしたことはほとんどない。
せいぜい美優が生理のときとか、そのくらいだろう。
そういうときだって、美優は翔のペニスを手で扱いてあげたし、
お願いされればフェラチオだってしてあげた。

「翔… あんたのせいであたし…
 こんなにエッチになっちゃったわ…」

自分で自分の体を犯しながら、その責任を翔に押し付ける美優。
心なしか表情が色っぽくなってきたのは、
だんだん気持ちよくなってきた証拠だろう。

「うぅ… 翔のを挿れてほしいなぁ…」

指でヴァギナをグチャグチャに掻き乱しながら、
愛する人の肉棒を恋しく想う。

「こんな姿見られたら、嫌われちゃうかな…」

嫌われるだろうな…。

「ゴメンね、翔…」

美優は虚しさと罪悪感を感じながらも、
それを払拭するように自慰を続ける。

「あん… 気持ちいぃ…」

…でも、この虚しい感じはなに?
翔とのセックスの、あの幸福感とは程遠い…

「んぁあ… ぁあっ! ぅんあ…」

翔… お願い…
あたしを犯して…
骨の髄までムチャクチャに犯されたい…
翔の肉棒であたしのイヤラシイカラダを掻き乱してほしい…
翔に犯されるのが幸せ…
翔に犯されるのが気持ちいい…

「翔… しょお… しょお!!」

翔に犯されるのが…

    ―――――あたしの生きがいなのっ!!

「ただいま〜…」

小声で呟く翔の声が、静まり返った廊下に響く。
最近は帰宅すると裸エプロンの美優が出迎えてくれるのが
もはや日課になっていたが、
今日はずいぶんと寂しい帰宅である。

「美優、もう寝てるかな…」

ずいぶんと遅くなってしまった。もう夜中の2時に近い…。
もう美優は寝ているかもしれないから、
翔は廊下の電気もつけず月明かりを頼りに
できるだけ音をたてないよう忍び足で歩いた。

「ん?」

寝室から僅かな灯りが漏れている。
いつも夜の営みをするときにつける淡い色の灯り…
美優はまだ起きているみたいだ。
部屋の中から微かに声が聞こえる。

「翔… しょお… しょお!!」
「ん? なに?」

自分の名を呼ぶ声に、
間抜けな返事をしながらドアを開いた。

「翔… しょお… しょお!!」
「ん? なに?」

急に開いたドアから、ひょっこりと顔を覗かせる翔。

「キャッ!!」

慌ててあそこから指を引き抜く。

――――――…見られた。 確実に!!

「…帰ってたの?」

美優はピクピクと顔を引き攣らせて聞く。
「今帰ってきたんだけど…」
 なに…やってるの…?」

顔を紅潮させた素っ裸の妻を見て、翔は冷や汗を垂らした。
こういうことをしているシーンを目撃したことはこれまでなかったし、
美優がこういうことをするという話は聞いたことがなかった。

「…み、見ればわかるでしょ。オナニーよっ!!」

顔を真っ赤にしながらも威勢良く言い放つのが何とも美優らしいが、
恥ずかしいときほどこういう言い方をする美優のクセを
翔はよく知っている。

「へー… 美優もオナニーとかするんだね。」

翔は努めて平静を装う。
今すぐにでも襲い掛かりたいところだが、
それではあまりにも勿体無い。

「しちゃ悪い!?」

美優はヤケになってそう吐き捨てた。
プイッとそっぽを向いた美優は暫く黙っていた。
頬を膨らませて不機嫌そうにも見えるが、
頬を真っ赤に染めて恥ずかしそうにも見える。

「…ひいた?」

数十秒の沈黙の後、
美優の口から恐る恐る出たのはそんな言葉だった。
嫌われたんじゃないかとビクつく美優が、あまりにも可愛い。

「いや、全然。」

あたりまえだ。
こんなことでふたりの愛が冷めるようなことはありえない。
というか翔はむしろ喜んでいる。
美優の意外な一面を見れて…
そしてまたエッチなイジワルができる…

「っていうか…、どうぞ、続けて。」
「なっ…、なにバカなコト言ってんのよ!!」

美優は翔の一言に顔を真っ赤にして怒鳴った。
“続けて”って…
目の前であたしにオナニーさせる気なの!?
案の定、翔は嬉々とした様子で美優の裸体を眺めている。
もう翔は、愛する若妻のマスターベーションを
観賞する気満々なのである。
ベッドの上で全裸で膝を抱える美優に
翔は舐めまわすような視線を向けていた。
そんな見つめられると… あたし…

「ぅ…んぁ…」

淡い灯りが美優の一糸纏わぬ姿を照らす。
ベッドの上に座る美優は、
愛憎相半ばする翔に全てを晒していた。
紅潮した頬…
視点の定まらない瞳…
豊満な乳房…
赤く勃起した乳頭…
少し涙ぐんでいるようにも見える彼女は、
スケベな視線で自分を見つめている翔のために
自慰をしていた。

「ぁあっ… んぁあ…」

愛液に塗れたヴァギナを右手が犯し、
左手は敏感なクリトリスを弄ぶ。
そんな卑猥な姿に、突き刺さるような視線を送る彼…
その視線が、
痛くて…
熱くて…
そして、どうしようもなく
気持ちいい…

「もっとよく見せてよ。」

翔は美優の股間を覗きこむ。
いつも自分が犯しているその領域を、今日は彼女自身が犯している。
そのあまりにいやらしい光景に、
翔の肉棒ははち切れんばかりに勃起していた。

「翔なんか、ダイッキライ!!」

顔を真っ赤にしてそう怒鳴った美優は、
いやらしい部分を翔によく見てもらえるよう足を大きく広げた。
言葉とは裏腹の行動をする美優が、
もう可愛くって可愛くって仕方がない。
翔は美優が自ら広げた両膝に手を当てて、更に大きく広げさせた。
そしてその股の間に顔を埋める…。
目の前に迫る美優の秘部…
翔は鼻息が陰唇にかかるくらいの距離で
愛おしい淫らな唇を見つめる。
女の匂いが… いやらしい臭いが…
翔の頭をぽーっとさせる。

「可愛いよ、美優…
 とってもエッチで… 興奮する…。」
「イヤ…」

イヤ…
恥ずかしくって… 死んじゃいそう…
イジワルばっかする翔… ムカつく…
なのに… どうして…?
翔に見られながらだと、
どうしてこんなに… 気持ちいいの!?

「ぁあんっ! んぁあ…んぁ…」

美優は自分で陰唇を大きく広げ、
翔にナカまでしっかり見えるようにしてオナニーをしている。
なんて淫猥な姿なんだ…。

「翔… もっと見てぇ!!」

彼女は完全にエムのスイッチが入っていた。
自分で自分のキャラを保てないくらい…。
美優のあまりの淫乱ぶりに、
見ている翔も顔が真っ赤になってしまった。

「美優…」

翔はおもむろに立ち上がり、服を脱ぎ始めた。
トランクス一枚の姿になると、
そのテントの中に住まう獣が垂らした涎が
染みをつくっているのがわかる。

「しょお…」

それすら脱ぎ捨て全裸になると、
美優はその翔の裸体を眺めながら妄想を膨らませ、
より興奮し、指の動きを激しくした。

「しょお… ああっ…」

翔の肉棒を愛おしそうに眺めながら、
美優はひたすら自慰に耽る。
そんな彼女の淫らな姿を見つめる翔は
今すぐにでも襲い掛かりたい衝動に駆られるが、
何とかその衝動を押さえ込んでゴクンッと唾を飲んだ。

「…僕もするね。」

なんと、翔も美優に見せ付けるかのように、
自らの手で自分の肉棒を扱きだしたのだった。

美優のオナニーを見るのは初めてだった。
昔、美優に手コキをされながら
”あたしの裸とか想像しながらこういうことしてるの?”
なんてからかわれたことがあったが、
美優も同じなんだ…
美優も僕のこと考えながらオナニーしてたんだ…
そう思うと翔は居ても立っても居られなかった。

「我慢…んん…できなくぅ…なっちゃったのぉ?
 ぁあっ… 情けないわね…んぁあ…」

自分でペニスを扱きだした翔を見て、
美優は壊れそうな笑みを浮かべる。

「ごめん…
 美優があんまり可愛いから… 興奮しちゃって…」
「フフッ んぁ…嬉しい…」

自分のいやらしい姿を見て翔が興奮してくれることが、
美優にとってはこの上ない幸せだった。

「翔のオナニィ…あっ…んん…
 激しいっ…んぁ…わね…」

はじめて見る翔のオナニーに、
美優も鼻息を荒くして興奮している。
ふたりは互いを想いながら自慰に耽っていた…。

「僕たちってすごいエッチな夫婦だね…」
「オ、オナニー…見せ合うなんて…んぁあ…
 もぅただのヘンタイよっ! ああっ…」

互いに互いのオナニーをおかずにオナニーをする。
互いに相手に恥ずかしい部分を見せ合って、興奮を高め合う。
変な話、セックスよりも興奮する…。
ふたりはそんなパラドックスに酔い痴れていた。

「僕、もう出そうだよ…」
「あたしも…んぁあ…もう限界かもぉ…」
「イクぅ…しょお、あたしイクよぉおっ!!」

頭が真っ白になるような絶頂感の後…

「はぁ… はぁ…」

快感が体中に染み渡ってゆく。
秘部から溢れ出した泉がシーツに染み渡ってゆく。

気持ちいい…――――

翔も逝ったかな…?

「…翔?」

美優が項垂れた顔をあげた次の瞬間!!

ビュッ ビュッ ビュッ!!

化粧をしなくても十分すぎるくらい美しい顔立ちの美優の顔に、
翔の熱いザーメンが飛び散った。
翔はもう、スッキリ爽快♪♪
美優曰く可愛い翔の逝く瞬間の顔は、
いつにも増してムダに輝いていた。

「…ちょっとぉ!?」
「あ、ご、ごめん!!」

顔を真っ赤にして怒る精液塗れの美優に、翔は慌てて謝った。
いつもエッチのときは翔のペースになることが多いが、
それはあくまでもエッチのときに限った話である。

「………」
「………」

美優は無言で翔を睨みながらティッシュを取って、
顔にかかった精液を拭き取る。
翔は苦笑いしてその様子を見ていた。

「………」
「………」

ふたりの間に変な沈黙が流れたあと…

「………プッ あははははっ」

思わず吹き出してしまうふたり。
オナニーを見せ合うなんて…
冷静になって考えてみると、
もう恥ずかしいを通り越して、何だか可笑しくて笑えてくる。

「あはははっ バッカじゃないの?」

美優は自分にオナニーを見せ付けてきたダンナを嘲笑う。

「はははっ
 美優だって、”もっと見てぇ”とか言ってたよ?」

翔も股をおっぴろげて喘いでいた美優を笑った。

「ヘヘヘッ
 ちょっと盛り上がりすぎちゃったわね、
 恥ずかしい…」
「でも可愛かったよ。」

恥ずかしがる美優も可愛いけど、
恥を捨てて乱れまくる美優もムチャクチャ可愛かった。
心のどこかでやっぱり恥を捨て切れてないのか、
壊れかけのあの表情がまた堪らないんだ。

「あはははっ」
「はははっ」

ふたりは大声で笑い合う。
エッチしまくることを前提で借りた部屋だ、
防音設備がしっかりしていて
真夜中に大声を出してもたぶん大丈夫だろう。
よくわからないけど、
何だか可笑しくって可笑しくって…
笑いすぎてお腹が苦しくなるくらいだ。
今日一日の嫌な出来事を忘れるくらい笑った。
突きつけられた現実から逃れるように…

「ふぅ…」

笑い疲れて漏らした溜め息。
翔の顔に浮き出た一瞬の憂いを、美優は見逃さなかった。

「…何かあった?」

美優は大きな綺麗な瞳で翔を見つめる。

「………」
「…あたしが癒してあげるわ。」

美優は翔を胸に抱き、聖母のように慈しむ。
いつの日も美優は、美しく優しかった…

秋という季節は、人々の記憶から失われつつある。
このまま永遠に蒸し暑い季節が続いていくのではないかと、
誰もが危惧していた。
諸外国でも異常気象が続き、
世界規模の問題になっているらしい。
早急に対策を練らなければ、
いずれ大変なことになるかもしれない。
でもこの地に生きる人々は、
今、目の前にある現実を生きていくだけで精一杯だった。

「この度は… ご愁傷様でした…。」

深々と頭を下げた翔の目から、涙が零れ地を濡らす。
結局何もできなかった…
自分の無力さに心がズキズキと痛む。
この日、大槻蓮の葬儀がしめやかに執り行われた。
弔問客の中にはS高の生徒たちも多かった。
淡々と続く読経の中、
そこ彼処からすすり泣く声が聞こえる。
故人を悼む声は、彼の耳に届いているだろうか…。

棺に納められた蓮の遺体…

端整な目鼻立ちの蓮の顔は
とても安らかで、眠っているかのようだ。
でも、その瞼は二度と開くことはない。
相変わらず奈津希は放心状態だった。
他の同級生たちが泣いている中、彼女は涙ひとつ見せなかった。
蓮と同じような顔色をしていて、立っているだけでやっとのよう…。
そんな親友を由梨は心配そうに眺めていた。
蓮の棺に納められた美しい弔花を見て、
由梨は佐田屋敷の庭に咲いていた菊を思い出す。
秀もこの葬儀に参列しているのだろうか…。
彼とはあれ以来口を利いていない。

もう… 顔も見たくない…。

「あの… お母さん…」

この日初めて奈津希が口を開いた。
蓮の母親に話しかけたのだ。

「…キスしてもいいですか?」
「ええ。蓮もきっと喜ぶわ…。」

哀愁漂う母の微笑み…
彼女は奈津希を愛娘のように優しく見つめている。
奈津希は蓮に、最後のキスをした…。

「蓮… さよなら…」

____________________________________________________________

「…キスしてもいいですか?」
「ええ。蓮もきっと喜ぶわ…。」

奈津希の唇が、蓮のそれと重なる…。

「蓮… さよなら…」
「奈津希」
「え…」

もう二度と聞けないと思っていたその声…
奈津希は思わず振り返る。

「う、うそ!?」

そこには、蓮が立っていた。
奈津希は目をパチパチさせ、口をあわあわさせ、
相当ショックを受けていた。
そんな奈津希を、蓮は思いっきり抱き締める…。

「奈津希のキスで、目が覚めたんだ。」

蓮は奈津希から離れると、
決意を秘めた表情で母親に言った。

「母さん…、僕、奈津希と結婚するよ。」

呆然としている奈津希に、
次々に「おめでとう」と声をかけてくる友人たち。
鳴り止まぬ拍手の中で、
奈津希は「あ、ありがとう…」と返事をした。
事態が呑み込めない奈津希…
でも、隣に蓮がいて…笑っている…
それだけで、十分だった。

「蓮のバカ…。あたしがどれだけ悲しんだと思ってるのよ!!」

と叫んでみたりする。
蓮は「ご、ごめん…」と頭を掻いた。
そんな当たり前だったやりとりに、幸せが溢れている。

「蓮!!」

奈津希は思わず蓮に抱きつこうとした。
彼女の目から、涙が零れ出す。

しかし無情にも…

抱きついた瞬間、蓮の姿は儚く消えた…。

ひとり取り残された奈津希は、

混沌とした闇の中でポツリと呟く。

「そっか…。
 あんた、死んだんだよね…。」
「――――――夢…か…」

気付けば奈津希はベッドの上にいた。
蓮の葬式から、もう3日くらい経つだろうか…
あれからほとんど何も口にしていない。
ずっと自分の部屋に閉じこもったきりだ…。

「そりゃそうよね…」

幸せな悪夢から覚めた奈津希は、ぼろぼろと泣いていた。
いっそあのまま夢が覚めなければ良かったのに…
最後のキス…
蓮の唇は驚くほど冷たかった。
残されたのは、虚無感だけ…
奈津希はパジャマ姿のままベランダに出てみた。
昼下がりの太陽が眩しい…
彼女の家は貧乏だ。
狭くてぼろいアパートの二階…

「ここから飛び降りても…
 とても死ねそうにないわね…」

少女は、空を見ていた。
何の意味もなく、ただボーっと…。

「蒼い空に…雲は流れ…かぁ…。」

あの一件以来、信太は学校を休んでいる。
トラックにひかれそうになったとき
偶然通りかかった高校生が咄嗟にかばってくれたので
ケガは軽傷だったのだが、
その高校生が帰らぬ人となってしまった。
そのことで相当ショックを受けていて
当分メンタルケアが必要らしい…。
命の恩人の葬儀への参列は断られた。
向こうの遺族に怨まれて…ということではない。
遺族、とりわけ故人の母親はとても優しい人で
決して信太や信太の両親を責めたりはしなかった。

「葬式にはいらっしゃらないでください。
 お互い辛いだけですから…」

その優しい言葉の裏には、
参列すれば親族や弔問客たちから罵られるであろう
信太と両親への気遣いが見え隠れしていた。

「ただ… もしよろしければ、たまにでいいので…
 墓参りでもしてやってください…。」

「信太は今日も休みなのか?」
「うん。そうみたいね…」

ここのところ信太が休んでいるので、
亜樹は直哉とふたりで登下校している。
この日も直哉と一緒に学校へと向かっていた。

「まったく、どうしようもないな。オレにフラれたくらいで…」

亜樹は事故のことを知らない。
彼女は信太は自分にフラれたショックで
登校拒否をしているのだと思い込んでいた。
秀は当然蓮の葬儀に参列したが
蓮の母親の配慮のお陰で、信太と鉢合わせすることもなく、
蓮が命を犠牲にして守った小学生が
実は信太であるということを知る者は少ない。

「あ、あのさ、亜樹ちゃん…」

突然、直哉の足が止まった。

「なんだ?」

少し顔を赤らめている直哉を、亜樹は不思議そうに覗き込む。

「亜樹ちゃんは、女の子…なんだよね?」
「は? 当たり前だろっ!!」

オレは女だ!!
亜樹は確かに男みたいな性格だが、
それでも自分が女性であることを重々承知している。
何より女に生まれなければ、
秀と結ばれることもなかっただろう…。

「何なんだ、お前…」
「え、あ、ううん… 何でもない…」

亜樹は直哉に疑いの目を向けていた。
いったい今までオレを何だと思ってたんだと…。

「あ〜 ウチも女の子に生まれたかったなぁ…」

直哉は空を見上げてそう言った。
暫く歩いていると、直哉は急に寒気に襲われた。
道路の向こうから異様な空気が伝わってくる…。
恐る恐るそちらに目をやると、
その瞳に映った光景に、直哉は思わず息を呑んだ。

「な、なにあれ…。もしかして最近流行の…」

朝の通勤通学の時間帯だけあって、大通りは混雑していた。
行きかう人々は肩をぶつけても謝ることもなく、
急ぎ足で職場や学校へと向かってゆく。
そんな中、その一箇所だけはすっぽりと空いていた。
その妖しげなオーラを放つ女性が道を歩くと、
モーセの前で海がふたつに割れるように、
彼女の前で人の波が割れ、道が開けていた。

「あ!! この間のお姉さんだ…」

亜樹はなぜか嬉しそうな顔をする。

「亜樹ちゃん、あの人知ってるの?」

「ああ、ちょっとな…。やっぱ憧れるなぁ…」

亜樹が浮かべる不敵な笑みに、

直哉は不安を感じざるを得なかった。

「奈津希ちゃん、今日も休みかな…」

由梨は黒板の上の掛け時計を見上げた。
もうすぐ授業が始まる。
この時間に教室にいないということは
奈津希はおそらく今日も欠席だろう…。

「あれからもう一週間もたつのに…」

最後に奈津希を見たのはもう一週間も前だ。
それ以来メールをしても返事がないし、
電話をかけても繋がらない。
おそらく電源を切ったままなのだろう…。
由梨は今日の放課後にでもお見舞いに行こうと考えていた。

ガラガラ…と教室のドアが開く。
もう授業が始まる時刻なので
教師が入ってきたのかと思い、そちらに目をやった。
一瞬にして由梨の表情が凍りつく…。

「如月さん…!」

ドアの近くにいた女生徒は思わず声をかける。

「ど、どうしたの… その格好…」
「フフッ…。カッコイイでしょう?」

小夜子の妖しげな笑みに、女生徒の顔は引き攣った。

「え… そ、そうね…。素敵よ、とっても。」

動揺を隠し切れない。
制服の自由化以来、小夜子は担任から注意され続けながらも
過激なファッションを止めず、
それどころか徐々にその過激さを増していた。
いつかこんな日が来るのではないかと、誰もが思っていただろう。

しかしまさか…

まさか本当にこんな格好で登校してくるとは…

近寄ってくる小夜子から、由梨はとっさに目を逸らす。
はっきり言って、関わりあいたくなかった。

「そんな顔をしないで…」

この妖艶な笑みに、呑み込まれてしまいそう…。
たじろぐ由梨の耳元で、そっと囁いた。

「あなたも脱いでみたら?」

不気味に微笑む小夜子に、背筋がゾクッとした。

「…気持ちよく、なれるわよ?」

キーンコーンカーンコーン…

チャイムが虚しく響き渡ると、
担任の翔が教室に入ってきた。
蓮の葬式以来、このクラスにはあまり活気がない。

彼は教壇に立つと、その異様な雰囲気に威圧された。

「みんな、ちょっとしんみりし過ぎだよ…。
 大槻のことは残念だったけど…」

そう呟き、教室を見回すと…。その目が…見開いた。

「き、如月…?」
「どうかしました?」

名前を呼ばれた少女は、嘲るように微笑を浮かべた。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

「いや…、何でも…ない…」

翔は俯いた。
現実を見るのが、恐かったのかもしれない。

教卓に置かれた名簿を持つ手はブルブルと震え、
“如月小夜子”という字が歪んで見える。

そして、恐る恐る再び顔を上げる。

小夜子の背中に、この世のものとは思えないほどの美しい純白の羽が見える…。

「―――ハッ!?」

突然、我に返った瞬間。その羽は儚く舞い散って消えた。

「き、如月!!服はどうしたの!?」

少し嬉しそうな顔をした小夜子は、
ゆっくりと立ち上がった。

「自由って言われても、何着てくればいいかわかんなくて。」

今、彼女の全てが見てとれる。

粉雪のように白く繊細な肌が、美しい…。
大きな乳房の突起は、興奮し赤く勃起している。
陰毛は髪と同じ漆黒で、そこから太ももへと伝う愛液…

「何着てきても、先生怒るから…。」

胸元を飾る十字架のネックレスが、
妖艶な雰囲気を醸し出している。

「だから、まぁ…何も着てかなければ問題ないかな…なんて。」

翔は「はぁ…」とため息をつき、
見下した目で嘲る小夜子のもとへと歩み寄る。

「…もういいよ。
 如月… 僕と一緒に、職員室へ行こう。」

着ていた背広を脱いで小夜子の背中に被せた。

「いいね?」

小夜子の顔を覗き込むようにして見つめそう言うと、
彼女の返事を待たずに、
肩を抱いて教室の外へと連れ出そうとする。

「みんな、とりあえず自習してて…」

生徒たちに残した言葉は力無く、
教室の空気を一層重くした。
教室のドアに手をかけた瞬間、
翔はハッとして、猛烈な冷や汗をかいて固まった。

「こ、この状況は…!!」

翔の脳裏によぎるあの日の光景…
すべての事象が、7年前と酷似している…!!

するとそのとき…
ガラガラ…と教室のドアが勝手に開いた。
翔が開けたのではない、
廊下側から開かれたのだ。
もう授業が始まっている。
誰もいないはずの廊下…

そこに佇んでいたのは…――――――

「く、栗原…!!」

翔は思わず絶句した…。
奈津希はなかなかスタイルが良い。
胸も大きく魅力的だ。
その柔らかな膨らみの先っぽで、
桜色の乳頭が己の存在を主張している。
そしてそこから下へいくと、
可愛らしいおヘソ、そして…
顔に似合わず淫猥な唇…
それを覆う恥毛がなんともセクシーで…
奈津希の背中にも
この世のものとは思えないほどの美しい純白の羽が見える…。
全裸で凍える奈津希を蓮が抱き締めるかのように、
温かく包み込む優しい天使の羽…

「な、奈津希ちゃん…」
「栗原まで… どうしちゃったんだ…!?」

由梨も翔も驚愕し、
瞬きさえも忘れて目を見開いていた。
クラス中にどよめきが広がる。

「あたしは蓮以外、何もいらない。
 この指輪だけで…もう十分よ…」

左手の薬指にはめた蓮の形見を見つめる優しい眼差し…
全裸の奈津希は、
ただ… 愛おしい人の温もりを感じる。

職員会議―――――――

「緒方くんのクラスで、全裸で登校した生徒がいるそうだ。」
「ついにうちの学校にも出ましたか…。」
「まあ、今流行ってますからねー、ラギャル。」
「どうするのかね。認めるわけにはいかんだろう。」
「…犯罪ですからね。」
「だが、公然わいせつ罪やわいせつ物陳列罪は
 撤廃に向けて議論が進んでいる。」
「まったく、変な世の中になったものだ…。」
「しかし、教育上良くないだろう。
 PTAは何と言っている?」
「禁止するのは、子供の個性の否定に繋がる、だそうだ…。」
「馬鹿げたことを…」
「今の時代、何事も”強制”とか”禁止”とか
 そういう言葉は嫌われますからねー。」
「…教育委員会はどうだ?」
「各校の判断に委ねる、と。
 厄介事はこっちに回すな、ということでしょう。」
「校長、どうします?」
「…現状維持だ。
 緒方くん、生徒の方から自主的に止めてくれるよう促してくれ。」
「そ、そんな…」
「なに、案ずることはない。原因は異常気象だ。
 冬になれば流石に気温も下がり、嫌でも服を着てくるだろう。」

―――――しかし、気温は上がる一方だった。

全裸で登校するのは
小夜子と奈津希だけではなかった。
一人また一人と裸の女生徒が増えていき、
数日のうちに学校中に広がっていった…。
驚くことに、いわゆる美人や可愛い娘だけが脱いでゆき、
自分の顔や体に自信のない娘たちは決して脱がなかった。

しかし、例外がひとり…。

由梨は制服を着ていた。
頑なに脱ぐことを拒んだ。
教室中に裸の女子が満ちている…。
もはや現実ではないみたいだ…
悪い夢に違いない…
思えば、すべてはあの日から始まっていたのかもしれない…。
あの紅い瞳が、すべてを狂わせた…

そう… それは、露出狂の少女たち

まるで… 教室中に西濱綾がいるみたいだ。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

「うわーーー!!!!」

12月31日―――――

太陽が燦々と照り付ける季節は終わりを知らず、
蒸し暑い夜に行われた紅白歌合戦。
本当なら、美優とコタツにあたりながら…
脚を絡ませあったり、イチャイチャしながら…
いつまでも、幸せな時間が流れているはずだった。

でも…
彼は今…
世界中に自分しか存在しえないかのような
深い孤独感に苛まれている。

「美優…」

ふとテレビに目をやると、
そのアーティストが歌う姿は、あまりに神々しい…
一枚、また一枚と…
身に纏う衣服を脱いでゆく、その姿…

仁元実華が歌うこの曲… ―veil―

西濱綾のような紅い瞳に…
如月小夜子のような長い漆黒の髪…
一糸纏わぬ姿となった彼女の胸元には、
十字架のネックレスが煌めいていた。
後から聞いた話では
スタッフたちが実華サイドに買収されていて

映像が遮断されず、そのまま放送されたのだという…。

  定められた道徳(ルール)では
  生きることも辛すぎて
  夜の寒さ氷河期のよう
  こぞって服を着た

  生まれたとき誰もみな
  裸のまま泣き喚く
  福を求め服を重ねて
  化粧をしてシンデレラ

  仮面舞踏会みたい
  哀しく微笑みあって
  冷静に着飾るけれど
  誰もが怯えて warwar

  仮面舞踏会みたい
  可憐に舞い踊り散る
  謎なのはお互い様ね。
  本当の姿は veil

  煌いてる星達も
  所詮ただの天象儀
  誰も知らぬ果ての何処かに
  エセ白馬の王子様

  仮面舞踏会なんて
  温もり伝わらない
  気持ちよく喘いでたけど
  虚しい偽り ahah

  仮面舞踏会なんて
  孤独を重ねゆくだけ
  愛想笑い、上手く出来てた?
  本当の笑顔は veil

  護ってるのは心
  硝子のようだけど
  全ての服を脱ぎ捨てて
  化粧をとり魔法を解く

  仮面を捨てて生きたい
  本当の私を見てて
  冷静に着飾る人よ
  飾りは要らない ourhour

  全て脱ぎ捨ててみたい
  醜く舞い踊り生きる
  目を逸らさないで見ていて…
  今脱ぐよ 要らない veil

【学校】唯香に中だし【教室】

$
0
0

僕は中2で学年に唯香という少しかわいくて巨乳の女子がいる。水泳の授業の時僕はカードを忘れたと言い教室に戻った。もちろん誰もいない。実際にカードは忘れたがそんなのどうでもいい。唯香の生パンを探し、その興奮で出してしまった。(唯香の着替えにたっぷり)そして、リコーダーの口元や筆箱の中にも。プールに戻ろうとしたとき階段でなんと水着の唯香に会った。僕は無言で降りていくふりをし、唯香の後を尾行した。どうやら腹が痛いらしい、トイレに駆けていった。だがトイレならプール近くでいいはずだ。あやしくなり女子トイレに入り個室を覗いた。唯香は手マンオナニーをしていた。驚きあわてて隠れた。そして僕は水着を脱ぎでてきた唯香を壁に押しつけた。巨乳がつぶれてエロかった。強引に水着を脱がし、即行で向き合った状態でまんこに入れた。「ヤダ!やめて生理中なの」必死に抵抗したがまんこをかき回すと「あっあん」と微かに言った。そのまま中だしで精液を大量に入れた。最後に携帯で体や顔を撮影しそのまま去った。
それ以降唯香とよくセックスするようになった。きっと結構快感だったのだろう。エロい女だ。

【レイプ】全裸ゴーグル 【犯罪】

$
0
0

高校時代に水泳部に所属していた私は、毎年恒例の夏合宿に参加するため海近くの合宿所に3泊4日で泊まることになった。

水泳部といっても男子4人、女子3人の小さな部。

顧問の先生は夕方にみんなで食事をとると、自動車で隣町に買い物にでかけて就寝時間まで帰ってこなかった。

海が近くにあるのに昼間は練習で泳げない。このままだと一度も海に入らずにおわってしまう。そこで3人で相談して2日目に食事が終わって、顧問がいなくなった後、合宿所を抜け出した。みんなお尻を半分以上さらけだしているSpeedoの競泳水着にTシャツを羽織って、自転車で海へ向かった。男子にばれないように持ってきたのは、握りしめたスイミングタオルとゴーグルだけだ。

彩香と千夏と私の3人は前の日に目をつけていた誰もいない浜へ着くと、Tシャツを脱いで海に入って泳いだ。

プールと違って今なら男子の目を気にすることもない、競泳水着がお尻に食い込んだっておかまいなしに泳ぐのがこんなに気持ちいいものだとは思わなかった。

競泳水着を遊びで着るのはこれが始めてだった。

彩香は突然水着を脱ぎ始め、腰あたりまで脱いで上半身胸をさらけだした。

千夏もそれを見て脱ぎ始め、気持ちよさそうにはしゃいでいた。

彩香は更にエスカレートしてゴーグルと水着を全部脱いで全裸になり、丸めてビーチに放り投げた。

胸が小さく、下の毛が薄い私だけは恥ずかしくて水着を脱げなかった。
「彩香、誰か来たらやばいよ」と私が言うと
「気持ちいいよ、あんたたちも全部脱いだら?」と彩香は言った。

千夏が彩香と同じようにゴーグルと水着をビーチに向かって投げたが、届かなくて裸で岩の上に水着を乗せにいって、走って海に戻ってきた。

インカレで成績を残している彼女たちは身体が締まっていて、高校生とは思えない。

遊んでいるのに夢中になっていたら、いつのまにか自転車の置いてある浜辺の近くに男4人がいて、こっちを見ていた。
彩香はあわてて水につかり裸を隠したが、男の1人がこっちへ向かってきて
「一緒に花火をやらない?」と話しかけてきた。

私たちは断ったけど、強引に誘ってきた。
そうこうしていたら、1人が彩香の脱ぎ捨てた水着を見つけてしまった。
「おいっ!あの姉ちゃん達の誰か、いま裸だぞ」
「マジで?」「これ記念にもらって帰ろうか」
と水着を両手で引っ張っている。

彩香は慌てて
「やめて、触らないで」
「おっ、オマタのところが小便くさいぞ」
「そんなことない。だめえ」彩香は胸を隠しながら浜に近づいた。
「おい、ここにも水着があったぞ」

岩の上にあった千夏の水着だ。
「これは誰の?俺これ入るかな?」
男のひとりが千夏の水着に足を入れて股間までずり上げた。
「だめえ、やめてえ!」
千夏も叫んで胸を押さえながらビーチに近づいた。

私はパニックになって水着を持っていない二人の男が、水際で待ち伏せしていることを彩香と千夏に知らせることもできない。
二人は男たちに取られた水着に引き寄せられて、水際に近づいたところを、あとの2人に飛びかかられ捕まってしまった。

彩香は二人の男に捕まって、腰の深さぐらいのところで犯された。
「あああ〜 イク〜イク〜」彩香の声が聞こえてきた。

『彩香?まさか、あなた感じるの?』
彩香は男にしがみついて、自分から腰を振って喜んでいるように私には見えた。

男たちは浜にちかづくと彩香の腕を振りほどいて四つん這いにさせ、一人が水際で海に向かった座り、彩香の口にペニスを突っ込んだ。もう一人が海側からバックで彩香を犯している。私には信じられない光景だった。

千夏はどこからか男たちが持ってきた段ボールの上で抵抗を続けていた。
でも2人がかりで押さえつけられて強引に入れられた。

「いやっ、いやあ・・・抜いてえ」と懇願する千夏。
「気持ちよくしてやるから、おとなしくしろっ!」

上からのっかり首筋を舐めながら、ピストン運動で千夏を犯し始めた。
千夏の手首を押さえつけていた男が唇と乳房をなめまわす。
「ああっ ああっ」
男の動きにあわせて千夏の声が聞こえる。

二人の男にヤラレ続けた千夏は抵抗する力を失っていた。

「気持ちいい。水泳やっているだけあって締まりがいいわ、この女・・」
「中でいいか?」
「やめて・・お願い・・それだけは」

「水着脱いで泳ぐの好きなんだ、水着の食い込みに快感を感じるタイプじゃないの?」
千夏は横に首を振った。

「じゃあさあ。あんたセックスしたのいつ?」
「・・・」
「じゃあオナニーは?週何回?」
「・・・」
「答えてくれないんだったら、中にだしちゃおうか?」
「いやあ〜 お願い!!」
「じゃあ、初めて男とヤッたのいつか答えてよ」
「去年の6月」
「誰と?」
「水泳部の先輩。お願いもうやめて・・」
「へえ〜。やることやってんだ。どこで?家?部室?」
「止めてください・・」
「言えよ、やって気持ちよかったんだろ。このまま中にだしたら、子供できるぞ!!」

千夏は半分泣きながら
「部の倉庫です。」

そのまま彩香にも追及があり、彩香も同じ頃に後輩とヤッていた。

私は知らず、知らずに聞き耳をたてて、水際近くまで来ていた。
千夏は相手の名前まで言わされていて、私はそれを聞いてショックだった。
千夏とセックスした先輩は、今合宿所にいる。

水際で座り込んでいた小柄な私は、男たちに捕まり、砂が付くとセックスできないと、2人で持ち上げられたままで犯された。

「やめて」
という願いも男には届かない。
水着の中に手を入れられ胸を揉まれ、あそこを手でいじられた。そして競泳水着をずらされ、あそこを舐められて私は観念した。

抵抗をあきらめて横を向くと、初体験を告白させられた千夏がそのまま顔に出されていた。彩香が男の膝の上で手マンされ、喘いでいるのが見える。
「潮吹いたぞ」と男の声がした。

私も駅弁からバックへと持ち上げられたまま犯され、代わる代わる4人の男に何度もイかされてしまった。

3人とも存分に犯され、満足した男達は私の着ていた競泳水着を無理矢理脱がし、持っていってしまった。私たち3人にはゴーグルと小さなスイミングタオル、そして自転車が残された。

合宿所の部屋は2階でしたが男子の部屋は離れた所にあり、他の団体の移動日で私たち以外に宿泊している人がいなかったので助かった。

その時はレイプされたことより、裸で自転車に乗っているのを誰かに見つからないかということが心配だった。
3人とも暗い夜道にゴーグルをはめ、立漕ぎで合宿所の手前まで全力疾走だった。彩香の自転車のブレーキが音をたてた時は心臓が止まりそうだった。

無事に車にも人にも会わずに部屋に戻ると、お互いゴーグルをつけたまま顔を見合わせて大笑い。それからゴーグルをとって3人で抱き合って泣いた。
3人とも中出しされず、千夏の生理が遅れて心配したが、大丈夫だった。
あれから3人とも海では泳いでいない。

【寝取られ】遠距離恋愛している間彼女が喰われる話 3 【NTR】

$
0
0

21

「じゃあ果歩、バイト頑張ってね。」

「うん、じゃねぇ知子ちゃん。」

大学を終えた果歩は知子と別れて、アルバイト先のトミタスポーツへ向かった。

トミタスポーツの仕事にも慣れてきた今日この頃。

いや、慣れるというか、トミタスポーツでの仕事は今のところ受付だけで、高い時給のわりに楽な仕事。

高い時給はもちろん嬉しかった果歩だが、遣り甲斐(やりがい)という面では若干物足りなさを感じていた。

トミタスポーツの建物に着いた果歩はスタッフ用の入り口から中へ入る。

「おはようございま〜す」

次々と顔を合わせる男性スタッフにあいさつをしていく果歩。

ここのアルバイトを始める時は女性スタッフが少ないとは聞いていたが、仕事を始めてみると、マッサージ室に1人と、事務に1人、そしてアルバイトの果歩、女性はこの3人だけだった。

それに他の2人は毎日いるわけではなく、週一くらいしか出勤しなかったため、実質ここのスタッフで女性は果歩だけのようなものだった。

ここでの仕事服、トミタスポーツのロゴがはいっているTシャツとハーフパンツに着替えるため果歩は更衣室へ向かった。

「お〜い、果歩ちゃん!ちょっと待って!」

「え?」

遠くから駆け寄ってくる誰かに名前を呼ばれた果歩、後ろに振り返った。

「え、キャッ!!と、富田さん・・・」

駆け寄って来きたのは、ここのオーナーでもある富田だった。

果歩が悲鳴に似た声をあげたのは、富田の格好を見たからである。

プールで水泳のインストラクターをしていた富田は水着姿であった。

しかもその水着は男性用のビキニの水着のようだったが、普通のビキニタイプではなくて、いわゆるブーメランタイプと呼ばれる水着で、中学、高校時代に水泳の授業で男子が着ていた物よりもかなり際どい水着だ。

富田のその姿を一瞬見た果歩は目をそらして顔を赤くした。

「と、富田さん・・・あの・・・な、なんでしょうか?」

「ハハッ、おいおい果歩ちゃん何恥ずかしがってんの?ここじゃこんな格好普通だぜ?」

「は、はい、すみません……あの、それで?」

いぜん目線を富田の身体から逸らしたままの果歩。

「あぁ、果歩ちゃんさ、今日から受付の仕事じゃなくてプールの監視員の仕事してほしいんだけどね。」

「監視員、ですか?」

「そうそう、まぁ大して難しい仕事じゃないんだけどね。決められたルール守ってない人とかを笛を吹いて注意したり、誰か溺れたりしてないかチェックする係なんだけどさ。」

「そうなんですか……はい、わかりました。」

「そろそろ受付の仕事にも飽きてきてただろ?」

「エヘヘ、はい、ちょっと。」

果歩は悪戯っぽく笑顔をつくって言った。

確かに受付の仕事は飽きてきたと思っていた果歩、新しい仕事を与えてもらえたのは正直嬉しかった。

「よし、じゃあこれに着替えて。」

そう言って富田は手に持っていたビニール製の袋を果歩に渡した。

「あの……これは?」

「水着だよ。」

「えっ、水着になるんですか!?」

「そうだよ?プールでの仕事だから、もしかして水の中に入ってもらう事もあるかもしれないしね。」

「はぁ、そうですかぁ……でも……」

「さぁさぁ!着替えて着替えて。」

「……はい、分かりましたぁ……。」

笑顔で急かすようにそう言ってくる富田。

果歩は考える余地もなく水着の袋を持って更衣室に入っていった。

まさか今日自分が水着姿になるなんて予想もしていなかった。

・・・どうしよう・・・水着なんて・・・

・・・でもなんだか断りづらいし・・・はぁ・・・

ため息をしながら袋の中を見つめる果歩。

「果歩ちゃ〜ん!着替えたら仕事の説明するから早くしてねぇ!」

ドアの向こうから富田の声が聞こえる。

「は、は〜い!」

・・・んもう・・・しょうがないかぁ・・・

果歩は意を決して自分の着ている服に手を掛けた。

更衣室の前ではブーメランタイプの水着姿で富田がニヤニヤと不適な笑みを浮かべていた。

(果歩の水着姿かぁ・・・へへッ・・・どんな身体してんのか楽しみだぜ・・・それにしても・・・ありゃ押しに弱いタイプだなぁ・・・もうちょっと強引にいっても良さそうだな・・・)

ヤダ・・・ちょっと・・・この水着・・・私には小さいよぉ・・・

身に着けていた衣服をすべて脱いだ果歩はさっそく渡された水着を着てみた。

果歩は今まで夏にプールや海に行くような習慣はなかったので、水着になるのは高校時代の水泳の授業以来だ。

その当時着たのはスクール水着で、海やプールにも行かない果歩はスクール水着以外の水着はほとんど着た事がなかった。

そして今、富田に渡された水着、それは競泳用の水着だった。

こうした水着は水泳で鍛えている女性が着れば、イヤらしさなどほとんどないのかもしれないが、果歩のようなまったく水泳に縁がないような女の子が着ると妙にイヤらしく見えてしまう。

それにこの水着、果歩には少し小さいようだった。

身体が全体的にきつい感じがしたし、恥ずかしかったのは股の部分がハイレグタイプだった事だ。

結構角度が深い・・・果歩のアソコの毛は薄くて範囲も小さかったため、毛がはみ出してしまうようなことはなかったが、少しズレたら・・・と思うと少し怖い。

それにサイズが小さいためか、お尻の割れ目の部分に水着が少し食い込んでしまう。

更衣室にあった鏡で自分の水着姿を確認する果歩。

・・・あ〜・・・ダメ・・・ダメだよ・・・こんなの人に見せられないよ・・・

真っ白な身体に食い込む黒い水着、そんな自分の水着姿に果歩は顔を赤くする。

他のに・・・他の水着に変えてもらおう・・・こんなのダメだもん・・・

果歩はドアに近づき、外にいる富田に声をかけた。

「あのぉ・・・富田さ〜ん」

「ん?どうしたぁ?もう着替えた?」

「いえ…あの…この水着、私にはちょっと小さいみたいなんですけど・・・」

「え〜マジ?いやぁ女性スタッフ用の水着それしかないんだよねぇ。あ、でも大丈夫、上からTシャツ着ればいいからさ。な?それならいいだろ?」

「Tシャツですかぁ?ん〜・・・」

「大丈夫大丈夫、Tシャツ着ちゃえば水着姿なんてほとんど見えないんだから。」

「え〜でも…」

「ハハ、大丈夫だって、秋絵ちゃんもそうしてたから。ね?ほら、早くしないと時間ないし。」

「ん〜…わかりました…」

ガチャ・・・

それから少ししてから、更衣室から果歩が出てきた。

富田に言われた通り果歩は、渡された競泳用水着の上にTシャツだけを着た姿で現れた。

・・・はぁ・・・でもやっぱり恥ずかしいよぉ・・・

「さ!じゃあ行こうか。」

顔を赤くして恥ずかしがっていた果歩に対し、そんなことはまったく気にしていないかの様に富田はそっけなくそう言った。

「は、はい・・・」

Tシャツは着ているものの、ハイレグの股部分や、食い込んだお尻の部分がチラチラ見えてしまっている。

いっしょにプールへ向かう二人。

富田は果歩に気づかれない様に横目でそっと果歩の身体を見た。

(ハハ、こりゃおいしそうな身体してるぜ・・・)

果歩の真っ白な脚と、果歩が自分でTシャツを少し引っ張って隠そうとしている水着姿の下半身を、イヤらしい目線で見つめる富田。

(それにしても、あんな小さい水着、もしかしたら断固拒否されるかと思ったんだけどなぁ。ハハ、こりゃ先が楽しみだわ)

富田は心の奥から沸いてくるイヤらしい笑みを堪えることができなかった。

22

「じゃあ、そんな感じで頼むよ。まぁわからない事があったらいつでも聞いてもらっていいから。」

「は、はい。ありがとうございます。」

室内プールの脇で水着の上にTシャツ姿の果歩は、富田から監視員の仕事の内容の説明を受け終わったところだった。

・・・やだ・・・やっぱり恥ずかしい・・・

果歩がプールに入ってくるなり

「おぉ!果歩ちゃん今日は水着かよ、へぇ〜いいねぇ!」

「おわ〜、果歩ちゃん水着なの!?そのTシャツも脱いでみてよ。」

と、顔見知りの男性会員達にセクハラ紛いの声をかけられた。

今まで受付の仕事をやっていた果歩は、ここの男性会員達全員を知っている。

果歩の可愛さはこのジムに通っている男達の中では評判で、わざわざ通う曜日を果歩がいる曜日に変更する男が急増していたほどだった。

そんな短期間でトミタスポーツのマスコット的存在になっていた果歩の水着姿、男なら仕方ない事なのかもしれないが、その視線が果歩に集中している事に、さすがに鈍感な果歩でも気付いていた。

・・・もぅ・・・恥ずかしいよぉ・・・・

その大勢の男性の視線はおそらく果歩の下半身、Tシャツでは隠れないハイレグの股の部分、そして水着が少し食い込みぎみのお尻に集中しているであろう事にも果歩は気付いていた。

Tシャツを下に引っ張りながら少しでも下半身が隠れるようにと努力する果歩。

「ちょっとちょっと!男性の諸君、果歩ちゃんの方見過ぎです!セクハラになりますよ!さぁさぁ、自分のトレーニングに集中してください!」

富田が果歩の前に立って、男性達の視線を遮るようにして言った。

「じゃあさっき言った通り、頼むよ、果歩ちゃん。」

「は、はい。わかりました。」

富田の爽やかな笑顔で言ってきた言葉に果歩も笑顔で返事をした。

監視台の梯子(はしご)を登っていく果歩、その時下から冨田は果歩の下半身、お尻に食い込んだ水着を凝視していた。

(ハハッ!こりゃマジで美味そうだわ・・・あんま長いこと我慢できねぇな・・・ま、今日の果歩の様子じゃそんなに時間は掛からないかもしれねぇけどなぁ・・・。)

そんな富田のイヤらしい下からの視線にまったく気付いた様子のない果歩、一番上までたどり着くと、監視員用の椅子に腰を下ろした。

「よし、じゃあもし溺れてる人とか見つけたらその笛を大きく吹いてくれよ。」

「はい、わかりました。」

「じゃあ頼むわ。」

そう果歩に言って富田はインストラクターの仕事に戻っていった。

・・・はぁ・・・結構暇かも・・・

監視員の仕事は退屈だった。

もしかして受付の仕事より暇かもしれない。

一応プール全体を注意深く監視しているつもりだったが、それは最初の頃だけで、しだいに(どうせなにも起きないし)と心のどこかで思ってきてしまう果歩、集中力がなくなってきていた。

それにしてもなんだか未だに男性会員達の視線を感じる・・・。

椅子に座っているから食い込んだ水着などは見られていないと思うが、それでも果歩の椅子からぶら下っている白い脚などをチラチラ見られている気がする。

しかし、果歩はそういった視線には結構慣れていた。

というのは中学や高校時代の水泳の授業の時にも同じような視線は感じていたからだ。

最初は恥ずかしいし嫌だったが、もう果歩の中では男の人は仕方ないのかもしれないと割り切っていた。

もちろん水着姿を見られることは恥ずかしい事に変わりはなかったのだが・・・。

・・・ん〜・・・あ〜暇だなぁ・・・

しばらく監視の仕事を続けていた果歩だが、そのうちだんだんと、ある男性の方をチラチラ見るようになっていた。

その男性は・・・富田だった。

会員のお客に泳ぎ方の指導をしている富田。

・・・富田さんって・・・すごい逞しい身体してる・・・やっぱインストラクターだから毎日鍛えてるのかなぁ・・・

果歩が見ていたのは富田の鍛え上げられた身体だった。

なぜだろう・・・無意識のうちに富田の方に遠目から視線が行ってしまう。

それは果歩が昨日秋絵の部屋で見たDVDのあの男優の身体と、富田の身体を重ねて見てしまっていたからだった。

そう、あのDVDの女性と激しく交わっていた男の逞しい身体。

そして今朝見た夢の中で果歩と濃厚な性行為をしていた男の逞しい身体。

その体つきにそっくりな逞しい身体が今、果歩の視線の先、現実の世界に存在しているのだ。

黒く焼けた肌
厚い胸板
大きな背中
割れた腹筋
筋肉質な太い腕

そして・・・果歩の視線が止まってしまう場所・・・

富田の下半身・・・その中心部分・・・

一瞬、女性なら目を背けたくなるような水着を穿いている富田。

しかし果歩の目はしっかりとその下半身を見つめていた。

それは、もはや[チラ見]ではなかった。

ブーメランタイプの小さな水着、その中心部分の大きな膨らみに果歩の目は釘付けだった。

強引に収められているであろう富田のペニスはその膨らみから、相当な大きさのものであることは容易に想像できた。

果歩は自分の下腹部が熱くなってくるのを感じた。

昨日からずっと燻り続けていた小さな炎が今、視覚的刺激によって再び大きなものになり始めていたのだ。

大学では講義に集中したり、知子と話をしたりして忘れかけていたその感覚。

しかし、本当はずっと我慢していたのだ。昨日からずっと・・・

果歩は想像してしまう・・・。

逞しい身体に抱かれる自分を。

大きく股を開かされ、その中心に逞しい男根を挿入される自分を。

我慢し続けていたムラムラ感が、急激に果歩の身体の中で増大してきていた。

股間が、アソコがムズムズする・・・

Tシャツの裾をグッと握り締め、時折り太ももを擦り合わせるような仕草をする果歩。

あっ…

ジュワァっと熱い何かが股間の秘裂から溢れ出してきた事に気付いた果歩。

ハァ…ダメ…

ドク…ドク…ドク…

心臓の脈と同じリズムでイヤらしい粘液が生産され、秘裂から溢れ出てくる。

…ダメ…変なこと想像しちゃ…

本能的に見つめてしまっていた富田の身体から視線を外し、グッと目を瞑る。

必死に心を落ち着かせようとする果歩。

「お〜い果歩ちゃん。果歩ちゃん!」

「…えっ…?」

監視台の下の方から男の人の声。

富田の声だった。

「どうしたんだよ、目瞑って下向いちゃって。」

「え?あ…す、すみません!」

「ハハッ、おいおい、まさかお眠りしてたんじゃないだろうなぁ?」

「い、いえ、寝てはいなかったですけど…。」

「本当かぁ?ハハッ、まぁいいよ、それよりちょっと来てくれないか?水質検査の仕方教えるから。」

「え?は、はい、わかりました。」

さっきまで富田の身体を見ながら想像していたことを思うとなんだか気まずい。

富田との会話だけで自分の顔が赤くなっていることがわかる。

監視台の椅子から立ち上がろうとする果歩。

その時一瞬、嫌な感覚を股間に感じた。

ハっとした表情の果歩。

そっと握り締めていたTシャツの裾をめくって水着の股部分を確認してみる。

嫌な予感は当たっていた。

果歩の水着の股部分には、自身から溢れ出た湿った粘液によって染みができていたのだ。

プールに入っていない果歩の水着は、色が黒いとはいえ、乾いた部分と濡れた部分の色の違いは結構はっきりしていた。

うそ…やだ、どうしよう…

富田を下で待たせたまま、顔を赤くして泣きだしそうな表情の果歩は、監視台から降りることができなくなってしまっていた。

23

「ん?どうした?果歩ちゃん。」

「え?い、いえ、なんでもないです。」

そんなに大きな染みじゃないし、しっかり見られない限り気付かれないかな。

富田から呼ばれているのだ、この監視台から降りないわけにはいかない。

しかたなく椅子から腰を浮かせて、監視台の梯子(はしご)から降りていく果歩。

登っていく時同様、下にいる富田にお尻を向ける格好だ。

さっきと同じように富田はジロ〜っと目線を果歩の下半身に向けいる。

(ん?ハハっ、果歩のやつ、妙に俺の方チラチラ見てるなって思ったら。ハハッ、こりゃいいわ。)

富田はさっき監視台に登っていくときにはなかった染み、プールに入ってもいないのに濡れている果歩の股間の小さな染みを、富田は見逃さなかった。

その染みを見つけた時、富田はイヤらしい笑みを堪えることができなかった。

監視台から降りてきた果歩をイヤらしい笑みを浮かべながらジッと見つめる富田。

「あ、あのぉ?」

「ん?あぁごめんごめん。ハハッ、ちょっと果歩ちゃんの水着姿に見惚れちゃってたよ」

「えっ?」

その言葉を聞いて顔を赤くして恥ずかしがる果歩。

「いやぁ、うちのジムほとんど女性会員いないからさ。ごめんごめん、ついつい果歩ちゃん可愛いからさ。」

「は、恥ずかしいです…あんまり見ないでください…」

果歩はTシャツの裾を引っ張りながら水着の股部分を隠しながら恥ずかしそうに言った。

富田の見惚れちゃってたよ、という言葉、さっきから熱くなっていた果歩の身体は落ち着くどころか、そんな言葉をかけられただけでさらに身体は熱くなり、鼓動は速くなる。

「ハハっ果歩ちゃん、見ないでくださいって言ってもお互い様だろ?」

「え、お互い様ですか…?」

一瞬、富田が言ったことの意味が理解できなかった果歩。

「果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?」

「え?」

「さっき監視台からすっげぇ視線を感じたからよ、ダメじゃん、お客さんをちゃんと監視してなきゃ。」

顔を急激に真っ赤にする果歩。

「あ、あの…す、すみません…」

「ハハっ!いいのいいの!女の子だってそういう気分の時もあるよなぁ。ハハッ!」

「と、富田さん…」

まさかずっと富田の身体を見ていた事に気付かれてたなんて、果歩はどうしようもなく恥ずかしい思いだった。

「ハハッ!いいよいいよ、気にしないで、見られて減るもんじゃないから。」

「……。」

果歩の目はウルウルして今にも泣き出しそうな雰囲気だ。

「さぁ!水質検査の道具、置いてある場所教えるからついて来て。」

「ハ…ハイ…」

果歩は顔を赤くしたまま小さな声で返事をして富田の後についていった。

「え〜っと、ここだな。果歩ちゃん、ちょっとこっち来てみな。」

「は・・・はい・・・。」

果歩が富田に連れてこられたのは、いろいろな道具が置いてある小さな倉庫のような部屋だった。

狭い部屋の中に入った2人の距離は密着しそうなくらい近くなっていた。

「ここに、水質検査の道具が全部置いてあるから。」

「はい・・・。」

道具の場所を目で確認する果歩。

しかし、その目が一瞬、富田の股間にいってしまう。

間近で見る富田の逞しい身体・・・さっき富田から指摘されたにもかかわらず、反射的に富田の股間を見てしまう果歩。

富田の臍(へそ)のあたりから股間の方へ向かって生い茂る濃い毛並みは、どこからが陰毛なのかわからない。

そしてその下にあるブーメランタイプの水着の膨らみは、近くで見ると驚くほど大きく感じた。

果歩はほぼ無意識のうちに富田に気づかれないようチラっと一瞬見ただけだったが、富田はその一瞬の果歩の目の動きを見逃してはいなかった。

(ハハ、こりゃもう確実にいけるな)

自信に満ちた富田の表情。

富田の計画が成功することが、自信から確信に変わった瞬間だった。

検査道具を持ち出し、プールの側で検査道具の使い方を果歩に説明する富田。

「ほら、そんなに難しくないだろ?」

「は、はい・・・。」

「それじゃ次回から水質検査は果歩ちゃんの仕事な。」

「はい、わかりました。」

プールの側にしゃがんでいた2人だったが、富田が急に果歩の前に立ち上がった。

その時、ちょうど富田の股間が果歩の目の前にくる位置になってしまった。

「えっ?」

しゃがんだまま顔をあげた果歩は、顔の高さと同じ、目の前にあるビキニの膨らみに一瞬、目が釘付けになってしまう。

「果歩ちゃん?どうした?」

「え!?い、いえ!なんでもありません・・・。」

動揺した様子で果歩はその場に立ち上がった。

「さて、時間も時間だし、果歩ちゃんの今日のバイトは終了にしようか。」

「は、はい・・・ありがとうございました。」

そう言って、使った検査道具をさっきの部屋へ片付に行く二人。

「それにしてもいいよなぁ。」

ふと、富田が口を開いた。

「え?なにがですか?」

「果歩ちゃん、スタイルいいよなぁ?」

「え・・・」

急にそんな事を言われてまた顔を赤くする果歩。

「いや、冗談抜きで。友達とかによく言われない?」

「い、いえ・・・そんな・・・普段水着になることもないし・・・それに私スタイルなんて・・・よくないです・・・」

恥ずかしそうにそう答える果歩。

それは正直な答えだった、果歩は自分のスタイルが良いなんて思ったことはなかった。

「ハハッいやいや、肌も白いし、凄く良いと思うよ?それにこれだけ元が良いなら、トレーニングしたらもっといいスタイルになるぜ?」

「トレーニング・・・ですか?」

「あぁ、秋絵ちゃんもやってるトレーニングなんだけどね、俺が考えた特別メニューのトレーニング。」

「秋絵先輩もですか?」

「そう、果歩ちゃんもトレーニングすればもっと大人っぽいスタイルになれるよ。」

「そ、そうなんですか。」

大人っぽい・・・確かに秋絵は大人っぽかった。

同姓の果歩でも秋絵からは何か色気のようなものを感じる。

「まぁまた休みにでも時間あったら試してみてよ、果歩ちゃんなら特別に無料で教えるからさ。」

「はい、ありがとうございます。」

大人っぽいスタイルになるトレーニング・・・それがどんなものなのか、今の果歩には想像もつかなかった・・・。

24

「ふぅ・・・ただいまぁ・・・。」

誰もいない、1人暮らしをしているアパートの部屋に着いた果歩。

部屋の電気をつけて、そのついでにパソコンのスイッチも入れる。

トミタスポーツのアルバイトを終えた果歩は、寄り道せずにまっすぐアパートへ帰ってきた。

今夜、果歩はアレをする事に決めていた。

どうしてもアレをしたくてたまらない気持ちになってしまったのだ。

「ん〜・・・あれ?友哉からメールがきてない・・・どうしたのかなぁ・・・?」

いつものようにパソコンのメールをチェックした果歩。

友哉が留学してから今まで一日も欠かさず届いていたメールが今日は届いていなかった。

いや、よく考えると、昨日秋絵の部屋に泊まったため、昨日のメールもまだチェックしていなかったのだが、受信箱には昨日の分のメールも届いていなかった。

「忙しいのかな・・・友哉・・・」

いままでずっとメールは友哉の方から届いて、それに果歩が返事をするという形だったが、今日初めて、果歩の方からメールを送信してみる事にした。

【友哉元気〜?昨日は私、秋絵先輩の部屋でお泊りしてきちゃってメール送ってなかったんだけど・・・今日確認したら友哉からメールきてないよぉ・・・忙しいのかな?ちょっと心配だよぉ・・・返事待ってま〜す】

カタカタカタ・・・

「ふぅ・・・お風呂入ろっ・・・」

メールを送信した果歩はお風呂場に向かった。

ザーーーーー・・・・・!

湯煙でいっぱいになった浴室の中で、頭のシャンプーをシャワーで洗い流しながら果歩はある事を考えていた。

「・・・・・・・。」

それは、メールが来ていなかった友哉の事ではなく、別のことだった。

昨日から今日にかけて果歩が目にしてきた物をもう一度頭の中で想像していたのである。

秋絵の部屋で見たDVD、今朝見た淫らな夢、そして・・・富田。

今日、予期なく突然水着姿になる事になってしまった果歩。

何度顔を赤らめただろうか。

・・・はぁ・・・恥ずかしかったなぁ・・・

小さめの水着、男性会員達の視線、それに、富田の肉体に目を奪われてしまっていた自分自身。

富田の逞しい身体、あのブーメランタイプの小さなビキニの大きな膨らみ、想像しただけでなんだか体が熱くなってくる。

『果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?』

・・・富田さん・・・気付いてた・・・

今考えてみれば、もしかしたら、果歩が水着の股部分につくってしまっていた小さな染み、その事も富田には気付かれていたかもしれない。

・・・どうしよう・・・富田さんに変な風に思われちゃったかな・・・

そんな事を考えながらも自分の手をそっと股間にもっていく果歩。

ザーーーーー・・・!

温度が温め(ぬるめ)のシャワーを体にあてながら目を瞑り(つむり)、秘裂に指を沿わせる。

ヌル・・・・

シャワーのお湯とは明らかに違うネットリとした液体が果歩の指に纏わりつく。

アルバイトが終って、更衣室で水着を脱いだとき、水着の股部分にベットリついていた粘液と同じもの。

ハァ・・・ァ・・・・

固定してあったシャワーのノズルを外して、そのまま自分の秘部に持っていく果歩。

昼に一度帰ってきた時には中途半端に終ってしまっていたシャワーオナニー。

ザーーーー!

「ァ・・・ァ・・・・はぁ・・・・ん・・・・」

片手をタイルの壁につけ、脚を少し開いてシャワーから勢いよく出てくるお湯を股間に当てる。

「ァ・・・はゥ・・・あ・・・・あっ・・・」

昨日からずっと我慢してた、ずっと燻っていたムラムラ感をただ開放することだけに集中する。

あぁ・・・は・・・ダメ・・・立ってられない・・・

やがてシャワーによる快感で脚がガクガクして痺れるような感覚を覚えた果歩。

・・・はぁ・・・   

一旦シャワーを股間から外し、自慰行為を中断した。

・・・ガタ・・・

浴用のイスに真っ白なお尻をおいて腰掛け、そこで果歩は大胆に脚をM字に開脚させた。

そしてシャワーのノズルを再び開脚させた股の中心に持っていく。

果歩はゆっくりと目を閉じ、一息つくと、シャワーのお湯の勢いを先ほどよりも強くしてそこに当てた。

「あッ!ん〜〜!ぁ・・・あぁ・・・・ハン・・・ぁ・・・」

先ほどよりも強い刺激が果歩の体を襲い、思わず喘ぎ声をあげてしまう。

「ァ・・・ァ・・・はァ・・・ココ・・・ハァ・・・」

しばらく続けているうちに自分のより気持ち良い場所、性感帯を見つけ出し、シャワーのノズルの角度を調節する果歩。

一番敏感なクリト○スには強くあてすぎると痛みを感じるが、丁度良い具合にあてたり離したりを繰り返すと気持ち良いことがわかってきた。

しかし、果歩が一日中、いや昨日からずっと待ち望んでいたあの感覚、あの快感の絶頂の波はまだまだ遠くにあるままだ。

シャワーオナニーは気持ち良いが、それだけでは果歩が望むあの頂には辿り着けないと、果歩は悟ったのだ。

ヴィーーーーンヴィーーーーンブーーーーー!

グチャ・・・グチャ・・・グチャ・・・・グチャグチャ・・・・

細かい振動音と粘液質な湿った音が響く部屋、その薄暗い部屋のベッドの上で果歩は白い裸体をくねらせていた。

「あっ!ンぁ・・・ぁ・・・ハ・・・・・あぁ・・・ア・・・・ァ・・・」

自らの手で紫色のバイブレーターを激しく抜き差しする果歩。

グチャ・・グチャ・・グチャグチャ・・・・

そしてその動きを徐々に速めていく。

片手はバイブレーター、もう片方の手はDカップの真っ白な乳房を揉みしだき、指は器用にその先端の勃起したピンク色の乳首を刺激している。

「あ・・・ァ・・・ハァ・・・ァ・・・気持ち・・・イイ・・・あっ・・・ん・・・」

バイブオナニーに没頭する果歩。

果歩は目を瞑り、頭の中である事を想像しながら自慰行為を行っていた。

それは、愛しい彼氏と愛し合う場面・・・ではなく、ただただ淫らな妄想、快楽だけを求める妄想・・・・

果歩が頭の中で性交をしている相手は、果歩のアソコに肉棒を抜き差し、激しい濃厚なセックスをしている相手は・・・それは、富田だった。

恋人の友哉ではなく、富田の逞しい身体をオカズにしてオナニーに没頭する果歩。

「アッアッアッ・・・・アン・・・ぁ・・・ハァ・・・富田・・・さん・・・」

ついに果歩は上気した表情で富田の名前まで口ずさんでしまう。

もうあの大きな波が、快感の絶頂の波がすぐそこまで来ている。

ラストスパートをかける様にさらに手の動きを速くして、一気に絶頂に達しようとする果歩。

ヴィーーーーーン!!!

グチャグチャグチャグチャ・・・・!!!

「アッアッアッアッ・・・・ん〜・・・あッ!!イ・・・ん・・・んあぁぁぁ!」

その瞬間、果歩の頭は真っ白な光に包まれた。

ベッドの上で白い裸体が大きく反り返る。

「あっ・・・ンーーー!」

果歩は3、4秒仰け反ったあとバタッと脱力し、身体を縮こまらせてビクビクと絶頂の余韻に反応していた。

「ハ・・・ン・・・ぁ・・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」

ハァハァと、まるでマラソンを走り終わった後の様な息遣いをしている果歩。

果歩の股間付近は薄暗い部屋の中でテカテカと僅かな光を反射させている。

股間からお尻、太ももまでも自らの体液でベトベトに濡らしてしまっていた。

ベッドの上で裸のまま蹲る(うずくまる)果歩の目からは何故かツーっと涙がこぼれていた・・・。

25

「果歩ぉ・・・果歩?ちょっと、ねぇ果歩ぉ?」

「……え?」

いつものように大学の食堂で昼食をいっしょにとっていた果歩と知子。

毎度のようにくだらない事を知子が話し掛けるも、果歩は心ここに有らずといった様子だ。

「どうしたのよ?昼間からボ〜っとしちゃって。」

「う、ううん・・・別に、なんでもないよ・・・。」

「あっ!わかった!友哉君とケンカでもしたんでしょ?」

「え?ち・・・ちが・・・」

結局昨日は友哉からメールの返事はなかった。

しかし、果歩の気持ちが暗くなっていたのはそれだけが原因じゃなかった。

『アッアッアッ・・・・アン・・・ぁ・・・ハァ・・・富田・・・さん・・・』

昨日、たまりに溜まっていた自分の欲求を開放した時、頭の中で果歩は富田に抱かれていた。

そう、恋人の友哉ではなく、あのバイト先のオーナーである富田に。

自慰行為の後、ベッドの中でなんとも言えない罪悪感を感じ、涙を流した果歩。

頼りにしていた友哉がいなくなって、すぐにこんな風になってしまった自分の弱い心が嫌だった。

このタイミングで友哉からメールが来なくなったのも、そんな心に隙がある自分の責任ではないかと思ってしまうくらい果歩はマイナス思考になっていた。

「ふ〜ん、友哉君からメールが来なくなったかぁ。友哉君忙しいんじゃないの?」

「うん、たぶんそうだと思うんだけど・・・。」

「大丈夫よぉ、そんな心配しなくたって。あっそうだぁ!果歩、友哉君に電話してみたら?」

知子は明るい笑顔をつくってそう言った。

「電話かぁ・・・うん、そうしてみようかな。」

「きっと何かメールを送れない事情があったのよ。電話して声聞けば、すぐ安心よ。」

「うん、そうしてみる。ありがとう知子ちゃん。」

知子はいつも果歩をからかってばかりだが、肝心なときにはいつも真剣に相談にのってくれたり励ましたりしてくれる。

そんな優しい知子と友達になれて本当によかったと、果歩は心の底から思っていた。

その日、雑貨屋さんのアルバイトを終え、自宅アパートの部屋に帰宅した果歩。

部屋に入り、すぐにパソコンの前に行きスイッチをつけた。

もしかして帰ってパソコンをチェックすれば友哉からメールが届いていて、電話するまでもなく自分は安心を得られるのではないかと、果歩は心のどこかで期待していたのだ。

メール返せなくってごめん、という友哉からのメール。

パソコンが立ち上がるのを今か今かと、焦りにも似た気持ちで待つ果歩。

「……。」

無言の果歩、TOPページに新着メールの文字は出てこなかった。

念のため、メール受信ボックスも確認してみる。

カチッ…

マウスをクリックした音だけが部屋に響く。

「メール、きてないや……。」

ため息のような声だけを発した果歩。

小さいようで大きな期待を抱いていた事で、なんだかメールが来ていないのが余計にショックだった。

それと同時にさまざまな事が果歩の頭をよぎる。

友哉の身になにかあったんじゃ……。

しかし、正直なところ果歩の心配はそれだけじゃなかった。

昨日、頭の中でだけとはいえ、友哉以外の男性と交わってしまった事で、そのことが遠くにいる友哉に伝わってしまったのではないか。そんな事は普通はありえないのだが、どうしてもそんな風に思ってしまう果歩。

根拠もなにも無い事だが、とても悪い予感がしたのだ。

しかし、メールは来ていないから事の確認をするには電話をするしかない。

ベッドの上に座り、開いた携帯電話をじっと見つめる果歩。

友哉が無事であってほしいという気持ちが半分、そして果歩自身の罪悪感からきている不安から開放されたいという気持ちが半分。

とにかく、いつも通りの友哉の声を聞けば、いろんな意味での安心が得られるのだ。

そんな期待と不安を胸に、果歩は携帯電話のボタンを押し始めた。

番号を押し終え、携帯電話を耳にあてる果歩。

プル・・・プルルルル・・・・プルルルル・・・・・

ドキドキ・・・

なにか受験発表の時のような、息の詰まるような思いだった。

(大丈夫。きっと知子ちゃんの言ってた通りになるよ)

そう自分に言い聞かせながら友哉が電話に出るのをジッと待つ果歩。

早く友哉のあの声が聞きたい。

プルルルル・・・・プルルルル・・・・

しかし、友哉はなかなか電話にでなかった。

オーストラリアと日本はそんなに時差は無いはずだから、非常識な時間でもないはずだが。

(友哉、でないなぁ。もしかして寝ちゃったのかなぁ)

もちろんその可能性も十分あった。

(でない・・・明日、もう一回掛けてみようかな)

が、果歩がそう思って、電話を切ろうとした時だった。

プルルルル・・・・プル・・・ガザガザ・・・

突然コールする音が消え、電話が繋がったような音がした。

「あ・・・・もしもし?友哉・・・?」

『……。』

「あれ?もしもし・・・友・・・」

『もしも〜し!』

「え?」

やっと聞こえた声、それは日本語を話す女性の声だった。

『もしもしぃ?どちら様ですかぁ?』

一瞬頭がパニックになる果歩。

あ、あれ、もしかして、番号間違えたのかな・・・

「あ、あの・・・友哉の携帯・・・」

『あ〜そうだよぉ、友哉の携帯だよぉ。あ、もしかしてあなた、日本の友哉の友達?』

やはりこれは友哉の携帯だった。

でも、どうして女の人が友哉の携帯にでるの?

「あ、あの・・・友哉は?」

「あ〜ごめんねぇ、今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるからさぁ、電話コール長かったからでちゃ・・・」

カチャ・・・

女性の言葉を最後まで聞かずに果歩は携帯電話を閉じた。

「……。」

バタっとベッドに倒れ天井を見つめる果歩。

友哉の声が聞きたかった……。

・・・どうして・・・?

「友哉・・・・・。」

なんとも言えない思いが胸の奥から込み上がってきて、大粒の涙が溢れてくる。

シーンと静まりかえった部屋の中で果歩のすすり泣く声だけが響いていた。

【寝取られ】遠距離恋愛している間彼女が喰われる話 4 【NTR】

$
0
0

26

「はぁ・・・・。」

ため息をつきながら自分の部屋でアルバイトに行くための準備をする果歩、鏡のまえで身なりを整える。

鏡に映る自分の顔は前より少しだけ痩せて見えた。

この2日間まともな食事を摂れなかったのだ。摂れなかったというより、ごはんが喉を通らなかったというべきか。

あれから2日間、果歩は大学とアルバイトを休んでいた。

友哉の携帯に電話したあの夜は、涙が枯れてしまうほど泣き続けた。

次の日、大学に行く時間になっても、体と心が重く感じてとても行く気にはなれなかった。

知子は心配して電話を掛けてきてくれた、果歩が涙声で『大丈夫だから』とだけ伝えると『大丈夫じゃないでしょ』と言って、その後果歩のアパートまでケーキを買って持ってきてくれた。

その時の知子はとても優しくて、一生懸命果歩を励ましてくれた。

そして土曜日の今日、知子の励ましのおかげで少し元気を取り戻した果歩はトミタスポーツのアルバイトに行く事にしたのだ。

しっかりしなきゃと自分に言い聞かせる果歩、それに、アルバイト先にもこれ以上迷惑をかけられない。

だけど・・・

あれから3日、友哉からは折り返しの電話どころか、メールの返事もない。

『今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるからさぁ』

あの時の女性の声、言葉が、思い出したくもないのに頭の中で何回も再生される。

浮気・・・

あの友哉が浮気なんて・・・

そう思うだけで、すぐ眼に涙が溜まってしまう。

グッと目を瞑り、その事を頭から必死に消そうとする果歩。

「もう、バイト行かないと……。」

溢れそうな涙をグッと堪えて、果歩は自宅アパートを出た。

「おぉ!果歩ちゃん!体調大丈夫かぁ?」

トミタスポーツに着いた果歩、スタッフルームの入り口付近で、ここのスタッフで面接の時も同席していた山井に声を掛けられた。

「はい、もう大丈夫です。ご迷惑かけてすみませんでした。」

体調を聞かれたのは、アルバイトを急に休んだ理由を風邪をひいたという事にしておいたためだ。

「そっかぁ、じゃもう普通にバイトの仕事今まで通りできるんだね?」

「はい、大丈夫です、もう完璧に治りましたから。」

「じゃあ、今日はプールの監視員の仕事頼んでいいかな?仕事内容は確かこのまえ富田さんに教えてもらったよね?」

「監視員・・・ですか。」

「うん、まぁほとんど座ってるだけだし、できるよね?」

「は、はい・・・わかりました。」

確かに監視員の仕事は楽すぎるほど楽だ、しかし果歩は気が進まなかった。

「はぁ、またこれ着ないといけないんだぁ・・・。」

更衣室のロッカーの前で、ため息をする果歩。

手に持っているのは、先日も身に着けた果歩の体には少しサイズが小さめの競泳用水着だ。

先日の事を思い出す果歩、自分の身体に向けられる男性会員たちからの視線、そして富田。

富田の身体を見て、淫らな想像をして水着に染みをつくってしまった自分自身のことを思い出す。

しかし、仕事を引き受けた以上、この水着を着ないわけにはいかない。

そう小さな覚悟を決め、果歩は身に着けている衣服を脱いでいった。

・・・やっぱり・・・

室内プールに出てきた果歩は、案の定、複数の男性会員達からの視線感じた。

嫌悪感ではない、しかし、とても恥ずかしかったのだ。

上はTシャツを着ているものの、下半身のハイレグ部分と、水着が小さいために若干食い込んでしまっているお尻の部分、男性会員達の視線は特にそこに集中している。

・・・やっぱこんなの恥ずかしいよぉ・・・

・・・早く監視台に座っちゃお・・・

監視台の椅子に座ってしまえば、下半身を見られることはほとんどない。

果歩は少し小走りぎみで監視台に向かった。

「あれ、果歩ちゃん?」

監視台に向かっていた途中、後ろから名前を呼ばれて果歩は振り返った。

「あ、秋絵先輩?」

そこにいたのは、秋絵だった。しかも秋絵は水着姿、水着は果歩の水着と同様の競泳水着のようだった。

「フフ、果歩ちゃん今日は監視員の係?」

「は、はい。」

果歩は秋絵の水着姿に見とれてしまっていた。

・・・すごい・・・秋絵先輩モデルみたい・・・それに・・・

それに秋絵のプロポーションからは、女の果歩でもドキっとしてしまうような、何か成熟した大人の女性の雰囲気のようなものを感じた。

「果歩ちゃん大丈夫?実は知子ちゃんに食堂で会ったからちょっと聞いちゃったんだけど、果歩ちゃん、友哉君との事で悩んでて休んでるって。」

秋絵は心配そうな表情で果歩を見ながら言った。

「え、知子ちゃんが?・・・はい・・・あの・・・ちょっと・・・」

その事を聞かれ、果歩の顔が少し曇る。

なんだか、こんな場所でも、友哉の事を少しでも思い出すだけで泣きそうになってしまう。

「そっかぁ、私でよかったらいつでも相談のるからね、遠慮なく言ってね。」

「は、はい。ありがとうございます。」

秋絵からそんな風に声を掛けてもらえたのは正直うれしかった。

知子にも励ましてもらったが、自分の中に何か詰まったような思いを、果歩は誰かに吐き出したかったのかもしれない。

尊敬し、憧れている秋絵になら、その詰まったものをすべて曝け出す事ができるような気がした。

そして秋絵なら、そのすべてを受け止めて、いい答えを導きだしてくれる様な気もしたのだ。

「なになに?果歩ちゃん恋の悩みかい?」

「え!?」

突然聞こえた後ろからの男性の声。

いつの間にかすぐ後ろに来ていたその男性の声に聞き覚えのある果歩は少しビックリして後ろに振り向いた。

「な〜んだ、じゃあ果歩ちゃん休んでたのは風邪じゃなかったのかぁ」

その声の主は先日同様、ビキニパンツの水着姿の富田だった。

27

「あ・・・すみません・・・あの・・・」

「ハハッ!いいのいいの!果歩ちゃんくらいの年頃は恋の悩みは多いもんだしねぇ。」

バイトの欠勤の理由が嘘だった事を正直に謝る果歩に対し、富田はそんな事は気にしてないよ、といった感じの反応を見せた。

「そうかぁ、そういえば果歩ちゃん、彼氏と遠距離恋愛中だったもんなぁ。」

「は、はい・・・」

果歩は一瞬富田の方を見たがすぐに目線を外して下に俯いてしまった。

プールからあがったばかりの、水の滴る富田の逞しい肉体を果歩は直視できない。

チラッと富田の身体を見ただけで、先日の自分の自慰行為を思い出してしまう・・・。

あの時、果歩は自分が富田に抱かれているシーンを想像して行為に及んだのだ。

そう、今目の前にいる富田の身体をオカズにしてオナニーをした。

あの夜の事を思い出すと、恥ずかしくて富田とまともに会話できそうにない。

下を向き顔を赤らめている果歩。

富田はそんな果歩の身体を上から下までジロ〜っとイヤらしい細めた目で見つめる。

そして富田は秋絵の方を見ると、なにか目で合図を送った。

秋絵も富田のその合図に小さく頷く。

「ねぇ果歩ちゃん、今日バイト終ったらちょっと飲みにでも行かない?明日は学校もバイトもお休みでしょ?」

「飲みに、ですか・・・?」

「そうそう!こういう時はパァっと楽しくお酒を飲んで、ストレス発散した方がいいわ。ですよね?富田さん。」

秋絵は明るい表情でそう言い、富田のほうを見た。

「ハハッ!そうだよぉ!よし!今日は俺が奢る(おごる)よ!」

明るく振舞う富田と秋絵、果歩は自分を元気付けようとふたりが誘ってくれているのだと感じた。

「でもそんな・・・なんか申し訳ないです。」

しかし果歩は正直そんな気分ではなかった、今日はバイトが終れば自分の部屋でまた一人で泣きたい気分だったのだ。

泣けば少しは気分がスッキリする。

嫌な事を忘れるためのお酒なんて、果歩は今まで経験したことがなかったため、なんだか気が進まなかったし、それで気分が晴れるなんて思えなかった。

「フフ、大丈夫よ、富田さんお金だけはたくさん持ってるから。」

「おいおい!お金だけってなんだよぉ!ハハッまぁ2人を奢るくらいの金は財布にあるけどなぁ。」

秋絵の言葉に対し富田は笑いながらそう言った。

「フフ、ね?果歩ちゃん、富田さんもそう言ってるし、どうかな?」

もうこうなってしまっては断るわけにはいかない。

「ホントに、いいんですか?」

「もちろん!」

富田が景気良くそう答える。

「じゃあ今日はいつもより早めに仕事あがって飲みに行くかぁ!」

「え、でもお仕事は・・・。」

早めにあがると言っても、他のスタッフの方に迷惑が掛かるのではないかと、果歩は心配そうな表情だ。

「いいのいいの!オーナーの特権特権!ハハッ仕事は他の奴に任せればいいから!」

「富田さんホント仕事いいかげんですよねぇ。」

「いいんだよ!じゃあ、果歩ちゃん、いつもより一時間早くあがっていいから、着替えたら、スタッフルームで待ってろよな?」

「はい。」

・・・飲み会かぁ・・・

監視台の椅子に座る果歩、今日もこの仕事は相変わらず退屈だ。

ボ〜っとプールを眺める。

そんな退屈すぎる時間、時計の針の動きが遅く感じる。

そんな時間を過ごすうちに、いつしか水色のプールを眺めていた果歩の視線は、お客さんに泳ぎ方を指導している富田に向いていた。

『果歩ちゃんもずっと俺の身体見てたんだろ?』

ハっとして果歩は慌てて富田を見ていた視線を外した。

先日富田から言われた言葉を思い出したからだ。

どうしてだろう・・・無意識のうちに富田を見つめてしまっていた。

・・・今は友哉の事で頭がいっぱいなはずなのに・・・

恋・・・じゃない・・・

富田に対する果歩の思い。

それが単に性の対象として富田を見てしまっているという事に、自分で果歩はしっかりとした自覚はなくても、心のどこかでわかっていたのかもしれない。

友哉の事で心が疲れきってしまっているというのに・・・

そんな自分の気持ちに、先日の自慰行為の後と同じような罪悪感を感じる果歩。

富田さんは悪い人じゃない、というか富田さんはいい人だもの・・・

でも、富田を見て、変な気持ちになっている自分が、まるで心の中で浮気をしてしまっているようで、自分で自分を許せなかった。

・・・でも・・・友哉は・・・友哉だって・・・

その日、富田と秋絵が提案してくれた飲み会、メンバーは富田と秋絵と果歩、そしてスタッフの中で特に富田と親しい山井の4人だった。

富田は居酒屋の個室を予約していてくれた。

その居酒屋は料理の値段はそこそこするようだったが、味は申し分なく美味しかった。

そんな美味しい料理だから、自然とみんなお酒も進む。

富田 「さぁさぁ!今日は果歩ちゃんを励ます会なんだから、果歩ちゃん、さぁ飲んで飲んで!」

果歩 「あ・・・はい、ありがとうございます。」

秋絵 「富田さんあんまり果歩ちゃんに飲ませすぎちゃダメですよ。」

山井 「まぁまぁ、いいじゃん、俺果歩ちゃんが酔いつぶれるところ見てみたいし。」

果歩 「そ、そんな・・・だめですよ・・・」

富田主催のこの飲み会、果歩にとっては意外と楽しいものになっていた。

富田と山井の話は面白いものだったし、秋絵が少し暴走気味の2人のブレーキ役になってくれている。

暗く落ち込んでいた果歩の心が、少しずつ晴れていくようだった。

友哉の事も、今は思い出すこともない。

果歩も楽しい気分でお酒が進む。これがアルコールの効果なのか、飲めば飲むほど楽しく感じる。

富田のススメもあり、果歩は今まで経験した事が無い程の速いペースでお酒を口にしていた。

コースで出されていた料理もすべて食べ終り、デザートを口にしていた4人。

腕時計を見た富田が口を開いた。

富田 「さて、そろそろ次!二次会行こうか!」

果歩 「え・・・二次会ですか?」

山井 「そうそう、トミタスポーツの飲み会の二次会はいつも富田さんの部屋でって決まってるんスよね?」

富田 「ハハッそうだよ、俺の部屋なら酒もいっぱいあるしなぁ。」

果歩 「富田さんの部屋・・・ですか・・・?」

秋絵 「果歩ちゃん、私も行くから、二次会も富田さんの部屋でどう?」

果歩 「ん〜っと・・・どうしようかな・・・」

秋絵 「明日は休みだし、今日はパァっとやりましょ?ね?」

山井 「そうそう!今日はなんたって果歩ちゃんが主役なんだから。」

確かに明日は休みだし、今はとても楽しい時間を過ごせている。

果歩はもう少しこの時間を味わいたいと感じていた。

果歩 「それじゃ・・・はい・・・いいですか?」

富田 「よ〜し!果歩ちゃんからOK出たし、おい山井!タクシー呼べ!」

山井 「了解しましたぁ!」

威勢がいい男ふたり、その顔はニヤっとなんともイヤらしい表情をしていた。

この後の事を考えると2人は笑いを堪えることができなかったのだ・・・。

28

富田 「まぁ、適当なところに座ってくれよな。酒とつまみ持ってくるわ。」

盛り上がった居酒屋での飲み会の後、二次会として4人が向かったのは富田のマンションの部屋だった。

果歩 「わぁ〜広い部屋ですねぇ!」

富田が住んでいるマンションは、まさに高級マンションと言っていい。

先日果歩が訪れた秋絵のマンション、その部屋も高級感があり広々としていたが、富田のマンションはそこ以上に豪勢で広い部屋だった。

山井 「うらやましいよなぁ。こんな所に住めるなんて。」

果歩 「本当ですね。」

果歩は大きなソファに腰を下ろし、キョロキョロと辺りを見渡している。

部屋が広いだけじゃなく、置いてある家具も高級そうなものばかりだ。

富田 「ハハッ!でもまぁ、これはこれで、掃除とか大変なんだぜ。」

秋絵 「フフ・・・富田さんホントに自分で掃除してます?この前はお手伝いさんに頼んでるって言ってませんでした?」

富田 「ハハッ!まいったなぁ、秋絵ちゃん余計な事言わんでくれよぉ!」

やはりトミタグループの社長の息子であり、トミタスポーツのオーナーでもあるのだから経済的に恵まれているのは当然だった。

こんな遊び呆けているような人間が、このような恵まれた生活を送っていることに苛立ちを感じる人も多いはず。

しかしそんな富田の事を、お人好しの果歩は特に嫉んだりする事はなかった。

むしろ果歩の目には、富田はトミタスポーツのオーナーとして立派に働いているように見えていたため、尊敬のような気持ちさえあった。

最初の居酒屋に続き、二次会も富田が用意してくれたおいしいお酒とつまみ、それに富田と山井の面白いトークで盛り上がっていた。

果歩も辛いことがあった反動なのか、これまで飲んだことがないくらいお酒も進み、頬をピンクに染め、富田と山井の話を聞きながら笑っていた。

・・・やっぱり参加してよかった・・・秋絵先輩も富田さんもこうやって元気づけてくれて・・・やさしいなぁ・・・

果歩は心の中で富田や秋絵に感謝した。

今日は帰っても部屋でひとりで泣くだけだったはずが、今はこんなにも楽しい気分でいられるのだから。

今この時間だけは嫌なことも忘れられる。

4人とも大分お酒を飲み終えて、盛り上がっていた時間から少し落ち着いて、みんなソファに座りゆったりとした時間になった時、富田がふいに口を開いた。

富田 「それにしても、大変だよなぁ果歩ちゃんも、遠距離恋愛ってのは。」

果歩 「え・・・あ・・・はい・・・。」

突然富田にそんな事を言われ、友哉の事を思い出してしまい果歩の顔が少し沈む。

秋絵 「富田さん、そんな事言ったら果歩ちゃん嫌な事思い出しちゃうじゃないですかぁ。」

富田 「あ・・・あはは・・・あ〜ごめんごめん!そんなつもりじゃなかったんだけど。」

富田はばつの悪そうな顔で慌てて謝った。

果歩 「い、いいんです・・・別にそんなお気遣いして頂かなくても・・・。」

秋絵 「フフ・・・あ、そうだぁ果歩ちゃん。彼との事、富田さんと山井さんにも相談してみたら?一応私達より恋愛の経験値はあるだろうし。」

山井 「ハハッ!一応じゃなくて、ありまっせ〜経験値、特に富田さんは。そうっスよね?」

富田 「おうおう!果歩ちゃん、俺達でよかったら相談にのるぜ?恋愛相談なら馴れたもんだからさ。」

果歩 「で、でも・・・そんな・・・」

そんな事を言われても、富田達に言ったところで状況が変わるとは思えなかったし、せっかく楽しい飲み会を暗い雰囲気にしてしまうのではと、果歩は思った。

秋絵 「ねぇ果歩ちゃん、今日は果歩ちゃんを励ます会でもあるんだし、ここで思っていること全部言っちゃえばきっと気分も楽になるわよ、ね?富田さん達がしっかり受け止めてくれるわ。そうですよね?富田さん?」

「そうそう!誰にも言わずに悩みを溜め込んじゃうのはよくないぜ?」

確かにそうかもしれない・・・ここで胸に詰まった苦しい思いを吐き出してしまえば少しは楽になれるかもしれない・・・

アルコールが回っていたせいもあるかもしれないが、果歩は誰かに今の自分の状況を擁護してもらいという気持ちになっていた。

こんなかわいそうな自分を慰めてほしいという弱い心に。

富田 「そうかぁ、彼氏の電話に女がねぇ……。」

山井 「いやぁマジこんな可愛い彼女がいるのに浮気とかありえないっスねぇその彼氏。」

秋絵 「私が知っている限り、友哉君はそんな事するような子には思えないだけどねぇ。すごいマジメな子よね?友哉君って。」

果歩 「はい・・・私もそう思ってたんですけど・・・。」

友哉はそんな人じゃない・・・あの優しくてまじめな友哉がそんな事するはずがなかった・・・

そんな事するはず・・・

しかし、あの電話に出た女性・・・・あの言葉は・・・

『今友哉ちょっとシャワー浴びにいってるから・・・』

山井 「甘い!甘いなぁ〜果歩ちゃんと秋絵ちゃんは、男なんてそんな美しい生き物じゃないんだぜ?」

富田 「ハハッ、まぁなぁ。」

山井の言葉に富田はごもっともといった感じで頷いている。

山井 「どんだけ真面目そうな男でも溜まるもんは溜まるしねぇ。」

果歩 「え・・・たまる・・・?」

富田 「ハハッ果歩ちゃん、果歩ちゃんだって男がある事をしないと溜まってちゃうモノがある事くらい知ってるだろ?」

果歩 「え・・・そ、それは・・・。」

もちろん、果歩もそれが何なのかは理解できたが、恋愛相談のはずが突然の下の話に、果歩は顔を赤らめる事しかできなかった。

29

秋絵 「フフ、2人ともなんで急に下ネタなんですか?これは恋愛相談ですよ?」

言葉に詰まって困っていた果歩を見て、秋絵は男ふたりに言った。

富田 「ハハッ果歩ちゃん、恋愛の話と性の話は深く結びついてるんだよ?」

果歩 「・・・そう・・・なんですか・・・?」

果歩は富田の言っている意味がよくわからなかったのか、首を傾げている。

山井 「まぁさ、果歩ちゃん、男はあれが溜まってムラムラしているところに、セクシーな女とかが近づいてきたら、だいたいヤっちゃう可能性が高いんだよねぇ。」

富田 「残念ながら遠距離とかで彼女に会えない奴なんてとくにね。」

果歩 「そ・・・そんなぁ・・・。」

・・・そうなの?・・・男の人ってみんなそうなの・・・?

アルコールのせいで涙脆く(なみだもろく)なっていたのか、果歩は男ふたりの言葉を聞いて目に涙を浮かべていた。

富田 「まぁ果歩ちゃんさ、果歩ちゃんはまだ若いんだし、何事も経験さ。今回の彼氏の事は残念だったけどさ。」

果歩 「・・・・・・・。」

富田 「女の子はいっぱい恋をしたり、いろんな経験して魅力的な大人の女になっていく訳だし。今回のことも、その一部だと思ったほうがいいよ、な?」

秋絵 「そうよ果歩ちゃん、恋も他のいろんな事もたくさん経験した方がいいわ。いい大人の女性になって、友哉君を見返すくらいにならないと。だから今回の事も、いい経験だと思ったほうがいいわ。」

果歩 「・・・でも・・・私は・・・友哉の事が・・・。」

友哉の事をそう簡単に忘れられることなど、今の果歩にはまだできるはずもなかった。

秋絵 「まだ無理して友哉君の事を忘れようとしなくていいの、時間を掛けてゆっくりでいいのよ、ゆっくり・・・。」

果歩 「・・・ハイ・・・。」

果歩は消え入りそうな小さい声で、悲しそうに返事をした。

山井 「そうそう!浮気してた彼氏の事なんてはやく忘れて、新しい幸せを見つけたほうがいいっしょ!」

新しい幸せと言われてもピンと来なかった。

これは果歩にとって初めての失恋だったからかもしれない。

失恋の後の対処法を何も知らないのだ。

・・・新しい恋人を見つけるって事・・・?

・・・でも今はとてもそんな気分じゃ・・・

富田 「まぁとりあえず今日はさ、果歩ちゃんが早く彼氏の事を忘れる事ができるように俺達が協力するからさ。ささっ飲んで飲んで。」

そう言いながら富田は果歩の隣に座ると、果歩が使っていたグラスに新たにお酒を注いだ。

果歩 「あっ、富田さん、もう私は・・・。」

もう結構飲んだ後だ。

今日の果歩はすでに今までにないくらいアルコールを摂取してしまっていた。

これ以上飲むのは少し怖い気がする・・・

富田 「いいじゃんいいじゃん、たまには、この酒うまいんだぜ?」

果歩 「じゃあ・・・後一杯だけ・・・。」

断れない性格の果歩、これだけ進められたら、あと一杯くらいは飲まない訳にはいかない。

ゴク・・・ゴク・・・

富田 「お〜いいねぇ!いい飲みっぷりだねぇ!」

グラスを口に運び、半分ヤケになった様に一気に入れられたお酒を飲み干す果歩。

もう今夜は・・・今夜だけは、ここにいる先輩達に甘えてもいいかも・・・と果歩は思い始めていた。

・・・はぁ・・・熱い・・・なんだか体が熱くなってきた・・・

どうやら富田がさっき注いだお酒はアルコール度数がかなり高めのお酒だったらしい。

ちょっとだけ覚めかけていたアルコールが再び効き始め、頬がさらにピンクになっていく果歩。

秋絵 「フフ、でもねぇ果歩ちゃん、女の子にはまだ果歩ちゃんが知らないような幸せがいっぱいあるのよ。」

富田とは反対側の果歩の隣に座った秋絵がポ〜っとアルコールが回ってきている果歩に話しかけた。

果歩 「・・・私がまだ知らない幸せ・・・・ですか・・・?」

ボ〜っとする頭で考えてみても秋絵の言っている意味がよくわからなかった果歩。

その時、秋絵は何やら怪しい笑みを浮かべて、果歩に気付かれないようにして山井に目で合図を送った。

山井はその合図を確認すると、ニヤっと笑い口を開いた。

山井 「そういや、彼氏の事は置いておいても、果歩ちゃんは大丈夫なの?」

果歩 「え?・・・大丈夫って何がですか?」

富田 「ハハッ、そうだよなぁ、果歩ちゃんも女の子とはいえ、年頃だもんなぁ。」

富田と山井がニヤニヤと笑みを浮かべているが、果歩はその意図する事が何なのかサッパリわからない。

山井 「果歩ちゃんもさ、彼氏と遠距離ってことは、いろいろと溜まってんじゃないのぉ?」

果歩 「えっ……?」

富田 「ずっとしてないんじゃ、溜まってるんだろ?果歩ちゃんも。」

果歩 「え?え?・・・な、なに言い出すんですか2人とも・・・。」

男ふたりの質問の意味がわかった果歩は、カァっとピンク色だった顔色を赤色に変えて言った。

というか、こんな質問は普通、男性が女性に面と向かって言うことではないと思った。

秋絵 「フフ、ちょっと2人とも質問がストレートすぎますよ。」

困り果てる果歩をフォローするように秋絵が富田と山井に言った。

山井 「ハハッごめんごめん!でもさ、実際問題あるだろ?果歩ちゃんだってムラムラする事。」

果歩 「・・・そ・・・それは・・・。」

正直者で嘘をつけない性格の果歩は、そんな事ありませんとは言えずに言葉に詰まってしまう。

富田 「清純で可愛い果歩ちゃんも人間だもんなぁ、果歩ちゃんがそういう時どうやってムラムラを処理してんのか興味あるわぁ!」

果歩 「と・・・富田さん・・・・。」

あまりに直接的な富田の言葉にもう恥ずかしくてしかたない様子の果歩。

いや恥ずかしいと言うより、もうこれはセクハラのようなものだ。

しかしここで、今まで男ふたりの下ネタから果歩を守ってくれていた秋絵が信じられない言葉を口にする。

秋絵 「フフ、果歩ちゃんは……果歩ちゃんはムラムラしたらバイブオナニーで処理してるんだよねぇ?」

30

果歩 「あっ秋絵先輩!!?」

果歩は自分の耳を疑った。

秋絵が今言った事、あの事は心を許した女の子同士の秘密だったはず。

秘密だったはずというか、常識的に暗黙の了解で秘密のはず。

山井 「うっわ〜マジ!?果歩ちゃんバイブ使ってんの!?」

富田 「ハハッていうか、果歩ちゃんがオナっちゃてるって事実だけでなんかすごいな。」

果歩 「え?あ…あの……。」

もう恥ずかしいどころではない。

それにアルコールで意識ボーっとしているのもあり、思考もうまく回らない。

パニック状態の果歩は富田と山井に何を言われても返す言葉が見つからなかった。

秋絵 「これだけ可愛い果歩ちゃんも人の子だものね、いいのよ果歩ちゃん、それぐらいの事は女の子でもほとんどの子はしてるわ。」

果歩 「秋絵先輩……でも、どうして・・・?」

・・・どうして富田さんと山井さんの前でそんな事・・・

秋絵 「フフ・・・ごめんね、果歩ちゃん。でもね、果歩ちゃんが大人の女性に一歩近づくにはこういう勉強も必要なのよ?」

果歩 「・・・秋絵先輩・・・よく言ってる意味が・・・勉強って・・・?」

秋絵 「だからね、女の子だってエッチな勉強は少しはしないとね。男の子が逃げてっちゃうのよ。」

果歩 「・・・でも・・・私は・・・。」

秋絵 「友哉君がなぜ浮気しちゃったのかはわからないけど、これからのために果歩ちゃんはもう少し知識と経験を増やしておいた方がいいと思うわよ?」

果歩 「そんな事・・・言われても・・・。」

確かに同年代の周りの子と比べれば果歩はそういった事の知識も経験も少なかった。

・・・でも・・・だからって・・・私がそんなだから友哉は他の女の子と?・・・そんな・・・・

秋絵 「幸いここにいるお二人さんは、知識も経験も豊富だしね。」

富田 「よ〜し果歩ちゃん!俺達で良かったらいくらでも協力するぜ?なぁ山井?」

山井 「もちろんっスよ!果歩ちゃんのためなら何でもするって。」

そう言って果歩に詰め寄ってくる男ふたり。

果歩 「えっ!?…ちょ、ちょっと!待ってください!」

果歩は反射的に逃げるようにソファの背もたれの方に身体を引いた。

話が想像もしてなかったあらぬ方向へ進み始めて、果歩の頭の中はさらにパニック状態になっていた。

果歩 「あの…なんか、話が変な方向にいってません?」

秋絵 「フフ、果歩ちゃん、もしかして果歩ちゃんは友哉君と付き合っていてもこういった事は全部受身だったんじゃない?」

果歩 「…それは…。」

そう言われれば、友哉との交わり時はすべて友哉に任せて、友哉の言う通りにしていただけだった。

しかしそれは、果歩は知識も経験もなく、恥ずかしがり屋でもあったため仕方がなかった事かもしれない。

富田 「ハハッなるほどね、果歩ちゃんは彼氏にまったく自分の気持ちを解放していなかったって事だな?それじゃ彼氏さんがちょっと気の毒だなぁ。」

果歩 「…解放って言われても…。」

なんだかこれでは果歩が性に疎いせいで友哉が浮気したんだと言われているようだ。

山井 「男ってのは相手に気持ちよくなってもらってなんぼだからなぁ・・・果歩ちゃんが気持ちを解放してくれなかったら・・・彼氏の気持ちも盛り上がらないよなぁ。」

果歩 「そんな事言われても・・・。」

確かに友哉の前で果歩はそんなに乱れた姿を見せた事はない。

秋絵にもらったバイブレーターでのオナニー。
あの時のような興奮は友哉との性交で感じた事はない。

・・・でも、それって私が悪いの・・・?

友哉にまかせっきりだったから・・・?

秋絵 「フフ、果歩ちゃんは友哉君にフェラチオもしてあげた事ないんだよね?」

果歩 「・・・ハイ・・・。」

フェラチオ、男性器を口に含んだり舌で刺激したりする行為。

果歩は知識としては知っていても実際に友哉にしてあげた事はなかった。

それは友哉から頼まれたこともなかったし、もちろん恥ずかしがりやの果歩から積極的に行為に及ぶことなどあるはずがなかった。

しかし、果歩の本心では、フェラチオに興味がないわけではなかった。

それどころか先日、果歩は男根の形を模ったバイブレーターをまるでフェラチオをするように口に含んで舐めていたのだから。

山井 「え〜マジ?果歩ちゃん彼氏にフェラしてあげたことないの!?あ〜そりゃ彼氏かわいそうだわぁ!」

富田 「今時フェラチオしないカップルなんて珍しいよなぁ?」

果歩 「そ、そうなんですか・・・。」

なんだかさっきから果歩は自分ばかり責められているようで、今にも泣きそうであった。

しかしその一方で、富田達が言うとおり、性に消極的な自分に友哉は不満を抱いていたのかもしれない、と思うようになっていた。

秋絵 「フフ、果歩ちゃん、じゃあ果歩ちゃんのこれからの恋愛生活のためにも、ちょっとここで練習してみない?」

果歩 「練習・・・ですか・・・?」

秋絵 「そう、フェラチオの練習をね。」

【学校】無花果 -The faith of strip-【教室】

$
0
0

主なる神が造られた野の生き物のうちで、最も賢いのは蛇であった。
蛇は女に言った。

「園のどの木からも食べてはいけない、などと神は言われたのか。」

女は蛇に答えた。

「わたしたちは園の木の果実を食べてもよいのです。
 でも園の中央に生えている木の果実だけは、
 食べてはいけない、触れてもいけない、死んではいけないから、
 と神様はおっしゃいました。」

蛇は女に言った。

「決して死ぬことはない。それを食べると、目が開け、

 神のように善悪を知るものとなることを神はご存じなのだ。」

女が見ると、その木はいかにもおいしそうで、目を引き付け、
賢くなるように唆していた。女は実を取って食べ、
一緒にいた男にも渡したので、彼も食べた。
二人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、
二人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした。

「人は我々の一人のように、善悪を知る者となった。
 今は、手を伸ばして命の木からも取って食べ、
 永遠に生きる者となるおそれがある。」

主なる神は彼をエデンの園から追い出し、彼に、
自分がそこから取られた土を耕させることにされた。
こうしてアダムを追放し、命の木に至る道を守るために、
エデンの園の東にケルビムと、きらめく剣の炎を置かれた。

           (旧約聖書創世記第3章より一部抜粋)

    無花果  − theFaithofStrip −

   イチジク  ザ・フェイス・オブ・ストリップ

 *********************************************

    第壱章 中学時代 −Hedgehog’sDilemma−

 *********************************************

「蒼い空に… 雲は流れ… かぁ…。」

  空
     蒼いモノ…
          美しいモノ…
  雲            透き通ったモノ…
     白いモノ…           落ち着くモノ…
          綺麗なモノ…
  光            混じりけのないモノ…
     輝くモノ…           純粋なモノ…
          眩しいモノ…
               暖かく包むモノ…
                       形のないモノ…

少年は、空を見ていた。
何の意味もなく、ただボーっと…。

退屈な時間
意味のない毎日
価値のない人生

そんな日常がずっと続いていくのかと思うと、
何もかもやる気が出ない…。

「緒方くん!」
「緒方翔くん!!」
「オガタショウくん!!!」
「あ… はい…。」

チョークを片手に教壇に立って彼を睨む女教師は、
彼の間の抜けた返事を聞いて軽くため息をついた。

「この問題、前に出てきて解いてくれる?」
「……わかりません。」

特に何にも考えずに呟いた。
女教師は呆れ顔でやむなく次の生徒を指名した。

「しょうがないわね…。
 じゃあ、西濱さん。」
「はい。」

落ち着いた声で小さく返事をした少女は、
静かに席を立ち、黒板にスラスラと問題を解き始めた。

「うん、いいわね。正解よ、西濱さん。」
「おお、すげ〜」 「やっぱ頭いいわね〜」

少女は静かに席に座った。
教師に褒められても、同級生に囃し立てられても、
少女は笑顔ひとつ見せることはなかった。

寡黙な美少女…。
彼女の名前は『西濱 綾』
クラス一の秀才で、容姿端麗。
先程の少年『緒方 翔』とは幼馴染だ。
とはいっても、幼稚園の頃からの知り合いだというだけで、
特に深い付き合いもないし、何より彼は彼女の笑顔を一度だって見た事はなかった。

「翔ぉ!!
 あんた何やってるわけ!?」

休み時間になった途端に、うるさいのが来た。

「あ〜んな簡単な問題が解けないだなんて、
 あんた受験生としての自覚あるの? まったく!」

この長髪の少女も、先程の少女と押しも押されぬほどの容姿だ。
だが、性格は正反対のようである。

「あんな問題が解けるのは、うちのクラスじゃ
 西濱と緋村くらいだよ。」

しかし少女は彼の言い分などまったく聞く気がないようだ。

「はっ、ど〜せ、ボケーっとしてスケベな事でも考えてたんでしょ!」
「そ、そんなんじゃないよ!」

翔は慌てた。大勢のクラスメイトの前で、なんて事を言うんだ…。
勝気な美少女…。

彼女の名前は『緋村 美優』
美しく、優しい… なんて名前とは裏腹に、
彼女は何かにつけては翔に小言を言う。

「えっと… 次の時間はっと…」
「次は体育よ。
 あんたは運動オンチなんだから、真面目にやんなさいよっ!」

確かに本当のことだが、少しカチンとくる。

「うるさいなぁ、もう…」

翔は美優が苦手だ。

「じゃあ、あたし行くわよっ!
 更衣室覗いたら、ただじゃおかないんだから!!」

だいたい美優がどうのこうの以前に、更衣室を覗けばまず間違いなく、
教師に説教されたり親を呼び出されたり、面倒な事になるだろう。
翔は面倒な事は嫌いだ。

「他の男子も! わかってるわね!?」

そんな大きな声を出さなくったって、みんな聞こえているのに…。

「自意識過剰なんだよ、緋村は…。」

翔はポツリと呟く。

「な、なんですってぇー!!」

美優は顔を真っ赤にして怒った。
が、そこに他の女生徒が助け舟。

「美優、先行くわよー!」
「あ、恵ぃ〜、まってーっ!!」

美優は親友の恵を追いかけ教室を出て行った。

「ふぅ…」

ようやく一息つけた翔。

「ハハッ まったく緒方と緋村はラブラブでいいよなぁ。」
「そ、そんなんじゃないよっ!」

美優ともめた後は、必ずクラスメイトにからかわれるから
翔にとってはいい迷惑である。

「おい緒方、早くしないと次の時間間に合わないぞ!
 俺は先に行くからな。」
「あ、急がなきゃっ!
 先に行ってていいよ、栗原。」
「ああ。急げよ!」

翔はくたびれた鞄の中から体育着を取り出した。
この中学校では、女子には更衣室があるが
男子は教室で着替えなければならない。
翔は急いで体育着に着替えてグラウンドへ向かった。

キーンコーンカーンコーン

「はぁ… 鳴っちゃったよ…。」

案の定、翔がグラウンドに着く前に鐘が鳴ってしまった。
女子は着替えの事を考慮して多少遅れても許されるが、男子は遅刻厳禁。
ま、世の中そんなもんである。

「緒方!遅いぞ!!」

体育教師の怒鳴り声。
翔が着いたときには、他の男子はもうみんな教師の前に整列して、
体育座りをして待っていた。
体育教師は腕を組んで鬼の形相を浮かべている。
どうして少し遅刻したくらいで、いちいちそんなに怒るんだろう。

「…すいません。」
「声が小さい!!
 お前、やる気あるのか!!」
「ないです。」

思わずポロリと出てしまった本心に、翔はハッとした。

「あ、いや、その… なんでもありません…。」

クラスメイトたちはクスクス笑っていたが、
教師は怒り心頭だった。

「緒方あ!!お前は遅刻した罰として、腕立て・腹筋・背筋100回ずつ!!」

翔はひたいに手を当て天を仰いだ。

「他は、前回の続きだ。
 チームごとに分かれろー。」
「はい!」

中学生らしい元気な返事。
みんな何であんなに元気なんだろうな…

「いち…  にい…  さん…  しい…」

翔は言われた通りに腕立て伏せを始めたが、
もともと体力がなく運動が苦手な彼にとっては、
100回なんてとても無理な話だ。

「ごお… ろく… しち…
 はぁ… 行ったか…。」

当然、教師がその場を離れて行ったらサボるのである。

「ふぅ…」

翔は深い溜め息をついた。
他の男子たちの方を眺めた。
あの体育教師が熱心に指導している。
これは当分戻ってきそうにないな…。
そう判断すると、今度はそれと逆方向の
女子の集団の方を見てみた。

「よーい、ピーーーー!!」

翔が目を向けた瞬間、ホイッスルが鳴り女子たちは一斉に走り出した。

「女子は長距離走か…。」

翔はぼんやりと、女子たちの様子を眺めていた。
大方の女子たちは、やる気無さそうに
ゆっくりダラダラと走っていた。
中には友達とペチャクチャ話しながら走っているのもいる。
そんな中、先頭を走るのは綾である。
そして、続く二番手は美優。

「緋村、ムキになってるな…。」

常に同じペースで淡々と走っている綾と、
長い髪の毛を振り乱し「はぁはぁ」と荒い息をしながら走る美優。
綾を追い越そうと猛ダッシュしたり
逆に力尽きてペースダウンしたりを繰り返す美優の様子が、
見ていて面白かった。

「おい、な〜にサボってんだよっ!」

ボーっとふたりの様子を見ていた翔は、突然声をかけられて驚いた。

「なんだ、栗原かぁ…
 栗原のほうこそ、抜けてきちゃっていいの?」

翔に声をかけてきたこの少年は、
翔の数少ない友人の一人。

「ああ。別にひとりくらいいなくたって
 どうせ気付かないだろ。」

そう言うと彼は、翔の隣に座った。

「それよりよお、お前さっきから
 なにボーっと女子のほう見てんだよ。」

栗原の問いかけに顔を赤くして、しどろもどろになる。

「え、あの…その…
 別に見てたわけじゃないよ、ただ…なんとなく…」

栗原は翔の背中を軽く叩いた。

「まぁ、気にすんなってっ!

 で、誰を見てたんだ? 緋村か?」

不敵な笑みを浮かべ問い詰めてくる栗原に、
翔は非常に戸惑った。

「ち、違うよ!!」
「ん?違うか。じゃあ西濱か?」
「だから見てないってば!!」
「まあまあ、そんなムキになるなって。」

栗原は女子の先頭集団――つまりは綾と美優のデッドヒートを
眺めながら話した。

「確かに、緋村も西濱も顔は可愛いけどよ。
 ふたりとも性格があんなんだしよ…。
 それになにより……」

女子の体育着はブルマだ。
美優も綾もスタイルが良く、綺麗な足が露になっている。
白い体育着からはわずかにブラジャーの色が透けて見える。

「……どうせ走るなら、大きな胸を
 ブルンブルン揺らして走って欲しいよなぁ!
 な? 緒方もそう思うだろ?」

返事はなかった。

「なあ、緒方?」

栗原が振り向くと、そこには…

「こらぁぁあ!!」

体育教師の怒号が響き渡る。

「栗原ぁ!! お前、勝手に抜け出して、
 真面目に筋トレやっている緒方の邪魔をするとは、
 どうゆうつもりなんだ!!」

翔は教師が来たのに気付いて、
慌てて素知らぬ顔で背筋をしていたのだった。

「よし緒方、お前はもう終わっていいぞ。
 栗原、お前は罰としてグラウンド10周だ!」
「ええー!!」
「今は4時間目だから、昼休みまでかかってでも
 しっかり走れよ! ちゃんと見張ってるからな!!」

トホホ…といった感じの栗原の背中を、
翔は少しすまなそうに見つめていた。

翔は上半身裸でタオルで汗を拭いていた。

「なぁ緒方、栗原知らないか?」

シャツとYシャツを着て、
ボタンを留めながらその質問に答える。

「ああ… 栗原なら、サボってたの見つかって、
 グラウンド10周走らされてるんだ。」

翔は体育着のズボンを脱いだ。
そこへ着替えを終えた美優が帰って来た。

「ふんっ バッカだね〜、あいつ!」

そして翔を見るなり、

「…って、あんた何て格好してんのよー!!
 変態!! 変なもの見せないでぇー!!」
「そ、そんな事言ったって、しょうがないじゃないか。
 だいたい、緋村が来るの早すぎなんだよ!
 他の女子だって、まだ誰も帰ってきてないじゃないかっ!」

翔は顔を真っ赤にして、自分の正当性を主張した。
だが、上はYシャツ・下はトランクスの今の翔の格好では、
まったく説得力がなかった。

「そんな事言ってないで、早く着なさいよ!」

美優は「ぷんっ」とそっぽを向いた。

「ところでさ、緋村。
 今日の長距離走、緋村と西濱、どっちが勝ったの?」

着替え終わった翔が美優にそう尋ねると、勝ち誇ったように胸を張って答えた。

「と〜ぜん、あたしよ!
 あたしがあんな貧弱ガリ勉女に負けるわけないじゃない!」

貧弱ガリ勉女かぁ…
西濱も酷い言われようだなぁ…
そう思いながらも、

「そっか… そうだよね。」

と、話を合わせておく。
美優は綾の事になると、かなり意地になるのだ。
そのことを、翔はよく知っていた。

「ん…?そういえば、どうしてあたしとあの貧弱ガリ勉女が競ってた事知ってんのさ…」

顔をしかめた美優を見て、
翔は「やばっ」と素知らぬ顔をしてみせた。

「さては、あんた……」
「美優、お弁当食べに行こうよ〜」
「あ、うん。今行くー!!」

美優は翔をギロッと睨んでから、
恵と一緒に出て行った。
美優の親友の恵は、いつも良いタイミングで助け舟を出してくれる
翔にとってはありがたい存在だ。

「ああ〜〜〜、まったく酷い目に遭ったぜ!」
「あ、栗原…。」

ようやく栗原が教室に戻ってきたのだ。

「まったくヒドイじゃないか、緒方ぁ!
 先公が来たの気付いたんなら、
 俺にも言ってくれりゃいいじゃないか。」
「ご、ごめん…」

栗原は女子のいる前で、堂々と着替えながら話した。

「まったくよぉ…
 今度、たこ焼きでもおごれよな!」

「あ、うん…。」

栗原はニヤッと笑うと、鞄から弁当を取り出した。

「緒方、飯もう食ったか?」

「いや… 待ってたよ。」

翔も弁当箱を取り出した。
翔は栗原と一緒に弁当を食べるのが、最近の日課だ。
栗原は翔の席へと来て、近くにあった空いている椅子に座る。

「おー、今日も緒方の弁当は美味そうだなぁ。」
「そうかな…?」

家が貧しいため、栗原の弁当には大したものは入っていない。
だから、冷凍食品オンパレードの手抜き弁当でさえ、
彼にとっては魅力的なのだ。

「これ、もらっていいか?」
「え…」

翔が返事をする前に、栗原はミートボールを口へ運んだ。

「うん、うめぇ!」

余程お腹が空いていたのか、栗原は夢中で弁当を食べていた。
しかし、その横で翔の箸は止まっていた。
翔がボケーっと眺めるその先には、綾がいた。
今日もひとりで食べてる…。
綾に友達はいない。
憂いを帯びた表情で、何処か遠くを見つめている。

短めの黒髪…
雪のように白い肌…
そして…

―――――― 紅い瞳

人間とは思えないほどの、美貌の持ち主…。
その近付きづらい冷たい空気が、
彼女の美しさを引き立てているのかもしれない…。
そういえば昔、
あの紅い瞳が原因で虐められてた事があったな…。
あのとき翔は、綾を助けることが出来なかった。
でも、綾は虐められても泣かなかった。
いつも同じ顔をしてた…。
あの頃も、今も。

「おい緒方、なにボケーっとしてんだよ?
 早く食わないと、昼休み終わっちまうぞ!」
「え、あ… うん。」

時計を見てみると、もう5時間目まであと5分もなかった。
翔は慌てて弁当を掻き込んだ。
するとそこへ、

「あんた、まだ食べてるの!?
 遅いわねぇ。まったく、それでも男子なの?」

いちいちうるさい女、美優が教室に戻ってきた。
美優は恵たちと一緒に、屋上で弁当を食べていたのだ。
彼女の席は翔の席の隣だ。
自分の席に着くと、翔を見つめた。

「あんた、ご飯粒付いてるわよ。」
「え…?」

翔の口もとに手を伸ばす。

「ほら…。」

ご飯粒を付けた美優の人差し指と美優の顔を交互に見て、
翔は目を丸くするのだった。

「まったく、お前らはラブラブでいいよな!」

栗原のひと言で、ハッとするふたり。

「そんなんじゃないよ!!」
「そんなんじゃないわよ!!」

見事にシンクロしたふたりの反論に、
まわりにいたクラスメイトは笑いを堪えられないのだった。

「おっと、もうすぐ授業始まっちまうな。」

そう言いながら、栗原は自分の席へと戻っていった。
残されたふたりは微妙な空気…。

「はーい、じゃあ始めるぞー!」

国語教師の声がかかると、翔は渋々食べかけの弁当を鞄に仕舞った。

「きりーつ、れー、着席っ」

あ〜ぁ、始まっちゃったよ…。
こうしてまた、意味のない日常が過ぎてゆく…。
窓際の席で、無表情で黒板を見詰める綾。
退屈そうにクルクルとペンを回している美優。
熱心に教師の話を聞く恵。
やる気無さそうに横を向いている栗原。
真面目に授業を受けて、カリカリとノートを取っているものもいれば、
教師の話を聞かずにひたすら教科書を読んでいるものもいる。
まだ始まって間もないのにすでに夢の世界に旅立っているものもいれば、
教師に見つからないように漫画を読んでいるものもいる。
くだらない日常が、こうして過ぎていくんだ…。
少年は、空を見ていた。
何の意味もなく、ただボーっと…。

退屈な時間
意味のない毎日
価値のない人生

そんな日常がずっと続いていくのかと思うと、
何もかもやる気が出ない…。

こんな日々が、ずっとずっと、続いてく…。

平凡な毎日

退屈な日々

だけど、ときには特別なイベントもある。
そんな数少ない行事のひとつが、修学旅行である。
翔たちは今、京都に来ている。
清水寺、三十三間堂、北野天満宮など
いわゆる観光名所を見て廻った。

清水寺では…

「うわ〜〜、ここが清水の舞台ってやつね!?」

美優は上機嫌ではしゃいでいた。
翔はあまり興味無さそうにボーっとしていた。
ふと、綾が目に留まる。

無邪気にはしゃぐ他の女子と違って落ち着いている綾の様子や、
その綾の白い肌、表面的な美しさ、凛とした空気、
それら全てが清水の綺麗な景色と調和していた。

「っわ!!!」
「うわぁ!!」

急に脅かされたのでビックリしてしまった。

「なんだ緋村かよ。脅かさないでよ…。」

心臓がバクバク言っていた。

「フフッ 清水の舞台から、
 突き落としてあげようかと思ってね♪」

普段からうるさいヤツだが、どうも今日は一段とテンションが高い。
修学旅行とは、そういうものだ。
次に向かった北野天満宮では…

「この北野天満宮に祀られた”菅原道真”は、
 子供の頃から一生懸命勉強して最年少で国家試験に合格して、
 で、右大臣にまでなった凄い人なのよっ!
 …って、聞いてんの? 翔!!」

そんな話僕に言わなくったって、他の女子にでも話せばいいじゃないか。
翔は少しウンザリした様子で答えた。

「…聞いてるよ。詳しいね、緋村。」
「あんた、こんな話、超常識よ!
 で、そんな凄い人だから、今は学問の神様として
 祀られているわけ!」
「ふ〜ん…」

自分の話でもないのに自慢げに話す美優に、翔は素っ気無い返事をした。

「じゃ、ほら。行くわよ!!」

美優は翔の制服の袖を引っ張って歩き始めた。

「え、どこに?」

振り向く美優。

「合格祈願に決まってるでしょ!
 あたしたち受験生なのよ!
 あんた、自覚あんの!?」

そんな大声出さないでよ、他のお客さんに迷惑じゃないか…。
翔は渋々美優についていった。

「ぜったいS高に受かってやるんだから…」

なにやらブツブツ呟きながら、一心にお祈りする美優。

「合格祈願っていってもなぁ…
 まだ志望校も決まってないのに…。」

そう言いながらも、翔は美優の隣に並んで拝む。

「ふぅ…」

翔が一息ついても、美優はまだ目を閉じじっとお祈りしている。
いつまで祈ってんだ…?
そう思って、美優の顔を眺める。
背筋をピンと伸ばして、目を閉じ手を合わせる美優。

緋村…

いつもこうして黙ってれば、ものすごく可愛いのになぁ…
普段と違う穏やかな表情の美優の横顔に、
翔は何だか不思議な感覚を覚えた。

「うん、よし!
 あ、翔。お待たせ♪」

ずいぶん長いことお祈りしていた美優。
参拝を終えた後の爽やかな笑顔が、なんとも美優らしかった。
その後、一行はバスで旅館へと向かった。

「うわ〜〜!! 広ぉ〜い!!
 綺麗な景色〜!!」

美優は旅館の露天風呂に一番乗りで入り、
グーンと腕を伸ばした。
美優は何も身に付けておらず、
その中学生らしい発育途中のなんともいえない魅力的な身体が、
包み隠さず露になっているのだ。
美優はスタイルが良い。
胸も中学生にしては大きいほうだ。
その柔らかな膨らみの先っぽで、
桜色の乳頭が己の存在を主張していた。
そしてそこから下へいくと、
なんとも可愛らしいおヘソがあり、
そして更にその下には…
まだ完全には生えそろっていない若草たちが、
美優の一番敏感な部分を護っている。
綺麗だ…。
その姿はまるで、”美と愛の女神”のよう…。

「ちょっと美優、少しは隠しなさいよ!
 恥ずかしくないわけ?」

恵はタオルで身体を隠し、恥ずかしそうに近寄ってきた。

「まぁ、硬いこと言わないでさっ!
 どうせクラスの女子しか入ってこないんだしさ。」

この露天風呂は真ん中に仕切りがあり、男湯と女湯に分かれている。

クラスごとに決められた時間で入るため、

他のクラスの女子や一般の客、ましてや男子などは

入ってくることはないのである。

「じゃあ、さっそくお湯に入るわよっ!」

そう言って風呂へ走り出そうとする美優の肩を

恵は必死でつかんでそれを止める。

「待って待って!

 先に身体を洗えって先生が言ってたわ。」

「まったく、恵は真面目なんだから…。

 教師の言う事なんて、いちいち守らなくたっていいのに…。」

続々とクラスメイトたちが入ってくる。

みんなタオルで身体を隠している。

お互い少し恥ずかしそうに、キャッキャ言いながら楽しそうだ。

だが、美優の他にもうひとりだけ、
裸を見せるのを惜しまない少女がいた。

それは、綾である。

綾が入ってくると、その冷たい空気と美しさのために
誰もが目を見張った。
綾はやや細身の体で、胸も僅かに膨らんでいる程度だ。
だが、その僅かな膨らみの先っぽで、
可愛らしい乳頭がビンビンに勃起している。
綾の恥丘には、包み隠すものが何もなかった。
まだ恥毛が生えていないのだ。
綺麗な割れ目が露になっている。

美しい…。

その姿はまるで、”地上に舞い降りた天使”のよう…。
そのあまりの美しさに見入っていた恵が、
ハッと我に返る。

「まったく、美優といい西濱さんといい、
 スタイルの良いコは自信持って隠さないでいられていいね!」

ボーっとしていたかと思うと、いきなり不機嫌になった恵の気持ちを、
美優は理解してあげる事ができなかった。

「は? 何怒ってんのさ…?」
「別に怒ってない!」

美優は頭の上にクエッションマークを浮かべ、
首を傾げながら、石鹸を手に取った。

「変なの…」

美優は手を洗い、それから
左腕、右腕、首、背中… と洗ってゆく。
そして、胸へ。
柔らかく、そして弾力のある美優の胸。
そのあとお腹を洗うと、今度は脚へ。
そして最後に、秘部へ…。
あまり強く擦ると、なんだか変な気分になってしまうから、
ここだけは優しく洗う。
それからふたりは、お湯に浸かった。

「はぁ〜 いいお湯…」

恵の視線が気になった。

「美優…」

お湯に浸かっているせいか、ふたりの頬は火照っていた。

「なに…?」
「胸…、また大きくなったんじゃない?」

同じ女でも、そんなにジロジロと見られるのは恥ずかしい。

「…触ってもいい?」
「な、なに言ってるのよっ!」

急に美優が大きな声を出すから、
みんなの注目を一気に集めてしまう。

「…じょ、冗談よ!」

恵はオドオドして、目を逸らした。

「じゃあわたしが触ってあげる♪」
「きゃっ!」

他の友人にいきなり後ろから胸を揉まれた美優は、
思わず普段出さないような女の子っぽい声を出してしまった。

「んもう!やめてよっ!!」

美優は顔を真っ赤にした。

一方こちらは男風呂。

女風呂とは仕切りがあるだけで、
実は声も丸聞こえなのだ。
男子たちは、息を潜めて女子たちの会話を聞いていた。

  「美優ってさ、好きな人いるでしょ?」
  「だれだれ〜?」
  「緒方くんでしょ〜?」
  「やっぱ緒方なんだ!」
  「ふたりって付き合ってるの?」
  「そ、そんなんじゃないわよ!」
  「もうやっちゃったの?」
  「緒方くんに毎日胸揉んでもらってるんでしょ?」
  「あ〜、だからこんなにおっぱい大きいんだぁ。」
  「違うって言ってるでしょっ!!」
  「あー! 顔真っ赤にしちゃって。美優可愛い!!」

「おい緒方、お前ち〇こ勃ってるじゃ…」

ザバ―――――ッ

湯に浸かる翔を覗き込むようにして言いかけたその言葉を止めるべく、
翔は慌てて立ち上がって、栗原の口を手で塞いだ。

「んん…んんむ…」

だが、翔は立ち上がった事により、
クラスメイトたちの前にその醜態を晒してしまう。

「うわー!ホントに勃ってるし!」 
「なに興奮してんだよっ!」
「女子の裸、想像しちゃったのか?」
「わはははは…」

ジャボン!

翔は慌ててお湯に沈んだ。

「は、恥ずかしい…」

顔が真っ赤だった。

  「なに今の声!?」
  「向こう側、誰か入ってるの!?」
  「ええ? 男子? ウチのクラスの!?」
  「わたし、もう出るー!!」
  「わたしももう上がる!」
  「わたしも…」
  「あ、待ってー。わたしもー。」

女子たちは、みんな風呂からあがったようだ。

「なんだよ、つまんねえの…」
「そろそろ上がるかぁ。」

そう言って男子たちもみな出て行った。
でも、翔はまだお湯に浸かっていた。

「緒方ぁ〜、先あがるぞ。」
「あ、うん。」

もうすぐ交代の時間だ。
早くしないと、次のクラスが入ってきてしまう。

「どうしよう…。上がれないよ…。」

「あ〜 いい湯だったなぁ。」

栗原が部屋へ入ってくる。
栗原も翔も、寝巻きとして備え付けられていた浴衣を着ていた。
翔は栗原と二人部屋だ。
中学最後のイベントという事で、
班も部屋も基本的に好きな者同士で決められていた。
仲間はずれがでるといろいろと面倒な事になりそうだが、
翔のクラスでは特に問題は起きなかった。

「今日はもう寝るだけかな…?」

翔は『旅のしおり』で予定を確認した。

「うわー、明日朝早いなぁ。」
「緒方、朝弱いのか?」
「うん…。」

そんなたわいも無い話をしていると、
廊下からドタバタ騒々しい足音が聞こえてきた。
ガタンッと大きな音を立てて戸が開く。

「翔いる!?」
「ひ、緋村!?」

いきなり現れた美優と、後ろから顔を覗かせる恵。
美優の無防備な浴衣姿を見て、翔は思わず息を呑んだ。
おそらくブラをしていない…。
胸が見えてしまいそうで危なっかしかった。
だが、当の本人はそんな事はお構いなしのようだ。

「トランプやるわよっ!!」

美優は手に持ったトランプをチラつかせ、
ニヤッと笑った。

「は…?」
「つーか、お前らこっち来ちゃって大丈夫なのか?」

栗原がそう聞くと、恵も少し不安げな顔を見せた。

「わたしもよそうって言ったのよ。でも美優が…。」
「大丈夫よ、別に見回りも無いみたいだし。
 担任ももう歳でボケ始めてるし。」

美優は相変わらずの口調でそう言い放つ。

「そういう問題なのか…?」
「ホントに大丈夫なのかなぁ?」

翔も栗原も破天荒な美優についていけない。

「あんたたち、男のクセに意気地無しね!!」
「うぐ…」

美優はズカズカと部屋に上がり込んで来た。
そして、翔の顔を指差し、こう言い放つ。

「もちろん、教師に見つかったら
 『僕らが無理やり連れ込みました』って言うのよ!」
「そんなぁ…。」

翔は困り果てた顔をした。

「まったく緋村はムチャクチャだな。
 ま、見つかったらその時はその時ってコトで。
 トランプやろうぜ!」
「じゃあ、わたし配るわ。
 何やるの?」

なんだかんだ言って、栗原も恵も結構乗り気だ。

「そうねぇ…」

美優は口元に手を当て、考えるポーズ。
そして、ポンッと手を叩いた。

「うん、やっぱ『大貧民』でしょ!」
「…『大富豪』ね。」

翔がポツリと呟くと、美優は頬を赤くした。

「ちょ、ちょっと間違えただけよっ!」

ちなみに『大富豪』とはトランプで遊ぶカードゲームの一種で、
地域によっては『大貧民』『ど貧民』『階級闘争』などと呼ばれる。
ただし、彼らの中では『大富豪』が正しい呼び方とされているようだ。

「じゃあ配るわよ。」

恵が一枚一枚丁寧に配ってゆく。
『大富豪』は、場にあるカードよりも強いカードを出していき、
手札を使い切ったらあがり、といういたってシンプルかつ戦略的なゲームだ。
あがった順に、大富豪、富豪、貧民、大貧民となる。

「うわ〜、こりゃ全然ダメっぽいなぁ」

配られた手札を見て栗原がぼやく。
カードの強さは、3、4、5、……10、J、Q、K、A、2で、
3が一番弱く2が一番強い。
ただし、ジョーカーがある場合それが一番強い。
栗原の手札は弱いカードばかりのようだ。
翔の手札もあまり良いとは言えなかった。
今回は富豪か貧民になって、次回につなげよう…
そんな事を考えながら、ふと美優の顔を見てみた。
少しニヤついている…。
どうやら美優は顔に出やすいタイプのようだ。

4人は布団の上に座り込み、『大富豪』をしている。
恵は難しい顔をしていた。

「…パス。」
「あ〜! パス!」

栗原はもう投げているようだ。

「翔、あんたは?」

美優が聞く。

「う〜ん… どうしようかな?」
「男らしくバシッと決めなさいよ。」

そう言って、1枚しかない手札をチラつかせる。

「緒方、なんとかしろよ!
 緋村あがっちまうぞ!」

自分の手札では太刀打ち出来ないと踏んだのか、
栗原は完全に人任せである。

「…わかったよ。」

翔はパシッとカードを出した。
ハートのエースだ。

「フッフーン♪」

美優はニヤッと笑うと、最後の1枚のカードを場に叩きつけた。

「はい、あがりー♪
 フフッ 楽勝ね!」
「あ…」

翔が呟く。

「ジョーカーじゃ、あがれないんだよ…。」

ちょっと沈黙。

「はぁー!? そんなこと誰が決めたのよっ!!」

美優は立ち上がって怒った。

「あんまデカイ声出すなよ。」

栗原はヤレヤレ…といった表情で言った。

「フフッ 美優、大貧民決定ね♪」
「な…」

恵にそう言われ、美優はその怒りをなぜか翔にぶつけるのだ。

「ちょっと、翔ぉ!どうにかしなさいよ!!」
「そんな事言われたって…」

その瞬間!!

「キャッ 地震!?」

美優はバランスを崩し倒れこんだ。
数秒間の揺れ。
そして、地震がおさまった…。

「って、お前らなに抱き合ってんだよ!」

気付いたら翔と美優は抱き合っていた。
美優の腕が翔の体を痛いくらい締め付けていた。
ブラをしてない美優の胸の感触が、翔の腕に伝わってくる。

「はっ… こ、これは…」
「しょ、翔!離しなさいよっ!!」

美優は顔を真っ赤にして、思いっきり翔を突き飛ばした。

「そっか… お前らそういう仲だったんだなぁ…。」

栗原はしみじみと語った。

「わ、わたし帰るね。」

そして慌てる恵。

「ちょっと… 恵!」
「大丈夫、このことは誰にも話さないわ。」

慌てて追いかけてくる美優に、
恵はなぜか親指をグッと立てて見せた。

「ご、誤解よ!!」

美優は恵を止めようとしたが、逃げられてしまった。
数秒間美優の背中がガタガタと震えたかと思うと、
美優は振り返り、翔のほうへスタスタと寄ってきて
そしてビンタ。

「イタッ!!」
「もうあたし寝るっ!!」

美優は敷かれていた布団に潜り込んでふて寝した。

「ちょっと…、緋村、それ僕の布団…」
「知らないっ!!」

美優はプイッとそっぽを向いて目を閉じた。
翔は困り果てた。

「災難だなぁ、緒方。」

栗原はあざけ笑い、自分の布団に入った。

「じゃ、俺も寝るわ。おやすみ〜。」

栗原は結構マイペースだ。

「そんなぁ…」
「あ、緒方。電気消してな。」

  闇
     暗いモノ…
          恐いモノ…
               何も見えないモノ…
                     孤独なモノ…

汚れたもの… よけいなもの…
見せたくないもの… 
それを全部包み隠してくれる、闇
静寂と孤独が支配する闇
そんな暗闇の中で、少年は膝を抱えていた。

時刻は2時をまわっていた。
翔は浅い眠りから覚め、部屋を見渡す。
自分が眠るはずだった布団で寝ている美優。
彼女がゴロンと寝返りを打ち、顔がこちらを向く。

「あ…」

目が合った。
美優は気まずそうな顔をした。
普段は無茶な事ばかり言うけれど、
本当は良いやつなんだという事を、翔は知っている。
美優は寝たまま話しかけてきた。

「翔、起きてるの?」
「うん…。」

翔は軽く頷いた。
翔から目を逸らし、そっぽを向いて言った。

「入んなさいよ。」
「え?」

美優は布団を捲り、翔を招いた。
暗くてよくわからなかったが、美優は少し恥ずかしそうで、
何処かよそよそしい感じもした。
翔は困惑した。
いや、なにも考えられなかった。
思考が、停止していた。

「風邪ひくでしょ!早く入んなさいよ!!」

美優はキツイ口調で、でも小声で、だけど怒鳴った。

「え… でも…」

オドオドしている翔を見て、美優のイライラは募る一方だ。

「いいから!」
「う、うん…」

翔は恐る恐る布団に潜った。
僅かに漏れる月明かりが、頬を赤く染めた美優の綺麗な顔を映していた。
美優は優しい顔をして、翔を見つめる。
翔はドキドキが止まらなかった。
そして、美優の唇がそっと開く…。

「…触ったら殺すわよ!!」

目がマジだった。

「わ、わかってるよ…。」

翔は美優の背中に回しかけていた手を、
慌てて撤収する。

「じゃ、おやすみ。」

美優は不機嫌な声でプイッとそっぽを向いた。
サラサラの髪…
綺麗なうなじ…
薄い浴衣に覆われた肌…
石鹸のいい香り…
手を伸ばせばすぐ届く場所に…
というより、もうほとんど接触している。
翔はなかなか寝付けなかった。
だが、美優は眠っているようだ。
どうしてこんな状況で寝れるんだ…?
翔は美優の神経を疑う。
たぶん、僕のこと男として見てないんだ。
その結論は、容易に出た。

「んん…ふぅ…」

時々漏れる美優の寝息が、翔を悩ませる。
いけない衝動が翔の脳裏によぎる。
その柔らかい肌に触れたい…
乙女の領域に踏み入りたい…
美優と結ばれたい…

「――ハッ」

翔は息を呑んだ。
美優がゴロンと寝返りを打ち、こちらを向いたのだ。

翔の心臓ははちきれんばかりに鼓動を刻んでいた。
どうやら美優はよく眠っているようだ。

「ふぅ…」

翔はホッと胸を撫で下ろした。
が、それもつかの間。
美優の美しい顔が、目の前にある。
その瞳…
その唇…
視線を下へやった。

「あ…!?」

なんと、浴衣が肌蹴て胸が露に…。
桜色の乳頭が見え隠れしていた。
翔はなにも考えずに…
そこへ手を伸ばす。
翔の人差し指が、
     ――――触れた

「んぁ…」

甘い吐息が漏れた。
翔は再び部屋の隅で、膝を抱えた。
少し寒くて、少しホッとした…。
なかなか寝付けなかった。
早く眠りたかった…。

「…意気地無し。」

ポツリと呟いた一言は、闇の中に虚しく溶けていった。

  夢
    寝てるとき見るモノ…
          思い描くモノ…
               裏切らないモノ…
                   でも裏切るモノ…

小鳥の囀り…。

「んん… 朝か…」

腕をグーンと伸ばそうとする。

「痛っ…」

不自然な体勢で座ったまま寝たせいか、翔は体中が痛かった。

「緋村…?」

そこに美優の姿はなかった。
無造作に捲られた布団に手を当ててみる。

「まだ温かい…。」

急に顔が真っ赤になる。
昨晩の事を思い出したのか…。
その後、何事もなかったかのように修学旅行は続いた。
翔は美優の事が気になってしょうがなかったが、
美優はいつも通りだった。
昨晩の事なんて何も覚えていないかのように…。
だから翔も、いつも通り振舞った。
いつも通り美優の話を聞き、
いつも通りうざったがり、
だけど翔の気持ちは、確実に変わり始めていた…。

修学旅行が終わり、
また同じことの繰り返しの退屈な毎日が始まる…。
だけど、そんな毎日が
変われる予感がした…。

「う〜ん…」

翔はなにやら難しい顔をしていた。

「な〜にやってんのよ?」
「ん… 緋村…。」

何気なく顔を上げて見ると、横から覗き込む美優の顔。
ドキッとした。
何故だろう…。
何故だかわからないけれど、鼓動が早まった。

「なになに…?あ、進路のヤツね。」

美優は机に置かれたプリントを見ていた。
いつもの翔ならきっと「勝手に見ないでよ!」とか言って
プリントを隠していただろう。
だけど何故かそのときはボーっとしていた。

「あんたまだ書いてなったの?」
「将来の夢なんてないから…。」
「ふ〜ん…。」

美優は素っ気無い返事をしたが、それはいつもの事だ。
興味のない話はいつもこうだ。
…どうでもいい話ばっかがっつくくせに。

「ねえ、緋村は将来の夢なんなの?」

少し時間を空けて美優が答える。

「……ないけど。」

「やっぱそうだよね!
 まだ決められないよね!」

翔はちょっと嬉しかった。それが声にも出てしまった。
美優は少しムッとした顔に。

「そんなことより志望校よ!
 あんた、どこ受けるの?」

翔は困った。
なぜならまだ決めかねているから。

「う〜ん…、C高かな…?」

その言葉を聞いた美優は、
一気にある意味美優らしい表情、翔の最も苦手な顔に変わる。

「はぁ!? ダメ、S高受けなさいよ!」
「ええ!? なに言ってるのさ。
 S高なんて、緋村とか西濱とかじゃないんだから。
 無理に決まってるじゃないか。」

S高といえば全国でも有数の進学校であり、
確かに翔の今の学力では到底不可能であるのは言うまでもない。
だけど、美優はこんな事を平気で言う。

「なぁ〜んでやってもないのに無理って決め付けるのさ!」
「無理なもんは無理なんだよ!」

翔も声を荒げた。

「まったくお前らは賑やかでいいなぁ。」

急に声がしたので、翔も美優もワッと顔を上げた。

「あ、栗原…」
「進路のやつ書いてんだろ?」
「うん。だけどなかなか決まんなくて…。」

美優は何気なくいつもの調子で聞いてみた。

「あんたはどうすんのよ?」
「ん…、俺は家が貧乏だからな…
 高校にはいかないで、働く。」
「あ… ごめん…。」

いつも勝気な美優でも、こういう場面には弱い。

「いいって、そんな顔すんなよ。」

栗原は全然気にしない。
ある意味、一番大人だ。

「それよりさ、ここだけの話だけどよ…」

声を潜めて話し出す栗原。

「さっきさ、西濱のプリント見ちまったんだよ。」
「どうせS高でしょ?」
「ああ。それはそうなんだけど…」

栗原はあたりを見回し、聞かれていないか確認する。

「問題は、将来の夢なんだよ…」
「へー、西濱の夢かぁ… なんだろ…?」
「教師、とかだったら面白いわよね。あの性格で。」

美優は悪戯な笑顔を浮かべる。

「そんな生温いもんじゃねえんだよ。
 聞いて驚くなよ。」

喜々とした顔で語る栗原。

「勿体付けないで教えてよ。」
「なんと…

「なんと… 神!!」

最初は、聞き間違いだと思ったんだ。
その後は、冗談だと思った。
でも最後には…
     僕たちは真実を知った。

「はぁ?」
「だから神だよ、神! 神様!」
「ちょ… 声でかいわよ!」
「あ…」

栗原は手で口を覆う。

「意味わかんないんだけど…。」

翔は少しヒキ気味。

「ギャグならいいんだけど…
 書いたのがあのコで、しかも学校の進路のプリントでしょ…?」

美優は栗原を見据える。

「あんた、見間違えたんじゃない?」
「いやいや、はっきり見たよ。この目で。」

栗原ははっきりと言った。
間違いないと、自信があるようだ。

「西濱… ギャグとか言うタイプじゃないと思うんだけどなぁ…」
「意味わかんないわよ!
 あのコのギャグのセンスにはついていけないわ。」
「はぁ… 神様かぁ…。女神様だなぁ。」

栗原は綾のほうをボーっと眺めていた。

「あんた、ホントに嘘ついてないでしょうね!?」

美優はまだ半信半疑。
翔だってそうだ。
そんなの到底信じられる話じゃない。
そう思いながら、翔はいつのまにか綾のことを見つめていた。
不思議な冷たい空気を持つ少女…。
表情が乏しい。
彼女は…
 今、生きているのだろうか…。
それすら疑ってしまうほどに、
彼女は…
―――――――― 危うかった

その日の放課後、綾を見かけた。
帰り道。
綾は公園のブランコに揺られていた。
ふたつ並んだブランコの左のほうに座り、
右には誰もいなかった。
俯いたその顔は、
とても
哀しい顔をしていた…。

翔は、声をかけることが出来なかった。
夕暮れの公園は、どこか悲しげな様子だった。
砂場で遊んでいる子供たちを母親が迎えに来て、
手を繋ぎ楽しそうに喋りながら夕日に消えてゆく。

綾はそんな風景を、乾いた瞳で見つめていた…。
ギイィ…ギイィ…と、錆びたブランコが鳴る。
寂びた綾の心の泣き声のよう。

―――――― 出来なかった。

翔は、声をかけることが出来なかった。
あのとき
声をかけることが出来たなら、
綾は…
僕たちは…

そして、世界は…
少しは変われたのかもしれない。
神が生まれる、その前に。

「な〜にしてんのよっ!」
「うわ!!」

背後からポンと背中を叩かれ、
翔はビクついた。

「なんだ緋村かぁ…
 脅かさないでよ!」
「はぁ? あんた驚き過ぎよ!
 なんかやましいコトでもあるんじゃない?」

ギクッとした。
ん?でも、別に疚しいことなんてしていない。
ただ、なんとなく…

「もしかして、あれ?少女連れ去りとか?
 あんた、犯罪に手を染めちゃダメよ!?」
「そんなんじゃないよ!」
「ふ〜ん…。ま、あんたにはそんな勇気なんてないかっ!」

散々な言われ様。
翔は腹を立てる。
いつも、本当にムカつくんだ。
だけど、あとになって思い返すと、
なぜだかどれも楽しい想い出になっているから不思議だ。

「で、なにしてたの?」
「え… あの…、西濱が…」

特に理由はないが、
美優に”西濱”という名を出すのは気が引けた。

「んんー?」

美優は公園を見渡す。

「誰もいないじゃない。」
「え…?」

ポカンとした表情。

「ほんとだ…。さっきまではいたんだけど…。」

夕日が沈む…。
赤く染まった空…。
ふたりはブランコに揺られていた。
翔は左のブランコに座ったが、
ひんやりとした冷たい感覚が
哀しいほど伝わってくるだけだった。
美優は静かだった。
静かな美優は… 可愛い。
だけど、
静かな美優は調子が狂う。
翔を困惑させる。
喋っていても、黙っていても
翔を困らせる。
まったく迷惑なやつだ。

「ねぇ翔…。…キス、したくない?」
「へ…?」
「キスよ、キス♪」

こんな事もいつもの調子で話す美優。
だけどその頬は、心なしか夕日と同じ色に染まっていた。

「え… ほ、本気? 緋村…」
「や〜ね、キスくらいで顔真っ赤にしちゃって。」

また、沈黙。

「次の期末テストで10番以内に入ったら、
 キスしてあげるわよ。」

――――――― は?

「はぁ? なんだよそれ。
 意味わかんないし。
 クラスで10番なんて、1回くらいしかとったことないよ。」

「は? 学年で10番に決まってるでしょ!
 このあたしの唇なのよ!
 そんな安いわけないでしょ〜が!」

こいつ、頭は良いくせに、アホだ。
そう確信した。
自分の身の程をわきまえているつもりの翔。
彼は自嘲する。

「……学年10番なんて無理だし。」
「ま、安心しなさいよ。
 明日から毎日、放課後みっちりと
 あたしが勉強教えてあげるから。」

そう言って、ポーンとブランコから飛び降りた。
そして振り向く。

「て と り あ し と り ね!!」

また美優の余計なお節介が始まった。
どうせ気まぐれな思いつきなんだろ…。

「はぁ…」

翔のため息なんて、美優には届かない。

  紅
     鮮やかな色…
         朝焼けの色…
              悪魔の色…
                   血の色…

紅い瞳が、人を脅えさせる。
紅い瞳が、彼女自身を脅えさせる。
その瞳と、一度目が合うと
二度と目を逸らすことができない…。

「あ… に、西濱…」

死人のように白い肌…。
死人のように冷たい肌…。
不気味なくらい美しい…。

「…何?」

短く冷たい言葉。
な、なんか言わなきゃ…。

「お、おはよう…。」
「…おはよう。」

そう言うと綾は、スタスタと歩いていった。

「ふぅ…」

翔はドッと汗をかいた。
気になる…。
彼女には、人を引き付ける魔力がある。
翔は授業中、気が付くと綾の事を見ている。
特に理由はない。
ただ、暇だから。
でも、他の人を見ることはあまりない。
何故か綾だけを見ている。

ツンツンっ

「はっ…、なんだよ緋村…」

美優がシャーペンの先っぽで翔をつついていた。

「あんたねぇ、ボーっとしてる暇はないの!
 しっかり勉強しなさいよ。」
「わかってるよ。」

そう言って教科書を開く。
翔は授業が始まっても、
まだ教科書すら開いていなかったのだ。
だが、クラスの大半の生徒は翔と同じである。

「教師の話なんて聞かなくていいから!
 ひたすら練習問題をやるの、わかった!?」

美優は小声で言ったが、それでも十分大きい。
教壇に立ち独り言のように解説を呟いていた教師が、
それをやめ、翔たちのほうを睨む。

「ちょっと緋村、
 先生に聞こえるよ!」
「別にいいわよ、
 そんなの気にしてないで、とっとと勉強しなさい!」

聞こえたのか聞こえなかったのかわからないが、
教師は何も言ってこなかった。
また、独り呟き始める。

「はぁ…」
「ため息ついてないで、早く解く!!」

放課後居残り…。
先生は美優。
目の前のノートには、

『x^2+6x+9=0』と書かれている。

「エックスの二乗足す6エックス足す9イコール0…」

美優に見られてると、なんか気が散るな…。

「0だと…9で…
 1だと…16…?
 −1だと…4…
 −2だと…1…
 −3だと…0!
 あ、エックスイコール−3かぁ…。」
「あんた、何処までバカなのよ!!」

美優の叱咤の声。

「え…、間違ってる?」

真顔で聞いてくる翔に、
美優は少し困った顔をした。

「あってるにはあってるけど…
 あんた、授業聞いてないでしょ!?」
「緋村が聞かなくていいって言ったんじゃないか…。」

少しムッとした。

「そりゃそうだけど…。まあいいわ。あたしが、みっちり教えてあげる♪」

なんで勉強を教えるのに美優がこんなに乗り気なのか、
翔にはぜんぜんわからなかった。

「まずね……」

美優の説明は、案外わかりやすかった。
翔は今日も綾を見ていた。
退屈な授業を聞く気はないし、
問題演習も飽きてきた。
ボーっとしているのが常日頃だったし、
慣れない勉強をして少し疲れた。
だから、綾を見ていた。
そしたらそのうち、隣から
物凄い視線を感じたんだ。
――――― 美優だ。
翔は冷や汗をかいた。
そして、恐る恐るそちらを向く。
美優はニッコリと微笑む。

「問題演習♪」

美優の満面の笑みが、怖かった。
翔は仕方なく問題を解き始めた。
教壇では、女教師が熱弁を振るっている。
ただでさえ退屈な授業なのに、
どうしてわざわざこんなに
面倒くさくつまらない事をしなくてはならないのか…。
翔にはわからなかった。
カリカリと、黒板にチョークの擦れる音がする。
問題を書き終えると、女教師は振り返り
生徒たちを一通り眺める。

「じゃあ、この問題を…
 じゃ、緒方くん。」

はぁ…。
翔は心の中でため息をつく。

黒板には『x^2-12x+32=0』と書かれていた。

「わかりませ…」

イタッ!!

腹部に激痛が走る。
翔の横腹を殴った美優が、
目の下をピクピクさせて翔を睨んでいる。
翔はゴクンッと息を呑んだ。

「……(x-4)(x-8)=0なので、

 x=4,8です。」

教室中がシーンとした。

「え… あ、はい。正解よ。」

ふぅ…。

今度は安堵のため息をつく。
横を向くと、美優がとても嬉しそうに微笑んでくれた。
自分の事のように嬉しそうだ。
問題が解けたことなんて
翔にとってはなんにも嬉しくなかったが、
美優の笑顔を見て、なんだか翔も嬉しくなった。
勉強するのも悪くないな。
翔はそう思えるようになった。
何故か美優は飽きずに教えてくれるし。
ちょっと…いや、かなり教え方が雑だけど…。
でも、毎日毎日教えてくれた。
そして、ついに明日から期末テスト。
それなりに頑張った。
どうせ学年10番なんて無理だけど。
きっと美優は、無理だと思ったから

「学年10番以内に入ったらキスしてあげる」

なんてムチャな事言ったんだ。
でも、ならどうして勉強教えてくれるんだろう…。
やっぱり、ただの気まぐれか…。
それとも…?
そんな事を考えていたら、
期末テスト前夜だというのに
なかなか寝付けなった。

ホントにキス、してくれるのかなぁ…。

無理だとわかっていても、
眠くなるまで部屋の窓から夜空を眺め、
流れ星を探した。

「あんた、気合入れなさいよ!
 あたしがこんだけ教えてあげたのに
 良い結果出せなかったら、承知しないんだから!!」

美優はいつだってこの調子。

「う、うん…」

変に緊張した…。
たかが期末テストなのに。
廊下でテスト直前の見直し。
教室では教師がテストの準備をしている。

「あ… あの公式…
 4acだっけ4bcだっけ…?」

見直せば見直すほど不安になる。

「『-b±√b^2-4ac/2a』よ!
 あんた、この公式は重用だからちゃんと覚えてって
 さんざん言ったじゃない!」

美優が怒る。
まあいつもの事だ。

「ご、ごめん…」

翔はいつも以上に弱腰だ。

「はーい、じゃあ教室入ってー!」

生徒たちが続々と教室の中に入ってゆく。
翔と美優も自分の席に着いた。

「頑張んなさいよ!」

「うん…。」

翔は小さく頷いた。

「問題用紙を配るので、
 裏にしたまま後ろに回して。」

いよいよテストが始まる。

「じゃ、はじめて!」

一斉に問題用紙を裏返す音がした。
その音を聞いて、翔の緊張と不安が高まる。
カリカリカリカリ、シャーペンの音がする。
翔も問題を解き始めた。

「はい、やめ!

 一番後ろの人、集めてきてー。」

翔はシャーペンを置いた。

「ふぅ…」

深いため息をつく。

疲れた。

試験を受けただけでこんなに疲れたのは、

きっと初めてだ。

「どうだった?」

テストが終わると、すかさず美優が聞いてきた。

なんだか嬉しそうだ。

きっと自分は満足のゆく結果だったのだろう。

「う〜ん…

 たぶん、それなりには…」

いまいち自信無さげな翔。

「なによそれ!?

 ちゃんと全部解けたんでしょうね!」

「一応… 解くだけは解いたけど…。」

そんな会話をしながら廊下へ出て、

次の科目の教科書を鞄から出す。

それの繰り返し。

美優はテストが終わるたびに

毎回飽きもせず聞いてきて、

少しうざったかった。

そんな調子で、3日間の期末テストが終わった。

数日後、各教科の期末テストが次々と返却された。
翔は、いままでに見たこともないような
高得点を連発し、教師たちを驚かせた。
そしていよいよ、
成績上位者が掲示板に貼り出される。

5教科総合

1位  西濱 綾
2位  緋村 美優

このふたりは毎回同じだ。

「ちぇっ また2番かぁ…」

不満そうな美優。
徐々に下へ下へと視線を落とす。

3位… 4位… 5位…

        ―――――― 無い。

6位… 7位… 8位… 9位…

        ―――――― 無い!

10位  上戸 恵

11位  緒方 翔

―――――― 11位かぁ…

「はぁ…」

まあ、人生こんなもんだよ。
そうそう旨くはゆかない。

「すげえじゃん!緒方!!
 お前こんなに勉強できたっけ!?」

栗原にそう言われても、クラスメイトに驚かれても、
翔は全然嬉しくなかった。
その日は、一日が長かった。
そして、夕方。
翔はまたあの公園にいた。
家に帰るのが嫌だった。
どうせ親は結果を聞いてくるだろう。
そして、11位という、翔にとってはまったく無意味な現実を、
きっと手放しで喜ぶに違いない。

「クソッ!!」

『露出狂に注意』と書かれた看板を、思いっきり殴りつける。
少し、へこんだ。翔の心のように。
大したへこみじゃない。
だけど、逆に翔の拳からはじんじんとした痛みが伝わってくる。
翔はブランコに揺られていた。

「なに落ち込んでるのよ!」

ハッとした。
美優は隣のブランコに座った。
落ち込んでいる翔とは対照的な、明るい声。

「すごいわね〜。
 万年”中の上”だったあんたが、
 一気に学年トップクラスよ!」

その場違いな明るさが、気まずい。
その痛い空気が、ふたりにはひしひしと感じられる。
今日も、いつもと同じ光景。
砂場で遊んでいる子供たちを母親が迎えに来て、
手を繋ぎ楽しそうに喋りながら夕日に消えてゆく。
何処か寂しげなこの公園は、今はふたりだけのための世界。

「…あんた、そんなにあたしとキスしたかったわけ?」

翔は何も言わなかった。
だけど、美優は少し考えて、
遠くの景色を見ながらこう言った。

「いいよ。…してあげる。」
「え…?」

翔は俯いていた顔を上げ、美優の方を向く。
美優の横顔は、いつも以上に可愛く見えた。
だから、翔はすぐにまた俯いた。

「でも、11番だし…。」

美優は、いつもの顔、いつもの声で、こう言った。

「あんた、男でしょ!?
 細かい事気にしないの!
 10番も11番も変わんないじゃない!」

だけど、いつもよりずっと可愛かった。

「…いいの?」

まじまじと見つめてくる翔の目を
見ることが出来ない美優は、
頬を赤く染めてそっぽを向いた。

「いいって言ってるじゃない!」

そして、目を瞑り唇を差し出す。

「ほら!」

翔はゴクンッと息を呑み、顔を近付けてゆく。
そして徐々に目を閉じ、唇と唇が…

―――――――――― 重なる…。

プルンッとしていて柔らかく、
とても不思議な感触だった。

幸せ…
ずっとこのまま触れていたい…。
離したくない…。
翔は唇を離そうとしなかった。
美優が離れるまで…
ずっとこのまま…
美優も離そうとしなかった。
美優の両手が翔の頬に触れた。
そして、美優の舌が翔の唇をこじ開け入ってくる…。
翔はハッとして目を見開く。
目の前に見える彼女の顔は、
いままで見たどの顔よりも、可愛かった。
目を閉じ、頬を赤く染め、
舌をぎこちなく動かす美優。

翔は美優の肩を抱き、
ブランコごと美優の身体を抱き寄せた。
そして、再び目を閉じ、
美優の舌に自分の舌を絡める。
美優は応えた翔の舌に驚き、
身体をビクンッとさせた。
そんな美優が、可愛かった。
そして、ふたりはゆっくりと
ぎこちなく舌を絡め合い、
唾液を混ぜ合う。
舌と舌とが絡まり合い、
いやらしい音が響く。
ふたりの唾液が混じり合う…。
美優の、味がした…。
ときおり漏れる美優の甘い吐息が、
自分たちが今、いかに淫らな事をしているのか教えてくれる。

翔の頬に触れた美優の手は、震えていた…。
美優の、胸の鼓動が、聞こえる。

とくんっ… とくんっ… とくんっ… とくんっ… 

それは、大人の階段を、一歩一歩踏み締める音。

…だけど、

僕達は、まだ、子供だ。

…そう。

ただの、子供だ。

「んぁ…ぁ  はぁ…はぁ…」

唇が、離れた。
翔はゆっくりと目を開けた。
ぼんやりと美優の顔が見える。
微笑んでいるようにも見える
その美優の口元には、
混ざり合った濃厚な唾液が垂れていた。
美優はそれを腕で拭いて、
目を逸らした。

ふたりはブランコに揺られていた。
夕日が沈む…。
この沈黙を、”気まずい”というのか
それとも”良い雰囲気”というのか…。
それを決めるのは、彼らの心の持ち様だけだ。

この胸の高鳴りを、”緊張”というのか
それとも”恋”というのか…。
それを決めるのは、彼らの心の持ち様だけだ。

だけど、
僕らは、まだ、
子供だった。

美優は何処か遠くを見ていた。
そして、ポツリと呟いた。

「ヘタ…。」

なんでだろう…。
馬鹿にされてるのに、優しい気持ちになった。

「緋村だって…。」

美優はこっちを向いてくれなかった。

「あたりまえじゃない…。
 キスなんてした事ないんだから…。」

若気の至りというか、なんというか…。
僕らはあの頃からずっと…
ずっと不器用な、アダムとイヴだった。
美優は、可愛い。
だけど、煩い。
でも…
僕は、美優が好きなのかもしれない…。
彼女は、キスをさせてくれた。
しかも、舌を絡める、深いキスを…。
それも、自分から舌を入れてきた。
そして、僕は、それに応えた。
僕は、もっとしたかった…。
もっと… もっと…
それに、ちょっとだけ…
エッチな事も、してみたかった…。
僕は、美優と…
エッチな事が、したかった。
それは…
僕が、美優の事が好きだから…?

そう…なのかなぁ…?

「お〜い、緒方ぁ!」
「はっ…」

学校への道をトボトボと歩いていると、
突然後ろから声をかけられて驚いた。

「あ、栗原。おはよう。」
「おう、おはよう!」

こうして今日もまた、一日が始まる…。
昨日とは違う、今日が。
歩きながら話すふたり。
翔は俯き加減で、栗原は頭の後ろで手を組んで上を見て、
対照的なふたりである。

「今日の1時間目は水泳だな。」
「うん。
 面倒くさいから、もう水着はいてきたよ。」
「あ、海パンはいてきたのか〜。
 俺もそうすれば良かったなぁ。」

栗原はニヤける。

「緒方は水泳だけは得意だよな?」
「まぁ。」

運動が大の苦手の翔だが、

幼い頃からスイミングスクールに通っていたため

水泳だけは得意なのだ。

「でも、得意ってほどじゃないよ。
 人並みにってだけ。」
「だけど、俺に比べたら遥かに良いよな。
 俺はカナヅチだからなぁ。
 水泳の授業は嫌いだな。
 でも…」

またニヤける。

「…女子の水着姿が見れるのはオイシイな。」

翔は顔を赤くする。
なぜか、頭に美優の顔が浮かんできたからだ。
美優の水着姿かぁ…。
そんな事を考えていたら、
突然、

「あんたたち、急がないと遅刻するわよっ!」

美優の声がして、びっくりした。
美優は翔の顔を見ずに、そのまま走っていった。

「今日も元気だなぁ。」

翔は美優の背中をボーっと眺めていた。

「俺らも急ごう。」
「あ…うん。そうだね。」

ふたりは早足で学校へと向かった。

1時間目は体育。
男子も女子も水泳だ。
例の如く、女子は更衣室で着替えるのに、
男子は教室で着替えさせられる。
教室で着替えて、海パン一丁で校舎の中を歩き回り
プールまでいかなければならない。
まったく、なんて仕打ちだ。

でも、考えてみると
小学校の頃は男子も女子も
同じ教室の中で一緒に着替えてたっけ。
あの頃は、女子だからって特に気を掛けなかったけど、
今思うと惜しいことをしたな。
誰もが一度は思うこんな事を、翔も考えていた。
翔と美優は、小学校からの仲だ。
小学6年生の時も同じクラスだった。
もっと美優の着替えのシーンを目に焼き付けておけば…
そんな馬鹿げた事を考えてもみたが、
よくよく思い出してみると、
当時は美優だけでなく綾とも同じクラスだった。
そして、綾は男子の前で堂々と全裸になり着替えていて
翔もその様子をチラチラ見ていたのだった。
男子はタオルを巻かずに全裸になって着替える人も数人いたが、
女子でそんな事をするのは綾だけだったな。

そんな事を思い出すと、なんだか急にムラムラしてきた。

「やばい…」

翔は呟いた。
こういう事態になると、男は辛いよ。
とりあえず上半身は裸になり、
下半身にタオルを巻く。
栗原は、もう着替え終わって翔を待っていた。
だけど翔は、これ以上着替えようにも着替えられない。

「あ、栗原、もう着替え終わったんだ。
 先行ってていいよ。」
「んー?
 いいよ、待ってるよ。」

栗原が何の気無しにそう言うと、
翔は絶望の淵に立たされるのだった。
そして、数分後
ふたりは海パン一丁で廊下を全力疾走するはめになる。

「まったく!
 緒方がチンタラ着替えてるからだぞ!」
「ご、ごめん…」

キーンコーンカーンコーン

「やばいっ! 急げ!!」

プールサイドを走るふたりを横目で見ながら、美優は

「まったく、なにやってんだか…。」

そう呟いて、優しい微笑を浮かべた。

「ふぅ… ぎりぎり間に合ったかぁ。」

栗原は腕で額の汗を拭う。

「はぁはぁ…はぁはぁ…」

翔は息を切らしていた。

「遅いぞ。栗原、緒方。
 今日は自由プールらしいぜ。」

自由プール、つまり各々好き勝手にやれって事だ。

「え、まじで?
 あの厳しい先公が?」
「今学期の体育が今日で最後だからじゃない?」

翔がそう言うと、

「ああ、だからかぁ。」

栗原は納得した。
それからすぐ体育教師が来て、
今日の授業は自由プールにする事を伝えた。
みんなは一斉に喜びはしゃぎ、無駄な元気を爆発させた。
それから準備体操をするわけだが、
何故か普段適当にやっているようなやつも
ここぞとばかりに真面目に取り組むのである。
不真面目な態度だと、自由プールが取り止めになるとでも
思っているのだろうか。

そしてシャワーを浴び、
その後はもう、完全に自由だ。

「女子も自由プールかぁ〜。」

翔はコースロープにぶら下がって、
ボケーッと眺めていた。
他のクラスメイトたちのように
バカ騒ぎして水を掛け合うのにも、
もう飽きてしまった。
向こうでは綾が泳いでいた。
綺麗なフォームのクロールだ。
ゆったりとしていて、優雅な感じがする…。
水に濡れた綾は、とても色っぽかった。

ジャバーッ!

「ぷはっ ゴホッゴホッ」

突然水を掛けられ、翔は水を飲んで咳き込んでしまう。

「あんた、また女子の方見て!」
「ご、誤解だよっ!」

とっさにそう言った翔だが、
振り返って美優の顔を見ると急に黙ってしまう。
ふたりは沈黙のまま、顔を真っ赤にした。

「僕は、その…、なんて言うか…昨日は…」
「ちょ… 昨日のあれは、なんでもないんだからねっ!勘違いしないでよ!」

美優の目が泳いでいる。
翔の目は点になっている。

ピーーーッ!

「集合!」

女子担当の体育教師がホイッスルを鳴らし、
集合を呼びかける。
時計を見てみると、もう終了時刻10分前だ。

「あ、行かなきゃ…」

美優は翔をひとり残し、プールサイドの方へ泳いでいった。
翔は、その美優の背中をぼんやりと見つめていた。
プールサイドに辿り着いた美優は、
縁を持った手で体重を支え、バタ足で勢いをつけて
プールから上がった。

スクール水着がおしりに食い込んで、
なんだかとってもセクシー。
美優はプールサイドを歩きながら、
水着とお尻の間に指を入れて引っ張って
それを直した。

『…女子の水着姿が見れるのはオイシイな。』

確かにオイシイかも…。
体のラインがはっきりわかる。
緋村って、思った以上にスタイルいいんだなぁ。
遠くてよくわからないが、
乳首が立っているように見えなくもない。
冷たい水に浸かっていると乳首が立ってしまうと
よく聞くが、本当だろうか。

こうして、今学期最後の体育の授業は終わった。
シャワーを浴びて、目を洗い、タオルでよく体を拭き、
それから校舎の中へ入っていく。
教室に着くと、とりあえず素早く着替える。
いつかみたいに着替える前に美優たちが来たら大変だ。
着替え終わった翔は、「ふぅ」と一息つき、
タオルでゴシゴシと髪の毛を乾かす。
栗原のように短髪なら
髪を乾かす手間などかからないだろうが、
翔はそうはいかない。

数分後、やはり美優も髪を乾かしながら教室に帰って来た。
濡れた髪を乾かす姿は、何処か大人っぽい感じがする。
美優は翔の隣の自分の席に着き、翔を手招きした。

「なに?」

そう言って顔を近付けると、美優は小声で言った。

「あんた、昨日のこと絶対内緒だからね!
 誰かに言ったら、ただじゃおかないんだから!」

少し、顔が赤い。

「ん? なんの話だ?」

栗原が割り込んでくると、ムッとして

「何でもないわよ!」

と言って、そっぽを向いた。

今日は、風が強かった。
ベランダのドアが開いていて、
カーテンが大きくなびいていた。
教室にクーラーなんて高価な物は無いから、
吹き込んでくる風は夏の熱さを和らげてくれる唯一の救いだった。

だんだん女子たちも教室に戻ってきた。
多くの女子は、髪の毛を乾かしながら
楽しそうに喋っていた。

綾も教室に戻ってくる。
乾ききっていないショートヘアが、
何だかとっても色っぽい。

と、その時、

ビュー!

っと突風が吹き込んだ。
数人の女子のスカートが捲り上がる。

みんな「キャッ!」とすぐにスカートを押さえるが、

綾だけはそんな事には無頓着だ。
パンツが見えることなど、気にしない
と、思いきや…

「え…!?」

翔や周りにいたクラスメイトたちは唖然とした。
綾は、スカートの下に何もはいていなかったのだ。
翔には、はっきり見てとれた。
綾の割れ目が。
恥毛の無い秘部が。

「キャー!!」

女子の誰かが悲鳴をあげた。

「おい、マジかよ!?」
「ノーパンだったよな?」
「毛、生えてなかったぜ!」
「…俺、見逃した。」

ざわつく教室。

ダンッと机を叩いて美優が立ち上がる。
そして、綾の前へと躍り出て、彼女を睨む。
美優は綾のスカートに手をかけ、
それを捲って中を覗きこんだ。
嫌悪の表情を浮かべながら。

「あんた、なんで下、はいてないのよ!?」
「別に…」

綾は顔色ひとつ変えなかった。

そんな綾とは対照的に、自分の事でもないのに顔を赤らめ
手で顔を覆っていた恵が、その手を離し
何か思いついたかのように、ポンッと手を叩いた。

「あ!わかった!1時間目がプールだから、家から水着着てきたんでしょ?
 それで下着を持ってくるのを忘れた…とか。」

――― 沈黙。

「…ええ。その通りよ。」

「あんた、ブルマとかないわけ?」

美優が捲ったスカートを離すと、
綾は静かに呟く。

「今日は持ってきてないわ。」
「しょ〜がないわね!
 わたしの貸してあげるわよ!」

そう言いながら美優は、はいているブルマを脱いだ。
これで、美優のスカートの中は、おそらくパンティ一枚。
美優は脱ぎたてのブルマを、綾に差し出す。
だが、綾は頑なにそれを拒んだ。

「どうしたの?受け取りなさいよ!」
「…いらない。気持ち…悪いもの。」

冷たい声とともに風が吹き、またスカートが捲れる。
綾と、美優の、スカートが。

「キャッ!」

美優は何とも似つかない女の子らしい声を出して
とっさにスカートを押さえた。
だが、それも虚しく後ろは丸見えだった。

綾は先程と同様、風に遊ばれて
されるがままに、下半身を露出した。

「見えた!」
「ああ、バッチシ見えたぜ!」
「あんなふうになってるんだなぁ」
「なんだ、お前、見たことなかったのか?」

「…見た!?」

美優が振り向いて、翔を睨む。

「え… そ、その…、ちょっとだけ…」

はっきり見えた。黒のひもパンだった。
美優がそんな大胆な下着を着けてるなんて
思ってもみなかった。

「俺は見えなかったー。
 緒方、何色だったんだ?」

空気を読めない栗原がそう言うと、
美優が翔をギロッと睨む。
翔は固まった。
メデューサに睨まれたかのように。

「カーッ!なんなのあのコは!?」

美優は怒りを露にしながら
ドスンッと自分の席に殴り座った。

「西濱は変わりモンだからなぁ。」
「ははっ 確かにちょっと変わってるから…
 緋村、そんな気にしないで。」
「まったく!」

美優はかなり機嫌が悪い。
プンスカしながらブルマをはき直した。

その後、綾は
心無い男子生徒に2,3回スカートを捲られ、
なにも抵抗しないため何度も秘部を晒した。

美優の機嫌は直らない。

「てか、なんであのコは隠そうとしないわけ?」
「さ、さあ?でも…」

抵抗したら、面白がって
もっと酷い事をされてしまう。
それを綾は知っているのかもしれない。
昔の、いじめられた記憶が
綾にそう教えるのかもしれない。
翔には、そう思えた。
翔は立ち上がった。

「ん? どうしたの?」
「え… あ、トイレだよ。」

学校のトイレは汚い。

だけど、翔はここにいると落ち着く。

トイレの窓からぼんやりと外を眺めた。

空の向こうに、富士山が見える。

「蒼い空に… 雲は流れ… かぁ…。」

そして、ため息。

「ひもパンかぁ…。」

緋村は、僕のこと、どう思っているのだろう…。
なんでキスしたんだろう…。
翔は自分の唇に触れてみる。
この唇に、緋村の唇が…。
そう考えると、頭がおかしくなりそうだ。
「ふぅー…」と深いため息をつき、
微かに臭うトイレの異臭に嫌気がさす。
用を足したわけではないが
冷たい水で手を洗い、
ふと、鏡に映る自分の顔。
ひび割れた汚れだらけの鏡に映る、少年の姿。
運命さえまだ知らない、いたいけな瞳。
「ふぅ…」と何度目かのため息をついてから、
トイレから出ていった。

現実の世界へと。

ドタン!!

「イテテ…」

ボーっとしていて、出会い頭に誰かとぶつかったのだ。

「ご、ごめんな…さ…」

―――― 綾だ。

綾は、倒れた拍子にスカートが捲り上がって、
翔の目の前に全てを曝け出した。

―――― 沈黙。

刻が、止まった。

「あ… その… ぇと…」

困惑する翔が、紅い瞳に映る。
血に染まった世界のように。
翔の目に映るのは、
恥丘、陰裂、そして産毛のような恥毛。
秘められた領域を曝け出し、
綾は今、何を想うのだろう。
人形のように投げ出された身体は、
一切の意思を持たない…。

ハッ―――――

周りの生徒たちが笑ってる。

「やだぁ〜」
「うへへ…」
「なんではいてないのぉ?」
「さいってぇー」

嘲笑の渦の中で、彼女は。
彼女は…。

俯き加減で髪を垂らし、ゆっくりと立ち上がる。

そして、
何事も無かったかのように去って行った。
何事も無かったかのように…。

いや、本当に何事も無かったんだ。
彼女にとっては。

そして、翔は知ることとなる。
嘲笑は、自分にも向けられていたのだという事を。

だから翔は、顔を赤くして教室に逃げ込んだ。
なんだか、疲れた…。

ひもパンの美優と、ノーパンの綾。
まったく、今日はハチャメチャな一日だった。

もうすぐ夏休み…。

ようやく退屈でつまらない日常から開放される。
今までは、そうだった。

だけど、今年は違う。
受験生だから。
勉強しないといけないらしい。

「好きなようにしなさい。
 でも、今勉強しないと後で後悔するわよ。」

母親にはそう言われた。

「ほう… S高校ですか…。
 今の実力では、ちょっと厳しいかも、しれませんねぇ。」

担任にはそう言われた。

「ちゃんと勉強して、絶対S高に入れるようにしなさいよ!」

美優にはそう言われた。

―――― 正直… 煩い。

だけど、そんなアパシーと相反するキモチが、
翔の心の隅っこに、微かに息衝いていた。
それは、美優の唇がくれたもの。

それは、
君がくれたもの…。
そして、時は流れ…

「僕と、付き合ってください!」
「いいわよ。」

翔の告白に美優がそう答えたのは、
既に美優が推薦入試でS高に合格した後の事だった。
翔は、美優の唇が忘れられなかった…。

その日の朝の話。

「あれ…?まだ誰も来てないんだ…。」

朝のガランとした教室を見て、翔は呟く。
席に着き、くたびれた鞄から単語帳を取り出す。
朝の教室は静かだから好きだ。
勉強でもしようかなって気分になれる…。
なれるのに…。

「あ、翔!
 あんた、朝早いのね〜!」

うるさいのが来た。

「たまたま早く起きたから、
 早く来て勉強でもしようと思って。」
「ふ〜ん。」

美優は自分の席に座ると、
身を乗り出してニヤニヤしながら話しかけてくる。

「あんた、S高受けるわよね!?」

別にそんなに顔を近付けなくても、話は聞こえるのに。

「受けるつもりでは…いるけど…。」

翔は変な汗をかいた。

「そう、それならいいわ。」

そう言うと美優は、机に突っ伏した。

「…緋村は勉強しないの?」
「あたしはいいのよー!
 あんた、人の事心配する余裕なんてないんじゃない?」

確かにその通り。
以前に比べかなり成績は良くなったが、
それでもS高のボーダーには程遠い。
翔は単語帳を捲った。
静かな教室。
翔と美優、ふたりきり。
そんなに見つめられると気が散る。
少しニヤついてるような。

「…キスでもしよっか?」
「へ…?」
「あ、違っ!
 今の無し!!何でもない!!」

顔を真っ赤にして、慌てる美優。
緋村、今日はなんだか、少し変みたいだ…。
だんだん教室にクラスメイトたちが集まる。

キーンコーンカーンコーン

担任が教壇に立つ。

「みなさん、お早うございます。」

こんな年寄りの話なんて、ほとんど誰も聞いていない。
「お早うございます」と言われ
「お早うございます」と返す生徒など、ひとりもいない。
だけど、老教師はそんな事など気にとめない。

「えー 本日は、
 嬉しい、お知らせが、あります。」

特に今日はとてもにこやかだ。
いつもと同じ穏やかな口調の中にも、
それがうかがえる。

「昨日、公立高校の、推薦入試の、合格発表がありまして、
 このクラスからも、合格者が、出たわけです。」

その言葉を聞くと、普段は担任の話なんて聞かずに
好き勝手やっている生徒たちも、
「おおーっ」と声をあげ担任の話に聞き入る。

「まずは、S高校、合格者。
 西濱、綾。 緋村、美優。」

教室中が盛り上がる。

「緋村…!?」

翔が慌てて横を向くと、
美優は勝ち誇ったように微笑んで
小さくピースサインをした。

「S高校に、推薦で、受かったのは
 学年でも、このふたり、だけですので…」

公園が夕日に染まる。
この世界に、ふたりだけ…。
ブランコに揺られる、ふたりの影…。

くっついては… また離れ…

離れては… またくっつく…

それは、

―――― 僕らのdilemma

「緋村…。合格おめでとう…。」
「へへっ。ありがと。」

珍しく照れ笑いをする美優が、
とても可愛く見えた。

「あんたも頑張んなさいよ!」
「うん…。」

翔は自信無さ気に目を伏せる。

「…それにしても、推薦で受かるとは思わなかったわよ。」
「うん、ビックリしたよ。
 緋村、推薦の話なんて一回もしてくれなかったし。」
「なんたって、うちの中学からS高に
 推薦で合格する人なんて、ほっとんどいないからねー。」

美優は得意そうに喋った。

「そうだよ。
 毎年一人いるかいないか、ってくらいでしょ?
 今年だって緋村と西濱のふたりだけだし…。」

翔もそれに調子を合わせる。
美優の合格を、素直に喜んでいるからだ。

「へへへっ、あたしってスゴイ?」
「うん。ほんと凄いよ。さすがだよ。」

珍しく翔が褒めるから、
美優はなんだかとっても気分がいい。
顔を赤らめるくらい照れて、
普段とは違う女のコっぽい美優が、
……可愛かった。

「じゃあさ…。ご褒美にキスしてよ。」

ご、ご褒美…?
そんなの緋村のセリフじゃない…。
唖然とする翔。

「や〜ね、冗談よ!」
「へへっ 翔ったら、
 顔真っ赤にしちゃってさ!」

馬鹿にしたように笑う笑顔が、
可愛くて、可愛くて、ムカついた。

だから…

――――― キスした。

美優は目をパチパチさせていた。
きっと、驚いたに違いない。
翔はもう、後には引けなかった。
舌を、入れた。
舌を入れたらすぐ、それに応えてくれた…。
美優は、それに応えてくれた…。
ゆっくりと瞳を閉じて… それに応えてくれた…。
あの日と同じ場所… 同じ光景…
違うのは、翔の決意。
違うのは、美優の涙。

ギィギィと不器用な旋律を奏でる
ふたりのバイオリン弾き…
とくんっとくんっと拍子を刻む
噛み合わないメトロノームたちが
徐々にその間を詰めてゆく…

「あのさ…」

暮れなずむ空…
静寂の公園…

「その… 僕…」

黄昏れる少年…
静かな少女…

「緋村の事…」

揺れるブランコと、揺らぎない想い。

「好きだから…」
「その…」

震える翔の声。
大好きなバラードを聴くように、
目を伏せ優しい顔をする美優。

「僕と、付き合ってください!」

紅潮する頬をスッと伝った一雫を、
美優は気付かれないように人差し指で拭った。

「…いいわよ。」

揺られていたブランコから飛び降り、
振り向いて意地悪な顔をする美優が…

「ただし、あんたがS高に受かったらね!」

…いつにも増して、可愛かった。

「が、頑張るよ!」

一気に緊張の糸がほぐれたように、
ふたりにいつもの笑顔が戻ってくる。

「あたしも受かっちゃってど〜せ暇だから、
 あんたの勉強見てあげるわよ。」

楽しそうな笑顔…
嬉しそうな声…

「…明日から、放課後あんたの家に行って。」
「え…。」
「イ、イヤなら別にいいのよっ!」
「ううん、お願いします!」

それから数週間、美優は毎日翔の家に通った。
両親は共働きで、夜まで帰ってこない。

美優とふたりっきり…

そう思うと、興奮と緊張で
勉強に手がつかない…。
しかし、そういう素振りを少しでも見せると

「あたしはあんたの彼女じゃないのよ!
 そんな事して、いいと思ってんの!?」

と、どやされる。
出来るだけ気にしないように。
そう思っても気になってしまう…。
だけど、一度勉強に集中し始めると、
案外気にならないものだ。
美優は教え方も上手いし、
意外と教師とかに向いているのかもしれない。
ただ、その荒っぽい性格を直したら、の話だが。

そんなこんなで、日々は過ぎていった。

受かったら緋村と付き合える。
その約束を胸に抱いて―――

そして、

高校入試を翌日に控えたその日。
カリカリ…カリカリ…
緊張な面持ちでシャープペンを走らせる翔。
その横で、漫画の単行本のページを捲りながら
時計をチラッと見る美優。
ポンッと本を閉じる。

「はい、止め!」

美優の凛とした声で、ペンが止まる。
「ふぅー」と一息つき、
美優に解答用紙を手渡す。
グラスに注いだオレンジジュースを一口飲んで、
乾いた口を潤した。

「はぁ…」

シャカシャカ…
採点をする美優を、まじまじと見つめる。
美優は見つめられている事なんて
まったく気にしてないようで、
実は結構気にしている。
だけど、翔に気付かれまいと、
絶対にそんな素振りは見せない。

「はい、出来たわよ。」
「88点…
 …どうなの、これ?」

不安そうに尋ねる。
翔のそういう顔は、見ててイライラするが
そんなところも嫌いじゃない美優がいる。

「ん…、いいんじゃない?」

適当な返事を返す。

「ちょっと、休憩ね。」

美優は学校の制服を着ているが、
教室と違って暖房の効いた翔の部屋なので
上着は脱いでブラウスを着崩している。
何度見ても思うが、
自分の部屋に美優がいる、この光景に
物凄く違和感を覚える…。

この狭い部屋に、美優と翔、ふたりっきり…。

ダメだ。
勉強をしてないと
変な事ばっか考えてしまう…。
余計な雑念を振り払い、
机の上の参考書に手を伸ばす。
すると…

「あ!」

美優のグラスに腕が当たり、
誤ってジュースを零してしまった。

「きゃっ!」

と、可愛い悲鳴をあげる美優。
真っ白いブラウスに思いっきりジュースがかかってしまう。

「う〜、冷たいー!」

頬を膨らませてそうぼやき、
ティッシュを数枚取ってそれを拭く。

「ご、ごめん!」

そう言って恐る恐る美優の顔を覗くと、
案外それほど怒っていないようだ。
それより、濡れたブラウスからブラが透けている…。
翔はゴクンッと息を呑んだ。

「ボーっとしてないで、なんか着替え持ってきてよ!」
「あ、うん…」

翔はハッとして、慌てて席を立つ。

「僕の服でいい?」
「いいわよ、それしかないでしょ〜が。」

翔は美優に背を向け、タンスの引き出しを引いた。

「これでいいかなぁ…」

センスのない服を出してしまうと
きっとどやされる。
恐る恐る振り向いてみると…。

「ハッ…!」

美優はブラウスを脱ぎ捨て、
上半身はブラジャーだけの
あられもない姿になっていた。
フリフリのついたピンク色の可愛いブラ。
中学生にしては大きすぎる乳房。
唖然としている翔に美優は平気な顔で言う。

「な〜に固まってるのよ。」

僕は、美優がわからない…。
頭がポワーっとして、その魅惑に惑わされる。

「イヤラシイ事でも考えてるんじゃないの?」

そう笑いながら、美優はふざけて翔の股間に手を伸ばした。

ぐにゅ

「はっ!!」

ボケーっと気を抜いていた翔は、
突然自分のそれを触られて驚愕する。

「えっ…!
 ほ、ほんとに硬いじゃない!!」

自分から触っておきながら、
美優は赤面してたじろいだ。
翔のそれは、本当に勃起していたのだ。

「な、なにこれ…。勃ってるの…?」

美優は聞く。
得体の知れない事象に際会し、
困惑を隠しきれない。

「ご、ごめん…」

翔は顔を赤らめ目を逸らす。
時を刻むカチカチという時計の音が
部屋中に響き渡る。
沈黙が気まずい…。
嫌われた…かな…。

「…脱ぎなさいよ。」
「へ?」

美優の大胆不敵な一言に、思わず間抜けな声を出してしまった。

「いいから脱ぎなさいよ!」
「な…」

聞き間違えかと思ったが、そうじゃないらしい…。

美優は… 誘っているの…?
いや、そういうのはダメだって
美優が言ったんじゃないか…!

混乱する翔に、迫り来るブラジャー。

カチャカチャ

腰を抜かしたように座ったまま
動けないでいる翔のベルトを、
美優はぎこちない手つきで外してゆく。
ズボンを脱がされると、
テントを張ったトランクスが。
目の前に迫り来る美優の胸と、
この異様な展開が、翔を興奮させているのだ。
美優は静かにトランクスを下ろした。
ゴクンッと息を飲む。

「すご…」

美優は思わずそうもらした。

むにゅっ

「ひぃっ!」
「…触っちゃった♪」

なんで笑顔?
触ったというか…
握ってますけど。
自分のあれを、美優が握っている。
この有り得ない光景に、翔は混乱する。
ブラジャーにスカートというアンバランスな格好も、
自分の肉棒に伝わる細い指の感触も、
胸の鼓動と肉棒の脈打ちを早める要因でしかない。
真っ赤に染まった翔の顔と、翔の肉棒を、
しばらく交互に見つめた美優は、
その後…。

シコシコ…シコシコ…

「これで、あってる?」

なんと美優は翔の肉棒を上下に扱きだしたのだ。

「あってるけど… その…」

緋村、何処でこんな事覚えたんだろう…。

シコシコ…

「あんた、毎晩こんな事してんの?」

悪戯をする子供のような無邪気な笑顔に、翔はドキッとしてしまう。

シコシコ…

「ま、毎晩じゃないよ!その… 時々は…」

何言ってんだ、僕…。

シコシコ…

「さいってーね!」

ほら、嫌われた。

シコシコ…

「ゴメン…」

しょんぼりと俯いた翔を見て、美優は慌てた。

「そ、そんな顔しないでよ!
 その… 気持ち良い?」

シコシコ…

「うん…」

何だか、嬉しかった。
このよくわからない不可思議な状況の中で、
翔は少しずつ、美優の気持ちに気付いていく…。

シコシコ…

「あたしの裸とか想像しながら
 こういう事してるの?」

嬉々とした様子で聞いてくる。

シコシコ…

「え… そんな…」

シコシコ…

「あたしのコト、好きって言ったじゃん!」

美優は翔の顔を覗き込むようにして見つめる。
もちろん、手の動きは止めない。

「どうなの?」

シコシコ…

「ごめん…、想像…して…その…」

翔は顔を真っ赤にして、羞恥心に駆られる。

「へへっ 嬉しいかも。」
「え?」

意外な言葉に、拍子抜けする。

「な〜んでもないわよ!
 ほら、気持ち良いでしょ?」

シコシコ…

「うん…」

普段自分でやる虚しい行為を、好きな人がしてくれている。

翔を見つめる眼差しは
何処か優しくて…
何処か儚げで…
何処か… 愛おし気で…
そんな目で見つめられたら…

僕…

シコシコ…

「あ、あのさ…」

シコシコ…

「お願いがあるんだけど…」

そう言うと、指の動きがピタリと止まった。
美優の顔を見てみると、
さっきまで痛いほど見つめていたその目を逸らし
顔をますます火照らせていた。

「ダ、ダメよっ!
 これ以上はあんたがS高に受かってから
 するんだから!」
「へ…?」
「あ、いや…その…」

ポカンとした翔に、美優はもうたじたじ。
顔は真っ赤だし、目は泳いでいる。

「あ、何か出てきてるわね!
 これが”せ〜し”ってヤツ?」

冷静を装い、話を逸らす。
そんな美優が、可愛かった…。

「え、これは違うよ…
 もっと勢いよく出るし。」

刺激を止められ、不機嫌そうに熱り勃つそれ。
それを不思議そうに見つめる美優。
その美優を、恥ずかしくてなかなか見れない翔。

「じゃ、なんなのこれ?」
「その… あの… ガマン汁…?」
「ふ〜ん…」

ビクンッ

何を思ったのか、美優は先っぽを指でツンと触った。

敏感なそれは、オーバーリアクション。
美優は指に付いたガマン汁を、ペロッと舐めてみた。
翔は息を呑んだ…。

無言。
料理研究科が、シェフの目の前で料理を一口口に運び、
目を閉じよく味わう。
その第一声を待つ静寂。
馬鹿みたいな話だけど、そんな感じだ。

だけど美優は、無言のままだった。

無言のまま、再び翔の肉棒に手を伸ばす。

シコシコ…

「え、あ…」

シコシコ…

「フフッ。明日、頑張ってよ。」

不思議な笑顔…。
普段見たことの無い、優しい笑顔…。

「う、うん…」

シコシコ…

「絶対受かんなさいよ!」

美優がニヤけた笑顔でそう言うと、
翔の顔が一変した。

「や、やばい!もう…無理…」

シコシコ…

「はぁ?もっと自信持ちなさいよ!」

ちょっと不機嫌そう…。

シコシコ…

「そ、そうじゃなくて…、あ! あぁ…」

ビュッ ビュッ ビュッ

美優の背中に炎が見える…。
メラメラと怒りに燃えるその拳。

「あんた!顔にかかったじゃない!!」

こっちのほうが、美優らしいな。
…そうは思った。
けど。

「しょうがないじゃな…い…か…」

美優の顔を見ると、声が途絶えた。
この画は… エロ過ぎる…!
美優の顔面にぐっちょり付いた大量の精液。
怒った顔さえ可愛い美優。
なんだか、夢みたいだなぁ…。
夢みたい…
夢…
なんか…ボーっとしてきた…。

「んん… 緋村ぁ…」
「…翔?寝ちゃったんだ…
 クスッ、そんな気持ち良かったのかな。」

美優の優しい笑顔。
精液塗れの笑顔。
美優は自分の顔に触れてみる。
ぐっちょりと付いた粘液が、
なんともいえなく気持ち悪い…。
指に付いたその液を、ちょっと舐めてみる。

「これが… 翔の味…」

指をしゃぶったまま、沈黙…
眉をひそめた。

「…微妙…」

翔の寝顔を覗く美優。
フフッとほくそ笑んで、
寝ている翔の耳元で囁いた。

「翔って…。イクとき、案外カワイイ顔するのね。」

そして、僕達の教師と生徒の関係は終わった。
長かった受験が、終わったんだ。
やるだけの事はやった。
本試もしっかり出来たし、
面接も上手く出来た。…と思う。
後は結果を待つのみ。
だけど、なんだろう…
この胸騒ぎ…。

「なんであたしがあんたの合格発表に
 付き合わなきゃなんないのよー。」

こんな時でもこの調子。

「別に付いて来てなんて言ってないよ?」

翔が普段より荒っぽい言いぐさで言うから、
美優の機嫌はますます悪くなる。

「はぁ?わざわざ来てやってるのに、そんな事言う?」

ふたりとも、いつもと少し違う。
緊張――しているのだろうか。

「落ちてたら、思いっきり笑ってやるんだから!」

そんな事を言う美優も、また、可愛かった。

合格者が張り出された掲示板の前に立ち、
ふたりは息を呑んだ。

「……見るよ。」
「…うん。」

僕達の運命の歯車が今、こうして回り始める…。

 *********************************************

    第弐章 高校時代 −Ambivalence−

 *********************************************

「蒼い空に… 雲は流れ… かぁ…。」

  翔
     退屈なヒト…
          無気力なヒト…
  美優           優しいヒト…
     勝気なヒト…          地球のシト…
          可憐なヒト…
  綾            温かいヒト…
     妖艶なヒト…          太陽のシト…
          美しいヒト…
               冷たいヒト…
                       満月のシト…

少年は、空を見ていた。
何の意味もなく、ただボーっと…。
教室は煩い。
みんな無駄にはしゃいで、何が楽しいんだろう。
以前の翔なら、そう思っていただろう。
だけど、今の翔は――
  ――何処か輝いている。
空を見上げるその眼差しも…。
これから始まる退屈な毎日も…。

クラスに必ず一人はいるような
二枚目男女のたわいもない会話。

「あ、今日って1時間目数学のテストだっけ!?」
「うん。そうだよ。」

彼女は走らせていたシャーペンの動きを止め、
彼の顔を見上げる。

「あ〜、俺、もう無理だ。
 今から勉強しても絶対受からないし!」

わざとらしく嘆く彼を一瞥し、彼女は再び自分の勉強に戻る。
そんな彼女が気に入らないのか少しムッとして、単刀直入に彼は聞いた。

「緋村さんって、彼氏とかいるの?」
「ん?」

不思議そうな顔で彼を見上げる。

「いるけど…?」
「え!? 誰…?」

美優は惚気た顔で微笑み、シャーペンで窓際の少年の方を指した。

「ほら、あいつ。」
「えー!!緋村さんって、緒方くんと付き合ってるの!?」

話を盗み聞きしていたクラスの女子達が騒ぎ出す。
偏差値の高いこのS高でも、生徒は所詮ただの高校生。
色恋沙汰の話には、すぐ食い付く。

「え!マジマジ?」
「うっそー!?」

美優はしまったという顔で、すぐに冷静を装う。

「じょ、冗談よ!」
「嘘だね!ホントは付き合ってるんでしょ!
 どうなの緒方くん!?」

翔は困った顔で愛想笑いする。
まだ翔には友達がいなかったので、
そんなに絡まれずにすんだ。
今この学校にいる知り合いは、
偶然にもまた同じクラスになった美優と綾、
それと隣のクラスに美優の親友の恵。
そのくらいだ。

翔はもともと友達を作るのは得意ではないし、
高校に進学したからといって
わざわざ積極的に友達を作る気にもなれない。
なぜなら、翔には美優がいるから。
それだけで、充分だから。

「まったく、今朝はヒドイ目に遭ったわ。」
「緋村がうっかり喋っちゃうから…」

翔がそう言うと、美優は頬を膨らませる。
雲ひとつない青空…。
屋上は風が気持ちいい…。

「だって…、翔と付き合えるのが嬉しかったから。」
「え?なに?」

風の悪戯で、美優の声が聞こえない。

「何でもないわよ!」

イーッとした顔で、そう叫んだ。
美優の長い髪が、風になびく。
高校生になった美優は、一段と大人びて見えた。

「そういえばさ、髪の毛染めたでしょ。
 大丈夫なの?いきなり校則破って…。」
「大丈夫よ。
 最初っから茶髪なら、誰も怪しまないでしょ。
 ちゃんと担任には地毛だって言ってあるから。」
「ふ〜ん…」

茶色に染めた長い髪は、どう見ても校則違反。
緋村、ムチャするなぁ…。
でも、そんな破天荒な性格も嫌いじゃない。

「…似合わない?」

風になびく長い茶髪を押さえる仕草が、
素敵だった。

「似合ってるよ。
 その… 可愛いよ。」

顔を赤らめる初々しいふたり。

「そう?」
「うん。」

ヘヘッと笑みを浮かべ、
美優はとても機嫌が良い。
今は昼休み。
ふたりっきりで弁当を食べるために、
立ち入り禁止の屋上に無断で侵入したのだ。

「…じゃ、お弁当食べよっか。」
「そうね。
 でも、その前に…」

そう言って上目遣いで見つめてくる美優が、
翔の心を悪戯にくすぐる。

ふたりは目を閉じた…。

チュッ♪

ブーっと真っ赤な頬を膨らます美優。
期待はずれなキスに機嫌を損ねる美優もまた、可愛かった。

この、意気地無し!

美優はきっとそう思っただろう。
だけど、実はそうじゃなかった。

「…緋村、好きだよ。」

こんな間近で言われたのは初めてだ。
翔の吐息が感じられ、なんだか変な気分…。

「嬉しい…。」

美優は珍しく素直に、そう呟いた。
翔は美優の髪を優しく撫でた。
粉雪のようにサラサラで、なんとも愛おしかった。
そして、美優のあごに手を当て、優しくエスコートする。
ちょっと震えているのが可愛いななんて思いながら、
美優はゆっくり目を閉じた。
ふたりは再び唇を重ねる…。

美優は翔の気持ちを尊重してか、
今日はおとなしくしている。
ほんの数秒だって、待ち遠しい…。
早く翔を求め、翔に求められたい…。
そんな想いは、翔に伝わっているのか、いないのか…。

――― そして、ようやく翔の舌が暴れ始める。

「ぁん… んん…」

翔の舌を優しく受け入れ、
自分の舌を絡める。
吸い付くように襲い来る翔の唇…。
高鳴る胸の鼓動…。
美優は翔の腰に手を回す。
ギュッと抱き締めて、甘く切なく愛を求める…。

「んんぁ… ふぁ…ん」

意図的に唾液を混ぜ合い、恣意的に愛し合う…。
青空の下でふたりは。

「んぁあ! んぁ… はぁはぁ…」

ふたりの唇が離れる…。
唇と唇の間に、いやらしい架け橋が架かる。
甘い吐息が、切ない…。

顔を真っ赤にして、見つめ合うふたり…。

そんなにまじまじと見つめられると、
それだけで、もう…。

「う、上手くなったわよ。」

そう言って美優は目を逸らした。
「そう?」と冷静を装い笑いながら、
家でシュミレーション(妄想)してきて良かった!
翔は小さくガッツポーズをしたのだった。

「お弁当食べましょ!」

そう言って恥ずかしさを紛らわそうとする美優。
小さめなお弁当箱を開けると、なんだか良い匂い。

「うわー、美味しそうだね〜。
 自分で作ったの?」
「え…、そんなワケないじゃない!
 おかーさんよ。」
「あ、そう。」
「あんたねえ、あたしが料理なんて出来ると思ってるの?」
「ハハッ まあ、思ってないけど。」
「ひどーい!」

美優は頬を膨らせる。
怒っているのに楽しそう…。
翔はこの顔が大好きだ。
弁当を食べながら話す。
美優と食べると、冷え切った手抜き弁当でさえ
美味しいから不思議だ。
たわいもない雑談も、くだらない笑い話も、
なんだかとても楽しかった。

「あ…、放課後、暇?」

突然の質問に、ちょっとドキッとした。

「うん。」

特に用事はない。
というか、仮に用事があっても、
美優の誘いなら大概の用事はすっぽかすだろう。

「じゃあさ、買い物付き合ってよ。」

デートのお誘い…。でも…

「…おごらせる気?」
「もちろん。」

フフッと嘲る美優。
そんな意地悪な笑顔で、僕を見ないでよ…。
翔は困った顔をした。

「え〜、どうしようかなぁ。」
「いいわよ、嫌なら。」
「え… あ、行くよ行くよ!」

慌てふためく翔と、それを見て笑う美優。
恋人のようでもあり、友達のようでもある。
そんなふたりの、不思議な関係。

「スキ」という言葉と共に。
「好き」という気持ちと共に。

「ちょっと緋村…、マズイよ、こんな…」
「いいじゃない、減るもんじゃないし。」
「でも… 恥ずかしい…。」
「大丈夫、別に誰も見てないわよ。」
「そういう問題じゃなくて…」

見慣れぬ光景に、翔はもうクラクラだ。

「ねえ、こっちのブラと…」

ピンクのブラジャーを胸に当てて見せる。

「こっちのブラ…」

今度は黒のブラジャー。

「どっちが好み?」
「そ、そんなコト僕に聞かないでよ!」

翔は顔を真っ赤にして怒る。

「だいたい何で彼氏連れて下着なんて買いに来るのさ!」

「しょうがないじゃない、
 おっぱい大きくなっちゃったんだから!
 今のサイズのはもう着れないのよ!」

翔は美優の胸に視線を落とし、顔を赤らめる。
おっぱい大きくなったんだ…。

緋村のおっぱい…。
緋村のおっぱい…!

見たい触りたい揉みたい摘みたい舐めたい吸いたい―――

うわーーーーーーーーーー!!

すぐに目を逸らした。

「だ、だからって、僕を連れて来る必要ないだろ!」

翔が少し大きめの声を出すと、美優は驚き目をテンにした。
それから不機嫌そうに小声でブーたれる。

「興味あるクセに…。」

ドキッとした翔は、恐る恐る美優の胸をまた見てしまう。
興味あるのは仕方がない。
だって、♂だから。

「で、どっちが良いのよ!」

ピンクを右手に、黒なら左手に――
このブラが、緋村の胸を包むのかぁ。
そんな事を考えて、ちょっと挙動不審。

「んもう、はっきりしないわね。
 ま、いいわ。どうせあんたのお金だもの。
 両方買うわ!」
「そ、そんなぁ…」

「ブラジャーって、結構値段するんだね…。」

ほとんどカラになった財布の中を眺め、翔は嘆く。

「ヘヘッ 今月お小遣いピンチだったから助かったわよ。」

美優のこの笑顔、いつ見ても可愛い…。

「なんなら、もう入らないブラジャーあげようか?」

こういう小悪魔な笑顔も、すごく可愛い…。

「な、何に使うのさ。」

だけど…

「え…あ…その…、な、何でもないわよ!冗談よ!」

こうして顔を真っ赤にして慌てる美優が、
やっぱり一番可愛い!

「変なの…」

と、そ知らぬフリして呟く翔。
もちろんブラは欲しいし、使い道も知っている(?)
美優は大胆発言が多いし、やけに積極的だし、
実は案外スケベなんじゃないかと翔は疑う。
だけどそんな美優も嫌いじゃない。
気が強くて、勝手で、
恥ずかしがり屋で、ちょっぴりエッチな美優。
そんな美優が、翔は大好きだ。

「お待たせしました。
 こちらチョコレートパフェになります。」
「あ、来た来た。」

ウェイトレスが持って来たパフェを嬉しそうに受け取る美優。

「あん。あ〜、おいちい♪」

女の子は甘い物が大好き。
美優もそうらしい。
美優が美味しそうに食べる様子を、
幸せそうに眺める翔。

「ん… 食べる?」
「え、あ…うん。」

別に欲しくないけど、せっかくだから。
間接キス出来るし。

「はい、あーん…」

でも美優は、期待以上にバカップルな事をしてくれた。

「…あ〜ん」

翔は顔を赤らめながら、口を開けた。

「美味しい?」
「うん…。」
「フフッ…」
「恥ずかしい…。」

美優の悪戯な笑顔に、翔は頬を赤くする。

「今日は…その…ありがとね。」
「え?」

美優が柄にもない事を言うから、
翔は戸惑う。
街は夕焼けに染まり、
ストリートミュージシャンが唄う。

「聞いてください…
 仁元実華で、『START』」

微かに聴こえる情感漂うバラードを
バックミュージックに、ふたりは寄り添う。

「…初デートだね。」
「そうね。
 …楽しかったわよ。」
「うん、僕も…。」
「じゃあ、また明日…」
「あ、緋村!」
「ん?んん…!」

振り向いた美優の唇を、翔が奪った。
美優は驚いた顔をした後、
嬉しそうな顔をしてすぐに目を閉じた。

  Iwannastart
  これからのstory
  重なるふたりの影よ
  始まり告げる言ノ葉
  愛しい人と
  共に奏でるIknowmelody

とある日の放課後の教室…
グラウンドの方から、
部活動をする生徒たちだろうか…
賑やかな声が微かに聴こえる。
ふたりは隣り合った机の上に座り、
互いに身を寄せ合う。
邪魔者は、誰もいない。

「緋村…」
「翔…」

見つめ合うふたり…。
どれだけ見つめても
決して見飽きる事の無い顔…
どれだけ囁き合っても
決して聞き飽きることの無い声…

「緋村… 好きだよ。」
「…あ…あたしも…
 その… 大好き…」

美優は頬を紅潮させる。
普段は積極的な美優だが、
自分の素直な気持ち−裸の心−
それを露にするのは、すごく苦手だった。

「緋村…」

ふたりの唇が、徐々に近づいてゆく…。
それとともに、自然と目を閉じ、
身体を抱き合い、互いを感じ合う…。

そして…

ふたりの距離がゼロになった瞬間!!

ガラガラガラ!!

ドアの開く音に驚き、ふたりは慌てて顔を離して
なんでもないフリをした。
顔が強張る…。
ドキドキが、止まらない…。
恐る恐る後ろを振り向いてみると…
そこには、担任の体育教師が
眠そうな顔をして立っていた。
この教師、ガミガミと煩い教師が多いこの進学校で
体育教師という気軽な立場のためか
煩く言わない物分りの良い教師として結構人気があった。
だが彼の欠点は、どうしようもなく鈍感な所だ。

「おお、緒方。
 ちょうどいい所にいた。」

(ちょっと!邪魔しないでよ!)

美優は眉間にしわを寄せる。

「確かお前、西濱と仲良いだろ?」

翔は、嫌な汗をかいた。

「え…?」

ギロリと光る鬼の目。
ひいぃ!

「べ、別にそんな事はないですけど…」
「あれ?そうか?
 でも、家は知ってるだろ?」
「あ、はい。近所なんで…。」
「悪いけどよ、
 この書類、届けてくれないか?」

教師は封筒を差し出す。
結構な厚みがあった。

「大事な書類だから今日中に…
 本当は俺が届けないといけないんだが、
 あいにく急用が出来ちまって…。」

よくよく見ると、教師の目の下にはくまが出来ていて
とても疲れが溜まっているように見える。

「別にいいですけど…」

チラッと横に目をやる。

「なんであたしを見るのよ!届けてあげなさいよ。」

美優はご立腹だ。

「あ、うん…」
「おお、頼まれてくれるか。
 悪いなあ。
 すまんが、今日中に届けてくれよ。」

西濱の家に来るの…何年ぶりだろう…。
綾は幼い頃に両親を亡くし、
それからはずっとアパートで一人暮らしを続けている。
頼れる親戚などもおらず、
両親が残してくれたわずかな貯金と奨学金、生活補助金などで
なんとか生活してきたという。
でも、今にして思えば
綾はどうして施設などに送られなかったのだろうか。
預かった書類が気になる。
何の書類なんだろう。
奨学金とか、補助金とか、そういうのに関わる書類だろうか…。

謎だらけだ。

古びたアパートの一画
綾の部屋の前へと辿り着いた。
あまりに静か過ぎて、インターホンを押すのにも勇気がいる。

ピンポーン

「誰?」

短く冷たい返事が返ってくる。

「あ、緒方だけど…。なんか担任から書類を届けてくれって頼まれて…。」

ガチャッ

「どうぞ。」

ギィーと音をたてて、ゆっくりとドアが開く。

「はっ…!!」

翔の顔が引き攣る。
翔の目に飛び込んできたのは、綾の乳房。

そう――

綾は、裸だった。

「え、あ…その…」

翔は顔を真っ赤にして目を逸らす。

「…上がって。」

綾は中に入るように促す。

「あ、うん…」

綾は全裸だ。早くドアを閉めなくては…。
そう思って慌てて中に入った。
でも冷静に考えてみれば、
このとき書類だけ手渡して
すぐ扉を閉めればよかった。
そうすれば、あんな事にはならなかったはず…。
綾の部屋は、異様な雰囲気に包まれていた。
静寂と哀愁が支配する世界。
あの頃と、何も変わっていない…。
生活感の無い部屋だった。

「そのあたりに座ってて…。」

綾は奥の部屋へと翔を通す。

「紅茶で良い?」
「え、あ…お構いなく…」

綾が部屋から出てゆき
カタンッと戸の閉まる音が聞こえたところで、
翔はようやく一息つく。
徐々に冷静さを取り戻し、身震いした。
この部屋に上がり込んだ事を後悔した。
扉の向こうで、綾がお湯を沸かしているようだ。
翔は床に座り、部屋を眺める。

綺麗に片付いている…。
というよりは、物が少ない気がする。
テレビや電話すら見当たらない…。
部屋の3分の1はベッドが占め、
机の上にはきちんと並べられた教科書が並ぶ。
椅子に、バスタオルが掛けられていた。

…そっか、きっとお風呂にでも入ってたんだ。
そのまま出てきちゃうなんて、西濱らしいな。

…でも、女のコの裸なんて、初めて見た。
すぐ目を逸らしちゃって、ほとんど見てないけど…。

ん…?

翔は、机の上に無造作に置かれた手帳を手に取った。
綾とは似つかない、可愛らしい手帳だった。
いけないとは思いつつ、手帳を開いてみる…。
それは、プリクラ帳だった。

最初のページ…

小学3年生くらいだろうか。
プリクラの中の綾はどれも笑顔だった。
西濱って、笑うとこんな顔するんだ…。
まだあどけない顔の綾が、なんとも愛らしい。

しかし、次のページから綾に笑顔は無くなった。

無表情でポーズを決める綾。
ぼーっと立ち尽くす綾。
困惑気味な顔で、ピースサインをする綾。

なんだ、西濱も案外普通の女の子なんじゃないか。
翔は微笑ましい気持ちになる。

だが、気がかりなのは、どのプリクラも、全部ひとりで写っているという事。

誰かと写ってるのはないのかな?
そう思い、ページを捲ってゆく。

綾の服が中学の制服になると、なんだか雰囲気が変わってきた。
その理由はすぐにわかった。
綾は、プリクラを撮るとき
制服を着崩していたのだ。
普段は真面目に校則通りの服装をしていたのに、
プリクラに写る綾は
ボタンを外し、大きく胸元を開けていた。
なんだか、意外だった。
さらにページを捲る。

な、なんだこれ…!!

そのページに貼られたプリクラは、
着衣が乱れブラジャーが丸出しになっていたり、
ブラジャーすらずれて
胸が露になっているものばかりだった。
まるで、誰かに犯された後ように…。

冷たく嘲る綾の表情は、レイプされた後の放心状態のようにも見える。

困惑する翔…。
さらにページを捲る。

次のページの綾は、
自分でスカートを捲り上げ
ピンクのパンティを見せていた。

下着姿で無表情の綾。
上半身裸になって、乳首を勃起させている綾。
パンティを脱ぎ捨て、恥毛の無い秘部を晒す綾。

もうその後は、服を着た綾は写っていなかった。

見てはいけないものを、見た気がする…。

ガチャッ

戸の開く音を聞いて、翔は慌ててプリクラ帳を閉じて
元の位置に戻す。

嫌な予感が、胸をよぎる。

ふたつのティーカップを乗せたトレーを持って
部屋に戻って来た綾は、

やはり

…悲しいほど全裸だった。

綾の身体は細い。
背中から羽が生えて、
今にも飛んでいってしまいそう…。

アルカイックな無表情と、虚ろな紅い瞳…。

雪のように白い肌に、赤く勃起した乳首がツンと上を向いている。

秘部には相変わらず恥毛が無かった。
秘裂が、外気に晒されている。

翔は身震いした。

綾はテーブルにティーカップを並べ、翔の向かい側に座った。

綾は紅茶を一口飲む。
全裸のティータイム…。
綾にとっては、普通の事なのだろうか…。

翔は鞄から封筒を取り出し、綾に差し出す。

「これ、預かった書類…。」
「ありがと。」

翔も震えた手でティーカップを口元へ運ぶ。
紅茶は、苦かった。

沈黙が続く…。
逃げるに逃げられないこの状況…。
気まずい空気が痛いほど冷たく、翔の思考を麻痺させる。
目の前の綾の裸体は、
この世のものとは思えないほど
清らかで美しい。

息をするのも忘れてしまうほど
引き付けられる神秘的なヌードは、
まさに…
凍てつく冬の夜の満月。

翔は、恐る恐る口を開く。

「あ、あの…、服は…着ないの?」

…ついに聞いてしまった。

「服?」

もっと早く気付くべきだったんだ。
開けてはいけない扉もあるんだと。

「…そんなモノ、無いわ。」
「へ?」
「学校で着る服以外…持ってない。」
「…で、でもほら、えと、あの、パジャマとか下着とか…」
「それも捨ててしまったわ。」

しどろもどろの翔の言葉を、綾の冷たい言葉が遮る。

綾はテーブルに手を突き
ゆっくりと身を乗り出し、翔に迫る。

「…制服か体操服かスクール水着か、どれか着たほうが良い?」

困惑する翔を嘲るように、虚ろな瞳で翔の目を見据える綾。
翔は耐え切れずに目を逸らした。

「したいの?」
「え…」
「セックス、したいの?」

ゴクンッ

「わたしと、セックスしたいんでしょう?」

綾は翔を押し倒し、ボタンをひとつずつ外してゆく…。

緋村…
助けて…

「うわーーーー!!」

僕は、逃げた。
綾を突き飛ばして、
悪夢の部屋から逃げ去った。
突き飛ばした綾の裸体は、
羽のように軽かった。

澄み渡る青い空…
流れる白い雲…

翔は今日も空を見ていた。
今朝は少し早く来過ぎた。
教室には翔以外まだ誰もいない。
こんな時は、ぼんやりと空を眺めているのに限る。
嫌な事も全部忘れさせてくれるから…。
空が晴れれば、僕の心も晴れる…。
暫くぼーっと空を眺めていた。

……!!

急に背中に寒気が…
誰かの視線を感じ、振り向く。

「に、西濱…」

教室に入ってきた綾は、
じっと翔を見つめている…。

血のように紅い瞳で見つめられ、
翔は目を逸らすことが出来ない…。

「おはよう。」
「え、あ…お、おはよう…」

翔が声を裏返しても、
綾は無表情のまま自分の席に着く。

綾は翔の事など気にもせずに、
鞄から本を取り出し読み始める。

気まずい…。

綾の事は考えないようにしよう。
そう思えば思うほど、頭は錯乱し、鼓動は高鳴る。

表情に乏しい綾は、その仮面の向こう側で何を想うのだろう…。

綾は独特な近付き難いオーラを放っている…。

息も詰まるような冷たい空気が、翔を襲う…。

と、そこへ…

「おっはよ〜」

澄ました顔で美優が登場。

「あ、緋村… おはよう。」

ようやく悪夢から開放された翔は、安堵の表情を浮かべた。
だが、そんな翔に美優は聞くのだ。

「昨日、あのコの家に行ったんでしょ?
 あのコと、なんも無かったでしょうね!?」
「ぁ、あ、当たり前だよ!」
「ま、そりゃそうよね。
 あんたにそんな勇気があるわけないし。」

美優はおどけてそう言うが、
翔は生きた心地がしない。

「なんだよ〜、それ。」

無理に明るく振舞うのがやっとだった。

「フフッ
 そのまんまのイ…ミ…よ…」

クラッ…

「緋村!?」

突然倒れた美優を、とっさに翔が支えた。

「だ、大丈夫?」
「な、なんでも無いわよ!
 ちょっとめまいがしただけ…。」

強がる美優が、翔は心配だった。

「保健室、行く?」
「いいってば!」

翔の手を振り払う。

「そ、そう?
 ほんとに大丈夫?」

「しつこいわねぇ。
 しつこい男は、嫌われるわよ!」

なんだろう…
この胸騒ぎは…

「ん… 4時間目は…体育かぁ。」

翔は時間割を確認し、
プールバッグを取り出す。
次の時間は水泳。
中学と違って男子にもきちんと更衣室があるから、
翔は気が楽だ。
プールバッグを片手に更衣室に向かう。
一方美優は、なんだか浮かない様子…。
「ふぅ…」とため息をついて教室を後にした。
更衣室に辿り着いた美優は、
端のロッカーを選んで荷物を投げ込む。
更衣室が混んでいる事もあって、
美優は少し機嫌が悪い。
美優は服を脱いで裸になる。
周りは女子だけだから、
見られても別に気にしない。
だが…。
大きめの胸と、フサフサの恥毛。
くびれたボディと、スラリとした脚。
スタイルの良い美優は、みんなの憧れの的だ。

「緋村さんって、おっぱい大きいよね〜。」

同じクラスの女子の一人がそう言うと、
みんな一斉に美優を見る。

「ん? そんな事ないよ。」

と美優は言ったが、晒された乳房はその大きさを偽ることは出来ない。

「触らせて♪」
「ちょ、ちょっとぉ!」

一人がふざけて美優の胸にタッチすると、

「あ〜、わたしも触りたい〜!」

と、何人もの女子が群がってくる。
美優は案外女子からもモテるのだ。

「ちょっといい加減にしてよ!」
「隠さないから悪いのよ!」
「そうよそうよ、大きいからって見せびらかすから!」

クラスのリーダー格の女子たちが不平を並べると、隅の方で誰かが嘲る。

「小さいからって僻むなよ。」
「あ、あなたに言われたくはないわよ!」

キーンコーンカーンコーン

「あ、ヤバイ! 急がなくちゃっ!」
「緋村さんも急いで! 遅刻よ!」

「お前ら遅いぞー!」
「すいませーん…」

腕を組んで待っている体育教師の前に、
ピチピチの水着姿の女子高生たちが集まってくる。
この教師、翔たちのクラスの担任で、
授業は女子の体育を担当しているのだ。

「全員集まったかぁ?
 ひぃ、ふぅ、みぃ…」

人数を数える。

「ん…
 西濱はどうした?
 今日は休みかぁ…?」
「3時間目まではいましたけど…。」

クラッ…

「緋村さん!?」
「緋村!?」

担任が駆け寄る。

「おい、緋村!
 しっかりしろ!!」

担任の呼びかけに、
美優は「うぅ…」と覚束無い言葉を発する。

「俺は緋村を保健室に連れて行くから、
 準備体操が終わったらシャワー浴びて、
 そうだな…
 とりあえずクロールと平泳ぎを一本ずつやっとけ。」
「ええー!」
「サボるなよ!」

「緋村さん、どうしたのかしら…?」
「やっぱ胸揉んだのがいけなかったのよ。」
「そんなワケないし。」
「はいはい!みんな、準備体操するわよー!」

体育委員が前に出る。

「いっち、にい、さん、しい…」

体育委員の掛け声に合わせて、
準備体操をする女子たち。
みんなやる気なさそうだ。
まとまりのない団体演技が、
女子高生のひとつの魅力なのかもしれない。

「にい、に、さん、 ……!!」

突然、体育委員の声と動きが止る。
エイリアンでも見たかのように
目を見開き瞬き一つしない彼女の驚愕の表情は、
みんなに異常事態を知らせるには充分過ぎた。

「どうしたの…?」
「きゃあああ!!!!」

初夏のプールサイドに響き渡る悲鳴。
女子たちが見つめるその先に立っていたのは、
一糸纏わぬ姿の、翼の折れた天使…。

西濱綾、その人だった。

「な…、西濱さん!?」
「ど、どうしたの?」

動揺が走る。
女子たちみんなが綾を見ている。
綾はその視線をどう感じ、何を想うのか…。

この視線…
この空気…

彼女は、感じていた…。

「水着を忘れたの。」
「授業は休みたくないから、この格好で授業を受けるわ。」

呟くようなその声は、鋭い刃のように簡単に突き刺さる。

「さ、準備体操…しましょ?」

不敵な笑みを浮かべ、女子たちの集団に入ってゆく。
スクール水着の群れの中で、綾の裸体は…
残酷なまでに、美し過ぎた。

「なんだか女子が騒がしいなぁ。」

女子の悲鳴は翔たちにも聞こえていた。

「おい、見てみろよ!」

  「なんだ、あれ?」
  「なにあれ… は、裸じゃねえか!?」
  「だれだれ!?」

「ま、まさか…」

翔は冷や汗が垂れるのを感じながら、
恐る恐る女子の方に目をやる…。

  「西濱だぜ!」
  「いじめか?」
  「くそう、遠くてよく見えないぜ!」

「西濱…」

翔の嫌な予感は的中し、信じたくない事実が、またひとつ現実味を帯びる。

  「おい、あんま見てると先公に気付かれるぞ!」
  「そ、そうだな…」
  「待てよ、先生に言った方がいいんじゃないのか!?」
  「関わらない方がいいって!」
  「そうだよ、女子もみんな見て見ぬフリじゃないか。」

人間って、冷たい生き物なんだなぁ。
…僕も、同じか。
翔は拳をギュッと握り締め、
受け入れ難い現実に目を瞑った。

あたりは異様な雰囲気に包まれた。
もう悲鳴もざわめきも無かった。
あるのは痛いほど冷たい視線だけ。
綾はそれを、裸の体一身に浴びていた。

精悍な顔つき。
真っ直ぐに睨む、瞳の紅。
真っ白な肌に、赤く勃起した乳首が目立つ。

「いっち、にい、さん、しい…」

先程までの威勢の良い掛け声は何処へやら…
体育委員の声は恐怖に戦き震えていた。
何事も無かったかのように
準備体操を再開したスクール水着たち。
教師に注意されたって私語を止めない彼女たちが、
今は別人のように静まり返っている…。
綾は彼女たちの中心で、身体を動かす。
至って普通の事である。
ただ、水着を着ているか着ていないかの違いだけ。
屈伸をすれば小振りな乳房が揺れ動き、
伸脚をすれば恥毛のない秘部の大陰唇がパックリと開く。
普段見えないものが見える。
見えてはいけないものが、見えてしまう…。

だけど、それの何処がいけないの?

綾は悪びれる事もなく
いつも通り準備体操に勤しむ。
そう、彼女は普段から真面目だから。
準備体操が終わると、次はふたり一組でストレッチ。
プールに入る前には、身体をよく解さなくてはいけないから。

綾のペアになってしまった不幸な女子は
オドオドして顔が引き攣っている。
綾は彼女に不敵に微笑みかけ、

「よろしく。」

凍えるくらい冷たい声で、そっと囁く。
地べたに剥き出しのお尻をつけて、股を大きく広げ、上体をゆっくり倒してゆく。
その綺麗な白い背中を後ろから押す手は、病的なまでに震えていた。
準備体操とストレッチを終えた女子たちは、シャワーの方へ歩いてゆく。
綾も毅然とした態度でその中に交じる。

何を脅えているの?

綾の無言のプレッシャーが、みんなを苦しめる。
全てを曝け出し、全てを受け入れようというのに…。

なぜ、わたしを拒むの?

心の壁が、侵食されてゆく…。

シャワーを浴び、水に濡れた少女たち。
スクール水着はその紺の濃さを増し、
綾の白い肌はその潤いを増す。
他の女子たちが水泳キャップを被っても、
綾だけは何も身に付けない。
生まれたままの姿で在りたいから…。

愁いを帯びた紅い瞳。
濡れ髪が色っぽく、艶かしい。
きめ細やかな白い肌と、上を向いた赤い乳首。
そして、恥丘と陰裂。
冷水で清められた裸体は、儚くも美しい…。
誰も目を逸らすことが出来ない、そのヒカリ…。

いっその事、自分も
着ている水着を脱いでしまおうか…
誰もがそんな過ちを犯しかねない、この空気。

――― 綾の創りし、この世界。

全ての生命は、母なる海から生まれた。
その原始の海を彷彿させるような、この光景…。
水の面を一糸纏わぬ少女が泳ぐ。
日の光は温かく彼女を照らし、水は優しく彼女を包む。
羽衣を奪われた事に気付かぬ天女のように
水と戯れるその姿は、決して卑猥ではなく、神秘的だった…。

彼女の優雅な泳ぎは、見た者の心を捕らえて離さない。
気持ち良さそうに泳ぐその姿は、あまりに… 美しかった。

その神々しい魅惑に女子の多くは不思議と乳首を勃起させ、
少し離れた場所から眺めている男子たちも当然、股間にテントを張っている。

頬を紅潮させた生徒たち。
恥ずべき格好をしているのは、
自分達ではなく綾の方だというのに。

みんな口数少なく、気まずい空気。
水の中に入って泳いでいる孤独な時間だけが、
この息詰まる世界に安らぎを与えてくれる。

プールサイドに教師が立っている。
美優を保健室に送り届けて、戻ってきたのだ。

「よーし、平泳ぎまで終わったら
 いったんプールから上がれー!」

泳いでいる女子に聞こえるように、大声を出す。
彼はまだ、この異変に気付いていない。

端まで泳ぎ着いた者から順に、プールから上がっていく。
みんなの顔が引き攣っている事に、鈍感な教師はなかなか気付かない。
ザバーっと音を立てて
しなやかにプールから上がったひとりの少女。

「お、おい…」

呆然と立ちすくむ教師。

「センセ?」

ハッと我に返った教師は、彼女に怒鳴りつける。

「お、おい西濱!!なにやってるんだ!!」

スラリと立ち尽くす全裸の少女。

「…水着、忘れました。」

その笑みは、不気味なまでに美しい…。

「た、体育委員!タオル持って来い!!」
「は、はい!」

教師は有無を言わせず全裸の綾にタオルを掛ける。
綾は冷たい目線で彼を見つめた。
その紅い瞳にこの世界は、どう映っているのだろう…。

「今日はもう、自由プールでいい。後は任せたぞ。」

体育委員にそう告げると、
教師は綾を連れて出て行った。

女子たちは、どうしていいかわからない…。
自由プールと言われても
今さらワイワイはしゃげるはずもなく、
ただ呆然と立ち尽くすだけだった。

「やっぱ、いじめかなぁ…。」

ひとりが気まずい沈黙を破ると、
それを皮切りに急にざわつきだす。

「うちのクラスにそんな事する人、いる?」
「じゃあ、他のクラス?上級生かな?」
「いじめ…じゃない気がする…。」

ひとりの女子が、ポツリと呟く。

「うん、なんか…、嫌がってないように…見えたけど…」
「というより… むしろ…」
「ま、まさか…」

女子が教室に戻ってくる。
話題は西濱の事で持切りだ。
次々と女子が入ってくる教室のドアを、
翔はぼんやりと眺めていた。

「緋村、遅いなぁ。」

翔の机の上には弁当箱。
いつものように屋上で
美優とふたりっきりで食べるつもりなのだ。

綾の事も気がかりだったが、
もう関わりたくない…というのが
正直な気持ちだった。
もうそんな事は忘れて、美優と幸せな時間を過ごしたかった。

「緒方、ちょっといいか?」

後ろから急に担任の声がして、翔は驚く。

「あ、先生…?」

どうやら翔が眺めていたのとは反対側の
職員室に近い後ろのドアから入ってきたようだ。

「今、時間いいか?
 ちょっと話があるんだが…。」
「あ、はい…」

翔は担任に連れられて、職員室へと向かった。

散らかったデスク。
散乱した書類やらプリントやらが、
この教師のずぼらな性格を物語っている。
担任は真剣な顔で翔に尋ねた。

「なあ緒方…、西濱、いじめられてるのか?」
「知りませんけど…。」
「んんー…」

唸りながら、ボサボサの髪をかく。

「さっきの体育の授業の事は知ってるよな?」
「…はい。」

やっぱ、その事か…。
翔はもう、綾という”世界”から逃げ出したかった。

「本人はな、
 『水着忘れたけど、授業は休みたくないから』
 って言ってるが、んなわけないよな…。」

優秀な生徒が起こした問題に、担任は頭を抱える。

「でも確かにあいつは真面目すぎるから…。うーん…」

『水着を忘れた生徒に、全裸で授業を受けさせた』

となると、この教師の責任問題にもなりかねない。

「まったく困ったもんだなぁ。緒方、それとなく西濱に聞いてくれないか?」
「はい…。」

心当たりは、なくもない…。
というかむしろ、おそらく答えはひとつ…
だけど、翔にはどうしてもその現実を受け入れる事が出来なかった。

「そういえば緒方、お前、緋村と付き合ってるんだって?」
「え…!ち、違います。」

翔が少しビクつくと、急に担任の態度が変わる。

「いいって、別に隠さなくたって。高校生なんだから、青春しろよ!」
「あ、え…はい…。」

翔はタジタジだ。

「あいつは気は強いが、根は優しい良いやつからな。大事にしてやれよ。」
「はい…。」

さすが担任。生徒の性格はしっかり把握している。

「あ、肝心な事言い忘れるところだった!
 その緋村が体育の授業のときに倒れたんだ。
 知ってたか?」
「え!?」

翔は慌てふためく。

「大したことはない、ただの貧血だそうだ。
 今は保健室で休んでるから、見に行ってやれよ。
 彼氏なんだろ?」
「あ、はい!行ってきます!」

翔は普段出さない大きな声で返事をし、
一目散で職員室を出て行った。

「なんだあいつ…
 結構熱いじゃねえか。」

担任はニヤリと笑う。

「絶対尻に敷かれるタイプだな…。」

「緋村ぁー!」

勢いよくドアが開く。

『保健室 お静かに』と書かれた札が大きく揺れる。

「はぁ…、はぁ…、誰もいない…?」
「翔?」
「あ、緋村?」
「ここよ、ここ。」

美優はカーテンで仕切られた
向こう側のベッドに寝ているようだ。

「緋村、大丈夫?」

そう言ってカーテンを捲る。
美優はベッドで横になっていたが、
ゆっくり起き上がり、そっぽを向いた。

「大丈夫よ、別に…。」

そんなつっけんどんな態度が、美優らしい。

「その…心配してくれて…、あ、ありがと…。」

美優は目を伏せ頬を赤らめてそう言う。

「顔赤いよ?熱でもあるんじゃない?」

そう言って美優のおでこに手を当てる翔。

「ばか…。」

美優は小さく呟いた。

「寝たほうがいいんじゃない?」
「そうね…。」

美優は再び横になる。
少し疲れたようだ。いろんな意味で。

「あ、あのさ。眠るまで…その…側にいてくれない?」

美優は天井をぼーっと見つめるふりをして、
何でも無いように装う。

「緋村…」

そして、更に顔を真っ赤にして言う。

「それとさ、その…そろそろミユって呼んでよぉ…」

翔の顔なんて、見れるわけがない。
恥ずかしがってそっぽを向く。
気付けば、翔の顔が美優の目の前に。
翔は真っ直ぐに美優の目を見つめる。
美優はキョロキョロと視線を合わせようとしない。
翔も美優もゴクンッと息を呑んだ。

「好きだよ、美優…」

心臓がドキンッと音を立てたのがわかった。
美優は思いっきり目を瞑る。

「…あたしも、好き!」

美優の真っ赤な顔が、あまりに可愛過ぎて…
美優の唇を、翔のそれが捕らえる。
翔の右手は美優の髪を撫で、美優の右手は翔の首に触れる。

いつものように舌を絡め合い、
いつものように愛し合う…。

だけど、唇が離れた瞬間の美優の顔は、
いつも以上に、幸せそうだった…。

「じゃ…、僕、ここにいるから…、寝なよ、美優。」

ぎこちない言葉が、愛おしい。
顔が火照ってしまって、眠るどころじゃない美優。

「誰か来たらマズイから、カーテン、閉めておくね。」

翔がカーテンを閉めて、もうここは、ふたりだけの世界。
授業の事も、綾の事も…

全部忘れて―――

その白いカーテンは、放課後まで開くことはなかった。

あの事件から数日。
綾は何事も無かったかのように、普通に高校生活を送っている。
あの事件以来、みんなから白い目で見られている綾…
だが、もともと友人のいない綾にとっては、
それは大した問題でも無いのかもしれない。
あの事件の事は、みんな暗黙のうちに
口に出さないようにしている。
だが、その事は
あの日あの場に居合わさなかった
美優の知るところでは無い。
綾の実に、おそらく一番近いであろう翔は、
その日々の苦悩と葛藤していた。
忘れよう、忘れよう…
そう思えば思うほど、目に焼きついて離れない
綾の裸身。

逃げたい、逃げたい、しかし決して逃れることの出来ない

現実。

でもその一方で、美優との恋愛は
恐いくらい順調に進んでゆくのである。

「え!?今週の土日…?」

翔は目を丸くする。

「うん。」

美優はドキドキした様子で翔を見つめている。

「まあ、大丈夫…だけど。」
「親が旅行に行って、誰もいないから…」

それってつまり…!?

翔の脳裏には、美優の淫らな姿が――
バスタオルでギリギリ体を隠しながら
ベッドの上で手招きする美優…。
もちろん妄想でしかない。
実物を見たことなんてないから。

「…泊まりに来ない?」
「いいの!?」

あまりに興奮しすぎて、
教室中に響くような大声をあげてしまった。
クラスメイトに注目され、
ふたりとも顔を真っ赤にする。

「か、勘違いしないでよ!
 変なコトとかしたら、追い出すからね!」

目をキョロキョロして、
そう言った美優の真っ赤な顔が
とってもウブで可愛かった。

「緋村の家って…結構大きいんだ…。」

口をあんぐりと開けて思わずそう呟いた翔を、
美優がギロリと睨む。

「み、美優の家ね。」
「よろしい♪」

名前で呼んでもらうのが、最近のお気に入り。
まだ慣れてないせいか、翔はタジタジだ。

「そんなでもないわよ。
 ふつーよ、ふつー。」

普通ではない。
豪邸という程ではないが、なかなか立派な家だ。

「お邪魔します…」

誰もいないとわかっていても、
彼女の家に上がり込むのは緊張する。

「はいはい、どうぞー。」

美優は翔をリビングへと案内した。

「その辺に座ってて。」
「あ、うん…。」

翔は戸惑いながらもソファーに腰を下ろす。

「ケーキあるから。」

美優は甘い物がお好き。
何気ないひと言。

「紅茶とコーヒー、どっちがいい?」
「え…」

紅茶は――

もう…飲みたくない…かな。

「…コーヒーで。」

「ん。じゃ、ちょっと待ってて♪」

美優の姿が見えなくなると、翔は辺りを物色し始める。
テレビもソファーもテーブルも翔の家の物より一回り大きく、
部屋は綺麗に片付いていて、文句の付け所もない。
恐らく美優の母親が毎日きちんと掃除しているのだろう。
緋村の部屋も、これくらい綺麗なのかなぁ。
いや… 緋村の性格からして…

「お待たせ♪」
「わっ!!」
「なに驚いてんの?」
「いや、何でも…。」

焦る翔。
おしゃれなコーヒーカップを口元に運んで
気を落ち着かせ、美優の家に来ているんだなぁと
しみじみ実感する。

ふたりきりだからか、普段より密着して座っている翔と美優。

「はい、あ〜ん♪」

美優はケーキを翔に食べさせてあげる。

「じ、自分で食べられるって。」

それを恥ずかしがって拒む翔。
美優は意外とこういう事をするのが好き。

「あー、照れてるぅー!」

いや、むしろ翔が照れる様子を眺めるのが
好きなのかもしれない。
美優はいつも以上の満面の笑みを見せてくれた。

「じゃ、逆に僕が食べさせてあげるよ。」

翔はここで逆襲に打って出る事にした。

「あ〜ん♪」

やってて自分でも顔から火が出る思いだが、
たまには意地悪な事もしてみたい。
美優は顔を真っ赤にしながらも、
翔にケーキを食べさせてもらう。

「美味しいね。」

と照れ笑いした美優を眺めながら、翔は囁く。

「緋村、カワイイ。」
「な、なに真顔で言ってんのよ!
 っていうか、緋村じゃなくて美優!!」

美優、カワイイ。

「もう5時かぁ。」

翔は時計を見上げた。

「ええ!もう5時?
 まったく!なんで土曜日まで補講があるのかしらね。」

この日は土曜日にも関わらず、
進学校であるが故に強制的に補講を受けさせられ、
美優の家に来るのが思いのほか遅くなってしまっていたのだ。

「補講が無かったら、午前中から”美優”の家に来れたのにね。」

よし、今度はスラリと言えた!
と心の中で頷く翔。
美優はドキッとしたのか、
目を見開いた。
でもすぐに平然を装って話題を変えた。

「あー、そろそろ夕御飯の支度しなきゃ…」

「支度って…、もしかして美優が作るの?」

半信半疑で聞いてみる。

「当然よ!」

自信満々に言い放つ美優に、翔は目を丸くした。

「へー、料理とか出来るんだぁ。」
「まっかせといて♪」

でも、弁当は親が作ってるって言ってたような…
美優の性格からして、朝早く起きて弁当を作るのが
面倒くさいだけなのかもしれないが。
美優はエプロンを着て、キッチンに立つ。
若奥様というよりは、幼な妻といった感じかもしれない。

「美優、エプロン似合うね。」

翔が素直にそう言うと、美優はとても嬉しそうな顔をする。

「そ、そう?裸エプロンでもしよっか?」

どうせからかってるだけだ。もうその手には乗らない。

「うん。お願い。」

沈黙。
真っ直ぐに翔を見つめる美優の瞳に、
少し気まずさを覚えた。
美優は目をパチパチさせて呆然とした後、
ハッと我に返って頬を真っ赤に染める。

「や、やーよ!!」

美優はプイッと顔を背けると、
怒涛の如く言葉を吐き捨てる。

「翔のエッチ!!
 変態!!最っ低!!
 もう信じられない!!」

そう一蹴した美優は、はぁはぁと息を切らし
肩で息をしていた。

「自分で言ったくせに…」

酷い言われようだ。

翔が小さく漏らした一言を、
美優の地獄耳は聞き逃さなかった。

「なんか言った?」

美優の右手に握られた包丁が、妖しく光る。

「な、なんも言ってないよ!」
「美味しかったよ、美優。」

翔は出された料理を全部平らげ、
正直な感想を言った。

「そう?」

美優は嬉しそうだ。
少しニヤけたその笑顔、
すごく可愛い。

翔の前にはたくさんの空いたお皿。
この量は小食の翔には少しきつかったが、
美優が作ったとは思えないほど美味しかったので
残さず食べきれた。
もっとも、残したらその後の翔を待ち受ける運命は想像に難くないが。
食事の後は、特にやる事もないから
ふたりでソファーに座ってテレビを見る。
洗い物をしなくていいのか尋ねると、美優は

「いいのいいの、明日お母さんがやるから。」

と無責任な事を言う。
美優の両親は明日の夜に帰ってくるらしい。
親には親友の恵が泊まりに来ると言ってある。

テレビ画面の中では、
ふたりの男子とひとりの女子が
学校の屋上でなにやら楽しそうに話している。
この青春学園ドラマ、
美優は毎週欠かさず見ているらしい。
真剣に見入っている。
翔もそれに付き合う。
ぼーっと見ていたテレビドラマが終わり、
画面にスタッフロールが流れてくると、

「しょ〜お♪」

美優が子猫のようにじゃれついてくる。

「どうしたの?
 …ニヤニヤしちゃって。」

翔は呆れた顔で聞くが、内心満更でもない。
それを知ってか知らずか、
美優は少し顔を赤らめてパワー注入。

「スキだっちゃ☆」
「へ…?」

翔はポカンとした顔。

「なんでもないわよ。ちょっと言ってみたかっただけ…」

テレビの見過ぎだ。
思ったより受けなかったのか、美優は顔を真っ赤にして下を向いた。

「カワイイよ。」
「う、うるさいわね!」

ドラマが終わり、テレビの向こうではニュースキャスターが

キリリとした表情で原稿を読んでいる。

「…県警察本部は、本日午後、長瀬由梨さん(10歳)に対する
 性的虐待などの容疑で、父親の長瀬翔容疑者を逮捕しました。
 長瀬容疑者は…」
「ええ!翔だってー!」

話題を逸らす絶好の機会を得た美優。

「10歳の娘に対する性的虐待って…」

想像したら、冷や汗をかいた。

「翔ってば、ヘンタイ!ロリコン!」

美優は調子に乗って翔の頭を叩く。
そんなに楽しそうに叩かれても、なんて言ったらいいかわからない。

「な、名前が一緒なだけだろ〜!
 そんな事言われても困るよ…。」

なぜかテンションの高い美優。

「フフッ、あたしには性的虐待しないでよ!」

彼女の暴走は、なかなか止まらない。

「はい?」

暫くふざけた会話を楽しんで、話題も尽きだした頃。

「あ、そろそろ…」

と呟いて美優は席を立った。

「お風呂入ってくるね。」
「あ、うん。」

その翔の表情が、美優には
何か物欲しそうな顔に見えたのかもしれない。

「なに?一緒に入りたいの?」

この小悪魔な笑顔が、いつもいつも翔を惑わし狂わす。
美優は少し恥ずかしそうに顔を赤らめ、呟いた。

「いいわよ。」
「え!?」
「う、嘘よ!」

慌てて否定する美優。

「覗いたりしたら、殺すわよ!」

またやられた。
でも、自分で言っておいて恥ずかしがるなら
そんな事言わなきゃいいのに…。

翔は悶々とした様子で、
何十分も頭を抱えたままだ。
美優はお風呂に入っている。
もちろん、一糸纏わぬ姿で…。
ああ、美優の裸かぁ…
見てみたい… 触れてみたい…
そして… あんなコトや…こんなコト…
よし、とりあえず覗きに行こう。
…ダメだ、そんな事したら殺される。
いや、いっその事襲ってしま…
ダメダメ、いったい何を考えているんだ!
でももしかしたら、
美優はそれを待ってるのかもしれない…。
「あー、早く翔が襲いに来ないかなぁ…」とお風呂で
待っているのかもしれない。全裸で…。
いや、そんなワケないか…。
でも襲ってしまえば案外OKしてくれるかもしれない…。
だって、僕らは彼氏と彼女なんだから。
そういう事するのは当然なはず。
そう… あんなコトや…こんなコト…
よし、とりあえず覗きに行こう。
…ダメだ、そんな事したら殺される。
いや、いっその事襲ってしま…
ダメダメ、いったい何を考えているんだ!
でももしかしたら、
美優はそれを待ってるのかもしれない…。
「あー、早く翔が襲いに来ないかなぁ…」とお風呂で
待っているのかもしれない。全裸で…。
いや、そんなワケないか…。
でも襲ってしまえば案外OKしてくれるかもしれない…。
だって、僕らは彼氏と彼女なんだから。
そういう事するのは当然なはず。
そう… あんなコトや…こんなコト…
よし、とりあえず覗きに―――――――

     ―――――――「お先にぃー♪」

「うわあああ――――!!」
「な、なによ
 大きい声出さないでよ!
 ビックリするじゃない!」
「び、びっくりしたのは
 こっちだよ!!
 急に驚かさないでよ!」

そう言って振り返って見ると、
美優はTシャツ一枚に下はジャージ。
白いシャツから、ブラが透けてる…。

「んん…?ど、どこ見てんのよ!!」

若手芸人ばりのその声に、
翔は思わず畏縮する。

「ゴ、ゴメン…。透けてるから…つい…」

その言葉を聞いて、美優は慌てて胸を隠す。

「ええ! 乳首透けて…
 ってよく考えたら、ブラしてるじゃない!」

…ブラは透けてても問題ないらしい。

「いつもは寝るときはブラしてないのに、
 今日はあんたがいるから仕方なく付けてんのよ!」

と、恥ずかしさを紛らわすためか翔を怒鳴りつけた。

「はぁ… ま、いいわ。
 あんたも早く入ってきなさいよ。」

「ふーっ…」

湯船に浸かってリラックス。
温かい…。
なんだか、良い匂いがする…。
翔は風呂のお湯を両手ですくい、
その透き通ったお湯をぼんやり眺めた。
このお湯に美優も入ってたのかぁ…

「美優…」

あっ… 勃っちゃった
顔がニヤける。だらしない顔だ。

「翔、入るわよ〜。」

ガチャ!!

「え、ええ!?」

翔は大慌てでそれを隠す。
浴槽の縁に寄りかかるように身体を倒し、
美優の視点から局部が見えないようにしたのだ。
だが、覗き込まれでもしたらすぐにバレてしまう。

「なに慌ててんの?バスタオル、ここに置いとくわよ。」

美優はそんな不自然な様子を気にもせず、
普段どおり。

「あ、ありがと。」

というか、なぜ堂々と翔の風呂を覗いているのだ。
これが立場が逆だったら、絶対怒るくせに。

「背中でも流そっか?」

そう言って美優は何気ない顔で
バスルームに一歩足を踏み入れる。

「も、もう洗ったよ。」

翔は慌てて嘘をつく。

「そう…?」

美優は少し残念そうな顔をした。
彼女としては、翔の背中を流してあげたかったようだ。
それ以上に深い意味があったのかどうかは、定かでない。

「あ、そうそう。
 あたし、自分の部屋にいるから。
 階段上がってすぐ右の部屋ね。」
「あ、うん…。」
「じゃ、ごゆっくり。」

そう言って美優は微笑む。
カタンと音を立ててドアが閉まった。

「はぁ…
 焦ったぁ…」

どっと疲れた。

「階段上がって、すぐ右っと…」

翔はタオルで髪を乾かしながら、階段を上る。

「ここかな?」

扉に掛けられた

“MIYU’sroom”と書かれた札。

これは確か、中学の美術の時間かなんかの時に
作ったやつだ。
とても上手に出来たと先生に褒められていたっけ。

コンコン

ノックをしても返事がない。
そっと扉を開けてみる。

「ここが美優の部屋かぁ…。」

その部屋は、まさに女の子の部屋といった感じだ。
翔の部屋と同じくらいの広さの部屋に、
服やら鞄やらが所狭しと並んでいる。
わりと綺麗に片付いているが、
普段からこれくらい綺麗にしているのかは疑問が残る。

「美優…、寝ちゃったんだ…。」

美優はベッドの上でスヤスヤと寝息を立てている。

「美優の寝顔…
 カワイイ…」

翔はほのぼのとした気持ちで
微笑みを浮かべた。

「って、僕はどこで寝ればいいんだ…?」

リビングのソファーででも寝るか…。

「まったく。どうしようもないな、美優は…」

そう呟いて美優を眺める。
無防備な寝姿…。

「……オヤスミのキスくらい、
 いいよね?」

心臓が高鳴るのを感じながら、
翔は美優の顔へと顔を近付ける…。

「美優…」

息がかかるくらい近付いて、
美優の寝顔を、美優の唇を、見つめる。

ギロッ

美優が、起きた。

「翔!!」

美優は目を見開いて翔を怒鳴りつける。

「ハッ…!び、びっくりさせないでよ!」

翔は慌てて顔を離す。

「それはこっちのセリフよ!」

怒ったかと思うと、
今度はすぐに不敵な笑みを浮かべる美優。

「でも、あたしの寝込みを襲おうだなんて、
 翔にしては頑張ったわね。」

そう言って翔をからかった。
翔は「そんなんじゃない!」と否定する事もできず、
顔を赤らめてしょんぼりしていた。

「ご褒美に、一緒に寝る?」
「ええ!?」

美優の一言に、また翔は過敏に反応してしまう。
お決まりのパターンなのに、
いつも美優は突然何気なく言うものだから
一瞬本気にしてしまうのだ。
美優は拍子抜けしたような顔。

「早く入んなさいよ!」

この女、何処まで本気なのかわからない…。
いつかの修学旅行を彷彿させるような
美優の布団を捲り翔を招き入れるその仕草。
翔はドギマギしながらも
美優の寝ているベッドに入ってゆく。
どうせすぐに追い出されるだろうと思いながら。

「あ…、電気消して。」

美優にそう言われて、
翔は手を伸ばし灯りを消した。
暗闇の向こうに、美優の怒った顔が見える。

「全部消したら、なんも見えないじゃない!
 小さいのだけ、つけといてよ。」
「あ、ゴ、ゴメン…」

薄暗い部屋。
ふたりで寝るには狭すぎるベッド。
見つめ合うふたり…。
美優は照れくさそうに微笑みかけた。
これは、OKサインと見ていいのか…。
翔は美優の気持ちを量れないまま、
彼女に唇を重ねる。
キスをすれば、気持ちは通じ合えるのだろうか…。
好きだという想い。
この熱い想いを、今夜、
美優の中に吐き出したい…。
呼吸をするのも忘れ、舌を絡め合う。
頬を真っ赤に染めて、淫らな接吻に酔いしれる。
美優が翔の体をギュッと抱き締めてきたから、
翔も彼女を優しく抱き締めた。
でもそのせいで、
美優の股間に何か硬いものが当たってしまったらしい。
それはビクンビクンと脈打って、
美優の体を求めていた…。
ふたりの唇が、離れる。
一瞬の沈黙の後、美優は気まずさを払拭するように

「じゃ、お休み〜。」

と言って、翔に背を向けた。

あれから数十分。
ふたりは背中合わせで横になっている。
この広い世界で巡り合い、この狭いベッドで
互いの存在を感じ合えるだけで、充分過ぎるほど幸せだった。
思えば翔と美優は、正反対の性格で…
何もかも背中合わせだった。
それがいつの間にか、付き合うようになって…
今では何故かひとつのベッドで身を寄せ合っている。
これが、”運命”ってやつなのかなぁ…

「翔…、まだ起きてる?」
「うん…。」

こんな状況で眠れるわけがない。
でも、翔はこのまま朝まで
美優の温もりと幸せを感じているのも
悪くないと思っていた。

しかし…、

「ちょっとくらいなら…」
「…しても怒らないよ?」
「え…」

一瞬なんの事かわからなかった。
でもすぐにそれに気付き、翔は体を起こした。

「…いいの?」
「いいわよ。したいんでしょ?」

美優の顔は、真っ赤だった。
その顔に今まで何度も騙されてきたけど、
この時は何となくわかった。
美優は、本気だという事を。
美優は背中を向けたまま呟く。

「恥ずかしいからあんたから脱いでよ。」
「…わかった。」

翔はベッドから出て、服を脱ぐ。
美優はそんな翔を、挙動不審な様子で眺めている。

「そんなジロジロ見ないでよ。」

トランクス姿の翔は、照れくさそうにそう言った。
美優は勃起しているのがバレバレな
そのトランクスのテントを見つめながら、
ますます顔を赤らめた。

「どうせあんたもあたしの裸をやらしい目で見るんでしょ?」
「え…あ、うん…、そう…なのかな。」

否定できない男の性。
彼の股間は、美優を求めていたから…。

「なら我慢しなさいよ。」

パンツを脱いだ翔は
女の子のように恥ずかしがる。
美優にそこを見られるのは初めてではないが、
この羞恥心は拭うことが出来ない。
美優はゴクンッと息を呑んで

「久しぶりね…。」

と、翔のペニスと挨拶を交わした。
美優は愛おしそうにそれに触れる…。

「すごい勃ってるね…。興奮…してるの?」

上目遣いで翔に尋ねるその姿。

――――萌えた。

「え…その…、美優の事が…好きだから…。」

ドキッとした。
美優はパニックに陥る。
自分の感情が理解できなかった。

「じゃ、じゃあ、オヤスミ!」

美優は布団に潜り、ふて寝をした。

「それはズルイよ!」

そう言って翔は布団を剥ぐ。
…その力強さが、美優には怖かった。

「で、でも…」

美優は、脅えている。
そんな美優を見たのは、初めてかもしれない…。
美優は女の子なんだ。
そして、僕は男なんだ。
そんな当たり前の事実が、
裸の翔に重く圧し掛かる…。

「僕の事、嫌いなの?」

翔は優しく問いかけた。

「そうじゃない…。好きだけど…」

好きだけど―――

恥ずかしい…

恥ずかしいけど、
あたしの裸を見て欲しい…
あたしのいやらしい部分を、
絶対他人に見せられない場所を、
舐め回すように見つめて欲しい…

でもやっぱ、恥ずかしい…

それは、destinedambivalence―――

It’sdestinedsincetheoriginalsin.
It’sdestinedwhen
AdamandEveatethefruitoftheforbiddentree,
theyknewthattheywerenaked,
andtheysewedfigleavestogether
andmadethemselvesaprons.
It’sdestinedambivalence.

「……わかったわ。」

美優はついに、覚悟を決めた。
翔が好きだから…
翔の気持ちに応えなくてはいけない。

「翔…、脱がせて…。」
「美優…」

震える指先が、美優の肩に触れる。
翔は美優の服に手をかけた。
薄手のTシャツを、ゆっくりと脱がす。
美優はされるがまま…。

「あ…これ…。この前買ったブラジャー…」
「う、うん…」

美優の胸を包むのは、ピンク色の可愛らしいブラジャー。
初デートのときに翔に買ってもらったものだ。

「似合ってるよ…。」

翔は優しく微笑んだ。

「でも… 外すね。」

背中に手を回し、ホックを外そうとする。
でも緊張してるのか、なかなか外れない。
ようやくブラジャーが外れると、
大きな乳房がプルンッと零れ落ちた。

「おっぱい…
 大きいね…」
「恥ずかしい…」

美優は頬を紅潮させ、視線を落とした。
でも、胸を隠したりなんてしない。
翔に見て欲しいから…。

「綺麗だよ?」

そう、美優の胸は本当に美しかった。
十分すぎるほど大きくて、形も張りも良くて…
翔の手は、自然とそれに吸い寄せられた。

「柔らかい…」

マシュマロみたいにふわふわ…
気持ち良い…
こんなに気持ち良いんだ…
翔は初めて触れたその感触に感無量。
その魅力に取り付かれた翔は、
慣れない手つきで優しく揉み始めた。
美優は真っ赤な顔でじっと耐え、

「んん…」

と篭った声を時折漏らす。
今度は乳首を重点的に責めてみる。
桜色の敏感な乳頭があまりに可愛らしくて、
悪戯せずにはいられない。
指先で摘まんで少し引っ張ったり、
クリクリと捩じってみたり。
美優の微妙な反応が、堪らない…。
翔は調子に乗って乳首を舐める。

「はぅ…」

と声を漏らし、少し顔を歪める美優が
すごく可愛い。

「乳首、勃ってるね。」

翔に耳元でそう囁かれて、
美優は顔から火が出そうだった。

「そ、そりゃ勃つわよ!
 しょうがないじゃない!」

美優の乳首は、ビンビンに勃起していた。
美優も、興奮してるんだ。
その紛れもない事実を、
赤く勃起したそれが証明している。

「感じてる”ってコト?」
「か、感じてなんかない!」

必死に首を振る美優が、また可愛い。

「じゃあ、美優にいっぱい感じてもらえるように頑張るよ。」

そう言って翔は、また舌を這わす。
彼に乳首をしゃぶられながら、
美優は小さく「バカ…」と呟いた。

「ぁ…んぁ…」

美優の切なげな声が部屋に響く。
体をくねらせ、敏感に反応する美優。
眉をひそめて、口は半開き…
何ともだらしないというか、いやらしい…。
十分胸の味を堪能した翔は、
ついに美優の下半身に手を伸ばす。
まずは、ジャージを脱がせる。
これで、美優はパンティ一枚。

「今日もひもパンだね。」

翔の囁いた言葉に、
美優は眉間にしわを寄せる。

「今日”も”って何よ!」
「あれ… いつだっけな…
 何か前に見た気が…」

翔は冷や汗をかきながら、
必死に記憶を辿った。

「あたし、翔に見せた事なんてないわよ。
 さては更衣室でも覗いたのね!?」
「ち、違うよ!
 う〜ん…
 いつだったかなぁ…」

ちなみに、正解は―――
中学時代、綾に貸そうとブルマを脱いだとき、
風でスカートが捲れて偶然見えてしまったのだ。
黒のひもパンが。

「ま、いいわよ。あたし、ひもパン好きなの。文句ある?」

開き直る美優。

「僕も、ひもパン好きだよ。」

ひもパン以外何も身に付けていない美優に、
少し顔を赤らめながら微笑みかける。

「可愛いし…、なんかエッチだよね。」
「エッチなのは、あんたでしょ。」

と美優が嘲ると、

「それは美優も同じでしょ。」

翔も美優と同じ笑い方をする。

「ち、違うわよ!あたしは、あんたがエッチしたいって言うからしょうがなく…」

――そんな事言ってませんが。

慌てふためく美優は、いつ見ても可愛い。
特に今は、格好が格好だけに
いつも以上に翔の気持ちを高揚させる。

「…脱がすね?」

美優がコクリと頷くと、
翔は蝶結びのひもにゆっくりと手を伸ばし、
それを掴むと優しく引っ張った。

最後の布着れが、
花びらのようにひらひらと舞い落ちる…。

真っ赤な顔で俯き必死に羞恥に耐える美優。
そんな美優のいやらしい部分を
しげしげと眺める翔。
ふたりの高鳴る鼓動と、沈黙。
大好きな人の恥毛を初めて目にして
何を言ったらいいのかわからない翔は、

「髪の毛は茶色なのに、
 あそこの毛は黒いんだね。」

と正直な感想を洩らした。

「あ、当たり前でしょ!?
 あそこの毛なんて染めるわけないじゃない!」
「ハハッ、なんかアンバランスだね。
 でも、…カワイイよ。」

ちょっと逆立って自己主張をする恥毛は、
まさに美優そのもの…。
美優自身も、美優のアソコの毛も、
“可愛い”という一言に尽きる。
ひもパンを奪われた美優は、
一糸纏わぬ姿で翔に全てを晒す運命。
これで、ふたりとも裸だね…。
美優の長い髪を撫で、はにかんで微笑み合った。

翔は美優の下半身へと手を伸ばす。
美優の恥毛は、なんとも言えない妖しい魅力を放っている。
翔はついにそこに触れ、思わずハッとした。

「濡れてる…?」
「う、嘘!」

美優は信じられないといった様子で、
羞恥心のあまり、手で顔を覆った。

「イヤ…、恥ずかしい…
 あんま見ないでよ!」

恥ずかしがる美優とは裏腹に、
翔は彼女の秘部を覗きこむようにして眺めている。

「これが…、美優のアソコ…?」

指でそれをパックリと広げ、物珍しそうに中を観察する。
美優の中は、こんなにも厭らしく…
こんなにも濡れていて…
こんなにも愛おしい…
翔はゴクンッと息を呑んだ。
敏感な部分に触れてみる。

「ぁ…ん…」

美優は火照った顔で体を捩じらせる。
翔のたどたどしい指がなんとも頼りないが、
美優は彼の指にその願いを託すしかない。

「ん… んん…」

切なげな篭った声が漏れる。
彼にそこを慰められて、
何だか少しもどかしく、歯痒い。

「んん… ぁぅ…」

ドキドキが止まらない…
もう… 爆発してしまいそう…。

「声とか… 出していいよ?」

導火線に火をつけた一言だった。
シューッと音が出るくらい、真っ赤になる。

「バ、バカ言わないでよっ!!」
「でも…
 我慢してるでしょ?」

翔は何気ない顔で意地悪な事を言う。

「し、してない!!」
「そう…。」

そう呟いて、今までわざと避けてきたクリトリスを刺激する。

ビクンッ

「っああぁ!!」

思わず出てしまった声。
美優は涙ぐんだ。

「バカバカぁ!翔なんて大っ嫌い!!」

美優はどうしてこんなにも可愛いのだろう。

「気持ちいい?」

愛撫しながら美優に囁く。

「き、気持ちいいに決まってるじゃない!!
 もう死んじゃいそうよ!」
「美優…」

翔は照れ笑いする。
お互い、顔は真っ赤だ。
翔は美優の反応を時折見ながら、
容赦無く秘部を弄ぶ。

「んぁあ…! ああぁ…!」

美優は、喘いだ。
もう… 我慢できなかったから。

気付けば翔は、指だけでは飽き足らず
顔を近付けて舌で慰め始めた。

「しょ、翔!?
 ぁん… 汚いよ!?」

そう言いながらも美優は翔の頭を手で押さえる。
よほど気持ちが良いのか、自然とその手に力が入ってしまう。

「っあ…! んぁあ…」

舌のザラザラした感触が敏感なところを刺激して、
あまりの快感に
もう…狂ってしまいそうだ…。

「美優の味がする… 美味しいよ。」

そんな甘い声で、そんなエッチな事を囁かれたら…

「んぁ ヘ、ヘンタイ!」

どうしてこうも素直になれないのだろう…。
体は素直すぎるくらい
従順に反応してしまうというのに…。

「あぅ…ひぁああ!」

我慢しても溢れてくる、愛液と、嬌声と、翔への想い…
もう十分堪能したのだろうか…。
翔は秘部を弄ぶのを止めた。
キスをするわけでもなく、
ただ美優の顔の前に留まって
優しく微笑むその笑顔。

―――イジワル。

なんで止めるのよ。
もう少し続けてくれたら…
……イッちゃえたのに。

「な、なに?」

そんな眼であたしを見ないでよ。
美優の顔は、相変わらず紅潮している。
そんな可愛らしい美優の耳元で、
そっと囁いた。

「入れて…いい?」

美優の顔から、一気に血の気が引いた。
さっきまでの火照りが嘘のように、
急に青ざめた顔になる。

「ダ、ダメよ!!“ちょっとだけ”って言ったじゃない!」

ちょっとだけ…
そう言っていたのに、
ふたりはもう…
後戻りできない場所に、来てしまっていた。
あと一歩踏み出せば、
もう… 別世界―――

恋する女の子から
      大人の女性へと
そんなのイヤ
心の準備ができてないもの…

「でも…僕、我慢出来ないよ!」

翔の声にびくんっと驚き、
美優はいつになくオドオドした様子。

「だ、だけど…
 それにほら、そのまましたら
 赤ちゃん出来ちゃうじゃない!」
「あ、それは大丈夫。
 ちゃんと持って来たから…」

そう言うと翔は、脱ぎ捨てられた服のポケットから
コンドームを取り出した。

「ちょ…、あんた何でそんなの持ってるのよ!」

翔は意外と用意周到だったのだ。
そんな彼に送られる冷たい視線。

「あんた、はじめっからやるつもりだったのね…!」
「ち、違うよ!も、もしかしたらって事もあるかも…って思って。」

翔は慌てて否定したが、まったく説得力がない。

「ホントにぃ?」
「本当だよ!」

何とか美優を捻じ伏せる。
美優は改めて翔のそれを見つめ、
ゴクンッと息を呑んだ。

「こんな大きいの…。入るのかしら…?」

そう言って何となくそれに触れてみると、
なぜだか更に大きくなる。
ドクンドクンと脈打ちが掌に伝わり、
美優は言葉を失った。

ThisLanceofLonginus
easilypiercesmyabsoluteterrorfield,
andmeltsme, doesit?
Then…
Canyoupromise
thatdoesn’tmakemepainful?

「……できるだけ痛くしないって
 約束してくれる?」

頬を火照らせる。
翔のペニスは握ったまま。

「え…、も、もちろん!」

ビックリし過ぎて変な声が出てしまった。

「その…、気持ちよく…させて?」

顔を真っ赤にして目を逸らす美優、可愛過ぎる。
恥ずかしさを紛らわすためか、
握ったモノを2、3度扱いた。
キョロキョロと視点が定まらない美優。
翔が肩をしっかりと掴むと、
美優はヒッと肩を竦める。
翔は美優の瞳を見つめ、しっかりと頷いた。
コンドームを装着し、
それを入り口へと導く。

「…入れるよ?」

美優は大きく息を吸って、目を瞑った。

「うっ…」

翔の肉棒がゆっくりとそれを抉じ開けてゆく…。
美優は顔をしかめ、少し辛そうだ。

「イタッ…、痛い…」
「大丈夫?」

そう声をかけると、
美優は翔の手を手繰り寄せ、握った。
彼女の気持ちを察して、挿入を続ける。

「うぅ…翔が中に入ってくるよぉ…」

いつになく弱弱しい声に不安を覚えるが、
それがかえって翔をそそる。

「すごい…、締め付ける…」

美優の中は、
“優しく包み込む”なんて生易しいものではない。
もう離さない!とばかりにギュッと抱き締めてくる、
なんとも美優らしい膣だ。

「奥まで…入った…!」

「大丈夫そう?」

荒い吐息が美優の耳に吹きかかる。

「ねえ翔…」
「ん?」と首を傾けながら、
美優の髪を撫でた。

「ちょっとだけ…
 このままでいてもいい?」

「あたし達…
 ひとつになったのね…。」

恥ずかしさより、嬉しさの方が上回っていた。
頬が火照っているのは、
照れているからだけじゃない。
その頬に涙が伝うのは、
処女を失った痛みのせいだけじゃない。

「なんか… 幸せ…」

美優はとろけそうな目をして、そう呟いた。

「美優…、好きだよ?」

もう聞かなくたってわかってるその言葉。
でも美優は、何度聞いても聞き飽きない。
何百回でも言って欲しい…。

「翔…」

彼の頬に触れる。

「あたしも…」

ゴクンッと息を呑んだ。

「その… あの…
 あ、愛してる!!」

翔は目を丸くして、その後優しく微笑みかけた。

「僕も。愛してる…。」

ゆっくりと重なるふたりの唇…。
絡まる舌と舌…。
混ざり合う唾液…。
このときのキスは、
ほのかに甘い幸せの味だった。

彼の肩に手を当てて、
自分から唇を離した美優。

「もう、大丈夫…」

口元に唾液を垂らしたまま囁く美優に、
翔の興奮はさらに高まる。

「動くよ?」

美優は小さく頷いた。
ゆっくりと腰を動かし始めると、美優は

「ひぁっ」

と可愛らしい声をあげた。
腰の動きと呼応して、美優は喘ぐ。
敏感に反応する体は、その大きな胸を揺らす。

「やばい… あっ
 なんか… あぅ…気持ちいいかも…」

何だか美優がふぬけた顔に。
中で暴れる翔の肉棒に、
骨抜きにされてしまったようだ。

「美優… 美優ぅ…!」

悶える美優に、翔の興奮は極限まで高まる。

「あっ んぁあ!
 気持ち… いい…」

美優は自分から腰を振っていた。
プライドも意地も羞恥心も、この快感には敵わない。

「あっ 翔んぁ…すごい…ぁ
 あたし、ぁ イ、逝きそう…かもぉ」
「ほ、ほんと?」

普段の美優からは想像もできないような
淫らな姿と声色に、翔はもうめろめろだった。

「翔もぉ、ひぁっ 気持ちいい?」
「うん、気持ちいい。
 美優のナカ、最高だよ。」
「んん…本当? …嬉しい。ぁあっ」

少し汗ばんだ翔のひたい。
翔ってば、エッチだなぁ。
こんなにも一生懸命、
あたしを気持ち良くさせてくれる…。

もう… ダメ…
逝っちゃいそう…

「イ、イクぅ…んぁあああ!!」
「し、締め付ける… ぅぁあ!」

翔の胸に抱かれる美優。
トクンットクンッという
心臓の刻むリズムが心地良い…。

「あたし…すごい声出しちゃった…。
 恥ずかしい…」

真っ赤に染まった頬に触れる翔の指先。

「可愛い声だったよ。」

翔は微笑んだ。

「気持ち良かった?」
「もう…!
 今日はホント意地悪ね。」
「逝くときの顔、
 可愛かったなぁ。」
「もう!知らない!!」

プイッとそっぽを向いた。
でもすぐにまた、翔の方に振り向く。

「ねえ翔…
 も一回、やろ?」

無邪気さと、ほんの少しの恥ずかしさを
秘めたその笑顔に、翔は
「ええ!?」 と驚き、呆れ顔だ。

「ダ、ダメ?」

美優は焦った。
二つ返事でOKしてくれると思ってたのに。

「したいけど…
 ゴムひとつしか持ってこなかったから…」

美優と付き合い始めてから、
いつかこういう事が出来る日が来るといいなぁと、
翔は常にコンドームをひとつ、
御守り代わりに財布に入れていたのだ。

「そ、それなら大丈夫…」

恥ずかしそうな美優。
何だか少し不自然だ。

「…ここにたくさん用意してあるから。」
「ええ!?」

引き出しの中には、コンドームの箱が3つ。
“何度も買いに行くのは恥ずかしい”という理由で、
美優がまとめ買いしておいたものだ。

「美優ってエッチだね。」

そう言って笑いながら、再びベッドへと彼女を押し倒した。

夜が、更けてゆく…。

「帰らないでぇ!!」
「はぁ?」

玄関先で大声を出す美優に、
翔は少し呆れた顔をする。

「もうすぐ親が帰って来ちゃうんでしょ?」
「そう…だけど…」
「離れたくない…」

うるうるした瞳で、上目遣いで翔を見つめる…。

「翔が好きなの…」

そう言って視線を落とした。
掌を握り締めてプルプル震えたかと思うと、
急にワッと顔を上げて…

「好きよ好き、大好き!
 もうどうしようもないくらい翔が好きなの!
 しょうがないじゃない!!」

そんなキレられても困るんだけどなぁ…。
騒ぎ喚く美優をギュッと抱き寄せて
口付けで口を塞いだ。
美優は目を見開き、そこから一雫が伝う。
涙が零れ落ちないように、ゆっくりと目を閉じた。

「じゃ、また明日学校で。」

そう言って翔が帰っていった後、
美優は頬を火照らせ口を尖らせる。

「もう!! いつからあんな
 キザな事するようになったのよ!!」
「バカ…」

美優が呟いた一言は、
暮れなずむ夕焼けに消えていった。

綾はカーテンを開けた。
朝日が眩しい…。

今日は特別な日。

心の中に、そう決めていた。
お湯が沸いた音がすると、
綾は紅茶の葉を用意する。
朝はご飯が喉を通らない。
綾は日ごろ朝食は食べず、
紅茶を一杯だけ飲んで学校に行く。
この日も、ゆったりと紅茶を飲んだ。

「熱ッ…」

口元からこぼれた一滴が、綾の胸を伝った。
ナプキンでそれを拭く。
妖しげな笑みを浮かべた。
乳首は勃起していた。
秘部は、少しだけ濡れていた。

紅茶を飲み終え、鞄を手にする。

綾は迷った。

―――靴を履くか否か。

玄関に一歩踏み出してみる。
ひんやりとした感覚が、気持ちいい…。
しかし、季節は夏。
日なたの地べたは鉄板のように熱いだろう。
舗装されていない道を、裸足で歩くのも嫌だ。
綾は渋々靴を履いたのだった。

そして彼女は、

なんの躊躇いもなくドアを開けた。
外界への一歩。
これが、フォスの幕開けである。

Iatonefortheoriginalsin.
IstripmyfigleavesthatAdamandEvesewed.
And…I’llbeGod.

「気持ちいい風…」

髪をなびかせながら、彼女はそう呟いた。

「お早うございます。」

氷のように冷たい凛とした声。
いつも挨拶などした事のない
近所のおばさんにお辞儀する。

「あら、おはよ…ぅ…」

ゴミを捨てに行くところだったのか、
おばさんは手に持っていたそのゴミ袋を
地べたに落とした。

「お持ちしましょうか?」

そう言って綾が微笑みかけると、
おばさんは

「い、いえ。いいわよ、大丈夫…」

と慌てた様子で、ゴミ袋を拾いそそくさと去っていった。

綾の家から学校までの道のりは、駅まで10分、電車で二駅、
そしてそこからまた歩いて5分…。
人通りの多い道も通らなくてはならない。
電車にも乗らなくてはいけない。
通いなれた通学路も、何だかとても、新鮮な感じがした。

駅は人が多い。
人が多い場所は、嫌いだ。
人は皆、他人を拒み、心の壁でわたしを圧迫する。
こんな息苦しいのは、イヤ。
みんなの視線を一身に受ける少女は、今、そんな事を考えていた。

駅のホームで電車を待つ。

「ど、どうしました!?」

駅員らしき人が駆け寄ってくる。
綾は無視した。

「何かあったんですか!?」

しつこく聞いてくる駅員を、
彼女は哀れな孤児を見るような目で眺め、
優しく抱き締めた。

「何を怯えているの?」

  「三番線に電車が参ります。
   危ないですから黄色い線の――――」
「わたし、この電車に乗らなくては…」

彼女の姿は、その満員電車の中へと消えていった。

この日、綾は生まれて初めて痴漢というものに遭遇した。
まあ、似たような類のものは、過去にいくらでもあったが。

「止めてください。」

と、凛とした声で言った。
もっともそれは、形式上の言葉に過ぎない。

「その格好で、それは無いだろぅ?」

汗臭いハゲオヤジが、生臭い息を吹きかけてくる。

…気持ち悪い。

「…そう。」

綾はポツリと呟いた。
虫酸が走る思いだった。
こんなオヤジに弄ばれるためにわたしは生きているのではない。

だが、彼女は受け入れる。
彼女は誰も拒絶しない。
全てを包み隠さず露にして、全てを受け入れる。

…彼女の股間からは、愛液が垂れている。

綾は無表情でそのオヤジを見つめる。
哀れむ様な目…
血のように紅い瞳…

心の醜い人間は、

「ひいぃ!わ、悪かった!」

と腰を抜かし、彼女から視線を逸らす。

「あなたは醜いわ…」

それは拒絶ではなく、嘆き。
心の醜い人は、他人を拒絶する。
わたしはあなたを拒まない…。
でも、あなたはわたしを拒んでいる…。
いえ――
あなたはあなたを拒んでいるのね…。
綾の立っているすぐ横に、座っている母子。

「見ちゃダメよっ!」

と声を殺しながら怒鳴り、子供の目を塞いでいた。
見知らぬ女子高生達は、こちらをチラチラ見ながらヒソヒソと内緒話をしている。

たった二駅だというのに、この日は酷く長く感じられた。

「ふぅ…」

と、ため息を漏らして、綾は電車を降りた。

「で、どうだったの?」
「ん? 何が?」
「惚けないでよ!」

そう言って美優に詰め寄るのは恵。
中学時代からの美優の親友だ。
今は違うクラスなのだが、
わざわざ朝一番で美優のクラスに乗り込んできた。

「…緒方くんが泊まりに来たんでしょ?」

昨日もメールで聞いたのに、話をはぐらかされてしまった。
今日こそは、聞きたい。

「どうだったの?」

じっと見つめてくる恵の目を見れない美優。
伏せ目がちで頬を紅潮させる。

「へへっ…、…やっちゃった。」

美優は顔を赤らめ照れ笑いした。

「ほ、ほんと?」

恵は驚きを隠せなかった。
予想はしていたものの、
いざそう言われてしまうと、少し怯んだ。

恐る恐る聞いた。

「どうだった?」

「その…、えっと…、気持ち、よかった…」

幸せを噛み締めるように呟く。

「痛くなかったの?」
「最初は…痛かったけど…
 その…翔が優しくしてくれたから…」

美優の顔は真っ赤。
顔から火が出そうなほどだった。

「は、恥ずかしい事言わせないでよ!」

と、そこへ…

「みゆ〜」

翔が登場。
今日はわりと遅めの登校だ。

「あ、上戸さんも。おはよう。」

翔は恵に気付き、声をかけた。

「おはよう、緒方くん。」

と、恵が返事をしたのに続き
美優も。

「お、おはよっ!」

美優は少しテンパっていた。
まともに翔の顔が見れなかった。

翔が美優の席から少し離れた自分の席に着くと、
恵は小声で美優に語りかける。

「ねえねえ、
 なんかカッコ良くなったんじゃない?
 緒方くん。」
「そう?別にふつ〜よ。」

言葉とは裏腹に、ムチャクチャ嬉しそうだ。
美優は案外顔に出るタイプなのかもしれない。

「そう言えば、美優も何か綺麗になった感じがする…。」
「そんなコトないって!」

でも、煽てられて悪い気はしない。

「やっぱ、初体験済ませると、男はカッコ良く、女は綺麗になるのねぇ。」

しみじみと感慨深い顔をする恵。

「そ、そうなのかな…」

美優は半分呆れ顔だった。

「ところで恵、時間大丈夫なの?」
「え…」

恵が慌てて時計を見ると、針は8:19をさしていた。

「あ、もうこんな時間!わたし行くわねっ!」

そう言って焦って教室から出て行こうとすると…

「きゃっ…!!」

ドアのところで誰かと派手にぶつかって、転んだ。

「イタタ…」

立ち上がりながら、ぶつかった相手に謝ろうとすると

「ごめんなさ…」

恵の声は途中で止まってしまった。
あまりの光景に、声も出なかった。

「どいてくれる?」
「ハ、ハイッ!」

道を譲った恵は、ただ彼女の白く美しい背中を見つめる事しかできなかった。

冗談でしょ…
頭、おかしくなってしまったの!?

恵は涙目で自分のクラスへと逃げていった。
綾はクラスメイト全員の注目を浴びながら、
ゆっくりと自分の席に向かう。
手に持った鞄も、靴下を履かずに履いた靴も、
この奇抜なファッションを引き立てるアクセント。
コツコツと綾の足音だけが教室中に響く。

「ちょっと、あんた!」

美優が勢いよく立ち上がった。
その拍子に、椅子が大きな音を立てて倒れた。

「どうしたのよその格好は!?」

凄まじい形相で綾を睨みつける。
綾は答えなかった。
答えずに、一歩一歩ゆっくりと
美優に近付いていく。
全て美優の前に曝け出して…。
目の下をピクピクさせている美優の
少し赤くなった頬に優しく触れた。

「怯えなくて、いいのよ?」

この紅い瞳に、吸い込まれてしまいそう…。
たじろぐ美優の耳元で、そっと囁いた。

「あなたも脱いでみたら?」

不気味に微笑む綾に、背筋がゾクッとした。

「…気持ちよく、なれるわよ?」

美優は力なくヘナヘナと
その場に座り込んでしまった。
綾は自分の席に着く。
もう誰も彼女に声をかけられる者はいなかった。
教室内に、異様な雰囲気が漂う。
息もできないほど張り詰めた空気…
身の毛もよだつ冷たい静寂に、
蝉たちさえも鳴くのを止めた…。
翔は頭を抱えた。
顔は真っ青で、額には冷や汗…
昨日までの幸せが
一瞬にして消え失せてしまう。
  西
     自由の地…
          日の入る地…
  濱            彼の浄土の地…
     自然の際…           始まりの地…
          波打ちの際…
  綾           母なる海と地の際…
     飾りの様…           天と地の際…
          斜めの模様…
               浮きに出た紋様…
                       入り組みし様…

…もう、決定的だった。

西濱 綾

彼女は、

  ―――――――露出狂だ。

キーンコーンカーンコーン…

チャイムが虚しく響き渡ると、担任の教師が教室に入ってきた。
彼は教壇に立つと、その異様な雰囲気に威圧された。

「何だ…?やけに静かだな…」

そう呟き、教室を見回すと…
その目が見開いた。

「に、西濱…?」
「どうかしました?」

名前を呼ばれた少女は、嘲るように微笑を浮かべた。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

「いや…、何でも…ない…」

彼は俯いた。
現実を見るのが、恐かったのかもしれない。
教卓に置かれた名簿を持つ手はブルブルと震え、
“西濱綾”という字が歪んで見える。
そして、恐る恐る再び顔を上げる。
綾の背中には、白い羽が見えた。

「―――ハッ!?」

突然、我に返った瞬間。
その羽は儚く舞い散って消えた。

「に、西濱!!服を着なさい!!」

少し残念そうな顔をした綾は、ゆっくりと立ち上がった。

「すいません…。」

今、彼女の全てが見てとれる。
粉雪のように白く繊細な肌が、美しい…。
綺麗な形の乳房の中心で、ツンッと上を向いて自己主張をする赤い乳首。

彼女には陰毛が無かった。
そのまま陰唇が晒されている。

「着てくるの…忘れました。」

綾の身体は、疼いている…。
その証拠に、彼女の太ももには愛液が伝っていた。

服を着てくるのを忘れた、だと…?

「そんなわけないだろ!」

教師はそう怒鳴って、血のように紅いその瞳を睨み付けた。

綾はようやく観念したのか、
目を逸らし、呟いた。

「…校則違反をしている人は、
 他にもたくさんいるのに…。」
「そういう問題じゃない!!」

そう怒る教師に、綾は静かに、しかし強い口調で食って掛かる。

「授業の邪魔はしません。
 このまま受けさせてください。」

そして、少し俯き加減で…、彼女は最後の言葉を呟いた。

「…裸でいたいんです。」
「…服は、着たくありません。」

綾の正体は、完全に暴かれた。
綾は正真正銘の露出狂…
彼女自身がそれを認めた瞬間だった。

教師は「はぁ…」とため息をつき、
綾のもとへと歩み寄る。

「…もういい。
 西濱… 俺と一緒に、職員室へ行こう。」

着ていた背広を脱いで綾の背中に被せた。

「わかったな?」

綾の顔を覗き込むようにして見つめそう言うと、
彼女の返事を待たずに、
肩を抱いて教室の外へと連れて出ていった。

「お前ら、自習してろ…」

生徒たちに残した言葉は力無く、
教室の空気を一層重くした。

教室のドアが閉まる。
もう…二度と開くことのない扉…。
そう、信じていたかった。

綾の居なくなった教室は
不気味なくらい静まり返っていた。
翔も美優も、心苦しかった。
殺人現場にでも出くわしてしまったかのような、
凄まじい後味の悪さを覚えた。

また、空を見ている…。

屋上は風が強い。
ふたり並んで、澄み切った青空を眺めている。
美優の長い髪が風に靡いているのが、美しい。
あの雲は、何処へ行くのだろう…。

「露出狂…だったのね…。」

ポツリと呟いた美優は、どこか寂しげな顔をしていた。
彼女の哀しげ瞳が、翔を見つめる。

「翔は…知ってたの?」

翔の脳裏によぎるあの日の光景――

バスタオル…
    プリクラ手帳…
全裸の綾…
    苦い紅茶…
服?
  …そんなモノ、無いわ。
わたしと、
  セックスしたいんでしょう?

「もしかしたら…とは思ってたけど…」
「そう…」

さすがに綾の部屋での出来事なんて、
口が裂けても言えない。
翔はそんな自分が後ろめたかった。
でも、美優には
見透かされてしまっていたのかもしれない。

「な〜に暗い顔してんのよ!」

美優は無理に明るくそう言って、翔の背中を叩いた。
それから、空を…どこか遠くを見ながら…

「大丈夫よ…。あたしは、翔以外の人に…
 裸を見て欲しいなんて思わないから…。」

美優がそう言ってくれたことだけが、
翔にとって唯一の心の救いだった。

その日以来、綾は学校を休み続けたが、
誰も彼女の話題など出そうとはしなかった。

暫くして、担任から
『綾は高校を退学した』と教えられた。
退学の理由などは、何も聞かされなかった。
それ以来、彼女に再び出逢うことはなかった。

―――――あの時までは。

 *********************************************

    第参章 社会現象 −Introjection−

 *********************************************

七年後―――――

「しょおーっ!!
 早くーぅ! こっちこっち!!」

上り坂を一人で駆け上がって振り返り、
遅れてくる彼にせがむ女性。
大人になって美少女から美女になった彼女だが、
根本的には何も変わっていない。
露出度の多い服を好み、胸元を大胆に見せている。
短いスカートからパンツが見えそうなのはご愛嬌。

「みゆー、待ってよ!」

彼女を追いかけ必死に走ってくる青年。
昔に比べれば身長も伸び、
少しは男らしくなっただろうか。

「ハァハァハァ…
 てか、ちょっとは荷物持って…」

膝に手をついて息を切らしている翔を、
美優は呆れた顔で眺めていた。

「まったく!しょうがないわね。
 普段から運動不足だからよ!」
「あ、ここのホテルね。」

美優は左手で大きなホテルを指差した。
その薬指にはめられた指輪が日の光を反射して、眩しい。

「Hello.
 Mynameis“Himura”.
 Wehaveareservation.
 Checkin,please.」

流暢な英語で受付に話しかける美優。

「違う違う!
 緒方でしょ。」

後から入ってきた翔が、慌てて訂正する。

「あっ…。そうだった。
 なんか、慣れないわね。」

美優は恥ずかしそうに苦笑いした。

「フフフッ…」

受付嬢にも笑われてしまった。

「緒方様ですね。
 お待ちしておりました。」
「あれ?日本語通じるんじゃん。」

ふたりはキョトンとする。

「はい。日本人のお客様が多いので…。
 緒方様、707号室でございます。」

美優が鍵を受け取って、
エレベーターで7階へ向かう。

「緒方美優…かぁ…
 悪くないわね。」

そう呟く美優に、翔は嬉しそうに微笑んでいた。

「あ、ここよ。」

部屋の前に到着すると、美優がドアを開けた。

「はぁー 疲れた…」

翔は部屋に入るとドッと疲れた様子で、
荷物を床に置いてベッドに倒れこんだ。

「なにへばってるのよ!
 せっかくの新婚旅行なんだから、早速…」
「泳ぎにでも行く?」

むくっと起き上がる。

「違うわよ!」
「…ん?」

翔が頭の上にクエッションマークを浮かべると、

「えいっ!」

と美優が翔のもとに飛び込んできた。

「ハハッ…
 美優に襲われちゃった。」

美優に押し倒された格好の翔。
ふたりで笑いあった。

「今夜は(まだ昼だけど)寝かせないわよ!
 あ・な・た♪」

美優はときどき変なセリフを言う。

「もう…」

南国だからって、テンション上がりすぎだよ。
悪ノリが過ぎるね。
ま、可愛いから許すけど。
そんな事を考えていると、有無を言わさずキスされた。

キスをしながら美優の服を脱がしてゆく。
美優はキスに夢中になって、
翔の髪をクシャクシャと掻いている。

「んぁ…」

ときどき漏れる甘い吐息が、ちょっとエッチ…。
ふたりの心を狂わしてる。
唇が離れると、ふたりは見つめあった。
ふたつの口の間に、混ざり合った唾液が糸を引いている。
気付けば美優は、あられもない姿になっていた。

「…どうしたの?」
「いやぁ…、いつ見ても可愛いなぁって思って…。」

いつも、翔が少し意地悪な顔をすると必ず美優は慌てる。

「あ、あんまジロジロ見るの禁止っ!!
 恥ずかしいじゃない…」

恥ずかしがるところが、また可愛い。

「いまさら恥ずかしがる事もないでしょ。」
「恥ずかしいものは恥ずかしいの!」

顔を真っ赤にして怒る美優は、昔と全然変わっていない。

「…まあ、見て欲しいって気持ちもないわけじゃないけどさ。」

ちょっと不貞腐れた感じでそう呟くと、

翔は嬉しそうに笑う。

「じゃあ、たっぷり見てあげるよ。」
「もう!あんたも早く脱ぎなさい!」

自分から誘っておいて
結局いつも翔のペースになってしまうのが
少し悔しい美優だった。

「わかったわかった。」

翔はそんな美優を笑いながら、着ている服を脱ぎ始めた。
翔が服を脱いでゆくと、美優は興奮する。

この女、こう見えて結構エロい。

「あ、勃ってる♪」

嬉々とした様子で、翔のペニスを見つめる。
彼の裸、特に下半身を見ると、
なぜだかニターッとにやけてしまう美優。

「美優、見過ぎ。」

翔が笑ってそう突っ込むと、

「み、見てなんかないわよ!
 ちょっとぼーっとしてただけ!」

と誤魔化す美優も、また可愛い。

「ねえ美優…。お願いがあるんだけど…。」

あんまり美優の機嫌が良いから、
翔はいつもしない無茶なお願いをしてみる。
翔が耳打ちすると、
美優は顔を真っ赤にし大声をあげた。

「ええぇ!胸に挟むのぉ!?」
「…ダメ?」

甘えるような目付きで翔に見つめられると、どうしても美優は弱い。

「まあ、いいけど…。
 …じゃ、ローション取って。」
「はい♪」

翔は笑顔で返事をして、鞄から自前のローションを取り出した。
美優はそれを受け取り、慣れない手つきで胸に塗りたくる。
続いて翔のペニスにも。美優が丁寧に塗ってあげると、
それだけで翔のペニスはビンビンになる。
初めてのエッチが手コキだったためか、
翔のペニスは手で触られるのに弱いのだ。

「まったく…、しょうがないわね。」

そう言って、渋々(実はノリノリで)、胸の間に
彼のペニスをセッティング。

美優の胸は、昔に比べさらに数段大きくなっていた。
美優にとっては邪魔なだけだが、
翔からすると揉みごたえのある優良な乳だ。
そんな乳房に、今、翔のペニスが挟まれる…。

「柔らかい…」

美優は手で胸を寄せて翔のペニスを包む。
そして、上下に動かし始めた。

「…こんな感じ?」

上目遣いで見つめてくる美優が、すごく可愛い。

「うん…すごく良いよ。」

美優の髪を撫でる。

「出来れば…、舐めてくれると嬉しいかな。」

ちょっと恥ずかしそうにそう言うと、

「オッケー♪任せといて。」

美優は二つ返事で承諾した。
美優の舌が、いざ翔のペニスの先端に触れると、
それはビクンッと反応する。
そんな翔の敏感なペニスを、美優は”可愛い”と微笑んだのだった。
パイズリしながら、亀頭をレロレロと舐める。
美優が目で”気持ちいい?”と聞いてくる。

「気持ちいいよ…」

翔は恥ずかしそうにそう言った。
美優はそんな翔が好きで好きで堪らない。
亀頭をまるまるしゃぶってみたり、乳首をペニスに擦り付けたり、
彼女なりに工夫してみる。
翔の気持ち良い顔を、もっともっと見たいのだ。
翔はそんな美優のエッチな姿を見て、物凄く興奮する。
自分のためにそこまでしてくれる美優が愛おしかった。

「あ…逝きそう…」

情けない声が漏れる。
その声を聞くと美優はここぞとばかりにサービスする。

「で、出る!」

翔は美優の顔に射精した。
美優が亀頭を舐めていたのだから
しょうがない事ではあるが、
いつもの美優なら激怒するところだ。
恐る恐る美優の顔を見ると…

「あはっ…、いっぱい出たわね♪」

やっぱり今日は機嫌が良いみたい。
精子塗れの美優の笑顔は、
物凄く可愛くて、物凄くエロかった。

「気持ち良かった?」

精液を拭き取りながら、美優が聞く。

「…うん。」

翔が顔を赤らめると、美優も同じように赤くなった。

「そ。」

そう短く返事をして、平然を装う。

「ゴメン…、汚しちゃったね。」

精子塗れの美優の顔を、申し訳無さそうに見つめると、美優は笑った。

「フフッ、そんなの別にいいわよ。」

そう言ってはみたものの、美優は頭を掻いて言い直す。

「でも、やっぱ顔洗ってくるわね。
 ちょっと待ってて。」

やっぱり顔に精子が付いたままなのは
気持ち悪いだろうし、
翔も美優の顔に付いた自分の精子を
舐め取る趣味はない。

美優は裸で洗面所に走った。
ローションと精液でテカテカに光る大きな胸が、
ユサユサと揺れる。

「寝ちゃダメよっ!」

美優が洗面所からひょっこり顔を覗かせる。
以前フェラチオをしてもらったとき、
美優は頑張って精液を飲み干したものの
我慢できずにうがいをしに行った。
そのとき翔は自分だけ絶頂を味わったのをいい事に、
美優が帰ってきたときには爆睡していたのだった。
もし今日も同じことをしたら、
いくら機嫌が良くても流石に怒られる。

2,3分すると、美優は笑顔で戻ってきた。

「さ〜て…、あたしにあんだけやらせたんだから、
 あんたにもたっぷりサービスしてもらうわよ!」

そう言って翔に抱きつく。
口調と行動が正反対だが、それもまた美優らしい。

「サービスって…、なにすればいいのさ?」

翔がそう笑うと、美優は顔を真っ赤にして俯いた。

「…クンニ。」

美優の口から出た思わぬ一言に、翔は思わず笑ってしまう。

「いつもと同じじゃん。」
「だって…
 …好きなんだもん。
 気持ち良いし…」

美優の股間に顔を近付け、秘部を覗き込む。
そこにそっと触れてみる。

「あれ?まだ何もしてないのに、こんなに…」

意地悪にそう笑って、ベットリと指に付いた愛液を舐め取る。

「何もしてない…ってあんた!
 あんたのワガママに付き合ってやったんでしょうが。」

恥ずかしさを誤魔化そうと美優はそう言ったが、

「え…、あれって美優も気持ちいいの?」

翔にそう切り返され、

「え、あ、えっと…
 それはそうよ!
 乳首とか擦れてたし。」

ちょっとシドロモドロ。
パイズリ自体はそれほど快感じゃない。
だけど…
“翔の逝くときの顔を見てたから、興奮しまくり!!”
だなんて、口が裂けても言えるはずがない。

「じゃ、もっと気持ちよくさせてあげるね。」

翔はクンニの前に、まずは美優の体を隅から隅まで愛撫する…。

「あぅ… んぁ…」

翔の舌が美優の敏感な部分を苛めると、甘い甘い声が漏れてくる。
一番肝心な部分には決して手を出さず、焦らすように周りを舐め回した

「はぁん… しょお…」

美優の顔が火照ってきて、はぁはぁ悶えながら
蕩けるような瞳で翔を見つめてくる。

「ぁあん!」

舌でクリトリスを転がすと、美優の体は驚くほど素直に反応してしまった。

「あぁ…んあ…」

切なげな喘ぎとともに、彼女の秘部からとめどなく溢れてくる熱い想い。
美優の穴から溢れ出るその温かい液を、ズズズッといやらしい音をたてて吸った。
その蕩ける蜜の味を堪能すると、翔のペニスはますます硬くなって
“早く美優の中に捩じ込まれたい”とせがんでいた。

「んぁ…ねえ…翔…」

翔を誘うその甘い声…
翔の髪を掴むその細い指…

「ね、そろそろ…」

翔を見つめる蕩けるようなその瞳…
翔を狂わせるその蜜の味…

「入れてよぉ…
 んぁ…ねえ…」

そうねだってくる可愛い美優の全てが、
もう…堪らない。

「うん、入れるね。」

そう言って愛液が溢れる穴の中にゆっくりと人差し指を挿入した。
すんなりと入ってゆく…。

「もう…!んぁ…それじゃない!」

自分の中で蠢く翔の指に、どうやら美優サマはご不満のようだ。
でも翔はそんなことにはお構いなしで、
穴の中で指を動かし、舌はクリトリスを苛め続ける。

「あっ…あん…ぁあん…」

中で暴れる翔の指が、憎い。
喘ぐことしかできない美優。

「ね…! んぁあ…!!
 指じゃなくてさぁ!ぁあ!」
「ん?何を入れて欲しいの?
 ちゃんと言ってよ。」

翔が意地悪に笑いながらそう言うと、
美優は上体を起こし顔を真っ赤にして怒る。

「翔のバカぁ!!
 あんただって早く入れたいんでしょ!!
 焦らさないでよ…もう!!」

少し涙目になって喚く美優が、可愛かった。

「何を、どこに、入れて欲しいの?」

数瞬翔のことを睨みつけて、
それから意を決してギュッと拳を握り締めて、
思いっきり目を閉じた。

「翔のおちんちんを!!
 あたしのおまんこに!! 入れてください!!」

あまりに美優に似つかないそのセリフに
翔は思わず吹き出してしまう。
ここまで美優に言わせたのは、きっと初めてだ。
翔はちょっとした感動を覚える。
そして、このうえない興奮。征服感。
でも翔はさっき美優のパイズリで射精したばかりだ。
もちろんまだまだイケルが、そう何回も持ちはしない。
できるだけゆっくりじっくり、存分に楽しみたいのだ。
それに怒ってる美優の顔が凄く可愛い。
翔はそれが大好きだ。
だからいつも、ついつい意地悪してしまう。

美優は先程はクンニをおねだりしていた。
それが、我慢できなくなって今度は翔自身を求めている。
翔がニヤリと笑みを浮かべる。

「そんなハシタナイ言葉を言うなんて、
 美優、エッチだなぁ。
 あれ?でもご希望はクンニじゃなかった?」

美優の肩がワナワナと震える。

「もういい!!」

ついに、キレた。
美優自身も、普段おとなしい翔に苛められることに
異常な興奮を覚えていた。
そう、彼女自身もかなり楽しんでいたのだ。
でも、さすがに我慢の限界だった。
いろんな意味で。

「み、美優…」

翔が怯える。
エッチのときだけはなぜか翔が優位に立てるが
普段は尻に敷かれている。
美優が本気で怒ると、…それはそれは恐ろしい。

「翔!もう、いい加減にして!」

「あんたねえ!エッチのときは毎回毎回
 あんたの言いなりになる、なんて思ったら、大間違いなんだから!!」

顔を真っ赤にして翔を怒鳴りつける。
そして翔を押し倒すと上乗りになった。

「そっちが来ないなら、
 こっちから行くわよっ!」
「え… え!?」

急な展開に慌てふためく翔。
美優は翔のペニスに自分の秘部を押し付けた。
そして、中に入れようとする。
…が、なかなか思い通りに入らない。

「うう…早く入れたいのにぃ!」、

というひとり言が、翔の耳にも聞こえた。
美優はやけになって翔のペニスを思いっきり掴むと
自分の秘部をそこにあてがった。
そして、ゆっくりと腰を落としてゆく。

「ん… あ…いい感じよね?」
「うん、ちゃんと入ってる…」

と、ついさっきまで怒っていたのも忘れてなぜか微笑み合うふたり。
ゆっくりと奥まで挿入し、そして、これからついに

”翔のペニスを使った美優のオナニー”が始まる…。

翔の上に乗っかって、満足げな笑みを浮かべる美優。
いつもと逆の状況に、ヘヘーンといった感じだ。

「…動かないの?」
「言われなくたって動くわよ!!」

深く挿さったモノを、ゆっくりと引き抜く。
そして今度は逆に奥まで挿し込む。
美優は翔に見られているのも忘れ、だらしのない顔で小さく喘いだ。
美優の動きがだんだん激しくなってくると、小さかった喘ぎが、徐々に大きくなってゆく。

「ぁ…あ…」

クチャクチャといやらしい音が響いていた。
美優の胸がブルンブルン揺れている。

「あぁ…気持ちいい…」

初めての騎乗位に、美優は興奮していた。
それは、翔も同じである。

「うん… 僕も、気持ちいいよ…」

でも美優は、翔の体の上で激しく動きながら
眉間にしわを寄せて、

「あんたはどうだっていいのよ!
 あたしが気持ちよくなれればいいの!」

とムチャクチャなことを言う。
どうやらさっきの仕返しのつもりらしい。

「そんなぁ…」

と、翔は笑った。

「ぼーっとしてないで、
 あんたも腰動かしてよ!」
「あ、はい…」

タジタジの翔だが、美優に犯されるのも悪い気がしない。
というか、ヤバいくらい良い。

「まったく!いつもいつも…んぁ…あたしに…
 イジワルばっかぁん…言って! あぁ…」

途絶え途絶えに愚痴を零す美優。
ブルンブルン揺れる胸に見とれている翔。

「もう、翔なんかぁ…んぁあ…!
 大ッキライなんだからぁあ!」

天を仰いで悶える美優は、
身体が仰け反って快感を堪えるのに必死だ。

「あぁイクぅ!!ぁああ…!
 しょおぉ!!大好きぃいああああ!!!!」
「え…ちょっ…、締まり過ぎっ!!で、出るっ!!」

「はぁ…はぁ…はぁ…」

散々ムチャクチャな事を喚いて
思いっきり果てた自分勝手なお姫様は、
翔の体に馬乗りになったまま
力尽きてぐったりとしていた。

「あんた…はぁはぁ…、中出ししたわね!?」

息絶え絶えに翔を睨みつける美優。

「み、美優が抜かなかったんじゃないか!」
「あんたがいつ逝くかなんて、知らないわよ!」

そう言って美優は翔のペニスを抜いた。
美優の秘部からはいろんな液が滴り落ちる。

「まったく!子供ができたらどうすんのよ!!」
「…産めばいいじゃん。」
「え…」

翔の呟いた一言に、美優はハッとした。

「僕たち、結婚したんだよ?」
「そ、それはそうだけど…。
 でも、あたしはまだ…」
「あたしはまだ、
 翔とふたりっきりでいたいのよ!」
「美優…」
「…ダメ?」

潤んだ瞳で見つめてくる美優を、翔はそっと抱き寄せた。

「…僕は、美優がいてくれたら
 それで幸せだよ?」
「…嬉しい。」

美優はポッと顔を赤らめた。
さっきまでの勢いはどこへやら…
急にしおらしくなってしまった。

「まだ23歳だしね。
 子供はまだ先でいいよね。」

翔が優しく髪を撫でると、美優は恥ずかしさを紛らわすためか翔の胸を叩いた。

「っていうか、あんたの安い給料じゃ
 子供養っていけないわよ。」
「うぐっ…
 …努力します。」
「へへっ…。期待してるわよ、あ・な・た♪」

美優はそう笑って、幸せを噛み締めた。

「ふぅ…、何だか疲れたわね…。」

初めての騎乗位に、少し盛り上がりすぎてしまったようだ。

「ちょっと寝よっか?」
「一緒に…寝てくれる?」

少し恥ずかしそうに囁いた美優を、

「何を今さら。」

と笑った。

ふたりは裸のまま横になった。
美優は翔の胸に抱かれ、とくんっとくんっと刻まれるリズムに耳を傾けていた。

「前は、こうしてるとドキドキしてなかなか眠れなかったんだけどね…」
「今は…何だか安心する…。」

照れくさそうに笑った。

「…美優。」
「なに?」

翔は美優の手を握り、彼女の目をじっと見つめた。

「絶対、幸せにするよ。」
「…カッコつけちゃって。」

視線を逸らした美優は、既にこれ以上ない幸せを感じていたのだった。
が、下半身に何か硬いものが…

「………二回も逝ったのに、なんでまた元気になってるのよ!」
「ご、ごめん…」

――――翔、ちょっと情けない。

「もう知らない!オヤスミ!!」

濱を照らす満月…
濱に寄せる小波…

淡い月明かりに照らされた美優の素肌は、
きめ細やかで美しい…。

全裸の美優は、打ち寄せる波の音に心休ませながら、
窓から見える景色に想いを馳せていた…。

「あれ、美優…?」
「変な時間に寝ちゃったから、目が冴えちゃって…」

翔の声を聞いて、振り向いた美優。
胸も陰毛も隠さないから、翔はとっさに目を逸らした。
別にそんな必要はないのだが。
そんな翔の様子を見て、美優はニヤける。
ある意味美優らしい表情だ。

「あっそうだ!ちょっと待ってて!」

ポンッと手を叩いて、鞄から何か取り出してバスルームへと向かっていった。

「覗いちゃダメよっ!」

昔から良く言われたセリフだが、翔の前に堂々と裸を晒す今となっては可笑しなセリフである。

もっとも、美優は
”見せるのは好きだが、見られるのは嫌い”らしい。
エッチのときも、あんまりまじまじと見られると、しおらしくなってしまう。

「じゃーん♪」

という古臭い効果音とともに現れた美優は、とんでもない格好をしていた。

「は…!?」

唖然とする翔を尻目に、

「どう?似合う?」

と身を寄せてくる美優が憎らしい。
美優は水着を着ていた。
それも、ただの水着ではない。
かなり過激なデザインなのだ。
Vフロント・Yバック。
サスペンダー水着とでも言うのだろうか。

「美優、その水着エロ過ぎるよー」
「やっぱぁ?」

照れ笑いして頭を掻く。

「美優…」

そんなに見つめられると…
ドキドキしてしまう…。

「…毛、はみ出てるよ。」

はみ出してるというよりは、丸見えである。
かなり秘部に食い込んでいてスジが見て取れ、
もはや何も隠していないのと同じだ。

「そ、そういう水着なの!」

どういう水着だよ。
ちなみに、乳頭も隠れてはいるものの、
乳輪は思いっきり見えている。
美優の乳輪が特別大きいのではない。
“そういう水着”なのだ。

「そんなのどこで買ったの?」
「ヘヘヘッ…
 ヒ・ミ・ツ♪」

―――ネット通販です。

「ね、そのまま海行ってみよっか?」
「ええ!?」

翔のとんでもない提案に驚く美優だった。
この水着は、翔を興奮させるために買ったもの。
端的に言ってしまえば、
エッチのときのコスプレみたいなものだ。
こんなのを来て外になんて行けるワケがない!

「もう夜中の3時だし…
 きっと誰もいないって。」
「で、でも…」

強引に進める翔に、恐怖する美優。

「とりあえず何か羽織っておいて、
 誰もいなかったら脱げば大丈夫だよ。」
「ね、お願い!」

結局翔の熱意に押し切られ、
夜の海へと泳ぎに行くことになってしまった。

「はい、これ。」
「う、うん…」

翔に渡された上着を羽織る。
不安は募る一方だが、ふたりはドキドキしながら部屋を出た。

「わぁー、貸し切りね♪」
「ほら、やっぱ誰もいないじゃん♪」

いつの間にか海パン姿になっている翔。

「ほら、美優も脱いでさ。泳ごうよ。」
「う、うん。」

少しオドオドしている美優。

「ふぅ…。脱ぐわよ?」
「どうぞ♪」

翔は嬉々とした様子で見つめている。
ばさっと音をたてて、羽織っていた上着が浜辺に堕ちた。

「どう…?」

ほとんど裸同然の格好で浜辺に佇み、長い髪を潮風に靡かせる絶世の美女…。
月明かりに照らされて…
まるで――――

「…人魚みたい。」
「は?」

目を丸くして翔を見つめてくる美優に、翔はちょっと恥ずかしくなって笑って誤魔化した。

「こんなエッチな人魚なんていないか。
 毛、はみ出してるし。」
「もう!泳ぐわよっ!」

暫く泳いだり、水をかけてふざけ合ったり、
夜の海を満喫していると、ふと翔が動きを止めて立ち尽くした。

「ん…?どうしたの、翔…」
「美優、水着思いっきりズレてる。」

翔が指差した先には、完全に露になった乳首。

「キャッ!!翔のバカぁ!!」

美優はとっさに手で胸を隠したが、よく考えると別に隠す必要もない気がして手を下ろした。

「へへ…、な〜に勃起してんのよ、このヘンタイ!」

と笑って翔の海パンのテントを突いた。

「…美優が可愛いからだよ。」

翔にそう囁かれて顔を真っ赤にした美優は

「あー!!もう脱いじゃえ!!」

と躍起になって水着を脱ぎ捨て、裸になった。
誰が来るかもわからない、この夜の海で。

「ほら! ぼーっとしてないで、あんたも脱ぐのよ!」
「え、僕も…?」

ポカンとする翔。

「当たり前じゃない。あたしにだけ脱がせる気?」

美優は翔の海パンを無理やり下ろそうとする。

「自分で脱いだんじゃん。」

と翔は小言を言った。

「何か言った?」
「何にも。」

翔は結局美優に脱がされてしまい
彼女と同じ一糸纏わぬ姿になると、
そこから現れたモノにふたりとも顔を赤らめる。

「まったく。こんなに勃起しちゃって…。」

ふたりは笑い合い、また海へと入っていった。
腰まで水に浸かったあたりで足を止め、
満月と星空をバックに熱いキスと抱擁に溺れる。
そしてそのまま倒れこみ、
バッシャーンと音をたてて一度海へと沈んで、
ゆっくりと水の面に浮かんだ。

「気持ちいい…」

浜辺に座って寄り添うふたり。
翔の肩に頬を寄せる美優。
月明かりが優しくふたりの裸を映す。
波が打ち寄せてはまた引いてゆく…。
全ての生き物は原始の海から生まれた…
人間も、そう。
人はこうして海を眺め、海に恋し、海に包まれる…
人は皆、母なる海に…全ての始まりに…
戻りたいのかもしれない…
だから裸が、気持ち良いのかなぁ…

裸で生まれ…
裸で愛し合い…
裸で生きてゆく…

「…西濱を思い出すね。」
「あたしも思った…。でも…」
「そうだね…。ごめん。
 あんま良い思い出じゃ…なかったね…。」

県立S高校―――
数年前翔たちが卒業した高校であり、
全国でも有数の進学校である。
夏休みが終わり、今日から2学期が始まる。
ここは2年B組。

「おはよっ 由梨!」

元気いっぱいな感じのこの少女。
名前は栗原奈津希(クリハラナツキ)。

「あ、奈津希ちゃん。
 お早う。…久しぶりだね。」

奈津希の親友の長瀬由梨(ナガセユリ)は、
勉強を中断しシャーペンを置いて、笑顔で返事をした。
由梨は奈津希とは対照的で、
目の下にクマができていてあまり元気そうとは言えない。

「ねえ、由梨。
 数学の宿題終わってる?」
「まだ終わってないの…。
 最後の三日間くらいほとんど徹夜で頑張ったんだけど…」

どうやら由梨がやっていたのは、その数学の宿題のようだ。
夏休みとはいえ、進学校であるS高は
どの教科も容赦無く鬼のような量の宿題を課してくる。
特に数学は酷い。

「やっぱそうだよね!?
 良かったぁー、あたしだけじゃなくて!」

と安堵の表情を浮かべる奈津希。
どうやら彼女もまだ終わっていないらしい。

「あとちょっとなんだけど、
 難しくて解けなくて…。
 でも、何とかして授業までの間に終わらせなきゃ…」

と由梨は言う。

「そんな今さら悪あがきしたって無駄だよ。
 で、あとどれくらい残ってるの?」

そう言って奈津希がノートを覗き込むと、
そこには、何度も消しゴムで消したような
努力の跡がギッシリと残っていた。

「ん… あと5問くらいだけど…
 なかなか…」

ちなみに全部で500問くらいある。

「え…どうしたの?奈津希ちゃん。」

悪気の無い由梨に、何も言えない奈津希。

「何でもない…」

急に暗い顔になって、由梨の席を離れていった。

「あ、秀!!あんた数学の宿題終わってる?」

奈津希が次に話しかけたのは、矢吹秀(ヤブキシュウ)。
クラス一の秀才で、女子からの人気も高い。

「ああ。一応一通りは。」

とクールに言ってみせる秀に、奈津希は媚びろうとする。

「ねえねえ、ちょっと見せ…」
「ねえ矢吹くん!!」
「如月… なに?」

秀は少し驚いた。
ふたりの会話に突然割って入って来たのは、如月小夜子(キサラギサヨコ)。

「この問題わかる?ちょっと教えてくれない?」

小夜子にムッとした表情を浮かべる奈津希だったが、
秀は差し出されたノートを見て、小夜子と話し始めた。

「ああ、それね。俺も解けなかったから、
 塾の先生に解き方聞いたんだ。そしたらさ…」

なにやら数学の宿題の事で話し始めた秀と小夜子。
残された奈津希は完全に蚊帳の外だ。

「何よもう!!」

と、奈津希が頬を膨らませると、
ちょうどそこへ大槻蓮(オオツキレン)がやってきた。
本人たちは否定しているが、蓮と奈津希は徒ならぬ仲らしい。

「奈津希、おはよー。」

蓮も由梨と同じで目の下にクマができている。

「あ、蓮!あんた数学の宿題終わってる?」

さっそく単刀直入に聞く奈津希。

「え…あ…まあ、何問か解けないのがあったけど。それ以外は。」

嫌な予感がして変な汗をかいた蓮だった。

「ナイス!!写させてっ!!」
「他人の宿題写すなんて、サイッテーね。」

嫌みったらしく奈津希にそう言って去ってゆく
小夜子の背中に、奈津希はイーッとした。

「あ、あの! 矢吹くん!」

由梨が普段出さないような大声で秀を呼ぶから、
秀は目を点にして驚いた。

「なに?」

秀の笑顔に由梨はクラッと逝きそうだった。

「あ、えっとその…、数学の宿題で…わからないところがあって…」

かなり挙動不審で、オドオドしている由梨。

「もしよかったら…その…、教えてもらえたらって…思って…」
「え…」
「ご、ごめんなさい!やっぱダメだよね…」

酷く自虐的で、涙目になる由梨。
秀は由梨を気遣うように優しく答えた。

「ううん、別にいいよ。どの問題?」
「え…あっ…この問題なんだけど…」

由梨の顔にはぱーっと笑顔が咲き、
少し頬を火照らせてノートを差し出し、
解けなかった問題を指差した。

「あ、ありがとうございましたっ!」

深々と頭を下げる由梨に、秀は少し困った表情をした。

「そんな…別にいいって。」

そんな秀の表情を見て、由梨はまた顔を赤らめる。

「…長瀬って頭良いよな。」
「え…」

突然の一言にびっくりする由梨。

「俺、この問題、塾の先生に聞くまで全然わからなかったけど…
 長瀬はあと少しのところまで自分で解けてるんだから。」

まさかそんな事を言われるなんて思ってもいなかった由梨は、
嬉しいやら恥ずかしいやらで、シドロモドロになってしまう。

「あ、頭良いなんて…そんな…
 や、矢吹くんこそ、
 一学期の期末試験、学年トップだって…」

テストの上位者は掲示板に張り出される。
秀は一学期の期末テストで
五教科総合で学年トップの成績を収めていた。

「ははっ あんなの偶然だって。
 たぶん次は長瀬が一位だよ。」
「そ、そんなわけないですっ!」

お世辞を言われて悪い気はしないが、
秀に面と向かってそんな事を言われると
困ってしまう由梨だった。

「ふぅ…」

自分の席に着いて一息ついた由梨に、
奈津希が蓮の宿題を写しながら話しかけてくる。

「由梨、なかなかやるじゃない。」
「え、なにが?」

由梨は奈津希の方を向いたが、
奈津希はひたすらシャーペンを走らせている。
猛烈な勢いで宿題を写す、カリカリという音が響いていた。

「秀のこと、好きなんでしょ?」

ペンを走らす手は止めずに、横目で由梨を見る。

「ち、違うよ!」

そう否定したものの、
由梨の顔はボンッと音が出そうなほど一気に真っ赤になった。

「顔に書いてあるわよ。」

と奈津希は由梨をからかった。

「へぇ、長瀬は矢吹が好きなのかぁ。
 結構お似合いかもしれないね。」

と誰かの声。

「ね。あたしもそう思うのよ。
 って… あ!!」

ここにきて初めて奈津希のペンが止まった。

「緒方先生!!」

さすが親友。
奈津希と由梨の声は見事にシンクロしていたのだった。

そこに立っていたのは、緒方翔――その人だった。

「栗原…、他人の宿題写すのはダメだよ。」

翔は眉をひそめる。

「う…」

奈津希は”しまった…”といった表情を浮かべていた。

「せ、先生!別にわたし…矢吹くんが好きとか…
 そんなんじゃないですっ」

顔を真っ赤にして慌てて否定する由梨は、実に女の子らしい。

「大丈夫、別に誰にも言わないって。
 応援してるよ。」

と翔は生徒に笑顔を送った。

キーンコーンカーンコーン…

授業開始のチャイムが鳴る。

「時間だね。みんなー、席に着いて!」

そういうわけで、
翔はこの2年B組の担任で、数学の教師である。
翔は高校を卒業後大学に進学し、
教員免許を取って自分の出身校のこのS高に赴任してきた。
“若い”という事もあるが、あまり厳しくないという事もあって
結構生徒には人気がある。
ちなみに美優は専業主婦なのだが、
翔の持ち帰ってきた学校の仕事を手伝っている。
書類をまとめたり、授業用のプリントを作ったり。
テスト問題を作ったり、丸付けをしたり。
日中暇を持て余しているのか、
それとも夜の翔との時間を少しでも長くしたいのか…。

「まったくなんであたしが…」

と文句を言いながらも、自主的に手伝っているのだ。
ふたりは同じ大学の教育学部に進学したので、
てっきり美優も教職に就くのだと思われていたのだが、

「なんであたしが赤の他人に勉強教えなきゃなんないのよ!」

と言って、教員免許を封印した。
だが、実際美優の方が頭が良い。
美優はその持ち前の、(翔に対してだけ)世話好きな性格を
遺憾なく発揮して、”教師緒方翔”をサポートし、
実のところ、翔と美優の二人三脚で教師を務めているようなものだった。

「それじゃあ、出席を取ります。」

教壇に立った翔は、さっそく出席を取り出した。
まだまだ駆け出しの新人教師だが、
ようやく少しは板に付いてきた感じだ。
生徒たちの名前が次々と呼ばれ、
みんなしっかりと返事を返している。
教師を無視したりする生徒はいない。
さすがその辺は進学校というだけある。

「大槻蓮(オオツキレン)」
「あ、はい。」

彼は典型的なお人好しのようだ。
噂によると、奈津希と付き合っているらしいが、
完全に尻に敷かれているであろうことは明白だ。
顔は決して悪くないが、どことなく抜けている感じがする。

「如月小夜子(キサラギサヨコ)」
「…はい。」

粉雪のように白くきめ細やかな肌が美しいこの少女。
漆黒の髪は、どことなく暗い感じがする彼女の性格と相通ずる。
学校の成績はトップクラスだが、
他のクラスメイトとあまり仲良くないようだし、
担任の翔としてもなかなか取っ付き辛い生徒である。

「栗原奈津希(クリハラナツキ)」
「はーい♪」

長い髪が印象的なこの美少女。
ものすごく誰かに似ている気がするが、
まあどこにでも居そうなタイプではある。
教師の翔にもタメ口で、それに関しては何度注意しても直らないので
翔は半ば諦めているのだった。
家は貧乏らしいが、持ち前の明るさでそれを感じさせない。

「長瀬由梨(ナガセユリ)」
「はい。」

大人しい性格の彼女は、外見にもそれが表れている感じがする。
真面目で努力家で勉強も良くできるが、運動は苦手である。
読書が好きらしく、よく本を読んでいる姿を目にする。
詳しいことは聞いていないが、家庭の事情で両親と離れ
現在は祖母とともに暮らしているとのことだ。

「矢吹秀(ヤブキシュウ)」
「はい。」

顔は男前で、頭も良い、運動神経も抜群…
と、絵に描いたような好青年。
少し前父親が再婚し、義理の母や妹と暮らすようになった。
妹がなかなか懐いてくれないと言っていたが、今はどうだろうか。

「はい。全員いるね。」

出席を取り終わり、夏休み明けに全員の顔が無事揃ったことに
ホッと安心する翔だった。

「じゃ、始業式は9時半からだから。
 みんな体育館へ行ってください。」
「あ、そうそう。
 午後からは時間割通りの授業だから。
 数学の授業は、宿題集めるからね。」

翔はこのクラスの担任でもあり、数学の担当でもある。
ちなみに夏休みの宿題は、翔が意地悪で出したのではなく
その学年の数学教師全員で決めたものである。
あの鬼のような宿題には、翔も学生時代苦しめられたクチだ。

始業式では校長の長い長い話を延々と聞かされ、教師の翔でさえウンザリした。
自分のクラスの生徒が騒ぎを起こしたりしないか心配だった。
なにせ翔のクラスには奈津希と小夜子がいる。
ふたりは顔を会わせば喧嘩が始まるような、犬猿の仲なのだ。

「じゃあ授業に入るよ。」

翔は教壇に立って、生徒たちに声をかけた。
数学の授業だ。

「まずは宿題を集めようかな。
 後ろの人、集めてきて。」
「あ、先生!!」

急に奈津希が大声をあげた。

「ん? どうしたの、栗原…」
「新婚旅行どうだった?」

テヘッといった感じの可愛い笑顔を浮かべる奈津希。
きっと宿題を集めさせない気だな。

「奥さんとラブラブなんでしょ?」

確かに奥さんとはラブラブだが、
そんな惚気話をここでするわけにはいかない。
なにせその惚気話は18禁だ。
そこで翔は上手いかわし方を思い付いた。

「…栗原こそ
 彼氏とはうまくいってるの?」
「か、彼氏!?
 蓮はそんなんじゃないわよ!!」

奈津希の大声に、クラスメイトたちは爆笑だ。
まんまと引っ掛かった奈津希。
蓮は顔を真っ赤にし、アチャ〜といった表情だった。
やっぱり噂は本当だったらしい。

突然、生徒のひとりが立ち上がった。
―――小夜子だ。

「授業やらないんなら、
 出て行ってもいいですか?
 時間の無駄なんで。」

この嫌みったらしい言い草に奈津希はムッとする。
翔も良い気分はしないが、
そんな事で怒るような性格ではない。

「ごめんごめん。」

と翔が謝ると、小夜子は席に座った。

「ほら、栗原。うちは進学校で、
 みんな真面目に授業を受けたいんだから。
 そういう話は休み時間にね。」

と、今にも小夜子に飛び掛りそうな奈津希を宥めた。

「じゃ、授業を始めます。そうだなぁ…
 とりあえず、1学期の復習からいこうかな。」

2年B組、翔のクラスはいつもこんな感じだ。
今学期もこれまでのように、
何事もなく楽しく過ぎてゆくんだと…
翔も、生徒たちも、信じていた。

休み時間、由梨は本を読んでいることが多い。
場合によっては勉強をやらなければならないときもあるし、
奈津希たちと話をして過ごすことも多いが、
そうでなければ大抵読書をしている。

「長瀬、本読むの好きだよなぁ。
 何の本読んでるんだ?」
「えっ あ…矢吹くん…」

急に意中の秀に声をかけられ、びっくりした由梨。

「小説…だけど…」

と言葉を濁した。

「へぇ…、なんていう小説?」

いつも由梨に話しかけてきたことなどほとんどない秀が
話しかけてきてくれるのはすごく嬉しいことではあったが、
なんでまたよりによってこんな時に…

「え…あ…いや…その…」

とシドロモドロになってしまった。
由梨が読んでいるのは
アルマゲストというマイナーなファンタジー小説。
さほど面白くもない小説だが、
問題は、これが官能小説だという事だ。
しかも今読んでいたのはまさに濡れ場で、
きっと無意識のうちにニタニタしてしまっていたに違いない…。
それを秀に見られてしまったのだ。

「おーい、矢吹。」

そのとき突然、秀を呼ぶ声がした。
翔が秀に話しかけてきたのだ。

「あ、緒方先生…」
「あ、ごめん…。話し中だった?」

秀は由梨と話していたのだということに気付いて、
翔は申し訳無さそうな顔をする。
翔は由梨が秀に気があるという事を知っていたから…。
だが、由梨にとっては助け船であった。
由梨はホッと安堵の表情を浮かべた。

「先生、どうしました?」
「あ、ええと…。その後、妹さんとはどう?」

秀の両親は離婚し、秀は父親に引き取られたのだが、
少し前に再婚して、母親やその連れ子と4人で暮らし始めたのだ。
母親の連れ子の亜樹(アキ)は、秀にとっては義理の妹に当たる。
一学期の3者面談では義理の母親が来た。
母親とは上手くやっているようだが、
妹の亜樹は小学生の女の子とは思えないような男勝りな性格で、
あまり秀に懐いてくれないのだと、母親が嘆いていたのだ。

「仲良くやってる?」
「はい…まぁ仲良く…というか…」

言葉を濁す秀。

「子連れ同士の再婚じゃあ、なかなか大変だから。
 何かあったら、相談に乗るよ。」

そっと肩を触って微笑んだ。
人を安心させる笑顔だ。

「ありがとうございます。
 でも、大丈夫です。」
「そう? ならいいけど。」

秀は本当に大丈夫のようだった。
別に強がっているようには見えないし、
むしろ順調に事が進んでいるようで嬉しそうな顔をしていた。

だが、実はこのときにはすでに狂い始めていたのだ。
――――運命の歯車が。

翔も由梨も、気付くことができなかった。
歯車が狂い始めているということも、
自分たちがその歯車の一部であるということも。

もう日も沈み、大抵の部活動も終わって、
学校の校舎にはほとんど誰もいなくなった頃…
2年B組の教室には、まだ二人の生徒が残って課外授業をしていた。

「んぁ…んん…」

激しい口付け…
絡み合う舌…
狂おしい感情を抑え切れえずに
彼の髪を掻き毟り、
淫らな口付けが延々と続く。

「…んはぁ!」

長い長いキスを終えると、
少女は口元に垂れる唾液を袖で拭いた。

「はぁ…はぁ…、蓮!! いきなり何すんのよ!」

彼女も自ら望んでしていたように見えたが、その気は無いらしい。
ただ、応えただけなのか…?

「何って…、いつもの…だけど?」

彼女の怒った顔に、蓮は苦笑した。
蓮は嫌がる少女の胸に無理やり手を伸ばし、
制服を肌蹴させてブラをずらした。

「学校でこんなコトしていいと思ってるわけ!?」

そう言って暴れる彼女を押さえつけ、
露になった胸を見てニヤリとした。

「でも、奈津希…、もう乳首勃ってるよ?」

蓮は奈津希の乳首にそっと触れてみせた。

「どこ触ってんのよ!エッチ!!」

蓮が奈津希の乳首を優しくしゃぶる。
コロコロと舌で転がすと、奈津希は甘い声で許しを請う。

「やめてぇ…。ねぇやめてよぉ…」

奈津希の頬は蓮の愛撫で火照らされて、
普段見せない表情を見せる。
「やめて」と言う奈津希の願いを聞き入れる事もなく、
蓮の指は徐々に下半身へと伸びてゆく。
誰か来たらまずいので、
制服は脱がさずショーツだけずらした。

「ヒドイ…!やめてよ!!」

そう言って真っ赤になった顔を手で覆った。
もしかしたら、彼女の瞳は潤んでいるのかもしれない。
もしかしたら…。

「もうイヤ!蓮のバカぁ! 最低!!」
「でも…、…すごい濡れてるよ。」

奈津希のショーツはグッショリと濡れていた。

「う、嘘よ!!」

「そんなわけない」と否定する奈津希に、

蓮は自分の指を見せ付ける。

「ううん、ほら…」

蓮の指には、奈津希のショーツについていた愛液が…。

「もっとして欲しいんでしょ?」

妖しく微笑む蓮に、奈津希は顔を真っ赤にした。

「バ、バカ!!そんなわけないじゃない!!」
「そう?」

蓮はなおも妖しく微笑みかける。

「でも…、こっちの奈津希は我慢できないみたいだね。」

そう言いながら彼女のスカートをたくし上げ、
“もうひとりの奈津希”を露にした。
恥毛がツンッと逆立っていて、実に可愛らしい。

「イヤ…!!み、見ないで!!」

そう言いながらも、奈津希はもう抵抗することはなかった。

奈津希の秘部を貪る蓮。
舌で優しくそれをなぞると、奈津希は思わず身震いする。

「ハハッ…、気持ちいいの?」

蓮がそう笑って見せると、奈津希は自分の股間に埋まる蓮の頭をポカポカ叩いた。

「気持ちよくなんてない!やめてよ!!」

しかし、彼は決してやめはしない。
嫌がる奈津希を尻目に、蓮は彼女の敏感な部分を舐め続ける。

「んぁあ…あぁ…」

彼の舌に奈津希はついに喘がされてしまう。
奈津希は快感に悶え、自分の股間を貪る蓮の髪をクシャクシャにした。
よだれを垂らして喘ぐ奈津希の淫らな顔は、もう、その快感を自ら望んでいるようにも見える。

「あんっ…ぁあ…、もっとぉ…」
「え?」

蓮は奈津希の股間に埋めていた顔を上げ、
奈津希の顔を見上げた。
口の周りが奈津希の汁塗れだ。

「…あ、間違えた。」

奈津希はテヘッと舌を出した。
その仕草に、思わずドキッとした蓮。

「奈津希…」

カチャカチャとベルトを外す音がする。
蓮はおもむろにズボンとトランクスを下ろし、
ビンビンに勃起した肉棒を奈津希の視線のもとに晒した。

「きゃっ!何よそれ!?」

わざとらしく怯えてみせる。
顔を赤らめて手で目を覆ったが、
指の隙間からその肉棒を凝視していた。

「こんなにビンビンだなんて…」

恐る恐るそれに手を伸ばす。
奈津希の指がそれに触れると、
敏感なそれはビクンッと反応した。

「まさかあんた、あたしにこれをしゃぶらせる気!?」
「はぁ?」

奈津希、悪乗りし過ぎだよ…
ちょっとヤケになってるし。
蓮はそう呆れつつも、お言葉に甘える。

「じゃあお願いしようかな。」
「い、いやよ!あんた、バカじゃないの!?」

大声で拒絶しながら、言葉とは裏腹に、蓮のペニスを口に含んでゆく。
奈津希は慣れた手つきで睾丸を揉み揉みしながら、すぼめた口を上下する。

「ああ…奈津希…気持ちいいよぉ…」

口にペニスを含んだまま、上目遣いで蓮の様子を窺う。
その顔が、蓮をさらに興奮させるのだと知りながら…。
歯が当たらないように気を付けながら、
奈津希は彼のために出来る限りの奉仕をしてあげた。

「な、奈津希…、そろそろ限界。」

蓮はそう言って射精に至る前にフェラチオをやめさせ、
奈津希の口から肉棒を引き抜いた。

奈津希の唾液や先走り液がべっとり付いた蓮のペニスは、
先程以上に硬くて大きくて、
はち切れんばかりにビンビンになっていた。

「まさかあんた、これをあたしのおまんこに挿れる気じゃないわよね!」
「お、おまんこ…?」

女の子がそういうコト軽々しく口にするなよ…
蓮は苦笑する。

「じゃ、挿れるよ。」

蓮はコンドームを装着し、準備万端。
そっと奈津希の肩に触れると、
彼女はビクンッと大げさに驚いた。

「いや…!!あたしの処女が…
 こんなふうに奪われるなんて…」

そう項垂れてみせる奈津希。
頭を抱えて、絶望に打ちひしがれている…らしい。

「処女…?」

蓮が奈津希の顔を覗き込むと、
奈津希は妖しげな笑みを浮かべた。

「…そういう設定。」

「はぁ…」と大きくため息をついて、蓮は頭を掻いた。

「ねえ、奈津希…
 やっぱ止めてよ、それ。」
「何でよー!!」

奈津希はワッと顔を上げて頬を膨らませる。

「“放課後の教室で犯される美少女”
 このシチュエーション、燃えるでしょ?」

自分で美少女と言うところが奈津希らしい。

「だけど、誰かに見られたら
 完全に僕が悪者になっちゃうじゃん。
 なんだか怖くて…」

「ったく臆病ねぇ。
 そのときはちゃんとあたしが事情を説明するわよ!
 あんた、あたしのこと信じてないの!?」

そう言って詰め寄る奈津希の
威圧的な顔と胸を交互に見つめ、
蓮は冷や汗を流した。

「し、信じてるけどさぁ…」
「ま、いいわ。」

奈津希は腰に手を当て、堂々としたポーズ。
肌蹴た制服からわりと大きな胸がポロリしているが、
そんな事はまったく気にしない。
先程までの“放課後の教室で犯される美少女”は、
いったい何処へいってしまったのだろう…。
この女、けっこう女優だ。

「ねえ、挿れてよ。」

スカートをたくし上げ、蓮を挑発する。
ショーツは先程蓮に脱がされて
左足首に絡まったままでいるので、
当然包み隠すものは何もない。

「今日もバックでいい?」

呆れて笑いながら蓮がそう聞くと、
奈津希は

「もち♪激しいの、頼むわよ。」

とウィンクした。

「…この方が奈津希らしいな。」

蓮は奈津希を後ろから抱き締め、
彼女の中に、一気に挿し込んだ。

「ぁあん!!」

奈津希は思わず声をあげて仰け反る。
しかし、その奈津希の喘ぎ声は
ガラガラ…とドアの開く音で掻き消された!!

ふたりはハッとして、
体は繋がったままドアの方に顔を向けた。

翔が呆然と立ち尽くしている。
口をポカーンと開けて、瞬きひとつしない。

「―――ご、ごめん!!」

我に返った翔は、慌てて後ろを向いた。

「…先生のえっちぃ♪」

奈津希の場違いな一言で、
翔はハッとして振り返る。

「こ、ここは学校じゃないか。
 学校でそんな事しちゃダメでしょ!」

と、言い終わるや否や、また彼らに背を向ける。
顔を真っ赤にして。

「…と、とりあえず、服を着なさい。」

ヤバイ…
栗原のおっぱい、もろ見ちゃった…
ちょっとした罪悪感を覚えながら、
勃起しかけた息子に
「治まれー!治まれー!」と念じたのだった。

「そう固いこと言わないでさ。あ、先生も交じる?」

そう遠くない背後から奈津希の声が聞こえる。

「奈津希!」
「じょ、冗談よぉ。」

蓮は普段大人しいから、たまに大声で奈津希を叱ると、
彼女はすぐしゅんとなる。
だが、それもほんの一瞬のことだ。

「先生ごめんなさい…
 でも、他にやる場所がなくて…」

と蓮が反省と言い訳を述べているすぐ側から、

奈津希は

「先生も毎晩奥さんとやりまくりなんでしょ?」

と、翔を茶化した。
だが、それは否定できない。
確かに毎晩やりまくりだから…。
それはともかく、
この女、
―――全然、反省していない!

「とにかく!!……終わったら職員室に来なさい!!」

ふたりの様子をチラッと見つつ、
翔はそう言い放って教室のドアを
ガタンッ!!と大きな音をたてて閉めた。
結局、緒方先生は、優しかった。

「…終わったら?」

ふたりは顔を見合わせた。
そして暫く見つめ合って、

「…ぷっ!!あはははっ…」

堪えきれなくなって、ふたりは笑い合った。

「まったく…、他の先生とか生徒に見つかったら、
 僕が校長に怒られるじゃないか。」

ブツブツ言いながら教室をあとにする。

「ぁああん!蓮っ!! んぁあ!」

翔が扉を閉めて間もなく、奈津希の喘ぎ声が廊下にまで響いてきた。

「はぁ… 若いなぁ。」

教室から聞こえてくる声に、がっくりと肩を落とし項垂れたのだった。

「はぁ… きっとお説教ね。」
「…だね。」

奈津希と蓮は、職員室のドアの前に佇み、
今一歩踏み出せないでいた。
誰もいない廊下の静寂が、ふたりの背中に重く圧し掛かる。

「…停学とかになっちゃうのかしら。」

奈津希にしては珍しく弱気な発言。
いつも強気な奈津希がそんなことを言い出すから、
蓮の不安も増すばかり。

「どうだろ…。緒方先生、優しいから…
 内緒にしててくれると思うけど…。」

―――――沈黙

「あーもう!!」

急に大声をあげた奈津希。

「ここでこうしてても始まらないわ!!開けるわよっ!!」

踏ん切りをつけて、ドアを思いっきり開けた。
その後、ふたりは数十分もの間
翔からきつ〜いお説教を受け続ける。
結局、最終的には

「今日のことは、見なかったことにするけど!
 でも!! もし今度見つけたら…」

と苦言を呈されたのだった。

夜の暗闇の中、
電灯の明かりが三人の姿を照らしていた。
翔はいつもの家路を歩いてゆく。
その後ろをついて行く奈津希と蓮。

「先生、何だかんだ言って優しいのね。」

奈津希は歩きながら翔の顔を覗き込む。

「…っていうか、なんで付いて来るのさ。」
「ま、固いこと言わないで。
 奥さん見てみたいし。」

そう言って翔の背中を叩く。
奈津希は、”反省”というものを知らないのだろうか。
さっきまで落ち込んでいた蓮も、
奈津希につられて元気を取り戻している。

「先生の奥さん、すっごい美人なんですよね。
 高校時代からずっとラブラブだったって。
 教頭先生が言ってましたよ?」

教頭は翔たちが学生として通っていた頃から
ずっとS高にいる古株の教師だ。
昔の恩師で今の上司なわけだから、
当然翔と美優の結婚式にも出席していた。
だが、翔はその教頭があまり得意ではない。

「はぁ…
 教頭、ベラベラ喋り過ぎなんだよ。
 この間だって……、……ん?」

翔は急に言葉を詰まらせ立ち止まった。

「矢吹…」

公園のブランコに揺れる少女の背中を、
秀が優しく押していた。
ふたりは何やらとても楽しそうに、笑い合っている。

「そっか…。矢吹の家、この近くでしたね。」
「秀…、一緒にいるのは妹かしら?」

妹の亜樹がなかなか秀に懐かないと、
秀の母親は言っていたが…

「何だ…仲良くやってるじゃないか。」

翔は声をかけたりはせずに、ただ秀と亜樹の仲睦まじい光景をぼんやりと眺めていた。

公園の前で呆然と立ち尽くしたままの翔を、奈津希は不思議がる。

「…先生?どうしたの?」
「いや… 何でもない。」

そう言って暫くしてから…

「ここはね…、僕と美優の思い出の公園なんだ。」

ポツリポツリとひとり言のように語り出す翔。

「美優に告白したのも…、ファーストキスしたのも…
 プロポーズしたのも…、全部、この公園なんだ…。」

「翔、なんて言うかなぁ…」

不敵な笑みを浮かべながら、
美優は鏡に向かってポーズをとる。
美優は鏡に映った自分に話しかけた。

「美優…」
「ダ〜メ。ごはん、冷めちゃうわよ?」
「でも…、僕、もう我慢できないよ!」
「もう!翔のエッチ!!」
「エッチなのは美優でしょ?
 ほら…もう乳首勃ってる…。」
「ど、どこ触ってるのよ!
 ぁあんっ!!」
「………ハッ!!」

気付けば美優は、自分で自分の乳首を摘まんでいたのだ。

「あたし…、なにやってるんだろ…。」

へなへなと座り込み、恥ずかしそうに頭を掻いた。

「バッカみたい。翔…早く帰ってきてよぉ…。」
「ただいまー。」

翔は美優の待つ我が家のドアを開ける。
翔と美優は、翔の実家の近くのマンションで
二人暮らしをしているのだ。
新婚生活を邪魔するものは、何もない。

「あ、お帰りなさい♪」

翔の帰りを待ちわびていた美優は、
ルンルン気分で玄関へと駆け寄ってきた。

「あ……」
「なっ…」
「え…」

顔を真っ赤にする翔と、ポカーンとした顔の奈津希と蓮。
美優は俯いて、目の下をピクピクさせている。

「ハ、ハダカ…えぷろん…!?」

奈津希が目をパチパチさせて呟くと、
美優は顔を真っ赤にしながらも
彼女にニッコリと微笑みかけた。

「生徒さん?」
「は、はい…。」
「ちょっとそこで待っててもらえる?」

恐いくらいの満面の笑み。
美優は翔の服の袖を掴むと
部屋の奥へと引っ張っていった。
美優の後姿は、まるで全裸のようで…
――――あまりに、美しかった。

バチンッ!!と大きな音が響き渡る。

「バカぁ!!生徒連れて来るなら、
 先に電話くらいしなさいよ!!」

美優は少し涙目になって怒鳴りつける。
翔は頬のモミジを摩りながら、

「ご、ごめん…」

と情けない声を出していた。
そんなふたりのやりとりに聞き耳を立てていた蓮は、
冷や汗をかきながら奈津希に言う。

「…帰ろっか。」
「先生の奥さん…超美人…」

放心状態の奈津希は、ポツリとそう漏らした。
結局、翔たちには何も告げずに
蓮と奈津希は翔の家をあとにした。

「もし…もしさ、僕らのせいで離婚とかになっちゃったら…」
「裸エプロンでダンナ迎えるくらいラブラブなんだから。
 そう簡単に離婚なんてするわけないでしょ!」

不安がる蓮を、奈津希はいつもの調子で笑い飛ばす。

「裸エプロンかぁ…」

蓮は夜空を見上げた。
だが、その瞳に映るのは満天の星空ではない。
裸エプロン姿の奈津希を妄想しているだけである。
そんな蓮の妄想を知ってか知らずか
奈津希は同じ夜空の星を見上げて呟いた。

「…教室で裸エプロンはちょっと無理ね。
 見つかったら言い訳のしようがないもの。」

結局、日曜にデートをして
高級なディナーをご馳走する、ということで許してもらった。
緒方家の財布は美優が握っているので、
翔は月々僅かしかもらえないお小遣いの中から、
高級ディナーの食事代を払わせられる破目になってしまったのだ。
喧嘩をしても、ふたりは仲直りが早い。
美優はわりとサバサバした性格であまり引きずらないし、
翔は大抵の場合すぐ謝る。
それに何より、互いに心底べた惚れしているのだ。
新婚夫婦というのは恐ろしい。
美優はついさっきまで怒り心頭だったのに、
今はふたりでお風呂に入っている。
そんなに広くない浴槽に、
ふたりで体を密着させて浸かっていた。

「ふぅ…」

美優が立ち上がると、
翔の目の前に、濡れて妖艶さを漂わせる恥毛。

「体洗うから、あんたはまだお湯に浸かってて。」

いつものように体を洗い合うのだと思っていたら、
美優はそんな言葉を口にした。
意外に思った翔が

「僕が洗ってあげるよ。」

と言うと

「いいわよ。自分でやるから。」

と敢え無く断られてしまう。
…やっぱりまだ怒ってるのかなぁ。

翔が湯船に浸かってしょぼくれていると、
いつの間にか美優は全身泡塗れになっていた。
白い泡に優しく包まれた裸が、清らかで美しい…。

「翔、背中洗ってあげるから、ここに座って。」
「あ、うん…」

体は洗ったもののお湯で流したりせずに
泡塗れのままでいる美優を不思議に思いつつも、
翔は言われたとおりに美優の前に座る。
石鹸のいい匂いがする…。
背中に柔らかい感触を感じた。
プニプニしていて… ふわふわしていて…
それでいてときどき硬いものが…!?
いったい、何で洗ってるんだ…?

「え、ちょっと、美優…!?」

翔はビックリして思わず振り向いた。
美優は自分の胸を擦り付けて
翔の背中を洗っていたのだ。

「さっき思いついたから、
 ちょっとやってみたかったのよ。
 …どう?」

美優の顔が真っ赤なのは、
湯あたりしてしまったからだろうか。
最近の美優は、ものすごくエロい。
昔からそうだったが、結婚してからは尚更だ。

「ほんと最高だよっ!もっとやってほしいなぁ。」

翔がそう喜んでみせると、美優はますますご機嫌になる。

「オッケー♪はいはい、前向いて!」

背中に伝わる柔らかい感触と硬い感触。
…すごく興奮する。
美優の時折漏れる荒い息が、とってもエッチ。
息が耳にかかると、ゾクゾクしてしまう。
美優からは見えないが、
翔のペニスはビンビンに勃起している。
こんなにエッチな奉仕を受けているんだから当然だ。

翔は目の前にある鏡に映る美優に
冷静を装って話しかける。

「…でも、良かった。美優、機嫌直してくれたんだね。」
「はぁ…はぁ…、まったく!
 超恥ずかしかったんだから。
 はぁ…はぁ…、あの生徒たち、ちゃんと口止めしときなさいよ!」

翔からは見えないと油断していたのか、
鏡に映った美優はものすごく淫らな顔をしていた。

「ハァハァ…、んもういいでしょ?
 意外に疲れるわ、これ。」

美優はぐったりと翔の背中にもたれかかった。
翔に後ろから抱きつく格好だ。
美優は手探りでそれを探してみた。

「あ、やっぱり!…勃起してる♪」

何故か嬉しそうな美優。
それをギュッと握り締め

「せっかくだから、これも洗ってあげる。」

そう言ってペニスを扱き始めた。

「気持ちいい?」
「うん。…美優、今日は優しいね。」

「なに言ってんのよ。
 あたしはいっつも優しいでしょうが!」

頬を膨らませる美優。可愛い。
美優は手馴れた手つきで扱き続ける。
だが、これはあくまで洗っているだけだ。
射精に至ってしまっては身も蓋もない。

「これくらいでやめとかないと、出ちゃうでしょ?」

美優はクスクスと笑う。
だんだん気持ちよくなってきた…というところで
美優は手を止めてしまった。
そんな美優が憎らしい…。

ペニスから離れた美優の手は、
さらに下へと向かっていった。
細い指先が、触れてはいけない部分に触れる。

「ええ!そんなトコまで…」

翔はビクンッとして驚きの表情を浮かべる。
美優はアナルの付近を弄りだしたのだ。
ボディソープをたっぷりつけて、
翔のお尻を手で洗う。とりわけ穴の付近を。

「き、汚いよ…」
「汚いから洗うんでしょ〜が!」

恥ずかしがる翔を、
美優は嬉々とした様子で眺めていた。
翔は顔から火が出る思いだった。
もともと美優は翔のこういう顔が好きだったのに、
慣れてくるとそういう表情をしてくれない。
だから美優はどんどん過激になっていかざるをえないのだ。
その結果、こんなところまで辿り着いてしまった。

「ちょっと…美優…!」

ついに美優の指が、翔のナカへ侵入した。

「なに?」
「な、何でもない…。」

美優の子悪魔な笑みに、翔はもう、タジタジだった。
ふたりの夜は… まだまだ明けそうにない…。

「うぅ…」

翔のこの表情が堪らない。

この表情が美優を興奮させる。

「ちょっと翔、締め付けすぎ!
 力抜きなさいよ。」
「ム、ムリだよ…」

翔のアナルはギュッと締まり、
美優の指の進攻を頑なに拒む。

「ま、いいわ。」

美優はこれ以上奥に入れるのは諦め、
入り口付近で指を遊ばせ翔のアナルを弄んだ。

「んくっ…」

美優の指が蠢き、翔は篭った声を出す。

「フフッ、少しは挿れられる側の気持ち、わかった?」
「な、なんか変な感じ…」

顔を真っ赤にした翔を“カワイイッ”と思いながら、
人差し指をくねくねと動かし続ける。

「気持ちいいの?」
「…よくわかんない。」
「そ。」

美優はニッコリと笑った。
小悪魔な笑みは、いつも翔のことをいじめる。

「じゃ、これでどう?」

美優は穴に人差し指を挿れたまま、
同時にペニスを扱きだした。

「そ、それは…あぁ…」

急に翔はうろたえ悶え始める。

「んぁ…美優ぅ…、ヤバイ…よ…」

息絶え絶えの翔は、本当に快楽を得ているようだ。
美優は喘ぐ翔をニタニタと眺めながら、
右手の人差し指でアナルの中をグチャグチャに掻き乱し、
左手ではペニスを上下に扱き続ける。
先っぽから何かが先走りしているのを見つけると、
亀頭にそっとキスした。

「もう…ムリぃ…、で、出るっ!」
「えっ!もう!?」

急にアナルがギュッと締まったかと思うと、
次の瞬間ペニスの先から白濁の粘液が飛び散った。

「はぁはぁ…」

完全に逝ってしまった翔は、ぐったりと項垂れる。

「まったく。あ〜ぁ、貴重な一発がぁ…」

美優は念入りに手を洗った。
特に、未知の領域へと進攻した人差し指は
爪の間まできちんと丁寧に。

「ゴメン…」
「…ま、気持ちよかったならそれでいいわよ。」

俯いたままの翔の髪を、美優は優しく撫でた。
ふたりは優しいキスをする。

「ワンダリンスタァート
 暮れなずーむ空ぁーにぃ
 潤んだボークのひとーみはぁー
 キミーのね、澄んだ、ひとーみと
 ただ見つめ合えたとき 煌くよぉー
 アイワナスタート
 これからーのストーリー
 かーさなーるふーたりーのかーげよぉー
 はじーまり、告げる、ことのーは
 愛しい人と 共に奏でるアイノメーロディー」

「美優、相変わらず歌上手いねぇ。」

歌い終わってマイクを置いた美優に、
翔が微笑みかける。

「あったりまえじゃない♪」

美優はヘヘーンッといった感じ。

ちなみに今の歌、
本当はもっとしっとり歌い上げるバラードなのだが、
美優が歌うとノリノリの元気ソングになるから不思議だ。

今度は翔の番。

「この声ぇ〜 届けたぁーいよ
 まだ小ぃさーな詩だけーど…」
「…あんたは相変わらず下手ね。」
「ご、ごめん…」

事実だけにタジタジの翔だった。

「フフッ、ね、今度は一緒に歌おっ?」

カラオケボックスから出てきたふたり。
第一声は美優の

「暑いわねぇ…」

冬の寒い時期は、美優が密着してくるから翔は嬉しい。
逆に暑いと翔が近寄ろうとすると「暑苦しい!」と叩かれる。
まあ、暑いと露出度が増えるから
それはそれで嬉しいのだが。
実際、今日も美優の服装はなかなか際どい。
超ミニのスカートから、何かが見えてしまいそう。

「カラオケの中、冷房かなり効いてたからね。
 よけい暑く感じるんじゃない?」
「それにしたって暑過ぎるわよ。
 もう9月も後半だっていうのに、
 連日30度超えてんのよ!」

ダラダラ垂れてくる汗を手の甲で拭きながら、
ふたりは太陽の照り付ける日向を歩いていた。

「はぁ…、夕食の前に1回帰ろっか?」
「そうね。シャワー浴びてから出直しましょ。
 こんな汗臭くちゃ、せっかくのディナーが台無しよ。」

美優は服の胸元を摘まんではためかせ、
肌と服の間に風を吹き込ませる。

「まったく…ほんと暑いわねえ。あれ、翔?」

ふと横を見ると、そこに翔はいなかった。

翔は数歩後ろで立ち止まっていた。

「どうしたの?」
「え…いや…、この家、ずいぶんボロボロだなぁって。」

翔の視線の先には、荒れ果てた一軒家があった。
窓ガラスは割られ、蜘蛛の巣が張っている。
とても人が住んでいるようには見えない。

「ああ、佐田屋敷ね。知らないの?」
「佐田屋敷…?」
「結構有名な心霊スポットなのよ。」

周りに電灯もなく、すぐ隣には墓場がある。
夜中に来たら、確かに怖いかもしれない。

「なんでも、もともと父母と息子の3人が住んでいたけど、
 十年くらい前に父親が殺人事件を起こしてね…」

急におどろおどろしい口調になる美優。

「それを知った息子がショックのあまり気が動転して
 父親を包丁で刺し殺したのよ…」
「息子は警察に捕まって、ひとりあとに残された母親は
 精神病になり、最後には自殺してしまったそうよ…」

美優の話に聞き入っている翔は思わずゴクンッと息を呑んだ。

「それから住む人のいなくなったこの家は荒れ果てて…」
「でも…」
「誰もいないはずのこの家の中から
 夜な夜な、しくしく…しくしく…
 女の人の泣く声がするの…」
「あ…風…」

暑い中を家へと歩いていたので、
美優は突然吹いた風に心地良さを感じていた。

「美優!スカートっ!!」
「え、あ…キャッ!」

慌ててスカートを押さえる美優。
言われる前に気が付けよ、という話だが。
スカートは風に捲られ、数瞬すべてを晒してしまっていた。

「って…!パンツ…はいてないの?」

そう。
捲れ上がったスカートの下には、
何も身に付けていなかった。
恥毛を目の当たりにした翔は目を疑った。

「パンツ…?そんなの、はいてないわよ?」

美優は不敵に笑う。
翔をからかうときの顔だ。

「ほら…」

と、スカートをたくし上げてみせた。
翔は目を丸くする。

「だー!!なにしてんの!!」
「別に誰も見てないわよ。
 珍しくもない。」
「な、なんではいてないのさ?」
「アソコがスースーして気持ちいいのよ。」

悪びれもせずそう言う美優に、翔は口をあんぐりと開けていた。

「はぁ?」
「知らないの?今、流行ってるんだから。」
「な、なにが?」
「ノーパン・ノーブラ。」
「は!?」

ノーパン健康法とか、そういう類のものか…。
それともただ単に美優がふざけて
からかっているだけなのかもしれない。
困惑する翔を美優は

「ラギャルとか、知らないの?」

と笑い飛ばした。

「”ラギャル”…?ん、あれは…」

急に会話が途絶える。
翔は何かを見つけたようだ。

「どうしたの?」
「え、あ…ちょっとね。あれは確か矢吹の…」

翔は偶然通りかかった公園で、
矢吹の妹の亜樹…と思しき少女を見つけたのだ。
この前秀と一緒にいるのを見たばかりだから、
たぶん間違いないだろう。
彼女はおそらく同い年くらいであろう少年二人と
何か話をしている。
亜樹は髪を後ろで結んだ女の子らしい髪型で、
しかし腕組みをしたりして勝気な性格が窺える。

「おい!信太も直哉も、
 男ならもっとビシッとしろ!」
「だけど亜樹ちゃん…、ウチは…」

少年のひとりが弱弱しく反論しようとするが

「直哉!自分のことを”ウチ”って言うのは止めろ!
 そんな女みたいな喋り方してるから
 他の男子に苛められるんだ!」

敢え無く亜樹に一喝されてしまう。
男勝りな亜樹とは正反対で、直哉は男のくせに容姿も喋り方もどことなく女の子っぽい。

「亜樹ちゃんは、その男みたいな喋り方を止めたほうがいいと思うよ…」

そう突っ込みを入れたのは信太と呼ばれた少年だ。
彼もやはりひ弱な感じがする。

「何か言ったか?」
「いや、何でもない…」

亜樹が睨みを利かせると、信太も黙り込んでしまう。

「おい、直哉!!」

亜樹が大声で呼んだだけで、直哉はビクンッと身を竦めてしまった。

「いいか?今日からオレが、お前が立派な男になるまで
 ビシバシ鍛えてやるからな!」

亜樹は不敵に微笑む。

「題して、”卯月直哉(ウヅキナオヤ)改造計画”!!」

………。
………パクリ?

「で、ひとりじゃ心細いだろうから、
 信太!お前も一緒に鍛えてやる!」
「なんで僕まで…」

とばっちりを受けた信太が何か言おうとすると、
亜樹の「煩いっ!!」の一言で一蹴された。

「大体お前は根性が足りないんだよ!
 オレがしっかり叩き直してやるからな!」

一連の会話の流れを側で聞いていた翔たちは、
呆然として顔を見合わせる。

「”オレ”って…、ホントに女の子なの?」
「あれは相当強烈ね…」

さすがの美優も、亜樹のあまりのハチャメチャさに
面食らったようだった。
あの性格じゃ、母親が
「男勝りな性格で秀に懐かない」と嘆くのも仕方がない。
この前見た秀と亜樹の仲睦まじい光景を思い出し、
翔は「よくあの妹を手懐けたもんだ」と感心したのだった。

  Iwannastart
  これからのstory
  重なるふたりの影よ
  始まり告げる言ノ葉
  愛しい人と
  共に奏でるIknowmelody

教室に鳴り響く美しい歌声に、
難しい授業に退屈していた生徒たちは心安らぐ。
最近の携帯電話の”着うた”は随分と高音質になったものだ。

「もう、誰!?授業中は携帯の電源切っといてよ!」

教壇に立っていた翔が怒る。

「あ、ごめん先生。あたしだ…。」

奈津希は鞄から携帯電話を取り出し、
悪びれることなく着信を確認する。
どうやらメールのようだ。

「まったく栗原は…」

翔は文句を言おうとするが、
何か思い付いたのか急にポンッと手を合わせた。

「じゃあいいや、せっかくだから栗原、
 この問題黒板で解いてみて?」
「え…マジ?」

「え、えっと…」

顔が引き攣っている奈津希を
嬉々として眺める翔のSっ気。

「わかんないの?
 ちゃんと授業聞いてる?」

翔が意地悪なことを言うので
奈津希は頬を膨らませる。

「…じゃあ、大槻。
 彼女のピンチ、助けてあげて。」
「そ、そんなぁ…」

突然ふられた蓮は堪ったもんじゃない。
二人揃ってシドロモドロになってしまう。
が、蓮を巻き込んだのが運の尽きだったのかもしれない。
奈津希は意外と蓮にベタ惚れのようで、
蓮を守るためには手段を選ばない。
奈津希は早くも最終兵器の投入を決したのだ。

「…先生、そんな意地悪ばっかすると、
 先生の秘密言っちゃうよ?」
「えー、なになに?」

生徒たちは”先生の秘密”とやらに興味津々だ。
翔の顔が青ざめる。

「実はね、この前先生の家に行ったら
 なんと奥さんが…」
「わ、わかったから!
 はい、もう座っていいよ!!」
「ヘヘッ」

顔を真っ赤にした翔を見て、
奈津希は小悪魔な笑みを浮かべる。
蓮もホッと一安心して席に座った。
奈津希には後できっちり言っておかないと。
バラされてしまってからでは手遅れだ。
赤っ恥な上に、美優に知れたら何を言われるか…。

「センセー、どうしたんですかー?」

生徒たちがニヤニヤしながら
翔に声をかける。

「あ、ああ。えーと…」

不機嫌そうにしている小夜子と目が合った。

「じゃあ、如月、解いてくれる?」

小夜子はゆっくりと立ち上がる。

「まったく、こんなのも解けないって…
 あんたたち、頭ん中空っぽなんじゃないの?」

小夜子が奈津希を睨みつけると、奈津希はフンッと顔を背けた。

「何よあの子、感じワル!!」
「奈津希、抑えて抑えて。」

蓮が奈津希を宥める。

「…ん?」

  Iwannastart
  これからのstory
  重なるふたりの影よ
  始まり告げる言ノ葉
  愛しい人と
  共に奏でるIknowmelody

「こら栗原!没収するよ?」

翔は珍しく声を荒げる。

「今のはあたしじゃないわよ。」
「え…でも、同じ曲だったよね?」

サラリと否定する奈津希に翔はキョトンとした顔をした。

「先生知らないの?
 この曲ちょ〜流行ってるんだから。
 これ着うたにしてる人、たぶん多いわよ?」

昼休み、生徒たちと話をする翔。
緒方先生は案外人気者なのかもしれない。

「へー、あの曲そんなに流行ってるんだ。
 そういえば美優もカラオケで歌ってたなぁ。」

先生の奥さんの名前が美優であることは、
もう周知の事実なのである。

「もうすごいのよっ!
 仁元実華(ニモトミカ)の『START』、
 デビューシングルなのに200万枚近く売れてるのよ。」

自分のことのように自慢げに語る奈津希。
だが実際、200万枚といえば近年稀に見る大ヒットだ。

「歌自体も良いけど、
 やっぱ実華のパフォーマンスよね。
 ノーパン・ノーブラで超キワドイ服着てさ、
 もうすんごいカッコイイの!」
「ああ、最近よく聞く”エロカッコイイ”ってやつ?」
「そんなんじゃないわよ。
 もっとすごいの!!」

いったい何がどうすごいのか…。
翔が頭をフル回転させて妄想に励んでいると、
他の生徒が話に加わってくる。
仁元実華の話題となると、食いついてくる生徒は多い。

「生放送で見えちゃった事もあるのよね。」
「ね〜。あのときはさすがにビックリしたわ。」
「見えたって…何が?」

翔が嫌な予感を感じながらも恐る恐る尋ねると、
奈津希は平然と言った。

「何って…アソコよ。」
「ア、アソコ…」
「あ。あたしその時のビデオ持ってるよ。
 貸してあげようか?」
「えー!貸して貸してぇ!!」

女子生徒たちは大盛り上がりだ。

「女子にも人気なのか…」

翔はその様子に呆然としていた。
“ノーパン・ノーブラでキワドイ衣装”なのに、
男子生徒よりむしろ女子生徒に人気があるようだ。
世の中、何が流行るかわからないものだなぁ…

「実華を真似して、ノーパン・ノーブラの人も結構いるわよね。」

奈津希の何気ない一言に、翔はハッとした。

    「知らないの?
     今、流行ってるんだから。」
    「な、なにが?」
    「ノーパン・ノーブラ。」

「本当に流行ってるんだ…」

翔は思わず呟いた。
美優の言っていたことは、冗談でもなんでもない。

「先生、鼻の下伸びてるわよ!
 イヤらしいコト考えてるでしょ!!」
「か、考えてないよ!
 …でも、みんなノーパンなの?」
「わたしは違うわよ。」
「わたしもそんな勇気なんてないし。」
「あたしは…その日の気分によるけど…。」

「ふんっ、あんたたちなんかに仁元実華を語ってほしくないわね。」

その声にみんな一斉に振り向く。
ふてぶてしい態度で立っていたのは、やはり小夜子だ。

「実華はね、この街の出身なの。」

小夜子は奈津希たちを見下したように眺めながら、実華の話を続ける。

「昔ストリートライブやってた無名時代に、
 “素の自分が出せる”ようにって
 全裸でストリートライブをやってたことがあって、
 今のノーパン・ノーブラはその名残なの。」
「……は?全裸でストリートライブ…?」

固まる翔。
あまりに奇抜過ぎて妄想すら出来ない。
頭に映像が浮かんで来ないのだ。
全裸でストリートライブなんて。

「何回も警察のお世話になったけど、
 “今の自分があるのはそのお陰”って言ってたわ。」

奈津希と同じで小夜子も実華のことをまるで自分のことのように自慢げに語る。

「なにそれ…じゃあ実華って元ラギャルってこと?」

女子の誰かが呟いた一言は、茫然自失の翔の耳を素通りして消えた。

「なにあいつ!!知ったかぶりしちゃって感じワルッ!!」

奈津希が喚き出した。
小夜子の小話は相当機嫌を損ねたようだ。

「はぁ!?知ったかぶりはあんたでしょ!!」

負けじと小夜子も言い返す。

「わたしはストリートの頃から実華のファンだったの。
 にわかファンのあんたになんて、
 実華のことを語ってほしくないわ!!」

睨み合うふたりの目から火花が散りそうな勢いだ。
そしてその横で依然放心状態の翔。
ジェネレーションギャップなのか
カルチャーショックなのかよくわからないが、
翔には到底理解できない流行のようだ。

「あたし、今日はノーパンなのよ!!」
「わたしは毎日そうよ!!」

そんな言い合いを続けるふたりに、
翔は危うさを感じずにはいられなかった。

「仁元… 実華… かぁ…。」

そうポツリと呟いた翔の脳裏を過ぎったのは、
遠い日の記憶…
血のように紅い瞳…

「矢吹くんも、仁元実華好きよね?」

小夜子は近くにいた秀に話をふった。

「え…いや、俺は別に…。」

つれない返事の秀に、ムッとした顔をする。

「わ、わたしは好きです、仁元実華。
 歌ってる姿、カッコよくて…。」

そう言ったのは由梨だ。
由梨は奈津希みたいに積極的ではないから、
こうやって自分から話に入ってくるのは珍しい。
仁元実華のことをよほど敬慕しているのかもしれない。
でも…
「あんたなんかに聞いてないわよ!」
「ひぃっ…、ご、ごめんなさい。」

小夜子に一蹴されてビクつく。
去ってゆく小夜子の後姿を眺めながら、
秀は由梨に話しかけた。

「気にすんなよ、長瀬。如月のやつ、なんか機嫌悪いみたいだから。」

彼は優しい。
だから女子にモテるのだろう。

「長瀬も好きなのか…仁元実華…。
 確かにカッコイイよな。」
「ホント素敵で…憧れですっ!」

由梨は少女マンガのヒロインのように瞳を煌かせる。

「でも俺は…、ああゆう女より、
 可愛らしい感じのコの方が好みかな。
 …長瀬みたいな。」
「え…」

由梨は驚きのあまり
口をポカーンと開け呆然としてしまった。

「冗談だよ。」

秀が優しく微笑むと、
由梨はポッと音が出るくらい顔が真っ赤になってしまう。

「おーい、矢吹ぃー」
「どうした?」

秀は他の男子に呼ばれて去っていった。
彼は男子とも仲良く、女子からも慕われ、
いわゆるクラスの人気者なのだ。

「なんかイイ感じね、由梨と秀。」

秀と入れ替わりで由梨に近付いてきたのは奈津希。

「たぶんからかわれたんだよ、わたし…。」
「んー…、でもきっと秀は由梨のコト
 けっこう気に入ってると思うわよ?
 あたしの勘だけど。」

由梨は童顔で貧乳。
それがコンプレックスなのだが、
見る人によっては好まれるタイプだ。
隠れファンが多いことを本人は知るよしもない。

「ね、思い切ってさ。
 デートに誘ってみなよ!」
「そんなのムリだよ…
 断られるに決まってるよ。」
「そんなのわからないじゃない。」
「でも、もしOKしてもらっても、
 ふたりっきりじゃ何話していいかわかんないし…
 きっと気まずい感じになっちゃう…」

秀も由梨もあまりベラベラ話すタイプじゃないし、
由梨はアガリ症で、たしかに秀とふたりきりで会話が続くとは思えない。
そのことは本人が一番良く知っている。

「ならさ、ダブルデートはどう?
 あたしと蓮が一緒に行くからさ。」

奈津希はどうしても由梨と秀の仲を進展させたいらしい。

「秀もあたしと蓮が付き合ってるの知ってるんだからさ、
 きっと由梨の方に寄って来るでしょ。」
「そうかもしれないけど…でも…」
「じゃあ決まりねっ!ねえ、秀!!」
「え…ちょっと奈津希ちゃ…」

急に大声で秀を呼ぶ奈津希に、由梨は戸惑いを隠せない。
まったく困った親友だ。

「どうした?」

秀がやってきても、由梨は彼の目を見れなかった。
思わず俯いてしまう。

「あのさ、あたしたち今度プールにでも
 行こうと思ってるんだけどさ、あんたもどう?」
「プ、プール!?」

由梨はびっくりして顔を上げた。
プールだなんて聞いてないよ…と
困惑した表情で奈津希を見つめる。

「プールかぁ…最近暑いからな。長瀬も行くのか?」
「ええ。今のところ決まってるのは
 あたしと由梨と蓮。」

もちろん蓮には何も言っていない。
蓮の都合はお構いなしなのだ。

「そっか…。じゃあ、行こうかな。」
「え… ホ、ホント!?」

思わず声が裏返る由梨に、

「ああ。」

秀はまた優しく微笑んだ。
詳しい日程が決まったらまた連絡すると伝えると、
秀は他の男子たちのところへと戻っていく。

「奈津希ちゃん!
 聞いてないよ、プールなんて…。」
「いいじゃない。
 悩殺水着で秀をイチコロよ!」

奈津希の眩しい笑顔とは対照的に、
由梨の表情は暗い。

「わたしは奈津希ちゃんと違って
 胸、小さいんだから…」

そう嘆きながら、申し訳ばかりの膨らみに
そっと手を置いた。

「プール?別にいいけど。」
「そう。良かったぁ。」

完全に事後連絡だが、一応蓮にもダブルデートの件を聞いておく。
由梨と秀をくっつけたいのだと言うと、蓮も喜んで協力してくれるということだ。

「あ…!」

だが、奈津希には一抹の不安があった。

「あんたねえ…。この間みたいに… ここ!」

ギュッ!!

「勃てたりしないでよね。」

大事なところを奈津希に摘ままれ、
冷や汗を垂らし苦笑い。

「あ、あれは奈津希が僕の腕に胸を押し付けるから…」
「それくらいで興奮しないでよ!
 あたしは良いけど、秀と由梨が見たら気まずいでしょ!!」
「は、はい…。気をつけます…。」

蓮はシュンとして肩をすぼめた。

その日の夜は満月だった…。

翔は顔をニヤつかせながら
ひとり早足で家路を歩いている。
美優との淫らな絡み合いを頭に描きながら、
浮き足立った足取り。
翔はここのところ毎晩こんな調子だ。
美優も愛するダンナの帰りを待ちわびているはずだ。
結婚してからというもの、
ふたりの相思相愛は留まるところを知らない。
裸エプロンをするくらい、
ふたりの新婚生活は激甘なのだ。
暗い路地を向こうから歩いてくる女性。
翔はそんなことは気にも留めず、美優のもとへと急ぐ。

すれ違う肌色―――――

「あれ!?」

ハッとして振り返った場所には、もう…誰もいなかった。

「気のせいかな…。今の女の人…
 ……裸だったような…」

はぁ…と大きな溜め息をつく。

「…まさかね。」

「女の人が、こんなところを裸で歩いてるわけないか。」

トボトボと歩き出す。

「はぁ…最近疲れてるのかなぁ…。
 それとも、エッチしすぎなのかな。」

♪♪〜 ♪♪〜〜

着信音が鳴り響く。
翔は携帯をポケットから取り出し、画面を見た。

「ん… 美優から…?」

ピッ―――

「はい、もしもし?」
「あ、翔っ! 今どこ?」

興奮した感じの美優の声。
僕の帰りがそんなに待ち遠しいのか…
美優ってホント、カワイイなぁ。

「もうすぐ着くよ。
 あと5分くらいかな。」
「あ、ちょうど良かったぁ。
 ちょっとスーパー寄ってきてくれる?
 シチュー作ってるんだけど、牛乳が切れちゃったのよ。
 買って来てっ!ヨロシク!!」

ガチャッ―――――!!

「え…」

呆然と立ち尽くす翔。
シチューより美優が食べたいよぅ…

「今日も暑いなぁ…」

蓮は滝のように流れる額の汗を拭いながら、
もう一度腕時計で時刻を確認する。

「お待たせー!」

向こうから大きく手を振って走ってくるのは奈津希だ。

「ちょっと遅刻しちゃった。」

テヘッという表情は、ゴメンネのサイン。

「それはいいんだけどさ、
 矢吹も長瀬さんもまだ来てないんだけど…。
 どうしたんだろう…?」
「それはそうよ。
 集合時間、30分ずらしてあるもの。」
「え?」

蓮がポカーンとした表情で奈津希を見つめると、
奈津希はクスクスと笑う。

「どうせあんた、
 あたしの水着姿で勃起するんでしょ?」
「そうならないように…、ほら、ちょっと来て。」

奈津希は蓮の手をとって、どこかへ連れてゆく。

「どこ行くの?」
「いいからいいから…」

結局、人目に付かない草むらに連れ込まれた。
ここまで来れば、さすがの蓮でも
奈津希の考えてることはだいたいわかる。
わかるから…
カチャカチャと音をたててベルトが外される。
照り付ける太陽の下に晒されたペニスは、
天に向けて仰け反りかえっていた。

「まったく、どうしようもないわね。
 ん…?」

奈津希の眉間にしわが寄る。

「あんた、オナニーしてきたでしょ!?」
「え…なんで?」

蓮はビクンッとしてたじろいだ。

「ニオイでわかるのよ!」

ふたりとも顔が真っ赤。
蓮がオナニーしている場面を思わず想像してしまう奈津希だった。

「プールで勃起しないようにって…」

別に悪いことをしたわけでもないのに
言い訳をする蓮を見て、奈津希はクスリと笑った。

「ヘヘッ、2回逝っとけばもう安全よね?」
「たぶん…」
「手と口と、どっちがいい?」

大胆な笑顔で見つめてくる奈津希。
奈津希はあの性格だから、フェラチオは大得意だ。
だけど手コキも捨てがたい。
キスしながらとか喋りながらとか、いろいろ出来るから。
でもやっぱり…

「おまんこで…」

バシッ!!

「却下っ!!」

打たれた頬を摩りながら嘆く蓮。

「なんで…」

ちょっと情けない。

「集合時間まであと20分もないのよ。
 由梨はあの性格からして
 きっと集合10分前とかに来るだろうし…。
 あたしはそんな短いエッチじゃ満足できないわ!」

奈津希はニヤリと笑う。

「あんたは早漏だから、問題ないでしょ?」

しょぼーんと気落ちする蓮。
からかわれただけなのはわかってるが、
ちょっとへこんだ。

「で、どっち?」
「じゃあ…口で。」

蓮のトーンダウンした声など気にしない奈津希は、
明るく返事をする。

「オッケー♪2分で逝かせてあげるわよ。」

悪気がないから、よけいに始末が悪い。

「ホント、ビンビンね。」

奈津希は愛おしそうに肉棒を撫で回す。
その愛撫だけで蓮は逝ってしまいそうだった。
だが、それでは本当に早漏。
奈津希の口に包まれるのを、今か今かと待ちわびる。
奈津希はそれをペロペロ舐める。
アイスキャンディーでも舐めるかのように…
上目遣いでチラチラと蓮の様子を窺いながら。

「奈津希…、すごいエッチな顔だよ…?」
「あんたの顔の方がよっぽどスケベよ。」

そんなこと言っても、気持ち良いものは仕方ない。
大好きな彼女にペニスを舐め回されて、
毅然としていられるわけがない。

「咥えて…。」

奈津希はヘヘッと笑みを浮かべ、
彼のペニスを口いっぱいに含んだ。
そして間髪容れずに舌を絡ませる。

濃厚な口淫…

サービス精神旺盛な奈津希は、
上目遣いで蓮を愛でることを忘れない。

「気持ちいい…」

蓮が情けない声でそう呟くと、
奈津希の眼差しは微笑んでいた。

「奈津希…、もう…出るかも…」

早くも蓮は限界のようだ。
蓮の名誉のために言っておくと、
蓮が早漏なのではない。
奈津希のフェラが上手すぎるのだ。

「ぁ…出るっ!」

本日二度目の射精だというのに、
大量の濃いザーメンが奈津希の口の中で
ビュッビュッと勢いよく吐き出された。
奈津希はゴックンと呑み込む。
そして呟く。

「美味しい♪」

奈津希の真意はわからないが、
精液を飲み干すといつも必ずそう言う。

「あ! 奈津希ちゃん、
 そんなところにいたの?」

突然背後から聞こえた声に、心臓が止まりそうになる。

「ゆ、由梨っ!」

奈津希は大慌てで口元を拭い、
蓮の前に立って露出された彼の下半身を見えないようにした。

「どうしたの?」

由梨は笑顔でこちらに近付いてくる。

「あ、あんた早くそれしまいなさいよ!」
「わ、わかった。」

何やら小声でやりとりするふたりを、
由梨は不思議に思った。

「イタッ!!」
「…どうしたの?」
「…挟んだ。」

ホント情けない声…
ズボンのチャックに大事なものを挟んだらしい。

「気をつけなさいよ!
 セックスできなくなったらどうすんのよ!!」

奈津希は小声で怒鳴る。

「奈津希ちゃん?」
「ゆ、由梨… 早かったわね。」

奈津希は冷や汗ダラダラだ。

「ヘヘッ なんか嬉しくって、早く来ちゃった。」
「そ、そう。矢吹と進展するといいわね。」

なんとか由梨にはばれずに
上手く誤魔化すことができたようだ。

「じゃ〜ん♪」

奈津希はタオルを脱ぎ捨て、水着姿を披露する。
奈津希らしい明るい柄だが、
高校生にしては少し大胆すぎるビキニ。

「秀、どう?」
「なんで俺に聞くんだ?」

“彼氏に聞けよ”とでも言いたげな秀。

「蓮は前来たときにもう見てるのよ。
 どう?似合う?」
「…ああ、似合うよ。」

秀は微笑みなのか苦笑いなのか
よくわからない笑顔を浮かべた。

「長瀬は?」

秀はやはり奈津希より由梨の方が気になるようだ。

「ん…もうすぐ来ると思うけど…
 あ、来た来たっ!」
「ゴメン、お待たせ…」

駆け寄ってくる由梨の姿を見て、奈津希は嘆く。

「あんたねえ、プールに来るのに
 スクール水着で来るバカがどこにいんのよ!!
 ねえ秀?」
「俺は好きだけどな。スク水…」
「は?」
「いや、何でもない…」
「きっと長瀬さんを励まそうとしたんだよ。」

蓮はそう言ってフォローしたが、
奈津希は疑いの目。

「でも、スク水もいいかもなぁ…。
 奈津希、今度スク水着てエッチしよ?」

ゲシッ!!

―――すかさず蹴りを入れられた。

「なにやってんだ?
 早く泳ぎに行こうぜ。」
「そうね。
 まずは流れるプールに行きましょ。」

そう言ってスタスタ歩いていってしまう奈津希たち。

「ちょっと、待って…」

蓮は蹴られた股をかばいながら、
泣く泣く3人についてゆく。

「れーんっ!
 なにやってるの? 早く行くわよ!」

この暑い中、長く連なる人々の列。
ウォータースライダーの順番待ちをしているのだ。

「まだぁ?」
「あとちょっとだよ。」

と相変わらずの奈津希と蓮。
それとは対照的に由梨と秀は無口だ。
互いを意識し過ぎて上手く会話ができないようだ。

「次のかた、どうぞー」
「おい、俺たちの番だぞ。」

長いこと待たされていたが、ようやく4人の番が回ってきたらしい。
すると奈津希はスライダーの係員に

「あたしはいいです。」

と言って列から抜ける
普通なら”ここまで来て怖気付いたのか”と思うところだが、
なんといってもあの奈津希だ。
蓮たちは嫌な予感を感じながらも、
係員の指示通りスライダーのスタート地点に座る。

「はい、どうぞー」
「今だっ!!」

係員がGOサインを出した途端、蓮の背中に奈津希が飛び付く!

「こら!!きみ、危ないだろ!!
 ふたりで滑るのは禁止だぞ!!」

後ろから叫んでいる係員を尻目に、
奈津希は蓮に後ろから抱き付く格好で
ふたりはスライダーを猛スピードで滑ってゆく。

「まったく、ムチャクチャだよ奈津希は…」
「フフッ 嬉しいクセに♪」

そう笑って背中に胸を押し付けてくる。
“勃起するな”と言っておきながらこんな事をするなんて
まったく意地悪な小娘だ。

ザッブーン!!

ゴール地点のプールに勢いよく突っ込む。

「ハハッ 楽しかったぁ〜♪」

笑顔炸裂の奈津希。無邪気な顔が良く似合う。

「もう、奈津希!あ…」

蓮の目が点になっている。
奈津希が蓮の視線を辿っていくと自分の胸に辿り着く。

「キャ!水着が!!」

珍しく女の子らしい悲鳴をあげて、
顔を真っ赤にして慌てて手で胸を隠す。

「蓮っ!」

奈津希は蓮に抱きついて、露な胸を彼の背中に隠した。

「な、奈津希…そんなに押し付けないでよ…。」
「は、はやくブラ探してよ!次の人たちが来ちゃうじゃない!」
「お前ら、なに抱き合ってるんだ?」

秀が呆れた顔で聞いてくる。

「み、水着が…」
「ん…これか。ほらっ」

秀は漂っていた奈津希の水着を取って、蓮に手渡す。
蓮はそれを奈津希の胸に付け直してあげた。

「あ、ありがと…」

そう秀にお礼を言うと秀はクールに左手をかざす。
奈津希は蓮の方に振り返って、彼に白い目を向けた。

「蓮と違って、秀は全然慌てたりしないのね。」

蓮は苦笑いした。

「ひょっとして、女に興味ないのかしら…。」

ブツブツ呟きながら奈津希はプールから上がる。

「ん… 蓮、どうしたの?」

蓮はなかなかプールから上がろうとしない。

「あの…その…」
「ふ〜ん…」

奈津希は白々しい顔で蓮を見ると、
秀と由梨にわざとらしく大声で話しかけた。

「秀、由梨、なんか蓮が足攣っちゃったみたいだからさ、
 ふたりで泳いできなよ。」
「え…」

ポッと顔を赤らめる由梨。

「大槻、大丈夫なのか?」
「え、あ…大丈夫だよ、そのうち治るよ。」

秀のクールな問い掛けに蓮は慌てて誤魔化す。

「そうか。
 じゃ、長瀬行こうぜ。」
「は、はいっ!」

由梨は嬉し恥ずかしといった具合だ。
申し訳程度に膨らんだ胸を躍らせ、
秀のもとに駆け寄る。
意外にお似合いの秀と由梨の背中を眺めながら、
奈津希は諦めたように呟く。

「まったく、どうしようもないわね。」
「ごめん…」

蓮は相変わらず情けない。

「ま、それだけあたしのコトが好きってことよね。」
「そ、そうだよ。
 奈津希が可愛いから勃っちゃうんだよ。」

調子の良いことを言う蓮に、奈津希は疑いの目。

「ホントかしら…。
 他の女の裸で勃ったりしないでよ。」
「大丈夫だよ!」

そのとき、急に辺りがざわつきだした。
ヒソヒソと話す声が幾重にも重なって、騒然としている。

「なになに?」

奈津希は状況がつかめず、辺りを見渡した。

「あ、ラギャルだわ…。蓮、目瞑って。」
「え!あ、はい…」

蓮は慌てて言われたとおり目を瞑る。
つくづく信頼されてないなぁと感じた蓮だった。

AdamandEveatethefruitoftheforbiddentree,
theyknewthattheywerenaked,
andtheysewedfigleavestogether
andmadethemselvesaprons.
It’stheoriginalsin.
Sheatonesfortheoriginalsin.
ShestripsherfigleavesthatAdamandEvesewed.
And…She’llbewithGod.

その後、奈津希は勃起の治まった蓮とともに
頃合を見計らって秀たちと合流し、
泳いだり、またウォータースライダーを滑ったりして、
心行くまでプールを楽しんだ。
由梨も少しは秀と仲を深めることができたようで、
奈津希はホッとしていた。

暮れなずむ空…
肩を寄せ合うふたり…
何を話しているのだろう…。
由梨は夕焼け色に頬を染め、
秀は夕日のように温かく微笑みかける。

「お待た…」「ちょっと奈津希!」

ふたりのもとに駆け寄ろうとする奈津希を、
蓮が肩をつかみ制止した。

「な、なによ!?」
「ちょっと待って。見てよ。」

奈津希は寄り添うふたりを見てハッとした。
それから微笑み、
アルバムを見るような目でぼんやりと眺める。
夕焼けと、重なるふたりの影…

「なんか良い感じじゃない?
 あのふたり…」
「そうね。ん…?」

どこからか聞こえてくる美しい歌声…

「この曲… 実華のSTARTだわ…。」

  やっぱりキミの目は
  見つめられないよと
  瞳に背を向ける
  恋に怯える自分がイヤよ

  愛するキミの目に
  吸い込まれてしまいたい
  裸になれば 今とは違う
  ボクの想い 伝わるはず

  WonderingStart
  暮れなずむ空に
  潤んだボクの瞳は
  キミのね澄んだ瞳と
  ただ見つめ合えた瞬間(とき) 煌くよ

  Iwannastart
  これからのstory
  重なるふたりの影よ
  始まり告げる言ノ葉
  愛しい人と
  共に奏でるIknowmelody

トントントントン…
包丁の音が刻む一定のリズム、心地良い。
翔は裸エプロンで料理をする美優を後ろから抱き締めて、
美優の両脇から腕を前に通し
彼女の豊満な胸に手を当てている。
別に揉むわけでもなく、単に和んでいるのだ。

「翔?」
「なに?」

翔の吐息が美優の耳にかかる。
美優は包丁をかざして呟いた。

「危ないわよ。」

包丁と美優の目がギラリと光る。

「ひぃっ…!」
「まったく…
 少しはじっとしてテレビでも見ててよ。」
「はい…」

翔はシュンと肩を落としてキッチンから離れていった。

「はぁー…」

溜め息をついてソファーに座ると、
何の気なしにリモコンを手にしテレビをつけた。
ニュースをやっている。
夕食ができるまでの時間つぶし、
そんなつもりで翔はぼんやりと眺めていた。

「日本列島は9月下旬としては異例の猛暑で、
 東京でも連日35度を超える真夏日が続いています。
 政府では対策委員会を設置し、原因の究明とともに、
 熱中症などに注意を呼びかけています。」

美人ニュースキャスターが原稿を読んでいるが、
翔は”やっぱ美優の方が美人だなぁ”と惚気ていた。

「この異常気象について、
 気象予報士の石原さんにお伺いしていきます。
 石原さん、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。」
「こちらのグラフをご覧ください。
 8月中旬辺りまでは平年並みかやや高い程度で推移していましたが、
 8月下旬からは最高気温が
 右肩上がりに上昇し続けているのがわかります。」

グラフには今年の気温が赤色、平年の気温が青色で示されていて、
確かに赤色の線は上昇の一途を辿っていた。

「このグラフを見ていますと、
 このままいくと10月中旬には40度を超える日が
 出るのではないかと思ってしまうんですけれども…
 石原さん、どうですか?」
「そうですねぇ…。
 近年は地球温暖化が騒がれていることもあって
 心配になってしまう人もいるかもわかりませんが、
 まぁこのままのペースで気温が上昇し続けるなんてことは
 常識的に考えてありえないでしょう。
 ただ既に作物などにも影響が出ていますし
 熱中症による死者も出ていますので、
 政府には早急に何らかの対策をお願いしたいですね。」
「ではこの異常気象の原因は何だとお考えですか?」
「そうですねぇ…。
 地球規模で大きな気候変動が起ころうとしているとか
 そういった学説を唱える学者もいますし、
 どっかのカルト教団は天変地異の前触れだとか
 最後の審判の日が迫っているとか、そんなことを言っていますが、
 まぁ私としましてはただ単に
 太平洋高気圧が未だ勢力を保っていることが原因だと思いますがね。」

気象予報士は少し曖昧な解説で誤魔化した。
一気象予報士が簡単に原因を推測できるくらいなら、
原因究明のためにわざわざ政府が動くまでもない。

「なるほど…。では今後もこの異常気象は続くと思われますか?」
「そうですねぇ…。
 ま、暫くは続くんじゃないですかね。」

投げやりな返事。正直な話、わからないのだ。

「そうですか…。
 石原さん、ありがとうございました。」
「ありがとうございました。」
「その異常気象のせいなんですかねぇ、これは。
 続いてのコーナー、特集”ラギャル”です。」
「ラギャル…?」

今までぼんやりと見ていた翔も、その言葉には少し反応した。
テーブルの上に置いてあった麦茶の入ったグラスを手に取り、
麦茶を一口ゆっくりと口に含む。

何度か耳にしたが、未だ何のことかわからない言葉…
――――ラギャル

Theyatonefortheoriginalsin.
TheystriptheirfigleavesthatAdamandEvesewed.
And…They’llbewithGod.

「今、深刻な社会現象となりつつあるラギャル。
 街中を白昼堂々全裸で徘徊する少女たち。
 なぜ彼女達は人前で裸を晒すのか、徹底検証です。」
「ブッ――!!」

思わず麦茶を吹き出してしまう。

「…は!?」

戸惑う翔をよそに、テレビ画面にはVTRが映し出される。
一般の女子高生たちにインタビューをしているようだ。

「ラギャルって知ってますか?」
「当然っ!みんなちょー綺麗だよねー。」
「ラギャルになってみたい?」
「ムリムリ!わたしブサイクだしぃ。」
「もっと美人だったらラギャルになりたかったのに。」

「実際にラギャルの人にインタビューしてみます。」

衝撃の映像だった。
まるでアダルトビデオだ…。

胸と股間と顔にモザイクがかけられている。
でも… どう見ても全裸の少女たち。

「いつからラギャルを?」
「わたしはまだ1ヶ月目の新人です♪」
「わたしは半年くらいかな。」
「わたしは3年目。まだラギャルって言葉がない頃からですね。」

隠したり、恥ずかしがる様子もない。
彼女たちにとっては普通のことなのだ。
服を着る、ということの方が苦痛なのかもしれない。

「最初に始めたのはあなたなんですか?」
「違いますよー。」
「始めたのは××だよね。××には敵わないわよ。」

ピーという自主規制音で名前は伏せられていた。

「ねー。
 ××は裸で歩いてるだけで感じまくりで逝きっぱなしの
 超ヘンタイなんだけど、
 それがまたすっごい綺麗でカッコイイのよね。」
「ヘンタイだなんて××に失礼だよ!」

伏せられた名…
その名の示す者が、彼女たちにとってのカリスマであり、

――――神なのだろう。

「なぜ人前で裸を晒すのかは人によってまちまちのようですが、
 主な要因としましては、開放感を得るためだったり、
 性的欲求を満たすためだったりする場合が多いようです。
 ですが最近は、友達がやっているからとか、
 他のラギャルの姿を見て憧れてとか、
 そういった一種の流行に流されるような形で
 ラギャルになってゆく少女も多いようで、
 今後加速度的に増えていくだろうとの見解もあり懸念されています。」
「変な世の中になりましたね。」
「全くです。
 CMの後は最新ニュースです。」

ガシャンッ!!

翔の手から零れ落ちたグラスが割れた音を聞きつけ、
美優が駆け寄ってくる。

「翔? どうしたの?」

茫然自失の翔に、美優の声は届かない。

「ねえ、翔ってば!!」

ピーという自主規制音で名前は伏せられていたが…
でも、翔にはわかる…。
間違いない…

―――――――彼女だ。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

 ****************************************************

   第四章 異常気象 −TheBeginningandtheEnd−

 ****************************************************

「悠くん…」

まだあどけなさの残る幼い翔は、
寂しそうな顔をして友人の名を呟いた。
ここは神社だろうか…
石段の上から翔を呼ぶ声がする。
ミンミンと鳴くセミの声がうるさい。
翔は石段を、一段一段ゆっくりと登ってゆく…。
彼はニッコリ笑って、翔を手招きしている。
この暑いのに、彼の笑顔は何処か涼しげ…
そのアルカイックな笑みに、吸い込まれてしまいそう…。
何処となく中性的で、整った顔立ちの少年…
その隣に、俯いている少女…

『悠くん…』
「悠くん…」

幼い翔は、オドオドしながらその名を呼ぶ。
彼は優しく微笑んだ。
そして、隣の少女にも微笑みかけ、…こう告げた。

「とりあえず…
 服脱いで、裸になってくれるかな?」

コクリと頷き、何の躊躇いもなく服を脱いでゆく美少女…
着ていた衣服がスルスルと地面に落ちてゆく。
微かに膨らんだ乳房の真ん中で、
乳首が赤く勃起していた。
恥毛も生えていない秘部の割れ目からは、
得体の知れない汁が伝っている。

『君は…』

ずっと俯いていた少女が、
急にワッと顔を上げる。

――――――――紅い瞳!!

「うわぁーーー!!」
「翔!?どうしたの!?」

隣で寝ていた裸の美優が、慌てて飛び起きる。

「はぁ…はぁ…
 ふぅ… 夢か…」

翔はぐったりと項垂れた。
幸せな日々が続いていただけに、
悪夢にうなされることなど久しぶりのことだ。

「すっごい汗… 大丈夫?」

美優は心配そうに翔を見つめている。

「朝比奈悠(アサヒナユウ)?
 そんなコいたかしら…?」

美優は翔のためにトーストにマーガリンを塗っている。
翔はコーヒーを一口飲む。

「小学6年のとき、
 美優も同じクラスだったでしょ?」
「うーん…」

美優は難しい顔をしながら、
トーストを翔の前に置かれた皿に移した。

「すごい仲良かったんだけど、
 夏休みに転校しちゃったんだよ。
 …覚えてない…かぁ…」

翔はトーストをかじると、またコーヒーを一口飲んだ。

「う〜ん…
 別にあたしと仲良かったわけじゃないでしょ?
 …ゴメン、思い出せないわ。」
「…そう。」

あの少年は美優の想い出の中にはいないらしい。

朝比奈悠―――

翔の数少ない友人のひとりだった少年。
でも、どうして今さら彼の夢なんて見たのだろう…
頭の隅っこへと追いやられていた遠い日の記憶…
それが、なぜ…?

「どうしたの?」
「…久しぶりに、
 ”明日葉神社”にでも行ってみようかなぁ…」

翔はうわ言のように呟いた。
いつの間にかトーストが冷めてしまっている…。
小学生の頃はよく神社の近くの森で遊んでいたのに、
中学生になった頃からか…急に足が途絶えていた。
神社の近所に住んでいた友人が引っ越して、
行く機会がなくなったのだろう。

「明日葉神社?
 ああ、あそこ取り壊されて
 なんか新しい施設ができるみたいよ?」
「え…」
「へー… そうなんだ…。」

翔は複雑な気持ちを表に出さないように
平然を装っていたが、
美優はいつもと違う翔に疑念を抱いていた。

「翔、どうしたの?
 何だか少し変よ?」
「ん… 何でもないよ。
 今日も出来るだけ早く帰るからね。」

そう言って唇を重ねる。
家を出る前に必ずするディープキス。

「じゃ、行ってきます。」
「行ってらっしゃい♪」

10月に入っても異常気象は続いていた。
“夏より暑い秋”と皮肉られ、
ついに先日東京で観測史上最高となる41.5度を記録した。
連日40度近くまで気温が上がり、
例年よりも20度も高い気温に人々は滅入っていた。
翔の勤めるS高校でも当然冬服への移行は見送られ、
それどころか、”制服の自由化”と称して
制服を着崩すのも、Tシャツなどのラフな格好も認められた。
これは学校側が生徒会やPTAに押し切られる形で実施されたもので、
日本中の多くの学校で同様の事態が起きていた。
男子生徒は肌の上に直接制服の半袖シャツを着たり、
あるいはTシャツやタンクトップを着たりする者が多かった。
しかし、問題は女子生徒である。
今まできちんとした校則通りの制服の着用が
義務付けられていただけに、
その反動からかかなり過激なファッションで
学校に登校してくる生徒も一部にはいた。
そのひとりが、如月小夜子である。

制服の自由化――

スカートの丈が異様に短かったり、
薄いシャツからブラジャーが透けていたり、
その程度なら可愛いものだ。

「如月… またそんな格好して…
 昨日注意したばかりでしょ!」

そう嘆く翔を尻目に、
小夜子はいつも涼しげな顔でこう言う。

「別にいいじゃないですか。
 何を着てきたってわたしの自由です。」

小夜子の格好を見て、クラスメイトたちは
口々に「カッコイイ!」「素敵…」「憧れるわ…」などと言う。
小夜子は標準の制服を単に着崩しているだけだ。
しかし、ブラウスの下に何も身に付けていないため、
軽く勃起した乳首がうっすらと見えていた。
大きく開けた胸元に、十字架のネックレスが煌いている。
超ミニのスカートが風に捲られると、
陰毛も尻の穴も丸見えだ。
これがいわゆる、仁元実華のファッション。
こういう格好の女子生徒が校内にちらほら見えた。
奈津希も似たようなものだが、
蓮に止められたのか、ここまで過激な服装はしない。

夕日が沈み、辺りが暗くなり始めた頃…
由梨は塾への道を歩いていた。

「はぁ…」

―――話は数日前に遡る。

「おばあちゃん…
 お願いがあるんだけど…」

由梨は神妙な面持ちで祖母に話しかける。
いろいろ事情があって、
由梨は今祖母と二人で暮らしているのだ。

「なんだい?そんな改まって…
 何か欲しいものでもあるのかい?
 ほら、お金をやるから買っておいで。」

穏やかな感じの祖母…。
夫に先立たれ寂しい生活を送っていたところに
由梨が転がり込んできた形であるので、
由梨の不幸な生い立ちも相まってか、
祖母は由梨のことを溺愛している。
生前夫が残してくれた財産も十二分に残っているので、
由梨には何ひとつ不自由無い生活を送らせてやりたいと
祖母は思っているのだ。

「そうじゃないの…
 実は…」

「ほう…塾かい。
 由梨は偉いねぇ。
 誕生日にだって”あれが欲しい、これが欲しい”
 なんて言わないお前が、
 何のおねだりかと思えば…塾だなんて…」

由梨のお願いは、”塾に通わせて欲しい”というものだった。
由梨は祖母が何でも好くしてくれるのに
それに甘えたりはしない。
こういったお願い事は珍しかった。

「…通ってもいい?」
「もちろんじゃよ。」

にっこりと微笑んでくれた祖母。
由梨の顔にも思わず笑顔が咲いた。

――――しかし、

数日後には由梨は呆然としていた。

「え…
 矢吹くん、あの塾辞めるの?」
「そうらしいわよ?」

奈津希から告げられた事実に、愕然とする由梨。

「由梨、どうするの?
 やっぱ通うの止める?」
「え…」

奈津希も秀と同じ塾に通っていた。
由梨はその事もあってか、その塾に通うことを決めた。
自発的に祖母にお願いした手前、今さら止めることはできない…。

「ちょっと奈津希ちゃん!
 わたしは別に…
 そんなつもりで塾に通おうと思ったんじゃないの!」

かくして、奈津希と同じ塾に通うことになった由梨。
本当ならその塾に、秀もいたはずだったのに…
由梨はともかく、奈津希が塾に通っているのは
意外に思われるかもしれない。
奈津希の家は貧しく本来なら塾に通わせるような
お金はないのだが、妹思いの長兄が

「お前は頭が良いからな。
 良い大学出て、良い会社に就職して、幸せな人生を送るんだ。」

と、身を粉にして働いて得た給料を叩いて
奈津希を塾に通わせてくれたのだ。
もっとも奈津希にとっては完全に”ありがた迷惑”で、
最初のうちは兄の心遣いに感謝し通っていたのだが、
最近ではサボって蓮といちゃつく事が多くなった。
今日も奈津希はサボるらしい。
だから由梨は、奈津希も秀もいない塾へと
ひとり寂しく歩いているのである。
とぼとぼと歩いていると、
いつの間にか辺りはすっかり暗くなっていた。

「亜樹ちゃん…止そうよぉ…」
「そうだよ。他人の家だよ?」

子供の話し声が聞こえ、ふと見てみると、
小学校高学年くらいの女の子1人と男の子2人が
廃墟の前で何やら言い合っている。
そう、ここは有名な心霊スポット”佐田屋敷”である。
屋敷というだけあって、元はそれなりの豪邸だったようだ。
しかし廃墟となった今では、見る影もない…。

「亜樹ちゃん…止そうよぉ…」
「そうだよ。他人の家だよ?」

少年二人――直哉と信太は、少し怯えて佐田屋敷に入るのを嫌がっていた。

しかし亜樹は…

「誰も住んでないって!
 お前ら、それでも男なのかぁ!?」

亜樹は”卯月直哉改造計画”の一環として、
直哉の度胸を鍛えようと
直哉たちをこの佐田屋敷へと連れてきたのだ。

「ほら、行くぞ!」

さすが亜樹。勇敢で男らしい!

「待ってよ、亜樹ちゃん!」
「ちょっと… え…ふたりとも行っちゃうの?
 ウチを置いてかないでぇ!」

後ろの男子ふたりは慌てて亜樹に続いて
佐田屋敷の敷地内に入っていく。
由梨はその様子をポカーンとして見ていた。

「ながせーっ!!」

自分の名を叫ぶ声に、由梨はビクンッとする。
恐る恐る後ろを振り返る…

「や、矢吹くん…」

声の主は秀だった。
秀はとても慌てた様子で、由梨のもとへと駆け寄ってきた。

「はぁ…はぁ… 長瀬…
 小学生の3人組見なかったか?
 男2人と女1人の。
 俺の妹とその友達なんだけど…」

秀は肩で息をしながら由梨に尋ねる。
余程大切な妹なのだろう。
いつもの秀とは一変して、必死さが伝わってくる。

「矢吹くん…。その子たちなら、今、その家に入っていったよ?」

由梨は最近になってようやく秀とまともに話せるようになった。
まだ顔は少し赤くなってしまうが、
以前と違ってタメ口で話すようにしている。

「やっぱり…くそっ」
「あ、矢吹くん待って!」

いきなり屋敷へと駆け出す秀に驚いた由梨は
特に何も考えずその場の勢いで秀についていってしまった。
敷地内の庭はけっこうな広さがあった。
無造作に生い茂った雑草が
この家が放置されて久しいことを物語っている。

矢吹が荒れ果てた花壇の前で何かを見つめている。
由梨は彼の後ろから覗き込むようにそれを見た。

「菊の花…?」

花壇には菊の花が咲いていた。
秋に咲く花ではあるが、この異常気象のなか…
しかも世話をする人もいないはずなのに…
こんな荒れ果てた場所で、何故…

「長瀬…ついてきたのか…。」
「う、うん…」

秀は由梨の肩に手を置いた。

「俺は家の中に入るぞ。
 長瀬は帰ったほうがいいんじゃないか?」
「うん…、でも心配だから…矢吹くんの妹…」

亜樹のことが気になるというのもあったが、
それ以上に、今さら後に引けない気がした。

「…そうか。ついてくるなら、俺から離れるなよ。」

秀は佐田屋敷の玄関のドアノブに手をかける。

ギイィィィ――

悲鳴のように軋む音が響き渡る…。
ふたりの姿は屋敷の暗闇へと消えていった。

「長瀬、足元気を付けて。」
「うん…」

一歩足を踏み入れると、ジャリッという音がした。
床には硝子の破片が飛び散っている。

「あーきー!!」
「あーきー!
 いないのかー!!」

秀の声が虚しく響き渡るも、
返事が返ってくることはない。

「くそっ! 亜樹のやつ…
 どこへ行ったんだ…?」

佐田屋敷の中は思った以上に荒れ果てていた。
まるで怪獣が暴れまわった跡のようだ。

「矢吹くん、このドア開かないよ。」

由梨は近くの扉に手を掛けたのだが、
うんともすんとも言わない。

「ん… こっちもだ。
 立て付けが悪いのか…」

体当たりでもすれば開きそうだが、
その奥に亜樹たちがいるわけがない。
亜樹たちは別の道を行ったはずだ。

「となると…二階か…」

ふたりは階段を見上げる。

「行くぞ。」
「うん…」

階段を一歩一歩上ってゆく。

「暗いから足元に気を付けて。」

足元がよく見えない。
誤って踏み外したら大変なことになりかねない。

「ふぅ…」

無事二階に辿り着いて由梨は一息つく。
秀は微かな明かりを頼りに辺りを見回した。

「部屋がたくさんあるな…
 あーきー! 聞こえたら返事しろー!」

辺りは不気味なほどに静寂に包まれていた。
すると突然! 物陰から何かが飛び出してきた!!

「きゃあ!!」

よっぽど怖かったのか、
由梨は思わず秀に抱き付いてしまう。

「にゃ〜」

由梨を嘲笑うかのように黒猫が鳴く。
自由気ままな黒猫はビクビクする由梨を尻目に
奥の闇へと紛れて消えていった。

「ゴ、ゴメンなさい…」

由梨はパッと身を引き、顔を真っ赤にして謝る。
死ぬほど恥ずかしかった。

「大丈夫か?」
「う、うん…」

秀が微動だにせずクールに徹するから、
由梨はよけいに気まずい思いがした。

「亜樹ちゃん、怖いよぉ…」

直哉は不安そうに亜樹に身を寄せる。
その後ろを信太がついてゆく。

「亜樹ちゃん、そろそろ戻ったほうが…」

不安がる信太たち。亜樹はニヤリと笑う。

「まだ来たばっかじゃないか。
 もっと探検してみよーぜ!」

すると突然! 物陰から何かが飛び出してきた!!

「きゃあ!!」

よっぽど怖かったのか、直哉は思わず亜樹に抱き付いてしまう。

「にゃ〜」

直哉を嘲笑うかのように黒猫が鳴く。
自由気ままな黒猫は亜樹にしがみつく直哉を尻目に
半開きのドアから廊下の方へ出ていった。

「いつまでくっついてんだよ!
 離れろよ、気持ち悪い!!」
「ゴ、ゴメンなさい…」

直哉はパッと身を引き、泣きそうな顔で謝る。
死ぬほど怖かった。佐田屋敷も亜樹も。

「お前、それでも男かぁ!?」
「ゴメンなさい…」

そんなふたりのやりとりを、
信太は不満そうな顔で見つめていた。

「ん… 何か聞こえないか?」
「や、やめてよ亜樹ちゃん!
 脅かさないで…」

直哉の泣きそうな声。まるで女の子のようだ。

「脅しじゃねえよ。聞こえないか?」

そう言って耳を澄ましてみる。
亜樹は背中に冷や汗が伝うのを感じた。

「ホントだ…」

信太の耳にも確かに聞こえる。
―――女の人のすり泣く声が。

「こっちのドアだ。」

ドアの向こうから泣き声が聞こえる…。
誰かいるのは間違いない。
亜樹はドアノブに手をかけた。

「亜樹ちゃん!
 開けないでぇ…」

直哉は目にいっぱい涙を溜めて、亜樹に懇願する。

「開けるぞ!」

―――ガチャッ!!

薄暗い部屋の中に…
女の人がいた。
顔を埋めて泣いていた。

裸の女の人が…。

亜樹はゴクリと息を呑む。
信太の心臓がバクバク言っている…、直哉は泡を吹いていた。

裸の女は声をあげて泣いていた。
しかし、こちらに気付くと…
顔を上げ、目を見開いてギロリと睨みつける!

「で、出たぁああー!!」

3人は一斉に叫び、我先にと逃げ出した。

「キャ―――!!」

亜樹も女の子らしい甲高い奇声をあげ、
必死に走った。

「うわー!!」

信太も叫びながら亜樹の後を追う。

「ふたりとも待ってぇ!!」

わんわん泣きながら直哉も必死に走る。

「亜樹!!」

突然、亜樹の肩を何者かが掴んだ!
心臓が止まる思いがした。
恐る恐る後ろを振り向くと、
微かな明かりに照らされてぼんやりと見えるその顔は…

「秀にぃ!!」

亜樹の肩を掴んだのは、
彼女たちを助けに来た彼女の兄だった。

「秀にぃ…秀にぃ…」

半泣きで兄にしがみつく亜樹を見て、
信太と直哉はホッと胸を撫で下ろした。

「ハッ!!」

亜樹は急に顔を真っ赤にして、
気まずそうに秀から離れる。

「秀にぃ… その人は?」

亜樹は秀の後ろにいる見知らぬ女に
冷たく鋭い視線を送る。

「同じクラスの長瀬だ。
 長瀬がお前らがここに入っていくのを見たって…」
「そうか。で、でもオレは助けてくれなんて言った覚えは…」

平静さを装う亜樹は、変に強がる。
でも、秀はクールだ。

「それより何があったんだ?」
「そ、そうだ!裸の幽霊が…」
「裸の幽霊…?」

秀が聞き返すと、信太と直哉も大きく頷いた。
本当に幽霊が…?
由梨の脳裏になんとも言えない不安が過ぎる。

「なんだ?最近は幽霊まで裸になりたがるのか?」
「秀にぃ…」

イジワルなことを言う兄に、妹は”信じてよぅ!”と目を見据える。

「大丈夫だ。ここには不良が屯してるって噂もある。
 その女もラギャルか何かだろ。」
「そ、そうか?」

兄のもっともな言葉に、亜樹は戸惑った。
そう言えば、あの幽霊には足があった気がする。

「とりあえずここから出よう。」

秀は妹の肩にそっと手を乗せた。
5人が佐田屋敷から出てくる。

「はぁー 怖かったぁ…」

信太は大きな溜め息をついた。
まったく、亜樹ちゃんのせいで酷い目に遭ったと。
直哉はまだ落ち着けていないが、
なんとか大丈夫のようだ。

「みんないるよね?」

由梨が見回すと、5人全員いるのが確認できた。
無事全員戻って来れてホッと一安心だ。

「秀にぃ…」

亜樹は普段とは似つかない声で兄に呼びかける。

「なんだ?」
「その…怒ってるのか?」

亜樹は上目遣いで兄を見つめる。
秀はそんな彼女を優しく抱き寄せた。

「別に怒ってないさ。
 でも心配したぞ。」
「ごめん…」

シュンとして俯く亜樹。
こうしているとまるで女の子のようだ。
――実際、女の子なのだが。

「もうこんなところに来るなよ。
 危ないからな。」
「うん…。」
「さ、帰るぞ。」

そう言って手を差し出す秀。
兄妹は手を繋いで微笑みあった。

「あ、長瀬もありがとうな。」
「え…う、うん。」

ふたりの睦まじい様子をぼんやりと眺めていた由梨は、
突然声をかけられて少し慌てた。
彼女は”家族”というものにあまり良い想い出がなかったから、
秀と亜樹の姿は小説のように儚く映る。

「お前ら、亜樹がワガママ言って悪かったな。」

亜樹の代わりに秀が信太と直哉に謝る。
亜樹は「こいつらに謝ることなんてない!」と言おうとしたが、
グッと堪えて言葉を呑んだ。

「こんなに遅くなって…親が心配してるだろ。
 家まで送るよ。」

直哉はなぜか顔を赤らめて目を逸らし、
信太はなぜかムスッとした顔をした。

「大丈夫です。自分で帰れますから。」
「そうか…。
 じゃあ、気をつけて帰れよ。」

秀と亜樹は手を繋いで帰っていった。
由梨ももう遅刻は免れないが、塾へと向かう。
信太と直哉はとぼとぼと夜の暗闇の中を歩いていた。

「亜樹ちゃんのお兄ちゃん…
 すごいかっこよかったなぁ…。」

直哉がポツリと零した一言。
秀を慕った一言に信太は食いついた。

「そう?僕は別にそうは思わないけど!」

すごい剣幕の信太を、直哉は不思議に思う。

「信太くん、なんか機嫌悪くない?」
「別にっ!!」

信太はあまり秀をよく思っていないようだ。
学校で亜樹が秀の話をするときも、彼はあまり良い顔をしない。

―――嫉妬しているのだ。

信太は、亜樹が好きだから。

「失礼します。」

職員室のドアが開かれ、生徒が入ってくる。
翔の机に来たので誰かと思って顔を見たら、
由梨だった。

「ん…長瀬、どうしたの?」
「当番日誌を…」

由梨は手に日誌を持っている。
そう言えば今日の日直は由梨だった。

「あ、はいはい。ご苦労様。」

翔は当番日誌を受け取る。

「ん…?」

ふと由梨を見ると、彼女はボケーッとして
その姿はどこか愁いを帯びていた。

「先生って、翔って名前なんですよね…」

由梨の口からポツリと出た一言。
“翔”という別に何の変哲もない、ありふれた名前…
“自由に大空を翔る鳥のように”と両親が付けてくれた名前…

「わたしの初めての人と、同じ名前…」
「…は!?」

由梨がうわ言のように言った一言は、
翔の耳にもしっかりと届いていた。
翔は呆気にとられた顔をしていた。

「あわわっ…な、なんでもないです!!
 失礼しましたっ!!」

ハッとして正気を取り戻した由梨は、
顔を真っ赤にして慌てて職員室から逃げていく。

「まったく…最近の女子高生は…」

自分も高校時代からやりまくりだったのに、
そんなことは忘れている。
まぁ由梨も普通の女の子なんだ。
翔はそう思って、別に気に留めていなかった。

由梨にとってその名が…
大空を翔ることを許さず、鳥籠の中に彼女を閉じ込める、
呪いの南京錠であることを―――

翔は気付いてあげられなかった。

少しずつ狂い出した運命の歯車…
ルールとか常識とかすべて脱ぎ捨てたいと欲する少女たち…
すべて異常気象のせいだと、先回りして諦めていた大人たち…
きっかけは結果を導き、結果はまたきっかけとなる。
世界はすべて、連鎖で成り立っているのだから。
そして、ついに悲劇のドミノが始まる。
今まで当たり前だった日常が、音を立てて崩れ去ってゆく…。
誰のせいでもない…
誰もが止めることができて、
誰も止めることのできない大きな流れ…
誰のせいでもない…
誰しもが牌のひとつでしかないのだから。
これはそんな巨大なドミノの、ほんの一部に過ぎない。

夕方――

下校時刻、小学生たちが舗道を歩いてゆく。
亜樹と信太と直哉は、今日も三人で帰る。

「亜樹ちゃんのお兄ちゃん、
 ホントかっこいいよねぇ。
 ウチ、憧れちゃうなぁ…」

夢見る少女のように瞳をキラキラさせる直哉。

「ヘッヘッヘッ…、そうだろ?」

亜樹は変な笑みを浮かべ、惚気る。
秀は亜樹にとって自慢の兄らしい。
和気藹々と話すふたりの横で
信太は相変わらず不貞腐れていた。

「じゃあな。」
「バイバーイ♪」

亜樹は信太や直哉とは家が違う方向なので、
途中でふたりと別れる。
ここからは信太と直哉のふたりきりだ。
異様な沈黙が続く。
信太は何か考え事でもしているのか、
難しい顔をして歩いている。
直哉はそんな信太の横顔をチラチラと見ては
溜め息をついた。

「どうしたの、信太くん。
 最近なんか…」
「直哉はさ、亜樹ちゃんのこと…
 どう思ってるの?」

直哉の言葉を遮るように、信太は言った。

「え…」
「どう思ってるって…」
「好きなの?」

まじまじと見つめてくる信太に、
直哉は思わず顔を赤らめた。

「え… それってどういう意味…?」
「僕さ、亜樹ちゃんが好きなんだ。
 もし直哉もそうだったら…」

少し俯き加減で信太は話す。
直哉もようやく信太の言いたいことが理解できた。

「ウチはそんな…好きとかそんな気持ちはないよ。
 普通の友達だよっ!」
「そ、そうなの?」

パッと明るい顔になった信太。

「うん。」

直哉も笑顔で頷いた。

「そっか…」

爽やかな顔で青空を見上げる。

「…僕さ、明日告るよ。」
「ホント!?頑張ってね。ウチ、応援してるよっ!」

直哉のエールに、信太は決意を秘めた表情で大きく頷いた。

「何だ、話って。」

翌日の帰り道のことである。
“亜樹ちゃんと話がある”と言って直哉を先に帰らせ、
信太と亜樹は近くの公園に寄った。

「どうした?」
「亜樹ちゃん…あの…その…」

至近距離でまじまじと見つめてくる亜樹に、
信太は思わず顔を赤らめ尻込みする。

「何だ?」

「僕、亜樹ちゃんのことが…、す… す…」

亜樹はポカーンとした顔だったが、
信太は恥ずかしさからか目を瞑っていたので
彼女の表情をうかがい知ることはなかった。

「す、好きなんだ!」

ついに言ってしまった…。
信太は心臓をバクバク言わせながら返事を待つ。

「ふーん…」
「…で?」
「亜樹ちゃんは僕のこと…」
――――僕のこと、好き?
「オレはガキには興味ないの。
 …年上の彼氏いるし。」

亜樹はサラリとそう言って、
ニヤけた笑みを浮かべた。
そこにいたのは、もう信太の知っている亜樹じゃなかった。

「え…」

信太は信じられない様子だった。
顔面蒼白で今にも泣き出しそうなほど。
小学生の恋愛なんて所詮こんなものなのかもしれないが、
それでも信太の淡い恋心は粉々に崩れ去っていた。
――――そして、逃げた。

「お、おいっ!信太!!」

亜樹はびっくりして目を丸くする。

「信太…」

何も言わずに走り去っていく信太の背中を見て、
さすがの亜樹も少し罪悪感を覚えていた。

「うわ… 今日も暑いなぁ…」

珍しくひとりで家へと帰る蓮。
今日は授業も早く終わって、奈津希とエッチするチャンスなのに…

「奈津希は塾か…、早く帰って宿題でもしようかな…。」

奈津希と一緒でなくても、考えているのはいつも彼女のことばかり。
奈津希と付き合いはじめて、もうすぐ一年。
記念に買ってくれとせがまれていた指輪は、もう用意してある。
安物だけど、バイト禁止のS高生にとっては痛い出費だった。
でも、奈津希を思えば何の其のである。

「ん…」

ふと目に留まった少年、小学生だろうか…。
腕で必死に目を擦りながら狂ったように走っている。
おいおい、前見ないで走ったら危ないよ…
そして、疾走する少年が交差点に飛び出した瞬間、
大型トラックが少年へと襲い掛かる!!
このままじゃ、あの子はトラックにひかれちゃう!!

「危ない!!」

蓮は思わず道路へ飛び出した!!

キイィィー!!

「ふぁあ〜…
 まったく何で塾ってこんなに退屈なのよ。」

奈津希は「やっと終わったぁ」と伸びをする。
長時間塾にカンヅメにされ、
ようやく終わったと思えばもう夜遅くだ。

「奈津希ちゃん、帰ろ?」
「うん。 あ…」

由梨の鞄に目が留まる。

「由梨、そのキーホルダー可愛いね。」

鞄につけたキーホルダー。
可愛いペンギンのキーホルダーだ。

「ヘヘッ、矢吹くんから貰ったの。」

由梨は幸せそうに笑った。
佐田屋敷の一件のお礼に秀がくれたのだ。

「良い感じね」「そろそろ告られるかもよ?」なんて話しながら、

奈津希と由梨が塾から出てくる。
辺りはすっかり暗くなっていた。

「あ…、携帯、マナーモードのままだ…」

奈津希はポケットから携帯電話を取り出し、
電話やメールが来てないかチェックする。

「あ… 着信アリ…」

蓮からだ…どうしたのかな?
こんなに何回も…

「どうしたの?」
「ん… ちょっと待ってて。
 蓮に電話するから…」

蓮は奈津希が塾だということを知っているはずだから、
こんなに何度も電話してくるなんて、何か大事な用があるに違いない。

――――嫌な予感が胸を過ぎる。

奈津希はその場で蓮に電話をかけた。

「もしもし蓮? どうしたの?
 え…、あ、はい… はい… はい…」

最初勢いよく話しかけたのに、急に弱々しい声になった奈津希。

「え!?」

急に大声を出すから、隣にいた由梨はびっくりした。
奈津希の顔から察するに、何やら徒ならぬ事態のようだ。

「はい…、わかりました… すぐ行きます…」

奈津希は電話を終え、携帯をポケットに仕舞う。

「どうかした?」

と顔を覗き込む由梨の目をわざと逸らして、奈津希は平淡な口調で言った。

「ううん、何でもないわ。
 ちょっと用事が出来たから、今日はひとりで帰って。」

そういい終わるや否や、奈津希は通りかかったタクシーを止め、
それに飛び乗ってどこかへ行ってしまった。

「奈津希ちゃん… いったい何があったの…?」

呆然と立ち尽くすことしかできない由梨。
とにかく何か大変なことが起きたのは間違いなさそうだ。
仕方なく由梨はひとりで暗い夜道を帰ることにする。

「夜道にひとりは怖いなぁ…。」

まあ奈津希が塾をサボるときは結局ひとりで帰るのだから
別にいつものことではあるが、
夜でも煌々と明かりに照らされている駅前と違って、
街灯の少ない住宅街はひとりで歩くには少し怖い。
特に周りに家のない佐田屋敷の辺りなどは、
この暑い夜でも通るだけでひんやり涼しくなるほどだ。
そして由梨は、その佐田屋敷の一画に通りかかった。

「怖くない…怖くない…」

呪文を唱えるようにブツブツと呟きながら
その暗い道を歩いていると…
人とすれ違った。
すれ違いざまにビュッと冷たい張り詰めた空気がうなじを掠め、
由梨は思わず身震いする。
恐る恐る振り返ってその人を見ると、
その女性は… 全裸だった。

「キャ!ヘンタイ!!」

思わず声をあげてしまう由梨。
その声に気付いたのか、裸の女性は由梨の方に振り向いた。

月明かりに照らされた神秘的な裸体に、
由梨は完全に魅せられていた。
裸の女性は、その全てを包み隠すことなく由梨の前に晒す。
粉雪のように肌理細やかで真っ白な肌…
夜の闇に紛れるほどの漆黒の髪…
大きな乳房の突起は、ビンビンに勃起している。
恥毛は髪と同じ漆黒で、そこから太ももへと伝う愛液…
全裸に唯一身につけた十字架のネックレスが、
豊満な胸の胸元に煌いている。
由梨は頭がぼーっとし、めまいのようなものを覚えた。
彼女の…裸の女性の背中に、
この世のものとは思えないほどの美しい純白の羽が見える…。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

「―――ハッ!?」

突然、我に返る由梨。
その瞬間、天使の羽は儚く舞い散って消えた。
由梨は急にガクガクと震えだす。
恐怖でしかなかった。
目の前の裸の女性…
彼女は女子高生。
しかも由梨のよく知る少女だった。

「…如月さん?」

恐る恐る彼女の顔を見る…。
彼女は妖しく笑みを浮かべると、背を向けてまた歩き出した。

「あんな格好で… どこへ行くんだろう…」

由梨は彼女の背中をぼんやりと見つめている。

如月 小夜子
やはり、彼女も…
  ―――――――露出狂か。

関わらない方が良い。
それはわかっているのに…
どうしても足が言う事を聞かなかった。
好奇心とか、そんなものじゃない。
一種の催眠みたいなもの…
頭がぼーっとして、
足が勝手に彼女のあとについていってしまう。

小夜子は夜の街を徘徊していた。
当てもなく、ただストリップのために。
愛液をポトポト落としながら…
すれ違う人に罵られながら…
ただただ、性欲の導くまま…
ただただ、胸の高鳴りに任せて…
そして、その後ろをつけてゆく由梨にも異変が…。
由梨は何となく、スカートの中に手を伸ばした。

「う、うそ…」

信じられなかった。
パンティがグッショリと濡れている…。

あそこが疼く。

由梨は顔を真っ赤にして、
悪夢を振り払うように首をブンブン振った。

夜の公園は、不気味なほどの静寂に包まれている。
小さな公園だ。
昼間子供たちが遊んだり、夕方中高生が下校途中に立ち寄ったり、
それ以外、他に誰かが来ることはほとんどない。
噴水すらないこの公園は、
デートスポットにも不良や暴走族の溜まり場にもならない。

『露出狂に注意』と書かれた古びた看板。

殴られたのか、少しへこみがある。

「あっ… んん…」

公園の暗闇の中で、
青年は少女との淫らなキスに酔い痴れる…。
ピクピクと怯える舌に、
自分の舌を優しく絡め愛してあげる。
唾液を混ぜあい、その甘味を味わう。
必死に抱き付いてくる少女…
そんな彼女の髪を、優しく撫でる。
ああ、愛おしい…
5歳も年下の少女、それもまだ小学生の少女を、
自分の意のままに犯す、この快楽…
居た堪れない…。

少女の服を脱がす。
バンザイをさせてTシャツを脱がすと、
まるで妹の着替えを手伝ってあげているだけの様…
でも、彼には淫猥な気持ちしかない。
もちろん、彼女も同意の上ではあるが。

「…にぃ…」

少女は顔を赤らめる。
露になった胸は、失礼な話
胸か背中かわからないほどだ。
でも、きちんと立派に勃起した桜色の乳首が、
乙女の乳房であることを教えてくれる。
この貧乳が、彼には堪らない…。

「そんな恥ずかしがるなよ。」

そう言って彼女の胸を優しく撫でる。

「ぁ…」

揉んでやると、甘い吐息が漏れた。
そのときの彼女の顔…
小学生とは思えない、なんとも色っぽい表情。
抑えられない衝動に駆られる。

「こっちも脱がすぞ。」

彼は少女のズボンとパンツを一気に下ろした。
誰が来るとも知らないこの公園の片隅で、
少女は愛しの彼に裸体を晒す。
月明かりに映し出された少女の裸は、
普段のそのボーイッシュな姿からは想像もできないほど
艶やかで魅惑的だった。

彼女は小学生…
しかもクラスでも第二次性徴が遅れている方である。
もちろん、陰毛など生えていない。
綺麗な割れ目が、あるだけである。

「亜樹…」

彼は少女の乳首に貪りついた。
しゃぶって、吸って、転がして…
少女がむず痒そうに喘ぐと、
その様子に彼は微笑んだ。

「ぁ… 気持ちいいよぉ… 秀にぃ…!」

秀と亜樹は、今宵も禁断の愛に溺れる…。

「秀にぃ…」
「亜樹…」
「秀にぃ… 好きだっ!」
「俺もだ。亜樹、愛してる。」

ふたりが道を踏み外してしまったのは、
もう一ヶ月以上も前のこと…

「秀にぃ、オレも一緒に入っていいだろ?」

のんびりと風呂に入っていた秀が
声に驚きそちらを見ると、
すっぽんぽんの亜樹が立っていた。

「え… え!?
 ダメに決まってるだろ!!」

予期せぬ妹の登場に、秀は慌てふためく。

「別にいいだろ?…兄妹なんだから。」

秀の言う事なんてちっとも聞かない亜樹は、
平然と風呂の中に入ってきた。
そして秀の浸かっているバスタブに、
無理やり割り込んで入ってくる。
なぜか兄妹肩を並べて湯船に浸かることになった。

いったい何なんだこれは…!?

亜樹は無言でお湯に浸かっている。
小学校六年生といったら、
実の兄妹でも一緒にお風呂に入るのを躊躇うお年頃だろう。
彼女のいつもの性格からすると、
もしかしたらそういう乙女心はまだ芽生えていないのかも知れないが…

見てはいけないと思いつつも、亜樹の方に目が行ってしまう…。
秀と目が合うと、亜樹はヘヘッと意味深な笑みを浮かべた。
―――ドキッとした。
普段クールな秀でも、その冷静さを保てずにいる。

…勃起してしまった。

秀は項垂れる。

亜樹に気付かれていないだろうか…
彼女がちょっと斜め下を向けば、欲情した肉棒が牙を剥く。
獲物を見つけた肉食獣のように涎を滴らせるのも、
もう時間の問題かもしれない。

「秀にぃ、背中洗ってやるよ。」

そう言って亜樹は秀の手を取り、湯船から引き出そうとする。

「お、おいっ!」

お湯から引き上げられた秀は、思わず赤面した。
ビンビンに勃起した兄のペニスを目の当たりにしても、
妹は顔色ひとつ変えず何も言わなかった。
秀を前に座らせ、ボディソープを付けたスポンジで
背中をゴシゴシ洗う。

「秀にぃ、背中おっきいなぁ。」

なんて言われたら、もう秀は激しい自己嫌悪に襲われた。
亜樹は兄とのスキンシップを、裸の付き合いをと、
そう思って風呂に入ってきたのかもしれない。
なのに自分は、そんな無垢な妹に欲情している…

―――――最低だ。

気付けば亜樹はいつの間にか、前を洗っていた。
秀の立派な胸板をゴシゴシと洗う。

「ま、前はいい!自分でやる!」

秀はハッとして、亜樹の手を掴んだ。

「遠慮するなって。
 下も洗ってやるぞ。」

亜樹は何を思ったか、
手にボディソープをたっぷり付け泡立てて
秀の股間を洗い始めた。

「あ、亜樹…!?」

勃起した肉棒を、直接手で優しく洗ってくれる妹。
無理やり止めさせようとすれば、止めさせられたはず。
でも秀にはできない。
秀の理性は、そこまで強くはなかった。
亜樹はその細い指で兄のペニスを愛撫し続ける。
睾丸を揉み揉みしたり…
陰毛を優しく洗ったり…
陰茎を扱いたり…
これは… どう見ても、どう考えても、

―――手コキだ。

小学生の亜樹がそんな事を知っているのかはわからないが…
でも、学校で性教育は受けたはずだから、
男性器を刺激することが何を意味するのか、
亜樹も知っているはずだ。

とすると、これは…

でも、もうそんな事はどうでも良かった。
妹に襲い掛からないようにと欲望を抑えこむだけで
もう精一杯だった。

「…こんなオレの裸でも、少しは興奮するか?」

秀はハッとした。
亜樹は自分の裸を見て兄が勃起したということに
気付いていたようだ。
それはそうだろう…
隣でお湯に浸かっている兄の丸見えの下半身が
いきなりムクッと起き上がったら、イヤでも目に付くだろう。
そして、兄が勃起した――その理由はひとつしかない。
亜樹はビンビンに勃起した兄の肉棒を見ても、何も言わなかった。
兄は自分の裸を見て勃起した。
もしその事実を拒絶したなら、
もう兄妹として、家族として、うまくやっていけないのかもしれない。
酷く兄を傷つけることになるかもしれない。
そう思って、何も言わなかったのだろう。
そして、その気まずさを紛らわすために…この行為。

『妹に欲情しても、それは仕方ないことだよね。
 勃起したおちんちんを見ても、
 わたしはお兄ちゃんを嫌いになったりしないよ?』

亜樹はこんなセリフを言うほど、妹妹した妹ではない。
だから、その代わりの手コキ。
そうに違いない。
秀の妄想は、そう結論付けた。
秀は項垂れた。亜樹に申し訳なかった。

「ごめん…、…兄として失格だよな。」
「そうだな。でも…」

突然の口付けに、秀は目を丸くする。
目を閉じた亜樹の可愛らしい顔…
唇に伝わる柔らかい感触…
妹は、兄に、キスをした。
両親が再婚して、一緒に暮らし始めたばかりの頃は、
亜樹は秀にとげとげしい態度で接していた。
秀を見るとなぜか鼓動が高鳴り、胸が苦しくなる…
そんな甘酸っぱい恋心は、亜樹にはまだ早すぎた。
自分の気持ちを理解できず、逆に兄を邪険にしてしまう。

だが、一緒に暮らしていくうちに
亜樹も薄々わかってきた。
自分は、秀に恋してるのだと。
そして、その気持ちを決定付けたのは、
秀の机の引き出しの中から見つけた”あるもの”たちである。
普通なら忌々しく思うべきそれを見つけたとき、
亜樹は思わず喜んでしまった。
そのとき、亜樹の中から

“オレが恋なんてするはずがない”
“相手は兄、いけないことなんだ”

そんなどうでもいいプライドやモラルは、完全に消え失せていた。

重ねた唇をこじ開け、
亜樹の舌が兄の口内に入ってくる…。

「あ、亜樹!?」

秀は驚き、思わず亜樹を突き放した。
亜樹は口元に垂れた唾液を、舌をペロッと出して舐めとる。

「別にいいだろ?オレたち、血は繋がってないんだ。」

そして、俯き加減でこう続けた。

「…やっぱオレじゃダメか?」

秀は胸がキュンとした。
それと同時にペニスがビクンッとするのが情けないが。
そのペニスが締め付けられるのも気にせずに、
いや、むしろわざと押し付けるように、
秀は亜樹を思いっきり抱き締めた。

「いや、お前が好きだ。初めて会ったときから…」

亜樹はハッとした顔で、恐る恐る秀を見上げる。
兄は優しく微笑んでくれた。

「秀にぃ…」

思わず涙ぐんでしまい、
溢れ出すそれを誤魔化すように秀に抱きついた。
兄妹は互いに包み隠すもののない格好で、
夢中で抱き締めあった。
妹は兄の胸に抱かれ、瞳から流れ出た雫は兄の汗と混ざる。

「…秀にぃって、ロリコンなんだろ?」

亜樹はぽろぽろと涙を零しながら笑った。
こんなに可愛い笑顔を見たことがない。

「机の引き出しに、そういう雑誌がたくさんあった。」

秀は苦笑いする。
隠し持っていた”夜のおかず”を見つけられ、
妹に自分の異常な性癖がバレていたなんて…

ロリータ・コンプレックス―――

秀は好きだった。
その童顔が。
その貧乳が。
その未成熟の幼い身体が…。

だけど彼は、それを頑なに隠し続けた。
好青年を演じ続けた。
もし、誰かに知られてしまったら…
これまで築きあげてきた”矢吹秀”という好青年が、
一瞬のうちに崩れ去ってしまうような気がしたから…。

「…嬉しかった。」

亜樹が呟いた一言に、秀はハッとする。

「もしかしたら、オレにもチャンスがあるんじゃないかって。」
「亜樹…」

兄妹は潤んだ瞳で見つめ合う。
愛おしい… 愛おしい… 愛おしい…
狂おしいほど欲情に駆られる…。

「続きはベッドで… 秀にぃ…」

亜樹は少し顔を赤く染め、背伸びして兄の唇に唇を重ねた。

「亜樹… 本当にいいのか?」
「ああ。」

こうして兄妹は、初夜を迎えたのだった…。

静寂を切り裂くように、少女の卑猥な嬌声が響く。
夜の公園は、兄妹の禁断の愛欲に満ち満ちていた…。

「秀にぃ…にぃっ!」

亜樹は顔をしかめ、敏感な部分への愛撫に耐えていた。
小学生の彼女には、この刺激はまだ早過ぎる。
亜樹のナカに侵入してきた兄の人差し指は、
淫猥な動きで彼女を苦しめる。
妹の悶える姿に、兄の胸は高鳴る。
興奮し、欲情し、はち切れんばかりに勃起した秀の肉棒は
ズボンの中に封印されたままではとても苦しそうだった。

「秀にぃ…あっ、んんぁ…気持ち…んあぅ…いいぞぉ…」

火照った顔は快感に歪み、言葉も絶え絶えになってくる。
それでも亜樹は強がって、兄の股間のモッコリと膨らんだ部分を
ズボンの上から優しく撫でて、こう言った。

「秀にぃ… ああっ…、も、もう我慢でき…ないんじゃ、ぁ…ないか?」

秀は亜樹の秘部から人差し指を抜き、その指をそのまま自分の口に運んだ。
べっとりと付いた愛おしい汁をペロリと舐めとると、その濃厚な味に酔い痴れる。

「挿れてほしいんなら、素直にそう言えよ。」
「なっ…! ち、違うっ!」

我慢できないのは亜樹の方だろうと。
図星をつかれ、亜樹は顔から火が出る思いだった。

「じゃあ挿れてほしくなったら言えよ?」

そう言って亜樹の頭をポンッと叩く秀。
亜樹はぷーっと頬を膨らませる。
兄は妹の股座に顔を埋めた。
秀はまだまだ焦らすつもりらしい。
発育途中の妹のカラダ…
ツルツルの秘部を舐めまわす。
ピクピクと可愛く反応する敏感なそれ。
クチュクチュといやらしい音をたてて、秀の舌が亜樹の秘部を弄ぶ。

「そろそろ良いんじゃないか?」
「秀にぃが挿れたくなったら挿れろよ。」

十分すぎるほど愛液塗れになっても、亜樹はまだ強情だった。
秀はクリトリスの皮を剥き、直接それを舐めようとする…

と、突然――――

「もうムリッ!!」

亜樹はプツンと糸が切れたかのように、秀を突き放した。
秀は軽く尻餅をつく。

「秀にぃ…ゴメン…
 その…さっきから…我慢してたんだけど…
 トイレ…」

内股でもじもじとする全裸の亜樹。
ついに我慢できなくなって”挿れて欲しい”と言うのかと思ったら、
我慢できないのはトイレだと言う。

本当だろうか…?

「トイレって… どっちだ?」
「…小さいほう。」

亜樹は恥ずかしそうに言った。
そわそわした感じが可愛らしい。
もう我慢できないけど”挿れて欲しい”なんて言えないから
苦肉の策でそんな嘘をついたのだろうか…?
どちらにせよ、秀にとっては無問題だ。

「小さいほうか…、なら平気だ。」

秀はそう一蹴して、再び妹の股座に顔を埋める。

「ちょ…!!ホ、ホントに漏れそうなんだっ!」

亜樹は喚きながら秀の頭を押しのけようとするが、
5歳も年上の兄の力には敵わない。

「おしっこ出ちゃうぅ!」

亜樹は強引に喰らいついてくる兄の頭をポカポカ殴り、
押し寄せる快感と尿意を必死に堪えている。

「出して気持ちよくなれよ。」

兄は容赦なくそんな卑劣なことを言うが、
たぶん本当に出すとは思っていないのだろう。
だが、現実問題、亜樹の尿意はもはや臨界点を突破する寸前。
小学6年生にもなってお漏らしだなんて、
プライドの高い亜樹には耐えられない。

「ホントに出そうなんだって!」

亜樹は形振りかまわずそう叫んだが、

「俺の顔にかけてもいいぞ。」

兄はそんな嘲笑混じりの冗談を言った。
そんな兄の言葉で頭に血が昇ったのか、

「おい、どけって!!」

亜樹は怒号とともに渾身の力で秀を突き飛ばした。

「うわぁ!!」

亜樹は最後の力を振り絞って、兄を突き飛ばした。
亜樹がぐずるから相当しがみついていたのだが、
それでも秀は大きく後ろに尻餅をつく。
火事場の馬鹿力とは言うものの、さすがにこれには秀も驚いた。

「イテテテ…」

秀がなんとか上体を起こし亜樹に目をやると、
彼女の体がプルプルと震えている…。

もう… ダメだ……

チョロチョロ…という可愛らしい音とともに、
黄金の汚水が綺麗な弧を描く。
亜樹は失禁してしまった。
兄の目の前で。
それも、全裸で。

「秀にぃ!見るなっ!…見ないでぇ!!」

相当我慢していたのだろう。
勢いよく吹き出てくるそれは、当分止まりそうにない。
亜樹自身もコントロールできないのか、
顔を真っ赤にしてブンブン首を横に振っている。
放物線を描いて地に堕ちてゆき、地面からビチビチと跳ね返る。
こうしてできた黄金の泉も、
やがて土に染みこんでゆき明日の朝までには消えるだろう。

鼻につくこの臭い…
おしっこの生暖かい感じ…

放尿というものにこんなに快感が伴うのだと、

亜樹は初めて知った。

絶頂を迎えたような感覚…

頭がボケーッとして、真っ白になって、

もう何も考えられない…

茫然自失の亜樹の残尿が滴る全裸は、
闇夜に溶ける異様な雰囲気を醸し出している。
秀は放心状態の妹に見とれて、その妖しい雰囲気に魅せられて、
亜樹にかける言葉を見失っていた。

終わった… オレ…

亜樹の身体は桜の花が儚く舞い散るように、
何の前触れもなく崩れ落ちてしまう。

「あ、亜樹!?」

しゃがみこんでしまった妹を心配し、
秀は慌てて彼女に駆け寄った。
そのすぐ横では、黄金の水溜りが異臭を漂わせている。

「秀にぃ…、オレのこと、嫌いにならないで…」

亜樹は涙ながらに訴えた。
秀は上目遣いのその潤んだ瞳に、クラッと逝きそうだ。

「嫌いになんてならないさ。」

秀は亜樹の肩にそっと手を置いた。
亜樹はハッとして顔を見上げる。
ポカンと開いた無防備な亜樹の口…
秀はその口に口付けをし、舌伝いに”愛してるよ”と想いを流し込む。

秀の舌は亜樹の舌に絡みつき、亜樹はもうされるがまま…
キスの味に酔い痴れ、蕩けてしまいそう…。
名残惜しそうに唇が離れる。
キスを終えても、唇と唇の距離は数センチもない。
そんな距離でふたりは見つめ合い、
互いの瞳に吸い込まれそうになる…。
そんな距離で秀は、甘い甘い声で囁いた。

「亜樹がおしっこする姿、すごく可愛かったぞ。」
「なっ…」

亜樹が顔を真っ赤にした瞬間、秀は亜樹に襲い掛かる。
亜樹は押し倒され、お尻にひんやりとした感触が伝わる。
兄はおしっこまみれの妹のあそこに喰らいついた。
尿道口を貪る秀。
ツンとくる臭いと、ほろ苦くてしょっぱい味…
愛液とはまた違う、何とも言えない味に病みつきになりそうだ。

「亜樹のおしっこ、美味しいぞ。」
「バカ…」

亜樹は”そんなの嘘に決まってる”と。
でもそれでも嘘をついてくれる兄が愛おしくて、
トイレットペーパーの代わりに
尿を舐めとってくれる変態の頭を優しく撫でた。

「秀にぃお前… ホントにヘンタイだな。」

亜樹は股座に貪りつき尿と愛液のブレンドを味わう兄に、
涙声で侮蔑的な言葉を浴びせる。

「まぁ、そういうトコ、嫌いじゃないけどな。」

目に涙をいっぱい溜めながら、強がってみせる亜樹。
そんな亜樹が、可愛かった。
兄は妹の股間を責め続ける。
もう尿の味はしない。いつもの愛の蜜だ。
放尿した快感も相俟ってか、
亜樹のカラダはいつも以上に敏感になっていた。

「あぅ…ああっ んんぁ…」

快感に体をくねらせ、幼いカラダから妖艶さを放つ。

「秀にぃ… そろそろ挿れ…、……!!」

ようやく素直におねだりを始めたかと思うと
突然言葉を詰まらせた亜樹。

「どうした?」

秀が亜樹の顔を見上げると、
彼女は驚愕した様子でただ前を向いていた。

「秀にぃ、後ろ…」

亜樹が呟いた一言で、秀はハッとした。
もしかしたら、最悪の事態が起こっているのではないか…
青姦のリスクは秀も亜樹も承知している。
誰かに見つかったらすぐに走って逃げようと、事前に決めていた。
亜樹はそんなことすら忘れて固まっている。
よっぽどマズイ相手と鉢合わせしてしまったのか…。

恐る恐る後ろを振り返ってみると…

大人の女には全く興味のないロリコンの秀でさえ
思わず見とれてしまうほどの美しい女性が立っていた。
それも、一糸纏わぬあられもない姿で…。

月明かりに照らされた神秘的な裸体。
絹のように肌理細やかで真っ白な肌…
魔女に仕える鴉の羽の如き漆黒の髪…

大きな乳房の突起は、興奮し赤く勃起している。
陰毛は髪と同じ漆黒で、
自慰をしながら歩いてきたのではと疑うくらい
滝のように愛液が流れ出ていた。
胸元を飾る十字架のネックレスが、
妖艶な雰囲気を醸し出している。
お、お前は――――!!

「…き、如月!!」

小夜子の右腕は艶やかに秀のもとへと伸びてゆき、
たじろぐ秀を誘惑するかのように、彼のあご下に触れた。

「あら矢吹くん。こんなところで会うなんて、奇遇ね。」

教室で話すときよりも更に官能的な声色だ。
瞬き一つできないほどに硬直している兄を見かねて、
亜樹が小夜子と秀の間に割って入った。

「お姉さん、露出狂なの?」
「ええ。ラギャルっていうのよ。」

小夜子は妖しく微笑む。

互いに全裸で見つめ合う小夜子と亜樹。
この光景を誰かが見れば、
ふたりはそういう関係なのかと勘繰られてしまいそう。
膨よかな乳房と、未成熟の貧乳…
どちらも乳頭が充血し勃起している。
漆黒の陰毛に覆われた秘部と、包む隠すもののない割れ目…
どちらも淫猥な汁で満ち満ちている。
全裸の小夜子と、全裸の亜樹…
ふたりは違うカラダで、同じ妖艶さを醸し出していた。

「ラギャルかぁ… カッコイイなぁ。
 オレもやってみようかな…」

亜樹は暢気にもそんなことを口走っていた。
彼女も完全に、小夜子の魔力に魅せられている。
彼女たちの世界に引きずり込まれてしまいそう…。

「このことは皆には…」

やっとのことで口を開いた秀は、
今見たことを口外しないでくれと懇願する。
この禁断の愛や自分の性癖のことが
明るみに出るのは何としても防ぎたい。

「わかってるわ。お互い様だもの。」

何か含みを持たせるような小夜子の笑みに、
普段はクールな秀も不安を隠しきれなかった。

ボトンッ―――

と、何かが地面に落ちるような音がした。

「誰!?」

小夜子の顔から笑みが消え、
振り返りざまに鋭い視線が向けられる。

「ひぃっ!!」

物陰に隠れていた少女はあまりの恐怖に声を裏返す。
事の一部始終を目撃していた彼女は
あまりのショックに茫然としていたが、
不意に手の力が抜けて持っていた鞄を落としてしまったのだ。

「誰かいるのか!?」

秀の声が聞こえる。
あれほど恋焦がれていた声が、今は呪わしい。

「もうイヤ…」

少女は意を決して物陰から飛び出て、
彼らに目もくれず一目散に走り去った。

「男って、みんな最低よ!!」

と叫びながら号泣して走り去ってゆく背中を、
亜樹はポカンとした表情で、
小夜子は妖しく微笑みながら眺めていた。

「ん… あれは…」

秀は彼女がいた場所に何かが落ちているのを見つける。
そこに落ちていたのは彼女の鞄。
キーホルダーのペンギンが、
物悲しそうな表情で秀を見つめていた…。

『大槻蓮が交通事故に遭った』

担任の翔にその連絡が来たのは、
ちょうど遅めの夕食をとっているときだった。
もはや通例となった裸エプロンで尽してくれる愛妻をほっぽって、
翔は夕食も食べかけのまま、慌てて病院へと向かってしまう。
美優は少しムッとしたが、
翔の表情から徒ならぬ事態なのだと察し、何も言わなかった。

「大槻!」

翔の声が病院の廊下に響き渡る。
もう夜中なので人は疎らで、
恐らく同じように緊急の患者かその関係者だろう。
彼らは翔を一瞥すると、また浮かない表情に戻った。

「す、すいません…」

病院内だというのに
思わず大声をあげてしまったことに翔は恥じ入る。

「緒方先生…」

品の良い小母さんが翔に近寄ってきた。

「蓮くんのお母さん…
 あの、蓮くんは…?」

蓮の母親は翔の母親と年齢もそう変わらない。
翔は実母にすがるような面持ちで話しかけた。
しかし…

翔の質問に彼女は静かに首を横に振る。

「手術は終わりましたけど…
 今夜が山だそうです…。」
「そ、そんな…」

翔は目の前が真っ暗になる。
隔離された集中治療室の前の廊下で、
蓮の彼女が泣いていた。
椅子に座りがっくりと肩を落とし俯いている姿は、
普段の少女を知る者なら目を疑うほどの気落ちぶりである。

「先生か…」

翔に向けられた目は、もう真っ赤に充血していた。
翔は彼女に何と声をかけていいのかわからない。
繊細な硝子細工のように、
ちょっと触れるだけで脆く崩れてしまうんじゃないか…
そう不安になるほど、今の奈津希はぼろぼろだった。

「意識不明の重体なんだって…。」

ポツリと呟く奈津希の声は、
別人のように弱く、か細い声だった。

「バカだよね。
 車にひかれそうになった小学生を守ろうとしたんだって。」
「運動神経鈍いクセにカッコつけちゃってさ。」
「あたし、実は…
 蓮のコト、けっこう本気だったんだけどなぁ…」
「これからも、ずっとずっと一緒にいてさ…
 いつか結婚して…
 先生みたいにラブラブな新婚生活送って…」
「子供は女の子がいいなぁ…
 あたしと蓮の子なら、きっとすごく可愛いよ…」
「それでその子が成長してさ…
 お嫁に行くときなんて、きっと蓮は泣いちゃうんだよ…」
「孫も生まれて…
 そしたらあたしたち、おじいちゃんとおばあちゃんだよ?
 でも、そんな歳になっても
 あたしと蓮はずっとラブラブなんだよ…」
「蓮… 大好きだよ…」
「だから、蓮… 死なないで…」
「栗原…」

翔は彼女の震える肩にポンッと手を乗せる。

「せんせぇー!!」

奈津希は泣きじゃくる子供のように翔に抱き付いた。
もう枯れたと思っていた涙が、また溢れてくる。
奈津希は翔の腕の中で、
いつまでも…いつまでも… 泣いていた。

奈津希は呆然としていた。
涙の枯れた瞳に映るのは、閉ざされた病室の灰色…
蓮の命の灯火が揺らめいては、今にも消えてしまいそう…
意気消沈の奈津希を眺めながら、蓮の母親は翔に語る。

「蓮は家でもいつも奈津希奈津希って…。
 蓮のためにあんなに泣いてくれて…
 あの子は幸せだわ。」

母親の微笑みはすべてを悟っているかのようだ…。
蓮は若くして最愛の伴侶を見つけた。
それだけで十分だった。

「先生、申し訳ないですけど、
 あの子を家まで送って行ってもらえません?
 連絡はしてありますけど、
 ご両親が心配するといけないですから。」

もう夜中の十二時を回っている。
彼女の言うとおり、奈津希を家まで送って帰ることにした。

「嫌だっ!! ここにいる!!」

当然、奈津希はそう言った。
奈津希の気持ちは痛いほどわかる。
もし自分が…
美優が蓮のように生死の境を彷徨っているとしたなら…
でも、翔は教師だ。

「ダメだよ。先生と一緒に帰ろう?」

翔は奈津希を優しく諭した。

「あ… 奈津希ちゃん。」

蓮の母親が彼女を呼び止める。
奈津希は俯いていた顔を上げ、
何処となく愛しい人に似ているその顔を見つめた。

「これ…」

蓮の母は奈津希の手を取り、何かを手渡した。
その瞬間、奈津希の目から大粒の涙が零れる。

「蓮の机の上にあったの…」

翔は奈津希を連れてタクシーに乗った。
奈津希にかける言葉が見つからない…。
彼女は終始無言で、項垂れていた。
蓮の母親から手渡されたのは、指輪だった。
買って買ってとねだってはみたけれど、
こんな高価なものを本当に買ってくれるだなんて思ってなかった。
ただ… 蓮の困った顔が見たかっただけなのに…。
指輪と共に箱に入っていたメッセージカード。
そこに書かれていたのは、愛の囁き…。

 Dear奈津希

     愛  し  て  る

「バカ…」
そう呟いて、指輪をギュッと握り締めた。
“愛してる”なんてカッコつけた言葉、
一度も言ったことないクセに…。
タクシーのラジオから流れる美しいMelody…
奈津希の心を癒すことはできなくても、
“泣いてもいいんだよ”と優しく微笑んでくれる。
そんな不器用なところが、蓮の笑顔とそっくりだった。

  あんなに離れてた
  小さなキミの背が
  大きく見えるのは
  不思議ね すぐ側にいるんだから

  でも触れられないと
  不安になるばかりで
  愛するキミの 震える手で
  ボクの鼓動 感じてほしい

  SinceourStart
  ForeverLove 永遠(とわ)に
  刻み続けることでしょう
  心地好い胸の高鳴り
  ふと恋しくなった瞬間(とき) 耳寄せる

  IwannabeLoved
  あなたとずっと
  このままふたりはeternally
  信じて疑わなかった
  愛しい人と
  ふたりで刻むIknowrhythmWow

『遅くなりそうだから、先に寝てて』

翔から送られてきたそんな飾り気のないメールを閉じると、
携帯の画面に写ったのはふたりのラブラブな写真…。
美優は待ち受け画面の翔を見つめ溜め息をつく。

「翔… どうしたのかな…」

電話を切るなり慌てて飛び出していった翔は、
美優に何の事情も説明していなかった。
電話にも出ないし、メールを打ってもなかなか返事が来ない。
ようやく返事が来たかと思うと、こんな短く素っ気無い文章だった。

“よっぽどのことがあったに違いない”

という翔への厚い信頼と、

“あたしのコトを一番に考えてくれなきゃイヤ”

というジェラシーが葛藤する。
美優は愛されたい願望が強い。

「眠れない…」

美優はベッドに入って数時間、ずっと悶々としていた。

「あ〜もうイヤッ!!」

突然美優は大声を出しベッドから飛び出て、
可愛らしいピンクのパジャマを脱ぎ捨てた。
露になる豊満な胸とセクシーなくびれ、
そしてフェロモンたっぷりの恥毛…
なぜかブラやパンツははじめから身に付けていなかった。

「まったく…
 翔のせいで裸で寝るのに慣れ過ぎたのよ!」

全裸になった美優は再びベッドに横になり、
せいせいと腕を広げて大きく息をする。

「ふぅ…やっぱこれね。」

とスッキリした表情を浮かべた。
でも体がスッキリしたところで
モヤモヤした感じは拭い去れない…。

「翔…」
「………」

気付けば美優は、自分でも知らず知らずのうちに
右手を股間に伸ばしていた。

「……んぁ…」

別にこんなことをするために、裸になったわけじゃないのに…
そうは思いつつも、慣れた手つきで秘部を弄ぶ右手を
なかなか止めることができない。
一度はじめてしまうと、途中で止めるのは難しいらしい。
誰に見られているわけでもないのに、
美優は顔を赤く染めて自慰に耽っていた。

右手が秘部を弄繰り回している間、
左手は張りのある豊満な乳房と戯れていた。
両手が激しく活動する一方で、
顔は天井を見つめ、ぼんやりとした表情を浮かべている。

「一人でするのなんて、すっごい久しぶりな気がする…」

それはそうだろう。
結婚して以来、翔とのセックスを欠かしたことはほとんどない。
せいぜい美優が生理のときとか、そのくらいだろう。
そういうときだって、美優は翔のペニスを手で扱いてあげたし、
お願いされればフェラチオだってしてあげた。

「翔… あんたのせいであたし…
 こんなにエッチになっちゃったわ…」

自分で自分の体を犯しながら、その責任を翔に押し付ける美優。
心なしか表情が色っぽくなってきたのは、
だんだん気持ちよくなってきた証拠だろう。

「うぅ… 翔のを挿れてほしいなぁ…」

指でヴァギナをグチャグチャに掻き乱しながら、
愛する人の肉棒を恋しく想う。

「こんな姿見られたら、嫌われちゃうかな…」

嫌われるだろうな…。

「ゴメンね、翔…」

美優は虚しさと罪悪感を感じながらも、
それを払拭するように自慰を続ける。

「あん… 気持ちいぃ…」

…でも、この虚しい感じはなに?
翔とのセックスの、あの幸福感とは程遠い…

「んぁあ… ぁあっ! ぅんあ…」

翔… お願い…
あたしを犯して…
骨の髄までムチャクチャに犯されたい…
翔の肉棒であたしのイヤラシイカラダを掻き乱してほしい…
翔に犯されるのが幸せ…
翔に犯されるのが気持ちいい…

「翔… しょお… しょお!!」

翔に犯されるのが…

    ―――――あたしの生きがいなのっ!!

「ただいま〜…」

小声で呟く翔の声が、静まり返った廊下に響く。
最近は帰宅すると裸エプロンの美優が出迎えてくれるのが
もはや日課になっていたが、
今日はずいぶんと寂しい帰宅である。

「美優、もう寝てるかな…」

ずいぶんと遅くなってしまった。もう夜中の2時に近い…。
もう美優は寝ているかもしれないから、
翔は廊下の電気もつけず月明かりを頼りに
できるだけ音をたてないよう忍び足で歩いた。

「ん?」

寝室から僅かな灯りが漏れている。
いつも夜の営みをするときにつける淡い色の灯り…
美優はまだ起きているみたいだ。
部屋の中から微かに声が聞こえる。

「翔… しょお… しょお!!」
「ん? なに?」

自分の名を呼ぶ声に、
間抜けな返事をしながらドアを開いた。

「翔… しょお… しょお!!」
「ん? なに?」

急に開いたドアから、ひょっこりと顔を覗かせる翔。

「キャッ!!」

慌ててあそこから指を引き抜く。

――――――…見られた。 確実に!!

「…帰ってたの?」

美優はピクピクと顔を引き攣らせて聞く。
「今帰ってきたんだけど…」
 なに…やってるの…?」

顔を紅潮させた素っ裸の妻を見て、翔は冷や汗を垂らした。
こういうことをしているシーンを目撃したことはこれまでなかったし、
美優がこういうことをするという話は聞いたことがなかった。

「…み、見ればわかるでしょ。オナニーよっ!!」

顔を真っ赤にしながらも威勢良く言い放つのが何とも美優らしいが、
恥ずかしいときほどこういう言い方をする美優のクセを
翔はよく知っている。

「へー… 美優もオナニーとかするんだね。」

翔は努めて平静を装う。
今すぐにでも襲い掛かりたいところだが、
それではあまりにも勿体無い。

「しちゃ悪い!?」

美優はヤケになってそう吐き捨てた。
プイッとそっぽを向いた美優は暫く黙っていた。
頬を膨らませて不機嫌そうにも見えるが、
頬を真っ赤に染めて恥ずかしそうにも見える。

「…ひいた?」

数十秒の沈黙の後、
美優の口から恐る恐る出たのはそんな言葉だった。
嫌われたんじゃないかとビクつく美優が、あまりにも可愛い。

「いや、全然。」

あたりまえだ。
こんなことでふたりの愛が冷めるようなことはありえない。
というか翔はむしろ喜んでいる。
美優の意外な一面を見れて…
そしてまたエッチなイジワルができる…

「っていうか…、どうぞ、続けて。」
「なっ…、なにバカなコト言ってんのよ!!」

美優は翔の一言に顔を真っ赤にして怒鳴った。
“続けて”って…
目の前であたしにオナニーさせる気なの!?
案の定、翔は嬉々とした様子で美優の裸体を眺めている。
もう翔は、愛する若妻のマスターベーションを
観賞する気満々なのである。
ベッドの上で全裸で膝を抱える美優に
翔は舐めまわすような視線を向けていた。
そんな見つめられると… あたし…

「ぅ…んぁ…」

淡い灯りが美優の一糸纏わぬ姿を照らす。
ベッドの上に座る美優は、
愛憎相半ばする翔に全てを晒していた。
紅潮した頬…
視点の定まらない瞳…
豊満な乳房…
赤く勃起した乳頭…
少し涙ぐんでいるようにも見える彼女は、
スケベな視線で自分を見つめている翔のために
自慰をしていた。

「ぁあっ… んぁあ…」

愛液に塗れたヴァギナを右手が犯し、
左手は敏感なクリトリスを弄ぶ。
そんな卑猥な姿に、突き刺さるような視線を送る彼…
その視線が、
痛くて…
熱くて…
そして、どうしようもなく
気持ちいい…

「もっとよく見せてよ。」

翔は美優の股間を覗きこむ。
いつも自分が犯しているその領域を、今日は彼女自身が犯している。
そのあまりにいやらしい光景に、
翔の肉棒ははち切れんばかりに勃起していた。

「翔なんか、ダイッキライ!!」

顔を真っ赤にしてそう怒鳴った美優は、
いやらしい部分を翔によく見てもらえるよう足を大きく広げた。
言葉とは裏腹の行動をする美優が、
もう可愛くって可愛くって仕方がない。
翔は美優が自ら広げた両膝に手を当てて、更に大きく広げさせた。
そしてその股の間に顔を埋める…。
目の前に迫る美優の秘部…
翔は鼻息が陰唇にかかるくらいの距離で
愛おしい淫らな唇を見つめる。
女の匂いが… いやらしい臭いが…
翔の頭をぽーっとさせる。

「可愛いよ、美優…
 とってもエッチで… 興奮する…。」
「イヤ…」

イヤ…
恥ずかしくって… 死んじゃいそう…
イジワルばっかする翔… ムカつく…
なのに… どうして…?
翔に見られながらだと、
どうしてこんなに… 気持ちいいの!?

「ぁあんっ! んぁあ…んぁ…」

美優は自分で陰唇を大きく広げ、
翔にナカまでしっかり見えるようにしてオナニーをしている。
なんて淫猥な姿なんだ…。

「翔… もっと見てぇ!!」

彼女は完全にエムのスイッチが入っていた。
自分で自分のキャラを保てないくらい…。
美優のあまりの淫乱ぶりに、
見ている翔も顔が真っ赤になってしまった。

「美優…」

翔はおもむろに立ち上がり、服を脱ぎ始めた。
トランクス一枚の姿になると、
そのテントの中に住まう獣が垂らした涎が
染みをつくっているのがわかる。

「しょお…」

それすら脱ぎ捨て全裸になると、
美優はその翔の裸体を眺めながら妄想を膨らませ、
より興奮し、指の動きを激しくした。

「しょお… ああっ…」

翔の肉棒を愛おしそうに眺めながら、
美優はひたすら自慰に耽る。
そんな彼女の淫らな姿を見つめる翔は
今すぐにでも襲い掛かりたい衝動に駆られるが、
何とかその衝動を押さえ込んでゴクンッと唾を飲んだ。

「…僕もするね。」

なんと、翔も美優に見せ付けるかのように、
自らの手で自分の肉棒を扱きだしたのだった。

美優のオナニーを見るのは初めてだった。
昔、美優に手コキをされながら
”あたしの裸とか想像しながらこういうことしてるの?”
なんてからかわれたことがあったが、
美優も同じなんだ…
美優も僕のこと考えながらオナニーしてたんだ…
そう思うと翔は居ても立っても居られなかった。

「我慢…んん…できなくぅ…なっちゃったのぉ?
 ぁあっ… 情けないわね…んぁあ…」

自分でペニスを扱きだした翔を見て、
美優は壊れそうな笑みを浮かべる。

「ごめん…
 美優があんまり可愛いから… 興奮しちゃって…」
「フフッ んぁ…嬉しい…」

自分のいやらしい姿を見て翔が興奮してくれることが、
美優にとってはこの上ない幸せだった。

「翔のオナニィ…あっ…んん…
 激しいっ…んぁ…わね…」

はじめて見る翔のオナニーに、
美優も鼻息を荒くして興奮している。
ふたりは互いを想いながら自慰に耽っていた…。

「僕たちってすごいエッチな夫婦だね…」
「オ、オナニー…見せ合うなんて…んぁあ…
 もぅただのヘンタイよっ! ああっ…」

互いに互いのオナニーをおかずにオナニーをする。
互いに相手に恥ずかしい部分を見せ合って、興奮を高め合う。
変な話、セックスよりも興奮する…。
ふたりはそんなパラドックスに酔い痴れていた。

「僕、もう出そうだよ…」
「あたしも…んぁあ…もう限界かもぉ…」
「イクぅ…しょお、あたしイクよぉおっ!!」

頭が真っ白になるような絶頂感の後…

「はぁ… はぁ…」

快感が体中に染み渡ってゆく。
秘部から溢れ出した泉がシーツに染み渡ってゆく。

気持ちいい…――――

翔も逝ったかな…?

「…翔?」

美優が項垂れた顔をあげた次の瞬間!!

ビュッ ビュッ ビュッ!!

化粧をしなくても十分すぎるくらい美しい顔立ちの美優の顔に、
翔の熱いザーメンが飛び散った。
翔はもう、スッキリ爽快♪♪
美優曰く可愛い翔の逝く瞬間の顔は、
いつにも増してムダに輝いていた。

「…ちょっとぉ!?」
「あ、ご、ごめん!!」

顔を真っ赤にして怒る精液塗れの美優に、翔は慌てて謝った。
いつもエッチのときは翔のペースになることが多いが、
それはあくまでもエッチのときに限った話である。

「………」
「………」

美優は無言で翔を睨みながらティッシュを取って、
顔にかかった精液を拭き取る。
翔は苦笑いしてその様子を見ていた。

「………」
「………」

ふたりの間に変な沈黙が流れたあと…

「………プッ あははははっ」

思わず吹き出してしまうふたり。
オナニーを見せ合うなんて…
冷静になって考えてみると、
もう恥ずかしいを通り越して、何だか可笑しくて笑えてくる。

「あはははっ バッカじゃないの?」

美優は自分にオナニーを見せ付けてきたダンナを嘲笑う。

「はははっ
 美優だって、”もっと見てぇ”とか言ってたよ?」

翔も股をおっぴろげて喘いでいた美優を笑った。

「ヘヘヘッ
 ちょっと盛り上がりすぎちゃったわね、
 恥ずかしい…」
「でも可愛かったよ。」

恥ずかしがる美優も可愛いけど、
恥を捨てて乱れまくる美優もムチャクチャ可愛かった。
心のどこかでやっぱり恥を捨て切れてないのか、
壊れかけのあの表情がまた堪らないんだ。

「あはははっ」
「はははっ」

ふたりは大声で笑い合う。
エッチしまくることを前提で借りた部屋だ、
防音設備がしっかりしていて
真夜中に大声を出してもたぶん大丈夫だろう。
よくわからないけど、
何だか可笑しくって可笑しくって…
笑いすぎてお腹が苦しくなるくらいだ。
今日一日の嫌な出来事を忘れるくらい笑った。
突きつけられた現実から逃れるように…

「ふぅ…」

笑い疲れて漏らした溜め息。
翔の顔に浮き出た一瞬の憂いを、美優は見逃さなかった。

「…何かあった?」

美優は大きな綺麗な瞳で翔を見つめる。

「………」
「…あたしが癒してあげるわ。」

美優は翔を胸に抱き、聖母のように慈しむ。
いつの日も美優は、美しく優しかった…

秋という季節は、人々の記憶から失われつつある。
このまま永遠に蒸し暑い季節が続いていくのではないかと、
誰もが危惧していた。
諸外国でも異常気象が続き、
世界規模の問題になっているらしい。
早急に対策を練らなければ、
いずれ大変なことになるかもしれない。
でもこの地に生きる人々は、
今、目の前にある現実を生きていくだけで精一杯だった。

「この度は… ご愁傷様でした…。」

深々と頭を下げた翔の目から、涙が零れ地を濡らす。
結局何もできなかった…
自分の無力さに心がズキズキと痛む。
この日、大槻蓮の葬儀がしめやかに執り行われた。
弔問客の中にはS高の生徒たちも多かった。
淡々と続く読経の中、
そこ彼処からすすり泣く声が聞こえる。
故人を悼む声は、彼の耳に届いているだろうか…。

棺に納められた蓮の遺体…

端整な目鼻立ちの蓮の顔は
とても安らかで、眠っているかのようだ。
でも、その瞼は二度と開くことはない。
相変わらず奈津希は放心状態だった。
他の同級生たちが泣いている中、彼女は涙ひとつ見せなかった。
蓮と同じような顔色をしていて、立っているだけでやっとのよう…。
そんな親友を由梨は心配そうに眺めていた。
蓮の棺に納められた美しい弔花を見て、
由梨は佐田屋敷の庭に咲いていた菊を思い出す。
秀もこの葬儀に参列しているのだろうか…。
彼とはあれ以来口を利いていない。

もう… 顔も見たくない…。

「あの… お母さん…」

この日初めて奈津希が口を開いた。
蓮の母親に話しかけたのだ。

「…キスしてもいいですか?」
「ええ。蓮もきっと喜ぶわ…。」

哀愁漂う母の微笑み…
彼女は奈津希を愛娘のように優しく見つめている。
奈津希は蓮に、最後のキスをした…。

「蓮… さよなら…」

____________________________________________________________

「…キスしてもいいですか?」
「ええ。蓮もきっと喜ぶわ…。」

奈津希の唇が、蓮のそれと重なる…。

「蓮… さよなら…」
「奈津希」
「え…」

もう二度と聞けないと思っていたその声…
奈津希は思わず振り返る。

「う、うそ!?」

そこには、蓮が立っていた。
奈津希は目をパチパチさせ、口をあわあわさせ、
相当ショックを受けていた。
そんな奈津希を、蓮は思いっきり抱き締める…。

「奈津希のキスで、目が覚めたんだ。」

蓮は奈津希から離れると、
決意を秘めた表情で母親に言った。

「母さん…、僕、奈津希と結婚するよ。」

呆然としている奈津希に、
次々に「おめでとう」と声をかけてくる友人たち。
鳴り止まぬ拍手の中で、
奈津希は「あ、ありがとう…」と返事をした。
事態が呑み込めない奈津希…
でも、隣に蓮がいて…笑っている…
それだけで、十分だった。

「蓮のバカ…。あたしがどれだけ悲しんだと思ってるのよ!!」

と叫んでみたりする。
蓮は「ご、ごめん…」と頭を掻いた。
そんな当たり前だったやりとりに、幸せが溢れている。

「蓮!!」

奈津希は思わず蓮に抱きつこうとした。
彼女の目から、涙が零れ出す。

しかし無情にも…

抱きついた瞬間、蓮の姿は儚く消えた…。

ひとり取り残された奈津希は、

混沌とした闇の中でポツリと呟く。

「そっか…。
 あんた、死んだんだよね…。」
「――――――夢…か…」

気付けば奈津希はベッドの上にいた。
蓮の葬式から、もう3日くらい経つだろうか…
あれからほとんど何も口にしていない。
ずっと自分の部屋に閉じこもったきりだ…。

「そりゃそうよね…」

幸せな悪夢から覚めた奈津希は、ぼろぼろと泣いていた。
いっそあのまま夢が覚めなければ良かったのに…
最後のキス…
蓮の唇は驚くほど冷たかった。
残されたのは、虚無感だけ…
奈津希はパジャマ姿のままベランダに出てみた。
昼下がりの太陽が眩しい…
彼女の家は貧乏だ。
狭くてぼろいアパートの二階…

「ここから飛び降りても…
 とても死ねそうにないわね…」

少女は、空を見ていた。
何の意味もなく、ただボーっと…。

「蒼い空に…雲は流れ…かぁ…。」

あの一件以来、信太は学校を休んでいる。
トラックにひかれそうになったとき
偶然通りかかった高校生が咄嗟にかばってくれたので
ケガは軽傷だったのだが、
その高校生が帰らぬ人となってしまった。
そのことで相当ショックを受けていて
当分メンタルケアが必要らしい…。
命の恩人の葬儀への参列は断られた。
向こうの遺族に怨まれて…ということではない。
遺族、とりわけ故人の母親はとても優しい人で
決して信太や信太の両親を責めたりはしなかった。

「葬式にはいらっしゃらないでください。
 お互い辛いだけですから…」

その優しい言葉の裏には、
参列すれば親族や弔問客たちから罵られるであろう
信太と両親への気遣いが見え隠れしていた。

「ただ… もしよろしければ、たまにでいいので…
 墓参りでもしてやってください…。」

「信太は今日も休みなのか?」
「うん。そうみたいね…」

ここのところ信太が休んでいるので、
亜樹は直哉とふたりで登下校している。
この日も直哉と一緒に学校へと向かっていた。

「まったく、どうしようもないな。オレにフラれたくらいで…」

亜樹は事故のことを知らない。
彼女は信太は自分にフラれたショックで
登校拒否をしているのだと思い込んでいた。
秀は当然蓮の葬儀に参列したが
蓮の母親の配慮のお陰で、信太と鉢合わせすることもなく、
蓮が命を犠牲にして守った小学生が
実は信太であるということを知る者は少ない。

「あ、あのさ、亜樹ちゃん…」

突然、直哉の足が止まった。

「なんだ?」

少し顔を赤らめている直哉を、亜樹は不思議そうに覗き込む。

「亜樹ちゃんは、女の子…なんだよね?」
「は? 当たり前だろっ!!」

オレは女だ!!
亜樹は確かに男みたいな性格だが、
それでも自分が女性であることを重々承知している。
何より女に生まれなければ、
秀と結ばれることもなかっただろう…。

「何なんだ、お前…」
「え、あ、ううん… 何でもない…」

亜樹は直哉に疑いの目を向けていた。
いったい今までオレを何だと思ってたんだと…。

「あ〜 ウチも女の子に生まれたかったなぁ…」

直哉は空を見上げてそう言った。
暫く歩いていると、直哉は急に寒気に襲われた。
道路の向こうから異様な空気が伝わってくる…。
恐る恐るそちらに目をやると、
その瞳に映った光景に、直哉は思わず息を呑んだ。

「な、なにあれ…。もしかして最近流行の…」

朝の通勤通学の時間帯だけあって、大通りは混雑していた。
行きかう人々は肩をぶつけても謝ることもなく、
急ぎ足で職場や学校へと向かってゆく。
そんな中、その一箇所だけはすっぽりと空いていた。
その妖しげなオーラを放つ女性が道を歩くと、
モーセの前で海がふたつに割れるように、
彼女の前で人の波が割れ、道が開けていた。

「あ!! この間のお姉さんだ…」

亜樹はなぜか嬉しそうな顔をする。

「亜樹ちゃん、あの人知ってるの?」

「ああ、ちょっとな…。やっぱ憧れるなぁ…」

亜樹が浮かべる不敵な笑みに、

直哉は不安を感じざるを得なかった。

「奈津希ちゃん、今日も休みかな…」

由梨は黒板の上の掛け時計を見上げた。
もうすぐ授業が始まる。
この時間に教室にいないということは
奈津希はおそらく今日も欠席だろう…。

「あれからもう一週間もたつのに…」

最後に奈津希を見たのはもう一週間も前だ。
それ以来メールをしても返事がないし、
電話をかけても繋がらない。
おそらく電源を切ったままなのだろう…。
由梨は今日の放課後にでもお見舞いに行こうと考えていた。

ガラガラ…と教室のドアが開く。
もう授業が始まる時刻なので
教師が入ってきたのかと思い、そちらに目をやった。
一瞬にして由梨の表情が凍りつく…。

「如月さん…!」

ドアの近くにいた女生徒は思わず声をかける。

「ど、どうしたの… その格好…」
「フフッ…。カッコイイでしょう?」

小夜子の妖しげな笑みに、女生徒の顔は引き攣った。

「え… そ、そうね…。素敵よ、とっても。」

動揺を隠し切れない。
制服の自由化以来、小夜子は担任から注意され続けながらも
過激なファッションを止めず、
それどころか徐々にその過激さを増していた。
いつかこんな日が来るのではないかと、誰もが思っていただろう。

しかしまさか…

まさか本当にこんな格好で登校してくるとは…

近寄ってくる小夜子から、由梨はとっさに目を逸らす。
はっきり言って、関わりあいたくなかった。

「そんな顔をしないで…」

この妖艶な笑みに、呑み込まれてしまいそう…。
たじろぐ由梨の耳元で、そっと囁いた。

「あなたも脱いでみたら?」

不気味に微笑む小夜子に、背筋がゾクッとした。

「…気持ちよく、なれるわよ?」

キーンコーンカーンコーン…

チャイムが虚しく響き渡ると、
担任の翔が教室に入ってきた。
蓮の葬式以来、このクラスにはあまり活気がない。

彼は教壇に立つと、その異様な雰囲気に威圧された。

「みんな、ちょっとしんみりし過ぎだよ…。
 大槻のことは残念だったけど…」

そう呟き、教室を見回すと…。その目が…見開いた。

「き、如月…?」
「どうかしました?」

名前を呼ばれた少女は、嘲るように微笑を浮かべた。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

「いや…、何でも…ない…」

翔は俯いた。
現実を見るのが、恐かったのかもしれない。

教卓に置かれた名簿を持つ手はブルブルと震え、
“如月小夜子”という字が歪んで見える。

そして、恐る恐る再び顔を上げる。

小夜子の背中に、この世のものとは思えないほどの美しい純白の羽が見える…。

「―――ハッ!?」

突然、我に返った瞬間。その羽は儚く舞い散って消えた。

「き、如月!!服はどうしたの!?」

少し嬉しそうな顔をした小夜子は、
ゆっくりと立ち上がった。

「自由って言われても、何着てくればいいかわかんなくて。」

今、彼女の全てが見てとれる。

粉雪のように白く繊細な肌が、美しい…。
大きな乳房の突起は、興奮し赤く勃起している。
陰毛は髪と同じ漆黒で、そこから太ももへと伝う愛液…

「何着てきても、先生怒るから…。」

胸元を飾る十字架のネックレスが、
妖艶な雰囲気を醸し出している。

「だから、まぁ…何も着てかなければ問題ないかな…なんて。」

翔は「はぁ…」とため息をつき、
見下した目で嘲る小夜子のもとへと歩み寄る。

「…もういいよ。
 如月… 僕と一緒に、職員室へ行こう。」

着ていた背広を脱いで小夜子の背中に被せた。

「いいね?」

小夜子の顔を覗き込むようにして見つめそう言うと、
彼女の返事を待たずに、
肩を抱いて教室の外へと連れ出そうとする。

「みんな、とりあえず自習してて…」

生徒たちに残した言葉は力無く、
教室の空気を一層重くした。
教室のドアに手をかけた瞬間、
翔はハッとして、猛烈な冷や汗をかいて固まった。

「こ、この状況は…!!」

翔の脳裏によぎるあの日の光景…
すべての事象が、7年前と酷似している…!!

するとそのとき…
ガラガラ…と教室のドアが勝手に開いた。
翔が開けたのではない、
廊下側から開かれたのだ。
もう授業が始まっている。
誰もいないはずの廊下…

そこに佇んでいたのは…――――――

「く、栗原…!!」

翔は思わず絶句した…。
奈津希はなかなかスタイルが良い。
胸も大きく魅力的だ。
その柔らかな膨らみの先っぽで、
桜色の乳頭が己の存在を主張している。
そしてそこから下へいくと、
可愛らしいおヘソ、そして…
顔に似合わず淫猥な唇…
それを覆う恥毛がなんともセクシーで…
奈津希の背中にも
この世のものとは思えないほどの美しい純白の羽が見える…。
全裸で凍える奈津希を蓮が抱き締めるかのように、
温かく包み込む優しい天使の羽…

「な、奈津希ちゃん…」
「栗原まで… どうしちゃったんだ…!?」

由梨も翔も驚愕し、
瞬きさえも忘れて目を見開いていた。
クラス中にどよめきが広がる。

「あたしは蓮以外、何もいらない。
 この指輪だけで…もう十分よ…」

左手の薬指にはめた蓮の形見を見つめる優しい眼差し…
全裸の奈津希は、
ただ… 愛おしい人の温もりを感じる。

職員会議―――――――

「緒方くんのクラスで、全裸で登校した生徒がいるそうだ。」
「ついにうちの学校にも出ましたか…。」
「まあ、今流行ってますからねー、ラギャル。」
「どうするのかね。認めるわけにはいかんだろう。」
「…犯罪ですからね。」
「だが、公然わいせつ罪やわいせつ物陳列罪は
 撤廃に向けて議論が進んでいる。」
「まったく、変な世の中になったものだ…。」
「しかし、教育上良くないだろう。
 PTAは何と言っている?」
「禁止するのは、子供の個性の否定に繋がる、だそうだ…。」
「馬鹿げたことを…」
「今の時代、何事も”強制”とか”禁止”とか
 そういう言葉は嫌われますからねー。」
「…教育委員会はどうだ?」
「各校の判断に委ねる、と。
 厄介事はこっちに回すな、ということでしょう。」
「校長、どうします?」
「…現状維持だ。
 緒方くん、生徒の方から自主的に止めてくれるよう促してくれ。」
「そ、そんな…」
「なに、案ずることはない。原因は異常気象だ。
 冬になれば流石に気温も下がり、嫌でも服を着てくるだろう。」

―――――しかし、気温は上がる一方だった。

全裸で登校するのは
小夜子と奈津希だけではなかった。
一人また一人と裸の女生徒が増えていき、
数日のうちに学校中に広がっていった…。
驚くことに、いわゆる美人や可愛い娘だけが脱いでゆき、
自分の顔や体に自信のない娘たちは決して脱がなかった。

しかし、例外がひとり…。

由梨は制服を着ていた。
頑なに脱ぐことを拒んだ。
教室中に裸の女子が満ちている…。
もはや現実ではないみたいだ…
悪い夢に違いない…
思えば、すべてはあの日から始まっていたのかもしれない…。
あの紅い瞳が、すべてを狂わせた…

そう… それは、露出狂の少女たち

まるで… 教室中に西濱綾がいるみたいだ。

フフッ…
    フフフフッ…
 フフフッ…
    フフフフッ…

天使たちの笑い声がする…。

「うわーーー!!!!」

12月31日―――――

太陽が燦々と照り付ける季節は終わりを知らず、
蒸し暑い夜に行われた紅白歌合戦。
本当なら、美優とコタツにあたりながら…
脚を絡ませあったり、イチャイチャしながら…
いつまでも、幸せな時間が流れているはずだった。

でも…
彼は今…
世界中に自分しか存在しえないかのような
深い孤独感に苛まれている。

「美優…」

ふとテレビに目をやると、
そのアーティストが歌う姿は、あまりに神々しい…
一枚、また一枚と…
身に纏う衣服を脱いでゆく、その姿…

仁元実華が歌うこの曲… ―veil―

西濱綾のような紅い瞳に…
如月小夜子のような長い漆黒の髪…
一糸纏わぬ姿となった彼女の胸元には、
十字架のネックレスが煌めいていた。
後から聞いた話では
スタッフたちが実華サイドに買収されていて

映像が遮断されず、そのまま放送されたのだという…。

  定められた道徳(ルール)では
  生きることも辛すぎて
  夜の寒さ氷河期のよう
  こぞって服を着た

  生まれたとき誰もみな
  裸のまま泣き喚く
  福を求め服を重ねて
  化粧をしてシンデレラ

  仮面舞踏会みたい
  哀しく微笑みあって
  冷静に着飾るけれど
  誰もが怯えて warwar

  仮面舞踏会みたい
  可憐に舞い踊り散る
  謎なのはお互い様ね。
  本当の姿は veil

  煌いてる星達も
  所詮ただの天象儀
  誰も知らぬ果ての何処かに
  エセ白馬の王子様

  仮面舞踏会なんて
  温もり伝わらない
  気持ちよく喘いでたけど
  虚しい偽り ahah

  仮面舞踏会なんて
  孤独を重ねゆくだけ
  愛想笑い、上手く出来てた?
  本当の笑顔は veil

  護ってるのは心
  硝子のようだけど
  全ての服を脱ぎ捨てて
  化粧をとり魔法を解く

  仮面を捨てて生きたい
  本当の私を見てて
  冷静に着飾る人よ
  飾りは要らない ourhour

  全て脱ぎ捨ててみたい
  醜く舞い踊り生きる
  目を逸らさないで見ていて…
  今脱ぐよ 要らない veil


【学校】プールの授業のあと【教室】

$
0
0

高校生のとき俺はクラスでイジメラレっこというわけではなかったがみんなからちょっかいを出されるイジラレっこだった。そんな高3の夏事件は起こった。 
かったるいプールの授業も終わりイヤな予感を感じつつも更衣室で着替えをしているといつものごとく友達の数人がお前の包茎ちんこ見せてくれよといいながらスッポンポンにさせられ笑われるのまではよかったが、いつもと違って友達数人に担ぎ上げられあろうことか隣の女子更衣室にフルチンのままむりやりおしこまれてしまったのでした。
その瞬間女子たちの間から悲鳴が鳴り響いたが、外で男子が戸を押さえて僕が逃げれないようにしてあったり、僕が裸で1人ということもあり状況が飲み込めたみたいですぐにクラスの中心的な女子たちがタオルで体を隠しながら数人が寄ってきて、「私たちの裸見たんだからお前も手をどけてちんちんみせろ。」といわれあせってたんで裸なんかみてないと応戦すると今度は力ずくで女子たちが襲い掛かってきてあっという間に手足の自由が利かなくなり隣のクラスの女子も含め50人の女子の前で御開チンとなってしまった。女子からは「噂どうりの包茎ちんちん。」や「ヤッダー。見られてるだけなのに勃起してなーい?変態。」とか散々なことをいわれた挙句、まだ許してもらえず、「オナニー見せてくれたら先生にも言わないし、ここからだしてあげる。」といわれたのでついに恥をしのんでみんなの前オナニーをしてしまったのでした。
もうまじめな子や結構気に入ってた子にもじろじろ見られたのでチョー恥ずかしかったが不覚にも結構大量にザーメンをぶちまけてしまった。
もうそのあと1日中クラスは男子も女子もこの話題で持ちきりで放課後になるとまだ見たりない女子数人とさらにまた別のクラスの女子も数人参加し露出癖のある男子2人を加えまた再び男3人のオナニーショーが始まり大いに盛り上がってしまった。

【フェチ】はやてのように♪ だぶんグル♪ 【マニア】

$
0
0

小学校の5年の終わりだったか6年になっていたか、ちょっと覚えてないが、
近所に住んでいた同級生の里美(仮名)って女の子とすごくエロい思い出がある。
里美はわりとボーイッシュな女の子で、髪の毛は別にお決まりなショートカットと
いうわけでもなく、性格も乱暴というわけではなかったが、うちの中で遊ぶより、
男子と外で遊ぶほうが好きな、活発な女の子だった。
俺とは小学校入学時から同じ登校班で気心が知れていたが、彼女は背がかなり高く、
女子ではクラスで一番で、俺もチビというわけではなかったが、それでも十センチは
差をつけられていて、一緒にいると、いつも俺の方が弟に見られがちだった。

そんなある日、ごく近所の公園でふたりでサッカーだかバレーだかして遊んでいたら、
雨上がりだったために服があちこち砂と泥まみれになってしまったことがあった。
「このまま帰ったら怒られるよなー」と、本当に何気なく俺が言ったら、
里美が「じゃあK(俺のこと)、今、うちに誰もいないから、お風呂使う?
タオルとかあるよ」って言ってきた。

俺はあまり深く考えずに「じゃそうする」って言って、彼女の家に行き、
里美が湯船にお湯を入れ終わるのを待つと、さっさと風呂場の脱衣所に入った。
俺が脱衣所で服を脱ぎだすと、なんと、まだそこにいた彼女は何の疑問も
ないかのように、上着を脱ぎ出したのだ。
こいつ、まさか俺と一緒に入るつもりなのか?と、俺はびっくりして、
コイツこういうことに抵抗ない女?と思った。
親戚の同じ歳の女の子にいつも父親や弟と入ってる子がいて、
その子も男と入ることに抵抗がないタイプだったので、なんとなく里美も
そうなんだろうなってことはわかった。
でも最初はやっぱり恥ずかしかったので、「ちょっと待て」とか言おうかと思ったが、
子供ながらにスケベ心はしっかりあり、自分も里美に裸を見られてしまうという
羞恥心に、見事にw打ち勝ったので、黙っていることにした。

すると里美の方からまったく平静な声で、「(親が)いつ帰ってくるかわかんないし、
面倒くさいから入るの一緒でいいよね?」と言ってきた。
俺がちょっとうわずって「ああ、うん」なんて答えながら、しっかり里美が上着から
下着を脱いでゆくのを横目で追っていた。
やがて俺に背を向けていた里美がパンティをおろして、いきなり目の前に生尻を
あらわにした。
…が、実はこの段階ならば、ずーっと前、小学校2年か3年だかの時の、
夏のプールの授業の時、着替えで見たことがあったのだ(とにかくあまり隠そうと
しない子なのだ)。
あの時はお尻だけで、前や胸を見る事は出来ずに悔しい思いをしたので、今回こそ…と、
俺の幼いスケべ心に火がついた。
(今考えるとどうせ一緒に風呂に入るんだから、そんなに焦る必要はなかったんだが)
そして里美はさっさと全裸になると、手ぬぐいを持って風呂場に入っていった
(背を向けていたので、まだ大事なところは見えなかった)。
俺も慌ててぜんぶ脱いで、一応チンコは手ぬぐいで隠しながら後を追った。

この家の風呂場は結構大きく、子供二人なら十分だった。
もちろんと言うべきか、俺は里美の横にわざとらしく並んで、横目で彼女の裸を
チラ見しようとしたが、垂れた大き目の手ぬぐいのせいで、里美のおっぱいと
アソコはきわどいラインで隠れて見えなかった。
が、鎖骨から乳房に至る稜線は何となく見えていて、コイツ、なんだか結構
ムネふくらんでるじゃんと思った。
実際、近頃だんだん暖かくなってきていて、ここのところ里美も外で遊ぶ時は
薄着になってたいので、服の上からも胸のふくらみが気になってはいた。
背が高いせいか発育がよく、クラスの女子たちの中では早くも5年生の
初めくらいから、圧倒的に凸部分がはっきりしていたと思う(あくまで
小学生レベルの比較でだけど)。

里美はさっさと自分で洗面台に座り、「これがシャワーで…」などと説明し、
ますます俺のお目当ての部分が見える角度から遠ざかった。
助平心が脳内で暴走し、焦りくるった俺は「えっ?どれ?見せて」とかわざと
聞き返して、シャワーヘッドのついている所、つまり彼女の裸がすぐそばに見える
場所まで歩み寄った。
俺が近くに寄ると里美は「じゃシャワー出すよー」と言って、コックをひねって
お湯を出した。
そして手ぬぐいを傍に置くと、何とも無しにまったくのノーガードで俺の方に
向き直ったのだ。

……見えた。
特に強引な動きをしなくても、目の前にずっと見たかったものがすべて見えた。
最初は単純に、これが里美のおっぱいとアソコなんだ…と思い、次に、
大げさに言えば夢にまでみた瞬間が実現したことに感動していた。
里美はまだ小学生でありながら、既に胸があらわに膨らんでいることに驚いた。
乳首は綺麗なピンク色で、これも突起が既に大人のような形になりかかっていた。
ずっと以前、先ほど触れた同じ歳のいとこの女の子と風呂に入った時に見た裸とは、
まったく別物だった(小3の時くらいだから当たり前だが)。
エロ本なんかはこの年頃のガキらしく、よくコンビニでこっそり見ていたが
(買うような根性はなし)、里美のおっぱいは、エロ本のメインを張るような、
大人の巨乳のモデルさんにはもちろん敵わないが、わりと胸が小さめのモデルさんとは
同じくらいか、ひょっとしたら里美の方が勝ってるんじゃないかという気がした。

さらに、彼女の股間のワレメに、(エロ本のモデルと比べると)わずかとはいえ、
黒い毛があったことに、まさに目の玉が飛び出るほど驚いた。
俺は思わず息をゴクリと飲んでしまい、おそらく目つきも相当おかしくなってたので、
里美に不信な目で見返された。
「…どうしたの?」
と、里美は俺に聞いてきた。
あわてた俺は、
「いやさ、あのさ、おまえ……股に毛が生えてるんだなって」
と、ついストレートに思ったことを口にしてしまった(子供だ…)。
里美は俺のその言葉に眉をひそめると、ぽそりと「Kってエッチだぁ…」と、呟いて、
サッと手のひらで股間を隠した。
だが、これは俺をスケベだと非難して怒ってるというより、どうやら小学生の
女の子にとっては、股間の毛の存在を指摘されたことが恥ずかしかったらしい
(これは男でもよくある)。

「いや、だって、あるんだし、毛」
なんて、俺がしどろもどろになって言い訳すると、里美は、
「いちいち言うことないじゃん、そんなの」
と言って、ますます機嫌が悪くなり、また背後を向いてしまった。
その瞬間、里美の胸が揺れる(今、大人目線で考えればそこまでスゴイものでも
なかったが)のを俺は見逃さなかった。
そしてちょっとの間、気まずい空気が流れたが、俺としては、まだぐだぐだ
言い訳をしつつ、とりあえず里美が後ろを向いたため、彼女のお尻をじっと見て、
昔より大きくなってる…なんて考えていた(男子ってつくづくアホでスケベですね)。
その時、背後を向いた里美が俺の言い訳をさえぎって、「あのさ」と言った。
「え?」
「…Kはまだなの?」

里美のその言葉に、まだって、あそこの毛のことか…と、すぐに察したが、
俺がそれには答えたくないので黙ってしまった。
すると里美は再びこちらを向きなおり(今度は彼女も大事なところは手ぬぐいで
隠していた)、
「いいじゃん、見せてよ。あたしのも見たんだし、ずるい」
と言うと、俺の股間を隠している手ぬぐいを、グイッと掴んできた。
自分勝手なもので、俺としては大事な所を女子に見られるなんて冗談じゃないと
思った。
だがこの時、まだ腕力では里美にとても敵わず、それもほとんど不意打ちだったので、
俺は抵抗する間もなく手ぬぐいを取られてしまった。
まだ当時の俺は、無毛包茎の子供チンコで、なおかつ同級生の男子たちと比べても、
チンコの大きさには全然自信がない方だった。
夏に友達何人かと市営プールなんかに行って、フルチンになってふざけたりしていても、
みんな無毛の子供チンコとはいえ、いつも俺のが一番小さい感じだった。

そして案の定というべきか、里美は俺の股間を見た瞬間、プッと噴き出し、
「あ、まだなんだ…」と、かるく笑った。
そして、さっきの「毛」の指摘に対する仕返しのつもりか、
「ね、Kのって、あたしの弟より小さいみたい」
などと、余計なひと言を付け加えた。
里美の弟は当時まだ小3くらいだった。その弟と何度か会ったことも、
遊んだこともあるが、背はもちろん俺よりも小さく、歳相応だったと思う。
この年代の学年差は大きく、たった一つ年下なら、まったく子供扱いしたり、
されたりしていたものなので、俺のチンコってそんな年下に、それもあいつに
負けてるのか…と、内心ではかなりショックだった。
里美がまだ俺のチンコを見てるので、俺は恥ずかしさを押し出すように、
「うるせーな」と言い、「貸せよ」と、里美からシャワーをひったくった。
そしていい加減な感じで頭からシャワーをザブザブかけると、「フロ入る」と言って、
里美の返事も待たずに奥のバスタブにサブンと飛び込んだ。

里美はそんな強がってる俺を見てクスクス笑ってたが、強気で強情な所があるとはいえ、
根は意地悪でも陰険でもない性格なので、単に“してやったり”という感じで、
それほど悪意のある感じではなかった。
そして後から考えるに、俺をやり込めたことに成功したせいか、運良く彼女の
心のガードがこの時、少し解けたようだった。

ちなみに、この時点では里見は俺をからかってるだけで、俺と違ってエロい
気分みたいなものはなく、ただ恥ずかしいことを指摘した俺に、何か言い返したかった
だけだと思っていた。
――だが、実はそれが結構な思い違いで、やっぱり彼女も、こういうことに
興味を持つ年頃の女の子ということが、もう少し後でわかるのだが…。

その後、里美はさすがに女の子らしく、湯船に入る前にきちんと石鹸を使い、
体を隅々まで丁寧に洗っていたが、その間にも俺は湯船の中から目ざとく
彼女の裸体を目で追い続けた。
里美は一応、さきほどよりは胸だの股間だのを隠していたが、完全なガードと
いうほどではなかった。
今思うと、それは俺のチンコが彼女の弟よりも小さいほどで、小さな子と
一緒にフロに入ってるようで安心できたのが大きかったかもしれない。
そして、それが後の幸運な展開を呼び込むことになる……

一方、俺は俺で、しっかりエロ心に目覚めていた年頃であったので、その里美の姿に、
だんだん頭や胸が、カッカと熱くなってきた。
目の前のハダカと言っても、泡だの手ぬぐいだので、多くの部分は隠れていたので、
それが余計あせりを誘い、興奮したせいか、(あ、コレ、やばい…)と思ったが、
もう止めようがなかた。

気が付けば俺の股間のものは、小さいながら真上にピーンと屹立させてしまい、
立ってもまだまだ包皮を被った先端部が、水中でバスタブのタイルの壁にコツンと
ぶつかった。
いくら小学生同士でも、こんな目の前で同級生の女の子の、こんな姿を
晒されていては仕方のないことだった。
(やばい!)と思ったが、焦れば焦るほどどうしようもなく、そんな時に限って
里美が目の前で、体を洗いながら、絶妙にエロい姿勢で背中をくねらせたりするので、
収まりようがない。
焦って身もだえした俺は、何度も硬くなったチンコを湯の中のタイルに
コツコツ当ててしまい(ちょっと気持ちよかった)、軽い湯しぶきをあげたため、
体を洗ってる里美に「なに暴れてんの?」と、不振な目で見られた。

この時、俺は既にチンコが大きくなる男のシステムを理解していたが、
あくまでチンコを大きくするような対象は、こっそりコンビニで店員の目を盗んで
立ち読みするエロ本やエロマンガの類だった。
たぶん同年代の他の男子も多くは俺と同じだったろう。

ゆえに、俺はまだ同級生の女の子を(というより現実の女の子を)そういう風な
対象にしたことがなかった(これはそれほど多数派ではないかもしれない)。
里美相手にも、昔、お尻を見た時のように、軽くエロい気持ちになったことは
あったが、今までチンコが反応するようことはなかったし、そんな風になる
自分の心を想像すらした事がなかった。
エロ本の大人の女ではなく、身近な同級生の女子にも、チンコって
ボッキするものなんだ…ということがやけに不思議だった。
さっき里美の裸を覗き見ようとした時も、同じエロい気分でも、今のような
高揚感とは違ってたいたし、緊張していたせいもあったのか、股間の反応はなかった。
だが、今は現実に、目の前の里美の裸にめちゃくちゃ興奮して、初めて彼女相手に
勃起してしまった自分に、ある種の恥ずかしくも、新鮮で気持ちの良い感覚があり、
(俺、里美にチンコ立たせちゃってる…)
という現実を、味あえば味あうほど興奮した。

思い返せば、ずっと単なる幼なじみの友達だった女の子に、初めて性を感じたのが
この時だった。
だが、この時はただ里美に勃起してるという恥ずかしさと背徳感、そしてバレたら
やばいという危機感が、前述の快楽を上回っていたと思う。
やがて里美が体を洗い終わると、彼女が手ぬぐいで大事な部分を微妙に隠しつつ、
バスタブに近づいてきたので、俺は慌ててお湯の中の屹立してる股間を手ぬぐいで
隠した。
里美は「K、まだ(湯船に)入ってる?」
と、俺に聞いてきた。
俺としては、こんなチャンスを逃したら一生後悔すると思ったので、
「うん、もうちょい……」と答えると、
里美は「あ、そう」と答えて、平静な態度で俺と一緒に入ろうとしてきた。
(これも後で思うに、この里美の質問には意味があったのだ)
コンプレックス(?)である、ワレメ部の毛を見られたくないのか、里美は
バスタブをまたいで入ってくる時、胸は手ぬぐい、陰部は手のひらで隠していた。

だがそれが逆にすごくエロチックで、前にエロ本で見たようなポーズだと思うと、
ますます股間がいきり立ってしまい、痛いほどで、俺はさらにしっかりと
手ぬぐいの上のガードを固めた。
里美はそんな俺を見下ろすと、
「…見ないでね」
と、本気とも冗談ともつかない口調で言った。
「見ねーよ!」
と、俺がむきになって…というより、むきになったフリをして答えると、
「ほんとかなあ。Kも意外とエッチだったみたいだし」
と、里美は軽く笑い、お湯の中に足から浸かって来た。
そしてバスタブの中で向かい合って二人でお湯に浸かったが、今のやり取りの
せいか、微妙な空気が無いこともなかった。
それでも窓の方なんかを見るフリをしながら、友達や学校の話題などを普通に
雑談していたのだが、その間、俺はお湯の中の彼女の裸を、さりげなさを装って
何度もチラ見しようと努力していた。

(まあ、正確には自分だけが、俺はさりげなくやれてる…と思っていただけで、
子供にそんな技術があるわけ無かったのだが…)
だが里美は体全体を俺から見て、やや斜めに向けていた上に、胸は腕と立て膝と、
さらに手ぬぐいで邪魔され、乳首などもほとんど見えず、股間部分も内股が
ぴったり閉じられていた。
(このままチャンスはないのか…)と思っていたが、ここでひとつ動きがあった。
二人で入ったため、湯船のお湯が大量にあふれ出てしまったので、里美が後ろを
振り向き立ち上がり、背後のお湯が出るコックをひねった。
そのおかげで、目の前で里美の白くてデカいおしりがアップになったのだ。
(おっ!)
俺は里美が後ろを向いて作業をしているスキに、思わず立派なおしりに顔を
近づけて見入ってしまい、
(うわ、俺より全然でっかいなー)
なんて感心はしたし、タオルの下の硬直も固さを増したが、満足度はまあせいぜい
50%といったところだった。

要するに、やっぱり小学生男子の本命は尻や太ももなどでなく、胸と股だった。
その時、バスタブにお湯をつぎ足し終わった里美が水道のコックをしめて、
こっちに向き直った。
里美は手ぬぐいを垂らして上も下もガードしていたが、俺が自分の方に
接近しているのを見て怪訝な顔つきになり、
「……あ、ひょっとしてK、おしりとか見てた?」と言ってきた。
口調は怒っている風ではなく、からかうようだったが、100%図星であるのにも
関わらず、俺は慌てて「見てねーよ」と言った。
「本当?」
「なんでケツなんか見なきゃいけねえんだよ。チカンじゃあるめーし。お前がそこで
何してんのか、見ようとしただけだ」
と、実は痴漢そのものの俺は、必死に苦しい言い訳をした。
里美は「あ、そう」と言うと、それ以上追求はしてはこず、また湯船に体を沈めた。
俺は安堵した…が、この時これで下心を見事隠しおおせた、などと思っていたのだから、
後になって振り返ってみれば実に馬鹿だったと思う。
今のやり取りも、俺たちの次なる展開へのスイッチが入る、伏線のひとつだったのだ。

俺は相も変わらず、見えそうで見えないという、ジリジリした思いを続けていたが、
先程から里美の方も心なしか、湯船の中の手ぬぐいで覆われた、俺の股間部を、
チラチラ見ているような気がしていた。
だが俺が里美の視線を気にしてばかりいたので、たぶん気のせいだろうとも思っていた。
やがてだんだん会話も少なくなってきて、俺はなんだか居心地が悪くなってきたので、
もう諦めて先に出ちまおうかな…などと、考え始めたその時――
里美は急に思い切ったような表情になると、照れてうわずったような口調で、
「――…ねえKさぁ、そんなに見たい?」
と言い、俺に確認するように
「さっきからさ……だよね…」と、付け加えた。
俺は心臓がドキリと跳ね上がった。なんと先に、里美の方から決定的なことを
言ってきたの

【寝取られ】幼馴染みにフェラの練習させてと言われた5 【NTR】

$
0
0

僕は、とうとう涼子が先輩とセックスするところまで見てしまった。見たといっても、直接ではないが、アレは逆に直接見るより堪えた。

でも、希望がわいた。涼子は、僕のことを好きだと思っている。それに確信が持てた。それ以上に、先輩がクズだということも確信した。

その翌日から、僕は先輩の後をつけるようになった。尾行すれば絶対にボロを出すと思ったからだ。

と言っても、学校帰りに制服のまま尾行したところでバレバレなので、こっそりと着替えを学校に持ち込むようになった。

そして、学校が終わると速攻で公園のトイレで着替え、正門が見えるところで隠れて先輩を待つようになった。

でも、実際にやってみた尾行は、ドラマみたいに簡単ではなかった。いつ出てくるかもわからない相手を待つのは、本当に気が抜けなくて疲れた。実際、初日は先輩を見つけることすら出来なかった。そもそも、その日は学校に来ていなかったのかもしれないし、他の人に紛れて出ていったのかもしれない。もしかしたら、裏から帰ったかもしれないし、とにかく徒労に終わった。

たけど、あきらめずに毎日繰り返した。次の日は先輩の後をつけることは出来たが、男友達3人とファストフード店に入り、長い時間出てこなかった。待つのがこんなにもしんどいとは、夢にも思っていなかった。
何よりも、ただ待つだけなら本でも読んでいればいいと思うけど、ずっと出入り口から目を離せないのが辛い。

だけど、4日目には女と待ち合わせている場面に遭遇できた。でも、相手の女は涼子だった。
僕とよく行くショッピングモールのフードコートで、楽しげに合流する涼子。距離があるので何をしゃべっているのかわからないが、泣けてきた。

涼子と先輩は、いわゆる恋人つなぎで手を繋ぎ、服を見たり、本屋に行ったりする。さすがに、涼子がいるので物凄く距離を置いて尾行した。でも、尾行しながら、意味ないなと思った。涼子と一緒なら、先輩も他の女と会うはずがない。
見てても辛いだけだから、今日はもう止めて帰ろう……そう思った。でも、目が離せない僕がいる。

涼子は、本当に楽しそうに笑っている。僕と一緒の時、こんな顔をしているだろうか? 自信が揺らぐ。
でも、先輩は鏡があるたびに自分を眺めているし、前髪ばっかり触っている。涼子が服を選ぶときなんかは、退屈そうにスマホを眺めている。

見ていて、涼子が可哀想に思えてくる。恋は盲目というのはこう言うことなのかもしれない。

すると、二人は屋上の駐車場に通じる階段を上がり始めた。車なんかないのに、どういうことだろう? そう思いながら後をついてと、駐車場のフロアの端にあるトイレに入っていった。あまり人気のないそのトイレは、男子トイレと女子トイレの真ん中に、小さいけど誰でもトイレが設置されている。
二人は周りを見回すと、サッとそのトイレに一緒に入った。涼子は、離れた位置からでもわかるくらい、イヤイヤな感じだったが、先輩に強引に引き入れられた感じだ。

見なければ良かったと思った。こんな公共の場なので、油断していた。まさか二人が、エッチをするところを見せつけられるなんて、思ってもいなかった。

当然、なかなか出てこない二人。僕は男子トイレに入ろうとする。どこでもトイレの前でガラケーを取り出して、時間を見る振りをして立ち止まる。
どこでもトイレの中からは、声こそしないが、動く気配が濃厚に伝わってくる。

すると、このトイレに向かって他のお客さんが来てしまったので、僕もトイレに入る。そして、怪しまれないように、個室に入る。
そこで気がついたが、位置関係からいくと、僕が入った個室のすぐ横が誰でもトイレだ。

僕は止めれば良いのに、壁に耳を当ててみた。
『…………ヤァ……んっ!…………あっ!』
かすかにだけど、あえぎ声みたいなモノが聞こえてくる。僕は、本当に悔しくて泣きそうだった。一瞬、警備員に”女性がトイレに連れ込まれてます”と、言おうと考えた。でも、そんな事をしたら、涼子まで補導される……二人に共通の秘密が出来て、もっと親密になる……そんな事を想像すると、何も出来なかった。

時折ガタッとか物音もする。集中して聞き続けると、かすかにパンッ、パンッという肉と肉がぶつかる音も聞こえてくる。

この前、偶然屋上で見てしまった二人のセックス。それに続いて、今日も壁のすぐ向こうでセックスをする二人。一番大好きな人が、他の男とセックスをする……これ以上辛いことはないと思う。

『ンッ! ……あっ! ……だ、めぇ……ンッあっ!』
涼子は、必死で声を抑えようとしている感じだが、薄い壁は涼子の声を伝えてくる。

『キス…てっ! せん…い、あ…して…っ! あい……るっ!』
涼子の声がかすかに聞こえる。僕は、もう聞いていられなくなり、壁から耳を離した。 

そしてしばらくすると、
「……くっ!」
『……メっ! 外……出し……っ!』
と、切れ切れに声が聞こえた。壁から耳を離していても聞こえてくる声。かなりの音量だと思う。

そして、静かになる。しばらくすると、どこでもトイレから人が出る気配があった。

慌てて追いかけようとしたが、もうこれ以上尾行しても無駄だと思い直し、尾行は止めた。

そして、どこでもトイレに入ってみると、アレ特有の栗の花の臭いで充満していた。それだけではなくトイレの床に、ドロッとした白いモノが大量に落ちていた。でも、それを見て少しだけホッとした。中には出されなかったんだ……。
そんな事に救いを求めてしまう僕。

僕は、ものすごく重い足取りで家に帰った。でも、先輩にあんな扱い方をされ続けていれば、きっと涼子の目も覚めるのではないか……そんな風にポジティブに考えようと思った。

ガチャガチャ……

僕は、思わず悲鳴を上げそうだった。本当に驚きすぎて声も出ずに窓を見ると、涼子だった。
『ビックリした? スッゴい顔w』
無邪気に笑いながら入ってくる涼子。でも、今日ショッピングモールのトイレで、先輩とセックスをしたんだと思うと、どうしてもぎこちなくなってしまう。

『どうしたの? 暗い顔w』
「いや、眠いだけだし」
『ふ~ん。そうなんだ。ねぇ、ちょっとだけギュッとしてくれないかなぁ?』
「はぁ? どうしたんだよ?」
『別に……ほら、早く寝なさいよ!』
涼子はそう言うと、僕を強引にベッドに寝かせた。一瞬、また”練習”なのかな? と、興奮してしまう僕がいた。

僕を寝かせると、布団をかぶって僕に抱きつく涼子。なにをするわけでもなく、なにもしゃべらず、ただ僕にしがみついている。

こういう時、何をして良いのかわからない。経験がない僕は、あまりにも引き出しが少なすぎる。
僕は、とにかく涼子の頭を撫で続けた。そのまま長い時間が過ぎていく。

『ねぇ、私と一緒にイ○ンモール行って、エッチな気持ちになったりする?』
涼子は、今日先輩と一緒に行っていたショッピングモールのことを聞く。僕ともしょっちゅう一緒に行くモールだ。

「え? あるわけないじゃんw なんでオマエなんかにw」
『うっさい……じゃあさ、もしマー君に奇跡的に恋人が出来たとして、その子とモールでエッチな気持ちになったらどうする?』
「別にどうもしないだろ? 我慢するよ」
『……そうだよね……』
「あれ? お前、泣いてるの?」
『ば、ばっかじゃない! あくびしたから……』
「なぁ……涼子さ、大事にしてもらってないの?」
『そんな事ないよ! そんなわけないじゃん! スッゴく大事にしてもらってるよ! 私のこと、愛してくれてるよ! ホントだよ……大事にしてもらってるよ……』
涼子は、一生懸命にそう言った。でも、後半は半分泣き声みたいだった。今日のことを知っているだけに、切なくなってしまった。

僕は何も言わず、ただギュッと涼子を抱きしめた。さっき一緒にベッドに入ったときは、セックスできる! とか思っていたが、今はそんな気持ちはまったくない。ただただ、涼子が愛おしかった。

一時間以上そのままだったが、
『マー君、ありがとう。ホント、優しいね……』
「いつでも来いよ。お前は俺の一番大切な人だ」
『そ、そんなこと……』
「ば~かw 幼馴染みとしてだよw」
『うん……ねぇ、してあげる……』
涼子はそう言うと、僕のチンポをパジャマの上から握ってきた。でも、僕はその手をゆっくりと引きはがした。
そして、
「いいよw さっき自分でしたばっかだしw」
と、ウソをついた。
『なにそれw ありがとう……』
でも、幼馴染みにウソは通じなかったみたいで、そのまま涼子はキスをしてきた。

僕は、夢中でキスをした。ギュッと抱きしめながら、涼子を強く抱きしめた。
『へへw 折れちゃうよw』
涼子はそう言いながらも笑顔だった。

「もう、遅いぜ。帰りなよ」
もう、真夜中なのでそう言った。
『……お願い……抱いて……』
涼子は、潤んだ目で言ってきた。
「ダメだよ。何があったか知らないけど、オマエが人を裏切るのは似合わないよ」
『マー君……そうだね……どうかしてた! ごめんね! マー君が幼馴染みで、ほんっとーに良かった! ありがとう……』
涼子は、涙目で笑いながら言った。
「練習だったら、いつでもOKだけどなw」
照れ隠しでそう言うと、涼子はもっと笑顔になってくれた。
『じゃあ、さっそくキスの練習w』
そう言って、またキスをしてくれた。正直、キスすると抱きたくて仕方ない気持ちになる。でも、今日の涼子を抱くのは、フェアじゃない気がしたので、グッと我慢をした。

そして窓から出ていくときに、涼子はもう一回ありがとうと言った。

僕は、一人になると猛烈に燃えてきた。絶対に奪ってやる! あらためてそう思った。

そして、次の日も先輩の後をつけると、やっと尻尾を掴むことが出来た。先輩は学校を出ると、真っ直ぐ家に向かうルートを歩き出す。そして、途中のコンビニで女の子と合流した。
ただ、その女の子は若すぎた。どう見ても、中学生。それも、1年くらいだと思う。もしかして、ガールフレンドではなく、妹とか親戚とかなんだろうか? 二人は、楽しそうに笑いながら会話をしている。でも、手を繋いだりすることもない。

あまり近づけないので、声がまったく聞こえない。そしてそのまま後をつけると、一緒に先輩の自宅に入って行った。
そのまま待ってみたが、1時間経っても出てこない。さすがにこんな住宅街では、これ以上監視するのは無理だと思い移動した。

確証が持てないまま、週明けにも尾行を続けると、先輩はまたあの少女と自宅に消えた。警察みたいに、踏み込むことが出来ればいいのだけど、当然そんな事は無理だ。

僕は悩んだ末に、数少ない友人に知恵を借りようと思った。その友人は、いわゆるハッカー気質のオタクだ。と言っても、スーパーハカーではないので、ドラマのハッカーみたいになんでも出来るわけではない。
警察無線を聞いたり、ラジオライフを読んだりするような、本物の人達から見れば、にわかというか、ライト層なヤツだ。

それでも、相談するとあっけないほど簡単に答えをくれた。
「それ、俺が改造したから、100m以上飛ぶよw でも、電波法違反だからw 捕まっても、俺の名前は言うなよw もっとも、足がつかないように部品から組んでるけどなw」
と、耳障りな笑いを挟みながら、小太りの友人は言った。

友人から借り受けたのは、盗撮カメラだ。コンセントタップ型のカメラで、無線で動画を飛ばせるらしい。こういう話は、トンと疎い僕なので、使い方も含めて教えてもらったが、結構怖いモノだと思った。
カラーで、音声も含めて撮れる。しかも、一度設置すれば、コンセントから電源を取るので、ずっと動画を送信し続ける。

こんなものが世に出回っているなんて、信じられないと思った。でも、コレを使うには、一度先輩の部屋に入らないといけない。色々考えたが、正面から行くことにした。

学校が終わった後、ストレートに先輩の家を訪ねた。いるかどうかは賭けだったが、運が味方してくれた。
「おっ、どうした? なんか用か?」
先輩は、突然の訪問に驚いた様子だったが、意外とすんなり部屋にあげてくれた。

僕は、適当に話を作った。涼子が何か悩んでいる様子なので、フォローしてあげて欲しいと言った。僕ではダメなので、恋人の先輩がフォローして下さいと、先輩を持ち上げながら、おだてるように言った。
「おうw 任しとけよ! それにしても、オマエって変わってるなw」
「どうしてですか?」
「アイツのこと、好きなんじゃねーの?」
「そんな事ないです……」
「ふ~ん。まぁ、いっけど。コーラでも飲むか?」
こんな風に聞かれたので、ハイと答えた。すると、先輩は部屋を出た。僕はチャンスだとばかりに、すでにコンセントにはまっていたタップを外し、すり替えた。場所的に、ここに設置すれば、部屋のほぼ全部が撮影できる気がした。

そして先輩と一緒にコーラを飲みながら、楽しくもない時間を過ごした。
モデル事務所にスカウトされたとか、逆ナンされたとか、自慢しかしない先輩。好きになれる要素がない。涼子も、なんでこんなヤツを? と思ってしまう。

でも、帰り際、
「前島……ありがとな。涼子のこと、任せてくれよ」
と、くそまじめに言われた。
僕は、激しく動揺した。ただのクソ野郎だったら良かったのに……こんな風に言われると、憎みきれなくなる。

そしてまた、尾行の日々が始まる。でも、早くも次の日に、先輩は少女と合流した。

僕は隠しカメラを貸してくれた友人の説明通りに、先輩の家の近くの公園のベンチに座った。ここからは、先輩の家はまったく見えないが、直線距離で50m足らずなので、充分受信できるそうだ。

親父のお下がりのノートPCを取りだし、立ち上げて、友人が教えてくれた通りにソフトを立ち上げ、録画を開始した。パワー不足で、プレビューは出来ないそうだが、コレで録画できているそうだ。

そのまま、バッテリーが切れるまで録画を続けた。2時間も持たずにバッテリーは切れたが、充分だと思う。

そして僕は家に帰り、動画を確認し始めた。動画を再生すると、いきなり先輩の黒が確定した。

ベッドに腰掛ける先輩……その足下にうずくまり、先輩のチンポをくわえる少女……。
少女は本当にまだ若く、幼いと言っていいくらいだ。多分、中1だと思う。この間までランドセルをしょっていたような少女に、なにをさせているんだと、猛烈な怒りがわく。
コレを持って警察に行けば、全て解決するんじゃないかと思った。でも、それでは気が済まない。

「痛ーよ。歯、立てんなって!」
先輩はそんな事を言いながら、少女にフェラをさせ続ける。
『ゴメンなさい……』
少女は謝りながら、健気にフェラを続ける。

「なぁ、服脱げよ」
『はい……』
少女は素直に制服を脱ぎ始める。少女は制服を脱ぐと、スポーツブラみたいなブラと、小学生みたいな可愛らしい綿パン姿になった。
「相変わらず可愛いのはいてんなw」
『子供っぽいですか?』
「ぽいって、子供じゃんw」
『そんな事ないもん! もう、栄治先輩の全部入るもん!』
「そうだなw よし、じゃあ、これ着てみろよ」
そう言って、先輩はクシャクシャッと丸まった紺色のモノを少女に投げ渡した。

『これって……どうして?』
「いいから着ろって」
『はい、ゴメンなさい……』
少女は素直に謝ると、ブラとショーツも脱いだ。まだ胸は少女特有の固そうなわずかな膨らみで、下は毛も生えてきていないような感じだ。

そして、クチャクチャッとなっている布を広げて、着始めた。それは、スクール水着だった。少女がスクール水着を着る光景。何とも言えず、嫌な気持ちになる。先輩は、こんないたいけな少女になにをさせているのだろう?

そして、少女がスクール水着姿になると、先輩は仕上げに彼女の髪をツインテールにした。慣れた手つきで、ゴムバンドを使い、ツインテールに仕上げる先輩。いつもこんな事をしているのだろうか?

「いやいや、スゲぇ可愛いよ! マジ、最高だって!」
『本当ですか? なんか、コレキツいから、食い込んじゃう……』
そう言って、お尻と言うか、太もものところに指を入れて、水着を直す少女。プールではよくある仕草だが、アレは妙にエロチックに思えたりする。

【寝取られ】社長が嫁との子供が欲しいらしい 【NTR】

$
0
0

25名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/04/01(日)18:59:43.09
会社の取引先のベンチャー企業の社長(43歳)と仲良くさせてもらってる。
社長はバツ1で娘が1人いるらしいけど元妻が会わせてくれないらしい。

居酒屋で飲んでる時、その社長がオレの嫁とデートしたいとか、子供を産んで欲しいとか言ってきた。
冗談だとは思うけれど、少なくともオレの嫁のことが好みらしい。
もしかして、オレが寝取られ好きなのを見破られているのか…

28名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/04/02(月)01:24:08.47
俺なら喜んで嫁を差し出す。

29名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/04/02(月)09:41:32.58
「どうぞ嫁のマンコの形が変わるまでヤリまくってください」

と、嫁を社長に差し出す展開を希望

嫁にはこのことを一切知らせず、ガチで社長に口説いてもらうのもいいな

30名前:25投稿日:2012/04/02(月)23:58:20.94
>>28>>29
差し出すなんて勇気はないよ。その時は冗談言うの止めて下さいよ(笑)って対応した。
ただ、別の日に飲みにつれて行ってもらった後に自宅に社長を招待。

オレの嫁と会えたからか社長はいつも以上に、にこやかに。
嫁はすこし緊張気味。
以前偶然街中でオレ達夫婦が社長と出会って以来、ほとんど初対面だからかな。

時間が経つにつれて盛り上がってきたけれど(娘が寝ていたのでほどほどに)
オレが部屋を出ていた少しの間に、嫁と社長は携帯のメアド交換してたみたいだし。
その経緯は今も不明。。
(嫁の名前)ちゃんのメアドゲットしたよと、はしゃぐ社長は酔っていたとはいえ
子供のようだったな。

31名前:25投稿日:2012/04/03(火)00:06:12.28
寝取らせ好きではあるけれど今まで嫁を寝取らせたことはないし。
綺麗系とはいっても、素朴な感じの子持ちの31歳の嫁になぜ興味を持つのか不思議ではある。
あの社長ならもっと若い派手な美人と付き合えるだろうと思うし。

結局、その後タクシーで帰宅してもらった。
3人で飲んでる時プロ野球の話題で盛り上がり、良い席を手配できるからと
3人で観戦に行くことが決定。

何か理由をつけてオレは欠席して嫁と社長の2人で観戦させようかとの衝動を抑えるのに必死な状態。

129名前:25投稿日:2012/05/04(金)20:55:27.65
ほとんど動きはないですが…

結局3人でプロ野球観戦に行ってきました。
娘は嫁の実家に預けて。
席はバックネット近くの臨場感のある席。
社長はいつものようにワザとらしくなく気遣いをしてくれて。

オレは何か理由をつけて(トイレ・売店に行く等)席を外してました。
遠くからみる嫁と社長はとても楽しそうで嫉妬してしまうくらいで。

試合が終わった後はお酒を飲みに行ってお開きになりました。

夫婦2人で電車を使って帰宅する時、試合は面白かったけれど少し疲れたと嫁が言っていた。
会社の大切な取引先の人だから失礼なことをしたらいけないから。とのことです。
嫁がオレのためにそこまで気を使ってくれていたかと思うと感謝と共に
嫁と社長がセックスする妄想を少しでも考えていたのを申し訳なく思い。。

130名前:25投稿日:2012/05/04(金)21:12:17.80
その後、またいつものように社長に飲みに連れて行ってもらって。

やはり嫁の話題もでてきて。
社長はもう2度と結婚する気はないけれど、現在2人の若い女性と付き合ってるとのこと。
写メで見せてもらったけれどかなり美人。
そして、嫁とも付き合いたいとのこと。
そして子供も欲しいけれど(上記の2人の恋人ではなく)嫁に産んで欲しい願望があるとのことでした。

半年くらい前、オレが1年くらい嫁とはセックスレスに近い状態であること。
オレが酔っぱらっていたため暴露してしまったことを社長は覚えていて。
その後街中で出会った時嫁をみて想像以上に綺麗な人であること、
少し話した感じがら直感的に嫁に子供を産んで欲しいと思ったらしいのです。

131名前:25投稿日:2012/05/04(金)21:25:31.81
(プロ野球観戦等で)嫁とじっくり話すことで社長は直感は間違いではないと確信をしたらしいとのこと。

そんなぶっちゃけ話をされても…。
もしかして、おれの寝取られ願望が少しあることを見破られたのか等思いを巡らしていて
黙ってしまっていたんです。

もし君達夫婦が受け入れてくれたら。君の家庭を壊す気は無いから。
社長は話し続けていたよ。
「多分無理だと思いますよ(笑)」
子供の件はスグに断ったが、付き合うことは何故か曖昧な返答しかしなかった。

社長はいつでも良いよ、とのこと。

酔っぱらっていたとしても夫婦生活のことは言わなければ良かったなぁと。
今後は完全にセックスレスになるかもなんて言ってたし。
帰りの電車の中で少し後悔したよ。

132名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/05/04(金)21:26:19.71
社長もお前も人間の屑だな

134名前:25投稿日:2012/05/04(金)21:31:10.77
>>132
そうですね。社長は別としてオレは特にね。
子供の件については無理なのが当たり前と社長も思っていたみたいですし。
やはり、今後は書き込むことは止めた方が良いのかもしれないですね。

135名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/05/04(金)21:31:41.26
てか、別に後悔してねーじゃん。あんたは嫁を差し出したいんだろうからさ。
それとも何か?後悔してると書くことで苦悩してますよと思われて、物語を
面白くしてんのか?

136名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/05/04(金)21:32:28.71
いや、社長も屑だよ。他人の嫁に俺の子供産ませてくれないかなぁってw 

138名前:25投稿日:2012/05/04(金)22:22:12.25
>>135
不快な気持ちにさせたとしたら申し訳ない。
後悔したのは夫婦生活を話したことで、社長が嫁に関心をもたせたこと。
それがきっかけでオレの寝取られ願望の一面が理性を上回ることになるかもしれないとうことです。
苦悩とかではないですよ。

146名前:名無しさん@ピンキー[sage]投稿日:2012/05/05(土)03:05:04.57
>>25
ちなみに、あなたのチンポは小さめの仮性で、
社長のはズル剥けカリデカ巨根ということでよろしいですか?

148名前:25投稿日:2012/05/05(土)20:29:28.64
>>146
当然ですが社長の勃起時は知りません。
数回、サウナにご一緒させてもらった際にチラッと見たことはありますが
平常時でもズル剥けで長さは普通よりやや大きめだが結構太いなぁ。
本当かどうかは分かりませんが社長自身が結構絶倫だと豪語していたことを
酒の席で聞かされました。
休日にはジムで体を鍛えているみたいですし。

オレのはズル剥けだけれどサイズは普通かなぁと。
比較したことがないので分からないですが自信があるわけではありません。

369名前:25投稿日:2012/05/30(水)21:14:00.68
先週の金曜、社長に飲みに連れて行ってもらった時です。
嫁の件について結論をださないと、と思っていましたが。

最初は仕事の話ではなく他愛のない話をしていたのですが、
途中でやはり嫁の話題がでてきて、
「嫁を差し出すことはできないですよ。でも社長が嫁を口説いて(嫁が)受け入れたなら
仕方ないかなとは思います。」と曖昧な答えを。。

でも、子供をつくることは拒否しましたし、オレは離婚する意思はないことははっきりと伝えました。
それでも、社長は喜んでくれて。
「やっぱり受け入れてくれたかぁ。もちろんオレはもう結婚するつもりはないし」
と、オレがお願いした様々な条件を受け入れてくれました。
嫁との経過を少なくともメールで連絡する等です。

370名前:25投稿日:2012/05/30(水)21:32:45.09
社長が嫁と接触する方法を思案していたので。
嫁は週一の月曜に料理教室に通っていることを伝えました。
社長の会社は日曜、月曜が定休日なんです。社長は笑顔でオレに握手をしてきました。

その後泥酔して深夜に帰宅したオレに「お仕事お疲れさま」と嫁が出迎えてくれます。
嫁はオレが酔った時は必ず、特製の梅干し入りのおかゆを用意してくれます。
おかゆを食べてすぐに寝ようと思いましたが、その日は中々寝つけませんでした。。

373名前:25投稿日:2012/05/30(水)23:57:51.64
社長が来週月曜から料理教室に通う手続きをしたとのこと。
行動力には驚かされます。
何かあれば書き込みをするかもです。

374名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/05/31(木)01:35:18.85
25は他人に嫁を差し出して性的満足が得られるのか。

375名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/05/31(木)20:43:57.31
まだ嫁ではないが彼女を俺の見てる前で誰かに
抱かせたいのに相手がいない
彼女の同意ももらえたのに・・・

そういったサイトで募集してもイマイチだったし
誰か相手探しのアイディアをください

376名前:25投稿日:2012/06/01(金)00:09:47.27
>>374
差し出してはいないですよ。嫁に限って…との思いは今も持っています。

ただ、嫁が魅力ある男性(今回なら社長)にモテるといった状況が良いのかもしれないです。
なので、割合を100としたら、
90は口説かれても嫁が堕ちないことを望んでます。
でも、残り10は嫁が男性の誘いを受け入れることに興奮するだろうと妄想してしまってます。
かなりいびつな感情ですけどね。
受け入れるといっても肉体面のみで心の部分はオレのことを思っていて欲しいと
ワガママな思いはありますが…。

539名前:25投稿日:2012/06/24(日)00:06:41.29
>>522>>523
少しの動きだけですが…。
6月から社長は料理教室に通っているとのこと。
1クラス40人以上いるので嫁とは同じグループではないらしいですが。
帰りは途中まで一緒に帰っているらしいです。
電車の乗り継ぎの関係で、20分程ですがコーヒーチェーン店で談笑しながら
お茶をしたことがあることを嫁から聞きました。
嫁が後ろめたさなく話してくれて逆にホッとしました。

「社長が料理教室に入ってきたのよ」
嫁は驚きながら報告してきました。
社長が嫁のいる料理教室に入ったのは偶然ではないんですけどね…。
社長は1人暮らしが長いからか、包丁の使い方など基本的に料理はできるらしいです。
見た目、料理をしなさそうですが。嫁もそのギャップに好感を持ったかも。。
ちなみにオレは全く料理は出来ません。

540名前:25投稿日:2012/06/24(日)00:27:26.19
最近、料理教室の帰りに百貨店に寄って社長の娘さんの
誕生日プレゼントの購入を一緒に選ぶことを社長が頼んだとのこと。
財布を購入したらしいのですが、それは嫁が選んだらしい。
そのお礼にと百貨店内にある飲食店でケーキを御馳走したと社長から
笑顔で報告をしてくれました。(この件に関して嫁はオレに何も言ってきていません)
今後について、社長は手ごたえを感じているのようです。
まだ口説いてはいないしセックスもしていないらしいですが…。

こんなに急速に嫁と社長の関係が親密?になってきたのは想定外でした。
口説くのを許しておきながら何ですが、焦燥感に苛まれてしまい。。
でも、嫁はオレに対して笑顔で接してくれています。

541名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/06/24(日)00:37:49.68
離婚されるまで頑張れ。そう遠くない将来だから

542名前:25投稿日:2012/06/24(日)00:39:52.01
で、危機感からというと大袈裟ですが久し振りに家族3人で遊びに行ってきました。
嫁も子供も楽しんでくれて。
その勢いで夜に嫁にセックスに誘いました。1年以上振りです。
でも、オレも嫁もセックスに淡白だからか、それほど盛り上がることも無く。。
嫁はスタイルは悪くないと思うんですが。バストも大きめですし。

嫁とは夜に酒を飲みながら今日あった出来事を話し合う時が
一番楽しいし愛おしいと思えるだよなぁと心の中で思ってました。
嫁も同じことを思っているかもしれないです。

今回の動きはここまでです。

543名前:25投稿日:2012/06/24(日)00:49:26.17
>>541
離婚はイメージしてなかったですが、今更ながら焦りはあります。。

最近、社長が嫁に映画に誘ったらしいのですが、嫁は丁重に断ったらしいです。
社長が苦笑いしながら酒の席で教えてくれました。
嫁がおちるわけがないと願望を込めながら思い込むようにしています。

544名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/06/24(日)00:50:11.51
心の中で思うだけじゃなくて、ちゃんと口で伝えないとダメだよ

552名前:25投稿日:2012/06/24(日)20:23:49.57
>>544>>546
伝えることは考えたことがなかったです。
当たり前ような日常のことだったので。
でも、伝えてみようと思います。ありがとう。

その時は、嫁とのセックスが楽しめなかったことがショックでした。
嫁と社長が親密になった?ことによる嫉妬もあり、交際している時や新婚当時のように
セックスを楽しめると思っていたので。。

以前、会社の同僚達と飲んだ後風俗店に行ったことがありましたがその時の方が
満足感を得られたんです。
もちろん新婚当時の満足感が1番ですが…。

560名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/06/25(月)22:56:20.98
奥さんの経験人数は何人ですか?

561名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/06/26(火)05:20:33.09
昨日は料理教室ですよね?進展有りましたか?

573名前:25投稿日:2012/07/05(木)22:32:19.87
動きはありませんでした。。

昨日の夜、居酒屋で社長が「気を悪くしないでくれよ(笑)」と話をしてくれました。
授業が終わった帰りに、嫁と社長は電車の乗り継ぎの空き時間にお茶をしたそうです。

で、その時、社長は夫(オレのこと)の愚痴を聞きだして助言することで関係を深めようと思ったらしく。
でも、嫁は一切愚痴をこぼすことはなかったそうです。
それより、最近仕事が忙しいオレに対して体調を心配していたらしく…。
隙がなかったよと社長は苦笑いしていました。

オレはその話を聞いた時逆に、嫁は社長に少しずつ気を許してきているのでは?と思いました。
ちなみに、嫁はオレにたいして不満はおそらくあると思います。。

動きがあった時はまた書き込むつもりです。

566名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/07/01(日)00:49:50.24
奥さんと社長は普段からメールのやり取りが有るの?

568名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/07/01(日)13:12:32.75
>オレが嫁と知り合った時に前の恋人と別れて3ヶ月くらいになると
>聞いたことがあるくらいです。

kwsk!

574名前:25投稿日:2012/07/05(木)22:48:59.29
>>566
ほとんど無いそうです。
社長が料理教室にかよい始めた時から時々メールをしているとのことですが、
嫁からはその返信のみとのこと。

>>568
オレが27歳、嫁が24歳の時はじめて知り合ったんです。
馴れ初めはお互い社会人の時、会社帰りに週2回くらい資格学校に通っていたのですが
その時、クラスに気の合うグループが出来て。という感じです。
オレと嫁は違う会社に勤めていました。
ざっくりですがこれくらいで。。

563名前:25投稿日:2012/06/26(火)22:32:06.80
>>560
嫁に聞いたことはないので…。
オレが嫁と知り合った時に前の恋人と別れて3ヶ月くらいになると
聞いたことがあるくらいです。
推測ですが、嫁の性格等も考えればオレも含めて3人くらいじゃないかなぁ。

>>561
今回は動きは無かったみたいです。。

702名前:25投稿日:2012/07/16(月)21:43:51.94
今日、家族でプールに行ってきました。
発端は以前社長と話している時、オレが「子供がプールに行きたいって言ってるんですよ」
と話題にしたことです。
すると社長が「じゃあ、オレは甥の2人を連れていくので偶然出会うようにしよう」となったんです。

事前に家族3人の水着を買いに行くことに。
嫁はタンキニ水着を購入しようとしていましたが、店員もまきこんで
ビキニ水着を買うように説得しました。
Tバックにしてほしかったのですがそれは嫁に即座に却下され、結局ビキニとショートパンツの
組み合わせの水着を購入。
社長も嫁の水着姿を楽しみにしていたのですが、ビキニをみたらどのように思うだろうと
妄想してしまいました。

705名前:25投稿日:2012/07/16(月)22:15:41.57
本当に暑く晴天でプール日和でした。
社長とは(嫁に見つからない様に)携帯で連絡を取りプールサイドで合流。
その時、社長がビキニ姿の嫁を見すぎない様にしようと意識しているのが分かり
いつも余裕のある社長らしくないなぁと(笑)
野球観戦の時と違って、嫁と社長は最初から打ち解けたように談笑していました。
社長の誘いでスライダー(すべり台)を滑ることに。
甥っ子2人の後、社長、嫁が滑ったのですが、嫁が滑った後社長は嫁がプールの水中から
でてくるのを手助けしていました。
何げないことだとは思いますが、何故か軽く嫉妬をしてしまい。
(娘が滑れないので)スライダーを滑りに行くのを躊躇する嫁にオレが「行ってきなよ」と言ったのにですが。。
ちなみにオレはそういうアトラクションが苦手で、娘と一緒にプールにいました。

709名前:25投稿日:2012/07/16(月)22:40:03.51
少し意識しすぎていたのかもしれません。
例えば、オレが食べ物を買いにいって行列のため遅れて戻ってきた時、嫁と社長の姿が無かった時。
オレは焦って社長の甥っ子に「みんなは?」と聞いてしまったことが。
甥っ子が指差したところに嫁と娘がいました。
結局、嫁は娘と一緒に子供用のプールに。社長はトイレに行っていたらしく。

夕方になりそれぞれ車で帰宅することに。
娘は遊び疲れて寝ていました。
オレは嫁に「社長におまえが巨乳だってバレたな(笑)」と運転しながら冗談を言うと
「(社長は)そんなこと気にしてないでしょ」と嫁が笑いながら言いました。
つづいて「でもやっぱりタンキニにしとけばよかった」と恥ずかしそうに嫁が言った時。
その時、嫁が女の表情をしていたと思ったのは妄想のしすぎかもしれません。

710名前:25投稿日:2012/07/16(月)22:46:57.40
今日は祝日のため料理教室はありませんでした。
来週、教室に通っていた生徒の1人が辞めるため授業の後、送別会があるらしいです。
旦那が転勤のため引越しすることになったとのことです。
その送別会は嫁が幹事になり段取りをすることに。
社長も値段は安いけれど美味しい居酒屋を紹介する等、嫁のサポートをしてるとのこと。
嫁と社長はメールで打ち合わせ等をしてるらしいです。
社長がサポートしている件は嫁からは聞いてません。送別会があることは聞いていましたが。

今回の動きはこのくらいです。

712名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/07/16(月)23:00:34.15
報告ありがとうございます。
送別会はもしかしてお泊りですかね?

713名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/07/16(月)23:05:28.75
奥さんはぽっちゃりですか?

714名前:25投稿日:2012/07/16(月)23:46:41.00
>>712
送別会に参加するのはほとんどが主婦のため夜遅くまでは無いと思います。
嫁が社長に口説きおとされた場合は分かりませんが…。

>>713
ぽっちゃりでは無いです。
モデルみたいなというわけではないですが、くびれもありますし。
太くも無く細くも無く普通だと思います。

765名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/07/24(火)21:36:43.72
結論から言えば動きはありませんでした。
月曜の夜、オレは自宅でテレビを見ていたのですがなんとなくソワソワしていて。。
でも、嫁は20時くらいに帰ってきました。
そんなに酔っても無く。カクテルを数杯のんだくらいとのこと。
送別会の話を帰ってきた嫁から聞いたのですが、何故か社長の話題がでることもなく。
社長が送別会に参加したのかオレから聞こうと思ったのですが聞けませんでした。

766名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/07/24(火)21:40:31.27
報告ありがとうございます。
社長の話題が出ないのがむしろ気になりますが。
送別会については社長からも聞きたいところですね。

767名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/07/24(火)22:04:52.65
>>766
今日、仕事の関係で社長と会ったのですが用件を済ませた後、送別会のことについて聞きました。
社長も送別会に参加していたらしいです。
嫁の隣の席で談笑していたとのこと。
「つまらない冗談にもウケてくれたよ」「おかげで軽くだけどボディタッチもできた」
と社長は嬉しそうに。。
社長の携帯のメールを見せてもらったのですが、送別会の打ち合わせの件で
嫁から送られたメールに「頼りにしてます(絵文字)」と書かれたところがあり。。

でも、結局何もなかったよ、と社長は残念そうに言ってました。

今回はこれくらいです。

943名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/08/11(土)19:20:11.64
お久しぶりです。
今のところ、動きはありません。

実は嫁の父親が入院することになって大変でした。
命に別状はありませんが、嫁は落ち込んでいて。。
社長も嫁が料理教室を休んでいたので気になっていたらしくメールでやり取りをしていたらしいですが
詳しくは聞かされていなかったとのこと。入院の件はオレが言いました。
入院先については社長にもお世話になりました。
社長の知人に医師がいて、その医師の紹介状で良い病院に入ることができたんです。
担当医師も腕の良い人らしく。(社長の知人医師の大学時代の後輩らしいです)

オレは嫁に「社長に感謝しなきゃな」と言うと
嫁も「ほんとそうだね」と、うなずいていました。
思わず言ってしまったことですが、なんでオレが社長の好感度を上げるようなことを
言ってしまったんだろう(苦笑)

954名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/08/13(月)19:36:30.34
ありがとうございます。結果がでるまで書き込めたらと思います。

>>945>>946
義父が検診を受けた結果、入院しなければいけなくなったのですが。
良い入院先を探していた時にオレが社長に偶然相談して。
社長の知人医師は開業医ですが、○○科ならA病院かB病院かが良いだろうと。
で、(知人医師が)A病院なら元勤務先で今も大学時代の後輩がいるし紹介状をだすよとのことだったんです。

今はオレの実家に帰省中です。
嫁と娘も同行しています。嫁は今も時々社長とのメールのやり取りをしているはずですが内容はわかりません。
昨日こっそり嫁の携帯を見たのですが社長のメールは削除?しているみたいです…

956名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/08/13(月)22:37:29.53
削除してるメールの内容は、社長から転送してもらえないんですかね?

992名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/08/16(木)19:40:27.32
>>956
それだけのために社長と連絡をとるのもと躊躇しました。
来週、会う予定ですのでその際に聞こうと思っています。

実家先から戻ってきました。
本当になにもせずまったりとした時間を過ごしました。
嫁はオレの母親や妹と一緒に掃除・洗濯・食事などの家事を頑張ってくれて。
もともと優しい性格ですが、母親や妹と仲良くしてくれているのはありがたいです。
オレは娘や妹の子供達の遊び相手に。
セミの抜け殻集めも手伝わされました(苦笑)

それと盆踊り(夏祭り)にも行ってきました。
実家から会場に向かって子供たちと楽しそうに話しながら歩く嫁の後ろ姿を見ながら
良い女だなぁと。
普段はお互いをパパ、ママと呼びあっていますが、実家では下の名前で呼びあっていたのも
少しは関係しているのでしょうか。
さすがに実家なのでセックスに誘うことはありませんでしたが。
夜寝る前に、「お疲れ様。ありがとうね。」と声を掛けたら、
「どうしたの?急に」と言いながらもとても嬉しそうな表情をうかべて。

もしかしたら寝とられることはないのかもしれない、と思ってしまいました。。

69名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/08/27(月)21:09:56.17
お久しぶりです。
先週、社長とお話しすることができました。
メールの件に関しては、たわいもないことでしたが、
最近は嫁とメールのやり取りを良くしているらしいです。
それとオレは初めて知ったのですが、最近2人きりで会うこともあったとのこと。
社長に電化製品を一緒に選んでほしいとのことからだったらしいですが。。

「デートみたいなかんじになったよ。」社長は嬉しそうに。。
人ごみの中で、はぐれないように社長は嫁の手を握って歩いたらしく。
嫁も嫌がらなかったとのこと。さすがに人ごみがなくなったら嫁から手を離したらしいですが。
「それに、好意を示すことを言ってもはぐらかされるんだよなぁ…。恋人がいるんでしょって言われてなぁ」
社長は苦笑いをしていましたが、手ごたえはあるらしく。
すぐに断わらなかったのか…。オレは驚いて話を聞いていました。

今日も料理教室の後、社長と嫁が2人きりでお茶していたらしいのですが
いつもなら30分くらいなのが1時間くらい話し込んでいたと社長からメール報告をいただきました。

嫁からは社長とのことをオレに話すことはないです。。

107名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/02(日)20:27:41.64
お久し振りです。
たいした動きはないので書き込みしないほうがいいかもですが。。
今日の昼に義父の退院祝いのため、オレ達家族3人と義父母で寿司屋で会食しました。
嫁はとても穏やかな感じで、オレに黙って社長と会っている事なんてまるで想像できなくて。。

108名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/02(日)20:29:40.30
それと2日前の金曜に居酒屋で社長とお話させてもらいました。
社長にはすでに恋人が2人いたのですがすべて別れたとのこと。
1人は自然消滅で社長好みの1人は地元に帰ってお見合い結婚するらしいです。
「止めなかったんですか?」とオレが聞いたら、
「仕方ないよ。彼女は結婚したがっていたけれどおれは結婚するつもりがなかったからね。
それに、○○ちゃん(嫁のこと)もいるし(笑)」と社長は表面的には特に落ち込んでる感じでも無く。

111名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/02(日)20:45:46.30
場所をサウナに移してさらに話を伺いました。
以前にも書き込みしましたが、社長のアソコはとても太く。。
オレのとは全く違うので、恥ずかしくてオレの股間をタオルで隠してしまいたいと思ったくらい社長のアソコはグロテスクで。
嫁、これが入ったら殺されるだろって思ってしまいました。
以前とは違い、嫁と社長が結ばれるかもしれないと思ったからでしょうか。
今までとは違う目線で社長のをチラッと見てしまいました。

嫁とは先週も待ち合わせして買い物をしたらしく。
嫁の娘の保育園の帰りのお迎えを実家の義母にまかせて出かけた日があったのは知っていましたが…。
料理教室の後に一緒に買い物をしたりは以前からありましたが、デート?目的で一緒にっていうのは
ここ最近とのこと。。
社長は率直に口説き始めているらしいです。
嫁からはその話題になったら、冗談ばっかりと言って話をそらすか、結婚してるから(笑)と断りとは言えない返答をするからしいです。
でも、しっかりと断ることも無くだそうです。
社長に土下座して口説くのを止めてもらうべきか…。
でも、何も言えないまま社長の話を聞き続けました。。

今日はこれくらいです。

112名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/02(日)20:51:58.06
>>109>>110
こちらこそ、ありがとうございます。
オレから嫁に社長の話をすることは義父の入院の時以来ありません。
もちろん、嫁からもないですが。。
社長を自宅に招待しようかと思い、社長に話したのですが
いま口説いてる最中なので、自宅に行くのは逆効果かもとのことです。
オレにはよくわからない感覚ですが。。

今度、嫁に社長の話題をしてみようと思います。

146名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/07(金)20:06:15.38
動きはありませんでした。。
月曜の夜に、嫁に「社長は今も料理教室に来てるの?」という入りで社長のことを聞いてみました。
嫁は淡々と話し始め…。結局、料理教室の日以外の日であったことは曖昧にされましたが
社長に頼まれて電化製品を買いに行くのを付き合ったことも話してくれました。

嫁が社長のことを、今は、○さんと苗字で呼んでいたこと、そしてその日嫁と社長が話しているのを直接見てしまったので
淡々と話す嫁に逆にオレは軽い不安感を覚えてしまい…。

147名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/07(金)20:22:02.73
その日、オレは電車で営業先に訪問した帰りだったのですが。
そういえばこのコーヒーチェーン店に嫁と乗継時間の合間によくいると社長から聞いていたなぁ。
でも、この時間にはさすがにいないんだろうなぁと思いながら、そのガラス張りの店を見た時…。
笑いながら上目づかいで社長を見る嫁、楽しそうに話していそうな社長を目撃してしまったんです。
短時間だったので2人はオレには気づいてないようでしたが。。
でも、オレは思わず目を逸らし早歩きしてその場を離れました。
こんなに長い時間何を話してるんだろう。心臓がバクバクしながら思いを巡らせてしまい…

148名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/07(金)20:34:46.94
>>123
数字はわかりません。以前にも書き込みをしましたが、やせてもいないけれど太ってもいないです。
くびれはあると思います。バストは大きめで、可愛いブラジャーが中々無いと嫁が言っていたのを覚えています。
確か、Ecupだったような気がします。オレはあまり興味はありませんが。

150名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/07(金)20:45:00.56
>>130>>131
たぶん、嫁は旅行にはいかないと思います。。
以前、社長が名古屋に出張するとの話をうかがった時。
嫁はウナギが好きなんですよ。とオレが言ったので社長が嫁を誘ってもいいかと聞かれたことがありました。
嫁が受け入れたら。。と不安でしたが了承したのですが、結局断られたみたいで。。
社長は、「いけると思ったのになぁ」と残念がっていたことがあったので。

今回も動きはなく申し訳ないのですがこれくらいです。。

176名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/09(日)14:35:41.80
>>152
親密になった最近のことです。
なので、オレは不安で仕方がなかったのですが…。
社長は本気で口説いているみたいです。。

177名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/09(日)14:49:29.15
>>116>>153>>154
オレと嫁の夫婦仲も書き込んではいませんが良いですよ。
他愛もない話をよくしています。
夫婦生活については、以前書き込んで以降1度だけありました。
その時は、社長から話を聞いた後に少し興奮していたのか自宅に戻って嫁にセックスに誘いました。
最中は2人とも淡白なので、あっさりしたものでしたが。。
社長と嫁を引き合わせる4月以前は1〜2年ほどセックスレスだったのを考えると、
約半年で2回もあったのはすごいことなのかなぁと。

オレにとっては今のような環境が一番いいんですよ。
嫁は口説かれているけどオチないというのが。
でも、社長も積極的なので少し不安ですが。。

199名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/12(水)18:34:06.27
>>193
動きはありませんでした。
昨日、社長に久しぶりに居酒屋に連れて行ってもらって。
もちろん、嫁の話題になり。。

「同窓会に出席するらしいね」
嫁から聞いたのか、社長が聞いてきました。

毎年この時期に嫁の高校の同窓会(クラス会)があり嫁は毎回出席しています。
特に、今回は2年ぶりに中学からの親友が出席するとのことで嫁は楽しみにしていました。
同窓会会場は自宅からもギリギリ通える位置にありましたが、(遠方在住の)親友が
同窓会に出席する際は、親友につきあって、嫁ともう1人の友人も泊まりがけで同窓会に出席しています。
もちろん、友人2人は女性です。

女子高なので特にオレも気にすることもなく許していますが。。

200名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/12(水)18:41:22.40
「(オレは)娘と留守番です」
と答えましたが、社長は嫁から泊まりがけで同窓会に出席するとは聞いてなかったらしく。
そのホテルに行こうかなぁ。と社長はオレに聞いてきたけれど断る理由もなく。。

社長も仕事の都合で行けるかどうか微妙とのことですが。。
今回はこんな感じです。

255名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/20(木)18:32:53.75
>>225>>236>>248
動きがなかったので報告は差し控えようと思ったのですが。。

17日は祝日のため料理教室は休みでした。
同窓会は22日土曜の午後にあります。嫁は友人2人とともに土曜に宿泊する予定。
昨日、嫁は美容院に行ってきたようです。
「似合ってるよ」と会社から帰宅後オレが褒めると
「(美容院に行ったことを)気づいてくれたんだ(笑)」
と嫁が喜んでいました。

259名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/20(木)19:02:50.02
社長は今日から出張で土曜も祝日ですが夕方近くまで会合があるとのこと。

土曜まで出張していること、(嫁が)同窓会の日に泊まりになることを旦那(オレのこと)
から聞いたこと、そしてどこのホテルに泊まるの?と嫁にメールしたとのこと。

(実際は、嫁がどのホテルに泊まるかはオレが前回書きこんだように伝えていたけれど。。)

そして、遠いところに出張、大変ですね。から始まり泊まる予定のホテル名や、久しぶりに友人と会うことを楽しみにしていると、
嫁から返信があったらしいです。

土曜夕方まで遠方に出張している社長がまさか嫁の宿泊予定のホテルに行こうと考えているとは
嫁は全く思いもしていないみたいで。
オレが嫁と社長の出張の話を少しした時そう思いました。
社長も実際行けるかは難しいかもとのこと。一応、ホテルの宿泊の予約はしたらしいですが。。

今回はこんな感じです。

329名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/23(日)14:15:42.12
嫁が落ちました。。
以前書き込みましたが、送別会で幹事をしたり、又、娘の通っている保育園でも保護者会の役職をしたりと、しっかりしている嫁が…。
(落ちるはずがないと思っていたので)ショックと(他人に抱かれた嫁を想像して)興奮がないまぜになって今も不思議な感覚なままです。

土曜夕方に女子高の同窓会が終わり、友人2人とともにホテルに行き、ホテル内にあるエステに行ったとの嫁のメールが。
肌がツルツルになったよ。と本当に楽しんでる感じが伝わってきて。
はしゃぎすぎないように(笑)と返信しました。

娘を寝かしつけて、ノンビリしていたのが一変したのが社長からのメールでした。
21時頃に、ホテルに到着したこと、新幹線でビールを飲むのを控えてユンケルを飲んだよ、
と冗談も交えてのメールでした。
それと嫁には、1△△△室にいるから遊びにおいでよとメールを送ったとのこと。

332名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/23(日)14:34:14.28
社長からのメールから、オレはソワソワしてしまい部屋の中を意味もなく歩き回っていました。
嫁が宿泊したホテルは3人部屋がなかったので、それぞれ個室に泊まることになっていました。
何故3人部屋のあるホテルを探したら、とオレは言わなかったんだろうと落ちこみ。。
社長の出張先の会合が予想外に早めに終わった偶然を運の悪すぎると思ったり…

深夜、社長からメールではなく携帯に。。
何があったのかと急いででたら。
「○ちゃん(嫁のこと)を抱いたよ。想像以上に良かったよ。」
オレは絶句してしまいました。

334名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/23(日)14:48:12.16
その時、嫁はシャワーを浴びていたらしい。

「○ちゃんってすごく敏感で感じやすいんだな。」
と社長から聞かれて。
社長はオレと嫁がセックスレスであることは知っていましたが、嫁が淡白なことは伝えていませんでした。
嫁に性欲があるのかと思うくらい淡白だったので、社長の言葉はオレにとって予想外で。

「(携帯を)切らないでな」
と社長が言った後、少し大きな声で仕事関連の話をし始めました。
お疲れ様。と言った後、ドアを開けたらシャワー音が。

335名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/23(日)14:53:23.28
「一緒に入っていい?」
オレに聞かせるためか、シャワー音で聞こえにくいからか社長は大きな声で。
「〜〜〜ダメだよぉ。〜〜。」
社長の声につられてなのかすべてを聞き取ることはできませんが大きな声で返答が。。
親しい人に使うあの声色。嫁でした。。
「せっかく裸になったのに(笑)」
社長は嫁に大きな声で話しかけてましたが、一緒にシャワーを浴びることは断念したようでした。
それより、オレに嫁の声を聞かせようとしていたのかも。。

嫁は夕方くらいに帰宅予定です。
今週、オレは営業で社長のところに訪問後直帰予定なので、その後飲みに行こう
と社長に誘われました。その時の話をしてくれるとのことです。

今回はこれくらいです。

336名前:名無しさん@ピンキー投稿日:2012/09/23(日)15:04:26.38
?社長はどこで携帯が切ったんだよ

337名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/23(日)15:10:03.83
>>336
シャワー室のドアを閉じてしばらく後です。

408名前:25◆W5wNclw7ro投稿日:2012/09/24(月)18:26:38.00
>>334
>少し大きな声で仕事関連の話をし始めました。
>お疲れ様。と言った後、ドアを開けたらシャワー音が。

わかりにくい報告でした。仕事関連の話とは(社長が)会社の部下に話すような感じで演技でした。(内容は結構適当なモノでしたし…)
携帯を持って、浴室(シャワー室)に行くことが不自然にならないようにとのことかもしれません。
浴室前から部屋に戻って、今回のことは今度話すからと打ち合わせをした後社長は携帯を切りました。

>>340>>348
嫁は予定通り夕方に帰宅してきました。
遠方の友人以外のもう一人の友人は隣の市に住んでいるので一緒に帰ってきたとのこと。
オレがホテルの一件を知っている為か、嫁が家族(娘やオレ)に対していつも以上に優しいなぁと感じ。。
同窓会等の話もあまりしてきませんでした。しゃべるのか好きな嫁にしては珍しいことです。
もちろん、社長のことは話題にはならず。
そして、その日の夜、オレは嫁に対してセックスに誘いませんでした。。

今日の料理教室は嫁は出席していると思いますが、社長は欠席してるはず。
休みにもかかわらず、又、次の出張先に今日の朝から向かっているらしいので。
話を聞くのもオレが社長の会社に営業訪問する今週末になる予定です。

今回はこんな感じです。

【学校】教師と教え子の禁断関係 1-2【教室】

$
0
0

翌日は、凄く快晴!
子供達が朝食を食べながら夫に、川に行きませんか?と誘う。
夫もすっかり子供達を気に入って”OK”
濡れても良い様に、夫も短パン姿。
子供達は水着に着替え集合していた。
歩いて20分の所に、小さな滝がある場所に着き、辺りには人気など無い静まり返った所だった。
プール並みに広い川の源流・夫は感動していた。
「凄い綺麗な所だね。街の川からは想像もつかないよ」
「そうね!私も始めて来たわ」
「ここ底も深くなっていて泳げるんだ」
7月中旬、今年は暑くなるのが早く、もう泳げる水温だった。
「気持ちいい!最高!」 夫は既に水の中
「先生も泳ごうよ」
「え・先生はいいわ」 スカートで泳いだら・・・
「良いじゃないか!そのままでも、気持ちいいぞ」

夫に引かれる様に水の中に入った。
「うわっ冷たい!」
子供達が近寄って来る。
「先生、こっちこっち」
「ちょ・ちょっと」
手を引かれる様に、深い所へ連れて行かれる。
夫も興味津々で、年甲斐も無く泳ぎに夢中になっていた。
・・・ん・何かあたる?お尻の辺りに触れる手・・・子供達は私の股間を弄る。
スカートはクラゲの様にフワフワと靡いてパンティが丸見えだった。
夫は、全く気にする様子も無く、子供と一緒にハシャイデいた。
触る手はだんだんパンティの中に入り込み、一気に下げ降ろされ剥ぎ取られた。
「え・駄目よ。ちょっと」
「先生旦那さんに気づかれるよ!黙っていた方が良いんじゃない」
「そんな!」
マンコに指を入れられ、もう既にヌルヌルになっている。
「先生、相変わらずエッチだね!もう濡れてるよ」
「もっとエッチな姿になろうか?」
彼らは、私のシャツの前ボタンを外すとブラジャーも剥ぎ取り出した。
ブラジャを取り終えるとボタンを戻し、胸を揉み出す。
「これで先生は下着付けていないんだ・・・旦那の前で恥ずかしいね」
「ちょっと、マズイわ・・・返して」
「駄目だよ!もっと先生にはエッチになって貰うんだから」
「お願い!夫の前では許して、後で何でもするから・・・」
「先生何言ってるんだよ!旦那さんが近くにいるから興奮するんじゃないか!」
「それに、先生はもう、俺達の性奴隷何だからね」
「・・・・・」
もう、彼らに何を言っても聞き入れて貰えないと思った。
「ただ、夫にばれない様に振舞うしかなかったんです。
彼らに散々弄られ捲り、何度も逝かされふら付く体で水中に居るのが苦痛になっていました。
そんな私に気づいたリーダー各の男の子が私の肩を抱き、陸に連れて行ってくれました。
少しすると、夫も上がって来たんです。
「何だ!大丈夫・・・・お前、ブラ付けていないのか?乳首透けてるぞ」
「えっ、急いでいたから付けないで来ちゃって・・・だから濡れるの嫌だったの」
「そうか!まぁ仕方ない・・・ちょっと子供達には刺激的だが」
「ん~先帰ろうかな?調子も悪いし・・・」
「そうだな!先帰って休んだら・・・」
「じゃ、俺送って行きますよ」  後ろからリーダー各の男の子が言いだした。
「そうか!頼むよ」
彼は私の手を取ると、足早に来た道に向かったんです。
でも、夫が見えなくなると木陰に連れて行かれスカートを脱がされると、その場でマンコに入れられました。
先ほどまで、散々マンコを触られ、逝かされた私の身体は敏感になり、彼の挿入が待ち遠しくも思えました。
待ち望んだかのように、私は喘ぎ声を上げてしまい。思わず手で口を押えています。
「先生、我慢出来なかったんでしょ・・・ねぇ・ねぇ」
「え~そうよ!もう・・・我慢出来ない・・・」
「エッチだな!ここから旦那さん見えているのに・・・」
「夫の事は言わないで・・・」
彼の激しいピストン動作と、体中舐め回すような手の摩りに、私は何度も絶頂を迎えブルブルと震えが止まりません。
しかも、彼が満足すると他のメンバーと入れ替わり、私は4人の生徒に廻され続けました。
リーダーの彼が戻って来て、私は自宅に帰る事が出来ましたが、もうフラフラで倒れこむ様に畳の上に横になりました。
彼が夫を迎えに行くからと言い残し、部屋を出て行きました。
1時間程して、夫が戻って来ましたが、彼らの姿がありませんでした。
夫は私を見るなり驚いた表情です。もちろんそうでしょう!
丈も短く、体に張り付いたラインに生地も薄く透けて見える位です。彼の指示でした、逆らう事は出来ません。
しかも、下着は付けていないので、日が当たれば乳首もアソコの毛も(無いんですけど・・・)透ける位です。
「お前!何だその格好」
「え~ちょっとエッチな感じもいいかな~って」
「こっちじゃ、そんなのが流行っているのか?」
「ん~貰った物で、捨てるの勿体ないから・・・着てみたの」夫は余りの姿に驚きも示したが、満更でも無い様子でキスをして来たんです。
でも、それを読んでいたかのように、彼らが現れ夫は残念そうな表情を浮かべていました。
それから、2時間程して夫は帰る事に。
「君達、ちゃんと勉強していい高校に行くんだぞ!」
「はい!先生の教え方いいから、成績上昇中ですよ。大丈夫」
「そうか!妻の事も頼んだぞ!」
「え~淋しい思いはさせませんから・・・心配しないで下さい」
「頼もしいね!じゃ、また来るよ」
夫は車に乗り込むと、帰って行った。
夫と会話している最中も、私は後ろからマンコを触られアナルに指を入れられていたんです。
夫との別れを惜しんでいる心境ではありません。身も心も彼らのチンポを早く受け入れたいと待ち望んでいたんですから。もう11月も末、私は毎日の様に彼らから性教育を受けています。
教えてくれる男の子も7人(クラスの男全員)に増えました。
彼らは不思議と学校では、私の身体に触れる事すらしません。
むしろ、勉強に集中してくれます。だから、成績はグングン上がりクラス平均も全国平均より上です。
きっと、みんな上位高校に行けるでしょう!私の奴隷契約も彼らの卒業と共に解約されるのでしょうか?
もう、元の身体に戻る事は出来ないと思います。そして契約延長を・・・・。また、暇を見て夏場の詳しい出来事を書きたいと思います。

【学校】男女同室着替え 【教室】

$
0
0

今では信じられないと思うが、自分の小学生当時、体育の着替えは6年間ずっと教室で、男女混合だった。
しかも普通の体育の時だけでなく、プールの着替えも同じだった。
〔嘘だと思う人は、一度あなたのご両親に尋ねてみるといいですよ。実態に驚くと思います。〕

当時の同級生の一人に、由美子という名前の女子がいた。
彼女とは、小3から小6までずっと同じクラスだったので、そういう方面での思い出が、今でも脳裏に焼きついている。

最も古い記憶は、小3のプール着替えの時。
その頃の自分はまだ羞恥心なんてないし、海パンに着替える時には、女子の目の前でも平気でふるちんになっていた。
自分だけでなく、クラスのほとんどの男子も同じだったと思う。
その頃、隣の席だったのが、この由美子だった。
いつぞやの着替えで、その日もいつもと同じくチンコ丸出しになっていた自分に対して、
「ねえ、○×くんってさ、みんなより、ちょっとだけおちんちん大きいんだよね。」
一瞬、耳を疑ったが、確かに本人の口から発した言葉だった。
「そんなの、男だったら付いてるのは、みんな同じものだろが。」

その時は、さらりとそう返したと思うし、当時わずか8歳の少年の答えとしては、ごく平均的なものだったと思う。
ところが、後で振り返ってみると、由美子は当時から男のチンコに並々ならぬ関心を寄せていたことが分かる。
まだ小3だったし、本心を思わず口に出してしまっただけだと思うが、由美子がそういう視線で男子を見てることを知ってしまった自分は、その後、学年が上がっていくにつれ、由美子の存在が気になって仕方ないようになった。

やがて4年になった。
プール着替えでのみんなの様子に変化が現れた。
羞恥心を覚えた男子が、腰にタオルを巻いて、海パンに着替えるようになったのだ。
自分も同じだった。
ところが、ここで思わぬ横ヤリが入る。
「あんたたち、なに一丁前にタオルなんか巻いてるの!男だったら正々堂々と着替えなさい!」
声の主はクラス担任のおばさん先生だ。
このおばさん先生、当時50代半ばで、女性教師の中では女ボス的存在だった。
年齢を理由に、自身がプールに入ることはなかったが、なぜかプール着替えの時も教室に居残り、睨みを利かせていた。
「たかがおちんちんぐらい女子に見られて何が恥ずかしいの?そんなのは毛が生えてからの話。君らはまだなんだし、隠すのは10年早い!」
当時は今みたいに教師と生徒が対等な関係ではなく、縦の主従関係が厳格で、子供が先生の命令に逆らうことは許されなかったし、また厳しさで名を売っていた女教師でもあったので、結局ふるちんを余儀なくされた。

着替えは自分の席でするのが決まりだった。
自分のクラスの場合、これも6年までずっと同じだったが、男子と女子とで互い違いに席が指定されていた。
だから、自分の前後左右、全てが女子という配列だった。
そんな中で、男の自分はパンツを脱いで、正々堂々と自分の恥ずかしいチンコを晒さなければならない。
周りを女子に取り囲まれる中、毎回そんな調子なのだから、女子たちが自分らをどういう眼で見ていたかはさておき、自分としては屈辱的に恥ずかしいことだった。
しかも、女子はタオルやスカートでいくら隠そうが、当のおばさん先生は何も注意しないのだから。
この時は由美子とは近くの席ではなかったが、どうせ彼女のことだから、周りの男子のチンコをくまなくチェックしていたことだけは間違いない。
でも、そのおかげで、やがてこっちも美味しい思いをすることになるのだけど、それについては後で書きます。

自分らは6年になっていた。
途中クラス替えがあり、晴れて例のおばさん先生とも別れたのだが、由美子とは引き続き同じクラスだった。
だから5年の時には、プール着替えでは男子もタオル巻きだったのだけど、由美子とは席が離れ離れだったのでここでは取り上げない。
夏を迎えいよいよプール授業が始まったが、ちょうど自分の前の席が由美子だった。
自らの衣服を脱ぐ一方で、自分はすぐ目の前で背を向けて着替える由美子が気になって仕方なかった。
由美子はスカートを穿いたまま中のパンツを脱ぎ、スクール水着を腰まで持ち上げる。
この時、人によっては女子のパンツが見えて、興奮するケースもあったようだが、自分の場合は、下着には特に興味がなかったし、パンツが見えたぐらいで別にどうこうもなかった。

見どころはプール授業が終わってからだった。
由美子は、スクール水着の肩ひもだけを外すと、胸の上から厳重にバスタオルを巻いた。
そして、両脇のタオルを捲って水着を掴むと、一気に全て脱いでしまう。
旅番組で入浴する女性タレントがカメラに見せるのと同じ、タオル軍艦巻きのスタイルだ。
そしてパンツを穿くのだけど、腰まで引き上げる時、ほんの少しだけなんだけど、由美子のお尻がチラりと見えてしまうタイミングがあることを発見してしまった。
決して毎回見えるわけでもなく、またお尻全部が見えるわけでもない。
見えるのは数回に一度の頻度で、しかも瞬き一回分か二回分のわずかな一瞬だ。
でも、背後からだと本人と視線が合わないし、着替えの一部始終を遠慮なく観察することができるから、その一瞬のタイミングに照準を合わせられるのだ。

このお尻チラ見えは、タオル軍艦巻きの時だけに可能性のある現象だった。
スカート着用だとひざまで覆われるし、股下の丈が長いから、水着を腰まで引き上げる際にも丈がお尻をガードするので、中の生尻が見えてしまうことはまずない。
ところが、これが軍艦巻きだと、ただでさえカバーできるのが股下ギリギリなのに、スカートの時と同じ調子で引っぱり上げると、パンツよりもタオルのほうが上まで捲れ上がって、部分的にお尻が見えてしまうのだ。
もちろん本人もそのあたりは分かってるし、巧みに生尻を晒さないように頑張っていたのだけど、後ろは自分の目では直接確認できないので、数回に一度は、タオルとパンツの間から、由美子の白い2つの尻肉と、その間を分けるお尻の谷間がわずかながらも確実に露出してしまっていた。

だがチラ見えした直後には、もうしっかりとパンツがお尻全体を包み、背中まで持ち上がっていたので、事実上、由美子のこの件について知っていたのは、真後ろにいた自分だけだった。
普段の2人は、勝ち気な由美子に対しそれにおされ気味の自分とで、基本的な力関係は彼女優勢だったのだけど、彼女の生尻を目撃した後は、なんかそれで一方的に彼女の秘密を握ったような心境になり、内心ではニヤニヤしていたものだ。

7月に入り、席替えが行われたが、この時、ついに由美子と隣同士になった。
前にも書いた通り、プールの着替えは自分の席で行うのが決まりだった。
だから、今度は横から由美子の着替え風景を覗くことになる。
これまで見れなかった胸、そしてあそこを至近距離から覗ける可能性を手にしたことになる。
すでに生尻ゲットに成功していた自分は、由美子のおっぱい、そしてあそこも攻略して見れそうな気がしてきて、嬉しくてたまらなかった。

そんな自分の心境など知る由もない由美子は、その日もいつも通り、スカートを穿いたままパンツを脱ぎ、スクール水着を腰まで持ち上げた。
隣の自分は隙を見ては由美子の下半身に注目したが、やはり肝心な部分は見えなかった。

問題はその後だった。
スカートと半袖シャツを脱いだ由美子はスリップ姿になった。
スリップ自体は普通の体育の着替えで毎回目にしており、自分もその姿に慣れていたし、また彼女のほうも別に上半身裸というわけでもないので、全くその姿を恥らう様子はなかった。
残るは、上半身をスリップからスクール水着に着替える手順のみだったが、お年頃の女子だから、その際、周りに生胸を晒さないように工夫する必要があった。

由美子が採った対応策は、まずスリップを着たままスクール水着を胸のすぐ下まで持ち上げる。
次にスリップの肩だけを脱ぎ、スリップの内側に腕を入れて、中でスクール水着を胸まで完全に覆う。
最後にスクール水着の肩紐を腕に通す、と同時にスリップを脱いで、お着替え完了、という手順だった。
実際、由美子は慣れた様子でこの方法で巧みにスクール水着に着替え終えたのだった。

ところが、由美子は自信満々だったものの、実は隣の自分にはしっかり由美子の生胸が見えていたのだ。
スリップの肩を脱ぐ時、どうしても抜いた肘がスリップの内側から外に押す形になるため、それまで体と密着していたスリップが大きく胸元から離れて、横の自分からだと、胸の中が覗ける形になってしまう。
結局大きく開いた胸元から、ご丁寧にも、スリップの中でスクール水着を胸まで引っ張り上げて、胸部を覆うまでの由美子の動作の一部始終がまるごと確認できた。
その事実を知らないのは由美子だけだった。

由美子の絶対見られたくない3点セットのうち、本人が気付かないままにお尻と胸を攻略した自分にとって、残るはあそこのみとなった。
だが、さすがに残ったあそこだけは由美子のガードも固く、どうしても見ることができなかった。

ある日のことだった。
着替えを終えてプールへと入場した自分だったが、水に濡れたプールサイドの途中でうっかり滑って、転んで膝を擦ってしまった。
とりあえず保健室で手当てしてもらったが、血が出たため、もうその日のプール授業には参加できず、先に一人教室に戻って服に着替えることになった。
教室に戻ると、まだ自分の他には誰も帰ってきていない。
それどころかプール授業終了まで、まだ30分以上残っている。
隣の席の主の由美子もまだいない。
机の上には由美子の脱いだ衣類が。
人によっては、こんな状況になると、パンツの匂いを嗅いだり、中にはパンツ自体をお持ち帰りしてしまった思い出のある人もいるようだが、そんな趣味のない自分は服に手を付けることはしなかった。

でも、誰もいないし、由美子のことに多少興味のあった自分は、こっそり彼女のランドセルの中を覗いて見た。
教科書、ノート、筆箱…、そういったありきたりの物の他に、気になる持ち物を発見した。
その持ち物とは、交換ノート。
と言っても、最近の人には説明しないと理解できないかも知れない。

自分の頃の女子はお年頃になると、親しい女友達同士で一冊のノートを共有して、そこに色んなことを書き記すという習慣があった。
グループ内で回す交換日記みたいなものだ。
もちろん内容は彼女らだけの秘密で、特に男子には絶対見せないのがルールだった。
由美子も仲の良い女の子同士で、この交換ノートを共有していた。
今の子にはメールがこの代わりの存在だろう。

どうしても由美子の交換ノートが読みたくなった自分は、ランドセルからそれを取り出すと、さっそく1ページ目からざっと読んでみた。
気になる内容は、と言うと、初めのうちは好きな男子の話とか、好きなアイドルとか、テレビ番組とか。
まあ自分にとっては一度目を通したら、後は別にどうでもいい内容だった。
ちなみに、由美子の好きな男子は当然ながら自分ではなかった。
そりゃ、力関係で自分よりも弱そうな男子を好きになる女子なんて、どこにもいないだろう。

ところが、途中からノートの内容ががらりと一変する。
「ねえねえ。実はあたし、プールの着替えの時、○×くんのおちんちん見ちゃったんだ、しかも何度も(笑)。あの子、パンツ脱ぐ時に足を大きく上げるから、タオルで隠してもおちんちんしっかり見えちゃうんだよね(笑)。」
「へえ?○×くんのおちんちんってどんな感じなの?」
「こんな感じかな」
昔の記憶だから、今も一字一句まで正確に覚えているわけではないが、ニュアンス的には大体こんな感じだったと思う。
そして、ご丁寧にも、「これが○×くんのおチンチン(実物大)!!」と称して、由美子が書いた、自分のチンコのイラストが、まるまる1ページを使って描かれていた。
そのチンコの長さといい、太さといい、形といい、まさに自分のそれに瓜二つだった。
自分が由美子のお尻や胸を密かに覗いて楽しんでいた一方で、実はその裏では、由美子にも自分のチンコをしっかりと観察されていたのだ。

読んでいくうちに、さすがにだんだん腹が立ってきて、直接由美子にこの件に関してしっかりとっちめたくなった自分は、証拠としてこっそり交換ノートを自分のかばんの中に忍ばせ、家に持って帰った。

次の日、放課後に話があると言って、由美子をひと気のない校舎の裏手に呼び出すと、自分は由美子に向かって交換ノートを見せた。
「あっ、それ、探してたんだ。返して、返してよ!」
もちろん拒否だ。
そして自分は由美子に向かって、例のイラストのページを目一杯に広げて見せてやった。
「一体何だよ、これは!これ、お前の絵だろが!俺、悔しくてたまらないぞ!」
普段は大人しい自分だったが、この時だけは犬みたいに吼えるように由美子に向かって言ってやった。
「あっ、しまった…」
そんな表情が顔に表れた由美子だったが、さすがに事の重大さが分かったようだ。

「俺はお前に陰で嫌がらせされてたんだ。この件について先生にきっちり話して、お前の親にも伝えるよう頼んでおくからな、まあ覚悟しとけ!」
「お願い、それだけは絶対やめて、お願い!」
「これは侮辱だ、俺は絶対許さない。」
自分も由美子のお尻や胸を見ていたから、そういう意味ではおあいこかなとも思ったが、向こうはそのことを知らないし、自分も一応は男だから、たまには力関係が逆転して、由美子に対して優位に立てるのが嬉しくて、ここは厳しい態度を続けた。

しばらくそういうやり取りを続けるうちに、次第に由美子がしおらしくなってきて、目に涙を浮かべてるのが自分には分かった。
「ごめんなさい。○×くんの言うことを何でも聞くから、お願いだから先生に言うのだけは勘弁して。ごめんなさい。」
遂には土下座までして謝ろうとしてきた。
さすがに今にも泣き出しそうな由美子を見ると、もうそろそろ許してやってもいいかな?とも思った。
しかもお詫びに自分の言うことを何でも聞き入れてくれるという。

しばらく自分は考えた。
結論としてはやっぱりこれしかなかった。
口に出してみた。
「俺に、お前の裸を見せて欲しい!」
小学6年の由美子にとっては、ちょっとハードルの高い条件だったかも知れない。
さすがに、黙り込んでしまった。

しばらく考えた後、ようやく由美子から言葉が返ってきた。
「分かったわ。でも自分だけじゃ恥ずかしいし、○×くんも一緒に見せて欲しいな。」
自分は既に何度もチンコを由美子に見られていたし、今更、由美子の前での裸にも抵抗なかったので、承諾した。
それに、自分にとっては今度こそ待望の由美子のあそこが見れるわけだし、拒否する理由もなかった。
問題はどこで見せるかだった。
ここは校舎の裏手だが、建物の外だから、誰かに見られる危険性があった。
由美子だけになら、別に自分の裸を見られても構わないけど、それ以外の奴には、やっぱり嫌だった。

学校は5時になると下校時間で正門が閉まるので、それまでに済ませないといけない。
運動場には、その5時ギリギリまで遊ぶ予定の児童らが残っていた。
一方、校舎内は放課後だし、掃除も終わったしで、職員室を除いては、もう人は残っていないはずだ。
そういうわけで、見せ合う場所は校舎内に決まった。
そして、2棟ある校舎のうち、職員室がないほうの棟の、4階の男子トイレで見せ合うことに決めた。
女子トイレにしなかったのは、もし万が一見つかった場合に、男子トイレに女子が入っていたケースよりも、女子トイレに男子が入っていたケースのほうが、道徳的に考えてはるかにマズいと考えたからだ。
運動場で遊ぶ児童が途中でトイレに行く場合でも、わざわざ階段を使って4階までやってくる奴はいないだろうし、この案でいいと思った。

ただ、5時に近いほうが残ってる人も少なくなるだろうし、決行時間を4時半と決めた2人は、しばらくの間、校舎の裏手で話をした。

「なあ由美っぺ、お前、一体今まで何人のチンコ見てきたんだよ。正直に話してごらん。」
「3・4年の時はみんなふるちんだったし全員見た。5・6年の時はタオルで隠してるけど今まででクラスの半分ぐらいかな。」
今思うに、お年頃の少女に尋ねるには、あまりにも恥ずかしい質問なのだが、由美子は正直に答えてくれた。
「でも、○×くんのおちんちんはクラスでも大きいほうだよ、心配しないで。」
別に自分のチンコの大きさなど気にもしてないのだが、女子目線だと、少し違うみたいだ。
「交換ノート見られたからもう知ってると思うけど、あたしの好きなのは悪いけど○×くんじゃなくって△□くん。あっ、これはここだけの秘密ね。あと、○×くんはおちんちん大きいんだからもっと男らしく強くなって欲しいな。そうなると好きになるかも知れない。」
ちょっと嬉しかったけど、なんでもかんでもチンコを基準に話をするのは止めて欲しいと思った。

話をしてるうちに、遂に時間となった。
4階に上がった2人は、念のため、残ってる人がいないか、4階中の廊下および教室内を隅まで見て回ったが、誰も残っていないのを確認すると、男子トイレに入った。

トイレ内の洗面所の前で、2人は一枚ずつ衣服を脱ぎ始めた。
壁には大きな鏡が付いているので、鏡の向こうに2人の姿がはっきりと映っている。

やがて、2人は下着姿になった。
由美子はここでちょっとためらったが、僕の目の前で結局は潔くスリップを脱いだ。
上半身が赤裸々になった。
脱いだ瞬間こそ、どこかうつむき加減だったものの、開き直ってすぐに前を向くと、もう胸を隠すこともせずに背筋をピンと伸ばした。
さすがに勝ち気な女の子なだけのことはある。

残るはともに最後の砦であるパンツ一枚だけだ。
でもさすがに思春期を迎えた2人はパンツを脱ぐのには躊躇した。
しかし、せっかくここまでたどり着いたのだから、自分は由美子のあそこだけは絶対見て帰りたかった。

脱げないまま固まってしまって、しばらく間が空いた後、号令を掛けて、最後の一枚を脱ぐことにした。
「3・2・1・ゼロ!」
ついに2人はお互い生まれたままの姿になった。

由美子はまだ生えてなかった。
男の自分は当然まだ生える前。
当時は小学生で生えてる男子は極めて珍しかった。
思春期は女子のほうが男子よりも一足早く成長するし、この頃、2人の身長はわずかながらも、由美子のほうが勝っていた。
だから、なんとなくだが、由美子には毛が生えているのではないか?という疑惑があった。

股間にはチンコの代わりに女の子の象徴である縦筋が一本入っていた。
でも、なんとなく、その周辺がぷっくり膨らんで黒みがかっていた。
幼な子のような単純な一本線ではなかった。
たぶん、生える直前だったのではなかっただろうか。

人によっては、その縦筋の奥に隠された女性器そのものを見たくてたまらないだろうと思う。
しかしこの時点で、自分にはまだS○Xの知識がなく、女性器に関して詳しく知らなかったので、由美子に股を広げてもらって見せてもらうという発想はなかったし、縦筋を確認できただけで満足だった。

改めて、一糸纏わぬ姿になった2人を鏡で確認してみた。
横並びなので、男女の体つきの違いが一目瞭然だ。
由美子は胸のほうはまだまだだったが、腰周りの大きさは断然、由美子のほうが大きかった。
男の自分よりもどっしりした、大地みたいな存在感。
小学生なりに、由美子の体型に大人を感じた。

自分は鏡を見つめながら由美子のほうに身を寄せると、一方的に彼女の肩の上に手を載せた。
少し2人の間に距離があったし、単純に男女の体つきの違いの比較をしたかった自分としては、ギリギリまで近づいたほうが分かりやすいし、別に彼女といちゃつきたいとかいう意図はなかった。
でも、その時、自分の肌と由美子の肌がはっきり触れ合った。
肌を通して由美子の体の温もりと、女性特有の柔らかさが伝わってきた。
そして互いの肩と腕が密着しても、由美子はそれを嫌がらずに受け入れてくれた。
小学6年にもなると、男子の中には、そんな状況下だと、我慢できずに自分のチンコがムクっと立ち上がって勃起というケースもあるだろう。
しかし、自分にはこの時点でまだ夢精の訪れがなく、もちろんマスターベーションなんて全く未経験だった。
だから、全裸の由美子の目の前でもチンコが勃起なんてことはなかった。

自分はしばらくの間、鏡に向かってお互いの裸体をじっくり見つめていた。
一方の由美子のほうも、鏡越しや直接自分のほうを向いて、体やチンコチェックを行っていた。
視線が明らかにチンコのほうを向いていても、もうそれを隠そうともしないし、一方の自分も、そんな由美子の性的な好奇心を受け入れていた。
お互い様だ。

お互いのお尻も比べたくなった自分は、由美子に頼んで、鏡に背中を向けてもらう。
同時に自分も背中を鏡に向けると、顔だけ後ろに曲げて鏡を見た。
大きい。はるかに由美子のお尻のほうが大きい。
横幅、肉の付き具合、そしてお尻の溝の長さに至るまで、全てが自分を凌駕していた。
対する自分のは、まだ成長前の、貧弱な男子小学生のそれだった。
じっくりお互いの全裸を見せ終えた2人は、くるりと向きを反転させたのだけど、その時、お互いのお尻がドーンとぶつかって、尻相撲みたいな形になった。
自分のほうが勢い良く飛ばされた。
ちょっとかっこ悪かったけど、おかげで由美子の生のお尻の感触を、身をもって体験することができた。
それは、柔らかくて弾力性があってお餅みたいな、男の尻とは違う感触だった。
あれから何十年も経過したけど、未だに忘れられない思い出だ。

見せっこを終えた後、男子トイレ内で急いで服を着た2人は、何事もなかったかのように廊下に出ると、別々の方へと歩き去った。
このことはその後もずっと2人だけの秘密だった。

【学校】プールの更衣室でちんこを振り回すとこうなる【教室】

$
0
0

中学2年の夏休み、学校のプールが開放されることになった。
生徒限定だけど、暇ならただで遊びに来れば~?っていう適当な感じの。
平日はほぼ毎日開いてたけど、思ったよりは不人気だった。
(先生もいろいろ面倒くせーってことで、翌年から数日間×数時間のみの開放となる)
 
夏休み後半になると、朝早い時間に行けば、ほとんど1人貸切状態だった。
プールは職員室の窓から見えるので、監視員役の先生も常駐はしてない。
 
俺は学校まで徒歩3分の近所に住んでたので、1人でもちょくちょく行ってた。
その日も朝から1人で、のんびりぷかぷかしに行った。
 
まず職員室で先生にひと声かけて、プール利用者ノートに名前を書くことになってる。
ここんとこ俺が一番乗りだったけど、その日はちょっと遅くなった。
ノートを見ると、すでに女子が3人来てるらしい。
 

その中に「マコ」の名前があった。
マコがいるー!マコの水着見れる!
いっぺんにドキドキしてきた。
マコ部活サボったのか、まあ理由はどうでもいい。
 
※マコは幼小中とずっと同じ、その後も高校まで同じだった女子です。
 
マコとは小4くらいまで、毎年同じクラスで一緒にはしゃぎ回る大の仲良しだった。
中学では割と真面目な性格になったみたいで、そこそこ優等生。
クラスも違ったし、俺なんかと話す機会はほとんどなくなった。
でも控えめな佇まいもかわいくて、ちょい天然なとこもあって、ずっと大好きだった。
 
夏休みのプールは、普段の男女別の授業とは違って、混浴状態。
男子に水着を見られるのが恥ずかしいのか、もともと女子の利用者は少なかった。
 
別に俺は最初から、女子の水着目当てでプールに通ってたわけじゃないよ(力説)
けど、好きな女子がいるとわかったら話は別だよ!
ふふふ~んと鼻歌でワクワクしながら更衣室に入った。
 
***
 
ところで。
 
実は俺には、ちょっとした露出願望がある。
公共の場でパンツ脱ぐだけで、なぜかぼっ起することがあるっていう、プチ変態です。
周りに女がいなくても、ちんこを外界にさらすと興奮する。
 
授業のプールの着替えでも、ぼっ起しそうになる。
宿泊研修の風呂とかもやばかった。(ゲイではないです)
そんな中で心頭滅却という言葉とその実践の難しさを知った。
 
でもこうして1人の時は、自分を抑える必要がない。
更衣室という公共の広い空間で、堂々と全裸になれる!
空いてるプールに1人で来ると、こういう副産物的な楽しみがある。
だからズボンの下に海パンを穿いてくる、ってことはしてない。
 
思い切り全ぼっ起して、更衣室の中を歩き回るのは楽しい。
誰かが急に入って来た時のために、バスタオルだけは手に持っている。
この、全裸だけど最後の砦だけはあるっていう、緊張感のバランスがたまらない!
 
といってもプチ変態はその程度で、こんなとこでオナニーとかする度胸はなかった。
 
※実際に露出狂になったことはないので、どうかこんな変態少年を許して下さい。
 
***
 
さてこの時は、水着のマコを思い浮かべて、もう脱ぐ前から小ぼっ起してた。
そして全裸になった瞬間、むくむくぼっきんとちんこが完全体に。
バスタオルは手に持っている。
 
いつもはちょっと歩きまわったら満足して、プールサイドに出る。
でも今日は、出たらそこに人がいるとわかってるので、ぼっ起が治まるまで行けない。
早くマコを見たいけど、治まるのを待つ。
 
むしろほんとは、ぼっ起をマコに見せたかったりして。
とか思ってみるけど、イヤーンやっぱり恥ずかしい。
結局いつもより大胆に全裸ではしゃいでしまって、ちんこは治まる気配がない。
 
腰を突き出してちんこをぶんぶん回して、ふーんっふーっと鼻息が荒くなったり。
ちんこをタオル掛けにして、直立不動で意味もなくニヤリとしてみたり。
「ああ、マコぉ…」と、つい独り言も出た。
 
((モゾモゾ、クフン))
 
…おや、何?今の…。
 
((フンック))
 
え?何か聞こえたよね、ひいぃい!!!
何だろ今の音。声か?…ええぇ?
 
周りを見渡して、俺は…あることに気付いた。
 
更衣室の隅に、カーテンで仕切られた個室的な一角があります。
これは先生が着替えるところ。
先生と生徒が同時に着替えることは、あまりないけど、一応そういうスペースがある。
 
そのカーテンが閉まってた。
いつもは開いてるのに。
今日に限って浮かれてた俺は、そのことに全然気付いてなかった。
 
あ の 中 に 何 か が い る!!
 
先生じゃないのは確か。
たまに定期見回りを兼ねて泳ぎに来る体育のムキムキ先生は、さっき職員室にいた。
じゃあ何だよ!怖いいいぃ!
心霊的なお化けを想像して全身鳥肌が立った。
 
ぼっ起している理由が「生存本能」に変わった気がした。
 
カーテンは少しだけ隙間が開いていた。
俺は怖いのに、いや怖いからこそ、そこに背を向けることが出来なかった。
ちんこだけはタオルで押さえて隠していた。
ちんこをお化けに見られる恥ずかしさじゃなくて、守らなきゃいけないと思った。
 
すると、「アワワ…ムッチャン…ガ」
 
ビクン!睦ちゃんって俺の名前だっ。
カーテンの向こうのお化けが、なぜか俺の名前を知っている。
って言うかその声は?
 
俺は思わずカーテンをがばっと開けた。
そこにいたのは…
マコ!何でマコ!((どうしてこうなった!))
 
***
 
スクール水着のマコが、壁際にへたり込んでいた。
なぜか水着を、おへその辺りまでしか着てなくて、胸は両手で押さえてる。
まさかレイプとか!でも違う、そんな雰囲気じゃないことだけはわかる。
 
俺の思考は停止した。
 
ぼっ起ちんこをタオルで押さえたまま、後ずさりした。
後ずさりって言うか、後ろによろめいた感じ。
そしたらスノコにつまづいて地味にひっくり返った。
 
「うわあ大丈夫っ?」 駆け寄って来るマコ。
 
一瞬タオルを離してしまって、ちんこをもろに見られたけど、またすぐに隠す。
 
マコもあわてていたのか、胸を押さえていた両手を離した!
おおおっぱい!ああ、同級生のおっぱい!フー(鼻息)
おっぱい見えたよ大好きなマコのおっぱい!
ちゃんとふよふよ揺れるくらい大きく育ってるよ!
乳首乳首!乳首見えたよ!色は薄いよー。
 
おっぱいが見えてることに、すぐに気付いたマコ。
あわてて背中を向けて水着をちゃんと着直した。
 
停止していた俺の思考が、支離滅裂に回転し始める。
 
おっぱい見たちんこ見られた、マコがいる理由わからない足ぶつけた痛い、あーマコが心配して俺のそばにいる見たかった水着姿、おっぱい見たちんこ見られた、今俺裸だマコが俺の顔見てるかわいいでも泣いてる、おっぱい見たちんこ見られた…何これ何か来たぞ、ちんこが…ちんこがぞわぞわする!あー!あー!
 
…混乱しまくってる俺にはっ!突然の射精感を止める方法がなかったっ。
 
***
 
俺はタオルの中に精液を、たっぷりどっぷり、どっぴゅんどくどくと放出し続けた。
 
そんなこと知る由もないマコは、倒れている俺のそばに座っていた。
射精の快感で下半身がびっくんびっくん震える。
マコも俺の様子に気付いて、反射的にびくっと少し後ろに下がった。
俺が震えた理由は…、どうか知らないでいて欲しい。
 
イっちゃったからか、俺はほんの少しだけ冷静になった。
ちんこは急激にしぼんで元に戻った。
「ごめん、大丈夫」と言ってささっと海パンをはいた。
 
でも、やっと訪れた冷静さは、当たり前の事実に気付くとすぐに吹っ飛んだ。
血の気が引くような恥ずかしさで吹っ飛んだ。
マコは俺が来る前からそこにいた、ってことは、最初から全部?
 
全 部 見 ら れ て た ?
 
俺が!更衣室に入ってからとった行動!
すっぽんぽんニヤニヤ~の変態奇行、全部見られてた!
マコが何でここにいるかってことより、そのことだけで、頭がいっぱいになった。
 
「見、みみみっみ見」
 
怖くて「見てた?」と聞けなかった。
でもマコの表情を見れば、聞くまでもなかった。
マコもまだパニック状態で、あわあわしていた。
「ごめんごめごめん、でも睦ちゃんで良かった」とマコ。
 
何だよそれ…、やり場のない恥ずかしさが怒りに変わった!
 
「何が良かったんだよ!何で女がいるの、もう勘弁してえええ!」
 
わめいてしまってちょっと後悔、マコは泣いていた。
 
***
 
泣きながらマコが話し始めた。
「○○先輩があ、私を好きで、それで、森ちゃんと泉ちゃんが、ああああ」
 
…全然意味がわからない。
あとから知ったことも合わせて、ちょっと話をまとめます。
 
○○先輩というのは、安易なキャラ説明をすると、さわやかチャラ男な部活のOB。
森と泉は、マコの部活仲間で同級生、今日3人でプールに来た。
 
最近さわやか先輩がマコに告白したみたいで、森と泉はマコを憎たらしく思っている。
マコが告白を受けようが断ろうが、妬み女子にはそんなの関係ねー。
嫌がらせのために、マコをプールに誘って、男子更衣室に放り込んだ。
 
「告白は断れ、先輩とはもうしゃべるな、でないと許さん」
「お前はここで着替えて、男の裸でも覗いとけ。一緒に着替えてもいいぞプププ」
「ちんこ見たらサイズ教えろよ、ウチらは先にプールで待っているからな」
 
というようなことを言われた。
これを言うために、服の下から水着を着てこないように、急かして誘い出したようだ。
用意周到なずる賢さである。
 
そして、誰か男が来るまでは出てくるな、と釘を刺された。
 
つまり、【マコが男(この場合俺)よりも後に】プールサイドに出てくる状況を見たいと。
そしたら森と泉は【マコは男が着替えしてる更衣室にいた】と確信して断罪できる。
「変態だプププッ」とあざ笑って楽しむわけだ。
 
という状況に置かれて、恐る恐るカーテンの裏で着替え始めるマコ。
するとそこに鼻歌まじりの俺が来た。
物音を立てたくないので、マコは水着を半分まで着た状態で、息を潜めた。
 
いじめられてる最中だけど、何だかんだ言ってもやっぱり気になる。
カーテンの隙間から、マコはドキドキしながら覗く。
((うわ、睦ちゃんだ))
来た男子が、よく知ってる俺だったから、安心感と罪悪感が両方あった。
(その安心感の部分で、さっき「睦ちゃんで良かった」と言ってしまったらしい)
 
そして、1人だからと何も隠さず堂々と全裸になる俺。
それどころか、歩き回ったり、誰もいないのに見せびらかすような動き!
ちんこも振り回す!なぜかぼっ起している!
 
((何これ…)) ドキドキして息を飲むマコ。
初めて見る同級生のぼっ起ちんこに心臓バクバクのマコ。
とどめは俺の「マコぉ」というつぶやき。
 
見てるのがバレたっ?と思ってちょっと動いてしまい、喉の奥を鳴らしてしまった。
頭の中は真っ白、パニック、無意識に俺の名前を声に出した。
そして俺に見つかって、今こういう状況。
 
***
 
マコの話は取りとめがなくて散漫で、この時点ではよくわからなかった。
でもこれがいじめの現場だってこと、それだけは理解できた。
 
混線してた俺の怒りの感情が、ようやく2人の女子、森と泉に向けられる。
あの2人の性格ブス加減は、俺も一応覚えがある。
どうやらマコは普段から、この2人に軽くいじめられてるらしい。
 
「あいつらめー、ちょっと殴って来る!」
 
と言う俺に、マコはやめてと言ったけど、俺は怒りをあらわにし続けた。
そうしないと話が、「睦ちゃん裸で何やってたの」とか恥ずかしい方向にいっちゃう。
それもあって、ほんとに殴るつもりはないけど大げさに、
「許せん、殴る!マコのカタキ!」とか言い続けた。
 
でも無駄だった。
心優しい、と言うか気弱なマコには、仕返しを考える度胸はなかった。
 
「睦ちゃんもういいよ、来たのが睦ちゃんだったから私平気だよ。でもそれよりさ、」
 
やっぱりこの流れ来た。
やっぱり俺の奇妙な変態行動が気になるよね。
でもさ…ヤメテ、ヤメテ…。
裸で何してたのって聞かれたら俺…。
 
ハッ、まさかイったのもバレてるんじゃ…。
 
そうに決まってるよ、俺ちんこ押さえながら、あんなにびっくんびっくんしたもん。
ああもうどうしよう…。
 
「何で私がいるってわかったの」
 
…?まずはそっちか…。
全裸の俺が高揚して「マコぉ」とつぶやいてしまったのを、呼ばれたと思ったらしい。
マコがいるって思うわけない、ただつぶやいただけ、としか言えなかった。
するとそれも当然、「じゃあ何で?」と聞かれたわけで。
もうやけくそだよー。
 
「そんなの知るかよーっ、マコが好きなんだよー!
裸で好きな人のこと考えたら、嬉しくてぼっ起するんだよー!
名前も言いたくなっちゃうんだよー!裸踊りもするよー!
おっぱい見たから精子も出ちゃったよー!」
 
何だよこの告白。
何で俺こんなシチュエーションで、涙目で愛の変態告白してるんだよ。
余計なことまで言った気がするよ。
もうマコ早く行けよ、キモイキモイ言いながら立ち去れよー!
 
***
 
マコはとまどっていて、表情が引きつって目もキョロキョロしていた。
もういい、マコの返事を待ってる余裕はないし、どうせ聞きたくない返事に決まってる。
誰か来るかも知れんから、今は早くマコをここから出さないと。
でも今さらプールに出て行っても、マコは森と泉に笑われるだけ。
俺は「もう帰れ」と言った。
 
「あいつら絶対凹ます。殴ったりはしないから安心しろ。マコはもう帰れ。
あとでまた仕返しが来るようなやり方はしない。何とかうまくやっとく」
 
カッコつけてそう言うしかなかった。
どうしようもない恥ずかしさと怒り。
その元凶となった2人のバカ女を凹ますことでしか、消化出来そうになかった。
 
マコは黙ってうなずくと、また個室に入ってカーテンを閉めた。
水着の上からささっと服を着ればいいものを、いちいち着替えるつもりか。
 
思った通り、水着を脱ぐ音が聞こえた。
何て言ったらいいかわからないけど、ああ水着脱ぐ音だな、ってわかる音。
もうやめてよ、また興奮するよー。
ああ、やっぱり俺またぼっ起してる…。
 
早くここから出てもらわんといかんのに!
こうなるなら最初から女子更衣室に移動してもらうべきだった。
多分おっぱいまでは出してるであろうマコに、カーテン越しに言った。
 
「着替えてんの?そのまま服着ればいいのに!」
 
「あっあっ、そうだよね、でもちょっと濡れちゃったから」
 
濡れたって何だよー、もうやめてそんな台詞ぅぅ。
さっき座り込んだ時とかに、ちょっと水着が濡れちゃったんだろう。
そんなのわかってても、おっぱい丸出し(多分)で「濡れちゃった…」とか言われたら。
俺もうやばい。タオルを持っておくことにした。
 
「とにかく早くして、誰か来たらまずいよ」
 
「あっうん、やっぱり水着は着たままにする、ん、んしょ」
 
また着ようとしてるー!このどっちつかずっっ!俺は思わず叫ぶ。「もういいよ!途中まで脱いだんなら、全部脱げよー」
 
「わわごめん、そうだね、脱ぐね」
 
ごそごそ動いてる音がして、多分マコはすっぽんぽんになった。
 
俺が「脱げ」と言ったら、マコはそれに従った…。
脱げという命令に、好きな女の子が素直に従った…。やばい。
それはすごくエッチなことだと思った。
 
「脱げ」「うん脱ぐ」 やばい、俺もうやばい、限界だ。
 
***
 
俺も海パンを下ろして、勃起したちんこをタオルで押さえて、揉んだ。
そして、聞かなくていいことを聞いた。
 
「全部脱いだ?」
 
マコも答えなくていいことを答える。
「うん脱いだ、もうちょっと待って」
 
その言葉で俺は…射精したっ!
どぴゅん、どっぷどぷ、びゅるるるっていう聞こえるはずのない音が、ちんこに響く。
マコの「うん脱いだ」っていう震える声が、頭の中で何度もこだました。
そして、さっき目に焼き付いた、マコのおっぱいふるるんを思い浮かべていた。
 
カーテンに向かって腰を突き出して、タオルの中に射精した。
カーテンとタオルがなかったら、裸のマコに、精液が無駄に元気よくぶつかったはず。
そんな気がするくらい、すごい量と勢いだったと思う。
 
その瞬間、いろんな意味で「ああ、終わった」って思った。
 
一瞬だけ頭の中が真っ白になって、気付いたら、静かだった。
 
「睦ちゃん…」
カーテンの向こうで、抑揚のない小さな声でマコがつぶやいた。
 
「…何?」
 
「何でもない」
 
そして、パンツを穿く様子が音で伝わってきた。
ぱちん、っていう、ゴムが腰に当たる微かな音で、パンツを穿き終えたのがわかった。
 
俺もマコもただ黙っていた。
 
そして制服姿のマコがようやく出てきた。
※夏休み中だけど、登校時は制服か学校指定のジャージと決められている。
 
ぼんやりとした表情で、何か言いたそうにしてるマコ。
俺はぼっ起が治まらなくて、もう隠す気力もなかった。
マコはそれをしっかりと見ていたと思う。
またひとつ、俺の変態ぶりが証明されたんだな。もうどうでもいい。
 
マコは「ありがとう」とも「ごめん」とも言わなかった。
何も言ってくれないし目も見てくれない。
 
いろんな思いをふり切って、俺は更衣室からマコを追い出した。
 
ふと気付くと、海パンが濡れていた。
全部タオルの中に出したと思った精液だった。
しみ込み切れない白いドロドロが、海パンにべっとりと付いていた。
マコはさっきこれを見ていたのか。
精液ってどんなものか見たことはなくても、察しただろうな。
 
((ああ、本当にもう終わったな))
泣きそうだった。て言うか笑えた。
 
***
 
ふう、気分は全然落ち着かないけど、ちんこは元に戻った。
それにしても。
マコにちんこ見られた。変態だって思われた。絶対嫌われた。
しかも彼氏が出来たってわかってる相手なのに、告白してしまった。
マコのそばで2回も射精したし、それもバレた。
一体何が起こったっていうんだろう。
 
俺は露出願望があって、見せることを妄想の中で望んでた。
でも実際に見せたら、やってきたのは絶望感だったよ。
【見られた】からかな。見せるのと見られるのは違うってことかな。
あーもうよくわからない。
 
もういい、終わった。
俺はこれ以上ない恥ずかしい失恋をしたんだ。
だけど同じ時間と空間を、裸のマコと共有出来たこと。
それだけは、オナニーのおかずとして忘れずに生きて行こう。
 
1人になって泣いちゃいそうだけど、まだ泣かない。
俺はいじめのことを何とかするって、マコに約束したんだ。
 
気を取り直して、さっきからおぼろげに考えていた作戦を整理する。
森と泉、あのバカ2人を凹ますのだ。
でも、何のために?わからない。
こんなことしてスッキリしても、俺の情けなさは変わらない。
マコにカッコ付けたいって気持ちもあるけど、もう意味がない。
…いや違う、見返りを求めてはいけない!
 
俺はマコが好きなんだから、嫌われても、マコのためになることをする。
中2病的にでも、そう思わんとやっとれんわー。
 
いろんな気持ちがぐるぐるして舞い上がって来たから、その勢いに任せて行動開始。
 
***
 
思いつきの適当な作戦だけど、失敗してもリスクは少ない。
悪いのはあっちなんだから、いざとなれば開き直ればいいんだ。
 
しょっちゅうプールに来てる俺は、あることを知っている。
それは体育のムキムキ先生が、最初の見回りに来る、おおよその時間だ。
もうすぐそれくらいの時刻になる。
 
先生はいつも、プールの建物に入ると男子更衣室を通る。
泳ぎたい場合はまずそこで着替えるけど、そうじゃなくてもまず更衣室から入る。
そして更衣室のもう1つの出口、プール側に続く出入口から、プールサイドに出る。
 
その先生を利用するために、建物の外に出て遠目にうかがいながら待つ。
 
最悪男子生徒でも実行可能だけど、期待通り、ムキムキ先生がこっちに歩いてきた!
しかもスポーツバッグ持ってるのを確認。
着替えてプールに入るつもりだ!
数分間更衣室にとどまることになるわけで、さらに好都合。
 
俺は更衣室に戻って、プールサイド側の出口の横で、息を整える。
入口側のドアでガチャっと音がした。
先生が入ってくる!
それと同時に、俺は出口からプールサイドに飛び出す。
 
そして、さも今来たかのような顔で、森と泉のところに駆け寄った。
「おお、睦ちゃんお早う、ニヤニヤ」と邪悪な笑顔を見せる森泉。
多分こう思ってるだろうな。
((マコの奴、睦ちゃんのちんこ見たかな!変態って罵ってやるー、ウヒヒ))
 
でも俺の口から出た言葉は、
 
「更衣室でマコが倒れてるんだけど!」
 
森と泉は一気に顔面蒼白ポカーン。「ハ、ハア?何それ!」
 
「お前ら一緒に来たんだろ?(名簿ノート見たから知ってる)
何でマコだけ男子のとこにいんの!息してないかも知れん、早く見て来い!」
 
何が起こったんだ~、と不安そうな顔を見合わせる2人。
((まさか自殺じゃねーだろーな!))とかヒヤヒヤしたんじゃねーの、バーカバーカ。
 
そしてムキムキ先生が着替えの真っ最中とは知らずに、2人は男子更衣室に走る。
先生ごめんよー。
 
***
 
ぐちゃぐちゃ説明したけど、要は2人と先生を、男子更衣室で鉢合わせさせたかった。
【更衣室に忍び込んだ2人が現行犯で先生に捕まる】という筋書きを作りたかった。
これが俺の作戦でした。
 
失敗したら補足案もあったんだけど、結果的に全部思い通りに運んだ。
 
いちいち中の様子を見には行かなかったけど、まあ大体わかる。
先生のムキムキ大人ちんこを見たかどうかまでは知らんし、どうでもいい。
 
先生にど叱られてるのは見た。
2人はあくどいけど知能はサル以上だから、マコや俺のことを言い訳には使わない。
いじめがバレかねないからな。
俺の仕業と先生にバレても、こっちは構わない。
いじめや変態痴女よりも、泥棒だと先生に疑われたのは、2人にとって幸か不幸か。
それもどうでもいい。知らん。
 
当然のように俺に文句を言いに来た森泉に、俺は言ってやった。
 
「お前らマコに謝れ絶対謝れ。
もしこれから先マコに何かしたら、絶対許さん。
何かあったら、今日のこと尾ひれ付けて噂にするからな。
言っとくけど当事者が先生っていう事件だからな、信憑性のない噂で済むと思うなよ」
 
ここまで言えば、もうマコがいじめられることはない。
でも負け惜しみみたいな悪態をついてくる2人。
 
「ちっ何それ。ちょっと助けただけでマコの旦那気取りかよ、うぜー」
「カッコ付けたつもりだろ、どうせマコはさわやか先輩と付き合うって知ってんのかね」
「ウチらが邪魔しないと、マコは先輩と付き合っちゃうよ?それでいいのかよ」
 
負け惜しみは惨めだな。俺はもっと惨めな変態だけどな!
 
「うるさいうるさいうるさい!俺は謝れって言っただけだ。
先輩とか何とかそんなの知るかっ、大体お前らのせいで俺は!
俺は…っもういい何でもない」
 
…お前らのせいで俺は、マコに変なとこ見られちゃったんだよ。
恥ずかしくてしょうがないよ。
何で俺こんなに熱くなってるんだろうな、こいつらの言うとおり、おかしいな。
マコに嫌われたのに。何の見返りもないのに。
 
「とにかく明日もっかいここ(プール)に来て、マコに謝れ。俺も見てるからな」
 
いつの間にか俺は泣いてて、それに気付いた森泉は、何も言わなくなった。
 
翌朝のプールサイドに、マコを呼び出して謝罪する、森泉の姿があった。
俺はそれを、プールの外からこっそり、金網越しに見届けた。
 
それから夏休みの間、俺はプールに行かなかったし、マコにも会わなかった。
 
俺の初恋は終わった。
 
***
 
新学期になって最初に会話したのは、同じクラスの泉だった。
 
マコがさわやか先輩への返事を、実は保留し続けていたことを知った。
そして、夏休み中に、丁重にお断りしたらしいことも。
 
泉は言った。
「睦ちゃんを好きになったからに決まってるだろ!」
 
森と泉は、あの日更衣室で俺とマコに起こった真実までは知らない。
いじめで閉じ込めたマコを、俺がヒーロー気取りで救った、とだけ認識している。
俺とマコが自然にくっ付くと思うのが当たり前かも。
マコが先輩をフッたとなればなおさら、その理由は俺への好意だと思うだろう。
 
でも、廊下ですれ違っても、マコと目が合うことはなかった。
いつ見てもマコは暗い表情をしていた。
今までは、クラスは違うけど顔を合わせば、話すことは出来た。
それもなくなった。
 
いじめを解決したことと、変態行動を見られたこと。
これを合わせたら、良くてプラマイゼロだ。
でもマコの態度を見れば、マイナスだってわかる。
 
お礼ぐらいは言われたっておかしくないのに。
それすらないんだから、マコが俺を避けてるのは明らかだった。
 
付き合う付き合わないは置いといても、急接近どころか疎遠になった俺とマコ。
 
森と泉も、何か不自然だな~、と感じ始めたみたいだった。
 
***
 
いじめと謝罪を経たことで、マコと森泉が仲直りしたかどうかは興味がなかった。
でも時々3人でいるのを見るようになったから、そうなのかも知れない。
 
その秋、次期生徒会役員の選挙運動が始まった。
 
マコが生徒会長に立候補したと知って、俺はびっくりした。
勉強は出来るけど、こんなふうに表に出てくるような性格じゃなかったのに。
さらに驚いたことに、推薦人は森と泉だった。
仲直りまではともかく、何があったんだろう。
もうマコと関われない俺は、理由を聞くことは出来なかった。
 
俺は一応マコに投票したけど、結局落選した。
でも落選しても、生徒会のナントカ役員になれたらしい。
 
年が明けて、生徒会役員として活き活きした表情で働くマコを見た。
元気になったのかな?
嬉しかったけど複雑な気持ち。もう俺には関係ないことだ。
と思っていた。
 
***
 
ある日、森と泉に呼び出された。
場所は、冬なので閉鎖されてる、プールの建物の前だった。
何じゃー、と思って行ってみると、マコもいた。何じゃー…。
 
2人に突っつかれて、マコが話し始めた。
 
「ほんとは、会長に当選できたら話そう、と思ったんだけど。
落ちちゃったけど、いろいろやってみて、ちょっとは自信が付いたから、言うね。
あれからすごい恥ずかしくて、睦ちゃんと話ができなくなって、ごめん」
 
マコは、しっかり俺の目を見て、言ってくれた。
「あの時は、ありがとう。好き」
 
俺は目の前が真っ暗になった!(いい意味で)
マコは俺のことを見捨ててなかった!しかも好きって!でも何で!
 
泉が、原稿用紙みたいのを俺に渡してきた。
会長選挙の最終演説の、ボツ原稿の一部だそうだ。
 
こんなことが書いてあった。
 
【私は少し前までいじめられていた、冴えない人間です】
【本当は、こんなところに立つような人間ではありません】
【でも私は変わりたい。そう思って立候補しました】
【私をいじめから救ってくれた人がいます。私もそういう人になりたい】
【自分が恥をかいても誰かのためにがんばれる、そんな人になりたい】
【まだその人には、恥ずかしくてお礼も言えていません】
【私にはまだ、恥をかく勇気がありません】
【私にはまだ、その人の前に立つ資格がありません】
【生徒の皆さんのためにがんばる生徒会長、という立場になれたら、その資格を持てるような気がします】
 
森と泉はニヤニヤ笑っていた。
「公開ラブレターみたいだからボツにした!でも睦ちゃん、良かったなあ」
 
そして俺とマコを2人にしてくれた。
でも、キスでもするんじゃねーか!と期待しながら遠くから見てたらしい。
その期待は外れたけど、でも、俺の初恋はまだ終わってなかったんだな…。
 
***
 
俺はヒヤヒヤしながら聞いた。
「あんなことがあって、何で俺好きになんの…」
 
マコは涙目で笑った。
「ほんとは、前からちょっと好きだったよ」
 
まじですか!
「でも、だったらなおさら、幻滅されることじゃん!」
 
「うん、はっきり言って気持ち悪かった!」
 
「ぎゃふーん」
 
ちょっと間を置いて、マコが言った。
「睦ちゃん言ったよ、裸で好きな人の名前呼んだら、ドキドキして嬉しいって言ったよ」
 
「そんなこと言ったっけ(改変されてるような気もするけど)」
 
「私もあの時、ドキドキしたよ、何か嬉しくなったよ…」
 
思い出した!
あの時マコは、すっぽんぽんのカーテン越しに、俺の名前を言った。
「何でもない」ってその時は言ってたけど、あれは、俺の真似をしたのか。
そして、ドキドキしてくれてたのか。
 
「気持ち悪いって言ってごめん、でもあとで思い出したら、そうでもなかった。
思い出しながら、お風呂とかで、睦ちゃんの名前呼んだらドキドキして嬉しくなる。
睦ちゃんの言った通りだ、だから、私は睦ちゃんが好きなんだなあって思った」
 
「でもマコ、そのドキドキって、」
 
「内緒!」
 
その時俺は理解した。
変態行動を見ても、俺を嫌いにならなかったのは、マコも変態だからだ!
そのドキドキって、エッチな気分になるって意味だよ。
それはマコも自覚してるはずだけど、教えてはくれなかった。
 
俺のちんこを思い出して、オナニーしたのかも知れない!!!
全ぼっ起したけど、冬服(学ラン)だからバレなかった。
バレなかったけど、マコはその部分を見ていた気がする。
 
***
 
中学3年になって、また夏休みが来た。
マコとプールに行こうと約束した。
 
でも前年と違って日数と時間がかなり制限されたので、すいてる日はなかった。
 
そこそこ賑わってるプールの前で、マコが残念そうに言った。
「更衣室も人がいっぱいかな」
 
「うん、でもしょうがないじゃん」
 
「去年みたいなことにはなりそうもないね」
 
去年みたいに、更衣室で2人になりたいって意味かな!
一緒に着替えたり、2人で裸になりたいって意味かな!
それを期待して言ったのか、ただ何となく言っただけなのか、判断できなかった。
確かめるために、聞いてみた。
 
「…マコは服の中、水着着てる?」
 
「ううん」
 
「俺も穿いて来てない」
 
「何で穿いて来なかったの」
 
「マコは何で?」
 
お互いの質問には、どっちも答えなかった。
だからもうひとつ聞いてみた。
 
「じゃあ俺んち(学校から徒歩3分)で着替えてから行く?」
 
これには即答したマコだった。
結局この日、俺たちはプールに行かなかった。
 
 
>終わり。


【学校】プールの更衣室でちんこを振り回すと 【教室】

$
0
0

中学2年の夏休み、学校のプールが開放されることになった。
生徒限定だけど、暇ならただで遊びに来れば〜?っていう適当な感じの。
平日はほぼ毎日開いてたけど、思ったよりは不人気だった。
(先生もいろいろ面倒くせーってことで、翌年から数日間×数時間のみの開放となる)
 
夏休み後半になると、朝早い時間に行けば、ほとんど1人貸切状態だった。
プールは職員室の窓から見えるので、監視員役の先生も常駐はしてない。
 
俺は学校まで徒歩3分の近所に住んでたので、1人でもちょくちょく行ってた。
その日も朝から1人で、のんびりぷかぷかしに行った。
 
まず職員室で先生にひと声かけて、プール利用者ノートに名前を書くことになってる。
ここんとこ俺が一番乗りだったけど、その日はちょっと遅くなった。
ノートを見ると、すでに女子が3人来てるらしい。
 

その中に「マコ」の名前があった。
マコがいるー!マコの水着見れる!
いっぺんにドキドキしてきた。
マコ部活サボったのか、まあ理由はどうでもいい。
 
※マコは幼小中とずっと同じ、その後も高校まで同じだった女子です。
 
マコとは小4くらいまで、毎年同じクラスで一緒にはしゃぎ回る大の仲良しだった。
中学では割と真面目な性格になったみたいで、そこそこ優等生。
クラスも違ったし、俺なんかと話す機会はほとんどなくなった。
でも控えめな佇まいもかわいくて、ちょい天然なとこもあって、ずっと大好きだった。
 
夏休みのプールは、普段の男女別の授業とは違って、混浴状態。
男子に水着を見られるのが恥ずかしいのか、もともと女子の利用者は少なかった。
 
別に俺は最初から、女子の水着目当てでプールに通ってたわけじゃないよ(力説)
けど、好きな女子がいるとわかったら話は別だよ!
ふふふ〜んと鼻歌でワクワクしながら更衣室に入った。
 
***
 
ところで。
 
実は俺には、ちょっとした露出願望がある。
公共の場でパンツ脱ぐだけで、なぜかぼっ起することがあるっていう、プチ変態です。
周りに女がいなくても、ちんこを外界にさらすと興奮する。
 
授業のプールの着替えでも、ぼっ起しそうになる。
宿泊研修の風呂とかもやばかった。(ゲイではないです)
そんな中で心頭滅却という言葉とその実践の難しさを知った。
 
でもこうして1人の時は、自分を抑える必要がない。
更衣室という公共の広い空間で、堂々と全裸になれる!
空いてるプールに1人で来ると、こういう副産物的な楽しみがある。
だからズボンの下に海パンを穿いてくる、ってことはしてない。
 
思い切り全ぼっ起して、更衣室の中を歩き回るのは楽しい。
誰かが急に入って来た時のために、バスタオルだけは手に持っている。
この、全裸だけど最後の砦だけはあるっていう、緊張感のバランスがたまらない!
 
といってもプチ変態はその程度で、こんなとこでオナニーとかする度胸はなかった。
 
※実際に露出狂になったことはないので、どうかこんな変態少年を許して下さい。
 
***
 
さてこの時は、水着のマコを思い浮かべて、もう脱ぐ前から小ぼっ起してた。
そして全裸になった瞬間、むくむくぼっきんとちんこが完全体に。
バスタオルは手に持っている。
 
いつもはちょっと歩きまわったら満足して、プールサイドに出る。
でも今日は、出たらそこに人がいるとわかってるので、ぼっ起が治まるまで行けない。
早くマコを見たいけど、治まるのを待つ。
 
むしろほんとは、ぼっ起をマコに見せたかったりして。
とか思ってみるけど、イヤーンやっぱり恥ずかしい。
結局いつもより大胆に全裸ではしゃいでしまって、ちんこは治まる気配がない。
 
腰を突き出してちんこをぶんぶん回して、ふーんっふーっと鼻息が荒くなったり。
ちんこをタオル掛けにして、直立不動で意味もなくニヤリとしてみたり。
「ああ、マコぉ…」と、つい独り言も出た。
 
((モゾモゾ、クフン))
 
…おや、何?今の…。
 
((フンック))
 
え?何か聞こえたよね、ひいぃい!!!
何だろ今の音。声か?…ええぇ?
 
周りを見渡して、俺は…あることに気付いた。
 
更衣室の隅に、カーテンで仕切られた個室的な一角があります。
これは先生が着替えるところ。
先生と生徒が同時に着替えることは、あまりないけど、一応そういうスペースがある。
 
そのカーテンが閉まってた。
いつもは開いてるのに。
今日に限って浮かれてた俺は、そのことに全然気付いてなかった。
 
あの中に何かがいる!!
 
先生じゃないのは確か。
たまに定期見回りを兼ねて泳ぎに来る体育のムキムキ先生は、さっき職員室にいた。
じゃあ何だよ!怖いいいぃ!
心霊的なお化けを想像して全身鳥肌が立った。
 
ぼっ起している理由が「生存本能」に変わった気がした。
 
カーテンは少しだけ隙間が開いていた。
俺は怖いのに、いや怖いからこそ、そこに背を向けることが出来なかった。
ちんこだけはタオルで押さえて隠していた。
ちんこをお化けに見られる恥ずかしさじゃなくて、守らなきゃいけないと思った。
 
すると、「アワワ…ムッチャン…ガ」
 
ビクン!睦ちゃんって俺の名前だっ。
カーテンの向こうのお化けが、なぜか俺の名前を知っている。
って言うかその声は?
 
俺は思わずカーテンをがばっと開けた。
そこにいたのは…
マコ!何でマコ!((どうしてこうなった!))
 
***
 
スクール水着のマコが、壁際にへたり込んでいた。
なぜか水着を、おへその辺りまでしか着てなくて、胸は両手で押さえてる。
まさかレイプとか!でも違う、そんな雰囲気じゃないことだけはわかる。
 
俺の思考は停止した。
 
ぼっ起ちんこをタオルで押さえたまま、後ずさりした。
後ずさりって言うか、後ろによろめいた感じ。
そしたらスノコにつまづいて地味にひっくり返った。
 
「うわあ大丈夫っ?」駆け寄って来るマコ。
 
一瞬タオルを離してしまって、ちんこをもろに見られたけど、またすぐに隠す。
 
マコもあわてていたのか、胸を押さえていた両手を離した!
おおおっぱい!ああ、同級生のおっぱい!フー(鼻息)
おっぱい見えたよ大好きなマコのおっぱい!
ちゃんとふよふよ揺れるくらい大きく育ってるよ!
乳首乳首!乳首見えたよ!色は薄いよー。
 
おっぱいが見えてることに、すぐに気付いたマコ。
あわてて背中を向けて水着をちゃんと着直した。
 
停止していた俺の思考が、支離滅裂に回転し始める。
 
おっぱい見たちんこ見られた、マコがいる理由わからない足ぶつけた痛い、あーマコが心配して俺のそばにいる見たかった水着姿、おっぱい見たちんこ見られた、今俺裸だマコが俺の顔見てるかわいいでも泣いてる、おっぱい見たちんこ見られた…何これ何か来たぞ、ちんこが…ちんこがぞわぞわする!あー!あー!
 
…混乱しまくってる俺にはっ!突然の射精感を止める方法がなかったっ。
 
***
 
俺はタオルの中に精液を、たっぷりどっぷり、どっぴゅんどくどくと放出し続けた。
 
そんなこと知る由もないマコは、倒れている俺のそばに座っていた。
射精の快感で下半身がびっくんびっくん震える。
マコも俺の様子に気付いて、反射的にびくっと少し後ろに下がった。
俺が震えた理由は…、どうか知らないでいて欲しい。
 
イっちゃったからか、俺はほんの少しだけ冷静になった。
ちんこは急激にしぼんで元に戻った。
「ごめん、大丈夫」と言ってささっと海パンをはいた。
 
でも、やっと訪れた冷静さは、当たり前の事実に気付くとすぐに吹っ飛んだ。
血の気が引くような恥ずかしさで吹っ飛んだ。
マコは俺が来る前からそこにいた、ってことは、最初から全部?
 
全部見られてた?
 
俺が!更衣室に入ってからとった行動!
すっぽんぽんニヤニヤ〜の変態奇行、全部見られてた!
マコが何でここにいるかってことより、そのことだけで、頭がいっぱいになった。
 
「見、みみみっみ見」
 
怖くて「見てた?」と聞けなかった。
でもマコの表情を見れば、聞くまでもなかった。
マコもまだパニック状態で、あわあわしていた。
「ごめんごめごめん、でも睦ちゃんで良かった」とマコ。
 
何だよそれ…、やり場のない恥ずかしさが怒りに変わった!
 
「何が良かったんだよ!何で女がいるの、もう勘弁してえええ!」
 
わめいてしまってちょっと後悔、マコは泣いていた。
 
***
 
泣きながらマコが話し始めた。
「○○先輩があ、私を好きで、それで、森ちゃんと泉ちゃんが、ああああ」
 
…全然意味がわからない。
あとから知ったことも合わせて、ちょっと話をまとめます。
 
○○先輩というのは、安易なキャラ説明をすると、さわやかチャラ男な部活のOB。
森と泉は、マコの部活仲間で同級生、今日3人でプールに来た。
 
最近さわやか先輩がマコに告白したみたいで、森と泉はマコを憎たらしく思っている。
マコが告白を受けようが断ろうが、妬み女子にはそんなの関係ねー。
嫌がらせのために、マコをプールに誘って、男子更衣室に放り込んだ。
 
「告白は断れ、先輩とはもうしゃべるな、でないと許さん」
「お前はここで着替えて、男の裸でも覗いとけ。一緒に着替えてもいいぞプププ」
「ちんこ見たらサイズ教えろよ、ウチらは先にプールで待っているからな」
 
というようなことを言われた。
これを言うために、服の下から水着を着てこないように、急かして誘い出したようだ。
用意周到なずる賢さである。
 
そして、誰か男が来るまでは出てくるな、と釘を刺された。
 
つまり、【マコが男(この場合俺)よりも後に】プールサイドに出てくる状況を見たいと。
そしたら森と泉は【マコは男が着替えしてる更衣室にいた】と確信して断罪できる。
「変態だプププッ」とあざ笑って楽しむわけだ。
 
という状況に置かれて、恐る恐るカーテンの裏で着替え始めるマコ。
するとそこに鼻歌まじりの俺が来た。
物音を立てたくないので、マコは水着を半分まで着た状態で、息を潜めた。
 
いじめられてる最中だけど、何だかんだ言ってもやっぱり気になる。
カーテンの隙間から、マコはドキドキしながら覗く。
((うわ、睦ちゃんだ))
来た男子が、よく知ってる俺だったから、安心感と罪悪感が両方あった。
(その安心感の部分で、さっき「睦ちゃんで良かった」と言ってしまったらしい)
 
そして、1人だからと何も隠さず堂々と全裸になる俺。
それどころか、歩き回ったり、誰もいないのに見せびらかすような動き!
ちんこも振り回す!なぜかぼっ起している!
 
((何これ…))ドキドキして息を飲むマコ。
初めて見る同級生のぼっ起ちんこに心臓バクバクのマコ。
とどめは俺の「マコぉ」というつぶやき。
 
見てるのがバレたっ?と思ってちょっと動いてしまい、喉の奥を鳴らしてしまった。
頭の中は真っ白、パニック、無意識に俺の名前を声に出した。
そして俺に見つかって、今こういう状況。
 
***
 
マコの話は取りとめがなくて散漫で、この時点ではよくわからなかった。
でもこれがいじめの現場だってこと、それだけは理解できた。
 
混線してた俺の怒りの感情が、ようやく2人の女子、森と泉に向けられる。
あの2人の性格ブス加減は、俺も一応覚えがある。
どうやらマコは普段から、この2人に軽くいじめられてるらしい。
 
「あいつらめー、ちょっと殴って来る!」
 
と言う俺に、マコはやめてと言ったけど、俺は怒りをあらわにし続けた。
そうしないと話が、「睦ちゃん裸で何やってたの」とか恥ずかしい方向にいっちゃう。
それもあって、ほんとに殴るつもりはないけど大げさに、
「許せん、殴る!マコのカタキ!」とか言い続けた。
 
でも無駄だった。
心優しい、と言うか気弱なマコには、仕返しを考える度胸はなかった。
 
「睦ちゃんもういいよ、来たのが睦ちゃんだったから私平気だよ。でもそれよりさ、」
 
やっぱりこの流れ来た。
やっぱり俺の奇妙な変態行動が気になるよね。
でもさ…ヤメテ、ヤメテ…。
裸で何してたのって聞かれたら俺…。
 
ハッ、まさかイったのもバレてるんじゃ…。
 
そうに決まってるよ、俺ちんこ押さえながら、あんなにびっくんびっくんしたもん。
ああもうどうしよう…。
 
「何で私がいるってわかったの」
 
…?まずはそっちか…。
全裸の俺が高揚して「マコぉ」とつぶやいてしまったのを、呼ばれたと思ったらしい。
マコがいるって思うわけない、ただつぶやいただけ、としか言えなかった。
するとそれも当然、「じゃあ何で?」と聞かれたわけで。
もうやけくそだよー。
 
「そんなの知るかよーっ、マコが好きなんだよー!
裸で好きな人のこと考えたら、嬉しくてぼっ起するんだよー!
名前も言いたくなっちゃうんだよー!裸踊りもするよー!
おっぱい見たから精子も出ちゃったよー!」
 
何だよこの告白。
何で俺こんなシチュエーションで、涙目で愛の変態告白してるんだよ。
余計なことまで言った気がするよ。
もうマコ早く行けよ、キモイキモイ言いながら立ち去れよー!
 
***
 
マコはとまどっていて、表情が引きつって目もキョロキョロしていた。
もういい、マコの返事を待ってる余裕はないし、どうせ聞きたくない返事に決まってる。
誰か来るかも知れんから、今は早くマコをここから出さないと。
でも今さらプールに出て行っても、マコは森と泉に笑われるだけ。
俺は「もう帰れ」と言った。
 
「あいつら絶対凹ます。殴ったりはしないから安心しろ。マコはもう帰れ。
あとでまた仕返しが来るようなやり方はしない。何とかうまくやっとく」
 
カッコつけてそう言うしかなかった。
どうしようもない恥ずかしさと怒り。
その元凶となった2人のバカ女を凹ますことでしか、消化出来そうになかった。
 
マコは黙ってうなずくと、また個室に入ってカーテンを閉めた。
水着の上からささっと服を着ればいいものを、いちいち着替えるつもりか。
 
思った通り、水着を脱ぐ音が聞こえた。
何て言ったらいいかわからないけど、ああ水着脱ぐ音だな、ってわかる音。
もうやめてよ、また興奮するよー。
ああ、やっぱり俺またぼっ起してる…。
 
早くここから出てもらわんといかんのに!
こうなるなら最初から女子更衣室に移動してもらうべきだった。
多分おっぱいまでは出してるであろうマコに、カーテン越しに言った。
 
「着替えてんの?そのまま服着ればいいのに!」
 
「あっあっ、そうだよね、でもちょっと濡れちゃったから」
 
濡れたって何だよー、もうやめてそんな台詞ぅぅ。
さっき座り込んだ時とかに、ちょっと水着が濡れちゃったんだろう。
そんなのわかってても、おっぱい丸出し(多分)で「濡れちゃった…」とか言われたら。
俺もうやばい。タオルを持っておくことにした。
 
「とにかく早くして、誰か来たらまずいよ」
 
「あっうん、やっぱり水着は着たままにする、ん、んしょ」
 
また着ようとしてるー!このどっちつかずっっ!俺は思わず叫ぶ。

「もういいよ!途中まで脱いだんなら、全部脱げよー」
 
「わわごめん、そうだね、脱ぐね」
 
ごそごそ動いてる音がして、多分マコはすっぽんぽんになった。
 
俺が「脱げ」と言ったら、マコはそれに従った…。
脱げという命令に、好きな女の子が素直に従った…。やばい。
それはすごくエッチなことだと思った。
 
「脱げ」「うん脱ぐ」やばい、俺もうやばい、限界だ。
 
***
 
俺も海パンを下ろして、勃起したちんこをタオルで押さえて、揉んだ。
そして、聞かなくていいことを聞いた。
 
「全部脱いだ?」
 
マコも答えなくていいことを答える。
「うん脱いだ、もうちょっと待って」
 
その言葉で俺は…射精したっ!
どぴゅん、どっぷどぷ、びゅるるるっていう聞こえるはずのない音が、ちんこに響く。
マコの「うん脱いだ」っていう震える声が、頭の中で何度もこだました。
そして、さっき目に焼き付いた、マコのおっぱいふるるんを思い浮かべていた。
 
カーテンに向かって腰を突き出して、タオルの中に射精した。
カーテンとタオルがなかったら、裸のマコに、精液が無駄に元気よくぶつかったはず。
そんな気がするくらい、すごい量と勢いだったと思う。
 
その瞬間、いろんな意味で「ああ、終わった」って思った。
 
一瞬だけ頭の中が真っ白になって、気付いたら、静かだった。
 
「睦ちゃん…」
カーテンの向こうで、抑揚のない小さな声でマコがつぶやいた。
 
「…何?」
 
「何でもない」
 
そして、パンツを穿く様子が音で伝わってきた。
ぱちん、っていう、ゴムが腰に当たる微かな音で、パンツを穿き終えたのがわかった。
 
俺もマコもただ黙っていた。
 
そして制服姿のマコがようやく出てきた。
※夏休み中だけど、登校時は制服か学校指定のジャージと決められている。
 
ぼんやりとした表情で、何か言いたそうにしてるマコ。
俺はぼっ起が治まらなくて、もう隠す気力もなかった。
マコはそれをしっかりと見ていたと思う。
またひとつ、俺の変態ぶりが証明されたんだな。もうどうでもいい。
 
マコは「ありがとう」とも「ごめん」とも言わなかった。
何も言ってくれないし目も見てくれない。
 
いろんな思いをふり切って、俺は更衣室からマコを追い出した。
 
ふと気付くと、海パンが濡れていた。
全部タオルの中に出したと思った精液だった。
しみ込み切れない白いドロドロが、海パンにべっとりと付いていた。
マコはさっきこれを見ていたのか。
精液ってどんなものか見たことはなくても、察しただろうな。
 
((ああ、本当にもう終わったな))
泣きそうだった。て言うか笑えた。
 
***
 
ふう、気分は全然落ち着かないけど、ちんこは元に戻った。
それにしても。
マコにちんこ見られた。変態だって思われた。絶対嫌われた。
しかも彼氏が出来たってわかってる相手なのに、告白してしまった。
マコのそばで2回も射精したし、それもバレた。
一体何が起こったっていうんだろう。
 
俺は露出願望があって、見せることを妄想の中で望んでた。
でも実際に見せたら、やってきたのは絶望感だったよ。
【見られた】からかな。見せるのと見られるのは違うってことかな。
あーもうよくわからない。
 
もういい、終わった。
俺はこれ以上ない恥ずかしい失恋をしたんだ。
だけど同じ時間と空間を、裸のマコと共有出来たこと。
それだけは、オナニーのおかずとして忘れずに生きて行こう。
 
1人になって泣いちゃいそうだけど、まだ泣かない。
俺はいじめのことを何とかするって、マコに約束したんだ。
 
気を取り直して、さっきからおぼろげに考えていた作戦を整理する。
森と泉、あのバカ2人を凹ますのだ。
でも、何のために?わからない。
こんなことしてスッキリしても、俺の情けなさは変わらない。
マコにカッコ付けたいって気持ちもあるけど、もう意味がない。
…いや違う、見返りを求めてはいけない!
 
俺はマコが好きなんだから、嫌われても、マコのためになることをする。
中2病的にでも、そう思わんとやっとれんわー。
 
いろんな気持ちがぐるぐるして舞い上がって来たから、その勢いに任せて行動開始。
 
***
 
思いつきの適当な作戦だけど、失敗してもリスクは少ない。
悪いのはあっちなんだから、いざとなれば開き直ればいいんだ。
 
しょっちゅうプールに来てる俺は、あることを知っている。
それは体育のムキムキ先生が、最初の見回りに来る、おおよその時間だ。
もうすぐそれくらいの時刻になる。
 
先生はいつも、プールの建物に入ると男子更衣室を通る。
泳ぎたい場合はまずそこで着替えるけど、そうじゃなくてもまず更衣室から入る。
そして更衣室のもう1つの出口、プール側に続く出入口から、プールサイドに出る。
 
その先生を利用するために、建物の外に出て遠目にうかがいながら待つ。
 
最悪男子生徒でも実行可能だけど、期待通り、ムキムキ先生がこっちに歩いてきた!
しかもスポーツバッグ持ってるのを確認。
着替えてプールに入るつもりだ!
数分間更衣室にとどまることになるわけで、さらに好都合。
 
俺は更衣室に戻って、プールサイド側の出口の横で、息を整える。
入口側のドアでガチャっと音がした。
先生が入ってくる!
それと同時に、俺は出口からプールサイドに飛び出す。
 
そして、さも今来たかのような顔で、森と泉のところに駆け寄った。
「おお、睦ちゃんお早う、ニヤニヤ」と邪悪な笑顔を見せる森泉。
多分こう思ってるだろうな。
((マコの奴、睦ちゃんのちんこ見たかな!変態って罵ってやるー、ウヒヒ))
 
でも俺の口から出た言葉は、
 
「更衣室でマコが倒れてるんだけど!」
 
森と泉は一気に顔面蒼白ポカーン。「ハ、ハア?何それ!」
 
「お前ら一緒に来たんだろ?(名簿ノート見たから知ってる)
何でマコだけ男子のとこにいんの!息してないかも知れん、早く見て来い!」
 
何が起こったんだ〜、と不安そうな顔を見合わせる2人。
((まさか自殺じゃねーだろーな!))とかヒヤヒヤしたんじゃねーの、バーカバーカ。
 
そしてムキムキ先生が着替えの真っ最中とは知らずに、2人は男子更衣室に走る。
先生ごめんよー。
 
***
 
ぐちゃぐちゃ説明したけど、要は2人と先生を、男子更衣室で鉢合わせさせたかった。
【更衣室に忍び込んだ2人が現行犯で先生に捕まる】という筋書きを作りたかった。
これが俺の作戦でした。
 
失敗したら補足案もあったんだけど、結果的に全部思い通りに運んだ。
 
いちいち中の様子を見には行かなかったけど、まあ大体わかる。
先生のムキムキ大人ちんこを見たかどうかまでは知らんし、どうでもいい。
 
先生にど叱られてるのは見た。
2人はあくどいけど知能はサル以上だから、マコや俺のことを言い訳には使わない。
いじめがバレかねないからな。
俺の仕業と先生にバレても、こっちは構わない。
いじめや変態痴女よりも、泥棒だと先生に疑われたのは、2人にとって幸か不幸か。
それもどうでもいい。知らん。
 
当然のように俺に文句を言いに来た森泉に、俺は言ってやった。
 
「お前らマコに謝れ絶対謝れ。
もしこれから先マコに何かしたら、絶対許さん。
何かあったら、今日のこと尾ひれ付けて噂にするからな。
言っとくけど当事者が先生っていう事件だからな、信憑性のない噂で済むと思うなよ」
 
ここまで言えば、もうマコがいじめられることはない。
でも負け惜しみみたいな悪態をついてくる2人。
 
「ちっ何それ。ちょっと助けただけでマコの旦那気取りかよ、うぜー」
「カッコ付けたつもりだろ、どうせマコはさわやか先輩と付き合うって知ってんのかね」
「ウチらが邪魔しないと、マコは先輩と付き合っちゃうよ?それでいいのかよ」
 
負け惜しみは惨めだな。俺はもっと惨めな変態だけどな!
 
「うるさいうるさいうるさい!俺は謝れって言っただけだ。
先輩とか何とかそんなの知るかっ、大体お前らのせいで俺は!
俺は…っもういい何でもない」
 
…お前らのせいで俺は、マコに変なとこ見られちゃったんだよ。
恥ずかしくてしょうがないよ。
何で俺こんなに熱くなってるんだろうな、こいつらの言うとおり、おかしいな。
マコに嫌われたのに。何の見返りもないのに。
 
「とにかく明日もっかいここ(プール)に来て、マコに謝れ。俺も見てるからな」
 
いつの間にか俺は泣いてて、それに気付いた森泉は、何も言わなくなった。
 
翌朝のプールサイドに、マコを呼び出して謝罪する、森泉の姿があった。
俺はそれを、プールの外からこっそり、金網越しに見届けた。
 
それから夏休みの間、俺はプールに行かなかったし、マコにも会わなかった。
 
俺の初恋は終わった。
 
***
 
新学期になって最初に会話したのは、同じクラスの泉だった。
 
マコがさわやか先輩への返事を、実は保留し続けていたことを知った。
そして、夏休み中に、丁重にお断りしたらしいことも。
 
泉は言った。
「睦ちゃんを好きになったからに決まってるだろ!」
 
森と泉は、あの日更衣室で俺とマコに起こった真実までは知らない。
いじめで閉じ込めたマコを、俺がヒーロー気取りで救った、とだけ認識している。
俺とマコが自然にくっ付くと思うのが当たり前かも。
マコが先輩をフッたとなればなおさら、その理由は俺への好意だと思うだろう。
 
でも、廊下ですれ違っても、マコと目が合うことはなかった。
いつ見てもマコは暗い表情をしていた。
今までは、クラスは違うけど顔を合わせば、話すことは出来た。
それもなくなった。
 
いじめを解決したことと、変態行動を見られたこと。
これを合わせたら、良くてプラマイゼロだ。
でもマコの態度を見れば、マイナスだってわかる。
 
お礼ぐらいは言われたっておかしくないのに。
それすらないんだから、マコが俺を避けてるのは明らかだった。
 
付き合う付き合わないは置いといても、急接近どころか疎遠になった俺とマコ。
 
森と泉も、何か不自然だな〜、と感じ始めたみたいだった。
 
***
 
いじめと謝罪を経たことで、マコと森泉が仲直りしたかどうかは興味がなかった。
でも時々3人でいるのを見るようになったから、そうなのかも知れない。
 
その秋、次期生徒会役員の選挙運動が始まった。
 
マコが生徒会長に立候補したと知って、俺はびっくりした。
勉強は出来るけど、こんなふうに表に出てくるような性格じゃなかったのに。
さらに驚いたことに、推薦人は森と泉だった。
仲直りまではともかく、何があったんだろう。
もうマコと関われない俺は、理由を聞くことは出来なかった。
 
俺は一応マコに投票したけど、結局落選した。
でも落選しても、生徒会のナントカ役員になれたらしい。
 
年が明けて、生徒会役員として活き活きした表情で働くマコを見た。
元気になったのかな?
嬉しかったけど複雑な気持ち。もう俺には関係ないことだ。
と思っていた。
 
***
 
ある日、森と泉に呼び出された。
場所は、冬なので閉鎖されてる、プールの建物の前だった。
何じゃー、と思って行ってみると、マコもいた。何じゃー…。
 
2人に突っつかれて、マコが話し始めた。
 
「ほんとは、会長に当選できたら話そう、と思ったんだけど。
落ちちゃったけど、いろいろやってみて、ちょっとは自信が付いたから、言うね。
あれからすごい恥ずかしくて、睦ちゃんと話ができなくなって、ごめん」
 
マコは、しっかり俺の目を見て、言ってくれた。
「あの時は、ありがとう。好き」
 
俺は目の前が真っ暗になった!(いい意味で)
マコは俺のことを見捨ててなかった!しかも好きって!でも何で!
 
泉が、原稿用紙みたいのを俺に渡してきた。
会長選挙の最終演説の、ボツ原稿の一部だそうだ。
 
こんなことが書いてあった。
 
【私は少し前までいじめられていた、冴えない人間です】
【本当は、こんなところに立つような人間ではありません】
【でも私は変わりたい。そう思って立候補しました】
【私をいじめから救ってくれた人がいます。私もそういう人になりたい】
【自分が恥をかいても誰かのためにがんばれる、そんな人になりたい】
【まだその人には、恥ずかしくてお礼も言えていません】
【私にはまだ、恥をかく勇気がありません】
【私にはまだ、その人の前に立つ資格がありません】
【生徒の皆さんのためにがんばる生徒会長、という立場になれたら、その資格を持てるような気がします】
 
森と泉はニヤニヤ笑っていた。
「公開ラブレターみたいだからボツにした!でも睦ちゃん、良かったなあ」
 
そして俺とマコを2人にしてくれた。
でも、キスでもするんじゃねーか!と期待しながら遠くから見てたらしい。
その期待は外れたけど、でも、俺の初恋はまだ終わってなかったんだな…。
 
***
 
俺はヒヤヒヤしながら聞いた。
「あんなことがあって、何で俺好きになんの…」
 
マコは涙目で笑った。
「ほんとは、前からちょっと好きだったよ」
 
まじですか!
「でも、だったらなおさら、幻滅されることじゃん!」
 
「うん、はっきり言って気持ち悪かった!」
 
「ぎゃふーん」
 
ちょっと間を置いて、マコが言った。
「睦ちゃん言ったよ、裸で好きな人の名前呼んだら、ドキドキして嬉しいって言ったよ」
 
「そんなこと言ったっけ(改変されてるような気もするけど)」
 
「私もあの時、ドキドキしたよ、何か嬉しくなったよ…」
 
思い出した!
あの時マコは、すっぽんぽんのカーテン越しに、俺の名前を言った。
「何でもない」ってその時は言ってたけど、あれは、俺の真似をしたのか。
そして、ドキドキしてくれてたのか。
 
「気持ち悪いって言ってごめん、でもあとで思い出したら、そうでもなかった。
思い出しながら、お風呂とかで、睦ちゃんの名前呼んだらドキドキして嬉しくなる。
睦ちゃんの言った通りだ、だから、私は睦ちゃんが好きなんだなあって思った」
 
「でもマコ、そのドキドキって、」
 
「内緒!」
 
その時俺は理解した。
変態行動を見ても、俺を嫌いにならなかったのは、マコも変態だからだ!
そのドキドキって、エッチな気分になるって意味だよ。
それはマコも自覚してるはずだけど、教えてはくれなかった。
 
俺のちんこを思い出して、オナニーしたのかも知れない!!!
全ぼっ起したけど、冬服(学ラン)だからバレなかった。
バレなかったけど、マコはその部分を見ていた気がする。
 
***
 
中学3年になって、また夏休みが来た。
マコとプールに行こうと約束した。
 
でも前年と違って日数と時間がかなり制限されたので、すいてる日はなかった。
 
そこそこ賑わってるプールの前で、マコが残念そうに言った。
「更衣室も人がいっぱいかな」
 
「うん、でもしょうがないじゃん」
 
「去年みたいなことにはなりそうもないね」
 
去年みたいに、更衣室で2人になりたいって意味かな!
一緒に着替えたり、2人で裸になりたいって意味かな!
それを期待して言ったのか、ただ何となく言っただけなのか、判断できなかった。
確かめるために、聞いてみた。
 
「…マコは服の中、水着着てる?」
 
「ううん」
 
「俺も穿いて来てない」
 
「何で穿いて来なかったの」
 
「マコは何で?」
 
お互いの質問には、どっちも答えなかった。
だからもうひとつ聞いてみた。
 
「じゃあ俺んち(学校から徒歩3分)で着替えてから行く?」
 
これには即答したマコだった。
結局この日、俺たちはプールに行かなかった。
 
 
プールの更衣室でちんこを振り回すと、かなりの低確率でこうなる>>終わり。

【学校】園児は見た【教室】

$
0
0

幼い頃、近所の寺が経営する保育所に通っていた。

境内の一角に園舎があって、運動場の隣は墓地。園長先生は寺の住職だ。
毎朝登園すると、本堂で園長の後ろに並んで正座させられ「朝のお勤め」。
霊験あらたかな環境で育ったせいか、俺たちは人並外れた霊力を身につけ
…るわけないが、オッサンになった今も正座はそれほど苦痛じゃない。

園長は当時40代半ばくらいだった。いかつい面構えにがっちりした体格。
赤銅色の腕は丸太のようにゴツく、僧兵にしたらかなりの戦力になったと思う。
普段は穏やかで優しいが、たまに地鳴りのような声でどやし上げられると、
それだけで餓鬼どもが泣き出すほどの迫力だった。

俺は小さい頃から明るい子だったが、「落ち着きがない」とも言われてた。
今なら何らかの発達障害に分類されてたはずだ。
朝のお勤め中もじっと座ってるのが苦痛で仕方なかったが、

園長に怒られるのが怖くておとなしくしていた。

保母さんたちも、餓鬼どもがいつまでも騒いでると
「ちゃんとしないと園長先生の部屋に連れてくよ!」と叱りつけたものだ。
今から思うとその叱り方って教育的にどうよ、という気もするが、
実際に絶大な効果があった。そのせいか「園長先生の部屋」は
「恐怖の館」にも等しいオドロオドロしい場所として俺たちに刷り込まれていた。

 === ===

俺が年長組の時だったと思う。
うちの保育所では給食の後に「お昼寝の時間」があったんだが、
ある日、お昼寝中に目が覚めた俺は、無性に「探検」したい衝動に駆られた。

なぜ探検?と思われそうだが、自分でも当時の発想はよく分からない。
ともあれ、いったん思い立つとじっとしていられない俺は布団を抜け出し、
保母さんが近くいないのを確認すると、そっと非常口から外に出た。

普段使わない非常階段を降りるだけでワクワクしたが、
どうせだからと同じ境内でも園児が立ち入らないエリアに足を伸ばしてみる。
夢中で歩き回ってたら、園舎の端にある部屋の窓が視界に飛び込んできた。

「園長先生の部屋だ…」

いつもなら近くにいるというだけで怖くなって逃げ出すところだが、
その日は非日常の体験で興奮状態だったんだろう。
「中を覗いてみたい」という抗しきれない欲求が頭をもたげてきた。

窓は高い所にあったが、窓下にあるゴミ箱に上れば子供の背でも届きそうだ。
問題は高さ1メートルほどのゴミ箱にどうやってよじ登るかだが、
チンパンジー並みの知能を発揮した俺は、近くにある大きな植木鉢を動かし、
それを足場にゴミ箱を制覇するという画期的方法を見出した。

こわごわ覗いた「恐怖の館」は、生首も血の池もない普通の部屋だった。
園長はいつもの作務衣姿で椅子に腰掛け、本だか資料だかを読んでる。

拍子抜けしたが、よく見ると園長の足元で何やら白っぽいものが動いてる。
角度を変えると、裸の女がうずくまって頭を動かしてるらしいと分かった。
しかも園長は下半身に何も身につけてないようだ。

「なんでオチンチンを食べてるんだ…??」

思い描いていた恐怖の館とは異質の衝撃だった。
あんなモノ、おいしいのか?という疑問が小さな頭脳いっぱいに広がった。
不思議な行為に強い興味を覚えたが、自分で検証してみようという気を起こさず、
その後の人生を踏み外さずに済んだのは幸いだったと思う。

園長が本から顔を上げ何やら声をかけると、女が顔を離して立ち上がる。
どこかで見た顔…と思ったら、同じ年長組のカスミちゃんのママだった。
この近所では珍しく洗練された都会的雰囲気の美人だが、
オッパイは俺の母親の方が大きかった。

女は園長に指示され、大きな事務机に手をつくと尻を向けて両脚を開いた。
園長はゴツい手で女の尻をつかみ、自分の下腹部をあてがうと腰を突き出す。
カスミママの「あああぁぁっっ!!」という声が窓越しに聞こえた。

これは幸いだったと思うが、両親の夫婦生活の現場を目撃したことはない。
さすがに尻にウンチが出る穴がある、くらいの知識は当時の俺にもあったと思うが、
そこにオチンチンを入れてどうなる、というのが率直な感想だった。
もちろん園長が正確にどこへ突っ込んでいたか、今となっては知る術もない。

しばらく腰を振った後、再び園長が何やら指示し、女は向き合う姿勢になる。
2人が体を離した時、女の下半身からズルリと抜けた股間のモノが目に入った。
子供の前腕くらい…というのは、さすがに記憶に補正がかかってると思うが、
とにかく禍々しくて太く長く黒ずんだ棒がそそり立っていた。
俺の下腹部にぶら下がってる小指ほどの突起と同じものとは信じられない。

園長は女の脚を抱え上げるように広げると、再び下腹部に股間をズブリと突き刺す。
そのまま太い腕で女を持ち上げ、白く丸い尻をつかんで激しく揺さぶり始めた。

「ああっ、ああっ、すごいっ、すごいっ〜〜!!」

ちょっと気取った普段の口調からは想像もつかない絶叫を漏らすカスミママ。
苦しいのかと思ったら、園長の頭を抱えて愛おしそうにチューなんかしてる。
大人の行動は理解不能なことが多いが、とりわけこれは訳が分からない。

気が付くと俺の股間も硬く張り…なんてことは保育園児に起きないわけだが、
何だかとんでもないものを見てしまったという自覚はあった。

体位はもちろん、本来の意味での「駅弁」という言葉すら当時は知らなかったが、
園長はその体勢から女の体を事務机の上に横たえ、さらに激しく腰を振り始めた。
カスミママは両脚を大きく広げ、気がふれたような表情でヨガッてる。
園長が腰を振るたび小さめのオッパイがプルプル揺れるのが、なぜか面白かった。

やがて園長が「ふんんんっ!!」と大きく唸り、一段と強く腰を押し付けた。
次の瞬間、女が「イグイグイグゥゥゥ〜〜」という声と共に大きくのけぞり
ビクンビクンと全身を震わせたと思ったら、ぐったりと動かなくなった。

爆発こそしないが、正義の戦隊に必殺技を食らった怪人のような反応。
まさか死んだのか? あの太い棒は必殺技か? 急に恐ろしくなった俺は、
音を立てないよう最大限の注意を払いながらゴミ箱から降りると、
全速力で非常階段を駆け上がって部屋に戻り、布団に潜り込んだ。

その日の夕方、いつものように他のママたちよりちょっとお洒落な服装で
娘を迎えに来たカスミママを見て、「生きてた〜」と心底安心する一方、
しばらくの間「あいつは偽物かもしれない」という疑いを拭えなかった。

その日を境に、園長先生の部屋は「恐怖の館」から強い興味の対象へと転じる。
お昼寝の時間になると保母さんの目を盗んで部屋を抜け出し、
非常階段を降りて園長先生の部屋を覗くのが俺の日課となった。

もちろん誰もいない日もあれば、園長が独りで何か書き物してるだけの日もある。
睡魔に勝てず布団から抜け出せないこともしょっちゅうだったし、
移動中に保母さんに見つかって部屋へ連れ戻されたこともあった。
それでも週1〜2回は、あの不思議な合体シーンを目撃する機会に恵まれた。

ケンタ君のママは、うちの母親より大きなオッパイを揺らして悶えてた。
ヨシミちゃんのママは、椅子に腰掛けた園長に向かい合って抱きつきながら
狂ったように腰を上下に動かしてた。名前を忘れたが年少組の子のママは、
1回終わったらまたオチンチンを食べ始め、2回目をおねだりしてた。
そのせいでお昼寝の時間が終わり、危うく保母さんに見つかるところだった。

どのママも、日ごろ絶対に見せない恍惚の表情で園長の巨砲を受け入れてた。
うちは母親がフルタイム勤務で、園への送り迎えは祖母が担当してたが、
幸いにというか、あの部屋で祖母の姿を目撃したことはない。

あの日、俺が無邪気にも「きょう保育園でこんなもの見ちゃった」と
両親に報告してたら…、と考えないわけじゃない。
そうしなかったのは、お昼寝の途中に抜け出して園内を探索するという悪事が
親にバレるのが単純に怖かったためだ。

 === ===

園長には息子が2人いた。どちらも俺の在園当時は中学生。
学校があるので園児と顔を合わせる機会は少ないが、
試験期間中とか学校が早く終わった日は、たまに園舎に来て遊んでくれる。
イガグリ頭の優しくて面白いお兄ちゃんたちで、園児にも人気だった。

その年の夏、園の運動場の一角に小さなプールが完成した。
今見たら水たまりと大差ないが、当時の餓鬼には画期的アミューズメント設備だ。
落成法要を兼ねたプール開きには、園長や保母さんたちのほか
園長の息子2人と園児の母親も何人か来て、餓鬼どもの遊び相手をしてくれた。

今の俺からすれば、若いママの水着姿なんて目の保養以外の何物でもないが、
そのありがたさを理解するには幼すぎた俺は、全力で水遊びに熱中してた。

ところが夏の初めで水温が低かったせいか、間もなく俺の小さな体を異変が襲う。
さし込むような痛みと共に腹のあたりがゴロゴロ言い始めた。
こんなことで至福の時間を中断してたまるか、と意地になって遊び続けたが、
痛みは強まるばかり。プール脇にいた保母さんが異常に気付き声を掛けた。

「カズヤ君、どうしたの?」
「…ウンチ出そう」

次の瞬間、保母さんは全盛期の朝青龍の立会いを思わせる勢いでプールに駆け込み、
俺を抱え上げて水から飛び出すと、そのまま敷地の端にあるトイレへと猛ダッシュ。
半泣きの幼児の手を引いて一緒に走ってたら、間に合わなかっただろう。
水着を下ろすと同時に、ビリビリビリと湿った音を伴った臭気が個室に立ちこめる。
完成したばかりのプールが汚物にまみれる惨劇は、こうして寸での所で回避された。

あの時の保母さんのとっさの判断力と行動力がなければ、
俺は「ウンコマン」とか「ウンチッチ」という安易にして屈辱的な称号を背負い、
卒園までの数カ月間、地獄のような日々を送らねばならなかっただろう。
「タチバナ先生」という一見男みたいな怖い保母さんだったが、お元気だろうか。
連絡先が分かればお歳暮を贈りたい気分だ。

とはいえ、すっきりしてトイレから出た俺にタチバナ先生が
「今日はプール入っちゃダメだよ」と無慈悲にも通告したのは言うまでもない。

1人だけ早々と着替えさせられ、プール脇で膝を抱えて座ったまま、
楽しそうに水遊びに興じるユカちゃんやケンタ君を眺めるのは、
遊びをこよなく愛する落ち着きのない俺にとって拷問にも等しい責め苦だ。
すぐに我慢の限界を超えた俺は、保母さんたちの目を盗んでプールを抜け出し、
未知なる刺激を求め園舎へと向かった。

園舎内には運動場に面して「お遊戯室」と呼ばれる小さな講堂があった。
普段は遊び場だが、園児にとって年間最大のイベントである「お遊戯会」や、
地元警察音楽隊のおじさんたちによるミニコンサートが催される場所だ。

水遊びを理不尽な形で中断されフテ気味だった俺は、お遊戯室を探検場所に選んだ。
というのも、お遊戯室にはちゃちい舞台があったんだが、
舞台袖の幕に隠された空間に何があるのか、前から気になって仕方なかったのだ。

果たして幕の奥には小さな部屋があった。よく見たら運動場とも直接行き来できる。
日ごろは道具置き場、コンサートの時は出演者の控え室として使われていたらしい。
何も行事がないその日は、催し物で使う長椅子がうず高く積まれてるだけだった。

部屋のカーテンは閉じられ、運動場側の棚にはバッグや衣類が置いてある。
どうやらこの日は保護者や保母さんが更衣室として使っていたようだ。

あいにく保母さんたちの着替えや脱いだ下着類に俺が興味を持つようになるには、
あと約10年の歳月が必要だった。俺は舞台袖の空間が「ここに通じてたんだ!」と
小さな感動を覚えながらも、長年の謎を解明してしまうと早々と興味を失い、
立ち去ろうとした。その時だった。

「あ…ん…」

長椅子の山の向こう側から声が聞こえた。誰かいる!
再び好奇心の塊になった俺は、身を低くして声がした方へと匍匐前進。
忍者かスパイになった気分で、長椅子に隠れたエリアをそっと覗き込んでみた。

水着姿の男女2組が俺の視界に入った。男は園長の息子2人。
女はショウ君のママとノゾミちゃんのママ。どっちもプール開きに来てた保護者だ。

ショウ君のママは床に座った園長の長男の脚に跨り、股間に顔を埋めていた。
長男の水着は膝くらいまで下ろされ、そそり立った肉棒が女の口に出入りしてる。
園長室の覗きで「女は男のオチンチンを食べる習性がある」と学んでいたが、
いつものように見下ろすのではなくほぼ水平だったから、なんか不思議な感じだ。

股間のモノは園長より色が淡く、心もち細い感じだが、女の口に入りきらない長さ。
長男は両手を後ろについて顔を上げ、緩みきった実に気持ち良さげな表情だ。
時おり腕を伸ばし、黒いビキニに包まれた柔らかそうなオッパイを揉んだりしてる。

ショウママは一心不乱に肉棒を頬張っていた。
そういえば園長のオチンチンも、ママたちは棒アイス並みの熱心さで咥えてた。
あの親子のオチンチンは特別おいしいのか、と子供心に思った。

その向こうでは次男がノゾミママと向かい合って身を屈め、胸に顔を埋めてた。
青地に幾何学模様の入った女のワンピース水着は腹のあたりまで下ろされ、
白く豊かなオッパイが二つポロリとこぼれてる。次男はオッパイの一つを片手で揉み、
乳首を指先で転がしながら、もう一方のオッパイにしゃぶりついてる。

「あん…いいわ…」

どうやら声を出したのはノゾミママらしい。
まあ俺自身、ほんの数年前まで母親の乳房にむしゃぶりついてたわけで、
オッパイの魅力を語らせたら人後に落ちない。次男の行動は理解できる気がした。

女は乳房を吸われながら、たまらないという感じで次男の頭を撫でたり、
下腹部に手を伸ばして水着から飛び出したオチンチンに指を絡めたりしてる。
これも園長ほどの禍々しさはないが、長男と比べても遜色ない大きさだった。

見つかるのはマズいと本能的に考えた俺は、息を殺して成り行きを見守った。

やがてショウママが長男の肉棒から口を離し、ビキニの下を脱ぐ。
三角形の陰毛はきれいに整えられていた。女は床に座った長男の腰に跨ると、
唾液に濡れテラテラと光りながら雄々しく天を突く竿に手を添える。
そのまま上体を倒して唇を重ねながら、ゆっくりと腰を下ろした。

「あああぁぁぁ…」という声と共に、太い肉棒が女の体内に消えていった。
園長室を覗いてた時は分からなかったが、まさに「のみ込む」という感じ。
長男はショウママの大きめの尻をつかみ、下からガンガンと突き上げる。
そのたび女は「あんっ、あんっ」と子犬のような声を上げた。

次男はというと、ノゾミママを四つん這いにさせ水着の股の部分を横にずらすと、
下腹部をあてがい一気に突き刺す。女が「はううぅぅっっ!」と声を漏らした。
ノゾミママは結構大柄で、オッパイも立派だがお尻もなかなかのボリューム。
まだ手足の伸びきってない次男は、大きな尻に抱きつくように腰を振り始めた。

長男は繋がったままショウママを押し倒し、座位から正常位へ移行。
ビキニトップも押し上げ、こぼれ出た黒っぽい乳首を吸いながら腰を突き立てる。
女は「すごい、すごいいぃ〜〜」と喘ぎながら長男の首に腕を絡める。
普段「早くなさいっ!」とショウ君を叱る時より可愛らしい声だった。

やがて我慢の限界が来たのか、長男は女を抱き締め一段と深く腰を突き出す。
ショウママが「あ”あ”あ”〜〜」と表記しづらい声を上げ全身をのけぞらせた。
長男は腰をブルルルッと震わせたかと思うと、ガックリと女に重なって倒れ込んだ。

次男は相変わらずノゾミママの大きな尻を抱え、腰をカクンカクンと前後運動。
両腕を伸ばし、四つん這いの体にぶら下がる大きなオッパイを握ってる。
彼らの行為は理解不能だったが、オッパイに対する次男の執着心は俺も共有できた。

「おばさん、出ちゃう…出ちゃうよ」

情けない声を上げたのは次男だった。普段の面白いお兄ちゃんとは別人のようだ。
ノゾミママは「いいわよ…来て…来て…」と息も絶え絶えに促す。
いったい何が出るんだろう。科学者になった気分で観察を続ける俺の視線の先で、
次男は「ああぁ…」と呻きながら体をビクビクっと痙攣させた。
何が出たか、俺の場所からは残念ながら確認できなかった。

その時、運動場の方から「カズヤく〜ん」と呼ぶ保母さんの声が聞こえてきた。
チッ!プールを抜け出したことがバレたらしい。大事になっては後で面倒だ。
俺は床に這いつくばったままじりじりと後ろに下がって部屋を出ると、
幕をくぐってお遊戯室に戻り、俺を探す保母さんの方へと駆けて行った。

 === ===

保育所では年1回、年長組の園児を対象に「お泊り会」が開かれた。
何のことはない、みんな一緒に園舎で一晩過ごすだけだが、
ほとんどの餓鬼にとって、親元を離れて眠るのは出生直後を除き初めての経験。
これからの長い人生を展望し自立への第一歩を刻む意味でも、
園児にとっては期待と不安に満ち溢れた大イベントだった。

その日は昼間、みんなで近くの農場へ行って芋掘り体験。
収穫した芋を保育所へ持ち帰り、保母さんや保護者が調理して夕食にする。
小学生以上なら墓地を利用した肝試しなどの企画も考えられたが、
そこは外泊初体験の幼児。おとなしく絵本を読み、風呂に入って寝るだけだ。

この種のイベントにはアクシデントがつき物だ。
昼間は元気に騒いでたくせに、夜になると親が恋しくて泣き出す餓鬼がいる。
緊張と興奮で熱を出したり、夕食後にゲロしたりする面倒な奴もいる。
普段と異なる環境で、卒業したはずの「粗相」を再発する子も絶対いる!

そうした事態に備え、保母さんのほか数人の母親が付き添って園舎に泊り込んだ。
親たちも大変だったんだなと、この年になると少し分かる。

風呂は近所の銭湯。性別を問われない幼児の特権を駆使し堂々と女湯を利用する。
20代中心の保母さんと混浴なんて、今の俺からすれば夢のような経験だが。
当時の俺は愚かにも、そのありがたさを理解できてなかった。
せめて同じ組の幼女たちの裸をじっくり観察しておけばよかった。

幸い俺は泣くことも戻すこともなく床に就いたが、やはり興奮してたんだろう。
深夜、ふと目を覚ましてしまった。とりあえず尿意をもよおしたんでトイレへ。
出すものを出すと、またぞろ「じっとしてられない症候群」が頭をもたげてきた。
俺はトイレから部屋に戻らず、夜の園舎探訪という新たな冒険をスタートさせた。

灯りの消えた寺はかなり気味悪く、お遊戯室も園長先生の部屋も人の気配がない。
ちょっと怖くなって部屋に戻ろうとしたら、毎朝「お勤め」する本堂から
薄ぼんやりと明かりが漏れてくるのに気付いた。何となく興味を引かれた俺は、
細い渡り廊下を伝って本堂へ移り、入口を小さく開けて中を覗いてみた。

本堂には仏像が3体くらいあったと記憶してる。
うち1体は俺たちが「ののさま」と呼んでたご本尊の観音菩薩像のはずだ。
結局どいつが「ののさま」なのか、最後まで知らずに卒園してしまったが。

本尊の周りにある幾つかの燭台では、ロウソクの炎が揺らめいてる。
どうやらこの明かりが外に漏れてたらしい。
俺は太い柱の後ろから、いつも「お勤め」をする畳敷きの中央部を覗きこんだ。

畳には布団が何枚か敷いてある。そのうち一枚の上では園長の長男が
四つん這いになった女を後ろから貫き、激しく腰を振っていた。
女はお泊り会の付き添いで来たイクミちゃんのママ。まだ20代半ばだったはずだ。
猫のようにしなやかな肢体が、揺れる灯りに照らされ怪しく揺れていた。

奥の布団では園長の次男が、座位の姿勢で女を突き上げてる。
女は園長夫人にして長男&次男の実母。正式の保母ではなかったはずだが、
園児や他の保母さんからは「お母さん先生」と呼ばれてた。

まだ30代だったと思うが、なかなか豊満というか肉感的ボディーの持ち主。
包容力ある母親然とした雰囲気のせいか、餓鬼どもの人気は高かった。
俺も間違えて「おかーさん!」と呼び赤面したことが、少なくとも2回ある。
誰にも間違いはあるはずなのに、なんであんなに恥ずかしかったんだろう。

次男は白い肉体に押しつぶされながら、豊かな乳房に顔を埋めている。
プールの時もそうだったが、次男はどうやらかなりのオッパイ好きらしい。
というか、よく考えたらその相手はマズいだろ、と突っ込みを入れるべき場面だが、
既におかしなことに慣れっこになってた俺は、特に違和感を覚えなかった。

本尊の真ん前にある布団では、園長が女を組み敷いて腰を打ちつけながら、
並んで横たわる別の女の股間を愛撫してた。いわゆる3Pというやつだ。
巨大な逸物を受け入れてるのは、プールで俺を救ってくれたタチバナ先生。
どちらもがっちりした体格の似合いのカップルと言えなくもない。

園長が愛撫してたのは、やはり付き添いで来たユウヤ君のママ。
いま一つ地味な感じの人だが、グラマーで今から思えばかなりそそる肉体だ。
よく見ると園長は、手に握った太い棒のような物を女の股間に突っ込んでる。
今なら「ディルドー(張形)」と分かるが、当時の俺には意味不明の物体だった。

本堂にはさらに2人、裸の女がいた。付き添いで来たマサミちゃんのママは、
別の女をバックで攻める長男と濃厚なキスを交わしてる。
保母のイトウ先生は、次男に貫かれた「お母さん先生」とこれまた熱いキス。
女同士のキスを見たのは、約6年間の人生で初めての経験だった。

年の割に濡れ場の目撃経験は豊富な俺だったが、男3人に女6人だと迫力が違う。
特に園長は、組み敷いたタチバナ先生が昇天すると巨砲を引き抜き、
並んで横たわるユウヤママにずぶりと挿入。ガンガン腰を使いながら
持ち替えた張形でタチバナ先生を攻めるという、器用かつ迫力ある攻めを披露してた。

息子たちはさすがに女2人を同時に攻める技量は持ち合わせていないらしいが、
相手の女がイクと、すぐに別の女を抱き寄せて続きを始める。
というか待機してた方が「次は私の番よ」とばかり、前の女を突き飛ばしてた。

ところで、保育所のお遊戯室には1辺30cmほどの積み木遊び用ブロックがあった。
キャラクターシールなんかが貼ってある魅惑的代物で、毎日お遊びの時間になると
限られた数のブロックをめぐり幼児たちの熾烈な争奪戦が繰り広げられたものだ。

前の子が遊び終わると「次はボクの番!」「アタシよ!」と始まるわけだが、
男根をめぐる女同士の争いを見てると、いつまでも成長せずブツ欲にとらわれる
人間の業の深さを痛感する。同時に勃起した肉棒は大人の女どもにとって、
キャラ入り積み木ブロックに匹敵する魅力的なもの、と幼心に深く刻み込まれた。

園長親子は6人の女に次から次へと硬いアレをぶち込んでいった。
長男もためらうことなく園長夫人にズブリと挿入し、気持ち良さそうに腰を振る。
もちろん園長も夫人である「お母さん先生」相手にハッスルしてたが、
この2人の絡みがなぜか一番違和感があった。なんでだろう。今もって謎だ。

「ああぁ〜〜ん」「いいぃぃわあぁぁ〜〜」という罰当たりな声が本堂に響く。
女が集団で発するヨガリ声は、発情期の猫の鳴き声に似てるというのは新発見。
この光景を「阿鼻叫喚」と表現するのはどう考えても誤用だと思うが、
ともかく地獄絵図だか極楽図だか分からない痴態に俺の視線は釘付けだった。

今の俺なら最低4回分のオカズになっていたはず。
勃起すらさせず観察するのは、二次性徴を迎えていないお子様ならではだが、
悲しいかな、お子様は興味が冷めるのも早かった。

いくら合体したところで巨大化するでもなし、背中から翼が生えるでもなし、
男女9人が延々と織りなすピストン運動に、幼い俺は早々と飽きてしまった。
それ以前にどうしようもない睡魔が襲ってきた。

ここで寝込むのはさすがにマズいという自覚はあったんだろう。
俺は死力を振り絞って本堂から抜け出すと、仲間たちが眠る部屋に戻り、
暖かな布団に潜り込んだ。やはり俺にはここが天国だ。

翌朝、本堂で朝のお勤めを聞きながら、俺が正座してるこのあたりで
園長が腰を振ってたんだな、と思うとちょっと妙な気分になった。

園長はいつもと変わらず、境内の隅々まで響き渡る朗々とした声で読経してる。
餓鬼どもはといえば、眠い目をこすりながら園長の後ろで一列になって正座し、
この意味不明の呪文がいつ終わるのかとばかり考えていた。

本堂の隅でお勤めを見てた付き添いのママや保母さんたちが、
やたら生き生きして色艶良く見えたのは、俺の記憶違いかもしれない。

 === ===

霊験あらたかな保育所で園長たちが繰り広げていた不思議で不埒な行為について、
それなりに正確なところを俺が知るのは、それからずっと後のこと。
その頃にはかなり記憶が曖昧になってたし、深く追求もしなかった。

日ごろ送り迎えしないとはいえ、俺の母親も実は仲間だったんじゃないかとか、
一番若くて俺がほのかな恋心を抱いてたサイトウ先生は大丈夫だったのかとか、
考え始めると頭がおかしくなりそうだから、無意識のうちに記憶を封じ込めていた
…と書くと何だか心理学者っぽいな。

いずれにせよ上の描写には、あまり正確じゃない部分も相当あると思う。
例えば、今から思うと園長や息子たちは避妊してなかった気もするが、
それは単にゴムを被せる光景が記憶に残ってないだけかもしれない。

あの保育所に通うと在園中に弟や妹ができる、という噂も聞いたことはない。
当時の同級生で4〜5歳下の弟や妹がいる奴もいないわけじゃないが、
それとこれとを結びつけるのは短絡というものだろう。

そして時が流れ、今度は俺の長男があの保育所に通うことになった。

先日、嫁と長男を連れて約30年ぶりに訪れた寺は、本堂こそ昔のままだが、
古臭い木造だった園舎は小ぎれいな鉄筋コンクリート造に生まれ変わっていた。
講堂は少し広くなって、電動式のせり上がり舞台も整備されてた。
プールは昔のままだが、こんなショボい水溜りによく感動できたもんだと、
あの頃の自分の感受性の豊かさにむしろ感動した。

それ以上に、あの頃の俺にとって無限の謎に満ちた魅惑の空間だった境内が、
実は大して広くもないという事実が、何だか寂しかった。

園長職は長男が継いでいた。もっとも、あのいかつい住職はまだ元気らしい。
40代の現園長は父親似だが、僧兵のような親父さんより柔和な感じがする。
「私も昔、遊んでもらったんですよ」と言うと、もちろん覚えてるわけないが、
「おお、そうですか」と目を細めていた。

保母さんも当時とは全員入れ替わってたが、じっとしていられない餓鬼どもを
猛獣使いのようにまとめ上げる激務は、今も昔も変わらない。
若い保母さんのジャージに包まれたお尻に思わず目が行ってしまうのは、
俺がオッサンになったせいだろう。

「お母さん先生」は残念ながら数年前、鬼籍に入られたという。
あの優しい笑顔がまぶたに浮かぶ。今ごろ地獄を彷徨っておられることだろう。

園内を一巡して新しい「園長先生の部屋」でお茶をご馳走になっていると、
ドアが開き、園長に似たイガグリ頭の少年が顔を覗かせた。

「うちの長男です。来年中学に上がるんですよ」

園長に促され、少年がペコリと頭を下げる。さすが躾はしっかりしてるようだ。
少年は顔を上げると、俺の隣に座る嫁のグラマーな肢体に舐めるような視線を向け、
心の底から嬉しそうにニコリと微笑んだ。

【露出】プールに行ったらヒモみたいな水着の人妻がいた 【野外】

$
0
0

大学も夏休みで、暇を持てあましてたら、姉貴に子供達をレジャープールに連れてってくれと頼まれた。
甥は小学4年生と6年生で、つきっきりで見てなくてもいいので、それほど面倒ではないし、もともと暇だったので行くことにした。

姉貴の車を借りて、久々の運転なので超安全運転で、ドキドキしながら出発した。
車の中で、早くも甥達は大騒ぎで、先が思いやられた、、、
だが、俺はこの甥達を嫌いではない。
赤ん坊の頃からずっと遊んでいるので、俺にもすっかりなついているし、姉に似てルックスも良いので可愛いというかイケメンだ。
俺も、幸い姉に似てイケメンに生まれてきたので、多少人生イージーモードだ。

そして、コンビニに寄ったりしながら、とりあえず到着した。
甥達は、大はしゃぎでスライダーに行き、バターになる勢いで何度もグルグル滑っていた。

俺は、とりあえず流れるプールで浮き輪に掴まって、ノンビリと流れていた。

水着の若い子達を見ながら、悪くないかもw等と思っていたら、一人だけ明らかに異質な水着の女性がいた。
黒髪の真面目そうな女性で、歳は30手前くらいに見えるその人は、ちょっと前にはやった過激すぎるジュニアアイドルや、着エログラドルみたいなとんでもない水着を着ていた。

チューブトップっぽいブラは、幅が乳輪が隠れるギリギリくらいの細さで、ぱっと見ロープでも巻き付けているようだ。
地味な見た目の女性だが、胸はかなり豊満なので、上乳も下乳も完全に飛び出している。

そして、下はヘアを剃っていないと完全にはみ出るくらいの、わずかな面積しかない水着だ。
思わず2度見してしまったが、後ろを向いた彼女の後ろ姿は、ほぼ全裸みたいな感じだった、、、
Tバックでお尻が丸見えだし、チューブトップのブラは、ただでさえ細いのに、背中側は本当の紐だった。

しかも、そんな格好のクセに、露骨に照れているというか、恥ずかしがっているのが見て取れる、、、

俺は、プールに流されながら、しばらく眺めていた。
一人なのかな? AVかなにかの撮影? 調教プレイ? 頭の中に色々な疑問が浮かんだ。
そして、メチャ勃起した。
もう、とっくに童貞を卒業している俺だけど、いい歳の真面目そうな女性が、あんな過激な格好で恥ずかしがってるのを見ると、変な興奮がある。

そして、ドキドキしながら一周すると、もういなかった。
幻かな?等と思いながら、しばらく流れていた。

甥達は、唇を真っ青にしながらまだグルグル滑っているので、とりあえずデッキチェアに寝転がって日焼けしようと思った。

すると、いきなり声をかけられた。
『あのぉ、、、お一人なんですか?』
女性の声に驚いて、振り返ると、さっきの過激な水着の女性がいた。
顔を真っ赤にしながら、恥ずかしそうに聞いてくる女性に、驚いたが興奮した。
逆ナンは、たまにされることがあるが、こんな年上の真面目そうな女性に声をかけられるなんて、初めてだ。

「え?あぁ、甥っ子と来てますけど?」
『そ、そうなんですね、、』
そう言ったきり、困ったように黙り込む女性。

しかたなく、俺から話しかけた。
「お姉さんは一人なんですか?」
『あ、、えっと、、はい、、そうです。』
「へぇ、女性が一人で来るなんて、あるんですね。」
『あ、はい、、たまに来ます、、』
「そうなんだ、、 どうですか?よかったら、お昼でも食べます?」
俺は、お腹がすいていたこともあるし、なんでこんな格好なのか凄く気になったので、誘ってみた。
『い、いいんですか? 私なんかと、、、』
「どうして?お姉さん、凄く美人で、スタイルも良いじゃないですかw」
『そ、、、そんな事、、ないです、、』
顔を手で隠して恥ずかしがりながら言う女性。
たしかに、その過激な水着に目を奪われるが、顔も悪くない。
吹石一恵をちょっとふくよかにした感じだ。
ただ、その左手の薬指に指輪が光っているのが見えた。

「今日は、旦那さんは一緒じゃないんですか?」
『えっ!?』
驚く彼女に、指輪を指さす。
『あぁ、、はい、、 一緒じゃないです』
どうも歯切れが悪い。

「それにしても、凄い水着ですね。お姉さんくらいスタイルが良くないと、似合わないですよねw」
『こっ、これは、、 主人の、趣味です、、、』
「へぇ、、、  あ、なんか、買ってきますね。」
そう言って、俺は焼きそばとか、ビールなんかを買いに行った。

戻るとまだ彼女はいて、やっぱり恥ずかしそうにしていた。
「はい、コレどうぞ。」
そう言って、ビールと焼きそばを渡す。
『あ、お金、、』
「ごちそうしますよ。」
『そんな、ダメです、、』
「いいですよ。お姉さんみたいな美人と食べられるなんて、ラッキーですから!」
褒めると、顔を真っ赤にして照れる。その、過激な格好とまったくそぐわない感じだ。

すると、甥達が
「兄ちゃん、腹減った!!」
と、駆け寄ってきた。

お姉さんを見て、
「うわっ!ヒモねーちゃんだ!」
「おっぱいはみ出てる!」
二人で大騒ぎする、、、
慌てて黙らせて、お金を持たせて昼を買いに行かせるが、お姉さんは顔が真っ赤で、耳まで真っ赤だ、、、

「ごめんなさい、小学生なんで、見たまんま言っちゃうんですよねw」
『いえ、全然、、、』
うつむいて、真っ赤なまま言う彼女。
「それにしても、凄い水着ですよね。スタイルがいいから似合ってるけど、、、  それ着てたら、よく声かけられるでしょ?」
『はい、、 かけられます、、』
「付いてったりするの?」
俺も慣れてきたので、ため口にした。
『いえ、そんな、、、たまに、、です、、』
「マジで!? たまに付いてくの? じゃあ、俺にも付いてきてよw」
『はい、、、ご迷惑じゃなければ、、、』
「マジ? ていうか、けっこう遊んでるねw」
『そんな事ないです!』
「あるってw ちょっと、泳ぐ?」
『はい、、、』

照れる彼女を引っ張って、流れるプールに入った。
大きめの浮き輪に掴まって、二人で流れる。

浮き輪に掴まる彼女の後ろから、覆いかぶさるようにして浮き輪に掴まると、体が密着する。
でも、彼女は思った通り全く抵抗しない。
俺は、遠慮なく勃起したチンポを押しつけながら、プールの流れに身を任せる。

「お姉さん、コレって、ご主人の命令とかなの?」
『あ、、、はい、、そうです、、』
「やっぱりねw ご主人、ホントはどっかで見てるでしょ?」
『はい、、見てます。』
「それって、寝取らせ性癖ってヤツ?」
『はい、、、』

「じゃあ、セックスもしちゃったりするの?」
『それは、、、まだないです、、、  お口なら、、、1度だけ、、、』
「そうなんだ、、、  ていうか、水着、ヤバいねw 透けて乳首丸見えじゃんw」
『イヤァ、、、 言わないで下さい、、』
「コレ、水着じゃないんだねw 下着じゃんw」
『し、、下も透けちゃうんです、、、』
「ねぇ、お姉さんはこう言うの、好きなの?」
『え、、、、  その、、、、  好き、、です、』

その言葉を聞いて、すぐにお姉さんの股間に手を持っていき、下着の隙間から手を突っ込んだ。
『ひゃん! だ、ダメ、、』
慌てるお姉さんだが、思った通り、アソコは水ではないヌルヌルの液体で覆い尽くされていた、、、

「ダメってw 超濡れてるじゃんw 指、入れるよw」
『あぁ、、ダメぇ、、 ハ、ぐぅ、、、』
周りを気にして、必死で声を抑えるお姉さん。

いきなり二本指を突っ込んだけど、何の抵抗もなくスルンと入った。
濡れすぎたアソコは、中が熱々でキツキツだった。

「ほら、声出したら、周りにバレるよw」
『だ、だってぇ、、 抜いてぇ、、  あ、くぅあ、あ、、  指ダメぇ、、、』
とろけた可愛い声で、お姉さんがあえぐ。

周りには、けっこう人がいる。
ただ、騒がしいのでお姉さんの声に気がつく人はいないと思う。
だけど、格好が格好なので、注目している人はいると思う。

俺はハッタリで
「横の人、超見てるよw」
と言った。
アソコが、痛いくらい締まって
『だ、ダメ、、 見られちゃう、、、聞かれちゃう、、 あ、あぁ、、』
必死で声を抑えようとするお姉さんが、たまらなく可愛く思えた。
今まで、2つ上の女とやったことはあるけど、基本年下の方が好きだ。
だけど、このお姉さんはかなり良い。清純な感じなのに、とんでもない格好で、しかも恥じらっている、、、

イジワルしたくなるw

俺は、指を中でこねて、Gスポットをこすり始めた。
お姉さんのスポットは、かなりはっきりとわかる感じで、すぐにピンポイントで攻撃できた。

『おぉ、ふぅあぁ、、 だ、めぇ、、 許してぇ、、  そこ、、ダメなのぉ、、、』
泣きそうな顔で俺に振り返りながら、首を左右に振る。
ヤバい、可愛い、、、  

ブラに透けている乳首を片手でつまむ。浮き輪に押しつけられて、周りから見ても何をしているかわからないと思うけど、お姉さんの表情を見れば丸わかりだと思う、、、

『くひぃ、、ん、、、  だ、、め、、、 あ、、あ、、、、あぁ、、、  ほんと、、に、、、 あ、ひぃあ、、、 イ、、イク、、、  イッちゃう、、、  こんな、、  こんなところでぇ、、 あ、あぁっっ! イクっ!!!』
俺が心配になるくらいの声で、あえいで体を震わせた、、、

「あーーあw イッちゃったw こんな人のいるところで、ご主人も見てるのに、イッちゃったw」
こう言うと、膣がキューーーっと締まるw

すると、いきなりお姉さんが俺のチンポを握ったきた。
こんな屋外で、水着の上からとはいえチンポを触られて、けっこうビビった。
俺は、セックスはたくさんしてきたけど、外や車ではしたことがないので、かなりドキドキした。

『大きいですね、、、 硬いし、、素敵、、、』
丁寧な言葉遣いのまま、エロいことをささやかれると、かなりクル。

「お姉さん、どっか、移動しようよ。 入れたい、、」
思ったことを素直に言った。
すると、お姉さんは後ろ向きのまま、器用に俺の水着のヒモを解いていく。
そして、あっという間にチンポを剥き出しにされた。
水の中とは言え、周りの目がメチャメチャ気になってビビった、、、

「ヤバいって、 移動しようよ!」
小声でそう叫ぶが、お姉さんはまったく無視したまま俺のチンポを直接握った。

柔らかい手がチンポを握ると、プールの中ということも忘れて、声が漏れそうになる。

すると、お姉さんは俺に振り返り、ニコッと笑った。
さっきまでの照れて恥ずかしそうにしていたお姉さんではなく、エロい痴女みたいな表情のお姉さんに、ドキリとした。

すると、すぐにお姉さんは自分で導いて、俺のチンポを入れてしまった、、、
もともと小さすぎる水着なので、バックからならズラす必要もなく入ってしまったようだ、、、

熱くて、うねったお姉さんの膣。周りに人がいるというシチュエーションもあってか、入れたそばからイキそうになる、、、

『ク、はぁっ、、ン、、おっきぃ、、、 あ、ヒィ、、あぁ、、』
お姉さんは、浮き輪にしがみついたままバックで俺に犯されている、、、

人妻に、どこかで旦那が見ている状況で、生挿入してしまった、、、
だが、お姉さんはそんな事はまったく気になっていないようで、
『入っちゃったねw どう? 気持ち良い?』
妖艶とも言える表情で聞いてきた。
お姉さんは一旦スイッチが入ると、大胆に、エロく変身するようだ、、、

「ヤバいです、、気持ち良くて、、イキそう、、、」
『もうイクの? どうしようかなぁw 今日は危険日だから、妊娠しちゃうかもw』
こんなとんでもないことを、楽しそうに言われた。
慌ててチンポを抜こうとすると、後ろ手に体をホールドされた。

『だぁめっw 逃げないのw 私のこと、イカせてくれたら、抜いて良いよw』
こんな事まで言う、、、  あまりの豹変ぶりに、メンヘラ?と、怖くなる、、、
すると、お姉さんがいきなり手を振った。
えっ?と思ってプールサイドを見ると、40くらいの男性が手を振っている。
そして、俺と目が合うと、ニヤリと笑った。

「だ、旦那さん?」
『そうだよw 旦那さんが見てる前で、私を妊娠させちゃうの?』
本当に、エロい言い方で言うお姉さん、、いや、奧さんか、、、

「ダメですって、、」
俺は、完全にビビってチンポを抜こうとする。
『ほら、イカせてくれないと、妊娠しちゃうよw』
そう言って、腰を左右に振る奧さん、、、

その刺激で、イキそうな感覚が強まる。

俺は、必死でアジアンとかハリセンボンとかの不細工を思い浮かべる。
それで何とかイキそうなのを押さえ込みながら、腰を動かし始めた。
といっても、派手にピストンは出来ないので、押し込むような動きだ、、

『それぇ、、凄いかも、、、 大っきいのが、、擦れてるよぉ、、 あ、あぁ、、 凄いぃ、、』
奧さんは、周りに声が聞こえても良いと思っている感じだ。
「ダメだって、声、デカいって!」
『だってぇ、、、  お兄さんの大っきくて気持ち良いからぁ、、  あぁっ、んんっ!!』
もう、ドキドキして死にそうだ、、、
だけど、シチュエーションでまたすぐにイキそうになってくる、、、
人の大勢いる流れるプールで、堂々とハメている状況、、、  しかも、それを旦那が見ている、、  きっと、監視員とかも気がついて見ているはずだ、、、

すると、奧さんが自分で乳首とクリトリスをまさぐり始める。
アホかと、、、 本気で”バカッ!”と叫びそうになった。

この状況で、ハメられながら自分で乳首とクリを触る奧さん。
『くヒィッ! アァァッ! 凄ぃぃ、、、 ホント、、、 気持ちいいぃ、、  お兄さんのおチンポォ、、、 ゴリゴリ来るぅよぉ、、、』
奧さんは、場所もわきまえずに淫語をしゃべり始める。

あぁ、、ヤバい、、もうイキそう、、、  頭の中で、九九をしたり、彩芽を思い出しても、もうダメだ、、、

「ダメ、、奧さん、、、出る、、、ヤバい、、、」
俺は、泣きそうになりながらそう言うが、
『イッてぇっ! そのまま中でぇ、、 妊娠させてぇっ!!』
と、うめいた。

その言葉にもう限界で、思い切り奧さんの危険日マンコに中出しをしてしまった、、、

「あぁ、、ごめんなさい、、、」
謝りながらイクのは初めてだ、、、
『うぅあぁっ! イクぅ、、、 種付けセックスでイクっ!』
奧さんは、体を痙攣させながらイッた、、、

そして、慌ててチンポを抜いたが、
『今さら焦ってもおんなじだよw 凄かったw』
奧さんは、嬉しそうだ、、、
「ホント、、ごめんなさい、、」
謝る俺、、、

すると、水着を戻して、俺の手を引きプールサイドに上がる。
すると、旦那さんがいた、、、
俺は、慌てて謝る、、、
「いや、いいよ、いいよ、、、それよりも、ちょっといいかな?」
旦那さんは、温和な表情でそう言ってくれた、、、

そして、二人について歩いて行く。
そのまま、有料の個室ブースに移動した。

それほど広くないスペースだが、こんな空間があることを知らなかった。

『あ、、垂れてきちゃった、、』
奧さんが、楽しそうに言う。
奧さんを見ると、小さすぎる水着、、、実際は下着だが、、、から、しみ出した俺の精子が太ももを垂れ流れていた、、、

「いっぱい出たねw 初めまして。 ミクはどうだった?」
旦那さんが、奧さんの感想を聞いてきた。
「そ、それは、、、凄く気持ち良くて、美人で、スタイルも良いし、、、最高でした、、、」
『へへへw 照れちゃうなぁ、、w』
奧さんがおどける。

「じゃあ、ここでもう一回いいかな?」
旦那さんがそんな事を言う。
「えっ!?でも、危険日じゃ?」

「一回も二回もおんなじだよw 大丈夫、私が認知するからw」
こんな事まで言う、、、
世の中には、色々な愛の形があると驚いた、、、
他人の種で嫁を孕ませて、それを産ませて自分の子として育てる?
信じられない、、、

呆然としていると、奧さんが俺の水着を脱がせ始めた。
あっという間に全裸にされると、奧さんは俺のチンポをくわえてきた、、、
『うわぁ、、やっぱり、、大っきいなぁw』
嬉しそうに言いながら舐めてくる、、、

「デカいねw けっこう遊んでるでしょ?」
奧さんにフェラをされながら、その旦那さんに声をかけられる、、、
頭が変になりそうだ、、、

すると、いきなり奧さんにキスをされた、、、
舌を突っ込まれ、口の中をかき混ぜられる、、、

「あぁ、、ミク、、 凄い、、、」
旦那さんが、キスを見て急に興奮し始めた、、、
さっきまでの余裕がある態度が消えて、なぜか弱腰の声だ、、、

奧さんは、俺とキスをしながら、旦那の方を見ている、、、
旦那に見せつけるように、濃厚なキスをする奧さん、、

俺も、ブチッと切れた、、、
興奮しすぎて、奧さんの口の中に舌を荒々しく差し込み、かき混ぜる。
奧さんは俺に抱きつきながら、キスをして、手でチンポをまさぐる、、、

「あぁ、、、 ミク、、、」
旦那さんの、切なげな声が響く、、、

俺は、旦那さんの情けない声を聞いて、余裕を取り戻してきた。

奧さんを、後ろ向きにして壁に手を付かせて、立ちバックではめる。
その、エロいブラを外して、胸を剥き出しにする。
そのデカい胸を、荒々しく鷲づかみにする。

『くぅぁっ! ヒ、ぎぃんっ! お、おぉお、 当たってるぅ、、、  奥にぃ、、、』
奧さんは、背中をのけ反らせながらあえぐ。
さっきと違って、声も大きめだ。

個室とは言え、音はけっこう漏れると思うが、かまわずにハードピストンをする。
『グゥッ! ヒィッ! あ、ヒィッん! ヒィん! ヒィん! ヒーーィンッ! おチンポ大っきいいぃっ!!』
奧さんが、テーブルに手を付いて立ちバックで鳴く、、
旦那さんは、テーブルの反対側に回って、奧さんを正面から見ている、、、
その顔は、泣きそうで、辛そうだが、興奮しているのもよくわかる、、、

「ほら! 旦那見てるぞ! 生チンポでヒィヒィ言わされてるの、じっと見てるぞ!!」
そう言って、ガンガン突く。
『うわぁぁっ、、 あなたぁ、、 あなたじゃないチンポォ、、、 生で入れてますぅ、、、  ゴメンなさぃぃ、、 』
「あ、あぁ、、ミク、、そんな、、、」
旦那さんは、泣きそうな顔でうめくが、股間を見るとズボンを突き破りそうなほど勃起している、、、

俺は、思わずニヤリと笑ってしまった、、、
ホントに、変態っているんだな、、、  良い勉強になった、、、

「ほら、旦那勃起してるぞ! 奥さんが犯されてるの見て、勃起してるぞ!!」
『お、グゥッ!! あなたぁ、、ダメぇ、、、 ああっ!! もう、、イッちゃうよぉ、、  あなたのじゃないおチンポでぇ、、 あぁ、、、 イッちゃうよぉ、、、!』

奧さんは、旦那さんを見ながら叫ぶ。

「お、俺のと、どっちが大きい?」
旦那さんが、泣きそうな声で言う。
『ヤァァ、、、、 そんな、、、 言えないぃ、、、』

「言えよ!」
俺がたきつけると
『あ、、あなたのよりぃ、、、このおチンポの方がおっきいッ!  あなたのチンポより、このおチンポが気持ちいいっ!! このチンポの方が好きぃっ!!』
「う、あぁ、、」
旦那さんが、変な風にうめいた、、、
不思議に思って旦那さんを見ると、股間のところがビクンビクンと脈打っている、、、
しかも、シミが出てきた、、、

「ハッw 旦那、イッたぞw」
半笑いで俺が言う。
『あなたぁ、、 私ももうイクっ! この人のチンポでイクっ!! この人の精子で妊娠するっ!!!』
ほとんど絶叫だ、、

俺は、限界が来たので、
「イクぞ、、」
と言った。
『イッでぇッ! 中でぇッ!!! アァァッ! 種付けしてぇっ!!!! おお゛お゛お゛お゛ぉっ!! イッグゥゥッ!!!』
そう言って、ガクガクッと体を震わせた、、、

俺は、遠慮なくたっぷりと中出しをして、一滴残らず注ぎ込んだ、、、

「ミク、、、、」
旦那さんは、夢見心地といった感じで、それを見ていた、、、

だけど、俺はイッた途端に急に冷静になって、ビビり始めた、、、

床にへたり込む奧さん、、、  
俺は、慌てて水着を着て、
「あ、ありがとうございました、、、  じゃあ、失礼します、、、」
そう言って、逃げるように個室を出ようとする。

すると、放心状態の旦那さんが、名刺を渡してきた。
「い、いつでも、キミがしたい時にしてくれて良いから、、、連絡してくれるかな、、、」
旦那さんは、弱腰で言ってきた、、、
俺は、名刺を受け取りながら、
「はい、わかりました、、」
と言って、逃げるように出た。

名刺を見て驚いたが、弁護士さんだ、、、  しかも、所長さんだ、、、
よく、こんなものを渡したと驚いたし、逆に怖くなった、、、

プールに戻ると、甥達は相変わらず狂ったようにスライダーを滑りまくっていた、、、

そして、帰り支度を始めて、家路についた、、、
車の中で
「ねぇねぇ!あのヒモねーちゃん、変だったねっ!!!」
「おっぱいボーンだったね!!」
と、大騒ぎだった、、、

姉に、ヒモねーちゃんのことを言わないように念を押しながら、家に戻った、、、

強烈な経験だった、、、  ちょっと、くせになるかもw

【学校】保健室の夏帆(まとめ+修正)【教室】

$
0
0

10代のころの忘れられない初恋と性体験の思い出です。
※脚色や台詞なんかの補作もあるのでウソっぽく感じたらすみません。
 
保健室の夏帆(まとめ+修正)
 
小学校6年のとき、とても発育のいい女の子がいました。
赤いランドセルを背負った夏帆で脳内再生お願いします。
(※川口春奈のほうがイメージ近いかも。どっちかで想像して下さい)
黒髪おさげの夏帆の身長は、165cm近かったと思います。
(※クォーター?ではないけど、どっかの代で外国産の血が入ってます)
当時俺は155cmくらい。俺のクラスでは160cmを超える男子はいなかったはずです。
男子を含めても夏帆が一番高くて、おっぱいも最低Cはあったと思います。
おっぱいよりも目立つぷりぷりの大きなお尻が大好きで、俺はいつも眺めてました。
かわいいけどおとなしい女の子で、お尻のことをからかわれるとよく泣きそうになってました。
夏の放課後、保健室の前で、保健の佐和木先生と夏帆が話しているのを見かけました。

佐和木先生は当時20代後半くらいだったと思います。
童顔で薄化粧で俺より身長が低くて、夏帆と並んで立っているとどちらが大人かわかりません。
「明日なら先生時間あるから、ね?明日の放課後、保健室に来て」
先生がそう言ってるのが聞こえました。明日、夏帆から佐和木先生に何か話でもあるのかな?
担任は男だったから、女の佐和木先生に相談したいことがあるんだろうな。
子供の俺でも何となく、そうなんだろうなってことは分かりました。
*
翌日の放課後、気になった俺は誰もいないのを見計らって保健室に忍び込みました。
2つあるベッドの内、壁際のベッドの下に潜り込みました。
ベッドを隠すカーテンは開いてます。
夏帆が入ってきました。足しか見えないけどすぐ分かりました。
先生がいないので俺が隠れてない方のベッドに腰掛けて足をぶらぶらしてます。
「はあ」とか「ふう」とかため息が聞こえます。緊張しているのかなあ。俺もドキドキしてきた!
佐和木先生が来ました。
佐「もう来てたの?待たせてごめんね」
夏「あのー、せんせ」
佐「あ、ごめんごめん」
先生は扉の鍵を掛けて、窓のカーテンを閉めました。
佐「で、どうかした?体の具合のことかな」
夏「あのね先生、内緒に…してくれる?」
佐「うんうん、もちろん」
夏「最近、…毛がいっぱい生えてきた」
佐「うーん、そっか。気になる?どこ?」
夏「……」
佐「…あそこ?」
夏「先生、絶対、絶対内緒!」
佐「大丈夫だよ、みんないつかは生えるんだから」
夏「でも、でもね、もうすぐプール…」
佐「はみだしちゃう?」
夏「去年の水着、もう小さかった。着てみたら…はみだしちゃった」
佐「水着は新しいのにした方がいいね。オケケの処理はお母さんに聞いてみたら?」
夏「うち、お父さんと弟しかいない」
佐「ああ、そうかごめんね!だから先生に聞いてきたんだよね、ごめんね」
夏「4年生の時から生えてた。変じゃないかな…」
佐「変じゃないよ。早いか遅いかだけ。最近いっぱい生えるようになったのかな?」
夏「…うん」
佐「ちょっと、見せてくれる?」
夏「恥ずかしいよ…」
佐「大丈夫!いろいろ教えてあげるから」
夏「う、うん。でも」
佐「先生だってオケケ剃ってるんだよ。そうだ、先生のを先に見せてあげる」
ここまでベッドの下で聞いていた俺のちんちんは、もうビンビンです。
短パンを少しずらして、外に出して少し手でいじっていました。
オナニーはもう覚えてました。でも今はがまんしなきゃいけないことも強く思っていました。
先生が脱いだようです。
見えないので何をどこまで脱いだかはわかりません。
夏「剃ってるのこの辺?ちくちくしない?」
佐「慣れれば大丈夫なの」
夏「ふーん」
佐「夏帆さんも脱いで?先生も今すっごく恥ずかしいんだから(笑)。お互い様!」
夏「う、うん」
夏帆がズボンを脱ぐ音が聞こえました。
ベッドの下から足が見えるだけだけど、パンツを完全に抜き取るのが見えました。
夏帆が下半身すっぽんぽんになった!
俺はこの瞬間、ちんちん触ってないのにどぷどぷ発射しました。声出すのは必死でこらえました。
佐「夏帆さん、もう大人みたい。先生よりきれいに生えててうらやましいな」
夏「ホント!?変じゃない?」
佐「人より少し早いだけ。ステキだよ」
夏「よかった…」
佐「だから処理も、大人と同じくらいちゃんとしなきゃね」
夏「どうしたらいいの?」
佐「先生が処理してあげるから、足開いて」
夏「え、え、あ」
俺の位置からは、何が起こってるかまったく見えません。
先生が夏帆のおまんこの毛を剃り(切り?)ながら、2人で話してる声だけが聞こえます。
世代の違う2人の美人がまんこ丸出しで話してると思うと、またイッてしまいそうです…。
佐「次から自分でできるように、覚えてね。こうやって…」
夏「や…やあ…恥ずかしい…せんせ、あそこ、変じゃない?」
佐「ううん、すごいきれいだよ」
夏「……んー…」
佐「クリームとかジェルがなくても、石鹸で十分だからね。最初は上手にやること考えちゃだめ」
夏「なんかくすぐったい…」
佐「動いちゃだめよ?ケガしないようにゆっくりやるの。特にここ。ワレメちゃんの周りは慎重にね」
夏「………こわい。…せんせ?なんかむずむずする…」
佐「もう終わるからね。…ほら!」
ティッシュか何かでおまんこを拭く様子が聞こえてきました。
夏帆の「ん、フッ…」とかいう、色っぽい声も聞こえました。
その時俺は、2回めの射精をしました。もう我慢できず、ちんちん触りながらです。
悪いことしてるっていう気持ちよりも、そのときは快感のほうが勝っていました。
そのあとどうやら鏡を使って、先生が夏帆にまんこを確かめさせているようです。
夏「初めてみた、何か変!」
佐「個人差はあるけど、みんなこんな感じだよ?夏帆さんはまだ子供だし、きれいだよ」
夏「じゃ、大人のは?」
佐「先生の見てみる?」
夏「見てみたい」
俺のちんちんは全然治まりそうにありません。
夏「色が違うし、何かはみ出てる…?」
佐「お願いだから気持ち悪いなんて思わないでね(笑)。これは小陰唇って言って…」
佐和木先生の解説が始まりました。声だけなので俺にはよくわからないけど、すごく興奮します。
ちんちんはまた固くなってました。
そのうち話し終わって、2人は服を着たようでした。
佐「よし、ウェットティッシュで拭いただけだから、帰ったらすぐお風呂入ったほうがいいよ」
夏「先生ありがと。…内緒だよね?」
佐「もちろん。安心していいよ。また相談してもいいよ」
夏「ちょっとヒリヒリする感じだけど(笑)ありがと。さよなら」
夏帆が保健室を出て行くと、先生はなぜかまた鍵をかけました。
隣のベッドに体重を預けるギシッという音が聞こえました。
「ア、アア、はあ…」先生の声と、ベッドがかすかに軋む音がします。
当時の俺は女のオナニーについて何も知らないけど、エッチな声だってのは分かりました。
佐和木先生のそれは数分間続き、「くう…!」という声とともにベッドが一瞬揺れました。
そしてそれと同時に俺は、その日3回目の射精の快感と、その罪悪感に震えました。
「はあ、何やってんのかな…」とつぶやきながら先生は、保健室を出て行きました。
ベッドの下から這い出る時、床に撒き散らした精液に触れないようにするのは大変でした。
なんとか這い出て、机の上にあったティッシュで精液を拭きました。
ゴミ箱に捨てようとするとそこには、夏帆のおまんこを拭いたと思われるティッシュがありました。
俺の産毛程度のちん毛なんかよりずっと長くて太い毛が、いっぱいティッシュにくっついています。
思わず持ち帰りたくなったけど、バレるのが怖くてやめました。
帰ってオナニーしました。その日4回目の射精です。
イク瞬間思い浮かべたのは、夏帆の毛がついたティッシュのかたまりでした。
*
*
*
保健室でのことから一週間が経ちました。
悩みが和らいだからか、夏帆の表情はいつもより明るくなってきていました。
俺は毎日夏帆のまん毛(が付いたティッシュ)を思い浮かべてオナニーしていました。
佐和木先生の声は色っぽかったけど、女のオナニーというものがあまりピンと来ません。
ちんちんが声に反応はしたけど、女もオナニーするってことは、当時、理解も想像もできません。
先生を思い浮かべてオナニーすることはありませんでした。
この週からプール授業が始まりました。
顔つき以外はまるっきり大人の女性。プールサイドの夏帆はやっぱりみんなから注目されます。
でも恥ずかしがるだけでリアクションが少ないし、周りもそれ程ちょっかい出すわけじゃないです。
ただ俺だけはどうしても意識してしまいました。保健室で起こったことを知ってるから。
俺は見たわけじゃないけど、先生にまんこを全部さらした夏帆。
あれから一週間、自分でも処理したかな。鏡で自分のまんこ見たのかな。
想像しながら夏帆の股間を見ていたら、いや見る前から、ちんちんは勃起していました。
「ケンタのやつ、もっこり!」気づいた男子が大げさに叫んだので、女子にも見られました。
夏帆も見ていました。でも俺はクールなふり。恥ずかしがると余計恥ずかしくなるからです。
ホントはとても恥ずかしかったし、夏帆に見られて妙なドキドキ感がありました。
みんな先生に注意されたし、俺も平気なふりしてたので、大きな騒ぎにはなりません。
でもその日から俺のあだ名は、もっこりケンタで「モッケン」になりました。
それは全然気になりませんでした。今まであだ名がなかったので、むしろお気に入りです。
*
さらに数日後、プールがあった日の放課後のことです。
当番の日誌を職員室に届けて教室に戻ってみると、夏帆と3人のいじめ系女子がいました。
「夏帆、もじゃもじゃだって?」「見せてよー」「パンツ脱がしちゃおうか」
着替えのときに誰かにまん毛を見られてしまい、うわさになってしまったんだと思います。
夏帆は泣いていました。からかわれて泣きそうな表情になることはよくあります。
でもその時は本当に泣いていました。
まん毛のことであんなに悩んでた夏帆がかわいそうです。
のぞき魔みたいなことしてしまったけど、結果的に俺は夏帆の悩みを知りました。
恥ずかしい思いをして先生に打ち明けて、がんばって悩みを解決した夏帆です。
軽い気持ちで夏帆を泣かせた女子が許せなくなりました。
でもせっかくだから、夏帆がパンツを脱がされてから登場しようかな…。
と、勃起しながら覗いてたんだけど、女子の1人マコに見つかってしまいました。
だから普通に(?)助けることにしました。
マコ「げっ、…なんだもっこりモッケンか。なんなの」
俺「お前らさー、夏帆のあそこ見たいの?変態だな」
マコ「関係ないじゃん。夏帆のがちょっとおかしいって言うからチェックしてあげるんだよ!」
俺「ふーん、ホントはうらやましいんだろ。お前ツルツルなの?」
マコ「ば、ばかか!そんなわけないじゃん!」
俺「じゃあ見せてみ?」
マコ「何で見せなきゃいけないの!」
俺「じゃ、夏帆のは何で見なきゃいけないの?俺、お前のが変じゃないかチェックしたいだけだよ」
マコ「変態はそっちじゃん。モッケンこそツルツルなんじゃないの」
俺「そこそこ生えてるって。ほら」
俺は一気に短パンを、下着と一緒にずり下げました。
思いっきり勃起していたちんちんが、びよんびよんと揺れています。
言っとくけど男子にも堂々と見せることはありません。この時は夏帆から気を逸らせるためです。
でも見られて興奮していたのも事実…。
女子たちは「うげ」「うわ」「ばかかこいつ!」、ばかにしときながら興味深そうに見ています。
夏帆は無言。でも視線はちんちんに釘付けです。
皮はあまっているけど一応全部むけていて、亀頭もほとんど出た状態でした。
「えー、こんな風になるの!」「勃起は初めて見たよ」「これ人より大きいほう?普通?」
「多分これ包茎だよねー」「兄ちゃんのとはちがう」「ほら夏帆も見てみなよ」
興味津々のマコ達は、さっきまでの険悪ムードも忘れて中腰でちんちんを凝視してます。
夏帆は一歩うしろだけどやっぱり中腰でした。
今射精したらどうするだろうと思ったら、ほんとにこみ上げてきて、ちょっとやばかった…。
マコ「なーんだ、毛はちょろちょろじゃん」
俺「じゃ、お前はもっと生えてるんだな?見せてよ」
マコ「だから何で。やだよ」
俺「やだろ、見られるの。夏帆だっていやに決まってるだろ」
マコがあきらめたようにふうっと息をつきました。
マコ「ちぇっ、わかったよ。ごめんね夏帆」
マコ達は夏帆にあやまりました。
夏帆とマコ達は、男子のちんちんを一緒に観察するという特別な経験を共有しました。
そのことで親近感が芽生えたように見えました。
もともとは夏帆もからかわれる程度で、イジメらしいイジメを受けてたわけでもありません。
俺は勃起したちんちんを出したまま、「もういじめるなよ」とにっこり笑って言いました。
ちんちんをパンツにしまう時の刺激で出そうになったけど、なんとかがまん。
夏帆を含めた女子4人は、コソコソ話しながら帰っていきました。
と思ったら夏帆が1人で走って戻って来て、恥ずかしそうに笑って言いました。
「さっきはありがと」
頭の中で何かがはじけました!その瞬間をはっきり覚えています。
目鼻立ちのはっきりした夏帆の白い顔と赤い頬。背の低い俺を少しだけ見下ろした笑顔。
細めた目じりの涙が乾いた跡と、ぷるっとした唇からのぞく歯並び、右頬だけのエクボ。
夏帆のしゃべる口の動きが、なぜかスローモーションに見えた、ような気がします。
上の歯と下の歯の間で糸を引く、夏帆の唾液がはっきり見えた、ような気がします。
「口」のエロさを、無意識の部分でだけど初めて実感した瞬間でした。
そのとき俺は夏帆の目の前で、パンツの中でどぷどぷと射精していました。
夏帆と向かい合って、夏帆の笑顔を見ながら、夏帆に見つめられながら。
もちろんバレてないけど、俺のちんちんと足は小刻みに震えていました。
夏帆はまた走って行きました。マコ達と仲良く帰っていったみたいです。
帰りながら話す話題はまちがいなく俺のちんちんです。
そう思うとしばらく俺の勃起は治まりませんでした。
この日まで、オナニーでイク瞬間思い浮かぶのは、夏帆のまん毛(がついたティッシュ)でした。
この日から、ネタには夏帆の笑顔と、ちんちんを不思議そうに眺める夏帆の姿が加わりました。
*
それからは夏帆やマコとは、ちょくちょく話をする友達になりました。
俺は5年生までの夏帆をほとんど知りません。6年で初めて同じクラスになりました。
この1年で急に成長したみたいで、それまでは見た目もまったく目立たない子だったようです。
みんなあまり触れないことだけど、夏帆は去年お母さんを事故で亡くしています。
生理とブラジャーのことまでは教えてもらったけど、まん毛のことは間に合わなかったんだろうな。
そんなふうに想像しました。
夏帆がいないときマコが話してくれました。まん毛を見せてもらったそうです!
あの日以来、着替えのときはマコと仲間2人で夏帆を囲んで、隠すようにしてくれたみたいです。
そのお礼というのも変だけど、チラリとですが見せてくれたそうです。
マコ「うちのお母さんみたいにもじゃもじゃだったし、剃った跡もなんとなくわかった!」
俺「それ俺に言ってもいいの?また夏帆が泣くよ」
マコ「どうせ気になってるくせに。モッケンも見たいんじゃないの」
俺「…見たい」
マコ「…じゃあさ、また……今度は、みんなで見せっこしない?」
夏帆やマコと友達になったと言っても、あの日以来あやしい雰囲気になったことはありません。
でもこのときクールなフリをしながらも、あの日の興奮がよみがえって一気に勃起!
夏帆のまんこと俺のちんちんを見せ合うって想像しただけで、もうやばかったです…。
でも勃起を隠しながら、マコにハッキリ言いました。
俺「お前のは見たくない」
マコ「うわひどい」
俺「何マコ、俺にあそこ見せたいの?変態だなあ」
マコ「モッケンに言われたくないよ。あんたなんか見られてボッキしたじゃん」
俺「もっこりモッケンだからしょうがないだろ」
マコ「あっそ。あー!今もボッキしてるっぽい」
…バレた!でも笑われると思ったら、ふとマコの表情が真剣なものになりました。
マコ「……。モッケンさ、やっぱ夏帆好きなの?」
俺「わかんないけど…あそこ見たいって思うくらいだから多分好き」
クールを装っても、うそはつけませんでした。
マコ「あーあ、なんだやっぱりそうか。ふう」
俺「何?変な言いふらし方しないでな。夏帆にも」
マコ「大丈夫大丈夫!じゃあね!」
*
*
*
夏休みに入りました。
忘れられない体験をすることになった、小学校最後の夏休みです。
8月上旬のある日の夕方。高校野球を見てたら、うちにマコから電話がありました。
マコ「明日、夏帆んちで一緒に宿題したりするんだけど。モッケンも来ない?」
俺「みんなでやるの?」
マコ「あんた入れて3人で」
突然なのでちょっとあやしく思い、見せっこの話を思い出しました。
でも夏帆はそんなことしないだろうという思い込みがあったので、変な想像はしません。
ただ、夏帆に会えるからうれしいという気持ちでした。
男友達と遊ぶ約束があったけど、適当に断ることに決めました。
俺「うん行くよ」
マコ「じゃ、朝11時ごろね。場所は……」
*
夏帆の家は4LDKくらいの立派なマンションでした。
夏帆が笑顔で迎えてくれました。11時。マコはまだ来ていません。
夏帆のカッコはタンクトップと、見えても気にならないっぽいスポーツブラと、ショートパンツでした。
かわいすぎる!学校での夏帆よりだいぶ露出が多くて、ドキドキ、やっぱり(?)勃起しました。
俺は気取りたくなくて、ジャージとTシャツっていう適当なカッコです。
ジャージだと勃起が目立ちやすいので、Tシャツをかぶせるようにして隠してました。
夏帆の家族はいませんでした。
お父さんは出張中、幼稚園生の弟は夏休みの間おじいちゃんちで預かっているそうです。
夜は1人だと怖いので、夕方から電車で隣町のおじいちゃんちに泊まりに行くそうです。
小さな仏壇にお母さんの写真がありました。夏帆によく似たきれいな人でした。
まだ30歳だったそうです。作法はよくわからないけど軽く手を合わせるだけしました。
夏帆が「ありがとう」って言ってくれました。
勃起したまま、かしこまったことをしたので、何だか悪い気がしました。
*
電話が鳴って夏帆が出ると、マコからでした。
夏「マコちゃん急用で来れないって。モッケンとよろしくやっとけー、だって」
よろしくやっとけ、の言い回しは、当時の俺にも夏帆にもピンと来ません。
気を遣ってくれたと知ったのは、あとになってからでした。
マコ達を含めて話すことはあったけど、夏帆とこうやって2人きりになるのは初めてです。
目が合うだけでドキドキしてしまいました。お互い黙りがちで、気まずさをかくせません。
とりあえず宿題を居間のテーブルに広げると、ようやく夏帆が口を開きました。
 
夏「急用ってさ、家族が病気とか、誰か死んじゃったとかじゃなければいいけどな」
お母さんを亡くした夏帆は、そういうことを心配する優しい子なんだと知りました。
明るい話題でもと思ったけど、口をついて出たのはあのことでした。
俺「マコがさ、あそこ見せっこしたいって前に言ってたよ。あいつ変態かもな(笑)」
夏「それ私にも言ってた(笑)やっぱ変だよね」
俺「まあ、うん、見せるなんて変だよな」
夏「あ、あ、ごめん、ケンタが変ってことじゃないよ?」(※夏帆はモッケンとは呼びません)
俺「いや十分変だよ(笑)」
夏「ケンタ、あの時恥ずかしかったよね…?」
俺「俺が見せたいから見せたんだよ。俺も変態だから」
夏「ううん、多分無理してくれてた。あの時は、ありがと」
俺「もういいよ」
夏「助けてくれたんでしょ?」
俺「知らない。変態だから見せただけ」
夏「ふふ。そっか、そうだね。変態のロシュツキョーだね」
俺「それは言い過ぎだって(笑)」
夏「あはは」
俺「…あのさ」
夏「何?」
俺「マコのやつ、今日そのつもりだったんじゃないのかな」
夏「何が?」
俺「見せっこ」
夏「うそー。あれ本気なわけないよ…」
俺「…そだな、本気なわけないな」
夏「………うん、そうだよ」
また気まずくなって宿題に取り掛かろうとしたけど、2人とも鉛筆を握ったまま動きませんでした。
自分の心臓がドキドキしてるのが分かります。夏帆もかな…。
夏「………」
俺「………」
夏「………」
俺「………」
…先に口を開いたのは夏帆でした。
夏「………ケンタは、本気…?」
俺「………夏帆は…?」
夏「ケンタが本気なら……いい、かも」
俺「でも恥ずかしいだろ」
夏「恥ずかしいよ!でもケンタのだけ見ちゃったから、私も見せた方が……いい、のかなって…」
俺「俺、夏帆だけになら見せてもいいよ」
俺は立ち上がって、一気にジャージとパンツを下ろしました。
大きく足踏みするようにして、足から抜き去ります。
勃起したちんちんが驚いた顔の夏帆を見下ろして、例によってびよん!と揺れました。
テーブルを挟んだ向こう側で夏帆は、無表情でじーっとちんちんを見つめています。
2人きりで、夏帆に勃起したちんちんを見られてる。頭の中が熱くなりました。
夏帆がごくりと唾を飲み込む音がはっきり聞こえました。
すっくと立ち上がって、俺の頭より高い位置から今度は夏帆が、ちんちんを見下ろします。
ショートパンツのホックに手をかけた夏帆を見て、こみ上げてきたものがありました。
俺「夏帆ちょっと待って!」
今夏帆がパンツを脱いだら、その瞬間射精してしまう、そんな予感がしました。
保健室のあの時、夏帆の笑顔で頭がはじけてしまったあの時。
夢精以外に、手で触らなくてもイッてしまうことがあるって知ったからです。
俺「ティッシュある?」
夏「あるけど…。ひょっとして、せいしが出るの?」
俺「え、知ってるの?」
夏「一応習ったよね。せいつう、とか。ちんちんから飛び出すんでしょ?」
あどけない夏帆の唇が発する、精子とかちんちんとかいう言葉にも刺激されます。
俺「う、うん。突然出ちゃうと困るから、出しといた方がいいと思う」
夏「おしっこみたいに出るの…?」
俺「ううん、じょろじょろじゃない、ちょっとだけ」
夏「ティッシュ、ティッシュ」
夏帆がボックスから出したティッシュは一枚だけでした。
足りないと思ったけどとりあえず「それ貸して」と言いました。
それがどうも聞こえなかったみたいです。
夏帆が「飛び出すとこも見てみたい」と言って、いそいそとティッシュをちんちんに添えてきました。
偶然かは分からないけど、夏帆の指が亀頭に何回か触れて。
ちんちんがびくっと震えて頭の中がしびれました。
予告する間もなく「わ?ああ、うっく…」勢いよくどぴゅっと飛び出す精液。
いつもはどぷっどろっという感じが多いけど、この時は、びゅびゅっていう感じでよく飛びました。
わけのわからない気持ちよさもあったけど、とにかく突然で自分でもびっくりです。
一枚のティッシュはまったく無意味でした。
夏「わ、わ、わ?」
勢いよく飛ぶものだとは、夏帆も思ってなかったみたいです。
正面にしゃがんでしまった夏帆の、手と腕と服と、あごにも少しかかりました。
射精がおさまったあとも何秒か、2人とも放心状態でした。
俺の足はがくがく震えていました。
俺「ごめん、俺もびっくりした」
夏帆はまだ止まっています。俺はティッシュをたくさん取ってきて、精液をふき取ってやりました。
タンクトップの胸にどっぷりかかってしまっていたので、それも拭きました。
どうしてもおっぱいをさわるようになってしまいます。どさくさで、おっぱいをもみました。
夏「ふわあ、こんな風に出るんだね、おしっこと違う、白い」
ようやく夏帆が我にかえりました。
おっぱいをもまれているのには気づいてたみたいです。
驚いてはいたけど、でも抵抗はしませんでした。
夏「なんでおっぱい触ってるの?」
俺「…好きだから」
夏「おっぱい、好きなの?」
俺「夏帆が好きだから、夏帆のおっぱいが好き」
おっぱい触りながら、夏帆の目を見て言いました。割と落ち着いてはっきり言いました。
服の上からでも手の平に伝わるやわらかさ。それとは対照的に、ちんちんは固いままです。
夏帆がにこにこ笑って、俺のちんちんをぎゅっとつかんできました。
俺「いてて」
夏「わ、ごめん」
今度はやさしく包むように、ふわっと握ってきました。
俺「なんでちんちん触ってるの?」
夏「好き…だから」
俺「ちんちん好きなの?ヘンタ…」
夏「ちがう!ケンタが好き」
頬を赤くした夏帆。おっぱいとちんちんを触り合いながらの告白でした。
そのまま自然に目をつぶってキスをしました。
ぷるぷるの夏帆の唇へのファーストキスは、口を閉じたまま押し付けるような感じでした。
映画のキスシーンを思い出して、音をたてたり、口を開いたまま舌をにょろにょろしたりもしました。
初めての他人のつばは変な味で、おいしいとは思わないのに、うれしい。
夏帆のつばをたくさん飲みました、飲みたいと思いました。
夏帆の口にも俺のつばがたくさん入ったと思います。夢中でキスしました。
見た瞬間に俺に射精させてしまったあの日の夏帆の唇が、2人のつばでべとべとになってました。
たくさんキスしたけど、このあとどうしていいかわかりません。
セックスの知識は、はっきり言ってほとんどありません。
ちんちんをまんこに入れる、と言葉で知ってても、感覚としては理解不能です。
ふと我に返って、夏帆は服に精液がついたことを思い出したようです。
だからというわけでもなく、何も言わずにタンクトップを脱ぎ始めました。
俺も無言でそれを見ていたけど、ブラをとるときは思わず「ふわー!」と感激しました。
夏帆は恥ずかしそうに笑って、そっとおっぱいを見せてくれました。
他の人と比べる必要も、小学生にしてはと付け加える必要もなく、最高のおっぱいです。
好きな女の子のおっぱいだからです。
小さい乳首と乳輪は、ほんの少し肌より濃いっていうぐらいのやさしい色でした。
真っ白なおっぱいだから、薄茶色の乳首でもやわらかい存在感があります。
おっぱいそのものもそうだけど、産毛や血管が見えたことですごくドキドキしていました。
今思えば、夏帆の体格にしては大きいとは言えないおっぱいです。
でも怖いくらいにきれいに思えて、今でもおっぱいと言えばこの時のおっぱいを思い出します
乳首を指でつんつんしました。触ったら乳首が立つとかそんな知識はありませんでした。
でもピンピンになった夏帆の乳首がおもしろくて、指ではじいたりして遊びました。
直接もみもみするのは力加減が分からなくて、さするような包むような感じで。
夏帆は感じてるのかどうかわからないけど、くすぐったそうにもじもじしてます。
夏帆、すごいかわいい…!俺は無意識にちんちんに手が伸びてしごいてしまいました。
それを見た夏帆が言いました。
夏「そうすると、またせいし出るの?」
俺「うん、出る。んん、あ、でそう!」
夏「わ、わ、もう出ちゃう?」
ティッシュ箱の位置が遠かったので、夏帆が思わず手に取ったのはブラジャーでした。
さっき脱いだブラジャーをちんちんの前にあてがいました。
夏「ハイ、いいよ?」
合図されるのも変だなって思ったけど、その合図で「あっあっ」、と声が出てぴゅくぴゅくと。
夏帆の右のおっぱいを左手で包んで、指で乳首をころころしながら射精しました。
ちんちんをじーっと見ている夏帆の顔を、俺もじーっと見ていました。
今度は飛び散らないように、ブラジャーでちんちんを軽く包むようにしてくれてます。
夏帆のブラジャーを精液で汚してしまったちんちんは、罪悪感のせいか少ししぼみました。
俺「はあ、はあ、ごめん」
夏「あは、でもおもしろいね。びくびくするんだね」
夏帆はどろっとした精液を指ですくって、にちゃにちゃさせて不思議そうに見ています。
夏「これが赤ちゃんになるんだ…んー?変なニオイ」
俺「2回目とか3回目だと、量が少なかったりするみたい」
夏「え、3回目もあるの?もう出る?」
なぜかうれしそうに夏帆があわてて、またブラジャーをちんちんの前に差し出しました.
俺「続けてすぐ出したことないからわかんない。多分すぐ出ないよ」
夏「ふうん、そうなんだ…。出るとき気持ち…イイの?」
2回イッたあとなので俺はちょっと冷静だったけど、夏帆は興奮気味でした。
俺「むずむずぞくぞくして、びびびーってなるよ」
夏「あ、私もむずむずしたりするよ」
俺「やっぱ女子もなるのかあ。どういうとき?」
顔を赤くして夏帆がうつむきました。
夏「今」
俺「え?」
夏「今、むずむずしてる。変な感じ。エッチな気分ってこういうのを言うのかな…」
夏帆が俺の手をとって自分の胸に当てました。
心臓がドキドキしているのがすぐわかりました。
夏帆が立ち上がって、座ったままの俺を見下ろしながら言いました。
夏「絶対、絶対、笑わないでね?」
夏帆はぎゅっと目をつぶって、パンツを脱ぎました。
全裸の夏帆がそこに立っていました。目の前にはもじゃもじゃの毛があります。
あの日の、まん毛のついたティッシュのかたまりはもう、一気に記憶の隅に追いやられました。
何度も見たいと思っていた夏帆の生きているまん毛は、想像以上にたくさん生えてます。
真っ白で柔らかい体の真ん中、純情な夏帆の体の真ん中に、正反対の野性的な存在感。
そのアンバランスなワイルドさに、しぼみかけていたちんちんも勃起で応えていました。
夏「変じゃない?こんなに生えてるの、いやじゃない?」
俺「変じゃない。好き」
変も何も、比較対象を知りません。
女のきょうだいはいないし、お母さんとお風呂に入ってたのもだいぶ昔です。
ただ夏帆の裸、夏帆のおっぱい、夏帆のまん毛っていうだけで満足で、大好きです。
何て言っていいかわからない。俺もシャツを脱いで全裸になりました。
立って夏帆を抱きしめました。ちんちんがまん毛にわしゃわしゃ当たります。
夏帆も下半身を押し付けてきました。またにゅるにゅるのキスをたくさんしました。
夏「あ」
俺「…?」
夏「ケンタ、私、濡れたみたい」
俺「何が?」
夏「…あそこ」
俺「何で?」
夏「あの、あのね、女の人はいっぱい濡れるんだって」
俺「そういうもんなんだ」
夏「せっくすするとき、ちんちんがね、入りやすいようにって」
セックス、なんて言葉にするのは恥ずかしいって感覚は、2人にももちろんあります。
でも今は、かえってはっきり言うことが照れ隠しにもなりました。
俺「今セックスするの?」
夏「…わかんない」
俺「夏帆、俺よりいろいろ知ってるかも」
夏「教えてくれた。誰がってのは内緒なんだけど。あ、女の人だよ」
佐和木先生のことだなって思いました。
多分あの後も、お母さんがいないさみしさで、先生のとこに相談に行ってたんだろうな。
でもこの様子だと、エッチな知識をとことん叩き込まれたって意味ではなさそうです。
夏帆の部屋のベッドに移動しました。夏帆が足を開いてまんこを見せてくれました!
初めて見た夏帆のまんこ!今思い出しても震えるような、高ぶった気持ちでした。
夏帆のまんこ、佐和木先生が処理したまんこ、マコに見せたまん毛。
そして今、俺がこんな近くで見てる!
それまで想像することも出来なかった、夏帆の割れ目が目の前にありました。
俺は緊張とうれしさで、夏帆は恥ずかしさで震えていました。
夏帆のまんこは縦に線が一本、それがわずかに開いただけという感じです。
線の周りにも毛がたくさん生えてました。
剃って生えてきた短い毛と、剃り残しのちょろちょろです。
お尻の穴の周りにも毛が生えるんだということを、この時に知りました。
恥ずかしさをごまかすように、夏帆が解説し始めました。
あの日の佐和木先生みたいに。
夏「このぷっくりしたとこが、だいいんしんで、中にしょういんしんっていうのがあるんだって」
夏帆はベッドに体育座りで足を開いて、ベッドの下に俺があぐらをかいてるっていう状況です。
この状況で無理して淡々と話すので、ちょっと笑いそうになってしまいました。
でも顔を赤くして恥ずかしそうな表情、震えた声がとてもかわいくて。
夏「私も自分でよくわからないんだけどね。で、おしっこの穴があってね」
濡れてテカテカしている、夏帆のまんことまん毛を見ながら聞いてました。
俺のちんちんは、もちろん限界までパンパンに膨らんでいます。
夏「この辺にちんちんが入るみたいなんだけど、よくわかんない」
俺「入れてみる?」
夏「え、怖いよ」
ベッドに夏帆を寝かせて足の間に入って、まんこの入り口にちんちんを当ててみました。
ぬるぬるのぬちょぬちょで、それだけですごく気持ちよくて、体がビクつきました。
怖いと言いながらも、夏帆は逃げようとはしませんでした。
むしろ自分からまんこを押し付けて、俺のちんちんの方を見ています。
夏帆のまんこが、ちんちんが進むと「ぱくっ」と押し広げられました。
にゅにゅ、にゅ、っていう感覚があって、ゆっくり、亀頭が全部入りそうなところで突然夏帆が
夏「…ッ!ちょっとイタイ!コワイ!やっぱだめー!」
…!あわててちんちんを抜きました。
俺「ごめん。入れるとこまちがってるのかな…」
夏「わかんないけど、ね、ね、やっぱやめよ?赤ちゃんできたらどうしたらいいか、わかんないよ」
夏帆は不安と痛さからか、涙目になっています。
俺「そうだね、やめとこ」
俺は入れるという行為の大きな意味を実感できてないので、あまり執着はありませんでした。
夏「でも、でもね、なんだろ?すごく変な感じした。ちんちんがあたったら、体がびくってなる」
泣きそうな顔でソレを、夏帆が求めているのが分かりました。
もう一回、まんこの割れ目にちんちんをあててみました。
俺「こうすると、どんな感じ?」
夏「あー、なんかすごい変…」
指を口元に当てながら夏帆は唇を震わせていました。
しばらくこすりつけていたら、クリトリスに当たったみたいです。
クリトリスというものがあることも、どこにあるのかも俺は知りません。たまたまです。
夏帆の反応が変わりました。
夏「ふわあ…?何これ…!あ、あっあ!」
いっぺんにびしょびしょに濡れはじめて、ちんちんでこすったらぐちゅぷちゅと音がしました。
夏「ああ、何か変だよう…?何かこわい…!ぞくぞくする…!あ、あッ!」
俺も頭の中が真っ白になって、電気がびりびり流れた感じがして…。
俺「あーッ、夏帆、夏帆…!」
夏「ふうッ…、ケンタ、ケンタあ、あッ」
快感と不安が入り混じって、自然に名前を呼び合いました。
そうすると不安が軽くなって快感が大きくなるのを感じました。
体をよじらせてビクビク震えている夏帆に向けて、射精は今日3回目。
薄くなった分よく飛びました。ぴゅっぴゅーっと出て、ポタポタと夏帆のおっぱいと顔に落ちました。
夏帆はまだ震えています。体を真っ赤にして背中を浮かせています。
多分イッてしまったんだと思うけど、そのときは何もわかりませんでした。
俺「夏帆、夏帆、大丈夫?」
夏「…うわー、何かクラクラする…。立ちくらみしたときみたい」
夏帆は目も口もまんこも半開きで、ホントに頭がぼーっとしてる様子でした。
俺「びっくりしたー。こんな風になるの?」
夏「わかんない。初めてなった。でも何か気持ちいい。気持ちイイってこういうことなのかな」
保健室での佐和木先生を思い出しました。
あのとき先生は、自分の手でこういうことをしてたんだろうな。
それが、女の人のオナニーなんだろうなと思いました。
自分の手でやっても気持ちいいんじゃない?って夏帆に言おうかと思いました。
でも佐和木先生のオナニーを聞いてたことがバレそうで、やめました。
しばらく2人で放心状態で座ったまま、ぼんやりしていました。
*
一緒にお風呂に入りました。
夏帆にちんちんを洗ってもらったら、しぼんでいたのがまたむくむくと勃起しました。
「おもしろい、おもしろい!」と夏帆にはバカうけでした。恥ずかしかった!
お風呂の中でも、抱き合ってたくさんキスをしました。
おっぱいにもファーストキス、両方の乳首にちゅうちゅうしました。
夏帆がやさしく頭を抱きしめてくれました。
夏「そう言えばお昼まだだったね。マコちゃんの分も用意しといたんだ」
お風呂から上がってもずっとドキドキしていたくて、2人とも素っ裸でご飯を食べることにしました。
お母さんがいなくなってから、夏帆とお父さんで家事を分担しているそうです。
料理はまだまだ、と言いながら、作ってあったチャーハンと味噌汁を出してくれました。
裸で並んで座ってご飯を食べるのはとても変な気持ちです。
チャーハンははっきり言っておいしくなかった…、味があまりしませんでした。
でも「はい、あーん」をしてくれたので、とても満足、一応、おいしいよって言っときました。
ご飯の間も俺はずっと興奮して、半勃起と勃起を繰り返していました。
夏帆は、濡れてるとは言わなかったけど、大きなお尻をずっともぞもぞさせていました。
ご飯のあとプリンを食べて、プリン味のキスをしました。
裸のまま2人で後片付けをして、裸のままようやく宿題に取り掛かりました。
でもぜんぜんはかどりません。
少しは宿題はすすんだけど、目が合うたびにどちらからともなく、何回もキスをしました。
ベッドに行って、裸のまま抱き合いながら少し眠りました。
とても幸せな気分でした。
*
*
*
それから夏休みの間、夏帆の弟がいない日に何回か、夏帆の家に行きました。
昼間お父さんのいない平日、一緒にお風呂に入って、挿入なしのエッチを何回も。
もちろん宿題したり、普通におしゃべりしたり、家事を手伝ったりもします。
でもそれも2人で素っ裸でだったりして、すぐエッチな展開になってました。
*
マコやマコの友達と、夏帆の家で宿題をした日も一度あります。
その時に、キスをしたことまではしゃべらされました。
にゅるにゅるのキスとか、裸でのエッチなこととかはもちろん秘密です。
冷やかされたけど、素直に祝ってくれてホッとしました。
マコがあの日、わざと2人きりにしたんだってことを明かしました!
俺も夏帆もびっくりです。
マコ「だって両思いにしか見えなかったもん。2人きりにしたら一発でくっつくでしょ」
キューピッド気取りなのがしゃくだったけど、素直にお礼を言っときました。
さらにマコが実は俺のこと好きだってカミングアウトして、またびっくり。
ちんちん見せてイジメを回避した姿がカッコ良かったそうです。
マコも変わり者です。
先に2人が帰って俺と夏帆とマコの3人になりました。
マコは悔しいけど応援する、その代わりもう一回ちんちん見せろと言ってきました。
俺「お前やっぱり変態だろ(笑)」
マコ「うるさいなー、いいじゃん見せてよ」
しょうがないので、立ってズボンとパンツを下ろしました。
夏帆はそのとき少し離れたところで、うつむいて恥ずかしそうに、あまり見ないようにしてました。
ちんちんは平常時の状態で、皮を被ってふるふるしています。
マコ「あれ、もっこりモッケンじゃないじゃん」
俺「いっつももっこり立ってるわけないよ」
マコ「ふーん。ねえ夏帆も見てよ。いつか見たのとはちがうよ。小さいよ」
夏帆が座ったまま俺の足元まで近づきました。
夏帆がちんちんを見て、そして上目遣いになって目が合うと、俺はそれだけでスイッチオンです。
突然ちんちんがムクムクムクって一気に大きく、固くなりました。
自然に皮がくるんとムケて、亀頭が顔を出します。
「うわー」「うわー」2人が同時にうわーって言いました。
マコ「何これ、おもしろい!」
夏「うん、すごいよね」
マコ「でも何で?あたしが見たときは小さいのに、夏帆が見たら大きくなるの?」
俺「わかんない。自然になった」
マコ「ねえ、夏帆、不思議じゃない?」
夏「うーん、それは多分、愛の力だよ」
そう言ってから夏帆は、自分の台詞で顔を真っ赤にしてしまいました。
3人で大笑いしました。夏帆は恥ずかしそうに、涙目で笑っています。
マコ「あはは、すごいね、かなわない。あたしはやっぱり応援役かな」
少し寂しそうでしたが、マコも笑っていました。
そのとき夏帆の家には弟もいたので、それ以上エッチな展開にはなれませんでした。
一生思い出に残る夏休みが終わりました。9月になりました。
*
*
小学生同士で彼氏彼女と言っても、普通に仲のよい男女の友達同士という感じです。
たまには一緒に帰ったりはするけど、遊ぶのはやっぱり男子とが多かったので。
マコ達が特に言いふらしたりとかは、しないでいてくれました。
おかげで2人は仲がいいっていう程度で、付き合ってる(?)っていうのは騒がれませんでした。
毎日のように隙を見つけてキスしたりおっぱいさわったり、見せあったりはします。
正面からおっぱいを両手でもみながら、恥ずかしそうにしてる夏帆とキスをするのが好きでした。
でもホントに誰もいない所で2人きりになれないと、夏休みのときみたいなことはできません。
そんなチャンスは来ないまま、時間は過ぎて行きました。
俺は毎日夏帆のことを考えてオナニーしていました。
*
*
ある日久しぶりに2人で歩いて帰れたとき、夏帆から話しかけてきました。
夏「ほんとは内緒なんだけどね、ケンタにだけ言うよ?」
俺「うん」
夏「実は保健の佐和木先生に、いろいろ相談に乗ってもらってたんだ」
俺「ふーん、どんなこと?」
1つは知ってるけど、こっそり忍び込んで聞いてたのはもちろん絶対秘密です。
夏「ちょっと恥ずかしいんだけどね、あそこの毛が濃いこととか、生理のこととか、下着のこととか。
私他の子より大きいから、友達に聞いてもよくわかんないこと多いし。
うちお父さんと弟だけだから、そういうこと先生にしか聞けなくて、相談してたんだ」
俺「ふーん」
夏「でね、最近私おかしいから、昨日ね、また話したんだ」
俺「何がおかしいの?病気なの!?」
夏「…最近ね、しょっちゅう濡れる。やばいかも」
俺「どういうこと?」
夏「ケンタとのエッチなこと思い出したら、濡れる。いっぱい濡れる」
俺「セックスしたくなるってこと?」
夏「…わかんない。でも私、すっごいすけべになっちゃった」
俺「うんそれはわかる(笑)」
夏「(笑)あのね、ケンタとまた一緒にお風呂入りたい。ちんちん見たい。せいしが出るの見たい。
裸でいっぱいキスしたい。ケンタのちんちんであそここちょこちょされたい。…私、変でしょ…?」
俺「うん、変。ヘンタイ」
夏「ちがうって言って欲しいのに!…でも夏休みに変なこといっぱいしちゃったよね…」
俺「でも俺も同じこと考えてるから。2人で変態になろう」
夏「それ何かやだな(笑)。でももう遅いかな(笑)」
俺「彼氏ができたよとか、俺としたこと先生に言ったの?」
夏「まさか、言ってないよ~。でもね、好きな人のこと考えてるんでしょって、すぐばれた」
俺「うわー、大人って鋭いんだな」
保健室に忍び込んだのまでばれたらどうしようかと思ってしまいました。
夏「病気じゃないけど、多い時はもらしたみたいになっちゃうから、ナプキンつけといてって」
俺「ナプキンて、あれ?」
夏「生理の時に使うの。わかる?おりものシートとか。生理じゃなくてもつけといた方がいいって」
俺「ふーん、よくわかんないけど、女の変態ってめんどくさいんだな」
夏「もう!(笑)確かにめんどくさいし、いつも付けてたらお金かかるんだよ。使い捨てだから」
俺「女の変態はお金もかかるんだ」
夏「もう言わないでよ~。このあとのこと言いにくいよ」
俺「何かほかに言われたの?」
夏「…おなにー、しなさいって」
俺「うん?おなにーって、オナニー?」
夏「男子は大体知ってるの?女子も自分でさわったらすっきりするんだって」
俺「言葉の意味はあとで知ったけど、俺、去年からやってる」
夏「おなにーって言うんだね。女子もエッチな気分が我慢できないときは、した方がいいんだって」
俺「先生もしてるんだろうな」
夏「うん、内緒だけどね、してるって。やり方教えてくれた。ケンタには教えないけど(笑)」
俺「えー、何だよそれ、教えてよ」
夏「これ以上は絶対だめ!恥ずかしいもん。もともと先生との内緒話、特別に話してるんだから」
夏帆の表情を見ていてふと思いました。
佐和木先生は夏帆に手取り足取りしながら、実演もして見せたんじゃないかな。
もちろん想像だけど、さっきから勃起してたちんちんがさらに痛いくらいにふくらみました。
夏「昨日は平気だったけど、今日帰ったら試しにしてみる」
俺「何を?」
夏「だから!…おなにー。今ケンタといるだけで、すごいむずむずしてる。多分いっぱい濡れてる」
俺「夏帆、俺も今ちんちんたってるから、やっぱ2人で変態だな」
夏「(笑)ケンタも今日おなにーする?」
俺「する。っていうか毎日してる。夏帆の裸思い出しながら精子出すよ」
夏「私も。ケンタのちんちん思い出すと思う」
俺「やっぱ変態っぽい」
夏「もういいよ変態で(笑)。2人で変態ね?こんな話、絶対、絶対内緒だからね!」
 
家に夏帆1人なら今から押しかけて一緒にエッチなことしたいけど、夏帆には弟がいます。
帰り道の途中にある幼稚園で弟を迎えて、夏帆は家に帰ります。
弟のお迎えは、お母さんがいなくなる前からずっとです。
弟の世話して家事して宿題もやって、オナニーもするって、忙しいだろうなと思いました。
*
翌日の朝、こっそり会話しました。
俺「した?」
夏「した(笑)」
俺「どうだった?気持ちよかった?」
夏「シーッ(笑)。…よかったよ(笑)。2人の時ほどじゃないけどね。ケンタもした?」
俺「したよ。夏帆とした時ほどじゃないけどさ(笑)」
夏「また一緒に、ああいうふうにできたらいいね」
夏帆の白い顔はほんの少し赤くなるだけで目立つので、照れてるってすぐ分かります。
恥ずかしそうに笑った夏帆がすごくかわいくて、もじもじした仕草をよく覚えています。
結婚なんて具体的に考えることはなかったけど、ずっと一緒にいるものだと思ってました。
 
でも2人でエッチなことが出来る日は、もう2度と来ませんでした。
*
*
*
夏帆は、ある日を境に俺のことを避けるようになりました。
授業が終わると話しかける間もなくすぐ帰ってしまいます。
どうしても話す必要があるときも、目を合わせようとしません。理由がわかりません。
マコ達ともあまり話さなくなったみたいで、マコもおかしいなと思ったようです。
マコ「けんかでもしたの?」
俺「そんなつもりないんだけど」
マコ「勉強が忙しいのかな、中学は私立受験するんだもんね」
俺「え、何それ。そうなの?」
マコ「モッケンそれ聞いてないの?女子校の○○学園だよ」
俺「今知った」
マコ「全然話してないんだ。嫌われたのかな?なんか心当たりないの?」
俺「わかんないよ…」
本当に俺は何も聞いていません。その日、夏帆の家に電話してみました。
俺の家にはいつも母親がいて、女子に電話するのは恥ずかしいので、初めてです。
でもこの時は気にしていられませんでした。
俺「もしもし、ケンタだけど」
夏「…!ケンタ。あの、ごめんね」
俺「何であやまるの?私立行くの?」
夏「…うん。お父さんが決めちゃった」
俺「何で言ってくれなかったの?嫌いになったの?」
夏「ごめん、ごめん、ごめんね」
夏帆は泣き出してしまったようでした。
電話口の向こうで多分弟の、ねーちゃーんという声が聞こえます。
もう一度夏帆が「ごめんね」、と言って電話は切られてしまいました。
…もう終わったのかなあ。
泣きはしなかったけど、何も話さない夏帆への怒りが少しありました。
嫌われたとしても、理由がわかりません。その日はよく眠れませんでした。
オナニーもしませんでした。
それからも何回か電話してみました。
でもそのたびに弟が、おじいちゃんが、と何かと理由をつけて夏帆は電話を切ってしまいます。
なんでだよ…!もういいよ…。もう夏帆のことは、考えないようにしようと思いました。
それでも。オナニーのたびに、夏帆のことが思い浮かんでしまう毎日でした。
*
*
*
夏帆は秋の修学旅行にも、体調不良を理由に参加しませんでした。
そしてほとんど何も話せないまま、小学校の卒業式を迎えました。
式が終わったら、少しでも夏帆と話をしようと思っていました。
でも俺にも夏帆にも家族がそばにいて、呼びかけることさえ出来ません。
遠くから手を振りながら、泣きながら俺を見ていた夏帆の姿が、小学校最後の記憶になりました。
*
*
*
中学生になりました。マコ達も含めて小学校時代の友達はほとんど一緒です。
あだ名は相変わらずモッケンでした。別の小学校から来た男子とも女子とも友達になれました。
でも夏帆はいません。
弱小野球部に入ったら結構活躍できたので、俺はそこそこ人気者でした。
かわいい女子はたくさんいたし、夏帆のことはその内忘れるだろうと思っていました。
でも夏帆の全部を見た俺には、他の子は子供っぽく見えて女の魅力を感じません。
オナニーするとき必ず思い浮かぶのは、やっぱり夏帆とのことです。
だから忘れることはできません。毎日思い出しました。
 
2年生になって、俺の身長は小6の時から10cm伸びていました。あの頃の夏帆と同じです。
今なら俺が見上げなくても、夏帆が見下ろさなくても、キスできるんだなって思いました。
あ、でも夏帆も伸びてるかな、180cmくらいになってたりしてなんて思ったら少し笑えました。
周りの女子も成長してきてたけど、やっぱり記憶の中の夏帆が一番かわいかったです。
セックスの知識はいろいろ耳に入るようになってきていて、段々分かってきました。
あの夏休み、夏帆のまんこにちんちんを入れなかったことについて考えました。
あれで合ってたんだ、入れればよかったとか、避妊も知らないんだから、入れなくてよかったとか。
そういう正反対の2つの気持ちがありました。
*
2年生のバレンタインデーに、マコから小学校以来2回めの告白をされました。
マコは明るくてソフト部で真っ黒で、小柄な感じで、夏帆とは全くちがうタイプです。
夏帆としゃべらなくなった頃からちょっと疎遠にはなってたけど、まだ友達です。
よく知ってるし嫌いじゃないし、強く断る理由もないし、なんとなく彼女になりました。
明るくてかわいくてキャラの強いマコは男子からも割と人気があって、うらやましがられました。
そんな優越感も手伝って、少しずつ好きになっていきました。
でも罪悪感もありました。夏帆のことが頭から離れないからです。
一緒に歩いていても、一緒に弁当を食べていても、初めてキスをした時もです。
どうして夏帆じゃないんだろうという思いと、そう思ってしまう自分への嫌悪感がありました。
マコに悪いと思いながら、オナニーのとき考えるのは夏帆のことばかりでした。
*
3年生になって、ある日部活の帰りに、マコの家の前で長いキスをしました。
舌を入れてエッチなキスもしたのに、ちんちんは反応しません。
もうだめなのかな…。初めてのディープキスのあとなのに、マコに言いました。
俺「別れよう」
マコ「え?え?うそ!なんで!」
俺「俺、もっこりモッケン失格みたい」
マコ「…ボッキしなくなったの?だから別れるの?そんなのおかしいよ」
俺「お前のこと好きだけど、キスしてちんちん立たないって、変じゃないか?」
マコ「関係ないよ!好きなんでしょ?あたしも好きだもん、それでいいじゃん」
俺「でも…」
夏帆のことは考えただけで勃起するのに、マコといても、キスしてもちんちんが反応しません。
それが本当に申し訳ないという気持ちでした。
「ちょっと考えさせてよ」と言って帰ろうとしたとき。
マコ「ちょっとうち来て!いいから!」
マコに腕を引っ張られて、家の中に入れられました。
おばあさんらしきお年寄りが寝ていたようだけど、マコは構わず自分の部屋に俺を入れました。
鍵を掛けると、マコは何も言わずに服を脱ぎ始めました。
「ちょっとマコ、わ、わ」…マコは何のためらいもなく、あっというまに素っ裸になりました。
細いけど幼児体型で寸胴で、肌は黒め。乳首の割に乳輪は大きめで、夏帆より茶色いです。
中学3年生、14歳のマコの裸は、12歳のときの夏帆よりも子供に見えます。
でもはっきりした日焼け跡や、小ぶりだけど張りのあるおっぱいを見て、きれいだなと思いました。
中学生の女子が普通どれくらいなのか知らないけど、まん毛はやっぱり薄く感じます。
マコは泣いてました。泣きながら言いました。
マコ「モッケンも脱いでよ。またちんちん見せてよ」
マコの勢いに押されて、小6の夏休み以来、マコの前で服を脱ぎました。
部屋には2人の汗のにおいが漂って、空気はじっとりと湿っています。
マコの裸を見て、さすがにちんちんは少しふくらんでいました。半勃起です。
マコ「あは、大きくなったね。毛ももじゃもじゃだし」
この「大きくなったね」は、3年前より大きくなったね、の意味です。
マコ「ホントはもっとボッキするよね?あたしじゃだめなの?」
俺「わかんない。ごめん」
裸のまま並んで座って話をしました。
マコ「夏帆…。どうしてるかな。まだ、夏帆のことおぼえてる?好き?」
俺「…うん。…ごめん」
付き合うようになってから今まで、夏帆のことは意識的に話題にはしてませんでした。
多分、マコもそうだったと思います。
マコ「そっか。でも今はあたしが彼女だよね?夏帆はエッチなことしてくれなかったでしょ?」
俺「いや、実は……」
夏帆としたことは、夏帆と俺の2人だけの秘密でした。
でも理由も言わず去っていった夏帆に裏切られたという思いもあったし、3年も前のことです。
もう、マコには話してもいいよな…。
裸を見せ合ったこと、挿入はないけど射精したこと、抱き合って眠ったことも話しました。
いまだにオナニーの妄想ネタは夏帆だけであることも正直に言いました。
マコには本当に悪いと思ったけど、隠すのはもっと悪い気がしたから。
マコ「あーあ、あたしやっぱりかなわないんだ。しょうがないなっ!」
泣いていたけど、わざと明るく言ってるように聞こえました。
でもふと俺のちんちんを見たマコは、やっぱりまた泣き出してしまいました。
夏帆の話をしているうちに、完全に勃起していたからです。
マコ「夏帆のこと考えたから?これが夏帆の言ってた『愛の力』ってわけか…。ホントかなわない」
俺「………」
マコ「ねー、モッケン、してよ」
俺「え?」
マコ「あたし今だけ夏帆の代わりになるから。夏帆のこと考えながらでいいから!」
マコが俺を押し倒して、馬乗りになりました。
マコ「最初で最後でいいから。一回でいいから。あたしで気持ちよくなってよ…」
マコは泣きながら俺のちんちんを支えてまんこに当てると、一気にぐりゅ、っと腰を沈めました。
何がなんだか分からないうちに童貞喪失です。前戯もなしで一気に奥までいきました。
そのときは初めてでわからなかったけど、今思えば濡れ方が足りなかったような気がします。
マコも何かあせっている感じがしました。
それでも初めて、温かく濡れたひだに包まれる感覚は、何とも言えない快感です。
ぐにゅぐにゅして熱くて、手じゃないけど「ぎゅっと握られてる」って感じました。
前かがみになってキスをしてくるマコの唇は、汗と涙のしょっぱい味がしました。
「はっ、はっ、ンッふぅぅ…!」マコが器用に腰を振っています。
うわ気持ちいい、これがセックスなんだ…。そして限界はすぐに来ました。
俺「なっなあ、コンドーム付けないとまずいんじゃ…、あッあああ、俺!もうやばいよ…!」
マコ「ん、んん。わかった…」
マコは一度腰を上げてちんちんを抜くと、すぐに俺の股間に顔をうずめました。
「え?」おどろく俺を無視して、マコはちんちんを一気にくわえ込みました。
口の中で舌が、ちんちんをなめ回してるのがわかります。まんこの快感とはまた別物です。
薄い唇と小さな舌が、にゅるにゅるちゅぱちゅぱとやらしい音を立てました。
俺「え、え、何で?うわ、もう」
マコ「くひに出ひて!いいはら!」
マコがそう言い終わらない内にもう出始めていました。
「あッあー、マコ…!口、口に出ちゃってるよ…?」
ちんちんがビュクビュクと脈打って、たくさんの精液がマコの口の中を満たしました。
「んー!くふっ…んん」マコにとっても予想外の量だったようです。
でもおどろいたことに、マコは全部飲み込んでしまいました。
口内射精や精液を飲むというのは、AVや特殊な大人の世界だけだと俺は思っていました。
マコ何でそんなに…?びっくりしたのと気持ちいいのとで、言葉も出ません。
夏帆とした時は、性器を舐めるというのは思いつきもしませんでした。
はあはあと息を切らしながら、しばらく見つめ合いました。
マコ「はあ、ふう!…びっくりした?」
俺「…うん」
マコ「…あたしね、初めてじゃないんだ」
痛がらなかったことや慣れた動きをみればすぐわかることです。
でもこの時は動転していたから、その言葉で初めて気づいて驚きました。
俺「そっか…」
何て言えばいいのかわかりません。俺の前に彼氏がいたとか、聞いた事も見た事もないし。
マコも、それ以上は何も言いませんでした。
望まない形で経験したんじゃないかと思って、何も聞かないことにしました。
マコ「夏帆ともここまではしなかったんでしょ?だから、これだけはあたしの勝ち!」
泣き顔で笑いながら、マコが抱きついてきました。俺も抱き返しました。
マコ「夏帆のこと考えてた?」
俺「…ううん、今だけは、マコのことだけ見てた」
マコ「モッケンありがと、うれしいよ。でもね」
俺「うん、ごめんな」
マコのことだけ考えてたのはほんとでした。
イクときに夏帆のことを考えなかったのはいつ以来かわかりません。
それでもすでにしぼんだちんちんを見て思いました。これ以上付き合うわけにはいかないよな…。
マコ「いいよ、わかってる。変に気遣わなくていいから、これからも友達でいてよね」
俺「マコ、俺さ」
コ「もういいの!でも、夏帆の想像だけで足りなくなったら、いつでも代わりになるから…」
俺「…ありがとう」
その気持ちに甘えるわけにはいかないと思いました。
ただマコの気持ちがうれしくて、それに応えられない自分が情けなくて泣きそうになりました。
夏帆を忘れる日が来るかどうかはわかりません。でもいつか応えられたらと本気で思いました。
*
*
*
その後もマコは普通に、今までどおり気さくに接してくれました。
まだ付き合って数ヶ月だったので、別れたことを周りもしばらくは全く気づかないほどです。
本当にいいやつだな。そう思うと同時に、やっぱり自分の不甲斐なさが身に染みました。
相変わらず妄想オナニーは夏帆でしていたけど、マコが少し出てくるようになっていました。
何とかして夏帆への気持ちに決着をつけたいと思っていました。
どうして離れて行ったのか、それを知るために会って話したい。
私立の中学に行くことになった夏帆が、隣町に引っ越したことまでは知ってます。
マンションとお父さんはそのままで、夏帆と弟だけ祖父母の家に行ったわけです。
お母さんがいなくて大変だから、夏帆と弟それぞれの進学をきっかけにそうしたんだと思います。
祖父母の家の場所は知りません。
何度かマンション前をうろついてみたけど、夏帆がいるわけないし、どうしていいかわかりません。
今さら電話もできないし、何も出来ないまま月日は過ぎていったのでした。
*
*
*
夏休みの前ごろ、なんとマコが俺の知らないところで行動を起こしていました。
遠いのに夏帆の学校まで出向いて、夏帆を待ち伏せして言い寄ったそうです。
「モッケンはまだ夏帆のことが好きだから、せめて事情を説明してあげて欲しい」と。
マコはそんなことがあったなんておくびにも出さず、俺も何も知りませんでした。
なぜ知ったかというと、夏帆から手紙が来たからです。中3の秋のことです。
厚くふくらんだ封筒には差出人の住所はなくて、夏帆の名前だけ書いてありました。
それを見た瞬間、体がしびれる様な衝撃がありました。夏帆からの手紙!
家族に先に見つからなかったことにホッとしながら、部屋であわてて封を切りました。
上手くはないけど丁寧に書いた字。夏帆の生真面目さがよく分かる字でした。
長い手紙には、まずこんなことが書いてありました。
マコちゃんが学校まで来て、ケンタの気持ちを伝えてくれたこと。
何も言わずにケンタを避けるようになって、そのまま会えなくなってごめんなさいということ。
嫌いになったからではないということ。今でも好きだということ。
この恥ずかしい手紙は、読んだら燃やして欲しいということ(※結局今も大事にとってあります)。
そしてどうして避けるように離れていったのか、そのいきさつはこういうことでした。
*
佐和木先生にオナニーを教わってから、夏帆はちょくちょくするようになってしまいました。
ある日、オナニーしているところをお父さんに見られてしまいます。
お父さんはひどく怒りました。いつからそんなみっともない娘になったのかと怒りました。
恥ずかしさで死にそうなくらいショックだったけど、夏帆は泣いて反論しました。
エッチな気分になるのは人間だからしょうがない、女の子も我慢しすぎない方がいいと。
お父さんの怒りは収まりません。誰がそんなことを吹き込んだのかと聞かれました。
それが学校の先生だと知ったお父さんはさらにショックを受けたようでした。
学校に抗議に行きたいけど、騒ぎになるとかえって恥をかきます。
そこで、夏帆を通じて佐和木先生を非公式に家に呼びつけました。
家では夏帆の前でお父さんと佐和木先生の口論が始まりました。
お父さんの言い分はこうです。
『小学生にこんないやらしいことを教えるとは信じられない、性教育の範疇を超えている』
思春期の女子、ということでお父さんには相談しなかったことを、先生は一応詫びたようです。
その上での先生の言い分はこうです。
『夏帆さんは発育がよく体は十分大人であり、大人としての健康的な性欲は他の子の比じゃない。
体は大人、心は子供で知識もなくただ性欲を抑えると、間違ったセックスに溺れる危険性がある。
だがセックスについて詳しく教えるよりも、まずはオナニーで発散させた方がよいと判断した』
お父さんはそんな理屈より、小学生の娘が性に目覚めた事がショックだったんだと思います。
思春期でしかも発育十分な娘を抱えて、男親1人になった不安と重圧もあったかも知れません。
口論は続いたけど、結局娘の教育方針を決めるのはお父さんです。
暴力などの虐待ならすぐ止める必要があるけど、先生の方針を主張するにも限度があります。
『先生の言いたいことは十分わかったが、納得はできない。父親1人でも娘は守るつもりだ。
夏帆はもう二度といやらしいことを考えるな。あんなことするのはふしだらな大人だけで十分だ。
余計なことを考えなくて済むように、学校でも極力友達と関わるな。中高は私立の女子校に行け』
これがお父さんの出した結論でした。
お母さんがいなくなってからイライラすることの多かったお父さんは、とても怖かったそうです。
古い考えみたいだけど、当時32歳の若いお父さんです。
夏帆はお父さんに逆らえず、言うとおりにしたそうです。
お父さんの顔が思い浮かぶと怖くて、俺といられなくなったってことでした。
佐和木先生にもまた相談しに行きました。
お父さんの言い分に相容れない先生は、オナニーくらいこっそりしなさいと言いました。
でも夏帆はお父さんに怒られた事が相当ショックで、性欲が死んだようになってしまったそうです。
俺とのことが急に、とてもみっともないことのように思えたといいます。
大好きなのに、俺を悪者にしてしまいそうな自分がいて、顔も合わせにくくなったそうです。
そうでなくてもお父さんが怖くて、言いつけを守るしかありませんでした。
*
ここまでが、夏帆が俺を避けるようになったまま卒業するまでのいきさつです。
長い手紙にはまだ続きがありました。
*
*******
ケンタがずっと好きだった。今でも会いたい、でも怖くて申し訳なくて、会えないよ。
マコちゃんが来たのはケンタのことが心配だから。ケンタを好きって気持ちがよく分かった。
できればマコちゃんと幸せになって欲しいとも思う。
でももし、これからも私を好きでいてくれるなら私も応えたい。私もずっと好きだから。
もし待ってもらえるなら、もう少し待って欲しいんだ。
私はこの3年で精神的にぼろぼろになったけど、お父さんも分かってくれるようになった。
お母さんが死んだショックで、私に厳しくしようという思いがエスカレートしただけ。
どうかお父さんを責めないで欲しい。
最近はほんとに丸くなってきた。今では逆に、早く彼氏作れって言うこともあるよ。
ホルモンバランスがくずれて私が病気がちになったから、心配になったみたい。
私の性欲を抑えたのが、私が不安定になった原因じゃないかって後悔してるんだと思う。
お父さんが初めて、昔のことを話してくれたんだ。
若気の至りでお母さんを妊娠させて、恥もかいたし親にも恥をかかせたし、結婚後も苦労した事。
がんばって稼ぐようになって、娘はおしとやかに育てたかったってこと。
そのためにはこれから女親の存在が大事ってときに、お母さんがいない。
父親1人では、夏帆もいつかは大人になると理解はできても、束縛する事しか考えられなかった。
昔の自分への戒めを夏帆に向けてしまった、すまない、許して欲しいって。
お母さんがいなくて寂しいはずなのに、お父さんは寂しいなんて言わなかった。
私のためだったって分かってるから、お父さんを恨んだりしないよ。
そしてお父さんは、今再婚したい人がいるって。まだ若いしモテるから、今に見てろって。
再婚したら多分、お父さんも幸せになれると思うし、私もうれしい。
夏帆も自由に恋愛していい、彼氏作れって言ってくれたけどまだ中学生だし深く考えてないんだ。
お父さんが再婚して落ち着いたら、私もゆっくり心と体を治してケンタに会いたいって思ってた。
彼氏って言われても、私にはケンタ以外考えられないし。
でもやっぱりホントはね、そんな虫のいいこと言っちゃいけないってわかってる。
3年間でケンタの気持ちも変わってきてるだろうし。カラダも大きくなったかな。
私は身長が止まってしまったからあのときのまま。今はケンタの方が大きいかも。
みんな変わってくんだね。
私はケンタに何もしてあげられない私のまま、何も変わってない。
私を助けてくれたケンタと、ケンタのために来てくれたマコちゃん。私だけ何もできない。
マコちゃんにかなわないって思った。ホントにケンタが好きなんだなって思った。
ケンタがまだこんな私のことなんかを好きだって聞いて、ホントにうれしかったよ。
でもそれ以上に、マコちゃんの気持ちがとても強いものに見えたんだ。
久しぶりに会ったマコちゃんかわいかった。きっと今のケンタにお似合いだよ。
何もできない私なんかより、マコちゃんと幸せになって欲しいってのはそういうことで。
私はケンタを裏切るようなことしたから、私のことは許さなくていいよ。
ケンタのために走ってくれたマコちゃんを大事にして欲しいよ。
 
なんて、謙虚なふりしてみたけど。
でも私だってあきらめたいわけじゃないから。
だから、1年後。今はケンタも受験が大事だし、高校生活に慣れてくるくらいの来年の今頃。
私も落ち着いて今よりも元気になってると思う。
そのときまだケンタの気持ちが残ってたら、私を彼女にしてくれませんか。
マコちゃんにかなうとは思ってないけど、1年後の10月○日。
ケンタの返事を聞くためにこの日だけ、一日中うちで待ってます。
ケンタが忘れても、来なくても、電話もかかってこなくても、あきらめるだけです。
ケンタを恨むことはないので安心してください。
*******
*
…夏帆の手紙を読み終えて、俺はぼんやりしてしまいました。
生死に関わる病気とかが理由じゃなくて、とりあえず安心はしました。
でも、辛くて恥ずかしい思いをして、心も体も不安定になったという夏帆。
俺が夏帆を追い詰める一因になったことはまちがいありません。
俺のことを責めたりはしないだろうけど、オナニーを覚えたきっかけは俺です。
全部俺のせいかも…。自分の責任を感じずにはいられませんでした。
同時に、まだ好きだと言ってくれたことは素直にうれしかったです。
今会えないのは残念だけど、待つと言ってくれました。
俺は今も夏帆が好きです。夏帆の力になりたいと思います。
でも何が何だかわからなくなりました。
夏帆の今を知った嬉しさやショック。
それと同時に、記憶の中の夏帆が遠ざかって行くのを感じたからです。
小学校の多感な時期、わずか数ヶ月の間の、強烈な体験の数々。
それが時間と共に、美化されてただけなんじゃないかと思ったんです。
衝撃的な性体験の思い出を、恋と勘違いしてたんじゃないか、そうも考えました。
文字だけとは言え今のリアルな夏帆を知って、思い出のもろさを感じました。
大切な人だというのは変わりません。
でも?この感じは、恋愛感情とは何かちがうもののような気がしました。
そして。
夏帆の文面は優しいようだけど、つまりは選べと。難問を突きつけているわけです。
夏帆とマコ。どちらを選ぶのか、1年で答えを出して欲しいと言ってるわけです。
もちろん可能性としては他にも女子はいるけど、俺もそこまで考えられません。2択です。
*
マコのことを考えました。俺は人としてのマコが好きです。
俺のことを好きだと言いながら、俺と夏帆の仲を取り持とうとしてくれました。
それは小学生のときから変わりません。本当にいいやつです。
そして俺を襲ってきた(?)ときの涙。それが忘れられません。
俺の知らないところでマコも、何かを抱えているんだろうな。
夏帆の今を知って心境の変化を感じた俺は、マコへの気持ちを確かめようと思いました。
*
大事な用があると言って、マコの部屋に入れてもらい向かい合いました。
何も言わずにコヤマの肩を両手でつかんで、大きな黒い目を見つめました。
マコ「…うん。いいよ。いつでも夏帆の代わりになるって、あたしが言ったんだからね」
俺「今日は代わりじゃないよ」
マコ「え?…あッ、ン、んふッ」
キスをしました。夏帆とはちがう、薄く乾いた唇と小さな舌。
お互いの腰に手を回して、体を密着させながら、舌を絡め合いました。
唾液を交換しながら、何度も息継ぎをしながら、長い間キスをしました。
夏帆と何度もしたにゅるにゅるのキスを思い出さないように、俺は目を開けています。
ようやく顔を離したとき、マコは涙で濡れた黒い目を丸くしていました。
マコ「モッケン、すごい。どうしたの、こんなキス…」
俺「マコに見て欲しいんだけどさ」
俺はズボンとパンツを脱いで、完全に勃起したちんちんを揺らして見せました。
ちょっと変だけど、マコへの気持ちを勃起で確かめて、証明したかったんです。
マコ「うわー!すごい!もっこりモッケンだ」
俺「これ、もう夏帆とは関係ないよ」
マコ「え?それって」
俺「マコが好きだから、キスしたらこんなんなった」
マコ「え、うそ。ホントに…?」
マコが座り込んで泣き出しました。
マコ「うわーん!いいの?あたしでボッキしていいの?うう…うふっ、くふ」
俺「お前何でちんちん見て、声上げて泣くんだよ。やっぱり変なやつだなあ」
マコ「ただのちんちんじゃないよ!モッケンのちんちんが、あたしでボッキしたんだよ、うれしいよ!」
泣きながらニコニコして、かわいがるようにちんちんをなで始めました。
がまん汁でくちゅくちゅと音がしました。
ぞくぞくする。マコの細い指がいやらしく絡みつきます。
すぐイキそうな気がしてやめさせようとしたら、
マコ「いいじゃん、もうちょっとさわらせてよ…」
本当にうれしそうに、ちんちんをしごくように撫で回しました。
ぬちゅぬちゅさせながら、タマをもみもみしながら、涙目の笑顔で俺を見つめてきます。
俺「く…!ほんと、やばいんだけど?」
マコ「え、まじ?いいよ、じゃあ口で…」
ちんちんを咥えるどころか、マコの唇がチュ、と先に触れた途端です。
ちんちんの先から体の芯に、何かが走る感じ。
ドクッ、ドピュッ、と音が聞こえると思うくらいの勢いで精液があふれ出しました。
マコ「ふひゃあ、何?何?」
口に入れる前だから当然、もろに顔にかかりました。唇と鼻とおでこを直撃です。
処女じゃないマコにとっても、顔射はちがう世界の出来事だったようです。
それでもあわてることなく、まずちんちんをキレイに舐めてくれました。
マコ「はむ。あ…んむ。ふう…む、むむ」
ちゅぷちゅぽと音をさせてちんちんをすするマコ。俺は何も出来ず、ただ足を震わせました。
ちゅうっ、と音をたてて唇を離すと、タオルでちんちんを軽くポンポンと拭いてくれました。
それからようやくタオルで自分の顔を拭きます。
その順番にマコの気遣いを見た気がして、何とも言えない切ない気持ちになりました。
マコ「ふう、びっくりした…!ちょっとモッケン!早いよ、ソーローだよ」
俺「うわあ、ごめんな…」
マコ「でも、うれしいよ!あ、ちょっと待ってて」
早漏を責めるわけでもなく、嬉しそうにマコが部屋を出て行きました。
射精の時にマコが顔をふって落ちたり外れたりした精液が、床を濡らしていました。
それをティッシュで拭きながら、マコのこと好きだって気持ちが確信に変わってきました。
数分後マコが部屋に戻ってきたとき、俺はまだ勃起したままです。
それを見てニコッと笑ったマコがキスをしてきました。
……歯磨き粉の味がしました。
前回の口内射精のときは、終わったあとキスはしませんでした。
マコが歯を磨きに行く事もありませんでした。
何も言わなかったけど、精液が口に残ったままキスをしたくなかったんだと思いました。
俺が精液のにおいでいやな思いをしないように、口をきれいにしてくれたんだ…。
つまりマコも精液をおいしいとは思ってないってことです。
なのにうれしそうに精液を飲み干したり、ちんちんをキレイに舐めてくれたりしました。
何も言わずにこんな気遣いができるのは、セックスに慣れているからだとは思いません。
マコの根っからのやさしさだと感じました。
俺はこんな子をずっとほっといたんだなあ…。やっぱり悲しくなりました。
自分が情けなくて悔しくて、でもマコが大好きでうれしくて、たくさんキスをしました。
そのあとは、俺にとって初めてのことばかりです。
初めて女の子の服を脱がせました。ブラのホックの外し方も覚えました。
初めてまんこを舐めました。クリトリスをれろれろするとマコはすぐイキました。
初めてコンドームをつけました。マコはあの日以来俺のためにいつも用意してたそうです。
初めて正常位でちんちんをまんこに入れました。入っていくのを2人でじっくり感じました。
初めて自分で腰を振りました。前回は騎乗位でマコの腰振りだけでした。がんばりました。
初めてまんこでイキました。マコとキスしながらです。
マコはずっと泣いていました。喘ぎ声と泣き声がずっと混じっていました。
マコも同時にイケました。でも今思えばあれは多分イッたふりだと思います。
しばらくちんちんを入れたまま、何回もキスをしました。
俺「俺、マコ好きだよ。一回俺からフッたのに勝手だけど」
マコ「もういいよ!あたしも好きだよ、うれしいよ…」
俺「ありがと。これからまた彼女になってくれる?マコちゃん(笑)」
マコ「今さら急にちゃん付けするなー!恥ずかしいからやめて」
俺「あはは、わかった。これからもよろしくな、マコ(笑)」
マコ「2人の時なら、時々なら、いいよ…?(笑)」
裸で抱き合って鼻を突きあわせながら話をしました。
マコ「ねえ、夏帆のこと」
俺「…うん」
マコ「もう、いいの?」
俺「忘れるわけじゃないし、大事な思い出だけど」
マコ「だけど?」
俺「マコの方が大事だってわかった」
マコ「うへー。なかなかくさいこと言うじゃん。あーあ、恥ずかしい!でもうれしい!でもさ」
俺「何?」
マコ「あたし夏帆がちょっと心配だよ」
俺「会いに行ってきてくれたんだろ?ありがとな」
マコががばっと体を起こしました。
マコ「え、何?知ってるってことは、なんか連絡あったの!?」
俺「うん」
夏帆から手紙が来たこと、手紙のおおまかな内容と、それを読んで俺が考えたこと。
マコに話しました。
マコ「そんなことがあったんだ、…そっか」
俺「マコ俺さ、1年後どころか今マコを選んだつもりだけど。夏帆には会いに行こうと思ってる」
マコ「うん、半年であたしにフラれるかも知れないしね」
俺「うわ何だよそれ」
マコ「アハ、それは冗談だけど。どんな形でも夏帆にはモッケンが必要だよ」
俺「マコ…」
マコ「夏帆すごい痩せてたんだ。不安定なんだね手紙の通り。あの細さと白さにはびっくりしたもん。
ま、いい方向に向かってるっていうのも、ホントだと思いたいけどさ」
俺「俺も夏帆が心配なんだよ。好きとかそういうのとはまた別の話で」
マコ「そう言ってくれてよかった!夏帆が大事なんでしょ?あたしだって大事な友達だと思ってるよ。
モッケンが初めて露出狂(笑)になった時から、あんたも夏帆もあたしには大事な人なんだよ。
何年会ってないとか、選ぶとか選ばないとか、どっちが彼女とか好きとかそんなの関係ないよ」
俺「…」
マコ「夏帆は答えを待つって言ったんでしょ?あんたも待って。少しは責任感じてるんでしょ?
あたしを好きになってくれたのはうれしいけど、夏帆を見捨てるって意味なわけないよね?
そんなモッケンなら、あたしがフるよ。選ぶ以前の問題になっちゃうんだからね」
俺「お前の方がいろいろ考えてるんだなあ。俺自分が情けなくなるよ」
マコ「そんなこと言わないの。…まあ、あたしもいろいろあったからね」
そのいろいろを、マコが話してくれました。
中1から中2にかけて、誰かを好きになったり、フッたりフラれたりして切ない思いしたこと。
彼氏はできなかったけど、恋愛についてはいろいろ考えたりしてたようです。
そんなことより問題は中2の秋から冬、数ヶ月の出来事でした。
15歳以上年上の男(従姉の旦那らしい)と、体の関係を持つようになったということです。
かっこ良かったし、最初は興味本位で体を預けてみたけど、すぐに後悔したそうです。
セックスの良さも怖さも知りました。でも怖さのほうが大きかったようです。
ただ性欲を吐き出すためだけにマコを犯すように弄ぶ、そんな男だったそうです。
親戚だからと何かと理由をこじつけては家から連れ出し、男はマコを犯しました。
ばれるのが怖くていつも耐えながら要求に応えていたそうです。
でも、ばれて困るのは男の方だと気づいて開き直れました。
ある日、従うフリをして隙をみて、男のタマを思い切り蹴飛ばして(!)逃げ帰りました。
泣いて走りながら思い浮かんだのは、なぜかちんちん丸出しの俺の姿でした。
バレンタインデーにモッケンに告白しよう!と決めたら涙が止まりました。
フラれてもいいからもう一回好きって言いたい、そう思ったそうです。
俺「そんな壮絶な経験してるのに何で強いんだよ。してるから強いのかな。俺全然かなわないよ。
そんな思いしてたって全く気づかなかった。ごめん」
マコ「何であやまるの?イヤにならない?」
俺「??何で?」
マコ「こういうの、汚れてるって言うんだよ。嫌われるの覚悟で話したのに」
俺「嫌いどころか尊敬するよ。やな奴やっつけたんだろ?」
マコ「やっぱモッケンだな、鈍いけどいいやつだよ。好きになってよかった…」
俺「…。なあ、あとでばれたり、また変なことされなかった?」
マコ「あー、大丈夫。あたしのこととは別に、浮気がばれて姉ちゃん(従姉)と離婚した」
俺「仕返しとか怖いよな」
マコ「もう田舎に帰ったみたいだし。それにいざというときはモッケンが助けてくれるよ」
俺「え、自信ないよ」
マコ「大丈夫、モッケンはちんちん丸出しなら無敵だよ!」
俺「あはは!なんだそれ」
 
マコの話を聞いて、夏帆もマコもいろんなことを抱えてるんだなって痛感しました。
何だか俺だけフラフラしてる。2人の気持ちに応えるためにしっかりしなきゃと思いました。
*
*
*
これから受験シーズンということなので、マコとの付き合いは控えめにしました。
勉強に集中しながらも、夏帆の気持ちにどう応えるべきか2人で考えました。
なんとか同じ高校に合格することができました。
*
*
*
高校生になりました。マコと同じクラスでした。
この頃にはマコも、俺をケンタと呼ぶようになりました。
中学から彼女がいるということで、周りからは一目置かれると同時に、モテずに済みました。
入った野球部はやっぱり弱小だったので活躍できたけど、坊主頭なのもあってさらにモテません。
高校生だとさすがに大人っぽい女子もいました。でもやっぱり夏帆にはかないません。
顔つきだけは夏帆の方が子供だったけど、当時の夏帆の体の完成度を思い知りました。
夏帆の大人の体とマコの大人の心を知ってるおかげで、他の女子に惑わされずに済みました。
とはいうもののマコとはケンカもしたし、別れるまでいかなくても険悪になることはありました。
でも2人の間には、夏帆との思い出を取り返したいという共通の思いがありました。
セックスの時は、マコに夏帆を重ねました。
夏帆を忘れないように、マコがそうして欲しいと言ったからです。
その気持ちを大事にしなければと思いながら、俺は「その日」を待ちました。
*
*
*
その日は雨でした。そして平日でした。時間は昼ごろ。学校はサボりました。
後で知ったけどその日は、12歳の夏帆が心の中で、俺との関係を一方的に断ち切った日でした。
ずっと前からマコと話して決めていたのは、2人で会いに行こうということだけです。
マコはこう言いました。夏帆と会って、ケンタがやっぱり夏帆を選んだとしても恨まないと。
どんな答えでも、ケンタが真剣に考えて出したものなら受け入れると。
そしてそれでも3人の友情というか、思い出は、変わらないって信じると言いました。
あの手紙から1年。夏帆が今どうなっているか俺もマコも知りません。
約4年ぶりに夏帆と会って、自分がどう感じるのか想像がつきませんでした。
だからもう、どちらかを選ぶという「宿題」は、この時点ではナンセンスだと思ってました。
会って、思ったことを言い合えればそれでいいんじゃないかな。
だからマコも同じ気持ちで、恨まないし信じると言ってくれたんだと、そう思います。
 
 
*
 
 
玄関のチャイムを鳴らしました。ドアを開けて迎えてくれた夏帆は………。
満面の笑みを浮かべていました。マコがいるのにも驚かず、喜んで2人を招き入れてくれました。
あの頃より少しやせて落ち着いた、大人びた顔の夏帆を俺は少し見下ろしていました。
夏「背、伸びたね」
夏帆の第一声でした。
その瞬間涙が込み上げてきました。まさかすぐ泣いてしまうとは思ってなかったのに。
恥ずかしさとうれしさで混乱した俺の第一声は。
俺「おっぱい大きくなったね」
マコ「ばか!」
間髪入れずにマコが頭をはたきました。
夏「あは、息ぴったり。さすがだね」
夏帆も泣きながら笑っていました。
一瞬で4年前に戻ったかのように、3人で笑い合いました。
そして3人とも泣いていました。
*
今実際にこのマンションに住んでるわけじゃない夏帆の元の部屋は、ガランとしてました。
テーブルとベッドだけがぽつんと置いてありました。
3人で座って話をしました。「宿題」のことはとりあえず関係ありません。
小学校時代の話をたくさんしました。
久しぶりという気が全然しなくて、ただただ楽しい時間でした。
手紙の内容なんかもぶっちゃけて話しました。
マコが言うには去年会った夏帆はもっと痩せていて、今の夏帆を見て安心したそうです。
それでも痩せてる感はあるけど、おっぱいはホントに大きくなってました(と言ってもC→Dくらい)。
身長は変わらないけど、スタイルが良くなって顔つきが大人っぽくなって、ほんときれいです。
マコと付き合ってるって話しました。それも夏帆は予想してたからか、驚きませんでした。
それよりも昔と変わらず話をできたことが本当にうれしそうでした。
中学に入って病弱になり、性格はおとなしいのに見た目が目立つ夏帆は、いじめられたそうです。
友達もできず、女子中のイジメは陰湿らしくて、詳しく話したがらないけど辛かったみたいです。
幸い先生たちが助けてくれたけど、不登校になった時期もあったということでした。
どんどん不安定になってく夏帆と、それを見て教育方針を後悔し始めたお父さん。
そんな2人の相談相手として支えになってくれる人がいました。
夏「私のことでお父さんがね、ホント悩むようになっちゃって。佐和木先生に会って謝ったみたい。
いつぞやは失礼なことを言ってすみません、先生の考えを聞かせてくださいって。
私の知らないとこで時々相談するようになってたみたい。その内私も相談するようになって」
俺・マコ「ふーん」
夏「それで去年の年末ね。お父さんが佐和木先生を家に呼んで来て、新しいお母さんだよって」
俺・マコ「ふーん。…んー!?」
夏「再婚したいこと自体は聞いてたけど、恥ずかしがってね、どんな人かってことはなかなかね。
全然教えてくれなかったから。あれにはホントびっくりしたな~(笑)。いつくっついたんだろ(笑)
どんな人が相手でもお父さんの人生だから、って反対はしてなかったから、決めちゃったみたい」
マコ「この鈍感、途中で気づけよ!でもいいないいな!良かったじゃん。姉妹みたいじゃない?」
俺「すごいなー。姉妹ってこの場合、夏帆が姉ちゃんに見えたりして(笑)」
夏「先生、あ、今も先生って呼んじゃう(笑)。新しいお母さん、しっかりしてるからそんなことないよ。
小学校の時からお母さん代わりに相談に乗ってもらってたから、全然違和感なかったよ。
うれしかった。『先生』としても『お母さん』としても助けてくれたから、だいぶ元気になれたしね」
*
3人の近況とか、夏帆と佐和木先生との生活とか、お父さんがずっとご機嫌で嬉しいとか。
その後も話はつきませんでした。小学校のときみたいに楽しく過ごしました。
マコ「夏帆よかったね!元気になってくれてホントよかった」
夏「ありがと。心配かけてごめんね。もう大丈夫だからマコちゃん、ケンタとよろしくやって!」
マコ「夏帆も素直じゃないな。まだ好きなんでしょ?それにこれはケンタの宿題なんだからね」
夏「でも、2人は付き合ってるんでしょ…?」
マコ「それとこれとは別。あたし夏帆に彼氏取られるの覚悟で来たんだよ。決めるのはケンタ」
夏「マコちゃんから取るとか、そこまで考えてないよ~」
2人がじっと俺を見てます。ここまで来てもやっぱり重大な決断を迫られるようです。
ずっと不思議に思ってたことを2人に聞いてみました。
俺「なんでこんなかわいい子2人に、俺なんかがモテてんの?しかも何年も」
かわいいと言われて素直に照れる2人がホントにかわいくて、なおさら不思議です。
ケンタはやさしいとか面白いとか、スポーツが得意とか、ありきたりなことを言われました。
あと、一緒にいて落ち着くとか、飄々としてクールなようで子供っぽくてかわいいとか。
いやそれはそれでうれしいんだけど、あまり腑に落ちないな。
タイプのちがう2人の女子が、俺を好きになったホントの理由は、表現は違うけど同じものでした。
マコ「きっかけが全てってこと。ちんちん丸出しで人のピンチを救えるやつ、他にいないもん(笑)
あのときすごくカッコよかったよ。ヘンタイだけど(笑)」
夏「初めて助けてくれた時のインパクトかな~。あのちんちんはいろんな意味ですごかった(笑)。
忘れられるわけないよ(笑)。ヘンタイだけど(笑)」
確かにあれは俺にとっても思い切った行動だし、夏帆を助けたっていう自己満足もありました。
だけど2人の女子をここまで惹きつけるとは、俺のちんちんもなかなかやります。
思春期のちんちん体験がとにかく強烈に刷り込まれたってことかも知れません。
ここで思い切って、保健室を覗いてたことを俺は告白しました。
それでも好きって言ってくれるなら、本物だと思ったからです。2人も少しはおどろきました。
俺「俺そういうことしたド変態だよ?さすがに軽蔑するだろ」
マコ「確かに変態だけど、何?今さらその程度であんたのこと嫌いになると思ったの?」
夏「恥ずかしいけど私を助けるきっかけになったんでしょ?だったらもうそれだけで十分だよ」
ある意味いやまるっきり犯罪と言えるのに、まったく責めようともしません。
俺はもう2人の気持ちを全面的に信じることにしました。
俺「わかった。やっぱ2人とも変態なんだ。で、俺も変態だからそれで気が合うんだな」
マコ「まあ否定はしないけど」
夏「私も。ケンタにいろんなことされて嬉しかったから。私もヘンタイさんだよ(笑)」
マコ「でも夏帆、ケンタにしてもらってないことあるでしょ?」
夏「え、何?」
マコ「最後までして欲しいんじゃない?」
夏「え~!考えてないよ、もうずっと、むずむずしたこともないよ」
マコ「それは今までケンタがそばにいなかったからでしょ。今、隣にいるよ?」
夏「それはその…。そんなこと聞かないでよ~」
マコ「むずむずしてるんでしょ!チェックしてあげよっか。パンツ脱がしちゃおっかなー」
困った表情の夏帆と、意味ありげにこっちをチラチラ見てるマコ。
あ、あのときの再現かな?と思ってノッてみることにしました。
俺『お前夏帆のもじゃもじゃ見たいの?ヘンタイ』
マコ『関係ないでしょ!ちょっとチェックしてあげるだけだよ』
俺『ホントはうらやましいんだろ。お前ツルツルなの?』
マコ『ばか、そんなわけないじゃん!』
俺『じゃあ見せてよ』
マコ『何で見せなきゃいけないの』
俺『じゃ夏帆のも見る理由ないだろ?俺、お前のチェックしたいだけだよ』
マコ『変態はそっちじゃん。“モッケン”こそどうなの』
もうモッケンとは呼ばなくなったマコだけど、この時は台詞として“モッケン”と言いました。
夏帆もマコもニヤニヤしながら俺のアクションを待ってます。
俺「俺のはこんなだよ。ほら」
期待に応えてあのときと同じようにちんちん丸出しになりました。
会話しながら勃起していたちんちんは、やっぱりびよんびよんと揺れています。
マコは見慣れてるけど、夏帆が俺のちんちんを見るのは4年ぶりです。
夏「ふわあ。…ケンタおっきくなったんだね。すごいな…」
いろいろ思い出したのか、なんと夏帆が泣き出してしまいました。
ちんちんを見て泣く女がマコ以外にもいました。
俺のちんちんにそんな力があるとは。もう自分でも何が何だかわかりません。
マコ「3人で見せっこしよう!いつか話したみたいに」
マコの一言で、3人とも素っ裸になりました。
3人ともヘンタイ宣言したから、もう驚くことはありません。
それにしても、とにかくきれいなのが夏帆の裸でした。
透明なおっぱいと、昔より少し大きくほんのり色付いた乳首、痩せたのが功を奏した腰のくびれ。
真っ白な肌に相変わらずもじゃもじゃと生えたまん毛、ぷりぷりのお尻。
大人びたと言ってもまだまだあどけない夏帆の、恥ずかしそうな笑顔と体のアンバランスさ。
俺もマコもため息しか出ませんでした。
幼児体型に近いマコと比べてしまうのが悪くて、なるべくマコの裸を見ないようにしました。
そして…マコに悪いなという気持ちとは逆に、逆らえない衝動がありました。
どうしようもない、そして当たり前の欲望が湧き上がってきたんです。
夏帆も同じ気持ちだって事が表情から分かります。4年前と同じ、エッチな気分の時に見せる顔。
俺「マコ、ごめん、俺さ」
マコ「…うん」
俺「夏帆と、やりたい」
16歳の健康な男子がこれだけ魅力的な女性を見て、何とも思わないわけがありません。
それでも、特殊なシチュエーションとは言え彼女の前で言う台詞ではありません。
ただ本当に、どうしても理性で抑えられるものではありませんでした。
マコ「…それは、夏帆に聞いてよ。今日はあたしの意見言うつもりないよ。ケンタが決めるんだよ。
ケンタが決めたことならあたしは受け入れる。あたしはそう決めたから」
夏「マコちゃん…。私は」
マコ「言ったでしょ、覚悟してるって。夏帆の正直な気持ちが聞きたい」
夏「わかった、私も覚悟決めるよ。あの、あのね、ケンタ」
俺「うん」
夏「多分あの夏休みの時以来。ううんそれ以上。今、信じられないくらい濡れてる。もう私…。
4年間、むずむずすることなかったのに!私もケンタとしたいよ!ケンタが好きだよ!」
俺「夏帆。俺も好きだよ。……マコ、俺」
マコ「ふう。やっと素直になったね」
マコが服を着始めました。
俺「何してんの?」
マコ「帰る。あたし邪魔でしょ?もうケンタの彼女じゃなくなったし」
俺「お前は俺の彼女だよ。これからも」
マコ「何言ってるの?夏帆を選んだんでしょ」
俺「お前が言ったんだよ。どっちかを選んでも、もう1人を見捨てるわけじゃないよねって。だろ?
俺は夏帆が好きで、マコが好き。もうそれでいいだろ。夏帆も多分今同じこと考えてるよ」
夏「私も分かってる。ケンタの彼女はマコちゃんだよ。私じゃケンタに何もしてあげられないもん。
好きな人のために別れる覚悟があるって、そこまで好きならずっと一緒にいるべきだよ。
だから今日だけだよ。わがまま言うの今日だけだから、マコちゃんには見てて欲しいんだ」
マコ「えー!初めてのエッチ見てて欲しいってこと?かなりアブノーマルだよ」
夏「(笑)もういいでしょ、みんなヘンタイさんだから」
俺「カッコつけずに言うとさー、夏帆も俺も今やりたくて我慢できなくなっただけってことだよ。
でも今日だけ。マコちゃんとは別れません。お願いです、夏帆とやらせて下さい」
夏「私からもお願い。初めての相手がケンタだったら、もう心残りないよ」
マコ「わかったわかった、エッチまでは想定内だし、そうなって欲しいって思ってたとこはあるよ。
夏帆の初めては絶対ケンタじゃなきゃってね。でも見てて欲しいは想定外(笑)」
夏「だって不安だもん。いろいろ教えてね」
夏帆とにょろにょろのキスをしました。
マコはそれを何とも複雑な表情で見ていました。
うれしい、くやしい、よかった、いろんなこと考えたんじゃないかな…。
*
*
ベッドの上で夏帆が足を開きました。
毛を上手に処理できるようになった夏帆のきれいなまんこは、びっしょびしょでした。
1本線がわずかに開いただけという感じで、初めて見たときの印象とほとんど変わりません。
4年ぶりの夏帆のまんこ。俺はほんの少し指先を挿し入れて、ちゃぷちゃぷと指を震わせました。
「はっ、ふうう…や、やあ…!」体をよじらせて夏帆があえいでいます。
まんこは濡れるというよりあふれてくる、湧いてくるって感じでした。
割れ目を下から上に沿って舐めあげると、マコとはまた違うしょっぱい味がしました。
初めて舐める夏帆のまんこ。緊張しました。それは夏帆も同じ。
夏帆も舐められるのは初めてです。舌がクリトリスに当たると夏帆の体がビクッと跳ねました。
れろれろとクリトリスを少し舐め回しただけで夏帆は限界のようです。
夏「ケンタそれ、すごいね…あ、あ、イッ!ねえ、イッちゃうかも…」
俺「ふぇ?あ、うん、いいよ?」
間の抜けた返事してしまったけど、れろれろを続けてちゅうちゅうもしました。
4年ぶりに感じて4年ぶりにイクってのが、久しぶりすぎて変にならないかと心配してしまいました。
クリトリスを軽く含んだ口を、ちょっと強めにすぼめた瞬間。
夏「ふわ!…んくぅ、フッウウッ…!あ、あッ…!…!…ッ!」
体を真っ赤にして夏帆が思いっきりのけぞりました。
夏帆の股間に顔をうずめた俺は、夏帆の太ももを抱えてそれを押さえるような体勢です。
夏「ああ、はあ、私イッちゃった?…ケンタァ、すごい気持ちイイ…」
夏帆は体をびくびくさせながら泣いていました。
小学校6年生の夏休み、あのときのことが昨日のことのように思い出されました。
夏「ね、ね、ケンタ、ちんちんでこちょこちょして…」
あの夏休みに何回もした、挿入直前のセックスごっこです。
俺もちんちんはパンパンで我慢できなかったので夏帆に言いました。
俺「それで1回イッてもいい?」
夏「い、いいよ、昔みたいに、せいしいっぱい出して」
クリトリスにちんちんをぐにゅっと押し当てて、こすりつけるようにぐりぐりしました。
ぐちゅぐちゅ、「ん、んふう…うう…!」ぬちゅくちゅ、「あッあッあッ…はあ…!」
夏帆の声とまんこのいやらしい音が混ざり合います。おっぱいを揉みながら乳首も転がしました。
夏「アア、アッ、びりびりする…また!またイッちゃうよう…!」
俺「俺も…!」
ホントに気持ちいい射精は、音まで聞こえる気がします。
ドピュ、ドピュドピュびゅっびゅ、と何回もちんちんが震えて精液が飛び出しました。
視界の外でマコの「ひゃ?」という驚いた声が聞こえました。
これだけ大量の精液が勢いよく遠くまで飛ぶ様子は、マコも見たことはないと思います。
上向きでクリトリスをこすっていたちんちん。飛び出した精液は、ベッドの端まで届きました。
そして夏帆のおでこにも耳にも着地しました。
おっぱいもおへその辺りもべとべとになるまで、ぴゅっぴゅっと精液は出続けました。
マコには悪いけど、その時点で生涯最高の気持ちいい射精でした。
夏帆はトロンとした顔でにっこり笑っていました。
おなかやおっぱいの精液をすくって幸せそうに見つめると、ふう、と息をつきました。
そしてあの夏休みの続きは文字通りこれからが本番です。
夏帆もそれが分かっていて、ちょっと顔がこわばりました。
俺のちんちんはしぼまないけど、イッたばかりなので間を置こうと思いました。
3人でシャワーを浴びました。
俺のちんちんを2人の手でにゅるにゅると洗ってくれました。
夏「マコちゃんとする時もあんな感じ?」
マコ「あんなに出たのは初めてみた。あたしとするより気持ちよかったから?」
俺「意地悪なこと聞くなよ。比べるわけにはいかないだろ」
マコ「そだね。ちょっと悔しい気もするけど今日は我慢して見届けるよ」
俺「あ、マコもしたくなった?」
マコ「それ聞くの?(笑)それは内緒!」
*
お風呂上り、湯冷めしないように暖房の効いた部屋で、裸で少し話をしました。
夏帆はやっぱり不安、怖い、と言ったけど、マコが大丈夫と励ましました。
再び夏帆を寝かせて前戯、と思ったらもうぬるぬるし始めていました。
ちんちんでまんこをぐりぐりするとさらにあふれ出して来て、いつでも挿入出来るように思えます。
今日のこの展開をマコだけは想定していて、コンドームを10枚くらい持っていました。
マコ「全部使ってもいいからね(笑)」
付けるとき、緊張した面持ちの夏帆がちんちんのすぐ横でじーっと見てました。
足を開いた夏帆のまんこにちんちんを当てて、いよいよ挿入というとき。
夏「マコちゃん、怖いから手握ってて」
出産に立ち会う旦那かよ!というツッコミはせず、マコはただ笑ってベッドの横に座りました。
夏帆の左手を両手で包んで「大丈夫だから、がんばって!」と言いました。
やっぱり出産に立ち会う旦那さんみたいです。
マコに見守られて、少しずつちんちんを押し進めました。
泣きそうな顔の夏帆とは対照的に、思ったより抵抗感はないように感じました。
ぷち、とかミチッとかいう感覚は、あったかと聞かれれば、あったかな?
ただマコと比べればとても狭くて、ぎゅっとされている感じも強かったです。
すんなり根元まで入ったので、夏帆の方が拍子抜けしてます。
でもさすがに腰を動かすと苦しそうな表情になりました。
夏「あ、アレ、イタタ、やっぱ痛いね!」
今頃痛がり出した夏帆だけど、泣きながら笑って「キスして」と言いました。
ぽてっとした唇にチュ、ちゅ、としながらゆっくり出し入れしました。
夏「はあ、ふう、はあ、あッああ、…んッ!」
まだ快感より痛みの方が大きいみたいです。
ゆっくり動かしているので俺の方はまだ持ちそうです。
動きを止めてまんこのぎゅ、ぎゅ、ていう動きをじっくり感じたりする余裕もありました。
夏「痛いけど、思ってたより平気。ケンタいいよ、もっと動いて」
それを聞いて、少しずつ腰の速度を上げました。
夏帆のまんこの締め付けも強くなった気がします。
夏「ケンタ、あッあ、ケンタあ、好き!ケンタ好きだよ…!」
挿入中に泣きながら好きと言われるのはマコの時もありました。
こういうこと言われるとホントに射精感が高まります。
4年越しに実現できた夏帆とのセックス。夏帆のまんこでイケるのはホントにうれしい。
俺「夏帆、俺も好きだよずっと。はっはッ、ん、夏帆の彼氏にはなれないけど、ずっと好きだから…」
夏「んん…!うん、それでいいよ。私も何があっても、今ケンタが中にいるこの感じ…!ああッ…
忘れないから、だから、んッ…平気。私もずっと好きだよ…!」
夏帆とキスしながら、夏帆のまんこ(ゴム)の中で発射しました。
夏帆はまだ泣いていました。
マコを見ると、マコも黙って泣いていました。
ちんちんを抜いて夏帆の腰の下に敷いたバスタオルを見ると、血で濡れていました。
痛みの感覚の割には多かったみたいで、夏帆も不思議そうでした。
 
夏「ケンタがやさしいから、そんなに痛くなかったんだよきっと」
*
*
*
感動的な夏帆との初セックスでした。3人とも泣いていました。
ここで終われば感動青春映画(?)みたいだけど、そこは10代の若者3人だから。
しかもヘンタイ。この日は俺の射精が続く限り、思いっきり性欲に溺れました(笑)。
痛みの残る夏帆に挿入こそしなかったけど、まず、夏帆に見られながらマコとしました。
マコは普段オナニーはしないけど、俺と夏帆のセックスを見てガマンできなかったようです。
俺と夏帆が夢中になってる間に、まんこをいじってこっそり1人でイッてしまったそうです。
そのおかげでトロトロに柔らかくなっていたマコの割れ目は、パックリ開いてヒクついていました。
ちんちんがぬぷぷと入って行く様子を、今度は夏帆がマコの手を握ってじーっと見ています。
夏帆の片手は自分のまんこをぎゅっと押さえていました。指がもぞもぞ動いてます。
夏「んふ、んん…すごいね、こうやって出たり入ったりするの、ふ、ふうう」
マコ「ああ、夏帆見ちゃやだよお、アッアッ、ケンタ、イキそう…」
にゅぷっにゅぷぐちゅ、っていう音に2人の声が重なって、夏帆がイキました。
夏「あっあっ、ああん、く…うう!」
少し間を置いてマコも「イク…!ケンタ…!アッ、あー…!」
それを見届けてから俺もイキました。2人のイキ顔を見ながらです。
そしてゴムを外してすぐ、脱力状態のマコのまんこに生のちんちんを入れます。
マコ「え、え、すぐできるの?ああ、んっんん…!」
まったく時間をあけずにするのは初めてだし、生では滅多にしません。
でも今はそういう流れだと思いました。マコは今イッた時に洪水みたいにあふれていました。
ちゃぷちゃぷ、にゅっぷ、と水気の多い音がします。
夏帆は少し力が抜けたようで、何もせずに見ています。
さっきより高速で出し入れすると、マコのまんこが泡立って白っぽくなってきました。
最後はちんちんを抜いて、マコのクリトリスにぐりゅぐりゅとこすり付けました。
マコ「あーッ…!それ、やばい…!ケンタまた…あっあっ、イ…クゥ……ッ」
俺「俺もまたイク…!マコ…!」
マコのお腹にぴゅっぴゅ、と吐き出しました。
それを2人のお腹ではさんでキスをしました。
マコ「ケンタのバカ、気持ちよすぎだよ…」
ここまで射精4回。
またシャワーを浴びて休憩して、今度は2人を相手に口と手で交互に愛撫しました。
夏帆もマコも、それで2回以上はイッたと思います。放心状態でした。
そして夏帆のフェラチオ初体験。ぎこちない夏帆の舌と唇の動きが初々しくて萌えました。
つばをたくさん出した方がいいことに自分で気づいたみたいです。
じゅぷじゅぷと、よだれを垂らしながら必死でしゃぶっています。
やりながら慣れて来たのか、舌の動きが器用になってきました。
俺「あああ、夏帆、イッちゃうかも…」
夏「あふ…、どうひたらいひ?…ん、んむ」
マコ「夏帆、口の中に出させて見る?」
夏「う、ふん…いひよ、やっへみう」
顔を前後させる動きが早くなりました。
じゅぷぷ、ちゅぽちゅぽじゅぷ、やらしい音を夏帆も楽しんで立てているみたいです。
俺「あ、あ、夏帆、出るよ…ッ」
さすがに量は少なくて、ぴゅっぴゅく、ぴゅぴゅって感じで薄いのが出たと思います。
口内射精初心者の夏帆にはちょうど良かったかも知れません。
でも飲むことは出来なくて、半開きの口から精液とよだれがダラダラとあふれました。
ぷるぷるの下唇とあごを精液で濡らしながら、困り顔で照れ笑いをする夏帆。
夏「ケンタを気持ちよくしちゃった~。うれしいな」
忘れられない夏帆の表情の1つとして、今も強く記憶に残っています。
 
最後は夏帆の口でまたカチカチにしてもらった後、クリトリスにちんちんぐりぐりで射精。
6回目の射精は夏帆のまん毛の範囲にしか飛びませんでした。
夏帆がちんちんを口できれいにしてくれた後、ふらふらと倒れそうになりました。
7回目…は、さすがに無理でした。
ちんちんは立つけどギンギンに痛くて、夏帆がフェラしてくれたけどイケませんでした。
また3人でシャワーを浴びながら、抱き合って笑い合いました。

*

一生忘れられない日になりました。
今の彼女に見守られながら、初恋の美少女と初めてのセックスをするという体験。
初体験が3Pになってしまった夏帆には、もっと強烈な記憶になったと思います。
数時間で6回の射精も、これが最初で最後です。
今でも夢に見ることがあります。
*
*
*
俺は結局マコと付き合うことを選んだことになります。
どちらを選んでも誰も恨まなかったとは思うし、夏帆への未練もありました。
でも結果的に、付き合いの長かったマコへの情を捨て切れなかったのが、最終的な理由です。
夏帆は元気で明るくなりさえすれば、モテモテになるのはまちがいありません。
夏帆が他の男に、って考えたら悔しくてたまらないけど。
でも3人の気持ちを総合したら、それが一番いいんじゃないかと割り切りました。
これが夏帆の出した「宿題」に対する俺の答えでした。
夏帆とはこれからも友達だし、大切な思い出だし大切な人です。
でも夏帆とのセックスはあれが最初で最後、もうしない。そう思っていました。
 
ところが、です。それを打ち破ったのは他ならぬ夏帆とマコでした。
マコが、俺とのデートに夏帆を呼ぶようになりました。
3人で遊ぶのは大歓迎だけど、マコがまた3人でしたいと言い出しました。
夏帆もまったく拒否しません。
俺も出来ればしたいけど、がんばって一旦気持ちを整理したので、とまどいました。
どうも夏帆とマコは、見る見られるという快感に目覚めたようです。やっぱりヘンタイでした。
俺もカッコつけてケジメつけようとしたけど、俺もヘンタイだし、10代の性欲は止まりません。
マコと比べてというわけじゃないけど、夏帆とのセックスは最高でした。
中でイクことを覚えてからは、夏帆は一度の挿入で何回もイキます。
体を真っ赤にして涙顔で笑う夏帆はとてもかわいくて、初めて抜かずの2発も経験しました。
夏帆とマコのレズ行為は一切ないです。俺が交互に2人の相手をします。
2人を相手にすると体力の消耗がハンパじゃないので、きちんと予定を立てるようになりました。
少なくとも3日前からオナニーも我慢して、睡眠不足にならないようにして臨みました。
3人で24時間ホテルに缶詰で、11回(多分)射精したのが最高記録です。
3Pと言えるかわからないけど、とにかく3人で見せ合いました。
舐めてるとこ、入るとこ、オナニーしてるとこ、イクとこ、いろいろです。
ケジメつけたいから夏帆と2人だけで会うことはなかったけど、こんな変な三角関係が続きました。
「夏帆に彼氏が出来るまではね」なんてマコが言って、夏帆がうなずくって感じでした。
「そんなんで彼氏出来るとは思えないけど」って俺が言うと「じゃあ2人と結婚する?」って。
いなかっぺ大将みたいです(世代じゃないけど知ってます)。
でもまあ毎週毎月ってわけでもないし、3人とも高校生活はそれなりに忙しくしてました。
(俺は結構本気で甲子園に行きたいって思ってて、野球がんばってました)
それぞれの生活も大事にする中で少しずつ、三角関係はくずれつつありました。
*
高校2年のとき夏帆に、出来るとは思えなかった彼氏が出来ました。
彼氏というか、何と佐和木先生、今は夏帆のお母さんですが、その弟といい感じなんだそうです。
一応叔父さんというわけでややこしい関係だけど、血が繋がってないから結婚もできるようです。
夏「12歳も上だからね、大人だし優しいよ。ケンタを好きになったみたいに、好きになれるかなあ。
あは、何かちょっと寂しくなっちゃうな」
それを聞いたとき、夏帆とマコの前で泣いてしまいました。
いい話なのに寂しくて、まだ夏帆に未練があるんだって自分で分かって悔しくて泣けました。
夏帆ももらい泣きしてしまいました。マコが慰めてくれました。
マコ「よしよし大丈夫。夏帆が幸せになれるんだよ?ケンタにはあたしがいるし!」
 
その日は、3人で性欲に溺れた最後の日になりました。
*
*
*
 
そして話は現在に飛びます。1◎年近くが経ちました。
夏帆を自宅に招いて、マコと3人で話をしました。夏帆に会うのは数年ぶりです。
20代後半になった夏帆は、昔とはまた違う大人の魅力にあふれた女性になっています。
俺はマコと結婚して夫婦で自営業、今4歳と3歳の娘がいます。
あれからマコとは2回ケンカ別れして2回ヨリを戻しました。1年ほどフリーの時期もありました。
でも夏帆やマコほどの女に出会えるわけはなくて、2回めの復縁で結婚を決意しました。
夏帆は、佐和木弟さんとの付き合いが大きくなってからは、会う機会が少なくなりました。
佐和木さんと結婚したかというとしてなくて、数年でなんとなく別れちゃったそうです。
佐和木さんは他の人と結婚して、どっちみち親戚付き合いもあるので、普通に仲いいそうです。
だから夏帆は今独身で、ヘンタイだけどおとなしいから彼氏もなかなか出来ないようです。
今でも美人だから当然モテます。でも積極的になれなくて恋仲に発展しないそうです。
多分佐和木さんにもヘンタイっぷりを見せられなくて、ストレスがあったかも知れません。
夏「まだケンタに未練があるのかなあ。そうだったらどうする…?」
意味深な表情と言葉で夏帆が聞いてきました。そばにマコがいるのに。
俺「おいおーい、奥さんの前でそんなこと言うなよ」
そう言って冗談で済まそうとしたけど
マコ「いつでも貸すよ?また3人でしよっか」
もちろんマコも冗談で言ったんだろうけど、多分夏帆との不倫ならマコは許すと思います。
もう性欲に流される年じゃないけど、もしこの2人に迫られたら、我慢する自信はありません。
まあもう大人だから、ホントにそんなことになるとは思っていません。思っていません……。
*
夏帆は今、小学校の養護教諭、つまり保健室の先生をやっています。
佐和木先生(お母さん)を手放しで信頼・尊敬してる夏帆は、高校の時この道に決めたそうです。
子供のころからいろんな悩みを抱えて来た夏帆なら、子供の気持ちがよくわかると思います。
俺「こんなきれいで優しい先生なら、子供たち何でも相談しちゃうだろうなー」
コ「今の小学生ってどう?ませてるんじゃない」
夏「うん、昔の私みたいなおっきい子も結構いるし、告白してくる子もいるよ(笑)」
俺「オナニーのやり方教えてって言われたら?(笑)」
夏「そんな子いないよ(笑)!でも昔の私みたいに、本気で悩んでる子がいたら教えちゃったりして」
俺「教えるってことは…。夏帆、今も時々1人でしてる?」
夏「!…ばか!……してるよ。相手いないもん。…ケンタがしてくれるの?」
俺「それはいつでも。…って冗談冗談(笑)」
マコ「夏帆ごめんね、子供たち今そこにいるから。今度あの子たちがいない時に3人で、ね」
夏「そっか。ちょっとその気になっちゃったけど、私も忙しいからいつになるかわかんないな」
俺「…何で結構本気で相談してるの(笑)」
マコ「夏帆もあたしも本気だよ?でも、現実的にはね。大人は忙しいからね」
俺「ヒマになって欲しいような欲しくないような…」
マコ「ま、夏帆、がんばってよね。変なやつに覗かれないように気をつけてね(笑)」
夏「そんなヘンタイさんは、ケンタぐらいじゃないかな?」
俺「(笑)今さら俺だけヘンタイ扱いかよ」
マコ「まあまあ。でもホントいい先生だと思うよ。ね、夏帆先生!」
夏「(笑)まだまだだよ。でもね、子供の相手は大変だけど、頼りにされたらすごいやりがいあるよ。
お母さんみたいな先生目指してがんばるよ」
 
 
…今度夏帆に会えるのはいつになるかわかりません。
でもその時もし、夏帆とマコが「その気」だったら?…またきっと、溺れてしまうだろうな。
その時がくるのが楽しみでもあり…少し怖くもあります(笑)。
*
*
*
 
それはさておき、俺とマコの娘も数年後には小学生です。
可能性は低いけど、その学校に夏帆が赴任してくるかも知れません。
娘が思春期になったら、親にも言えないような悩みを抱えることもあると思います。
そんな時学校に夏帆がいてくれたら、心強い味方になってくれるのはまちがいありません。
 
「保健室の夏帆先生に相談しといで」
娘にそう言える日が来るのを楽しみにしています。
でもオナニーを教わってきたらやっぱりちょっとヘコみます(笑)。
 

【学校】【教室】

$
0
0

大学3年のときにサークルのみんなと貸し別荘に泊まりにいったときの話をします。男子8人女子7人で行ったんですが、プールもないのに女子は一応あることのために水着を持っていくのです。
あることとは夜男子がお風呂に入っているのを見計らって私たち7人が水着に着替えそこに乱入するのです。そのときは5人がいましたが、大体男の人は頭や体を洗っているので無防備の中どんどん入っていき7人とも湯船につかっちゃいます。最初は「何入ってきてんだよ。」とか「お前らも裸になれよ」とか言ってきますが私たちはしかとしてじっと男子の裸を眺めるのです。
するとみんなタオルで股間を隠しているんですが勃起してタオルがもりあがってくるんで「何興奮して勃起してるの?」とからかうと男子のうちの一人が「じゃあ背中でも流してくれよ。」というので私は待ってましたとばかりにお風呂から上がりその男子の後ろに回り、他の女の子は湯船の中で見てます。
私は石鹸を泡立ていきなりその子の股間を攻めます。するともうびんびんになっているので、いやらしい声を漏らしいまにもいきそうになっていました。
なおも攻め立てるといきそうだというので方向を湯船の方に向けさせ射精するところをみんなで見ちゃいました。それが終わると残りの4人も俺も俺もということになり他の女の子の手も借り全員ぬいちゃいました。
その後女子がお風呂に入っていると、男子が乱入しようとしてましたが私たちはしっかり鍵を閉めていたので大丈夫でした。
でもそのときさっき誰のが一番大きかったとか小さかったとか話し合って盛り上がっていました。

Viewing all 310 articles
Browse latest View live